説明

ドア回動機構及びそれを備えた電子機器

【課題】ドアを良好な感触で回動させるコンパクトなドア回動機構を提供する。
【解決手段】ドア回動機構(51)を、係合部(2d)と接触部(2f)とを有するドア(2)と、係合部(2d)と係合してドア(2)を所定の軸線(KZ1)まわりに所定の軌跡で移動可能とするガイド部(6a6)と、接触部が接触するカム面(4am)を有するカム(4)と、カム面(4am)を接触部(2f)に押圧させるようカム(4)を所定の軸線(KZ1)の延在方向と直交する方向に付勢する付勢部材(5)と、を備えるものにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア回動機構及びそれを備えた電子機器に係る。
【背景技術】
【0002】
電子機器として、外部から操作するための操作部や外部機器と接続するための端子接続部を備え、不使用時や非接続時に操作部や端子接続部を開閉するドアを備えたものが知られており、例えば特許文献1に記載された電子機器がある。
【0003】
特許文献1に記載された電子機器は、撮像装置であり、筐体の一部であるメモリーカードを挿抜するスロット及びその近傍部位を覆うように回動する開閉ドアを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−067274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器は小型化が追求されている。
そのため、ドアの回動機構は少ない容積で納められるコンパクトな機構であることが望まれている。
【0006】
また、電子機器が高級感を訴求する商品である場合には、ユーザが指などで開閉するドアの回動感触を良好にしてユーザの期待に応えることが望まれる。
例えば、ドアが、回動における開位置と閉位置とに良好に誘導され、その両位置間の移動には適度な回動抵抗が付与される回動機構にすると、ドアの回動動作においてユーザは高級感を感じることができる。
この高級感を感じ得るドアの回動機構は、カム機構を用いて良好に実現することができる。具体的には、カム面とカム面を摺動する接触子とを、回動軸の延在方向に付勢するカム機構である。
【0007】
しかしながら、このカム機構では、通常ドアの長手方向に設定される回動軸の延在方向に、付勢部材,カム部材,及び接触子を連ねて配置することになるので、長手寸法がさらに長くなってしまい、電子機器をコンパクトにし難くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、ドアを良好な感触で回動させるコンパクトなドア回動機構を提供する。
また、ドア回動機構を備えたコンパクトな電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1)〜4)の構成を有する。
1) 係合部(2d)と接触部(2f)とを有するドア(2)と、
前記係合部(2d)と係合して前記ドア(2)を所定の軸線(KZ1)まわりに所定の軌跡で移動可能とするガイド部(6a6)と、
前記接触部が接触するカム面(4am)を有するカム(4)と、
前記カム面(4am)を前記接触部(2f)に押圧させるよう前記カム(4)を前記所定の軸線(KZ1)の延在方向と直交する方向に付勢する付勢部材(5)と、
を備えたドア回動機構(51)である。
2) 前記接触部(2f)は、前記ドア(2)の前記所定の軌跡での移動に対応して前記カム面(4am)に対して転接する転接面(TS)を有することを特徴とする1)に記載のドア回動機構(51)である。
3) 前記所定の軸線(KZ1)は、前記ドア(2)の前記所定の軌跡での移動に伴い平行移動するよう設定されていることを特徴とする1)または2)に記載のドア回動機構(51)である。
4) 筐体(KT)と、
1)〜3)のいずれかに記載のドア回動機構(51)と、を備え、
前記ドア回動機構(51)の前記ドア(2)は、
前記筐体(KT)に設けられた操作部または接続端子部を外部に対して隠す閉位置と露出する開位置との間で移動することを特徴とする電子機器(50)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回動機構がコンパクトで、ドアを良好な感触で回動させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子機器の実施例を説明するための側面図である。
【図2】本発明の電子機器の実施例における要部の外観を説明するための部分斜視図である。
【図3】本発明のドア回動機構の実施例を説明するための分解図である。
【図4】本発明のドア回動機構の実施例における第1の部品の三面図である。
