説明

ドアロック装置

【課題】車両走行中に確実にチャイルドロック機構を非伝達状態にさせつつ、防盗性を良好なものとすることができるドアロック装置を提供すること。
【解決手段】ラッチ機構(20)と、ロック機構(30)と、電動モータ35と、チャイルドロック機構(40)と、チャイルドロックアクチュエータ45とを備えたドアロック装置において、車速が予め決められた閾値以上の場合にはチャイルドロック機構を非伝達状態にさせる一方、車速が閾値未満であって、ギアがパーキングポジションと検知され、かつフットブレーキが踏まれていない状態と検知された場合には、チャイルドロック機構を伝達状態にさせ、更にダブルロック指令が与えられた場合には、ロック機構をロック状態にさせ、かつチャイルドロック機構を非伝達状態にさせる制御ユニット50を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば四輪自動車等の車両に適用するドアロック装置に関し、より詳細には、車両本体に対してドアが閉位置に配置された場合にラッチ状態となってドアの開方向への移動を規制するラッチ機構と、ドアハンドルからラッチ機構に至るまでの間に介在し、アンロック状態においてドアハンドルが開扉操作された場合にこれをラッチ機構に伝達することによりラッチ状態を解除してドアの開方向への移動を許容する一方、ロック状態となった場合にはドアハンドルが開扉操作されてもラッチ機構のラッチ状態を維持するロック機構とを備えたドアロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操作性の向上を図るために、ロックアクチュエータによってロック機構のロック状態/アンロック状態を切り替えるようにしたドアロック装置が提供されている。更にこの種のドアロック装置の中には、室内においてロック状態/アンロック状態を切り替えるためのロック操作部材を省略し、車両の防盗性向上を図ろうとするものも具現化されつつある。すなわち、室内のロック操作部材を省略したドアロック装置によれば、たとえウィンドウガラスが破られた場合にもロック状態にあるロック機構をアンロック状態に切り替えることが困難となるため、車両の防盗性を向上させることが可能になる。
【0003】
しかしながら、ロック操作部材を省略した場合には、例えばロックアクチュエータの駆動系や電源供給系に不具合が発生するとロック機構をロック状態に切り替えることが困難となり、車両を離れることができなくなる等の問題を招来することになる。このため従来では、ドアが閉位置に配置されている時には塞がれる位置に操作ボタンを設け、この操作ボタンを操作することによってロック機構をロック状態とするものが提供されている。こうしたドアロック装置によれば、ロックアクチュエータの駆動系や電源供給系に不具合が発生した場合であっても、操作ボタンを操作することでロック機構をロック状態とすることが可能となる。操作ボタンは、ドアを開成した場合にのみ操作できるものであるため、車両の防盗性に影響を与えることはない。
【0004】
ところで、そのようなドアロック装置には、いわゆるチャイルドロック機構が付設されているものがある。チャイルドロック機構は、例えば車両の後部座席に乗車させた子供により室内に配設されたインサイドドアハンドルが開扉操作される結果、ドア(リアドア)が開けられてしまうことを防止するものである。より詳細に説明すると、チャイルドロック機構は、インサイドドアハンドルとロック機構との間に介在し、インサイドドアハンドルの開扉操作をロック機構に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルの開扉操作をロック機構に伝達しない非伝達状態とに切り替え可能に構成したものである。そのようなチャイルドロック機構は、上記操作ボタンと同様にドアが閉位置に配置されている時に塞がれる位置に配設されたチャイルドレバーが操作されることにより、伝達状態又は非伝達状態に切り替わるようになっている。
【0005】
しかしながら、そのようなチャイルドロック機構を備えるドアロック装置では、チャイルドロック機構の伝達状態/非伝達状態の切り替えをチャイルドレバーの手動操作にて行うものであり、しかもチャイルドレバーはドアが閉位置に配置されている時に塞がれる位置に配設されていることから、チャイルドロック機構を非伝達状態とせずに車両を走行させてしまうと、走行中にもインサイドドアハンドルが開扉操作されることにより、ドアが開成してしまう虞れがあった。
【0006】
そこで、チャイルドロック機構を伝達状態と非伝達状態とに切り替えるチャイルドロックアクチュエータを備え、車速検知手段により検知された車速が例えば5km/h以上の場合には、チャイルドロックアクチュエータを駆動させてチャイルドロック機構を非伝達状態にさせる一方、車速検知手段により検知された車速が例えば5km/h未満であって車両が停止中と判断した場合に、チャイルドロックアクチュエータを駆動させてチャイルドロック機構を伝達状態にさせるドアロック装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−273173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両に適用されるドアロック装置には、いわゆるダブルロック機能(スーパーロック機能)を有するものがある。このダブルロック機能は、それがオン状態となる場合に、運転席におけるドアの室外に配設したアウトサイドドアハンドル及びインサイドドアハンドルのいずれの開扉操作も無効化させるものである。かかるダブルロック機能により防盗性向上を図ることができる。
【0009】
