説明

ドアレール清掃装置

【課題】エレベータなどのドアレールの清掃を長期間安定して行い、メンテナンスの手間を削減する。
【解決手段】ドアレール1に係合して往復移動する移動体2に対して回動可能に支持され、回動角度によって清掃位置及び退避位置をとる保持部材5と、この保持部材に固定され、上記清掃位置では上記ドアレールに当接され、上記退避位置では上記ドアレールから離れる清掃体6と、上記保持部材が上記退避位置に回動されたときに該退避位置を保持する係止手段と、上記移動体が移動方向一端部に到達する際に上記保持部材に当接して該保持部材を退避位置に回動させる係合子甲7と、移動方向他端部に到達する際に上記保持部材に当接して上記係止手段の係合を解除すると共に上記保持部材を清掃位置に回動させる係合子乙8を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばエレベータなどのドアにおいて、ドアレールへの塵埃の蓄積を防ぐために好ましく用いることができるドアレール清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータなどのドアは出入口上部に設けられたドアレールにローラーを介して吊り下げられた構造となっている。ドアレールに塵埃が堆積すると、ドアの開閉に不具合が生じ故障の原因となる。このため、従来からドア開閉のときに自動的にドアレール摺動面を清掃・給油するドアレール清掃装置が提案されている。
例えば、回動自在の清掃ブラシをドアが閉じる直前で回動させて塵埃を跳ね飛ばし、ハンガーローラの閉端側に塵埃が堆積するのを防止するようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、清掃部材をドア下端の案内溝に対して出没自在に構成し、摺動音を減らし清掃部材の寿命を延ばしたエレベータドアの敷居案内溝清掃装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−97788号公報(第1頁、図1〜図3)
【特許文献2】実開平2−112681号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような従来技術においては、ドアの閉端側への塵埃の堆積を防止できるものの、開閉の都度、清掃ブラシがドアレールの上、側面に接触しながら移動するので清掃体の磨耗が早く、メンテナンスの手間がかかるという課題があった。また、特許文献2の従来技術は敷居案内溝の清掃に関するもので、清掃部材の摩耗を減らせるものの、装置構成が複雑で電気的な制御が必要であるため、装置自体のメンテナンスに手間がかかるという課題があった。また、レール両端に塵埃が蓄積するという課題もあった。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、構成が簡単でエレベータなどのドアレールの清掃を長期間安定して行うことができ、メンテナンスの手間を削減したドアレール清掃装置を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るドアレール清掃装置は、ドアレールに係合して往復移動する移動体に対して回動可能に支持され、回動角度によって清掃位置及び退避位置をとる保持部材と、この保持部材に固定され、上記清掃位置では上記ドアレールに当接され、上記退避位置では上記ドアレールから離れる清掃体と、上記保持部材が上記退避位置に回動されたときに該退避位置を保持する係止手段と、上記移動体が移動方向一端部に到達する際に上記保持部材に当接して該保持部材を退避位置に回動させる係合子甲と、移動方向他端部に到達する際に上記保持部材に当接して上記係止手段の係合を解除すると共に上記保持部材を清掃位置に回動させる係合子乙を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気的な制御が不要な簡単な構成で、ドア開閉の一方向のみの清掃が可能となる。これにより、従来の往復方向共清掃しているものと比較して清掃体の磨耗が減るため、長期間清掃機能を維持することができ、メンテナンスの手間を削減することができる。また、従来は往復動作でレールの両端に塵埃が蓄積していたが、本発明では片方のみに蓄積するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1によるドアレール清掃装置の要部を概念的に示す構成図である。
