説明

ドアロック装置

【課題】低コストかつ簡単な構成で、通常のドア開閉方向と異なる方向の耐荷重性に優れるドアロック装置を提供する。
【解決手段】ドアまたは車両本体に固定されるベースプレートを備え、該ベースプレートに回動可能に支持されたフックによってストライカを保持または解放するドアロック装置において、ベースプレートにおけるドアまたは車両本体への固定部とフックを回動可能に支持する支持部との間に、通常は曲げ形状をなし、フックによるストライカ保持状態での支持部に対する該支持部との交差方向への荷重入力に応じて展開変形されて、固定部に対する支持部の相対移動を許す展開長延長壁部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けたドアを施解錠するドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアロック装置には、車両本体側とドア側の一方にストライカを備え、他方に該ストライカと係合可能なフック(ラッチ)と、該フックの回動を規制するラチェット(ポール)を備えたタイプが多用されている。この種のドアロック装置では、ドア閉成時に、ストライカと係合するフックがストライカ保持位置(ストライカ引込方向)へ回動されると、ラチェットがフックに係合して、ストライカ解放方向へのフックの回動が規制されてロック状態となる。ドアを開くときは、ラチェットをフックとの係合解除(アンラッチ)方向へ回動させると、フックによるストライカの解放が許されてドアを開くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなドアロック装置では、通常のドア開閉方向(フックに対するストライカの係脱方向)と異なる方向への荷重が作用した場合でも、安定した強度を保つことが求められる。具体的には、フックがストライカを保持するロック状態で、フックやラチェットの回動軸に沿う方向の荷重が作用した場合、フックやラチェットを支持しているベースプレートで荷重を受けることになる。この荷重に耐える強度を与えるべく、ベースプレートを肉厚に構成すると、製造コストが高くなり、重量も増してしまう。
【0005】
本発明は、低コストかつ簡単な構成で、通常のドア開閉方向と異なる方向の荷重に対して安定した強度を保つことが可能なドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ドアと車両本体の一方に固定されるベースプレートを備え、ドアと車両本体の他方に固定されるストライカを、該ベースプレートに回動可能に支持されたフックによって保持することでドアを全閉状態で保持し、該フックによるストライカ保持を解除することでドアの開放を許すドアロック装置において、ベースプレートにおけるドアまたは車両本体への固定部とフックを回動可能に支持する支持部との間に、通常は曲げ形状をなし、フックによるストライカ保持状態での支持部に対する該支持部との交差方向への荷重入力に応じて展開変形されて、固定部に対する支持部の相対移動を許す展開長延長壁部を形成したことを特徴としている。
【0007】
ベースプレートの固定部は、ドアまたは車両本体へ締結固定するための固定ねじを挿通させる固定ねじ挿通部を有し、該固定部における固定ねじ挿通部と支持部におけるフックの軸支部は、ベースプレートに形成したストライカ進入溝に対するストライカの進入方向へ位置をずらせており、展開長延長壁部の展開変形に応じて、固定部に対するフックの回動軸の倒れ角を大きくする方向に支持部の角度を変化させることが好ましい。
【0008】