しかしながら、上述したような特許文献1に提案されているドアロック装置では、車両が停止中と判断した場合には、チャイルドロックアクチュエータを駆動させてチャイルドロック機構を伝達状態にさせてしまうために、ウィンドウガラスが破られてインサイドドアハンドルを開扉操作されてしまうことにより、ドア(リアドア)が開成してしまい、防盗性が十分に良好なものとはいえない。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、車両走行中に確実にチャイルドロック機構を非伝達状態にさせつつ、防盗性を良好なものとすることができるドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るドアロック装置は、車両本体に対してドアが閉位置に配置された場合にラッチ状態となってドアの開方向への移動を規制するラッチ機構と、ドアハンドルから前記ラッチ機構に至るまでの間に介在し、アンロック状態においてドアハンドルが開扉操作された場合にこれをラッチ機構に伝達することによりラッチ状態を解除してドアの開方向への移動を許容する一方、ロック状態となった場合にはドアハンドルが開扉操作されてもラッチ機構のラッチ状態を維持するロック機構と、前記ロック機構をロック状態とアンロック状態とに切り替えるロックアクチュエータと、室内に配設したインサイドドアハンドルと前記ロック機構との間に介在し、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達しない非伝達状態とに切り替え可能に構成したチャイルドロック機構と、前記チャイルドロック機構を伝達状態と非伝達状態とに切り替えるチャイルドロックアクチュエータとを備えたドアロック装置において、車速検知手段により検知された車速が予め決められた閾値以上の場合には、前記チャイルドロックアクチュエータに指令を与えて前記チャイルドロック機構を非伝達状態に切り替える一方、前記車速検知手段により検知された車速が前記閾値未満であって、ギアポジション検知手段によりギアがパーキングポジションであること及びフットブレーキ検知手段によりフットブレーキが踏まれていない状態であることの少なくとも一方が検知された場合には、前記チャイルドロックアクチュエータに指令を与えて前記チャイルドロック機構を伝達状態に切り替え、更に室外に配設したアウトサイドドアハンドル及び前記インサイドドアハンドルのいずれの開扉操作も無効化させるダブルロック指令が与えられた場合には、前記ロックアクチュエータに指令を与えて前記ロック機構をロック状態に切り替え、かつ前記チャイルドロックアクチュエータに指令を与えて前記チャイルドロック機構を非伝達状態に切り替える制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドアロック装置によれば、制御手段が、車速検知手段により検知された車速が予め決められた閾値以上の場合には、チャイルドロックアクチュエータに指令を与えてチャイルドロック機構を非伝達状態に切り替える一方、車速検知手段により検知された車速が閾値未満であって、ギアポジション検知手段によりギアがパーキングポジションであること及びフットブレーキ検知手段によりフットブレーキが踏まれていない状態であることの少なくとも一方が検知された場合には、チャイルドロックアクチュエータに指令を与えてチャイルドロック機構を伝達状態に切り替え、更に室外に配設したアウトサイドドアハンドル及びインサイドドアハンドルのいずれの開扉操作も無効化させるダブルロック指令が与えられた場合には、ロックアクチュエータに指令を与えてロック機構をロック状態に切り替え、かつチャイルドロックアクチュエータに指令を与えてチャイルドロック機構を非伝達状態に切り替えるので、車両走行中に確実にチャイルドロック機構を非伝達状態にさせることができ、更にダブルロック指令が与えられた場合にはロック機構をロック状態にさせてアウトサイドドアハンドルの開扉操作を無効化させ、チャイルドロック機構を非伝達状態にさせてインサイドドアハンドルの開扉操作を無効化させることができるので、防盗性を向上させることができる。従って、車両走行中に確実にチャイルドロック機構を非伝達状態にさせつつ、防盗性を良好なものとすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の実施の形態であるドアロック装置を概念的に示したものである。ここで例示するドアロック装置は、図4に示すように、四輪自動車の車両本体Bにおいて後席右側に配置された前方ヒンジのドア(リアドア)Dに設けられるもので、図1に示すように、本体ケース10に装着されたラッチケース21の内部にラッチ機構20を備えている。
【0015】
ラッチ機構20は、図4及び図5に示すように、車両本体Bに設けたストライカSを噛合保持するためのもので、図5に示すように、ラッチ22とラチェット23とを備えて構成してある。
【0016】
ラッチ22は、ラッチケース21に形成したストライカ侵入溝21aよりも上方となる位置に、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在するラッチ軸24を介して回転可能に配設したものである。このラッチ22には、噛合溝22a、フック部22b及び係止部22cが設けてある。噛合溝22aは、ラッチ22の外周面からラッチ軸24に向けて形成したもので、ストライカSを収容することのできる幅に形成してある。フック部22bは、噛合溝22aを下方に向けて開口させた場合に噛合溝22aよりも室内側に位置する部分である。このフック部22bは、図5の実線で示すように、ラッチ22を最大限反時計回りに回転させた場合にラッチケース21のストライカ侵入溝21aを横切る位置で停止する一方、図5中の二点鎖線で示すように、ラッチ22を最大限時計回りに回転させた場合にストライカ侵入溝21aを開放する位置で停止するように構成してある。係止部22cは、噛合溝22aを下方に向けて開口させた場合に噛合溝22aよりも室外側に位置する部分である。この係止部22cは、図5中の二点鎖線で示すように、ラッチ22を最大限時計回りに回転させた場合にストライカ侵入溝21aを横切り、かつこのストライカ侵入溝21aの奥方(室外側)に向けて漸次上方に傾斜する状態で停止するように構成してある。尚、図には明示していないが、ラッチ22とラッチケース21との間には、図5においてラッチ22を常時時計回りに向けて付勢するラッチバネが設けてある。
【0017】