【図5】本発明のドア回動機構の実施例における第2の部品の六面図である。
【図6】本発明のドア回動機構の実施例における第3の部品の六面図である。
【図7】本発明のドア回動機構の実施例における第4の部品の四面図である。
【図8】本発明のドア回動機構の実施例における第2の部品の要部を説明するための部分平面図と部分斜視図である。
【図9】本発明のドア回動機構の実施例における第4の部品の要部を説明するための部分平面図と部分斜視図である。
【図10】本発明のドア回動機構の実施例を説明するための第1の部分平面図である。
【図11】本発明のドア回動機構の実施例を説明するための第2の部分平面図である。
【図12】本発明のドア回動機構の実施例を説明するための第3の部分平面図である。
【図13】本発明のドア回動機構の実施例を説明するための第4の部分平面図である。
【図14】本発明のドア回動機構の実施例を説明するための第5の部分平面図である。
【図15】本発明のドア回動機構の実施例における回動抵抗を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図15を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明のドア回動機構を備えた電子機器の実施例を示す側面図である。前後天地の方向は図1に示すように規定する。また、紙面手前方向が右方向、紙面奥方向が左方向である。
この電子機器は、撮像装置50である。
【0014】
撮像装置50は、前方の被写体の像を結像するレンズ部50Aと、筐体KTを有しその筐体内にレンズ部50Aからの光を電気信号に変換する電子部品である撮像素子SSを収納した本体部50Bと、本体部50Bの右側面に設けられ本体部50Bに対して開閉する画像モニター部50Cと、本体部50Bの後方側に設けられたビューファインダ50Dとを備えている。
図1では、画像モニター部50Cが本体部50Bに対して閉じた状態を示している。
【0015】
本体部50Bにおける画像モニター部50Cの下方には、SDカードなどのメモリーカードを挿抜するための2つのカードスロット1A,1Bがそれぞれの長手方向が連なるように配設されている。このカードスロット1A,1Bの配設方向は、レンズ部50Aの光軸CLに平行とされている。
以下、カードスロット1A,1Bをまとめてカードスロット1とも称することにする。また、カードスロット1A,1Bは撮像装置50の筐体に設けられた接続端子部に含まれる。
【0016】
本体部50Bにはカードスロット1を覆い隠す閉状態と外部に露出させる開状態との間で回動するドア2が設けられている。図1は、ドア2が下方に回動されカードスロット1及びその近傍部位が外部に露出した開状態を示している。
以下の説明では、ドア2はカードスロット1すなわち接続端子部を覆い隠すものについて説明するが、これに限らず、撮像装置50を操作する操作部(操作ボタンやスイッチ類)などを覆い隠すものであってもよい。
【0017】
図2(a),(b)は、本体部50Bのカードスロット1近傍を撮像装置50の前方やや下側から見た斜視図である。
図2(a)は、カードスロット1がドア2で覆われた閉状態を示しており、図2(b)は、ドア2が本体部50Bの下方に退避してカードスロット1が外部に露出した開状態を示している。
【0018】
ドア2は、閉状態でカードスロット1A,1Bにそれぞれ対応して設けられた透明の窓部2a,2bと、各窓部2a,2bの間に設けられたリブ状の凸部2c、を有している。この凸部2cはドア2を開閉させる際の指掛かりとなる。
図2(a)からドア2を矢印DR1方向に回動させることで、カードスロット1が外部に露出した図2(b)に示す開状態になる。
【0019】
図3は、撮像装置50に搭載された実施例のドア回動機構51を示す分解図である。
ドア回動機構51は、本体部50Bの筐体KTの一部であるベース3と、リング状のカムリング4a,4bと、一対のコイルばね5,5と、ガイドカバー6a,6bと、ドア2と、雄ねじ7,7と、を含んで構成されている。
【0020】
ここで、各部材について詳述する。
【0021】
図4(a)〜(c)はベース3の三面図である。図4(a)は正面図であり、図4(b)は底面図であり、図4(c)は左側面図である。
ベース3は、樹脂の射出成形により形成され、本体部50Bの筐体KTの一部を構成する。
材料に好適なものとしてPC(ポリカーボネート)/ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)アロイ樹脂がある。
ベース3は、本体部50Bの筐体KTとして一体的に形成されていてもよく、筐体KTとは別体に成形され、筐体KTに装着されるものであってもよい。
