説明

ドアホン子機の水抜き構造

【課題】水滴の自重の大きさにかかわらず雨水によってマイク穴が塞がることを防止させ、マイクの受話音量を十分に確保して良好な通話を行う。
【解決手段】マイク穴31の内側壁31aを食い切り構造で成形するとともに、カメラカバー30の外周壁をマイク穴の内側壁として用いるように形成することにより、マイク穴における内側壁と外側壁31bとの雨水の表面張力のバランスが崩されることから、雨水がマイク穴に溜まるはことなく、マイク穴の下部に設けられた水抜溝40から下方に流れやすくなる。また、超音波溶着により接着され貼り合わされたケース10と段30aを有するカメラカバーとの間で狭い水抜空隙51を形成し、この貼り合わせにより溝50を形成することにより、形成された溝には、接着時に発生するケースの溶けた樹脂が入り込むことから、狭い水抜空隙を形成する段を埋めるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はドアホン子機の水抜き構造に係り、特に、通話を行うために使用されるマイク周辺の防水に配慮したドアホン子機の水抜き構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種のドアホン子機の水抜き構造として、マイク穴の下部にマイク穴から雨水を下方に流すための水抜溝を設けるとともに、マイク穴の側壁から雨水に表面張力が働いてマイク穴に水滴が入るのを防止するためのリブをマイク穴に突設させたインターホン子機ケースの水抜き構造(以下、従来例の水抜き構造という。)が提案されている。
【0003】
従来例の水抜き構造によれば、マイク穴には雨水が溜まらず水抜溝から下方に流れることにより、雨水の表面張力によってマイク穴を塞ぐことはなく、ゆえに、マイクの受話音量が小さくなることを防止できる(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−177616公報(第2−3頁)
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例の水抜き構造では、マイク穴の下部に設けられた水抜溝の表面張力を上回るほどの自重を有する水滴からなる雨水には多大な効果がある。一方、マイク穴が(丁度)埋まるぐらいの小さな水滴からなる雨水や空気の入った水滴からなる雨水等の自重が小さい水滴からなる雨水に対しての効果は低く、これらの雨水が水抜溝を塞くことになりマイクの受話音量が小さくなることから、呼び出しがあった来訪者からの音声が非常に小さく聴き取り難くなり良好な通話を行うことができない難点があった。
【0005】
本発明は、上述の難点を解消するためになされたもので、水滴の自重の大きさにかかわらず雨水によってマイク穴が塞がることを防止させ、マイクの受話音量を十分に確保して良好な通話を行うことができるドアホン子機の水抜き構造を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明のドアホン子機の水抜き構造は、来訪者の操作により呼び出しをかけるための呼出ボタン、来訪者を撮像するためのカメラ、通話を行うためのマイクおよびスピーカを収納するケースからなり、ケースに、カメラを被蓋するためのカメラカバーと、マイクへ空間的に繋がるマイク穴とを備えている。マイク穴の下部に、マイク穴から入る雨水を下方に流すための水抜溝をカメラカバーに隣接して配置したものである。
【0007】
このようなドアホン子機の水抜き構造によれば、呼出ボタン、カメラ、マイクおよびスピーカが収納されるケースには、マイクへ空間的に繋がるマイク穴が穿設されており、さらに、マイク穴の下部には、カメラを被蓋するためのカメラカバーに隣接して水抜溝が配置されていることにより、マイク穴から入る雨水を水抜溝から下方に流すことができる。
【0008】
また、本発明のドアホン子機の水抜き構造において、マイク穴は、ケースとカメラカバーとの貼り合わせによってできる狭い水抜空隙での雨水の毛細管現象によりマイク穴から雨水を抜くようにカメラカバーの外側壁をマイク穴の内側壁として用いて形成したものである。
【0009】