ラチェット23は、ラッチケース21のストライカ侵入溝21aよりも下方、かつラッチ軸24よりも室内側となる位置に、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在するラチェット軸25を介して回転可能に配設したものである。このラチェット23には、係合部23a及び作用部23bが設けてある。係合部23aは、ラチェット軸25から室外側に向けて径外方向に延在する部分であり、ラチェット軸25を中心として回転することによりその突出端面を介して上述したラッチ22のフック部22b及び係止部22cに着脱可能に係合することが可能である。作用部23bは、ラチェット軸25から室内側に向けて径外方向に延在する部分である。このラチェット23には、車両前側となる位置にラチェット23とともに一体的となってラチェット軸25の軸心回りに回転するラチェットレバー26が設けてある。ラチェットレバー26は、ラチェット軸25からラチェット23の作用部23bと同一方向に向けて延在した当接部26aを有したものである。尚、図には明示していないが、ラチェット23とラッチケース21との間には、図5においてラチェット23を常時反時計回りに向けて付勢するラチェットバネが設けてある。
【0018】
上記のように構成したラッチ機構20では、図4中の二点鎖線で示すように、ドアDが車両本体Bに対して開成状態にある場合、図5中の二点鎖線で示すように、ラッチ22がストライカ侵入溝21aを開放する位置に配置されることになる。この状態から図4の実線で示すように、ドアDを閉位置に移動させると、車両本体Bに設けたストライカSが、図5に示すように、ラッチケース21のストライカ侵入溝21aに進入し、やがてストライカSがラッチ22の係止部22cに当接することになる。この結果、ラッチ22がラッチバネ(図示せず)の弾性力に抗して図5において反時計回りに回転する。この間、ラチェット23は、ラチェットバネ(図示せず)の弾性力によって係合部23aの突出端面がラッチ22の外周面に摺接することになり、ラッチ22の外周面形状に応じて適宜ラチェット軸25の軸心回りに回転する。上述した状態から更にドアDを閉方向に移動させると、ストライカ侵入溝21aに対するストライカSの進入量が漸次増大し、やがてラチェット23の係合部23aがラッチ22の噛合溝22aに至り、その後、図5中の実線で示すように、ラッチ22のフック部22bがラチェット23の係合部23aに当接することになるため、ラッチバネ(図示せず)の弾性復元力に抗してラッチ22の時計回りの回転が阻止されることになる。この状態においては、ラッチ22のフック部22bがストライカ侵入溝21aを横切るように配置されるため、フック部22bによってストライカSがストライカ侵入溝21aの奥方(室外側)から離脱する方向へ移動する事態が阻止されるようになり、結局、ドアDが車両本体Bに対して閉じた状態に維持される(ラッチ状態)。
【0019】
一方、上述したラッチ状態からラチェットバネ(図示せず)の弾性力に抗してラチェットレバー26の当接部26aを図5の上方に回転させると、ラッチ22のフック部22bとラチェット23の係合部23aとの当接係合状態が解除され、ラッチ22がラッチバネ(図示せず)の弾性復元力により図5において時計回りに回転する。この結果、図5中の二点鎖線で示すように、ストライカ侵入溝21aが開放され、ストライカSがストライカ侵入溝21aから離脱する方向に移動可能となり、ドアDを車両本体Bに対して開成移動させることができるようになる。
【0020】
また、上記ドアロック装置には、図1に示すように、本体ケース10の内部にオープンレバー11、インサイドハンドルレバー12、ロック機構30が設けてある。
【0021】
オープンレバー11は、図には明示していないが、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在するオープンレバー軸を介して回転可能に配設したもので、動作端部11a及び受圧部11bを有している。オープンレバー11の動作端部11aは、ラチェットレバー26における当接部26aの下方域に配置してある。オープンレバー11の受圧部11bは、動作端部11aよりも下方に延在した後、上方に向けて湾曲した部分である。このオープンレバー11は、ドアDの外表面に設けたアウトサイドドアハンドルODH(図4参照)が開扉操作された場合に適宜リンクを介して回転し、動作端部11a及び受圧部11bが図1において上方に動作するものである。尚、図には明示していないが、オープンレバー11と本体ケース10との間には、図1において動作端部11a及び受圧部11bを常時下方に向けて付勢するオープンレバーバネが設けてある。
【0022】
インサイドハンドルレバー12は、オープンレバー11よりも車両前方となる部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するインサイドレバー軸13を介して揺動可能に配設したもので、作用端部12a及びインハンロック連係部12bを有している。作用端部12aは、インサイドレバー軸13から下方に向けて延在する部分であり、その先端部に適宜リンクを介してインサイドドアハンドルIDH(図4参照)が連係してある。この作用端部12aは、インサイドドアハンドルIDHを開扉操作した場合に、インサイドハンドルレバー12が図1において時計回りに揺動するように構成してある。インハンロック連係部12bは、インサイドレバー軸13から車両後方に向けて延在した部分である。
【0023】
ロック機構30は、アウトサイドドアハンドルODHの開扉操作によるオープンレバー11の回転動作をラッチ機構20に伝達するアンロック状態と、アウトサイドドアハンドルODHの開扉操作によるオープンレバー11の回転動作をラッチ機構20に伝達しないロック状態とに切り替わるように構成したもので、ウォームホイール31、セクタレバー32、リンクレバー33を備えている。
【0024】
ウォームホイール31は、オープンレバー11とインサイドハンドルレバー12との間に位置する部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するホイール軸34を介して回転可能に配設したもので、電動モータ(ロックアクチュエータ)35の出力軸35aに固着したウォーム36に歯合している。このウォームホイール31には、同一軸心上に間欠ギアホイール37が固着してある。間欠ギアホイール37は、後述するセクタレバー32の間欠ドリブンギア32bに対して一方向のみの間欠動力伝達手段を構成するものである。尚、図には明示していないが、ウォームホイール31と本体ケース10との間には、ウォームホイール31を所定の中立状態に維持するための中立復帰バネが設けてある。
【0025】
