説明

ドアアンロック装置

【課題】走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構において、オートドアロックの安全性を確保しつつ、ドアロック解除の条件を緩和する。
【解決手段】走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構において、前記ドアロック状態を手動で強制的に解除するドアアンロック装置であって、人が操作するアンロック専用スイッチ15を備えており、ドアロック制御部20は、所定速度以上で走行中にアンロック専用スイッチ15が操作された場合には、オートドアロック機構を無効としてドアロックを強制的に解除するとともに、解除後の一定時間を計測し、一定時間が経過しても所定速度以上で走行を継続している場合には、オートドアロック機構を有効として再びドアを自動的にロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構を備え、前記ドアロック状態を手動で強制的に解除するドアアンロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性を高めるためのオートドアロック機構が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のドアを施錠するのか解錠するのかの選択に応じて信号を出力するドアロックスイッチと、車両の走行速度を検出する車速センサと、複数のドアの施錠および解錠を行うドアロックアクチュエータと、ドアロックスイッチからの上記信号に従って、ドアロックアクチュエータの動作を制御するとともに、車速センサからの車速信号に基づいて、車速が所定値以上となると複数のドアを施錠するようにドアロックアクチュエータを制御するコントローラと、車速センサとコントローラとの間に接続され、車速センサからの車速信号をコントローラに供給するか否かを手動により選択可能なオート・マニュアル切替えスイッチと、を備えた車両用ドアロック装置が開示されている。
【0004】
一方、このようなオートドアロック機構によるドアロックが、逆に、事故等の発生した場合の迅速な救助の障害となる場合もあるため、追突事故を検知した場合には、車内側からの手動操作による解錠を可能とした車両用施錠装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、オートロックの解除方法として、変速機のシフトレバーのパーキング位置若しくはパーキングブレーキ・オンを検知したとき、またはシフトレバーのパーキング位置とパーキングブレーキ・オンとを共に検知したときに停車状態を認識して、アンロック信号をドアロック制御装置に出力するようにした自動ドアロック装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平05−86763号公報
【特許文献2】特開2007−77774号公報
【特許文献3】特開平08−218712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構を搭載した車両においては、オートドアロックの手動解除操作は事故が発生した場合などの必要最小限の場合に限られ、自動解除動作は車両が完全に停車してシフトレバーがパーキングブレーキの位置に操作された場合など、確実に停車していると判断できる場合にのみ限られている。そのため、運転者であるユーザの使い勝手の悪いものとなっていた。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑みて創案されたもので、その目的は、走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構において、オートドアロックの安全性を確保しつつ、ドアロック解除の条件を緩和したドアアンロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のドアアンロック装置は、走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構を備え、このオートドアロック機構によるドアロック状態を手動で強制的に解除するドアアンロック装置であって、人が操作するアンロック専用スイッチを備えており、前記所定速度以上で走行中に前記アンロック専用スイッチが操作された場合には、前記オートドアロック機構を無効としてドアロックを強制的に解除するとともに、解除後の一定時間を計測し、一定時間が経過しても前記所定速度以上で走行を継続している場合には、前記オートドアロック機構を有効として再びドアを自動的にロックするように構成してもよい。これにより、車両の走行中にアンロック専用スイッチが誤って操作された場合でも、例えば1〜3秒程度の時間が経過したときに再びドアがロックされるので、走行中の安全を再び確保することが可能となる。
【0009】
また、本発明のドアアンロック装置は、前記所定速度以上で走行中に前記アンロック専用スイッチが操作された場合には、前記オートドアロック機構を無効としてドアロックを強制的に解除するとともに、解除後の一定時間を計測し、一定時間が経過したときの走行速度が前記所定速度以下である場合には、そのまま前記オートドアロック機構を無効としてドアロックの解除状態を維持するように構成してもよい。これにより、車両の走行中にアンロック専用スイッチが操作された場合でも、例えば1〜3秒程度の時間が経過したときに車両がほぼ停止するような状態であれば、そのままドアアンロック状態が維持されるので、車両の停車後にオートドアロックの解除ボタンを操作する必要がなく、即座にドアを開けることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の走行中にアンロック専用スイッチが誤って操作された場合でも、所定時間が経過したときに再びドアがロックされるので、特別な操作を必要とすることなく、走行中の安全を再び確保することができる。