このようなドアホン子機の水抜き構造によれば、カメラカバーの外側壁をマイク穴の内側壁として用いて形成することにより、ケースとカメラカバーとの貼り合わせによりできる狭い水抜空隙にて発生する毛細管現象によってマイク穴から雨水を抜くことができる。
【0010】
また、本発明のドアホン子機の水抜き構造は、カメラカバーの外周部に、ケースとの間で狭い水抜空隙を形成するための段を設けるものである。
【0011】
このようなドアホン子機の水抜き構造によれば、カメラカバーの外周部に段を設けることにより、貼り合わされたケースとカメラカバーとの間で狭い水抜空隙が形成され、この狭い水抜空隙にて発生する毛細管現象によってマイク穴から雨水を抜くことができる。
【0012】
また、本発明のドアホン子機の水抜き構造は、マイク穴における内側壁と外側壁との雨水の表面張力のバランスを崩して、雨水がマイク穴に溜まることがなく下方に流れやすくなるようにケースとカメラカバーとを貼り合わせて狭い水抜空隙を設けるとともにマイク穴の内側壁を食い切り構造により成形したものである。
【0013】
このようなドアホン子機の水抜き構造によれば、貼り合わされたケースとカメラカバーとの間で狭い水抜空隙が形成されるとともに、マイク穴の内側壁を食い切り構造で成形することにより、マイク穴における内側壁と外側壁との雨水の表面張力のバランスが崩される。ゆえに、雨水がマイク穴に溜まることはなく、水抜溝から下方に流れやすくなる。
【0014】
また、本発明のドアホン子機の水抜き構造は、ケースとカメラカバーとの貼り合わせを超音波溶着にて接着する際に発生するケースの溶けた樹脂が狭い水抜空隙を形成する段を埋めるのを防止するようにケースに溶けた樹脂が入り込む溝を設けたものである。
【0015】
このようなドアホン子機の水抜き構造によれば、超音波溶着により接着され貼り合わされたケースとカメラカバーとの間に溝を設けることにより、接着時に発生するケースの溶けた樹脂が狭い水抜空隙を形成する段を埋めるのを防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のドアホン子機の水抜き構造を適用した好ましい形態の実施例について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例による水抜き構造を有するドアホン子機1を示す斜視図である。
【0018】
図1の斜視図に示すドアホン子機1は、通常、玄関先に設置されている。このドアホン子機1のケース10の筐体内には、来訪者が住戸内の居住者に対して呼び出しをかけるために操作する呼出ボタン20と、呼出操作を行った来訪者を含む玄関先近傍の映像を撮像するためのカメラ21と、来訪者が呼出相手先の居住者との間で通話を行うためのマイク22およびスピーカ23とが収納されている。
【0019】
図1の斜視図に示すドアホン子機1において、ケース10の筐体面には、撮像面が露出されたカメラ21を被蓋するためのカメラカバー、ここでは、円形状のカメラカバー30が超音波溶着により接着され貼り合わされているとともに、マイク22へ空間的に繋がるマイク穴31、スピーカ23へ空間的に繋がるスピーカ穴32がそれぞれ穿設されている。また、ドアホン子機1が設置状態において、マイク穴31の下部には、マイク穴31から入る雨水を下方に流すための水抜溝40がカメラカバー30に隣接するように配置されている。
【0020】
図2(a)は、本発明の実施例によるドアホン子機の水抜き構造を示すドアホン子機1の部分拡大図であり、図2(b)は、ドアホン子機1をA−A面で切断した場合の断面説明図である。
【0021】
図2(b)の断面説明図に示すように、超音波溶着による接着で貼り合わされるケース10とカメラカバー30との間には、接着時に発生するケース10の溶けた樹脂を入り込ませるための溝50が設けられている。
【0022】
また、図2(b)の断面説明図に示すように、カメラカバー30の外周壁は、ケース10とカメラカバー30の外周部(の一部)に設けられた段30aとの貼り合わせにより形成される狭い水抜空隙51にて発生する雨水の毛細管現象に起因して、マイク穴31から図1R>1の斜視図および図2(a)の部分拡大図に示す水抜溝40を介して雨水を抜くためのマイク穴31の内側壁として用いられる。