セクタレバー32は、ウォームホイール31よりも上方となる位置に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するセクタレバー軸38を介して回転可能に配設したもので、下方に向けて漸次拡開するセクタ状に形成してある。このセクタレバー32には、連結ピン32a及び間欠ドリブンギア32bが設けてある。連結ピン32aは、セクタレバー32において室内側に位置する端面から車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在した柱状突起である。間欠ドリブンギア32bは、セクタレバー32の円弧状を成す外周面に形成した歯車であり、ウォームホイール31の間欠ギアホイール37に歯合している。
【0026】
図には明示していないが、これらセクタレバー32の間欠ドリブンギア32bとウォームホイール31の間欠ギアホイール37との間に構成される間欠動力伝達手段は、ウォームホイール31を適宜方向に回転させることによってセクタレバー32を任意の方向に揺動させることができる一方、間欠ドリブンギア32bからの間欠ギアホイール37への動力伝達がなく、ウォームホイール31を回転させることなくセクタレバー32を任意の方向に揺動させることができるように構成してある。
【0027】
リンクレバー33は、リンク本体33aの下端部に装着孔33bを有したレバー部材であり、装着孔33bにオープンレバー11の動作端部11aを挿通保持させることにより、動作端部11a及び受圧部11bと共に上下動可能、かつ動作端部11aに対して車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに揺動可能に支承させてある。このリンクレバー33には、セクタ連結部33c及びラチェット駆動部33dが設けてある。セクタ連結部33cは、リンク本体33aにおいて車両前方側となる部位から上方に向けて延在した部分であり、連結用溝孔33eを有している。連結用溝孔33eは、上下方向に沿って延在するスリット状の開口であり、その内部にセクタレバー32の連結ピン32aを移動可能に嵌合支承している。ラチェット駆動部33dは、リンク本体33aに構成した当接係合部分であり、装着孔33bの鉛直上方に配置した場合に、ラチェットレバー26における当接部26aの下端面に対して近接対向する態様で設けてある。
【0028】
また、このリンクレバー33には、ロックレバー部(ロックレバー)33fが設けてある。ロックレバー部33fは、リンク本体33aを装着孔33bの鉛直上方に配置した場合に装着孔33bよりも下方に向けて延在する部分である。このロックレバー部33fには、車両前方側に位置する部位に操作当接面33gが設けてある。操作当接面33gは、リンク本体33aを装着孔33bの鉛直上方に配置した場合にほぼ鉛直に沿って延在するように構成してある。
【0029】
上記のように構成したロック機構30では、図1に示した状態がアンロック状態であり、リンクレバー33のリンク本体33aが装着孔33bの鉛直上方に配置されるため、ラチェット駆動部33dがラチェットレバー26における当接部26aの下端面に対して近接対向することになる。従って、この状態からアウトサイドドアハンドルODHを開扉操作し、オープンレバー11の回転動作によってリンクレバー33のリンク本体33aが上動すれば、ラチェット駆動部33dがラッチ機構20におけるラチェットレバー26の当接部26aに当接してこれを上動させることになる。この結果、ラッチ機構20がラッチ状態にある場合にもこれが解除されるため、車両本体Bに対してドアDを開成移動させることができるようになる。
【0030】
図1に示したアンロック状態から、電動モータ35の駆動によってウォームホイール31を反時計回りに回転させると、セクタレバー32がセクタレバー軸38を中心として時計回りに揺動することになる。この結果、ロック機構30は、連結ピン32aを介して係合したリンクレバー33が装着孔33bを中心として反時計回りに揺動し、図3に示すロック状態となる。
【0031】
このロック状態では、ラチェット駆動部33dがラチェットレバー26における当接部26aの下端面に対向する位置から逸脱するため、アウトサイドドアハンドルODHを開扉操作し、オープンレバー11の回転動作によってリンクレバー33のリンク本体33aが上動した場合にも、ラチェット駆動部33dがラッチ機構20におけるラチェットレバー26の当接部26aに当接することがない。この結果、ラッチ機構20がラッチ状態にある場合にはこれが維持されるため、車両本体Bに対してドアDが閉位置に維持されることになる。
【0032】
図3に示すロック状態から、電動モータ35の駆動によってウォームホイール31を時計回りに回転させると、セクタレバー32がセクタレバー軸38を中心として反時計回りに揺動することになる。この結果、ロック機構30は、連結ピン32aを介して係合したリンクレバー33が装着孔33bを中心として時計回りに揺動し、再び図1に示したアンロック状態に復帰する。
【0033】
更に、上記ドアロック装置には、図1に示すように、本体ケース10の内部にチャイルドロック機構40が設けてある。チャイルドロック機構40は、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作をロック機構30に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作をロック機構30に伝達しない非伝達状態とに切り替わるように構成したもので、コネクトレバー41及びチャイルドレバー42を備えている。
【0034】
コネクトレバー41は、インサイドハンドルレバー12とリンクレバー33との間となる部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するコネクトレバー軸43を介して揺動可能に配設したもので、伝達ピン収容部41a及び伝達端部41bを有している。伝達ピン収容部41aは、コネクトレバー軸43から車両前方に向けて延在した部分であり、ピン収容孔41cを有している。ピン収容孔41cは、伝達ピン収容部41aの延在方向に沿って形成したスリット状の開口である。図1からも明らかなように、伝達ピン収容部41aに形成したピン収容孔41cは、上述したインサイドハンドルレバー12のインハンロック連係部12bがインサイドレバー軸13を中心として揺動した場合の揺動域に対して車両前方側に位置する端部がこれに含まれる一方、車両後方側に位置する端部が揺動域から逸脱するように構成してある。伝達端部41bは、コネクトレバー軸43から車両後方に向けて僅かに下方に向けて傾斜延在する部分であり、その延在端部がオープンレバー11における受圧部11bの下方域に配置されている。
