説明

ドセタキセルの製造方法及び医薬

【課題】高純度のドセタキセルを提供する。
【解決手段】7−及び10−モノトリクロロアセチル体の含有量が少ない10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)を製造し、これを10−デアセチル−N−デベンゾイルパクリタキセル(I)とした後、二炭酸ジ−tert−ブチルと反応させて高純度のドセタキセルを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、抗癌活性を有するタキサンの製造に有用な中間原料である、10−デアセチル−N−デベンゾイルパクリタキセル(I)(以下、「中間原料(I)」と略すことがある)の製造のための新しい半合成方法である。
【0002】
【化1】

【0003】
また、本発明は、HPLCで定量して対応する7−又は10−モノトリクロロアセチル体の含量が0.1%未満である10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)(以下、「中間原料(VI)」と略すことがある)の製造方法に関する。
【0004】
【化2】

【0005】
また、本発明は、本発明の方法によって得られた中間原料(I)を二炭酸ジ−tert−ブチルと反応させることにより99%超の純度を有するドセタキセルの製造方法並びに該高純度のドセタキセルを含む医薬に関する。
【背景技術】
【0006】
特許文献1には、式(II)のオキサゾリジンで、式(III)の7位及び10位を保護した10−デアセチルバッカチンIIIをエステル化し、式(IV)のエステルを得る方法が、中間原料(I)(90年代の初期に報告されている(非特許文献1))の合成のために開示されている。
【0007】
【化3】

【0008】
式(IV)のエステルから3’位のアミノ基及び2’位、7位及び10位のヒドロキシル基を遊離させると、中間原料(I)を生じる。
【0009】
特に、上記引用の特許出願によれば、基Rは、水素、アルキル、アルコキシ又は種々置換されたフェニルであることができ、基R1は、1つ以上の塩素原子で置換されたアルキルである。基Gは、アルキルシリル又はR1−O−CO−基(式中、R1は上記で定義したと同じである)である。
【0010】
式(IV)の中間体から出発し、亜鉛及び酸で還元してヒドロキシ基及びアミノ基が遊離され、基Gがアルキルシリルである場合、ヒドロキシ基が、酸処理によって、例えばフッ化水素酸にて遊離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第94/07877号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】F.Gueritte-Voegeleinら、J.Med.Chem.34, 992, 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
高純度のドセタキセルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1の実施形態において、以下の工程を含む10−デアセチル−N−デベンゾイルパクリタキセル(I)の製造方法に関する:
【0015】
【化4】

【0016】
a)2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸(V)(以下、「オキサゾリジン酸(V)」と略すことがある)を10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)と反応させて、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸,10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII 13−イル−エステル(VII)(以下、「エステル(VII)」と略すことがある)を得る工程、
【0017】
【化5】

【0018】
b)エステル(VII)の7位及び10位のトリアセチル基を加水分解して、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸,10−デアセチルバッカチンIII 13−イル−エステル(VIII)(以下、「エステル(VIII)」と略すことがある)を得る工程、及び
【0019】
【化6】

【0020】
c)エステル(VIII)を酸処理して、10−デアセチル−N−デベンゾイルパクリタキセル(I)を得る工程。
【0021】
また、本発明は、新規な中間体として、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸,10−デアセチル−7,10−ビス−トリクロロアセチルバッカチンIII 13−イル−エステル(VII)及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸,10−デアセチルバッカチンIII 13−イル−エステル(VIII)を提供する。
【0022】
また、本発明は、反応混合物のシリカゲルクロマトグラフィを含む、HPLCにて定量して、対応する7−又は10−モノトリクロロアセチル体の含量が0.1%未満である10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)の製造方法に関する。
【0023】
本発明の別の目的は、99%超の純度を有するドセタキセル並びにそれを含む医薬により与えられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法により、高純度のドセタキセルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例5の手順で製造された試料のX線回折図である。
【図2】実施例5の手順で製造された試料の示差走査熱量曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、高収率及び/又は高品質で中間原料(I)を合成する方法に関する。さらに、前記方法は、例えば亜鉛及びフッ化水素酸のような汚染性がある、あるいは取り扱いが困難である試薬を必要としない。
【0027】
【化7】

【0028】
前記方法は、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸(V)を10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)と反応させて、そのエステル(VII)を生成する反応にあり、
【0029】
【化8】

