説明

ドアの開閉装置及びドアの開閉装置を備えた電子機器

【課題】ドアのそり変形による、外観を損なう意匠的な不具合や開閉時の動作性能の不具合を解消することができ、その手段が簡便で安価なドア開閉構造を提供する。
【解決手段】キャビネットと前記キャビネットに回動可能に取付けられたドアと、前記ドアに弾性体が係止しているドアの開閉構造において、前記弾性体が、前記キャビネットに配置されるとともに、前記弾性体の押圧位置が、前記ドアの開閉動作にともない支点方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受像機等の電子機器筐体に設けられたドアの開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受像機のような電子機器では、チャンネル切り替えや音量、画質調整等を行う操作ボタンが配置されている。これらの操作ボタンをキャビネットの前面に配置した場合、デザイン性から、開閉可能なドアにより操作ボタンを覆い隠すようにし、上記操作ボタンを操作する場合のみドアを開けるようにしている。
【0003】
従来の電子機器のドアの開閉装置としては、特許文献1に記載のように、筐体に備わっている取付け片の軸孔に、ドアの左右の突片に各別に備わっている軸体が嵌合されて、その嵌合箇所を中心として開閉動作を行うようになっている。このとき、ねじりコイルバネを上記軸体部に設けて、ドアを開動方向あるいは閉動方向に付勢するようにしている。
【特許文献1】特開2006―172556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のドアの開閉機構は、CDやDVDなどの光ディスク装置においての技術である。これは、ねじりコイルバネによってドアは閉動方向に付勢されており、ディスクトレイが装置から突出する際に、ディスクトレイがドアを押し開けるようになっている。すなわち、ディスクトレイがドアを開状態に保持している。
【0005】
テレビジョン受像機のような電子機器における操作ボタン等を覆い隠すドアに、上記特許文献1の技術を用いる場合は、ねじりコイルバネによりドアを開動方向に付勢し、ドアを閉状態で保持する機構を別途設ける方法がある。このドアを閉状態で保持する機構としては、ドアに嵌合突起を形成し、キャビネットにキャッチャを設け、キャッチャで嵌合突起を把持させる機構が一般的である。この、キャッチャは、ドアを閉じたときに嵌合突起を掴み、その後にドアを開くときには、ドアを押すことによって嵌合突起を解放するものである。この把持、開放を確実に動作させるためには、嵌合突起とキャッチャはドア中央近傍に配置することが望ましい。また、ドアを開動方向に付勢するねじりコイルバネはドアの一方の端近傍に設けられている。
【0006】
上記特許文献1に記載の技術においては、ドアを開動方向に付勢するねじりコイルバネの位置と、ドアを閉状態に保持する嵌合突起の位置が離れている場合については考慮されておらず、温度変化やクリープなどによって、ドアにそり変形を生じ、そり変形が大きい場合、ドアとキャビネットの間に段差を生じて外観が損なわれるような意匠的な不具合となったり、また、開閉時の動作性能が損なわれたりする問題があった。
【0007】
このため、ドアの変形を一定量の範囲内に抑える必要があった。そのため、ドアの板厚を厚くする、あるいは剛性の高い材質のものを使用するなどの必要があった。そのため、デザイン的な制約を生じるとともに、低コスト化を図るには、自ずと限界があるものであった。
【0008】
また、上記特許文献1に記載の技術においては、ユーザーが手動で開閉動作をすることについては考慮されておらず、ドアが開いた状態で、ドアにある所定以上の負荷をかけた場合に、ドアとキャビネットの嵌合部が破損あるいは外れるという問題もあった。ねじりコイルバネは小さな部品であり、嵌合部が外れる際に紛失する場合が多く、この場合、ねじりコイルバネを調達するなどしないと、元の状態に戻すことができない。同様に、嵌合部が破損した場合も容易に元の状態に戻すことができない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、上述した従来技術のもつ問題点を解消することにあり、目的とするところは、簡便でかつ安価で達成されるドアの開閉装置を提供することにある。
【0010】
さらには、ドアとキャビネットの嵌合部が破損することを防ぎ、かつドアがキャビネットから外れた場合においても、ユーザーが容易に元の状態に戻すことができるドアの開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電子機器のドアの開閉装置は、キャビネット側に軸体を設け、ドアに軸孔を有する突片を設け、軸体と軸孔を嵌合させるようにする。このとき、軸孔には切欠きを設ける事により、容易にドアの取外し、取付けが可能となる。
