説明

ドアラッチ装置

【課題】 車両の衝突時等において大きな外力が加えられたときにも、ドアの全閉状態の維持をより確実に解除することができるドアラッチ装置を提供すること。
【解決手段】 ドアラッチ機構2を車両本体1側に備え、第2のラッチ解除機構6の操作部6Aをフロアトンネル11の位置に配備し、操作部6Aに加えられる操作力をケーブル6Bを介してドアラッチ機構2に伝達することにより、ドア3の全閉状態の維持を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの駆動力のみならず、操作部に加えられる操作力によっても、ドアの全閉状態の維持を解除することができるドアラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のドアラッチ装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
そのドアラッチ装置は、車両本体側のストライカと対向するドア側の位置にドアラッチ手段を備え、そのドアラッチ手段によってドアを全閉状態に維持する構成となっている。ドアラッチ手段によるドアの全閉状態の維持は、電動式のラッチ解除手段および機械式のラッチ解除手段によって解除可能である。前者の電動式のラッチ解除手段は、ドアラッチ手段によるドアの全閉状態の維持を電動アクチュエータの駆動力によって解除可能であり、後者の機械式のラッチ解除手段は、ドアラッチ手段によるドアの全閉状態の維持を操作部に加えられる操作力によって解除可能である。その機械式のラッチ解除手段における操作部はドアにおける車室内側の面に配備されており、その操作部に加えられる操作力は、ドアの内部を通るワイヤを介してドアラッチ手段に伝達される。そのワイヤは、ドアの内部に備えられたガイドローラによってガイドされている。
【0004】
このようなドアラッチ装置においては、電動式のラッチ解除手段が電力不足(バッテリーの劣化)などによって作動不良となったときに、機械式のラッチ解除手段の操作部を操作することによって、ドアラッチ手段によるドアの全閉状態の維持を解除することができる。
【0005】
【特許文献1】実開昭63−146066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来のドアラッチ装置においては、ドア内部のガイドローラにガイドされるワイヤによって、ドアラッチ手段と機械式のラッチ解除手段の操作部とが連結されているため、車両の衝突時等において大きな外力が加わったときに、ワイヤがガイドローラから外れるおそれがある。その場合には、機械式の解除手段を機能させることができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、車両の衝突時等において大きな外力が車両に加えられたときにも、ドアの全閉状態の維持をより確実に解除することができるドアラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明のドアラッチ装置は、車両本体に備わるドアを全閉状態に維持可能なドアラッチ手段と、前記ドアラッチ手段による前記ドアの全閉状態の維持をアクチュエータの駆動力によって解除可能な第1のラッチ解除手段と、前記ドアラッチ手段による前記ドアの全閉状態の維持を操作部に加えられる操作力によって解除可能な第2のラッチ解除手段と、を備えるドアラッチ装置において、前記第2のラッチ解除手段の操作部は、車両本体のフロアパネルの中央部にて車両の前後方向に延在するフロアトンネルの位置に配備され、かつ操作力の伝達機構を介して前記ドアラッチ手段に連結されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明のドアラッチ装置は、請求項1において、前記伝達機構は、前記フロアトンネル、および該フロアトンネルと交差する方向に延在するフロアクロスメンバに沿って配備されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明のドアラッチ装置は、請求項1または2において、前記伝達機構は、前記フロアパネルの側方のサイドシル部と前記フロアトンネルとの略中間の位置を車両の前後方向に通って配備されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明のドアラッチ装置は、請求項1から3のいずれかにおいて、前記ドアラッチ手段は、前記車両本体側に備えられることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の本発明のドアラッチ装置は、請求項1から4のいずれかにおいて、前記ドアラッチ手段は、前記ドア側のストライカと噛合可能なラッチと、前記ラッチを前記ストライカと噛合する位置に拘束可能なポールと、を備え、前記第1のラッチ解除手段のアクチュエータは、前記ポールを前記ラッチの拘束を解除する位置に移動