【0030】
これからアミノ基及びヒドロキシ基を遊離して、中間原料(I)が得られる。
【0031】
エステル(VII)は新規であり、本発明の別の目的である。
【0032】
ヒドロキシ基及びアミノ基の遊離によって、エステル(VII)からオキサゾリン環の2位のキラル中心が取り除かれるので、オキサゾリジン酸(V)は、2R、2S又はこれらの混合物のいずれであっても、合成に等しく有用である。言いかえれば、ジアステレオマーの相対比は、合成の遂行を害さない。
【0033】
オキサゾリジン酸(V)は、対応するアルカリ塩(このアルカリ塩の製造は国際公開第03/087077号公報に開示されている)の酸処理によって容易に製造される。
【0034】
他のオキサゾリジン酸と比較して、オキサゾリジン酸(V)は、顕著な安定性という特徴を持ち、この酸は、中間原料(VI)と容易にエステル化することができる。
【0035】
さらに、エステル化後に、過激な条件を採用する必要なしに酸の処理によって、該酸の残余部に含まれるアミノ基及びヒドロキシ基の遊離を容易に行うことができる。
【0036】
タキサン合成の中間原料(VI)は、公知のエステル化方法によって、トリクロロ酢酸活性化誘導体での処理による7位及び10位のエステル化で天然代謝産物10−デアセチルバッカチンIIIから得ることができる。好ましくは、中間原料(VI)が、溶媒としてピリジンを使用し、約0℃の温度でトリクロロ酢酸クロライドと反応して得られる。好ましくは、10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)は、その対応する7−及び10−モノトリクロロアセチルエステルからシリカゲルクロマトグラフィ又は同等の方法によって精製される。該不純物の残量は、HPLCピーク%によって測定して0.1%を超えてはならない。
【0037】
本発明によれば、エステル(VII)を与えるためのオキサゾリジン酸(V)での中間原料(VI)のエステル化は、ジイミド、例えばジシクロヘキシルカルボジイミのような縮合剤と4−ジメチルアミノピリジン又は4−ピロリジノピリジンのような活性化剤の存在下に、エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサンのようなエーテル;酢酸エチル、酢酸プロピル又は酢酸ブチルのようなエステル;ベンゼン、トルエン又はo−、m−、p−キシレンのような芳香族炭化水素;或いは塩化メチレン、クロロホルム又はジクロロエタンのようなハロゲン化脂肪族炭化水素から選択された溶媒中において行うことができる。約20℃の温度で塩化メチレン中においてエステル化を実施することが特に有利である。
【0038】
エステル(VII)からの中間原料(I)の製造は、7位及び10位からのトリクロロアセチル基の除去及びオキサゾリジン残基からアミノ基及びヒドロキシ基の遊離を必要とする。
【0039】
上記したように、アミノ基及びヒドロキシ基は、酸処理によってオキサゾリジン残基から容易に遊離させることができる。一方、トリクロロ酢酸エステルの加水分解は、マイルドなアルカリ処理、好ましくは水酸化アンモニウムでの反応によって都合よく実施することができる。
【0040】
オキサゾリジン残基からのアミノ基及びヒドロキシ基の遊離が最初にされた場合、バッカチン残基から遊離アミノ基へのトリクロロアセチル基の移行が多量に起き、結果としてトリクロロアセトアミド基が形成され、この基は、バッカチン骨格の構造にとり有害な条件下でしか、アミノ基に変換され得ないことが観察された。結果として、中間原料(I)の製造は、まずエステル(VII)の7位及び10位のトリクロロ酢酸基を除去してエステル(VIII)を生成することを必要とする。
【0041】
【化9】