【0023】
さらに、図2(b)の断面説明図に示すように、マイク穴31は、内壁面を食い切り構造で成形、すなわち、食い切り構造における一方のケース10aの突起部と他方のケース10bの突起部とに切り分け、中間部で角度が合わされるように成形されている。
【0024】
このような構造の本発明の実施例によるドアホン子機の水抜き構造において、以下、具体的な作用について説明する。
【0025】
図1の斜視図に示すドアホン子機1のケース10の筐体内に収納されているマイク22へ空間的に繋がるように、ケース10の筐体面に穿設されたマイク穴31は外部に対して開放状態であるため、例えば、雨天時における雨水の粒(雨粒)がマイク穴31から筐体内に入ると、図2(b)の断面図に示すように、マイク穴31における内側壁31a、外側壁31bで受ける表面張力Xにより、マイク穴31には水滴2が溜まり始める。
【0026】
図2(b)の断面説明図に示すように、食い切り構造における一方のケース10aに対して超音波溶着にてカメラカバー30を接着させ貼り合わせるにあたり溶け出した一方のケース10aの樹脂は溝50に溜まることから、カメラカバー30の外周面(の一部)に設けられた段30aの形状は保持される。ゆえに、狭い水抜空隙51が溶け出した樹脂により塞がることはなく、この狭い水抜空隙51にて雨水の毛細管現象が発生することから、マイク穴31における内側壁31a、外側壁31bで受ける表面張力Xのバランスが崩され、水滴2が大きくなってマイク穴31を塞ぐ前に当該水滴の自重により雨水がマイク穴31に溜まることはなく、マイク穴31の下方に設けられた水抜溝40へと雨水が流れやすくなる。
【0027】
ここで、マイク穴31は、図2(b)の断面説明図に示すように、内側壁を食い切り構造で成形していることにより、マイク穴31における内側壁31a、外側壁31bで受ける表面張力Xのうち、水抜溝外周壁として用いられるカメラケース30の外周壁および食い切り構造における他方のケース10bで受ける表面張力と食い切り構造における一方のケース10aおよび他方のケース10bで受ける表面張力のように、マイク穴31における内側壁31aが異なる壁面であり表面張力Xのバランスが崩れることから、水滴2が大きくなってマイク穴31を塞ぐ前に当該水滴の自重により雨水がマイク穴31に溜まることはなく、マイク穴31の下方に設けられた水抜溝40へと雨水が流れやすくなる。
【0028】
上述のように、水滴2の自重の大きさにかかわらず雨水によりマイク穴31が塞がることは防止され、マイク22の受話音量を十分に確保して良好な通話を行うことができる。
【0029】
なお、図1の斜視図に示すカメラカバー30は円形状で形成されることにより、片側へ寄せたカメラカバー30、例えば、右方向へ寄せたカメラカバー30をを超音波溶着にてケース10に接着して貼り合わせた場合でも、当該貼り合わせは点接触であり、図2(b)の断面説明図に示す(縦方向の)狭い水抜空隙51が点接触された部分以外は塞がることはなく、塞がった部分以外の狭い水抜空隙51にて雨水の毛細管現象が発生することから、マイク穴31における内側壁31a、外側壁31bで受ける表面張力Xのバランスが崩され、水滴2が大きくなってマイク穴31を塞ぐ前に当該水滴の自重により雨水がマイク穴31に溜まることはなく、マイク穴31の下方に設けられた水抜溝40へと雨水が流れやすくなる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のドアホン子機の水抜き構造によれば、マイク穴の内側壁が食い切り構造で成形されるとともに、カメラカバーの外周壁がマイク穴の内側壁として用いるように形成されることにより、マイク穴における内側壁と外側壁との雨水の表面張力のバランスが崩される。ゆえに、雨水がマイク穴に溜まることはなく、マイク穴の下部に設けられた水抜溝から下方に流れやすくなることから、水滴の自重の大きさにかかわらず雨水によってマイク穴が塞がることは防止され、マイクの受話音量を十分に確保して良好な通話を行うことができる。
【0031】