【0012】
また、ドアを開動方向に付勢させる部材としては板バネを用い、板バネをキャビネット側に固定し、この板バネをドアの内側に当接させるようにする。このようにすることにより、ドアが外れても板バネはキャビネット側に残るため、容易に取付けることが可能となる。
【0013】
さらには、ドアが開閉する動作に伴って、板バネとドアの当接位置が変化するようにすることにより、ドアが閉状態での板バネによる付勢力によるドアを開動させる方向に働く力が小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドアのそり変形による、開閉時の動作性能の不具合や外観が損なわれたりする不具合を解消することができ、その手段も簡便で安価なドア開閉装置を提供できる。
【0015】
また、ドアに過大な負荷が加わったときに、ドアが外れた場合においても、ユーザーが簡単にドアを取付けて元の状態に戻すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用したドアの開閉装置について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図4は、本発明の実施例1のドアの開閉装置を示す断面図であり、それぞれドアが閉状態、開状態、全開状態およびドアが外れた状態を示している。ここでは、電子機器としてテレビジョン受像機の場合について説明する。
【0018】
1はテレビジョン受像器のキャビネット、2はドアである、3は軸体であり、軸体3は円柱形状でキャビネット1に固定されている。4は板バネ、51、52は位置決め用ボス、6は固定用ネジである。ドア2の内側には、チャンネル切り替えや音量、画質調整用の操作ボタン、映像・音声入出力端子などが設けられている(図示せず)。
【0019】
図に示すように、ドア2は樹脂の成型品であり、その内側には突片21が一体に設けられている。この突片21には、軸体3と略同径の軸孔23があり、軸体3と軸孔23が嵌合することにより、ドア2は軸体3を回動中心として開閉するようになっている。また、突片21には切欠き24があり、この切欠き24の形状は図に示すように軸孔23部が最小幅であり、その最小幅は軸体3より少し小さい。また、軸孔23から離れるにしたがって切欠き24の幅が大きくなるようなテーパー形状となっている。これにより、ドア2が外れた状態(図4)から切欠き24部を軸体3に押し付けることにより、容易に軸孔23と軸体3が嵌合し、ドアが取付けられた状態(図3)になることができる。また、その逆も容易である。上記したように切欠き24の最小幅は軸体3の直径より少し小さいが、突片21は樹脂製であるため、突片21を弾性変形させることにより切欠き24の最小幅部分を軸体3が通過することが可能となる。
【0020】
板バネ4は、キャビネット1に設けられたバネ取付け部7に固定用ネジ6により固定されている。板バネ4の材質としては、ステンレスのばね鋼材であり、このばね鋼材を形状加工されたものである。板バネ4は先端(図中左端)近傍でドア2の内側と当接するようにする。板バネ4とドア2の当接位置を4aとする。図1(ドア閉状態)において、ドア2には付勢力(板バネ4のばね力)F1がドア2を開動させようとする方向に働いている。
上記したように、ドア2には開動方向に付勢力が働くため、ドア2を閉状態(図1)で保持するための機構が必要となる。この機構について説明する。ドア2の内側には嵌合突起22が形成されており、キャビネット1の対応する位置には、嵌合突起22を把持するためのキャッチャ11が設けられている。キャッチャ11は、ドア2を閉じたときに嵌合突起22を掴み、その後にドア2を開くときには、ドア2を押すことによって嵌合突起22を解放するようになっている。
【0021】
キャッチャ11が嵌合突起22を解放すると、ドア2は板バネ4の付勢力により図2のように、ドア2の下側が浮いた開状態になる。この状態で、ユーザーが手動によりドア2を開動させ図3の全開状態とすることにより、ドア2に覆い隠されていた操作ボタン等を操作可能となる。
【0022】
図4を用いて、ドア2の取付け・取外しについて説明する。
上記したように切欠き24の最小幅は軸体3より少し小さいが、突片21は樹脂製であるため、突片21を弾性変形するため切欠き24の最小幅部分を軸体3が通過することが可能である。また、軸孔23から離れるにしたがって切欠き24の幅が大きくなるようなテーパー形状となっているため、容易に取付けることができる。
【0023】