ベース3は、長手方向に連ねて設けられた2つの開口部3a,3bを有し、その連なる方向の両外側に、概ね円筒状に凹んだ座部3c1,3c2が形成されている。
座部3c1,3c2の中央には貫通孔3c3が形成されている。
また、ベース3の地側の面は、幅Lの範囲にわたって凹部3dとされている。この凹部3dには、閉状態のドア2が収納され、開閉いずれの状態でもドア2の外観面とベース3の外観面とが連続した面を形成して高い外観品位を得ると共に、撮像装置50を本体部50Bの底面が載置面にベタ置きした状態でも、ドア2を開状態に回動することが可能となっている。これにより、例えば本体部50Bを三脚の雲台に装着した状態でもドア2が開閉可能になっている。
【0022】
図5(a)〜(f)は、カムリング4aの六面図である。
図5(a)は正面図、図5(b)は背面図、図5(c)は左側面図、図5(d)は右側面図、図5(e)は天面図、図5(f)は底面図である。
図5(a)に天地左右の方向を示している。
図5(a)が図3に示したカムリング4aの姿勢と対応している。
カムリング4bはカムリング4aに対して概ね面対称であるので、代表してカムリング4aについて以下に説明する。
【0023】
カムリング4aはリング状の基部4akを有して樹脂の射出成形によって形成されている。材料に好適なものとして、POM(ポリアセタール)樹脂がある。
基部4akは、天側に突起部4a1が設けられ、右側面下方にカム部4acが設けられている。
カム部4acには、その背面側となる図5(b)の手前側に、カム面4amが形成されている。
また、図5(a)において、基部4akの正面側には、紙面手前側に突出する周壁部4a2が形成されている。
カムリング4aは、ドア回動機構51を組み立てた状態で、周壁部4a2の内側に設けられた段部4a3にコイルばね5が当接し、基部4akの背面4a4がベース3の座部3c1の底面に当接するようになっている。
【0024】
図6(a)〜(f)は、ガイドカバー6aの六面図である。
図6(a)は正面図、図6(b)は背面図、図6(c)は右側面図、図6(d)は左側面図、図6(e)は天面図、図6(f)は底面図である。
図6(a)に天地左右の方向を示している。
図6(a)が図3に示したガイドカバー6aの姿勢と対応している。
ガイドカバー6bはガイドカバー6aに対して概ね面対称であるので、代表してガイドカバー6aについて以下に説明する。
【0025】
ガイドカバー6aは、樹脂の射出成形によって形成されている。材料に好適なものとして摺動性を向上させたグレードのABS樹脂がある。
図6(b)の背面図において、ガイドカバー6aは円筒状のボス6a1を有している。ボス6a1の中心にはタッピングねじ(雄ねじ7)の下孔となる有底孔6a2が形成されている。
また、ボス6a1の周囲には、ボス6a1と同心でボス6a1より背が低い円弧状リブ6a3が設けられており、天側に切り込み6a4が形成されている。
ボス6a1の右方には、ボスの軸線に平行に延在する壁部6a5が形成されている。
壁部6a5には、仮想中心KC1を中心とした円弧状のガイドスリット6a6が形成されている。図6(c)において、この仮想中心KC1を通る紙面に垂直な軸線が、ドア回動機構51を組み立てた状態でにおけるドア2の回動中心軸線KZ1となる。
ガイドカバー6aは、ドア回動機構51を組み立てた状態で、円弧状リブ6a3の内側にカムリング4a及びコイルばね5が収納される。その際、カムリング4aの突起部4a1が切り込み6a4に係合してガイドカバー6aに対するカムリングの軸まわりの位置が決められる。
ガイドスリット6a6には、ドア2の突出基部2d(後述する)が係合し、ガイドスリット6a6に沿って突出基部2dが移動する。この案内構造についての詳細は後述する。
【0026】
図7(a)〜(d)は、ドア2の四面図である。
図7(a)は正面図、図7(b)は底面図、図7(c)は背面図、図7(d)は左側面図である。
図7(a)に天地左右の方向を示している。
図7(a)が図(a)3に示したドア2の姿勢と対応している。
【0027】
ドア2は樹脂の射出成形により形成されている。材料に好適なものとしてPC/ABSアロイ樹脂がある。
図7(a)における窓部2a,2bは透明の樹脂で形成されており、ドア2の本体に接着または溶着で固定されている。
凸部2cは前述のようにこのドア2を開閉する際の指掛かりとなる。
ドア2の左右の端面2eには、それぞれ左右方向の外方に突出する突出基部2dが形成されている。また、突出基部2dの端面には、その一部がさらに左右方向外方に突出して成る接触部2fが設けられている。
ドア2は、ドア回動機構51を組み立てた状態で、突出基部2dがガイドカバー6aのガイドスリット6a6に係合すると共に、接触部2fの側面がカムリング4aのカム面4amに摺接するようになっている。
【0028】