可能な電動アクチュエータを備え、前記第2のラッチ解除手段の操作部は、前記伝達機構を介して、前記ポールを前記ラッチの拘束を解除する位置に移動操作可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクチュエータの駆動力によってドアの全閉状態の維持を解除可能な第1のラッチ解除手段と共に、操作部に加えられる操作力によってドアの全閉状態の維持を解除可能な第2のラッチ解除手段を備えるドアラッチ装置において、第2のラッチ解除手段の操作部をフロアパネルにおけるフロアトンネルの位置に配備し、その操作部とドアラッチ手段とを操作力の伝達機構によって連結するため、車両の衝突時等において大きな外力が加えられたときにも、第2のラッチ解除手段の機能を維持することができる。すなわち、フロアトンネルは、特に車両の前後方向の衝突時における変形の程度が小さいため、このような衝突によって大きな外力が加えられたときに、第2のラッチ解除手段の操作部とドアラッチ手段との相対的な位置関係の変化を小さく抑えることができ、この結果、それらの操作部とドアラッチ手段との間を連結する伝達手段の破損等を防止し、第2のラッチ解除手段の機能を維持することができると共に、ドアラッチ手段の誤動作を防止することもできる。
【0014】
また、伝達機構をフロアトンネルおよびフロアクロスメンバに沿って配備することにより、特に車両の側面衝突時における変形の程度が小さいフロアクロスメンバによって、伝達手段の破損等をより確実に防止することができる。
【0015】
また、フロアパネルのサイドシル部とフロアトンネルとの略中間の位置を通るように、伝達手段を配備することにより、車両の側面衝突時にサイドシル部が変形したとしても、それが伝達手段に及ぼす影響を小さく抑えて、伝達手段の破損等をより確実に防止することができる。
【0016】
また、ドアラッチ手段を第2のラッチ解除手段の操作部と同様に車両本体側に備えることにより、それらの間を連結する伝達手段の構成を簡素化することができる。例えば、配索性のよいケーブルなどを用いて伝達手段を簡素に構成することができる。
【0017】
また、ドアラッチ手段をラッチとポールを備えた一般的な構成として、そのポールを第1および第2のラッチ解除手段によって移動させることにより、構成の更なる簡素化を図りつつ、ドアの全閉状態の維持を確実に解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1から図4は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。
【0020】
図1は、本発明のドアラッチ装置を備えた車両の概略側面図、図2は、その車両の概略平面図である。これらの図において、車両本体1にはドアラッチ機構(ドアラッチ手段)2が備えられ、ドア3にはストライカ4が備えられている。ドアラッチ機構2は、ドア3を全閉状態に維持可能な一般的な構成となっている。例えば、このドアラッチ機構2は、ストライカ4と噛合可能なラッチ(図示略)と、そのラッチをストライカ4と噛合する位置に拘束可能なポール(図示略)と、を備えており、ストライカ4と噛合するラッチ部材の位置をポールが拘束することによって、ドア3を全閉状態に維持する。
【0021】
ドアラッチ機構2には第1のラッチ解除機構(第1のラッチ解除手段)5が組み込まれており、このラッチ解除機構5は、ドアラッチ機構2によるドア3の全閉状態の維持をアクチュエータ(例えば、電動アクチュエータ)の駆動力によって解除可能である。このラッチ解除機構5は、ドア3の車室内側等に配置される不図示の操作スイッチを用いてアクチュエータが駆動制御されることにより、ドアラッチ機構2によるドア3の全閉状態の維持を解除させる一般的な構成となっている。例えば、このラッチ解除機構5は、ドアラッチ機構2に備わるポールをアクチュエータの駆動力によって移動可能な構成となっており、ポールによってラッチがストライカ4と噛合する位置に拘束されているとき、つまりドア3が全閉状態に維持されているときに、ポールを移動させてラッチの拘束を解除することによって、ドア3の全閉状態の維持を解除することができる。ラッチ解除機構5におけるアクチュエータとしては、電動式、油圧式、空圧式等の種々の駆動方式のものを採用することができる。いずれの駆動方式の場合にも、不図示の車載バッテリーからの供給電力が直接または間接的に用いられることになる。
【0022】
ドアラッチ機構2と第1のラッチ解除機構5のいずれも車両本体1側つまり固定側に備えているため、そのラッチ解除機構5をドア3側つまり可動側に備えた場合に比して、ラッチ解除機構5におけるアクチュエータの電源用および制御用のコードが配線しやすくなり、操作スイッチの配備位置の自由度も高まる。
【0023】
また、ドアラッチ機構2には第2のラッチ解除機構(第2のラッチ解除手段)6が連結されている。
【0024】