【0042】
また、エステル(VIII)は新規化合物であり、本発明の別の目的である。トリクロロ酢酸基の除去は、溶剤としてテトラヒドロフランの中において水酸化アンモニウムで処理することによって室温で実施されることが好ましい。
【0043】
アミノ基及びヒドロキシ基の遊離は、アルコール溶液中で、例えばメタノール中で、約20℃の温度で、酸で、好ましくは塩酸水溶液での処理により実施される。水で希釈し、脂肪族炭化水素とハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばn−ヘキサンと塩化メチレンのような有機溶媒によって反応副産物を除去した後、水相のアルカリ化、塩化メチレン又は酢酸エチルのような有機溶媒への抽出、濃縮及びn−ヘキサンのような脂肪族炭化水素中での沈殿によって中間原料(I)は単離される。本発明の方法は、クロマトグラフィでの精製がなくても98%超の純度を有する中間原料(I)を提供する。
【0044】
ドセタキセルは、前記中間原料(I)から二炭酸ジ−tert−ブチルとの反応によって、99%超の純度、好ましくは99.4%超の純度で有利に得ることができる。
【0045】
反応は、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、好ましくはエタノール)、塩素化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、好ましくは塩化メチレン)又はこれらの混合物のような溶媒中において、塩基の不存在下で行うことが好ましい。
【0046】
やっかいなクロマトグラフィの精製なしで、好適な溶媒から、好ましくはエタノール/水混合溶媒及び/又はアセトン/炭化水素混合溶媒から結晶化により、ドセタキセルを高純度で得ることができるので、この方法は有利である。この方法を使用して得られるドセタキセルは、本発明の課題であるが、99%超の純度(HPLC領域%)と7−エピドセタキセル及び10−デヒドロドセタキセルの含量がそれぞれ0.1%(HPLC領域%)未満という特徴を有している。
【実施例】
【0047】
本発明は、次の実施例においてさらに詳細に説明される。
【0048】
実施例1
10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)(中間原料(VI))
ピリジン60ml中において、撹拌しながら10−デアセチルバッカチンIII(15g)を塩化トリクロロアセチル6.6mlで0〜5℃で1時間処理する。この混合物を塩化メチレン100ml及び4N塩酸100mlで希釈する。相分離し、有機相を4N塩酸100ml及び飽和塩化ナトリウム水50mlで洗浄する。真空下で有機相を濃縮し、残渣をトルエン100mlに取る。濾過によって生成物(VI)を集め、真空下に50℃で乾燥する。この生成物(IV)をCH2Cl2(80ml)中に35℃で溶解させ、キーゼゲル 60 メルク(Kiesegel 60 Merck)800gを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製する(溶出剤:CH2Cl2)。画分を合わせ(TLC:CH2Cl2)、HPLCによってチェックする。7−及び10−モノトリクロロアセチルバッカチンIIIの合計含有量は0.1%未満でなければならない。精製された化合物(VI)をトルエン中で沈殿させ、標記の化合物(17.8g、21.4mmol、660/26/B、A%純度:99%、収率:78%)を得る。
【0049】
実施例2
2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸,10−デアセチル−7,10−ビス−トリクロロアセチルバッカチンIII 13−イル−エステル(VII)(エステル(VII))
水100ml中にオキサゾリジン酸(V)10.3gをナトリウム塩の形で含む溶液を0〜5℃に冷却し、2M重硫酸ナトリウム溶液でpH2〜3に調整する。この反応混合物を0℃で15分間撹拌し、次いでCH2Cl2(70ml)を加える。2つの相に分離し、水相をCH2Cl2(1×50ml)で一度抽出する。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液(1×25ml)(360g/l)で洗滌し、無水MgSO4(3g、KF0.12%)上で乾燥する。濾過後に溶液を室温で真空下に100mLまで濃縮する。黄色溶液に中間原料(VI)12gを加え、続いてジメチルアミノピリジン(DMAP)0.175g(1.42mmol)を加え、試薬の完全な溶解後にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.88gを加える。この反応混合物を室温で1時間撹拌する。出発物質の中間原料(VI)がないことをTLC(酢酸エチル/ヘキサン:1/2、水(500mL)中にH2SO4(31ml)、モリブデン酸アンモニウム(19g)及び(NH44Ce(SO44・2H2O(1.9g)を含む溶液で噴霧し、130℃で5分間加熱することによって検出)によって検出する。形成したジシクロヘキシルウレア(DCU)の沈殿を濾別し、CH2Cl2(1×20mL)で洗浄する。この塩化メチレン溶液を蒸発乾固してエステル(VII)24gを得る。
【0050】
実施例3
2−(2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2−ニトロベンゼンスルフェニル)−4(S)−フェニル−5(R)−オキサゾリジンカルボン酸,10−デアセチルバッカチンIII 13−イル−エステル(VIII)(エステル(VIII))
テトラヒドロフラン100ml中エステル(VII)24gを含む溶液を真空下で濃縮し、その残渣をテトラヒドロフラン(THF)150mlで取り上げ、その混合物を真空下で100mlまで濃縮する。
【0051】
室温で5分内に濃水酸化アンモニウム33%(NH4OH、1.8ml、30mmol)を加え、この反応混合物を室温で2時間撹拌する。この混合物のTLCは、エステル(VII)がまったく存在しないことを示す(酢酸エチル/ヘキサン:4/3)。この溶液を真空下に濃縮し、残渣をMeOH(125ml)で取り上げる。この懸濁液を2時間撹拌する。焼結ガラスフィルターを通して沈殿物を濾過し、MeOH(10ml)で洗浄してエステル(VIII)(13g、12mmol、HPLC A%=93%、収率84%)を得る。その母液は残渣9.3gを含むが、捨てられる。