上述した各部材は、例えば次のように組み立てられてドア回動機構51とされる。説明は、図3を用い、左右ある機構の左側の機構の組み立てを代表として説明する。
【0029】
まず、コイルばね5をカムリング4aの周壁部4a2内に収納し、カムリング4aを、コイルばね5を押しつぶしながらガイドカバー6aの円弧状リブ6a3の内側に装着する。
その際、カムリング4aの突起部4a1をガイドカバー6aの切り込み6a4に係合させる。また、コイルばね5はガイドカバー6aのボス6a1に外挿させる。また、ドア2の突出基部2dをガイドカバー6aのガイドスリット6a6に嵌め込み、カムリング4aのカム面4amにドア2の接触部2fの側面が当接するようにする。
そして、タッピングねじである雄ねじ7をベース3の貫通孔3c3に背面側から挿通し、ガイドカバー6aの有底孔6a2に対し、ガイドカバー6aがベース4に当接するまでねじ込んでガイドカバー6aとベース3とを一体化する。
【0030】
この状態で、カムリング4aは、コイルばね5の弾性力によりベース3側に向け付勢されている。すなわち、カム面4amが接触部2fに押しつけられている。
また、コイルばね5の弾性力に抗する外力が付与された際には、カムリング4aは軸方向の所定の範囲で移動可能となっている。
【0031】
次に、カム面4amに対する接触部2fの接触移動と、ドア2の回動動作について詳述する。
【0032】
まず、カム面4amについて図8(a),(b)を用いて詳述する。
図8(a)は、カム部4acを図5(b)の左斜め上方から見た斜視図であり、図3において紙面裏側上方から紙面手前方向を見た斜視図に相当する。
図8(b)は、図5(d)におけるカム部4ac近傍の拡大図である。
【0033】
図8(b)において、カム面4amは、曲率中心の位置の違いで3つの領域に分類されるようその面が設定されている。
具体的には、図8(b)の上方から下方に向けて分類される領域C1,領域C2,領域C3である。
領域C1,C3は、曲率中心がカム面4amに対して外方(図の右方)にあり、両領域に挟まれた領域C2は、曲率中心がカム面4amに対して内方(図の左方)にある。
従って、領域C1,C3はカム面4amにおいて凹んだ領域であり、領域C2はカム面4amにおいて山状に突出した領域である。
【0034】
次に接触部2fについて図9(a),(b)を用いて詳述する。
図9(a)は、接触部2fを図7(a)の左斜め上方から見た斜視図であり、図3において紙面手前上方から見た斜視図に相当する。
図9(b)は、図7(d)における接触部2f近傍の拡大図である。
【0035】
図9(b)において、突出基部2dは、仮想中心KC2を中心として幅W2なる円弧状に形成されている。図9(b)において、仮想中心KC2を通る紙面に垂直な軸線が、ドア回動機構51を組み立てた状態において、ドア2の回動中心軸線KZ2となる。
また、接触部2fは、突出基部2dの内側の面の一部とほぼ同様の円弧状周面を内側の面2f1として有すると共に、内側の面2f1よりも曲率が小さい周面を外側の面2f2として有して突出基部2dから柱状に突出形成されている。
ここで、突出基部2dの幅W2は、ガイドカバー6aのガイドスリット6a6の幅W6(図6参照)よりも僅かに小さく設定されているので、突出基部2dはガイドスリット6a6内をガタがほとんどなく摺動する。
実施例では、ドア回動機構51を組み立てた状態において、仮想中心KC1と仮想中心KC2とが一致するようになっている。従って、回動中心軸線KZ1と回動中心軸線KZ2とが一致している。
従って、ドア2は、ガイドスリット6a6に対応した軌跡と移動範囲でスムーズに往復移動が可能になっている。
【0036】
このように、この実施例においては、ガイドスリット6a6は、仮想中心KC2を中心とする円弧状に形成されているので、ドア2は仮想の回動中心軸線KZ2を中心とした回動をする。
【0037】
次に、ドア2の閉位置から開位置までの移動における要所となる5つの位置について、カム面4am及びそれに当接する接触部6fと、ガイドスリット6a6との関係を図10〜図14を用いて説明する。
実施例のドア回動機構51は、ドア2の閉位置と開位置との間で回動抵抗が最大となる位置(抗力最大位置と称する)を設けてある。各要所は、以下に説明する5つの位置である。
1:閉位置
2:閉位置と抗力最大位置との間
3:抗力最大位置
4:抗力最大位置と開位置との間
5:開位置
【0038】
(1の位置)
図10は、ドア2の閉位置での当接状態を示している。この状態で、カム部4acはコイルばね5により矢印F5の方向に付勢されている。
この位置で、接触部2fは外側の面2f2の端部2ft側の当接点P1でカム面4amにおける領域C1の当接点Q1に当接している。