図5は、本発明のドアの開閉装置における板バネ4の形状を示す斜視図である。上記したように板バネ4は、材質にステンレスのばね鋼材を用いている。
【0024】
板バネ4はバネ部4eとベース部4fからなり、ベース部4fには、位置決め用の穴4b、位置決め用の切欠き4c、ネジ逃げ穴4dが設けられている。また、板バネ4のバネ部4eの先端近傍は、ドア開閉動作にともない摺動することを考慮し、当接状態が均一になるように、ある一定の曲率をもって形成されている。
【0025】
図6は板バネ取付け部を内側から見た斜視図である。図に示すようにキャビネット1の内側には、位置決め用ボス51、52が設けられている。位置決め用ボス51に板バネ4の位置決め用の穴4bが係合し、位置決め用ボス52に位置決め用の切欠き4cを係合することで、板バネ4は一義的に位置が定まった状態となる。この状態で固定用ネジ6によりキャビネット1に固定される。
【0026】
図7は表側からみたドア2近傍の斜視図である。10は操作ボタンであり、ドア2が閉状態においては、ドア2により覆い隠されている。図に示すように、ドア2に設けられた嵌合突起22は、ドア2の幅方向の略中央に位置するようにしている。これは、ユーザーがドア2を押したときに、確実に嵌合突起22とキャッチャ11の嵌合解除させるためである。
【0027】
また、図に示すように、ドア2とキャビネット1の嵌合部である突片21は左右両端近傍と、ドア2の幅方向で略4等分の位置の4箇所設けている。4箇所の突片21のすべてに軸孔23および切欠き24があり、それぞれに対応する位置のキャビネット1側には軸体3を設けている。板バネ4は、4箇所の突片21うち一方の端に配置された突片21の近傍に配置している。図に示すように、ドア2が開状態あるいは外した状態において、板バネ4が露出する。よって、板バネ4をドア2の端近傍に配置することにより、操作ボタン10を操作する際に誤って板バネ4に触れることを防止するためである。
【0028】
図8、図9は、ドア2、板バネ4の位置関係をモデル的に示したものであり、図8は、ドア開状態を示した側面図、図9はドア閉状態を示した側面図である。
【0029】
前述したように、板バネ4は、固定用ネジ6により固定されている。その固定点をC点とすると、板バネ4は、C点を固定端とするモデルとして考えることができる。
【0030】
ドア2が開状態では、ドア2の回転支点から距離L1だけ離れたD点に、板バネ4の荷重P1が負荷されており、板バネ4は、ドア2の閉動作にともなって徐々に回動する。図8の2点鎖線は、閉状態の板バネ4の位置を示すもので、図9に示された板バネ4の位置と同位置である。
【0031】
ドア2が閉状態では、ドア2の開状態に対して、板バネはθだけ回動し(撓んで)、ドア2の回転支点から距離L2だけ離れたD点に、板バネ4の荷重P2が負荷された状態となる。
【0032】
図10は、ドア2のD点にかかる荷重と板バネ4の回転角との関係を示したものである。
横軸が、板バネ4の回転角、縦軸が板バネ4の荷重である。板バネ4の荷重は開状態でP1であり、閉じてくるとともに、徐々に(線形的に)増加して、閉状態では荷重はP2となる。
【0033】
図11は、板バネ4によるドア2にかかるトルクと板バネ2の回転角の関係を示したものである。横軸が、板バネ4の回転角、縦軸が板バネ4によるドア2にかかるトルクである。ここで、トルクT、荷重P、支点からの距離Lとすると、T=P*Lで表される。
前述したように、開状態から閉状態になるときに、ドア2にかかる荷重はP1からP2に増加する。
【0034】
しかしながら、閉状態から閉状態になるとともに、板バネ4のドア2に対する係合位置が移動することにより、回転支点から距離がL1からL2に変化する。本実施例では、P1*L1をP2*L2に等しくなるようにLを設定してあるので、トルクは開状態でT1であるのに対して、閉じた状態でもT1のままに維持される。
【0035】
したがって、ドアを開くに要する必要最小限のトルクT1にて、ドアの開閉動作を可能とすることができる。
【0036】
つまりは、従来例のような、閉状態でトルクが増加することはないので、ドアのそり変形により、ドアとキャビネットの間に段差を生じて外観を損なう意匠的な不具合や、開閉時の動作性能が損なわれたりするポテンシャルを最小限に抑えることができる。
そのことにより、ドア開閉装置において、ドアの板厚を厚くする、あるいは剛性の高い材質のものを使用するといったことが不要となり、デザイン的な制約をなくすことができるとともに、低コスト化を図ることが可能となる。
【0037】
また、その手段も、板バネと板バネを固定する止めネジという簡便な方法により構成されているため、組み立て作業も容易であり、また安価にて達成することができる。
【0038】