ベースプレートは、固定部と支持部を該支持部及び固定部と交差する方向に離間させ、該固定部と支持部の間に延設される側壁部を有する形状であることが好ましい。その一態様として、側壁部を固定部と支持部の離間長よりも長く形成し、該側壁部の余剰長部分によって展開長延長壁部を構成することが可能である。例えば、固定部と側壁部の間に形成され、支持部から離れる方向に突出する湾曲形状部によって展開長延長壁部を構成することが好ましい。別の態様として、側壁部の少なくとも一部を非平面形状とすることで展開長延長壁部を構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明のドアロック装置によれば、ベースプレートが、展開長延長壁部を展開変形させることで固定部に対する支持部の位置変化を許容するので、通常のドア開閉方向と異なる方向、特にベースプレートの支持部に対して、該支持部との交差方向に作用するような荷重に対して安定した強度を保つことが可能となる。また、ベースプレートの固定部における固定ねじ挿通部と支持部におけるフックの軸支部を、ベースプレートのストライカ進入溝に対するストライカの進入方向へ位置をずらせて配し、展開長延長壁部の展開変形に応じて固定部に対するフックの回動軸の倒れ角を大きくさせることで、ベースプレートへのストライカ進入方向と直交する荷重(進直荷重)を、ストライカ進入方向の荷重に変えることができ、強度的により優れた構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したドアロック装置の実施形態の斜視図である。
【図2】同ドアロック装置のラッチ機構の分解斜視図である。
【図3】同ドアロック装置のラッチ機構のロック状態を上部プレートを外して示した斜視図である。
【図4】同ドアロック装置のラッチ機構のロック解除動作状態を上部プレートを外して示した斜視図である。
【図5】同ドアロック装置のラッチ機構のアンロック状態を上部プレートを外して示した斜視図である。
【図6】同ドアロック装置を自動車の後部ドアに搭載した様子を示す側面図である。
【図7】同ドアロック装置のラッチ機構を構成するベースプレートの断面図である。
【図8】ラッチ機構のベースプレートの異なる実施形態の断面図である。
【図9】ラッチ機構のベースプレートの異なる実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図示実施形態に基づき、本発明のドアロック装置を説明する。図6に示すように、ドアロック装置10は、後部ドア50を構成するアウタパネル51とインナパネル52の間に取り付けられており、後部ドア50を開閉可能に支持する車両本体60側のフレーム61には、ドアロック装置10に対して係脱するストライカSが設けられている。図6において、符号62はバンパー、符号53は、車両外からドアロック装置10をアンロック動作させるためのスイッチ、符号54はドアロック装置10と車両本体60側に搭載された制御装置とを接続するケーブルである。
【0012】
図1や図6に示すように、ドアロック装置10は、ストライカSに係合するラッチ機構10Rと、このラッチ機構10RとストライカSの係合を解除駆動するラッチ解除機構としての電動装置10Pとを備え、ラッチ機構10Rと電動装置10Pとが連結されている。
【0013】
図2に示すように、ラッチ機構10Rは、後部ドア50に対して固定的に取り付けられるベースプレート11と、ベースプレート11に対して中間フレーム21を挟んで固定される上部プレート31を備えている。この実施形態では、ベースプレート11及び上部プレート31は金属で形成されていて、中間フレーム21は合成樹脂で形成されている。
【0014】
図6に示すように、後部ドア50には、ドア閉成状態において下方を向くドア底壁部50aに、アウタパネル51とインナパネル52に挟まれるドア内部空間と外部とを連通するドア開口部50bが貫通形成されている。ベースプレート11は、図示しない固定ねじとナットを介してドア底壁部50aの内面側に締結固定される一対の固定フランジ部(固定部)11aを有し、この一対の固定フランジ部11aをドア底壁部50aに締結固定させた状態で、一対の側壁部11b及びその底部を接続する底板部(支持部)11cからなる箱状部がドア開口部50bを通して外方に突出する。ベースプレート11を後部ドア50のドア底壁部50aに固定するときには、一対の固定フランジ部11aに形成した筒状の固定ねじ挿通部11a-1に対して前述の固定ねじが挿通される。
【0015】