【0011】
また、本発明によれば、車両の走行中にアンロック専用スイッチが操作された場合でも、所定時間が経過したときに車両がほぼ停止するような状態であれば、そのままドアアンロック状態が維持されるので、車両の停車後にオートドアロックの解除ボタンを操作する必要がなく、即座にドアを開けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係わるドアアンロック装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0014】
このドアアンロック装置は、ドアロックスイッチ10、車速センサ11、オート・マニュアル切替スイッチ12、ドアロック制御部20、ドアロック機構部30からなる従来のドアロックシステムを備えている。オート・マニュアル切替スイッチ12は、車速センサ11とドアロック制御部20との間に設けられている。
【0015】
ドアロック制御部20は、オート・マニュアル切替スイッチ12がマニュアル側に切り替えられている状態(例えばスイッチオフ状態)において、ドアロックスイッチ10からのロック信号またはアンロック信号を受信すると、これ受けてロック信号またはアンロック信号をドアロック機構部30に出力することにより、ドアのロック、アンロックを制御するようになっている。
【0016】
また、ドアロック制御部20は、オート・マニュアル切替スイッチ12がオート側に切り替えられている状態(例えばスイッチオン状態)において、車両が発進して車速が所定速度の例えば20km/hを超えると、ドアロック制御部20はこれを車速センサ11からの車速信号(例えば、19hHz)により検知し、ロック信号をドアロック機構部30に出力することにより、全ドアのロック制御(集中ドアロック制御)を行うようになっている。これにより、運転者がドアロックスイッチ10をオンすることを忘れていた場合でも、所定速度を超えると自動的にドアがロックされるので、走行中の安全が確保されることになる。
【0017】
ここで、本実施形態では、このような構成のドアロックシステムにおいてドアロック制御部20にはさらに、L端子線13、シフトポジション信号線14、及びアンロック専用スイッチ15が接続されている。L端子線13は、図示しないエンジンが動くと12V、エンジンが停止すると0Vに電圧変化する線である。また、シフトポジション信号線14は、シフトポジション(ATシフトレバー)をDレンジからPレンジに切り替えたときに、Pレンジの電圧が0Vから12V(または、12Vから0V)に変化するのを検出する信号線である。
【0018】
アンロック専用スイッチ15は、Pポジションに基板上で接続されており、このアンロック専用スイッチ15を押し下げすることにより、押し下げしている間だけ、Pポジションがアースに落ちる(すなわち、12Vから0Vに変化する)ようになっている。従って、このアンロック専用スイッチ15を押し下げすることにより、疑似的にATシフトレバーがパーキングP(Pレンジ)に入れられた状態となるため、集中ドアロック制御が解除されるようになっている。なお、このアンロック専用スイッチ15は、車両のフロントパネル等、主に運転者が操作しやすい任意の場所に設けておくのがよい。また、このアンロック専用スイッチ15にLED等の照明を設けておけば、このLEDの点灯によって夜間等の暗闇の中でもアンロック専用スイッチ15の位置を視認することができる。
【0019】
次に、上記構成のドアアンロック装置において、オート・マニュアル切替スイッチ12をオン状態としたときのドアロック制御動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0020】
まず、ドアロックスイッチ10は操作せず、オート・マニュアル切替スイッチ12をオート側に切り替えてスイッチオン状態とする(ステップS1)。次に、図示しないシフトレバーをPポジションでエンジン始動後、シフトレバーをDポジションに切り替え、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み替えて走行を開始する(ステップS2)。
【0021】
これにより、ドアロック制御部20は、車両が発進して車速が所定速度の例えば20km/hを超えると、これを車速センサ11からの車速信号(例えば、19hHz)により検知し(ステップS3でYesと判断されると)、ロック信号をドアロック機構部30に出力することにより、全ドアをロックする集中ドアロック制御を行う(ステップS4)。そして後、ドアロック制御部20は、L端子線13、シフトポジション信号線14、及びアンロック専用スイッチ15の状態を監視する(ステップS5,ステップS6,ステップS7)。
【0022】
そして、走行中事故等でエンジンがストップすると、L端子線13からの入力電圧が12Vから0Vに変化するので、ドアロック制御部20は、このL端子線13の入力電圧の変化(すなわち、HからLへの変化)を検出すると(ステップS5でYesと判断すると)、ドアロック機構部30にアンロック信号を出力して、ドアアンロック制御を行う(ステップS8)。これにより、事故等でエンジンがストップすると、自動的にドアがアンロックされるため、その後の車外への退避や救助活動等がし易くなる。