【0052】
実施例4
10−デアセチル−N−デベンゾイルパクリタキセル(I)(中間原料(I))
メタノール260ml中のエステル(VIII)13gの懸濁液を室温で撹拌しながらメタノール130mlで希釈された濃塩酸水溶液4.2mlで30分間処理する。この反応混合物を室温で4時間撹拌すると懸濁液は透明な黄色の溶液になる。この混合物のTLCは、エステル(VIII)がまったく存在しないことを示す(酢酸エチル/ヘキサン:4/3)。この溶液を水(350ml)でゆっくりと(沈殿の形成を避けるために)希釈し、均一な溶液を室温で30分間撹拌する。CH2Cl2(200ml)を加え、2つの相に分離し、水相をCH2Cl2(2×100ml)で再び抽出する。有機相を除く。水性のアルコール相を0〜5℃に冷却し、CH2Cl2(1×100ml)で希釈する。激しい撹拌下に0〜5℃の濃アンモニア(3.1ml、NH4OH)を滴下しながらpH=7〜8まで加える(温度が1度上昇する)。2相反応を同じ温度で20分間撹拌し、次いで相を分離し、水相をCH2Cl2(5×100ml)で抽出する。
【0053】
合わせた有機相を真空下に100mlまで濃縮し、室温で撹拌しながら生成物を結晶化させる。焼結ガラスフィルターを通して沈殿物を濾過し、真空下に40℃で一晩中乾燥した後、標記の化合物7.5gを得る。
【0054】
実施例5
ドセタキセルの製造
中間原料(I)(16g、HPLC純度分析:90.57%、20.49mmol)を無水EtOHとCH2Cl2の1:1混合溶媒(320ml)中に溶解させ、わずかに黄色の溶液に、CH2Cl2中の二炭酸ジ−tert−ブチル(BOC)2O(24.18mmol、5.27gがCH2Cl25mlに溶解されている)を加える。添加の終りに、反応混合物を室温で16時間撹拌する。TLCは、中間原料(I)がまったく存在しないことを示す(CH2Cl2/MeOH:9/1、水(500ml)中にH2SO4(31ml)、モリブデン酸アンモニウム(19g)及び(NH44Ce(SO44・2H2O(1.9g)を含む溶液で噴霧し、130℃で5分間加熱することによって検出)。CH2Cl2を留去し、この溶液に酢酸(0.39ml)を加える。酸性のエタノール溶液を50℃に加熱し、純水(320ml)を滴下して加える。この混合物を50℃で1時間置き、室温でさらに2時間置く。焼結ガラスフィルターを通して沈殿物を濾過し、真空乾燥器内に移して、真空下に40℃で一晩中保持して、半精製されたドセタキセル16.75g及び捨てられうる母液1gを得る。
【0055】
粗製の生成物を2回結晶化させる:半精製されたドセタキセルを95%エタノール(160ml)中に50℃で溶解させ、酢酸(0.39ml)を加える。純水(320ml)の添加後に、この混合物を50℃で1時間置き、室温でさらに2時間置く。焼結ガラスフィルターを通して沈殿物を濾過し、真空乾燥器内に移して、真空下に40℃で一晩中保持してドセタキセル15.25g及び捨てられうる母液0.4gを得る。その生成物をアセトン(150ml)中に30℃で再溶解させ、ヘプタン(150ml)を加えることによって2回目の結晶化を実施する。この混合物を室温で3時間放置する。焼結ガラスフィルターを通して沈殿物を濾過し、真空乾燥器内に移して、真空下に40℃で一晩中保持してドセタキセル13.9g(99.4%超のHPLC純度、7−エピドセタキセル<0.1%、10−デヒドロドセタキセル<0.1%)を得る。
【0056】
実施例6
ドセタキセルの他の製造
1リットル反応器中にDe−BOCドセタキセル(30.0g、42mmol、HPLC純度98%、7−エピ異性体0.2%)を仕込み、次いで塩化メチレン60ml、無水アルコール150ml及び氷酢酸73μl(3%モル)を25℃で加え、懸濁液を得る。
【0057】
この懸濁液に、DCM30.0ml中に溶解されたBOC無水物(11.0g、51mmol)を25℃において滴下して加え、添加の終わりに透明な溶液を得る。
【0058】
3時間後、氷酢酸(0.7ml、30%モル)で失活して反応を停止し、真空下に30℃で塩化メチレンを留去する。次いで、無水アルコール(90ml)を加え、同じ条件で留去する。
【0059】
透明な溶液を50℃に加熱し、水(570ml)を約3時間内に滴下して加える。この懸濁液を50℃で1時間撹拌し、次いでそれを1時間中に25℃に冷却し、この温度で16時間撹拌する。
【0060】
白色固体を濾別し、水(40ml)と無水アルコール(18ml)の溶液で2回洗浄する。
【0061】
エタノール250ml及び氷酢酸630μlで粗製物質を反応器に入れる。
【0062】
この混合物を50℃に加熱し、完全に溶解する。水(570ml)を約2時間内に滴下して加える。次いで、この混合物を1時間内に25℃に冷却し、90分後に懸濁液をグーチ濾過器P3で濾過し、水(40ml)と無水アルコール(18ml)の溶液で1回洗浄する。
【0063】
白色固体として得られるドセタキセルを真空下に55℃で16時間乾燥する(乾燥固体の最終重量:32.6g)。
【0064】
500mlの反応器中に粗製のドセタキセル(5.0g、6.2mmol)を仕込み、アセトン(50ml)中に50℃で溶解する。
【0065】
次いでn−ヘプタン(50ml)を50℃で約1時間内にゆっくりと加える。このようにして得られた懸濁液を50℃で1時間撹拌し、次いで25℃に冷却し、同じ温度で16時間撹拌する。
【0066】
この懸濁液をグーチ濾過器P3で濾過し、n−ヘプタン(15ml)で1回洗浄し、真空下に55℃で16時間乾燥して、白色固体としてドセタキセル4.40g(収率89%、HPLC純度>99.5%、7−エピドセタキセル<0.10%及び10−デヒドロドセタキセル<0.10%)を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)HPLCで定量して対応する7−及び10−モノトリクロロアセチル体の含量がそれぞれ0.1%未満である10−デアセチル−7,10−ビストリクロロアセチルバッカチンIII(VI)を製造し;
【化1】