以上、本発明を採用することにより、ドアの開閉装置において、ドア2の板厚を厚くする、あるいは剛性の高い材質のものを使用するといったことが不要となり、デザイン的な制約をなくすことができるとともに、低コスト化を図ることが可能となる。
【0039】
また、その手段も、板バネ4を固定用ネジ6で固定するという簡便な方法により構成されているため、組み立て作業も容易であり、また安価にて達成することができる。
さらには、ドア2が外れた場合においても、板バネ4はキャビネット1に固定されているため、ドア2を容易に取付けることが可能となる。
【0040】
以上、本発明の一実施例を説明するにあたり、ドアを開方向に付勢する弾性体を板ばねとしたが、これに限ったものではなく、弾性体の支点とドアに対する荷重点の関係が、図8、9で示したような関係であって、弾性体がドアを回動方向に付勢でき、かつドアに対して摺動可能であればよく、例えば、その手段がコイルばね、樹脂、ゴムによるものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明のドアの開閉装置を示す断面図(閉状態)である。
【図2】図2は本発明のドアの開閉装置を示す断面図(開状態)である。
【図3】図3は本発明のドアの開閉装置を示す断面図(全開状態)である。
【図4】図4は本発明のドアの開閉装置を示す断面図(外れた状態)である。
【図5】図5は本発明のドアの開閉装置における板バネの形状を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明のドアの開閉装置における板バネの取付け状態を示す斜視図である。
【図7】図7は本発明のドアの開閉装置におけるドアを外した状態示す斜視図である。
【図8】図8は本発明のドア開閉装置の動作を説明する図である。
【図9】図9は本発明のドア開閉装置の動作を説明する図である。
【図10】図10はドアにかかる荷重とばねの移動角の関係を示す図である。
【図11】図11はドアにかかるトルクとばねの移動角の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 キャビネット
2 ドア
3 軸体
4 板バネ
4b 位置決め用の穴
4c 位置決め用の切欠き
4d ネジ逃げ穴
4e バネ部
4f ベース部
6 固定用ネジ
7 バネ取付け部
10 操作ボタン
11 キャッチャ
21 突片
22 嵌合突起
23 軸孔
24 切欠き
51 位置決め用ボス
52 位置決め用ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体を有するキャビネットと、軸孔を有するドアからなり、前記軸体と前記軸孔を嵌合させ、前記軸体を回動中心として開閉可能なドアの開閉装置において、
前記軸孔には切欠きを設けて前記軸体と前記軸孔を嵌合可能とし、
前記キャビネットには弾性体を設け、前記弾性体を前記ドアの内側に当接させて、ドアを開動方向に付勢させ、前記弾性体の当接位置が、前記ドアの閉鎖方向の動作にともない前記回動中心方向に移動することを特徴とするドアの開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドアの開閉装置において、前記弾性体が、板バネにより構成され、前記板バネの先端に湾曲部が形成され、前記湾曲部の外側表面が前記ドアの前記内側に当接して摺動することを特徴とするドアの開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドアの開閉装置において、前記ドアが閉鎖位置に至ると、前記ドアの内側に設けられた嵌合突起と前記嵌合突起を把持するキャッチャが、前記バネによる開動方向の付勢力に抗して前記ドアを閉状態で保持することを特徴とするドアの開閉装置。
【請求項4】
電子装置のキャビネットに軸体を有し、ドアの軸孔を前記軸体と嵌合して前記軸体を回動中心として前記ドアを開閉する電子機器において、前記軸孔には切欠きを設けて前記軸体と前記軸孔を嵌合可能とし、前記キャビネットには弾性体を設け、前記弾性体を前記ドアの内側に当接させて、ドアを開動方向に付勢させ、前記弾性体の当接位置が、前記ドアの閉鎖方向の動作にともない前記回動中心方向に移動することを特徴とするドアの開閉装置を備えた電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−4426(P2009−4426A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161241(P2007−161241)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】