【図2】図1に示された扉が移動方向一端部に到達したときに保持部材が退避位置に回動された状態を示す図である。
【図3】図2に示された保持部材が退避位置に回動した状態で扉が他端部方向に移動するときの状態を示す図である。
【図4】図3に示された扉が移動方向他端部に到達したときに保持部材が清掃状態へ回動された状態を示す図である。
【図5】図4に示された状態で扉が移動方向一端部側に移動するときに清掃が行われる状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2によるドアレール清掃装置の要部を示す構成図であり、(a)は第1の保持部材、(b)は第2の保持部材を示す。
【図7】本発明の実施の形態2によるドアレール清掃装置を備えたエレベータのドア装置の要部構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】本発明の実施の形態6によるドアレール清掃装置を備えたエレベータのドア装置の要部構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態1によるドアレール清掃装置をエレベータのドア装置に適用した場合について説明する。なお、この実施の形態1は戸開方向にのみ清掃が行われるように構成した例である。また、各図を通じて同一符号は同一または相当部分を示している。
【0010】
図において、ドアレール清掃装置は、ドアレール1に係合して往復移動する移動体としてのハンガープレート2に固定された固定金具3と、この固定金具3に連結軸部4によって回動可能に支持され回動角度によって清掃位置(図1など)及び退避位置(図2など)の姿勢をとる保持部材5と、この保持部材5に固定され、清掃位置では上記ドアレール1に当接され、退避位置ではドアレール1から離れる清掃体6と、ハンガープレート2が移動方向一端部としての戸開方向(左方向)の端部に到達する際に保持部材5に当接して該保持部材5を退避位置に回動させる係合子甲7と、移動方向他端部としての戸閉方向(右方向)端部に到達する際に保持部材5に当接して保持部材5を清掃位置に回動させる係合子乙8と、連結軸部4に組込まれ保持部材5が退避位置に回動されたときに該退避位置を保持するラッチ機構からなる係止手段(図示省略)からなっている。
【0011】
ドアレール1は、図示省略しているエレベータの乗降口の上部に固定されている。ドア9は、ハンガープレート2に固定され、ハンガープレート2はドアレール1上を転動する複数のハンガーローラ10に軸支されている。なお、エレベータの場合、ドアは建物側の乗場とかごの出入口の双方に設けられるが、この発明のドアレール清掃装置は何れのドアレールにも適用することができる。上記清掃体6は保持部材5に対して清掃体固定ネジ11によりネジ締結されており、容易に着脱可能である。
【0012】
なお、清掃体6の材質は特に限定されるものではなく、好ましく用いることができるものとして、例えばフェルト、ブラシ、スポンジ、ゴム材料などを挙げることができる。固定金具3はハンガープレート2に金具固定用ネジ12で締結固定されており、容易に着脱可能である。また、固定金具3の取付穴3aは、ハンガープレート2に対して上下方向に調整可能な長穴からなっており、取り付け高さを自在に調整できる。
【0013】
上記保持部材5は、この例では長方形の板状で、中央部に連結軸部4が設けられ、図の上部には断面L字状に一体形成された上記係合子甲7及び係合子乙8との係合部5aが設けられ、反対側の下部には同じく断面L字状に形成された清掃体6の取付部5bが設けられている。係合子甲7及び係合子乙8は、固定部であるハンガーケース13の所定部にそれぞれ固定ネジ14によって固定されている。係合子甲7及び係合子乙8はハンガーケース13との固定部分から何れも下向きに所定長伸びた位置から、保持部材5の係合部5aに対して対向する方向に突出され、その突出端が係合部5aに当接するように構成されている。なお、上記固定ネジ14による取付穴7a、8aは、移動体であるハンガープレート2の移動方向に調整可能な長穴からなっている。
【0014】