図2に示すように、ベースプレート11の一対の固定フランジ部11aは互いに略平行であり、底板部11cは、この一対の固定フランジ部11aに対して斜め下方に突出する傾斜面部となっている。一対の固定フランジ部11aと底板部11cは互いにその板面と交差する方向(後述するフック14やラチェットレバー15を軸支する軸ピン12、13の軸線に沿う方向)に離間しており、この一対の固定フランジ部11aと底板部11cの両側部との間に一対の側壁部11bが延設されている。一対の側壁部11bはそれぞれ、固定フランジ部11aと底板部11cの離間長よりも長く形成されており、各側壁部11bの余剰長部分を固定フランジ部11a側に突出させることによって、一対の展開長延長壁部11dが形成されている。より詳しくは、それぞれの展開長延長壁部11dは、固定フランジ部11aから上方(底板部11cと反対方向)に突出され、下方(底板部11cに接近する方向)に折り返されて側壁部11bに連続していく湾曲形状部であり、その折り返し部分は滑らかな円弧状に形成されている。一対の展開長延長壁部11dは、ベースプレート11の幅方向の中央を挟んで互いに略対称な形状となっている。
【0016】
図2に示すように、ベースプレート11の底板部11cには、ストライカSが進入可能なストライカ進入溝11eが形成され、ストライカ進入溝11eを挟んで位置する軸穴11f、11gに対して、軸ピン12と軸ピン13が挿通されている。軸ピン12は、フック14に形成した軸穴14aに挿通され、フック14は、軸ピン12を中心として回動可能に支持されている。軸ピン13はラチェットレバー15に形成した軸穴15aに挿通され、ラチェットレバー15は、軸ピン13を中心して回動可能に支持されている。ベースプレート11の底板部11cには、軸ピン12、13が挿通される軸穴11f、11gの周囲に支持座11h、11iが形成されており、フック14は支持座11h上に、ラチェットレバー15は支持座11i上にそれぞれ支持されている。
【0017】
フック14は、軸穴14aを中心とする略半径方向に向けて形成されたストライカ保持溝14bを備えている。このストライカ保持溝14bは、一対の第1脚部14cと第2脚部14dの間に形成されている。第2脚部14dの先端部付近には、ストライカ保持溝14bに臨む側にラチェットレバー係合段部14eが形成されている。
【0018】
フック14は、軸穴14a(軸ピン12)の軸心を中心として、図3に示すストライカ保持位置と図4及び図5に示すストライカ解放位置の間で回動可能であり、トーションばね16によって、ストライカ解放位置(図3ないし図5における反時計方向)に向けて回動付勢されている。トーションばね16は、軸ピン12を囲むコイル部と、フック14のばね掛け突起14f及び中間フレーム21に係合(当接)する端部からなる一対のばね端部を備えている。
【0019】
ラチェットレバー15は、先端面がラチェットレバー係合段部14eに係合してフック14のストライカ解放位置方向の回転を規制してストライカ保持位置(ロック状態)に保持するフック係合突起15bと、側面がオープンレバー45の解除突部45a(図3ないし図5)に押圧されてラチェットレバー係合段部14eとの係合を解除する方向への回動操作力を受けるオープン突起15cを備えている。
【0020】
ラチェットレバー15は、軸穴15a(軸ピン13)の軸心を中心として、フック係合突起15bを該フック14のラチェットレバー係合段部14eの移動軌跡上に位置させる(ラチェットレバー係合段部14eと係合可能な)ラッチ位置(図3)と、フック係合突起15bをラチェットレバー係合段部14eの移動軌跡上から退避させる(ラチェットレバー係合段部14eと係合しない)アンラッチ位置(図4)の間で回動可能に形成され、トーションばね17によって、アンラッチ位置からラッチ位置方向(図3ないし図5における時計方向)に回動付勢されている。トーションばね17は、軸ピン13を囲むコイル部と、ラチェットレバー15のばね掛け突起15d及び中間フレーム21に係合(当接)する一対のばね端部を備えている。
【0021】
中間フレーム21には、ストライカSが進入可能な、ベースプレート11のストライカ進入溝11eに対応するストライカ進入溝21aが形成され、軸穴11f、11gと対向する位置に軸穴21b、21cが形成されていて、これらの軸穴21b、21cに軸ピン12、13が挿通される。ストライカ進入溝21aの最深部には、ストライカ進入溝21aに進入して来たストライカSに当接して衝撃を吸収する緩衝部材としてのクッションゴム23が挿入保持される。
