説明

ドアロック装置

【課題】ドアトリムとドアロック本体の間の位置精度の向上と、ドアトリムの安定性の向上に寄与するドアロック装置を提供する。
【解決手段】車両ボディに対して開閉可能なドアの車両内側に設けられるドアトリムと、ドアに設けられて施解錠を行うドアロック本体と、ドアロック本体のドアトリムからの突出部分を覆うロックカバーと、ロックカバーとドアトリムとを固定させる固定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けたドアを施解錠するドアロック装置に関し、特にドアロック装置の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドアロック装置は、ベースプレート上にフック(ラッチ)とラチェット(ポール)を支持し、ドア閉成時に、ストライカと係合したフックがストライカ保持位置(ストライカ引込方向)へ回動されると、ラチェットがフックに係合して、ストライカ解放方向へのフックの回動が規制されてロック状態となる。ドアを開くときは、ラチェットをフックとの係合解除(アンラッチ)方向へ回動させると、フックによるストライカの解放が許されてドアを開くことが可能となる。
【0003】
フックやラチェットを含むドアロック装置の本体部分をドア側に設け、ストライカを車体側に設ける場合、ドア側に設けられるドアロック本体の一部(フックやラチェットの支持部分)は、ストライカの進入を可能にするべくドアから露出させる必要がある。このドアロック本体の外観露出部分に対して、ストライカの進入経路以外の箇所を覆うロックカバーを設け、フックやラチェットなどの機構部分の保護や外観性の向上を図ったものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4742364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロックカバーはドアロック装置を構成するベースプレートの一部を挿入させる箱状をなしていて、ドアロック装置はロックカバーを被着させた状態でドアを構成するドアパネルに対して固定される。ドアパネルの車内側には内装部品であるドアトリムが取り付けられるが、従来、ドアロック装置やロックカバーがドアトリムと締結されておらず、ドアロック装置とドアトリムの厳密な位置合わせを行いにくかった。また、ドアロック装置の近辺ではドアパネルに対してドアトリムが固定されないため、ドア開閉の際にドアトリムの振れ(バタつき)が起こり、異音を生ずるおそれもある。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ドアトリムとドアロック本体の間の位置精度の向上と、ドアトリムの安定性の向上に寄与するドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両ボディに対して開閉可能なドアの車両内側に設けられるドアトリムと、ドアに設けられて該ドアの施解錠を行うドアロック本体と、ドアロック本体のドアトリムからの突出部分を覆うロックカバーと、ロックカバーとドアトリムとを固定させる固定手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
ロックカバーは、ドアロック本体のドアトリムからの突出部分を覆うカバー本体と、このカバー本体から突出してドアトリムの壁面に沿う方向に延びる支持片部を備え、ドアトリムを該支持片部に固定させるとよい。ロックカバーはドアロック本体を挿入させるカバー本体の開口方向に型割りされる成形型によって成形され、支持片部の周縁から成形型の型割り方向に延びるフランジや、支持片部の裏面から成形型の型割り方向に延びるリブを設けることが好ましい。
【0009】
ロックカバーの支持片部とドアトリムとにそれぞれ形成した孔部に挿入されて締結固定させる挿入固定部材によって固定手段を構成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、ドアトリムに対してロックカバーを固定することにより、ドアトリムとドアロック本体の間の位置精度の向上と、ドアトリムの安定性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ドアロック本体からロックカバーを取り外した状態を示す図である。
【図2】ドアロック本体にロックカバーを組み付けた状態を示す図である。
【図3】ドアロック本体とロックカバーの結合体をドアトリムに対して支持させた状態を車内側から見た図である。
【図4】図3でドアロック本体を透視して示した図である。
【図5】図3のA矢視図である。
【図6】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図7】ロックカバーの斜視図である。
【図8】ロックカバーを異なる角度から見た斜視図である。
【図9】ロックカバーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すドアロック本体10は、車両のドアに設けられており、図示しない車両ボディ側のストライカ(図示省略)に係脱するラッチ機構と、このラッチ機構を駆動する電動駆動機構をベースプレート11上に支持した構造になっている。ベースプレート11は、ベース部11aと、ベース部11aよりも幅狭の突出部11bを有し、突出部11bの先端からベース部11aに向かう方向へストライカ進入溝11cが形成されている。突出部11bは先端に向かうにつれて徐々に幅を狭くする形状を有している。
【0013】
ラッチ機構と電動駆動機構は周知の構成であるため簡略に説明する。図1に示すように、ベースプレート11の突出部11b上に、ストライカ進入溝11cを挟んで一対の回動軸12x、13xが設けられ、一方の回動軸12xにフック12が軸支され、他方の回動軸13xにラチェットレバー13が軸支されている。