上記連結軸部4に組込まれたラッチ機構は、保持部材5が係合子甲7に当接して図2に示す退避位置に回動されたときに、その退避位置を保持し得るもので、かつ、反対側の係合子乙8に衝突したときにはそのラッチが容易に外れるように構成されている。なお、具体的には、ドア開閉時の振動や連結軸部4を中心とする質量のアンバランスによる回動方向のモーメントに抗するのに十分な力で係止されていれば良く、例えば公知のバネアクションを利用したものなどで差し支えない。また、図1、図4、及び図5に示す清掃位置において、図の左方向に移動したときに摩擦力で保持部材5が反時計回りに回動しないようにストッパ手段(図示省略)が設けられている。なお、該ストッパ手段は、例えば上記ラッチ機構と同様に構成されたものなどであってもよい。
【0015】
また、この実施の形態1においては、上記ハンガープレート2が移動方向一端部である戸開方向の端部(図1の左端部)に到達する際に、戸開端の直前で係合子甲7が保持部材5に当接し、その時点からハンガープレート2の戸開端への移動に連動して保持部材5が回動を開始し、戸開端では該保持部材5が図2に示す退避位置に達するように位置決めされる。一方、ハンガープレート2が移動方向他端部である戸閉方向(右方向)の端部に到達する際には、その直前で係合子乙8が保持部材5に当接し、戸閉端では連結軸部4に設けられた係止手段の係合を解除すると共に、保持部材5を図4に示す清掃位置への回動が終了するように位置決めされる。なお、清掃体6への給油機構、あるいはドア9の開閉機構や安全装置などは従来のものと同様であるので図示及び説明を省略する。
【0016】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。なお、ドア9はドアレール1に係合するハンガーローラ10を介してハンガープレート2が移動することにより、開閉動作を行う。
図1の位置からハンガープレート2が戸開方向(図の左方向)に移動すると、係合子甲7が保持部材5の係合部5aに当接した後、保持部材5が図2の矢印で示すように時計方向に回動して退避位置になり、清掃体6はドアレール1から離れる。連結軸部4に設けられたラッチ機構が保持部材5の回動を抑制することにより、保持部材5は係合子甲7から離れても回動した退避位置の角度を保持することができる。
【0017】
戸閉時には図3に示すように、退避位置の状態を保持してハンガープレート2が矢印で示す戸閉端部方向(右方向)に移動する。このとき、清掃体6はドアレール1から離れた状態となっているため清掃を行わない。そして、戸閉端に到達する直前で係合子乙8が保持部材5に当接し始め、ハンガープレート2の移動する力によって連結軸部4に設けられた係止手段の係合が解除されると共に、保持部材5を図4の矢印で示すように反時計方向に回動する。このとき、清掃体6は弾性変形しつつドアレール1に密着する。これにより、清掃に必要な面圧をかけることができる。
【0018】
その後、戸閉するときには図5に示すように、ドアが矢印方向に移動するときに、清掃体6がドアレール1と接触した状態で摺動することにより、ドアレール1の清掃が行なわれる。このとき、連結軸部4に設けられた図示省略しているストッパ手段が、ドアレール1と清掃体6の摩擦により、保持部材5が進行方向と逆方向に回動し、清掃体6がドアレール1から離れてしまうのを防止する。なお、上記係合子(甲、乙)7、8と保持部材5の係合部5aが当接したときに発生する音を小さくするために、一方の当接面をゴム等の消音部材で構成することは騒音防止の観点で好ましい。
【0019】
上記のように実施の形態1によれば、戸開閉動作の一方向(ここでは戸開方向)にのみ、ドアレール1の清掃が行なわれるようにすることが可能となる。戸開閉回数に対して、清掃体6の磨耗機会が半分になるため、清掃体6の磨耗を減少させ長期間清掃機能を維持できる利点がある。また、ドアレール1の片方向のみに清掃可能なことから、エレベータドアの構造上問題となる戸閉方向には塵埃をためず、戸開方向にのみ清掃するようにできる。エレベータの場合、閉方向に塵埃が溜まり全閉できなくなると、ドアの構造上、インターロックのラッチ部と掛け金に適切な間隙がなくなり、戸開不良や閉じ込め事故に繋がる虞があるが、戸開方向にのみ清掃機能が働くようにしたので、障害抑止効果がある。このため、戸開閉の不具合による異常発生を防止でき、保守の品質向上に効果がある。さらに構造が簡単で全て機械的な部材のみによって構成できるので、メンテナンスが容易であり、信頼性も高く安価にできる。
【0020】
実施の形態2.