ここで仮想中心KC1(回動中心軸線KZ1)と当接点P1(Q1)との間の距離をL1としておく。
【0039】
(2の位置)
図11は、ドア2の閉位置と抗力最大位置との間における当接状態を示している。この状態で、カム部4acはコイルばね5により矢印F5の方向に付勢されている。
この位置で、接触部2fは、外側の面2f2の当接点P1よりは端部2ftから遠い当接点P2で、カム面4amの領域C2における領域C1寄りの当接点Q2に当接している。
ここで仮想中心KC1(回動中心軸線KZ1)と当接点P2(Q2)との間の距離をL2としておく。
【0040】
(3の位置)
図12は、ドア2の抗力最大位置における当接状態を示している。この状態で、カム部4acはコイルばね5により矢印F5の方向に付勢されている。
この位置で、接触部2fは、外側の面2f2の中央付近の当接点P3で、カム面4amの領域C2の中央付近の当接点Q3に当接している。
ここで仮想中心KC1と当接点P3(Q3)との間の距離をL3としておく。
【0041】
(4の位置)
図13は、ドア2の抗力最大位置と開位置の間における当接状態を示している。この状態で、カム部4acはコイルばね5により矢印F5の方向に付勢されている。
この位置で、接触部2fは、外側の面2f2の当接点P3よりは端部2ftから遠い当接点P4で、カム面4amの領域C2における領域C3寄りの当接点Q4に当接している。
ここで仮想中心KC1(回動中心軸線KZ1)と当接点P4(Q4)との間の距離をL4としておく。
【0042】
(5の位置)
図14は、ドア2の開位置での当接状態を示している。この状態で、カム部4acはコイルばね5により矢印F5の方向に付勢されている。
この位置で、接触部2fは外側の面2f2の当接点P4より端部2ftから遠い当接点P5でカム面4amにおける領域C3の当接点Q5に当接している。
ここで仮想中心KC1(回動中心軸線KZ1)と当接点P1(Q1)との間の距離をL5としておく。
【0043】
実施例では、上述した回動動作において、接触部2fは、ドア2の1の位置と5の位置との間の移動に対応してカム面4amに当接点P1〜P5の範囲で転接する。
すなわち、接触部2fの側面における当接点P1〜P5の範囲が転接面TSとなっている(図9参照)。
【0044】
また、コイルばね5の付勢力F5に基づく回動抵抗は、コイルばね5のカムリング4aとは反対側の固定端部と仮想中心KC1(回動中心軸線KZ1)との間の距離に応じた力で生じる。すなわち、コイルばね5の圧縮量に応じた力で生じる。
実施例では、仮想中心KC1(回動中心軸線Z1)が移動しないので、コイルばね5の固定端部位置と各当接点との間の距離L1〜L5に応じた力で生じる。
この回動抵抗を各回動位置1〜5に基づいてグラフ化したものを図15に示す。
図15のグラフにおいて、縦軸は、回動位置1〜5を示し、横軸は回動抵抗を示している。横軸において、左方側が回動抵抗大である。
図15からわかるように、実施例のドア回動機構51においては、3で示される位置で回動抵抗が最大となり、その位置から1で示される閉位置及び5で示される開位置に向かうに従って回動抵抗が小となる。
従って、撮像装置50のユーザは、ドア2の開閉動作に際して、回動抵抗を感じつつドア2が開位置と閉位置とに良好に誘導される感触を得ることができ、撮像装置50に対する高級感を感じ取ることができる。
【0045】
また、実施例のドア回動機構51においては、カム面4amと接触部2fの外側の面2f2とにおける当接点が、カム面4amについては点Q1と点Q5との間を移動し、接触部2fについては、点P1と点P5との間を移動するようになっている。すなわち、カム面4amと接触部2fとが互いに転接するようになっている。
そのため、図15で示される回動抵抗の曲線の設定を、カム面4amのみならず、接触部2fの外周面2f2も含めて設定することができる。従って、回動抵抗の曲線の設定を、より自由度が高く、大きな変化をもたらし得る曲線として設定することが可能となっている。
【0046】
実施例のドア回動機構51は、付勢手段であるコイルばね5の付勢方向(図10の矢印F5の方向)と回動中心軸線KZ1の延在方向とが直交するようになっている。
これは、カムリング4aのカム面4amが、カムリング4aの軸線に対して概ね直交する面として形成されているのに対して、カム面4amに当接して摺動する接触部2fの接触面を、ドア2の回動中心軸線KZ1に概ね平行な接触部2fの側面としていることによる。
従って、実施例のドア回動機構51は、カム部材であるカムリング4a,4bと、付勢部材であるコイルばね5,5と、接触子となる接触部2fを有するドア2と、が回動中心軸線KZ1方向に連なるようには配置されていないので、ドア回動機構として長手方向寸法が短いものになっている。