【0014】
フック12の先端は二股状になっており、その間にストライカ保持溝12aを有する。フック12は、ストライカ保持溝12aをストライカ進入溝11cと交差させるストライカ保持位置(図1に示す位置)と、ストライカ保持溝12aをストライカ進入溝11c上から退避させたストライカ解放位置(図1よりも時計方向に回動した位置)の間で回動(揺動)可能であり、ストライカ解放位置に向けて回動付勢されている。
【0015】
ラチェットレバー13は、フック12に係合して該フック12をストライカ保持位置に保持させる係止位置と、フック12に対する係止を解除してストライカ解放位置への回動を許す係止解除位置に回動(揺動)可能である。ラチェットレバー13は係止位置へ回動付勢されており、オープンレバー14を操作することによって係止解除位置に回動させることができる。
【0016】
フック12と同軸にクローズレバー15が支持されている。クローズレバー15は、ベース部11aに固定されたモータ16の駆動力で回動され、ストライカ保持溝12aにストライカが進入したときにフック12をストライカ保持位置まで回動させることができる。
【0017】
ドアは車外側のアウタパネル(図示省略)と車内側のインナパネル40(図6に一部を示す)を有し、インナパネルの車内側に内装部品であるドアトリム20が取り付けられる。ドアロック本体10はインナパネルとドアトリム20の間に配置され、ベースプレート11がインナパネル40に対して固定される。ドアトリム20とインナパネル40の下部には開口部21(図3、図4)が形成されており、開口部21を通してベースプレート11の突出部11bが突出する。このドアロック本体10の突出部分(特に、ベースプレート11の突出部11b上のフック12やラチェットレバー13など)を保護すると共に外観性を向上させるためのロックカバー30が備えられる。
【0018】
ロックカバー30は合成樹脂の成形品であり、図7ないし図9に示すように、突出部11bを覆う中空状のカバー本体30aと、カバー本体30aに形成されたスリット状のストライカ進入孔30bと、カバー本体30aの基端部に形成した支持フランジ部30cと、カバー本体30a及び支持フランジ部30cに対して突出する支持片部30dを有する。支持片部30dにはクリップ嵌入孔30eが貫通形成されている。また、図8に示すように、支持片部30dの裏側(後述する組み付け状態におけるドアトリム20との対向面の反対側)には複数の補強リブ(補強部)30fが形成され、強度が確保されている。より詳しくは、支持フランジ部30cは、カバー本体30aの両側に形成された一対の幅広部30c-1と、一対の幅広部30c-1を接続する幅狭部30c-2を有しており、支持片部30dは幅狭部30c-2の中央から突出形成された立壁状の部位である。支持片部30dの周縁には、支持片部30dの裏面側に向けて突出する周縁フランジ(補強部)30gが形成されており、補強リブ30fは、周縁フランジ30gと支持片部30dの裏面とカバー本体30aの内面を接続する板状の部位として形成されている。このように補強リブ30fと周縁フランジ30gを形成したことで、支持片部30dの強度が向上する。
【0019】
ロックカバー30のカバー本体30aには、ドアロック本体10におけるベースプレート11の突出部11bを挿入させるカバー開口部30h(図8、図9)が形成されている。支持フランジ部30cは、このカバー開口部30hを囲む態様で形成されており、支持片部30dはカバー開口部30hの周縁に設けられている。ロックカバー30は上型と下型からなる成形型によって成形され、成形に際しては、上型が下型に対して図7の矢印Cで示す方向、すなわちカバー開口部30hの開口方向へ離型(型割り)される。補強リブ30fと周縁フランジ30gは、この型割り方向へ延出されているため製造が容易である。
【0020】
図2に示すように、カバー本体30aに対してベースプレート11の突出部11bを挿入させることで、ロックカバー30がドアロック本体10に組み付けられる。この挿入状態では突出部11bがカバー本体30aに対して圧入されており、ロックカバー30がドアロック本体10から脱落しない。ストライカ進入孔30bはベースプレート11のストライカ進入溝11cと重なって位置し、ストライカ進入溝11cへのストライカの進入がロックカバー30によって妨げられることがない。
【0021】
ドアロック本体10は、ロックカバー30を嵌合させた状態でドアのインナパネル40に組み付けられ、さらにインナパネル40に対してドアトリム20が取り付けられる。ドアトリム20には、開口部21の周辺に支持フランジ部30cを当接させる支持面20a(図3ないし図5)が形成されており、インナパネル40にドアトリム20を取り付けると、支持面20a上にロックカバー30の支持フランジ部30cが支持される。
【0022】
以上の組み付け状態で、図3ないし図5に示すように、ドアトリム20下部の開口部21からロックカバー30のカバー本体30aが突出する。換言すれば、ドアロック本体10におけるドアトリム20からの突出部分(ベースプレート11の突出部11b)が、ロックカバー30のカバー本体30aに覆われている。これにより、突出部11b上に支持されるフック12やラチェット13からなるラッチ機構が保護される。また、ラッチ機構をロックカバー30で覆うことにより、外観性も向上する。
【0023】
図6に示すように、ドアロック本体10、ドアトリム20及びロックカバー30の組み付け状態で、ロックカバー30の支持片部30dは、補強プレート22を挟んでドアトリム20の壁面に沿って(対向して)位置しており、ドアトリム20には、支持片部30dのクリップ嵌入孔30eに対向する位置にクリップ挿入孔20b(図3、図4、図6)が貫通形成されている。クリップ挿入孔20bよりもクリップ嵌入孔30eの方が開口径(開口幅)が小さく設定されている。このドアトリム20側のクリップ挿入孔20bとロックカバー30側のクリップ嵌入孔30eに対して、締結用のクリップ(固定手段、挿入固定部材)25(図3ないし図6参照)が挿入される。