【0023】
また、車両が完全に停止後、シフトポジション(ATシフトレバー)をDレンジからPレンジに切り替えると、シフトポジション信号線14が0Vから12V(すなわち、LレベルからHレベル)、または、12Vから0V(すなわち、HレベルからLレベル)のいずれかに変化するので、ドアロック制御部20は、このシフトポジション信号線14の入力電圧の変化(すなわち、LからHへの変化、または、HからLへの変化)を検出すると(ステップS6でYesと判断すると)、ドアロック機構部30にアンロック信号を出力して、ドアアンロック制御を行う(ステップS8)。これにより、車両を駐停車させたときに、完全に停車した状態でドアアンロックを行うので、安全に降車することができる。また、停車後に車両のスイッチ操作(ドアアンロック操作)を行う手間も省くことができる。
【0024】
また、走行中に運転者等がアンロック専用スイッチ15を操作すると(ステップS7でYesと判断されると)、Pポジションがアースに落ちて疑似的にATシフトレバーをPレンジ(パーキングP)に入れた状態となるため、その操作信号を受けたドアロック制御部20は、ドアロック機構部30にアンロック信号を出力して、ドアアンロック制御を行う(ステップS9)。すなわち、オート・マニュアル切替スイッチ12がオン状態である集中ドアロック制御状態であってもこれを無効とし、アンロック専用スイッチ15の操作を優先する。
【0025】
このとき、ドアロック制御部20は、車速センサ11からの車速信号により現在の車速を検知し、その車速が所定速度以上であるか否かを確認する(ステップS10)。その結果、現在の車速が所定速度以上である場合(ステップS10でYesと判断された場合)には、その時点で一定時間(例えば、1〜3秒の間の任意の時間等)の計測を開始する(ステップS11)。この一定時間の計測は、図示しない内部タイマー回路により行う。そして、一定時間が経過しても現在の車速が所定速度以下になっていない場合(ステップS10でYes、ステップS11でYesと判断された場合)には、ステップS4に戻り、無効としていた集中ドアロック制御を再び有効として、集中ドアロック制御を行う。すなわち、ドアロック制御部20は、ロック信号をドアロック機構部30に出力する。これにより、車両の走行中にアンロック専用スイッチ15が誤って操作された場合でも、例えば1〜3秒程度の時間が経過したときに再び全ドアがロックされるので、走行中の安全を再び確保することが可能となる。
【0026】
また、上記ステップS10,ステップS11において、一定時間が経過するまでに車速が所定速度以下になっていた場合(ステップS10でNoと判断された場合)には、そのままドアアンロック状態を維持して処理を終了する。すなわち、車両の走行中にアンロック専用スイッチ15が操作された場合でも、例えば1〜3秒程度の時間が経過したときに車両がほぼ停止するような状態であれば、そのままドアアンロック状態が維持されるので、車両の停車後にオートドアロックの解除ボタンを操作する必要がなく、即座にドアを開けることが可能となる。また、車両から同乗者を降車させる際に、シフトポジションがDレンジのままでも、アンロック専用スイッチ15の操作だけでドアアンロックが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のドアアンロック装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のドアアンロック装置において、オート・マニュアル切替スイッチをオン状態としたときのドアロック制御動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 ドアロックスイッチ
11 車速センサ
12 オート・マニュアル切替スイッチ
13 L端子線
14 シフトポジション信号線
15 アンロック専用スイッチ
20 ドアロック制御部
30 ドアロック機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行速度が予め設定された所定速度以上になるとドアを自動的にロックするオートドアロック機構を備え、このオートドアロック機構によるドアロック状態を手動で強制的に解除するドアアンロック装置であって、
人が操作するアンロック専用スイッチを備えており、
前記所定速度以上で走行中に前記アンロック専用スイッチが操作された場合には、前記オートドアロック機構を無効としてドアロックを強制的に解除するとともに、解除後の一定時間を計測し、一定時間が経過しても前記所定速度以上で走行を継続している場合には、前記オートドアロック機構を有効として再びドアを自動的にロックすることを特徴とするドアアンロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドアアンロック装置において、前記一定時間が経過したときの走行速度が前記所定速度以下である場合には、そのまま前記オートドアロック機構を無効としてドアロックの解除状態を維持することを特徴とするドアアンロック装置。

【図1】
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【図2】
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