次に、図6、図7を参照して本発明の実施の形態2によるドアレール清掃装置をエレベータのドア装置に適用した場合について説明する。なお、この実施の形態2はハンガープレート2の両端部に清掃装置を取り付けた場合を示している。図7において、保持部材である第1の保持部材5Aが、戸開端側(図の左側)に設けられた第1の清掃装置は、対応する係合子甲及び係合子乙が、ドアレール1の幅方向、即ち開閉方向に直交する方向の、図7(a)における下側に寄せて、第1の係合子甲7A及び第1の係合子乙8Aとして取り付けられている。なお、図7は戸開状態を示しており、図7(b)ではドア開口部15が見えている状態を示している。
【0021】
一方、保持部材である第2の保持部材5Bが、戸閉端側(図の右側)に設けられた第2の清掃装置は、対応する係合子甲及び係合子乙が、ドアレール1の幅方向の図7における上側に寄せて、第2の係合子甲7B及び第2の係合子乙8Bとして取り付けられている。ここで、第1の清掃装置に用いる第1の保持部材5Aの係合部5aには、図6(a)に示すように、第2の係合子甲7Bとの干渉を防ぐ切欠き部5cが設けられている。一方、第2の清掃装置に用いる第2の保持部材5Bの係合部5aは、図6(b)に示すように、第1の係合子乙8Aとの干渉を防ぐために幅Wが切欠き部5cの幅方向の寸法と同程度の小さな寸法に形成されている。
【0022】
上記のように構成された実施の形態2においては、ハンガープレート2の移動によって保持部材が移動する場合、第2の保持部材5Bが第1の係合子乙8Aの設置個所を通過する際には、第1の係合子乙8Aが図6(b)のA部を通過することで相互の干渉が防止され、第1の保持部材5Aが第2の係合子甲7Bの設置個所を通過する際には、第2の係合子甲7Bが図6(a)のB部を通過することで相互の干渉が防止される。従って、ハンガープレート2の両端に清掃装置を取り付けた場合でも清掃装置と係合子が互いに干渉しないようにすることができる。
【0023】
なお、ドア9が開いたときに、第1の保持部材5A、及び第2の保持部材5Bは、それぞれ、第1の係合子甲7A、及び第2の係合子甲7Bに当ることで、図7(b)の時計方向に回動し、連結軸部4のラッチ機構により、ドアレール1から離れた状態で固定される。この状態で戸閉動作するため、戸閉方向には清掃しない。一方、ドア9が閉まるときに、第1の保持部材5A、及び第2の保持部材5Bは、それぞれ、第1の係合子乙8A、及び第2の係合子乙8Bに当ることで、反時計方向に回動し、清掃体6がそれぞれドアレール1に接触する状態にセットされる。この状態で戸開動作することで、レール上の塵埃は戸開方向に押しやることができる。
【0024】
上記のように、実施の形態2によれば、戸開閉に連動し、戸開方向に動くときのみドアレール1の清掃・給油を行うことができる。また、ハンガープレート2の両端に清掃装置を取り付けたことで、ドアレール1の摺動部全域を清掃・給油することが可能となる。また、各清掃装置に対応する係合子とは接触するが、対応しない係合子には接触しないようにすることが可能となる。
【0025】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1及び実施の形態2では、戸開方向に移動するときのみ清掃が行われるようにしたが、この実施の形態3に係るドアレールの清掃装置は、ドアの構造の相違などによる要求に応じて、戸閉方向にのみ毎回清掃動作できるように構成したものである。この場合、連結軸部4に設けられた係止手段としてのラッチ機構、及びストッパ手段の設定を変更すると共に、係合子甲7及び係合子乙8の取り付け位置を変更する他は、上記実施の形態1、2と同様の構成とすることで容易に実施できる。なお、動作及び効果に関しては上記実施の形態1、2と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0026】
また、上記ドアレールの清掃装置は、戸開方向に清掃動作するものと、戸閉方向に清掃動作するものをそれぞれ用意しても良いが、1つの清掃装置で両方に使えるよう、退避位置と清掃位置を切り替えられるように構成しても良い。この場合、図示省略している係止手段としては、例えば図1の垂直方向を清掃位置(中心位置)とし、時計方向に所定角度回動した位置を戸開方向の退避位置、反時計方向に所定角度回動した位置を戸閉方向の退避位置としたものを用いる。
【0027】