【0035】
チャイルドレバー42は、コネクトレバー41に重ね合わせる態様でコネクトレバー41と本体ケース10との間に、車両本体Bの前後方向に沿ってスライド可能に配設してある。このチャイルドレバー42には、スライド溝42a、伝達ピン支承溝42b、ノッチ係合部42c、手動操作部42d、ロック操作部42eを有している。
【0036】
スライド溝42aは、上述したコネクトレバー41のコネクトレバー軸43が挿通するためのスリット状の開口であり、車両本体Bの前後方向に沿って延設してある。このスライド溝42aの長さは、チャイルドレバー42のスライド量を決定するものであり、後述する作用を具現化するように設定してある。
【0037】
伝達ピン支承溝42bは、スリット状の開口であり、伝達ピン44をスライド可能に支承している。伝達ピン44は、チャイルドレバー42から室外に向けて突設した柱状部材である。この伝達ピン44は、図6に示すように、コネクトレバー41のピン収容孔41cを貫挿した後、その突出端部がインサイドハンドルレバー12の室外側端面を超える位置に達している。この伝達ピン44は、図1及び図3に示すように、チャイルドレバー42をスライドさせることにより、コネクトレバー41に形成したピン収容孔41cの車両前方側に位置する端部から車両後方側に位置する端部までの間を移動することが可能である。
【0038】
ノッチ係合部42cは、本体ケース10の内表面に設けたノッチ14に係合する凹溝であり、チャイルドレバー42の上縁に3箇所設けてある。車両後方に位置するノッチ係合部42cは、図1及び図7に示すように、ノッチ14が係合した場合に本体ケース10に対するチャイルドレバー42の前端位置を規定するものである。同様に、車両前方に位置するノッチ係合部42cは、図3及び図7に示すように、ノッチ14が係合した場合に本体ケース10に対するチャイルドレバー42の後端位置を規定するものであり、中央に位置するノッチ係合部42cは、図2及び図7に示すように、ノッチ14が係合した場合に本体ケース10に対するチャイルドレバー42の中間位置を規定するものである。チャイルドレバー42が前端位置に配置された場合には、図1に示すように、伝達ピン44がインサイドハンドルレバー12におけるインハンロック連係部12bの揺動域に配置されることになる。これに対してチャイルドレバー42が中間位置及び後端位置に配置された場合には、図2及び図3に示すように、いずれも伝達ピン44がインハンロック連係部12bの揺動域外に配置されることになる。
【0039】
手動操作部42dは、図6に示すように、チャイルドレバー42において車両後方側に位置する端部から室内側に向けて屈曲延在する部分である。この手動操作部42dは、本体ケース10に設けた操作孔10a及びドアDのパネルDPに設けた操作開口DPOを通じて外部に突出しており、ドアDの外部からチャイルドレバー42をスライド操作することが可能である。但し、本実施の形態では、図4に示すように、ドアDの内側面であって、しかもドアDを閉位置に配置した場合には塞がれる位置に手動操作部42dを設けるようにしている。図7に示すように、手動操作部42dが外部に露出するパネルDPの操作開口DPOには、それぞれの操作位置に対応した表示が設けてある。
【0040】
ロック操作部42eは、図6に示すように、チャイルドレバー42において車両後方側に位置する端部から室外側に向けて屈曲延在し、上述したロック機構30におけるロックレバー部33fの操作当接面33gに対向する部分である。このロック操作部42eは、図1及び図2に示すように、チャイルドレバー42が前端位置及び中間位置に配置された場合、装着孔33bから鉛直下方に延在するロックレバー部33fの操作当接面33gに対して離隔した位置に配置される一方、図3に示すように、チャイルドレバー42を後端位置に配置させた場合、操作当接面33gを介してリンクレバー33を反時計回りに回転させ、ロック機構30をロック状態に切り替えることのできる位置に設けてある。
【0041】
このようなチャイルドレバー42には、図1に示すように、チャイルドロックアクチュエータ45が接続してあり、かかるチャイルドロックアクチュエータ45の駆動によりチャイルドレバー42は、前端位置と後端位置との間でスライド移動可能となっている。
【0042】
このチャイルドロック機構40では、図1に示した状態が伝達状態であり、チャイルドレバー42の伝達ピン44がインサイドハンドルレバー12においてインハンロック連係部12bの揺動域に配置される。この状態からインサイドドアハンドルIDHを開扉操作すると、インハンロック連係部12bが伝達ピン44を下方に向けて移動させることになる。伝達ピン44が伝達ピン44支承溝42bに沿って下方に移動すると、伝達ピン44が貫挿されたコネクトレバー41が図1において反時計回りに揺動し、その伝達端部41bが上方に移動するため、オープンレバー11の受圧部11bを介してリンクレバー33も上動することになる。従って、ロック機構30がアンロック状態であれば、リンクレバー33がラッチ機構20におけるラチェットレバー26の当接部26aに当接することになり、ラッチ状態を解除することができる。つまり、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作によってドアDを開成移動させることができるようになる。
【0043】
これに対してチャイルドレバー42を車両後方側にスライドさせ、図2に示す状態、もしくは図3に示す状態に切り替えると、チャイルドロック機構40が非伝達状態となる。この非伝達状態では、チャイルドレバー42の伝達ピン44がインサイドハンドルレバー12においてインハンロック連係部12bの揺動域外に配置されるため、インサイドドアハンドルIDHを開扉操作してもインハンロック連係部12bと伝達ピン44とが当接することはなく、コネクトレバー41が揺動することもない。この結果、ロック機構30のロック/アンロック状態に関わらず、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作によってはドアDを開成移動させることができないことになる。