【0024】
図5及び図6に示すように、クリップ25は軸部25aと頭部25bを有しており、軸部25aの先端には、先細で頭部25b側に向けて径を大きくする鈎状断面を有する先端突起25cが形成されている。先端突起25cと頭部25bの間の軸部25aの外周には、薄い環状をなす複数の抜止フィン25dが軸方向に連続して形成されている。先端突起25cの最大径と抜止フィン25dはそれぞれクリップ嵌入孔30eの内径サイズよりも大径であり、径を小さくする方向に弾性変形可能である。クリップ25は、先端突起25cを先頭にして軸部25aがクリップ挿入孔20b側からクリップ嵌入孔30eに向けて挿入される。この挿入時には、まず先端突起25c、続いて一部の抜止フィン25dがそれぞれ縮径されながらクリップ嵌入孔30eを通過し、図6のように頭部25bがトリム20に当接するまで挿入されると、クリップ嵌入孔30eを通過した先端突起25cと一部の抜止フィン25dが支持片部30dの背後に位置し、挿入と反対方向へのクリップ25の移動を規制する。これによりクリップ25が抜け止めされ、ドアトリム20とロックカバー30が締結される。このようにクリップ25を介して固定したことにより、ドアトリム20とロックカバー30(及びロックカバー30が嵌合しているドアロック本体10)の相対位置を正確に定めることができる。また、ドアロック本体10の周辺ではドアのインナパネル40に対してドアトリム20を直接的に固定させることが難しいという制約があるが、クリップ25を用いてロックカバー30にドアトリム20を固定することで、ロックカバー30及びドアロック本体10経由でドアトリム20が確実に支持され、ドアの開閉時にドアトリム20が振れて異音を生じさせるおそれがなくなる。
【0025】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態ではクリップ25をひとつだけ用いているが、2つ以上のクリップ25を用いてドアトリム20とロックカバー30の締結固定を行ってもよい。その場合、ドアトリム20とロックカバー30のそれぞれに、クリップ25の数に対応した数のクリップ挿入孔20b、30eを形成する。
【0026】
あるいは、ドアトリム20とロックカバー30の固定手段として、クリップ25に変えて面ファスナーなどを用いることも可能である。具体的には、面ファスナーを構成するフック面とループ面の一方をロックカバー30の支持片部30dに設け、支持片部30dに対向するドアトリム20の壁面にフック面とループ面の他方を設ければよい。
【0027】
また、図示実施形態のドアロック本体10は、電動駆動機構を用いてフック12の駆動を行うタイプであるが、このような電動駆動機構を備えないタイプのドアロック装置に対しても本発明は適用が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 ドアロック本体
11 ベースプレート
11a ベース部
11b 突出部
11c ストライカ進入溝
12 フック
12a ストライカ保持溝
13 ラチェットレバー
14 オープンレバー
15 オープンレバー
16 モータ
20 ドアトリム
20a 支持面
20b クリップ挿入孔
21 開口部
22 補強プレート
25 クリップ(固定手段、挿入固定部材)
30 ロックカバー
30a カバー本体
30b ストライカ進入孔
30c 支持フランジ部
30c-1 幅広部
30c-2 幅狭部
30d 支持片部
30e クリップ嵌入孔
30f 補強リブ(補強部)
30g 周縁フランジ(補強部)
30h カバー開口部
40 インナパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに対して開閉可能なドアの車両内側に設けられるドアトリム;
上記ドアに設けられて該ドアの施解錠を行うドアロック本体;
上記ドアロック本体の上記ドアトリムからの突出部分を覆うロックカバー;及び
上記ロックカバーと上記ドアトリムとを固定させる固定手段;
を備えたことを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のドアロック装置において、上記ロックカバーは、上記ドアロック本体の上記ドアトリムからの突出部分を覆うカバー本体と、該カバー本体から突出して上記ドアトリムの壁面に沿う方向に延びる支持片部を有し、上記ドアトリムが該支持片部に固定されるドアロック装置。
【請求項3】
請求項2記載のドアロック装置において、上記ロックカバーは、上記ドアロック本体を挿入させる上記カバー本体の開口方向に型割りされる成形型によって成形され、上記支持片部の周縁から上記成形型の型割り方向に延びるフランジを有しているドアロック装置。
【請求項4】
請求項2記載のドアロック装置において、上記ロックカバーは、上記ドアロック本体を挿入させる上記カバー本体の開口方向に型割りされる成形型によって成形され、上記支持片部の裏面から上記成形型の型割り方向に延びるリブを有しているドアロック装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項記載のドアロック装置において、上記固定手段は、上記ロックカバーの支持片部と上記ドアトリムとにそれぞれ形成した孔部に挿入されて締結固定させる挿入固定部材からなるドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112960(P2013−112960A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258601(P2011−258601)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】