b)上記中間原料(VI)をドセタキセルに転換する
ドセタキセルの製造方法。
【請求項2】
前記工程b)が10−デアセチル−N−デベンゾイルパクリタキセル(I)を二炭酸ジ−tert−ブチルと反応させる、請求項1に記載のドセタキセルの製造方法。
【化2】

【請求項3】
前記反応が、アルコール、塩素化炭化水素又はこれらの混合物から選ばれる溶媒中で、塩基の不存在下に、実施される請求項2に記載のドセタキセルの製造方法。
【請求項4】
ドセタキセルが、エタノール/水混合物及び/又はアセトン/炭化水素混合物からの結晶化により精製される請求項2又は3に記載のドセタキセルの製造方法。
【請求項5】
クロマトグラフ精製なしで99%超の純度を有し、対応する7−エピ体及び10−デヒドロ体の含量がそれぞれ0.1%未満である請求項1に記載のドセタキセルの製造方法。
【請求項6】
請求項5の記載に従って得られたドセタキセル及び対応する7−エピ体及び10−デヒドロ体を含む混合物であって、該ドセタキセルが99%超の純度を有し、対応する7−エピ体及び10−デヒドロ体の含量がそれぞれ0.1%未満である混合物。
【請求項7】
請求項6に記載の混合物を含む医薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−136544(P2012−136544A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45438(P2012−45438)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2007−535103(P2007−535103)の分割
【原出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】