【0044】
図8は、本発明の実施の形態におけるドアロック装置の制御系を示すブロック図である。本実施の形態のドアロック装置は、車速検知センサS1、ギアポジション検知センサS2、フットブレーキ検知センサS3、ダブルロック指令スイッチSW、制御ユニット50を備えている。
【0045】
車速検知センサS1は、当該ドアロック装置が適用される車両の車速、すなわち速度を検知し、その旨を車速検知信号として制御ユニット50に与える車速検知手段である。ギアポジション検知センサS2は、当該車両のギアポジションがパーキングポジションにあることを検知し、その旨をパーキングポジション検知信号として制御ユニット50に与えるギアポジション検知手段である。フットブレーキ検知センサS3は、当該車両のフットブレーキがオフ、すなわちフットブレーキが踏まれていない状態であることを検知し、その旨をフットブレーキ検知信号として制御ユニット50に与えるフットブレーキ検知手段である。
【0046】
ダブルロック指令スイッチSWは、例えば利用者が所有しているキー本体に内蔵されており、利用者により所定のボタンが押下されることにより、ダブルロック指令を制御ユニット50に与えるものである。尚、このダブルロック指令スイッチSWは、キー本体に内蔵されているだけに限られず、利用者が運転席のドア(フロントドア)を閉成し、当該ドアのキーシリンダーにキーを挿入して施錠操作を行った場合に、制御ユニット50にダブルロック指令を与えるものであっても構わない。
【0047】
制御ユニット50は、メモリ60に記憶されたプログラムやデータに基づき動作するものであり、入力処理部51、走行状態判断部52、ロックアクチュエータ駆動処理部53、チャイルドロックアクチュエータ駆動処理部54を備えて構成してある。
【0048】
入力処理部51は、各検知センサS1〜S3やダブルロック指令スイッチSWから与えられる信号や指令を入力処理するものである。
【0049】
走行状態判断部52は、当該車両の走行状態を判断するものである。より詳細に説明すると、走行状態判断部52は、入力処理部51を通じて入力処理された車速検知信号に含まれる車速が予め決められた基準車速(閾値:例えば3km/h)以上である場合には、当該車両は走行状態であると判断するものである。その一方、車速が基準車速未満であって、入力処理部51を通じて入力処理されたパーキングポジション検知信号及びフットブレーキ検知信号によりギアがパーキングポジションであり、かつフットブレーキが踏まれていない状態である場合には、当該車両は停止状態であると判断するものである。
【0050】
ロックアクチュエータ駆動処理部53は、電動モータ35の駆動処理を行うものであり、チャイルドロックアクチュエータ駆動処理部54は、チャイルドロックアクチュエータ45の駆動処理を行うものである。
【0051】
上記のようにロック機構30及びチャイルドロック機構40を備えたドアロック装置では、通常の使用時において電動モータ35を駆動すれば、ロック機構30をロック状態とアンロック状態とに容易に切り替えることができる。
【0052】
一方、電動モータ35に不具合が発生したり、図示せぬバッテリの充電電圧が低下する等して電動モータ35が駆動しない場合には、ドアDを開成した状態から手動操作部42dを介してチャイルドレバー42を車両後方側にスライド移動させ、図7に示す「エマージェンシON」の位置に配置させれば良い。すなわち、チャイルドレバー42が「エマージェンシON」の位置に配置されると、チャイルドレバー42のロック操作部42eを介してリンクレバー33が揺動し、ロック機構30が図3に示すロック状態に切り替えられることになる。従って、室内のロック操作部材を省略した場合に上述した状態が発生したとしても、車両の防盗性を確保することができる。
【0053】
この場合、チャイルドレバー42は、ドアDを閉めた場合に塞がれる位置に設けてある。従って、仮に悪意のある者がウィンドウガラスを破ったとしても、チャイルドレバー42を操作することは困難である。しかも、チャイルドレバー42が「エマージェンシON」の位置に配置された場合には、チャイルドロック機構40が非伝達状態となる。従って、操作性を向上させるべくインサイドドアハンドルIDHの操作によってロック機構30をロック状態からアンロック状態に切り替えるように構成したものに適用した場合にも、チャイルドレバー42の操作によってロック機構30がロック状態となっていれば、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作によってロック機構30がアンロック状態に切り替わることがない。これにより、いわゆるワンモーション機構やダブルアクション機構を適用して操作性を向上させたドアロック装置にあっても、車両の防盗性を著しく向上させることが可能となる。
【0054】
バッテリを交換することにより電動モータ35が再び駆動できるようになった場合には、ロック機構30をアンロック状態に切り替えれば、ロックレバー部33fの操作当接面33gを介してチャイルドレバー42が中間位置に復帰させることができる。
【0055】
尚、上述した実施の形態では、チャイルドレバー42と本体ケース10との間にノッチ14及びノッチ係合部42cを設けるようにしているため、チャイルドレバー42を操作する場合に節度感を与えることができ、誤操作を防止することができるようになるが、本発明は必ずしもチャイルドレバー42と本体ケース10との間にノッチ14及びノッチ係合部42cを設ける必要はない。また、ノッチ14及びノッチ係合部42cを設ける場合であっても、必ずしも個別に設ける必要はない。
【0056】
図9〜図11は、それぞれ制御ユニットが実施する走行検知制御、停止検知制御、ダブルロック指令制御の処理内容を示すフローチャートである。これら図9〜図11を適宜利用してドアロック装置の動作について更に説明する。
【0057】
走行検知制御における制御ユニット50の処理内容について説明する。説明の前提として、車両は停止状態にあり、ロック機構30はアンロック状態にあり、かつチャイルドロック機構40は伝達状態にあるものとし、そのような状態で車両が走行し始めたものとする。
【0058】