なお、上記中心位置での保持機能を確実にしたい場合などでは、保持部材5の回動範囲を、取り付け位置によって、中心位置から時計方向に所定角度までの範囲と、中心位置から反時計方向に所定角度までの範囲の何れかに規制することができるストッパ手段(図示省略)を、例えば固定金具3に取り付けるようにしてもよい。上記のような構成により、戸開方向移動時に清掃する場合と、戸閉方向移動時に清掃する場合に切り替えることが可能となる。ドアの構造や環境に合わせて、適切な方向に清掃ができるように設定できるという利点がある。
【0028】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係るドアレールの清掃装置は、塵埃が少ないような環境で給油を主目的として清掃装置を設置する場合に好ましく用いられるものであり、実施の形態2の如く清掃装置をハンガープレート2の両端部に取り付け、進行方向の前側となる清掃体6がドアレール1に接触した状態とし、後ろ側となる清掃体6はドアレール1から離れた状態にラッチするように構成したものである(図示省略)。清掃装置を構成する部材は同様の構成で、連結軸部4のラッチ・ストッパ位置設定と係合子甲7及び係合子乙8の取り付け位置を変更することで容易に構成できる。戸開閉時にハンガーローラ10の進行方向が常に清掃、及び給油される。また、清掃体6の磨耗を減少させることができるという利点がある。
【0029】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係るドアレールの清掃装置は、清掃体6の清掃面を構成する素材として、清掃面を構成する繊維等の毛状体が一方向にのみ清掃機能を発揮する方向性を有するものを用い、清掃位置でドアレールに当接させときに、清掃面を構成する毛状体の方向が移動方向を向くように配設したものである。なお、その他の構成は上記実施の形態1〜4と同様である(図示省略)。なお、このような清掃体6の素材の類似例としては、例えばエチケットブラシ(登録商標)などを挙げることができる。上記のような特性を有する清掃体6を用いた実施の形態5においては、一方向清掃の機能を活かして、清掃能力を向上させることができる。また、メンテナンス時に清掃体6の汚れを除去することが容易になるという利点もある。
【0030】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係るドアレールの清掃装置について、図8を参照して説明する。図において、板材によって形成された固定金具3は、図8(a)の平面図に示すように上から見てクランク状に折曲形成されたL字状の角部Cを有している。そして、該角部Cの内側の2つの面3b、3cの内、一方の面3bを板状のハンガープレート2の端部の主面2aに係合させ、他方の面3cがハンガープレート2の主面2aに直交する端面2bに係合するように位置決めして、一方の面3b側の辺に設けられた長穴からなる取付穴3aに挿通された金具固定用ネジ12でハンガープレート2に締結固定されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0031】
上記のように構成された実施の形態6においては、固定金具3がハンガープレート2の端部に形成された直交する2つの面、即ち主面2aと端面2bに係合されているので、固定金具3にかかる力が分散され、固定金具3をハンガープレート2に対して1本の金具固定用ネジ12で固定することができる。このため、取り付け、取り外し時の作業数が削減され、部品の点数や加工数も削減することができるという効果が得られる。
【0032】
なお、上記実施の形態1〜5では、ラッチ機構を連結軸部4に設けたが、これに限定されるものではなく、固定金具3と保持部材5との間であれば他の位置に設けることもできる。また、保持部材5を支持する連結軸部4を、移動体としてのハンガープレート2に設けることで、固定金具3を省略しても良い。この場合、高さ方向の調節は例えば清掃体6の取付部などで行えばよい。