説明

ドアロック機構

【課題】 ストライカやドアラッチの取付位置調整が不要で、かつ人の乗降や荷物の積み降ろしを円滑に行うことのできるドアロック機構を提供する。
【解決手段】 バックドアに設けられたドアラッチと、車体後部のドア開口部に設けられたストライカ4とを備え、バックドアを閉めたとき、ストライカ4がドアラッチ5に係合してバックドアの閉状態を保持するドアロック機構であって、ストライカ4のストライカロッド9を円筒部8を中心に回動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアロック機構にかかり、特に、車両後部に設けられたバックドアのドアロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両には、ドア側にドアラッチが、車体のドア開口部側にストライカがそれぞれ取り付けられ、ドアを閉めたときはドアラッチがストライカに係合して当該ドアを閉状態に保持するドアロック機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記構成のドアロック機構においては、ドアラッチはドア側に、ストライカは車体側に固定され動かないようになっている。特に、ストライカは車体から出っ張った構成をなしている。
【特許文献1】特開2002−240573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ドアラッチはドア側に、ストライカは車体側にそれぞれ固定され動かないようになっているので、車体に対するドアの組み付けが僅かでもずれていると、ストライカ又はドアラッチの取付位置の調整作業が必要となり、その調整作業に手間がかかるという問題がある。
【0005】
また、車体後部のバックドアにおいては、ストライカが車体に固定されて車体後方へ出っ張った格好となるので、上下開きのバックドアの場合、開いた下側バックドアの上に人が座って車体に寄りかかったときに当該人の背中にストライカが当たったり、跳ね上げ式のバックドアの場合、人の乗降時や荷物の積み降ろし時に人や荷物がストライカにぶつかったりして、ストライカが邪魔であるという問題もある。
【0006】
本発明の課題は、ストライカやドアラッチの取付位置調整が不要で、かつ人の乗降や荷物の積み降ろしを円滑に行うことのできるドアロック機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バックドアに設けられたドアラッチと、車体後部のドア開口部に設けられたストライカとを備え、前記バックドアを閉めたとき、前記ストライカが前記ドアラッチの係合溝に係合して当該バックドアの閉状態を保持するドアロック機構であって、前記ストライカをその支持部を中心に回動可能にしたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、車体に対するドアの組み付けが多少ずれていても、バックドアを閉めてストライカがドアラッチに係合し始めると、ストライカがドアラッチの係合溝に追従して回動するので、ストライカをドアラッチに確実に係合させることができる。
【0009】
また、人の乗降時や荷物の積み降ろし時には、ストライカを回動させて車体内側に収納しておけばよいので、ストライカは邪魔にならず、人の乗降や荷物の積み降ろしを円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストライカを回動可能な構成にしたので、バックドアを閉める際にストライカがドアラッチの係合溝に容易に係合する。その結果、ストライカやドアラッチの取付位置調整が不要となる。
【0011】
また、人の乗降時や荷物の積み降ろし時に、ストライカを回動させて車体内側に収納することにより、人の乗降や荷物の積み降ろしを円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0013】
図1は本発明に係るドアロック機構が適用された自動車の後部を示しており、上下開きのバックドアが開いたときの斜視図である。図1に示すように、自動車1後部のドア開口部2には上下開きのバックドア3が設けられている。この上下開きのバックドア3は上側バックドア3Aと下側バックドア3Bとから構成され、上側バックドア3Aはその上部に設けられたヒンジ(図示省略)を中心にして矢印Aのように回動し、また下側バックドア3Bはその下部に設けられたヒンジ(図示省略)を中心にして矢印Bのように回動する。
【0014】
ドア開口部2には、車体内側の左右2カ所にストライカ4が取り付けられている。これらストライカ4は、下側バックドア3Bを閉めたとき、下側バックドア3Bに設けられたドアラッチ5(図4参照)に係合する。
【0015】
ストライカ4は、図2に示すように、略三角形のストライカベース6を有し、このストライカベース6は、3カ所に設けられたボルト7によって、車体パネル(図示省略)の後端部に固定される。
【0016】
ストライカベース6の後部(図の左側)には、支持部として、円形状に巻かれた円筒部8が設けられている。この円筒部8の上下方向中央部には、円筒部8の軸方向に沿って縦スリット8Aが上下2カ所に形成され、各縦スリット8Aの上部は、円筒部8に周方向に形成された横スリット8Bに繋がっている。つまり、円筒部8を横方向から見ると、縦スリット8Aと横スリット8Bとにより、円筒部8には逆L字型のスリットが観察される(図5参照)。
【0017】
円筒部8にはストライカロッド9が取り付けられている。ストライカロッド9は金属製の丸棒を折り曲げて形成され、その中間部にコ字状部分9Aが、コ字状部分9Aの両端に直線部分9B(図5参照)がそれぞれ設けられている。直線部分9Bは円筒部8の内部に挿通され、またコ字状部分9Aは円筒部8より外側に突出して設けられている。そして、ストライカロッド9は、コ字状部分9Aの上下両端の折り曲げられた部分が、円筒部8の縦スリット8A又は横スリット8Bに配置されており、縦スリット8Aに案内されて矢印Cのように上下方向に移動するとともに、横スリット8Bに案内されて矢印Dのように円筒部8周りに約180度回動する。
【0018】
また、円筒部8の縦スリット8Aのスリット幅はストライカロッド9のコ字状部分9Aの外径よりも若干大きく設定され、ストライカロッド9は、コ字状部分9Aの両端の折り曲げ部分が縦スリット8A内にあるときは、矢印Eのように直線部分9Bを中心にして揺動可能となっている。
【0019】
一方、ドアラッチ5は下側バックドア3Bに設けられている。図3は自動車1を後方から見た図であり、バックドア3を閉めた状態を示している。バックドア3を閉めることにより、上側バックドア3Aと下側バックドア3Bとは一体化する。