走行検知制御における制御ユニット50は、入力処理部51を通じて、車速検知センサS1より与えられた車速検知信号を入力処理した場合に(ステップS101:Yes)、走行状態判断部52を通じて、入力処理部51を通じて入力処理した車速検知信号に含まれる検知車速が予め決められた基準車速以上であるか否かを判断する(ステップS102)。検知車速が基準車速未満である場合には(ステップS102:No)、後述する処理を実施することなく、手順をリターンさせて今回の制御を終了する。
【0059】
一方、検知車速が基準車速以上である場合には(ステップS102:Yes)、制御ユニット50は、走行状態判断部52を通じて車両が走行状態にあるものと判断し、ロックアクチュエータ駆動処理部53を通じて電動モータ35を駆動させてロック機構30をロック状態に切り替える電動モータ駆動処理を実施するとともに、チャイルドロックアクチュエータ駆動処理部54を通じてチャイルドロックアクチュエータ45を駆動させてチャイルドロック機構40を非伝達状態に切り替えるチャイルドロックアクチュエータ駆動処理を実施し(ステップS103,ステップS104)、その後に手順をリターンさせて今回の制御を終了する。
【0060】
これによれば、車両の車速が基準車速以上(例えば3km/h以上)となれば、アンロック状態にあったロック機構30をロック状態に容易に切り替えることができるとともに、伝達状態にあったチャイルドロック機構40を非伝達状態に確実に切り替えることができる。
【0061】
停止検知制御における制御ユニット50の処理内容について説明する。説明の前提として、車両は走行状態にあり、ロック機構30はロック状態にあり、かつチャイルドロック機構40は非伝達状態にあるものとし、そのような状態で車両が停止し始めたものとする。
【0062】
停止検知制御における制御ユニット50は、入力処理部51を通じて、車速検知センサS1より与えられた車速検知信号を入力処理した場合に(ステップS201:Yes)、走行状態判断部52を通じて、入力処理部51を通じて入力処理した車速検知信号に含まれる検知車速が予め決められた基準車速以上であるか否かを判断する(ステップS202)。検知車速が基準車速以上である場合には(ステップS202:Yes)、車両は停止状態にないものと判断して、後述する処理を実施することなく手順をリターンさせて今回の制御を終了する。
【0063】
一方、検知車速が基準車速未満である場合には(ステップS202:No)、制御ユニット50は、入力処理部51を通じて、ギアポジション検知センサS2よりパーキングポジション検知信号、並びにフットブレーキ検知センサS3よりフットブレーキ検知信号を入力した場合には(ステップS203:Yes,ステップS204:Yes)、走行状態判断部52を通じて車両が停止状態にあるものと判断して、チャイルドロックアクチュエータ駆動処理部54を通じてチャイルドロックアクチュエータ45を駆動させてチャイルドロック機構40を伝達状態に切り替えるチャイルドロックアクチュエータ駆動処理を実施し(ステップS205)、その後に手順をリターンさせて今回の制御を終了する。
【0064】
上記パーキングポジション検知信号を入力していない場合(ステップS203:No)、あるいは上記フットブレーキ検知信号を入力していない場合(ステップS204:No)には、上記ステップS205の処理を実施しないで手順をリターンさせて今回の制御を終了する。
【0065】
このように車速が基準車速未満だけでなく、ギアポジションがパーキングポジションにあり、しかもフットブレーキが踏まれていない状態であることが検知された場合に車両が停止状態にあると判断することにより、単に車両が赤信号等で停車した場合にチャイルドロック機構40を切り替える虞れがなく、必要以上にチャイルドロック機構40の状態を切り替えることがない。また、このように車速、ギアポジション及びフットブレーキの状態に基づいて判断するので、車両が停止状態にあることを確実に判断することができる。
【0066】
ダブルロック指令制御における制御ユニット50の処理内容について説明する。説明の前提として、車両は停止状態にあり、ロック機構30はアンロック状態にあり、かつチャイルドロック機構40は伝達状態にあるものとする。
【0067】
ダブルロック指令制御における制御ユニット50は、入力処理部51を通じて、ダブルロック指令スイッチSWより与えられたダブルロック指令を入力処理した場合に(ステップS301:Yes)、ロックアクチュエータ駆動処理部53を通じて電動モータ35を駆動させてロック機構30をロック状態に切り替える電動モータ駆動処理を実施するとともに、チャイルドロックアクチュエータ駆動処理部54を通じてチャイルドロックアクチュエータ45を駆動させてチャイルドロック機構40を非伝達状態に切り替えるチャイルドロックアクチュエータ駆動処理を実施し(ステップS302,ステップS303)、その後に手順をリターンさせて今回の制御を終了する。
【0068】
このようにロック機構30をロック状態に切り替え、かつチャイルドロック機構40を非伝達状態に切り替えることにより、アウトサイドドアハンドルODH及びインサイドドアハンドルIDHのそれぞれの開扉操作を無効化させることになる。
【0069】
以上説明したように本発明の実施の形態におけるドアロック装置によれば、制御ユニット50が、車速検知センサS1による検知車速が基準車速以上の場合にはチャイルドロック機構40を非伝達状態にさせる一方、車速検知センサS1による検知車速が基準車速未満であって、ギアポジション検知センサS2によりギアがパーキングポジションと検知され、かつフットブレーキ検知センサS3によりフットブレーキが踏まれていない状態と検知された場合には、チャイルドロック機構40を伝達状態にさせ、更にダブルロック指令が与えられた場合には、ロック機構30をロック状態にさせ、かつチャイルドロック機構40を非伝達状態にさせるので、車両走行中に確実にチャイルドロック機構40を非伝達状態にさせることができ、更にダブルロック指令が与えられた場合にはアウトサイドドアハンドルODH及びインサイドドアハンドルIDHのそれぞれの開扉操作を無効化させることができるので、防盗性を向上させることができる。