また、超音波溶着により接着され貼り合わされたケースと段を有するカメラカバーとの間で狭い水抜空隙が形成されるとともに、この貼り合わせにより溝が形成され、形成された溝には、接着時に発生するケースの溶けた樹脂が入り込むことにより、狭い水抜空隙を形成する段を埋めるのを防止できる。
【0032】
さらに、狭い水抜空隙にて雨水の毛細管現象が発生することにより、マイク穴における内側壁と外側壁との雨水の表面張力のバランスが崩される。ゆえに、雨水がマイク穴に溜まることはなく、マイク穴の下部に設けられた水抜溝から下方に流れやすくなることから、水滴の自重の大きさにかかわらず雨水によってマイク穴が塞がることは防止され、マイクの受話音量を十分に確保して良好な通話を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例による水抜き構造を有するドアホン子機を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施例によるドアホン子機の水抜き構造を示す部分拡大である。図2(b)は、ドアホン子機をA−A面で切断した場合の断面説明図である。
【符号の説明】
10・・・・・ケース
20・・・・・呼出ボタン
21・・・・・カメラ
22・・・・・マイク
23・・・・・スピーカ
30・・・・・カメラカバー
30a・・・・・段
31・・・・・マイク穴
31a・・・・・マイク穴における内側壁
31b・・・・・マイク穴における外側壁
40・・・・・水抜溝
50・・・・・溝
51・・・・・狭い水抜空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者の操作により呼び出しをかけるための呼出ボタン(20)、前記来訪者を撮像するためのカメラ(21)、通話を行うためのマイク(22)およびスピーカ(23)を収納するケース(10)からなり、
前記ケースに、前記カメラを被蓋するためのカメラカバー(30)と、前記マイクへ空間的に繋がるマイク穴(31)とを備え、
前記マイク穴の下部に、前記マイク穴から入る雨水を下方に流すための水抜溝(40)を前記カメラカバーに隣接して配置したことを特徴とするドアホン子機の水抜き構造。
【請求項2】
前記マイク穴は、前記ケースと前記カメラカバーとの貼り合わせによってできる狭い水抜空隙(51)での前記雨水の毛細管現象により前記マイク穴から前記雨水を抜くように前記カメラカバーの外側壁を前記マイク穴の内側壁(31a)として用いて形成したものであることを特徴とする請求項1記載のドアホン子機の水抜き構造。
【請求項3】
前記カメラカバーの外周部に、前記ケースとの間で前記狭い水抜空隙を形成するための段(30a)を設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載のドアホン子機の水抜き構造。
【請求項4】
前記マイク穴における前記内側壁と外側壁(31b)との前記雨水の表面張力のバランスを崩して、前記雨水が前記マイク穴に溜まることがなく下方に流れやすくなるように前記ケースと前記カメラカバーとを貼り合わせて前記狭い水抜空隙を設けるとともに前記マイク穴の前記内側壁を食い切り構造により成形したことを特徴とする請求項2または請求項3記載のドアホン子機の水抜き構造。
【請求項5】
前記ケースと前記カメラカバーとの貼り合わせを超音波溶着にて接着する際に発生する前記ケースの溶けた樹脂が前記狭い水抜空隙を形成する前記段を埋めるのを防止するように前記ケースに溶けた樹脂が入り込む溝(50)を設けたことを特徴とする請求項2乃至請求項4何れか1項記載のドアホン子機の水抜き構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−129113(P2004−129113A)
【公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−293389(P2002−293389)
【出願日】平成14年10月7日(2002.10.7)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】