【0022】
中間フレーム21の上部には、トーションばね16、17とクッションゴム23を覆うように上部プレート31が固定される。この上部プレート31にも、ベースプレート11や中間フレーム21のストライカ進入溝11e、21aと同様のストライカ進入溝31aが形成されていて、さらにベースプレート11の軸穴11f、11g、中間フレーム21の軸穴21b、21cを挿通された軸ピン12、13の先端部が嵌合する軸穴31b、31cが形成されている。これらの軸穴31b、31cに、軸穴11f、21b、軸穴11g、21cを貫通した軸ピン12、13の先端が挿入されて、潰し、カシメ加工等により固定される。
【0023】
さらに上部プレート31には、電動装置10Pと連結するための屈曲突片31dが設けられ、屈曲突片31dにねじ挿通穴31eが形成されている。このねじ挿通穴31eを挿通したねじ(図示省略)を電動装置10P側のねじ穴に螺合させることにより、図1のようにラッチ機構10Rが電動装置10Pに固定される。電動装置10Pは、ケース41内に設けたモータ(図示省略)によって偏芯カム付きのウォームホイール(図示省略)が回転駆動され、この偏芯カムにカム摺接端部45cを当接させたオープンレバー45(図3ないし図5)が、ウォームホイールの回転に応じて軸穴45bを中心として揺動される。オープンレバー45にはさらに、モータの駆動力とは別に、車両内からの手動による回動操作力を伝達するための手動操作屈曲片45dが形成されている。
【0024】
次に、ドアロック装置10の動作を図3ないし図5を参照して説明する。図3に示すロック状態では、フック14がストライカ保持位置にあって、ストライカSが、フック14のストライカ保持溝14b内に保持されている。ラチェットレバー係合段部14eにラチェットレバー15のフック係合突起15bが係合して、フック14がストライカ解放方向に回動するのを阻止している。
【0025】
このロック状態から、電動装置10Pのモータがロック解除方向に駆動されるとオープンレバー45が回動して、解除突部45aがラチェットレバー15のオープン突起15cを押圧してラチェットレバー15をアンラッチ位置方向に回動させる。このオープンレバー45のロック解除用の回動は、手動操作屈曲片45dを経由しての手動操作で行うこともできる。ラチェットレバー15がアンラッチ位置に回動すると、ラチェットレバー15のフック係合突起15bがフック14のラチェットレバー係合段部14eから外れてフック14を自由状態にする。すると、フック14がトーションばね16の付勢力によってストライカ解放位置に向けて回動して、ストライカSがストライカ保持溝14bから抜け出る(図4参照)。これによりドアロック装置10はロック解除状態となり、後部ドア50は自由に開放可能になる。
【0026】
電動装置10Pのモータはさらにロック解除方向に回動して、ウォームホイールが1回転したときに停止する。これによりオープンレバー45はロック状態と同一の位置に戻る(図5)。しかし、フック14はストライカ解放位置まで回転して停止しているので、トーションばね17の回動付勢力によってラッチ位置方向へ回動されたラチェットレバー15が、フック係合突起15bをフック14の第2脚部14dの外周面に当接させて停止された、アンロック状態になっている。
【0027】
このアンロック状態で後部ドアが閉じられると、ストライカSは、まずフック14の第2脚部14dに当接し、フック14をロック方向に回動させながら、ストライカ進入溝11e、21a及び31aに進入し、その深部に向けて進む。フック14は、第2脚部14dの外周面をラチェットレバー15のフック係合突起15bに摺接させながらストライカ保持位置方向に回動する。
【0028】
ストライカSがストライカ進入溝11e、21a及び31aの最深部まで進むと、ラチェットレバー15のフック係合突起15bがフック14のラチェットレバー係合段部14eに係合する位置まで回動する。一方、ストライカSはクッションゴム23に衝突して停止する。ストライカSはクッションゴム23の弾性復元力によってストライカ進入溝11e、21a及び31aから出る方向に押されるが、フック14はラチェットレバー係合段部14eがラチェットレバー15のフック係合突起15bに係合してストライカ解放方向の回転が阻止されているので、ストライカSはその位置に保持される。つまり、図3のロック状態となる。