【0020】
図4及び図5はストライカ4とドアラッチ5を示しており、図4は図3のSA−SA線に沿った断面図、図5は図4のSB−SB線に沿った断面図である。図4に示すように、下側バックドア3Bには、ストライカ4に対向してドアラッチ5が設けられている。ドアラッチ5は、ピン10周りに回動自在な板状のクロウ11と、クロウ11に当接してクロウ11の回動を阻止するロック部材12とを備えている。
【0021】
クロウ11には、ストライカロッド9のコ字状部分9Aが係合する切欠11Aが形成されている。またクロウ11にはピン10を挟んで切欠11Aの反対側に段部11Bが形成され、ピン13周りに揺動可能なロック部材12が段部11Bに係合することにより、クロウ11の回動が阻止されるようになっている。なお、クロウ11は、下側バックドア3Bを閉めたとき、ストライカロッド9のコ字状部分9Aに対して垂直となるよう調整されている。
【0022】
ドアラッチ5はケース14を有し、このケース14は下側バックドアインナパネル15に取り付けられている。そして、下側バックドアインナパネル15にはストライカ4に対向して開口部15Aが形成され、ケース14には開口部15Aに繋がる係合溝14Aが設けられている。係合溝14Aは上方から見ると略V字型をなしている。クロウ11やロック部材12はケース14の内部に収納されている。
【0023】
なお、図4において、16は車体パネル、17は下側バックドアアウタパネルである。
【0024】
次に、本実施例によるドアロック機構の作用について説明する。
【0025】
下側バックドア3Bを閉めた状態のときは、図4及び図5に示すように、ストライカロッド9のコ字状部分9Aは、ドアラッチ5におけるクロウ11の切欠11Aに係合しており、車体後方に向いている。
【0026】
下側バックドア3Bを開けようとして、下側バックドア3Bの図示していないドアプルハンドルを操作すると、ロック部材12によるクロウ11の係止状態が解かれ、クロウ11は図示していないバネ等の付勢部材の付勢力によって回動し、切欠11Aがストライカ4側に向いて、ドアラッチ5に対するストライカ4の係合が解除される。これにより、下側バックドア3Bを開くことが可能となる。
【0027】
下側バックドア3Bを開くと、ストライカロッド9のコ字状部分9Aは車体後方に向いたままであるので、人の乗り降りや荷物の出し入れに邪魔である。
【0028】
そこで、本実施例では、ストライカロッド9のコ字状部分9Aを手で引き上げて、ストライカロッド9を縦スリット8Aに沿って上方へ移動させ、さらにストライカロッド9を横スリット8Bに沿って図4の矢印Fのように回動させる。このとき、コ字状部分9Aが車体パネル16に平行になるまで回動させることにより、ストライカロッド9を車体内側へ収納することができる。
【0029】
横スリット8Bのスリット幅はストライカロッド9の外径に略等しく設定されており、コ字状部分9Aを車体パネル16に平行になるまで回動さたとき、ストライカロッド9は横スリット8Bに係止されて、その回動位置に保持される。これにより、人の乗り降りや荷物の出し入れに、ストライカロッド9が邪魔になるのを防止することができる。
【0030】
また、下側バックドア3Bを閉めるときは、ストライカロッド9のコ字状部分9Aを手で持って、横スリット8Bに沿って矢印Fとは逆方向に回動させ、さらに縦スリット8Aに沿って押し下げて、ストライカロッド9を縦スリット8Aに沿って下方へ移動させる。
【0031】
そして、下側バックドア3Bをドア開口部2に押し当てることにより、ストライカロッド9をドアラッチ5に係合させて、下側バックドア3Bを全閉する。このとき、ストライカロッド9は、そのコ字状部分9Aが矢印E(図2参照)のように揺動自在であるから、図4に二点鎖線で示す範囲で揺動し、車体に対する下側バックドア3Bの組み付けが多少ずれていても、ドアラッチ5におけるケース14の係合溝14Aに係合し始めると、係合溝14Aに追従して回動する。その結果、ストライカロッド9をドアラッチ5におけるクロウ11の切欠11Aに容易かつ確実に係合させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。例えば、本発明のドアロック機構は下側バックドア3Bだけでなく、上側バックドア3Aにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るドアロック機構が適用された自動車の後部を示しており、上下開きのバックドアが開いたときの斜視図である。
【図2】ストライカの斜視図である。
【図3】本発明に係るドアロック機構が適用された自動車の後面図である。
【図4】図3のSA−SA線に沿った断面図である。
【図5】図4のSB−SB線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0034】
2 ドア開口部
3 バックドア
4 ストライカ
5 ドアラッチ
8 円筒部(支持部)
8A 縦スリット
8B 横スリット
9 ストライカロッド
9A コ字状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアに設けられたドアラッチと、車体後部のドア開口部に設けられたストライカとを備え、前記バックドアを閉めたとき、前記ストライカが前記ドアラッチの係合溝に係合して当該バックドアの閉状態を保持するドアロック機構であって、
前記ストライカをその支持部を中心に回動可能にしたことを特徴とするドアロック機構。
【請求項2】
前記ストライカは、前記ドアラッチと係合するコ字状部分を有し、該コ字状部分を含めて全体が車体内側へ回動可能であることを特徴とする請求項1に記載のドアロック機構。
【請求項3】
前記ストライカは、約180度を回動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のドアロック機構。
【請求項4】
前記ストライカは、前記ドアラッチに係合しているときは車体後方に突出した状態で係止され、車体内側に回動したときは車体内側のパネル側方に配置された状態で係止されることを特徴とする請求項2又は3に記載のドアロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−336203(P2006−336203A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158993(P2005−158993)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】