このラッチ解除機構6は、車室内にて操作可能なエマージェンシーハンドル(操作部)6Aと、そのハンドル6Aとドアラッチ機構2とを連結するケーブル(伝達手段)6Bと、を含む。ハンドル6Aは、フロアパネル10のフロアトンネル11の位置に配備されている。ラッチ解除機構6は、ハンドル6Aに加えられる操作力によってケーブル6Bが長さ方向に引き操作されたときに、ドアラッチ機構2によるドア3の全閉状態の維持を解除させる構成となっている。例えば、ドアラッチ機構2に備わるポールにケーブル6Bが連結されており、ポールによってラッチがストライカ4と噛合する位置に拘束されているとき、つまりドア3が全閉状態に維持されているときに、ケーブル6Bの引き操作力によって、ポールを移動させてラッチの拘束を解除する構成となっている。
【0025】
フロアトンネル11は、図3のように、車両本体1を構成するフロアパネル10に形成されて車両の前後方向に延在する。本例のハンドル6Aは、このフロアトンネル11の上方位置に配備されており、図4のように、水平方向の軸線Oを中心として上方に回動操作されることにより、ケーブル6Bを引き操作する構成となっている。図4中のCはハンドル6Aのケースである。ケーブル6Bは、図3中の点線のようにフロアトンネル11に沿って配索されている。本例の場合、ケーブル6Bはフロアトンネル11の内部を通るように配索されている。
【0026】
次に、作用について説明する。
【0027】
通常は、操作スイッチによってラッチ解除機構5のアクチュエータを作動させることによって、ドアラッチ機構2によるドア3の全閉状態の維持を解除することができる。一方、そのラッチ解除機構5が電力不足(バッテリーの劣化)などによって作動不良となったときには、ラッチ解除機構6のハンドル6Aを操作することによって、ドアラッチ機構2によるドア3の全閉状態の維持を解除することができる。
【0028】
すなわち、ハンドル6Aが図3のように構成されている場合には、それを車室内において同図中の上方向に回動操作することによって、ドア3の全閉状態の維持を解除することができる。また、ハンドル6Aが位置するフロアトンネル11は、特に車両の前後方向の衝突時における変形の程度が小さい。そのため、車両の前後方向の衝突時等において、ハンドル6Aの破損等を防止することができると共に、ハンドル6Aとドアラッチ機構2との相対的な位置関係の変化を小さく抑えて、それらの間を連結するケーブル6Bの破損等を防止することができる。この結果、ラッチ解除機構の機能を維持することができると共に、ドアラッチ機構2の誤作動を防止することもできる。
【0029】
なおハンドル6Aは、フロアトンネル11の上面のみにならず、その側面や内面に配備してもよく、またフロアトンネル11に直接、またはフロアトンネル11上に配置されるコンソールボックス(図示略)などを介して間接的に配備してもよい。要は、ハンドル6Aが直接または間接的にフロアトンネル11に支持されるように、そのハンドル6Aをフロアトンネル11の位置に配備できればよい。また、車室外からハンドル6Aの存在が確認できないように、そのハンドル6Aの配備位置をコンソールボックス内等に設定することにより、防盗性を確保することもできる。またケーブル6Bは、フロアトンネル11の内部を必ずしも通る必要はなく、そのフロアトンネル11に沿って配索すればよい。例えば、フロアトンネル11の上面または側面に沿ってケーブル6Bを配索してもよい。つまり、フロアトンネル11の外面または内面と直接または間接的に重合するように、ケーブル6Bが配備できればよい。
【0030】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。本例におけるケーブル6Bは、フロアトンネル11およびフロアクロスメンバ12に沿って配索されている。より具体的には、図3中の2点鎖線のように、フロアトンネル11とフロアクロスメンバ12の表面に沿ってケーブル6Bが配索されている。
【0031】
フロアクロスメンバ12は、車両の側面衝突時にフロアパネル10の側方のサイドシル部13(図3参照)に変形が生じたとしても、その変形の程度は小さい。そのため、車両の側面衝突時に、ハンドル6Aとドアラッチ機構2との相対的な位置関係の変化をさらに小さく抑えて、それらの間を連結するケーブル6Bの破損等をより確実に防止することができる。この結果、ラッチ解除機構の機能をより確実に維持することができると共に、ドアラッチ機構2の誤作動をより確実に防止することができる。なおケーブル6Bは、フロアクロスメンバ12に沿って配索すればよい。つまり、フロアクロスメンバ12の外面または内面と直接または間接的に重合するようにケーブル6Bが配備できればよい。
【0032】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態を説明するための図である。図6においてLは、フロアパネル10のサイドシル部13(図3参照)とフロアトンネル11との略中間の位置を通って、車両の前後方向に延在する仮想線である。本例におけるケーブル6Bは、サイドシル部13の位置を避けるようにして、その仮想線Lに沿って配索されている。より具体的には、フロアパネル10の内面上または外面上において、仮想線Lに沿うようにケーブル6Bが配索されている。