【0047】
また、組み立ての際にねじ込む雄ねじ7のねじ込み方向が回動中心軸線KZ1に直交する方向になるので、ドア2の両端部側において打ち込む雄ねじ7のねじ込み方向を同じにすることができる。
従って、雄ねじ7のねじ込み作業が大変容易になり、ドア回動機構51の組み立て効率及び撮像装置50の生産効率が向上する。
【0048】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
ガイドスリット6a6を、円弧ではない曲線状としてもよく、その場合、ガイドスリットの曲線に沿ってドア2を実体軸なしに移動させることができる。
ガイドスリットの形状として適用できる円弧ではない曲線状の具体的例としては、楕円の一部、長円の一部、自由曲線の一部、などがある。
また、ドア2の移動に伴い回動中心軸線KZ1を所定の軌跡で平行移動するように設定してもよい。その平行移動は、ドア2の移動に伴い連続的に移動するようにしてもよく、複数の回動中心軸線の位置を設定し、ドア2の移動に伴い各回動中心軸線が各位置間を非連続的に平行移動するようにしてもよい。
【0049】
そして、このようなドア2の回動中心軸線KZ1を所定の軌跡で移動する構成に、カム面4amと接触部2fとが互いに転接する構成を加えれば、回動抵抗の設定を更に高度に、かつ更に自由に設定することが可能になる。
【0050】
実施例の電子機器は説明したものに限らない。
筐体の一部の部位に対して開閉するドアを備えたものであれば適用が可能である。また、その一部の部位の例として、筐体に設けられた操作部(操作ボタンやスイッチなど)または接続端子部(カードスロット、コネクタなど)がある。適用できる電子機器の例として、ゲーム機、携帯電話、携帯音楽再生装置、電子辞書、ディスクレコーダ、ドライブレコーダ、テレビジョン装置、音響再生装置、パーソナルコンピュータがある。
実施例のドア回動機構も説明したものに限らない。
実施例ではドア2の両端部にリングカム4a,4b、コイルばね5,5、接触部2f,2fを設けて所望の回動抵抗を得る構成を説明したが、これらを一方の端部のみに配設し、他方の端部側はドア2の移動をガイドするガイド機構のみ設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1(1A,1B) カードスロット
2 ドア
2a,2b 窓部
2c 凸部
2d 突出基部
2e 端面
2f 接触部
2f1 内側の面
2f2 外側の面
3 ベース
3a,3b 開口部
3c1,3c2 座部
3c3 貫通孔
4a,4b カムリング
4a1 突起部
4a2 周壁部
4a3 段部
4a4 背面
4ac カム部
4ak 基部
4am カム面
5 コイルばね
6a,6b ガイドカバー
6a1 ボス
6a2 有底孔
6a3 円弧状リブ
6a4 切り込み
6a5 壁部
6a6 ガイドスリット
7 雄ねじ
50 撮像装置(電子機器)
50A レンズ部
50B 本体部
50C 画像モニター部
50D ビューファインダ
51 ドア回動機構
TS 転接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部と接触部とを有するドアと、
前記係合部と係合して前記ドアを所定の軸線まわりに所定の軌跡で移動可能とするガイド部と、
前記接触部が接触するカム面を有するカムと、
前記カム面を前記接触部に押圧させるよう前記カムを前記所定の軸線の延在方向と直交する方向に付勢する付勢部材と、
を備えたドア回動機構。
【請求項2】
前記接触部は、前記ドアの前記所定の軌跡での移動に対応して前記カム面に対して転接する転接面を有することを特徴とする請求項1記載のドア回動機構
【請求項3】
前記所定の軸線は、前記ドアの前記所定の軌跡での移動に伴い平行移動するよう設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のドア回動機構。
【請求項4】
筐体と、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のドア回動機構と、を備え、
前記ドア回動機構の前記ドアは、
前記筐体に設けられた操作部または接続端子部を外部に対して隠す閉位置と露出する開位置との間で移動することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−251610(P2010−251610A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101168(P2009−101168)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】