従って、車両走行中に確実にチャイルドロック機構40を非伝達状態にさせつつ、防盗性を良好なものとすることができる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、上述の実施の形態においては、車速が基準車速未満であって、ギアがパーキングポジションであり、かつフットブレーキが踏まれていない状態である場合に車両が停止状態であると判断するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、車速が基準車速未満であって、入力処理されたパーキングポジション検知信号によりギアがパーキングポジション、あるいは入力処理されたフットブレーキ検知信号によりフットブレーキが踏まれていない状態であると検知された場合に車両が停止状態であると判断するようにしても構わない。これによっても、車両走行中に確実にチャイルドロック機構40を非伝達状態にさせつつ、防盗性を良好なものとすることができる。特に、運転手が車両を所定区域に一旦停車させた場合には、ギアをパーキングポジションにするか、あるいはフットブレーキを踏んだ状態にするのが一般的であり、このような場合にもチャイルドロック機構40を伝達状態にすることにより利便性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態であるドアロック装置を示した概念図である。
【図2】図1に示したドアロック装置においてチャイルドロック機構を非伝達状態とした場合の概念図である。
【図3】図1に示したドアロック装置において切替操作レバーをエマージェンシロック位置に移動させた場合の概念図である。
【図4】図1に示したドアロック装置を適用する車両の要部断面平面図である。
【図5】図1に示したドアロック装置に適用するラッチ機構の概念図である。
【図6】図1における VI−VI 線断面図である。
【図7】図1に示したドアロック装置において切替操作レバーの操作表示を示す概念図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるドアロック装置の制御系を示すブロック図である。
【図9】図8に示した制御ユニットが実施する走行検知制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】図8に示した制御ユニットが実施する停止検知制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】図8に示した制御ユニットが実施するダブルロック指令制御の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
26 ラチェットレバー
26a 当接部
30 ロック機構
31 ウォームホイール
32 セクタレバー
32a 連結ピン
32b 間欠ドリブンギア
33 リンクレバー
33a リンク本体
33b 装着孔
33c セクタ連結部
33d ラチェット駆動部
33e 連結用溝孔
33f ロックレバー部
33g 操作当接面
34 ホイール軸
35 電動モータ
35a 出力軸
36 ウォーム
37 間欠ギアホイール
38 セクタレバー軸
40 チャイルドロック機構
41 コネクトレバー
41a 伝達ピン収容部
41b 伝達端部
41c ピン収容孔
42 チャイルドレバー
42a スライド溝
42b 伝達ピン支承溝
42c ノッチ係合部
42d 手動操作部
42e ロック操作部
43 コネクトレバー軸
44 伝達ピン
45 チャイルドロックアクチュエータ
50 制御ユニット
51 入力処理部
52 走行状態判断部
53 ロックアクチュエータ駆動処理部
54 チャイルドロックアクチュエータ駆動処理部
B 車両本体
D ドア
DP パネル
DPO 操作開口
IDH インサイドドアハンドル
ODH アウトサイドドアハンドル
S ストライカ
S1 車速検知センサ
S2 ギアポジション検知センサ
S3 フットブレーキ検知センサ
SW ダブルロック指令スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に対してドアが閉位置に配置された場合にラッチ状態となってドアの開方向への移動を規制するラッチ機構と、
ドアハンドルから前記ラッチ機構に至るまでの間に介在し、アンロック状態においてドアハンドルが開扉操作された場合にこれをラッチ機構に伝達することによりラッチ状態を解除してドアの開方向への移動を許容する一方、ロック状態となった場合にはドアハンドルが開扉操作されてもラッチ機構のラッチ状態を維持するロック機構と、
前記ロック機構をロック状態とアンロック状態とに切り替えるロックアクチュエータと、
室内に配設したインサイドドアハンドルと前記ロック機構との間に介在し、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達しない非伝達状態とに切り替え可能に構成したチャイルドロック機構と、
前記チャイルドロック機構を伝達状態と非伝達状態とに切り替えるチャイルドロックアクチュエータと
を備えたドアロック装置において、
車速検知手段により検知された車速が予め決められた閾値以上の場合には、前記チャイルドロックアクチュエータに指令を与えて前記チャイルドロック機構を非伝達状態に切り替える一方、前記車速検知手段により検知された車速が前記閾値未満であって、ギアポジション検知手段によりギアがパーキングポジションであること及びフットブレーキ検知手段によりフットブレーキが踏まれていない状態であることの少なくとも一方が検知された場合には、前記チャイルドロックアクチュエータに指令を与えて前記チャイルドロック機構を伝達状態に切り替え、更に室外に配設したアウトサイドドアハンドル及び前記インサイドドアハンドルのいずれの開扉操作も無効化させるダブルロック指令が与えられた場合には、前記ロックアクチュエータに指令を与えて前記ロック機構をロック状態に切り替え、かつ前記チャイルドロックアクチュエータに指令を与えて前記チャイルドロック機構を非伝達状態に切り替える制御手段を備えたことを特徴とするドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−41216(P2009−41216A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205253(P2007−205253)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】