【0029】
以上のドアロック装置10では、フック14がストライカSを保持するロック状態(図3、図6)で、通常のドア開閉動作時と異なる方向への過大な荷重がベースプレート11に作用した場合に、次のようにロック状態を維持しながら安定した強度を保つことができる。例えば、図6において、車両本体60と後部ドア50の間に、ストライカSとドアロック装置10を上下方向に離間させるような荷重が作用したとする。具体的には、ベースプレート11に対してストライカSを車両下方に変位させる方向の荷重であり、ベースプレート11の底板部11cを基準として、ストライカSが、通常のロック及びアンロック操作におけるストライカ進入溝11e、21a及び31aへの進入方向と交差する方向(進直方向)へ引っ張られる状態である。この荷重は、ストライカSを保持するフック14を経由して、該フック14を軸支する軸ピン12の軸線方向に沿ってベースプレート11の底板部11c(支持座11h)を下方に押し下げるように作用する。換言すれば、ベースプレート11に対して、底板部11cを固定フランジ部11aから離間させる方向の荷重が作用する。ラッチ機構10Rは、ストライカSの挿脱方向(ストライカ進入溝11e、21a及び31aの形成方向)への荷重に対しては、肉厚のフック14やラチェット15の係合でストライカSを保持するため、高い耐荷重性が確保されている。一方、ストライカ進入溝11e、21a及び31aと交差する方向への荷重は、ベースプレート11の底板部11cにおける板面交差方向(板厚方向)への荷重として入力されるため、ベースプレート11単体での耐荷重性能が要求される。ここで、底板部11cを含むベースプレート11の肉厚を増大させるという手法で強度アップを図ると、製造コストが高くなり、部品重量も増大してしまうというデメリットがある。
【0030】
これに対し、本実施形態のベースプレート11は、荷重を受ける底板部11cと、ベースプレート11を固定させる各固定フランジ部11aとの間を、最も短絡する形状の側壁部11bのみで接続するのではなく、展開長延長壁部11dを含ませることによって展開長に余裕を持たせた形状としている。そして、底板部11cを図6の下方に変位させるような板面交差方向への過大な荷重が加わったときには、図7に一点鎖線で示すように、両側の展開長延長壁部11dが、上方への突出量を減ずる代わりに側壁部11bの展開長を長くさせる態様で、曲げ形状状態から展開変形され、固定フランジ部11aに対する底板部11cの離間方向移動を許す。これにより、ベースプレート11の部分的な切断などによる強度低下を生じることなく、フック14によるストライカSの保持状態を維持することができる。つまり、後部ドア50のロック状態が意図せず解除されてしまうことを防ぐことができる。なお、展開長延長壁部11dは通常の曲げ状態では滑らかに湾曲した形状であるため、スムーズに展開変形することができる。
【0031】
ベースプレート11において、固定フランジ部11aの固定ねじ挿通部11a-1が形成されている位置と、底板部11cにおけるフック14やラチェット15の軸支位置(軸ピン12及び13、支持座11h及び11i)は、ストライカ進入溝11e、21a及び31aに対するストライカSの進入(離脱)方向、すなわち前後方向にオフセットした関係にある。そして、底板部11cへの荷重入力に応じてベースプレート11が展開長延長壁部11dを展開変形させるときには、底板部11cは、その先端部が徐々に下方に向くように(荷重の作用方向と平行な状態に近付くように)、固定フランジ部11aに対する傾斜の度合いを大きくさせる。すると、ベースプレート11の底板部11c上にフック14及びラチェット15を軸支させる軸ピン12、13の、固定フランジ部11aに対する倒れ角が大きくなる。その結果、底板部11cを板面と交差する方向に押圧する荷重成分(ストライカ進直方向の荷重)が徐々に減じ、代わりにストライカSがフック14(の第1脚部14c)をストライカ解放位置に向けて引っ張ろうとする荷重成分(ストライカ進入方向の荷重)が増える。これにより、ベースプレート11に変形を生じさせた荷重を、フック14とラチェット15の係合部分によっても受けることとなり、耐荷重性を高めて後部ドア50のロック状態を確実に維持することができる。つまり、ベースプレート11は、単に展開長延長壁部11dの変形で荷重を吸収するだけでなく、当該変形に応じてドアロック装置10に作用する荷重成分の向きを変化させることにより、より安定した強度確保を達成している。