【0033】
このように、ケーブル6Bをサイドシル部13から離れた仮想線Lに沿って配索したため、車両の側面衝突時にサイドシル部13に変形が生じたとしても、ケーブル6Bに対する影響は小さい。したがって、車両の側面衝突時におけるケーブル6Bの破損等を防止することができる。この結果、上述した実施形態と同様に、ラッチ解除機構6の機能をより確実に維持することができると共に、ドアラッチ機構2の誤作動をより確実に防止することができる。なおケーブル6Bは、仮想線Lに沿って配索すればよい。つまり、フロアトンネル11とサイドシル部13との略中間の位置を車両の前後方向に通るように、ケーブル6Bが配備できればよい。
【0034】
(他の実施形態)
ラッチ解除機構6における伝達手段はケーブル6Bを用いた構成のみに特定されず、リンクとの組み合わせ等任意である。また、ハンドル6Aの構成も任意であり、要は、ドア3の全閉状態の維持を解除するための操作力を加えることができればよい。さらに、ドアラッチ機構2はドア3内に配置してもよい。なお上述した実施形態のように、ドアラッチ機構2をハンドル6Aと同様に車両本体1側に備えた場合には、それらの間を連結する伝達手段の構成を、配索性のよいケーブル6Bなどを用いて簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態のドアラッチ装置を備えた車両の概略側面図である。
【図2】図1の車両の概略平面図である。
【図3】図1の車両におけるケーブルの配索形態を説明するための要部の斜視図である。
【図4】図3におけるエマージェンシーハンドルの構成例を説明するための平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のドアラッチ装置を備えた車両の概略平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のドアラッチ装置を備えた車両の概略平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両本体
2 ドアラッチ機構(ドアラッチ手段)
3 ドア
4 ストライカ
5 第1のラッチ解除機構(第1のラッチ解除手段)
6 第2のラッチ解除機構(第2のラッチ解除手段)
6A エマージェンシーハンドル(操作部)
6B ケーブル(伝達手段)
10 フロアパネル
11 フロアトンネル
12 フロアクロスメンバ
13 サイドシル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に備わるドアを全閉状態に維持可能なドアラッチ手段と、前記ドアラッチ手段による前記ドアの全閉状態の維持をアクチュエータの駆動力によって解除可能な第1のラッチ解除手段と、前記ドアラッチ手段による前記ドアの全閉状態の維持を操作部に加えられる操作力によって解除可能な第2のラッチ解除手段と、を備えるドアラッチ装置において、
前記第2のラッチ解除手段の操作部は、車両本体のフロアパネルの中央部にて車両の前後方向に延在するフロアトンネルの位置に配備され、かつ操作力の伝達機構を介して前記ドアラッチ手段に連結される
ことを特徴とするドアラッチ装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記フロアトンネルおよび該フロアトンネルと交差する方向に延在するフロアクロスメンバに沿って配備されることを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記伝達機構は、前記フロアパネルの側方のサイドシル部と前記フロアトンネルとの略中間の位置を車両の前後方向に通って配備されることを特徴とする請求項1または2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記ドアラッチ手段は、前記車両本体側に備えられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記ドアラッチ手段は、前記ドア側のストライカと噛合可能なラッチと、前記ラッチを前記ストライカと噛合する位置に拘束可能なポールと、を備え、
前記第1のラッチ解除手段のアクチュエータは、前記ポールを前記ラッチの拘束を解除する位置に移動可能な電動アクチュエータを備え、
前記第2のラッチ解除手段の操作部は、前記伝達機構を介して、前記ポールを前記ラッチの拘束を解除する位置に移動操作可能である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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