また、この発明をエレベータのドア装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば建物や車両用のドア装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ドアレール、 2 ハンガープレート(移動体)、 3 固定金具、 3a 取付穴、 4 連結軸部、 5 保持部材、 5a 係合部、 5b 取付部、 5c 切欠き部、 6 清掃体、 7 係合子甲、 7a 取付穴、 8 係合子乙、 8a 取付穴、 9 ドア、 10 ハンガーローラ、 13 ハンガーケース、 15 ドア開口部、 5A 第1の保持部材、 7A 第1の係合子甲、 8A 第1の係合子乙、 5B 第2の保持部材、 7B 第2の係合子甲、 8B 第2の係合子乙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアレールに係合して往復移動する移動体に対して回動可能に支持され、回動角度によって清掃位置及び退避位置をとる保持部材と、この保持部材に固定され、上記清掃位置では上記ドアレールに当接され、上記退避位置では上記ドアレールから離れる清掃体と、上記保持部材が上記退避位置に回動されたときに該退避位置を保持する係止手段と、上記移動体が移動方向一端部に到達する際に上記保持部材に当接して該保持部材を退避位置に回動させる係合子甲と、移動方向他端部に到達する際に上記保持部材に当接して上記係止手段の係合を解除すると共に上記保持部材を清掃位置に回動させる係合子乙を備えたことを特徴とするドアレール清掃装置。
【請求項2】
ドアを吊下するハンガープレートからなる上記移動体に固定された固定金具を備え、上記保持部材が上記固定金具に対して連結軸部によって回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載のドアレール清掃装置。
【請求項3】
上記係止手段は、上記連結軸部または上記保持部材と上記固定金具との間に設けられたラッチ機構からなることを特徴とする請求項2記載のドアレール清掃装置。
【請求項4】
上記係止手段は、上記保持部材の回動範囲の中央部においてストッパ手段が働き、該中央部を挟んだ回動範囲の両端部に上記退避位置を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項5】
上記清掃体は、清掃面を構成する毛状体が一方向にのみ清掃機能を発揮する方向性を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項6】
上記固定金具は、上記移動体に対して上下方向に調整可能な長穴からなる取付穴を有することを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項7】
上記係合子甲または上記係合子乙は、上記移動体の移動方向に調整可能な長穴からなる取付穴を有することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項8】
上記保持部材と上記係合子甲の当接面の一方、及び上記保持部材と上記係合子乙の当接面の一方が消音部材からなることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項9】
上記固定金具は板材によって形成されたL字状の角部を有し、該角部の内側の2面の一方を上記ハンガープレートの端部の主面に係合させ、他方を該主面に直交する上記ハンガープレートの端面に係合させてなることを特徴とする請求項2から請求項8の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項10】
上記移動体の移動方向一端部側に設けられた上記保持部材である第1の保持部材と、上記移動体の移動方向他端部側に設けられた上記保持部材である第2の保持部材と、上記第1の保持部材に対応する上記係合子甲である第1の係合子甲及び上記係合子乙である第1の係合子乙と、これら第1の係合子甲及び第1の係合子乙とは上記移動体の移動方向に直交する方向に位置をずらして配設された上記第2の保持部材に対応する上記係合子甲である第2の係合子甲及び上記係合子乙である第2の係合子乙とを備え、上記第1の保持部材に、上記第2の係合子甲または第2の係合子乙との干渉を防ぐ切欠き部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のドアレール清掃装置。
【請求項11】
上記第1の保持部材及び上記第2の保持部材は、上記移動体の進行方向前方側が常に清掃位置、後方側が常に退避位置となるようにしたことを特徴とする請求項10記載のドアレール清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−140378(P2011−140378A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1637(P2010−1637)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】