【0032】
また、図7に示すように、ベースプレート11では、固定フランジ部11aと側壁部11bの間に展開長延長壁部11dを形成したことによって、後部ドア50の底壁部50aにおけるドア開口部50bの開口幅を狭くすることが可能となっている。すなわち、展開長延長壁部11dを備えない場合(図7の一点鎖線で示す形状)では、固定フランジ部11aと側壁部11bを滑らかに接続させるための接続領域が形成され、ドア開口部50bの開口幅は、この接続領域との干渉を避ける大きさ(W2以上)に設定する必要がある。これに対し、本実施形態のように展開長延長壁部11dを形成すると、固定フランジ部11aから側壁部11bに至る部分においてドア開口部50bの内縁部と干渉する箇所が存在せず、ドア開口部50bの開口幅を、一対の側壁部11bに近接するまで(W1)狭くすることが可能となった。ドア開口部50bの開口幅を狭くすることは後部ドア50の強度確保に有利であるから、ベースプレート11に展開長延長壁部11dを形成したことは、ベースプレート11のみならず、後部ドア50の強度向上にも寄与する。
【0033】
なお、この実施形態のベースプレート11では、固定フランジ部11aと底板部11cの板面と交差する方向での離間長よりも長く側壁部11bを形成し、その余剰長部分を固定フランジ部11aとの間で折り返すことによって展開長延長壁部11dを形成しているが、側壁部11bの余剰長部分を底板部11cとの間で折り返した形態の展開長延長壁部を形成することも可能である。すなわち、図7に示す形態では、固定フランジ部11aと側壁部11bの間に上方へ凸となる形態で展開長延長壁部11dを形成しているが、底板部11cと側部11bの間に下方へ凸となる形態で展開長延長壁部を形成することも可能である。
【0034】
図8及び図9は、展開長延長壁部の形成位置を異ならせた別実施形態のベースプレート111、211の断面形状を示している。先の実施形態のベースプレート11が、固定フランジ部11aと底板部11cの板面交差方向での離間長よりも長く形成された側壁部11bの余剰長部分を、固定フランジ部11a(または底板部11c)との間で上方(または下方)に折り返すことによって展開長延長壁部11dを形成しているのに対し、図8のベースプレート111や図9のベースプレート211は、側壁部111bや側壁部211bを非平面形状にすることによって展開長延長壁部を形成している。
【0035】
具体的には、図8に示すベースプレート111は、一対の固定フランジ部111aと底板部111cを接続する一対の側壁部111bの上部領域に、互いにベースプレート111の中央方向へ向けて凸となる一対の展開長延長壁部111dを形成している。展開長延長壁部111dは、固定フランジ部111aに続けてベースプレート111の中央方向に突出されてから側壁部111b側に折り返された曲げ形状部である。
【0036】
図9に示すベースプレート211は、一対の固定フランジ部211aと底板部211cを接続する一対の側壁部211bの下部領域に、互いにベースプレート211の中央から離れる方向へ向けて凸となる一対の展開長延長壁部211dを形成している。展開長延長壁部111dは、底板部211cに続けてベースプレート211の中央から離れる方向に突出されてから側壁部211b側に折り返された曲げ形状部である。
【0037】
図8や図9の形態では、ベースプレート111、211の底板部111c、211cに対して図中の下方(固定フランジ部111a、211aから離間させる方向)への過大な荷重が作用したとき、湾曲した形状の展開長延長壁部111d、211dを平面に近づけるように展開変形させることで、底板部111c、211cの下方への変位を許す。これにより、ロック状態を維持させながら荷重に耐えることができる。
【0038】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態はいわゆるミニバンの後部ドアロック装置に適用したものであるが、本発明はミニバン以外の車種や、後部ドア以外のドアにも適用が可能である。
【0039】
また、ドアロック装置10とストライカSの位置関係を、図示実施形態とは逆にし、後部ドア50側にストライカSを設け、車両本体60側にドアロック装置10を設けることも可能である。
【0040】
また、本発明はラッチ機構10Rに対するラッチ解除機構の詳細構造を問うものではなく、図示するモータ付きの電動装置10Pに代えて、手動のラッチ解除機構のみを備えたラッチ解除機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 ドアロック装置
10P 電動装置
10R ラッチ機構
11 ベースプレート
11a 固定フランジ部(固定部)
11b 側壁部
11c 底板部(支持部)
11d 展開長延長壁部
11e ストライカ進入溝
12 軸ピン(フックの回動軸)
13 軸ピン(ラチェットレバーの回動軸)
14 フック
15 ラチェットレバー
21 中間フレーム
31 上部プレート
45 オープンレバー
50 後部ドア
60 車両本体
S ストライカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアと車両本体の一方に固定されるベースプレートを備え、ドアと車両本体の他方に固定されるストライカを、該ベースプレートに回動可能に支持されたフックによって保持することでドアを全閉状態で保持し、該フックによるストライカ保持を解除することでドアの開放を許すドアロック装置において、
上記ベースプレートは、
上記ドアと車両本体の一方に対して固定される固定部と;
上記フックを回動可能に支持する支持部と;
上記固定部と上記支持部の間に形成され、通常は曲げ形状をなし、上記フックによるストライカ保持状態での上記支持部に対する該支持部との交差方向への荷重入力に応じて展開変形されて、上記固定部に対する上記支持部の相対移動を許す展開長延長壁部と;
を有していることを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のドアロック装置において、上記ベースプレートの固定部は、ドアまたは車両本体へ締結固定するための固定ねじを挿通させる固定ねじ挿通部を有し、該固定部における固定ねじ挿通部と上記支持部における上記フックの軸支部は、上記ベースプレートに形成したストライカ進入溝に対する上記ストライカの進入方向へ位置をずらせており、上記展開長延長壁部の展開変形に応じて、上記固定部に対するフックの回動軸の倒れ角を大きくする方向に上記支持部の角度を変化させることを特徴とするドアロック装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のドアロック装置において、上記ベースプレートは、上記固定部と上記支持部を該支持部及び固定部と交差する方向に離間させ、該固定部と支持部の間に延設される側壁部を有しており、該側壁部を固定部と支持部の離間長よりも長く形成し、該側壁部の余剰長部分によって上記展開長延長壁部を構成したことを特徴とするドアロック装置。
【請求項4】
請求項3記載のドアロック装置において、上記展開長延長壁部は、上記固定部と側壁部の間に形成した、上記支持部から離れる方向に突出する湾曲形状部からなることを特徴とするドアロック装置。
【請求項5】
請求項1または2記載のドアロック装置において、上記ベースプレートは、上記固定部と上記支持部を、該支持部及び固定部と交差する方向に離間させ、該固定部と支持部の間に延設される側壁部を有しており、該側壁部の少なくとも一部を非平面形状とすることで上記展開長延長壁部を構成したことを特徴とするドアロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate