説明

ドットマトリクス表示装置の透明電極基板、液晶表示素子および反射型表示素子

【課題】赤浮きが低減され、透明帯状電極の表面抵抗が駆動可能な程度に十分に小さい透明な帯状電極の新しい構造の実現。
【解決手段】透明基板11,13と、透明基板上に平行に配置された複数の透明帯状電極14,15と、を備え、透明帯状電極14は、単一導電材料で形成され、部分的に厚みが異なる表示装置。透明帯状電極は、表示部の一部で薄く、それ以外の部分で厚いことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ドットマトリクス表示装置に使用する透明電極基板、およびそれを使用した液晶表示素子、およびそれを積層した反射型表示素子に関し、特に黒表示の色調を改善した反射型表示素子を実現する透明電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子のようなドットマトリクス型表示素子(パネル)が、テレビ受像機やコンピュータシステムのモニタとして広く使用されている。ドットマトリクス型表示素子には、パッシブ型とアクティブ型がある。開示の技術は、パッシブ型のドットマトリクス型表示素子に関係する。パッシブ型のドットマトリクス型表示素子は、平行に配列された複数の第1の帯状電極(スキャンライン)と、スキャンラインと垂直に交差するように配置された複数の第2の帯状電極(セグメントライン)とを有し、複数のスキャンラインと複数のセグメントラインの交差部に画素が形成される。表示する画像の書込みは、スキャンラインに順次スキャンパルスを印加し、スキャンパルスの印加に同期して複数のセグメントラインに1ライン分のデータを出力することにより行われる。ドットマトリクス型表示素子には、CRT、PDP、EL、液晶表示素子など各種の方式があるが、特に液晶表示素子が広く使用されている。
【0003】
近年、電源を切っても表示内容を保持できる書換え可能な表示デバイスとして、各企業および大学などにおいて、電子ペーパーの開発が盛んに進められている。電子ペーパーは、電源を切ってもメモリ表示可能な超低消費電力と、目に優しく、見ていても疲れない反射型の表示と紙のような可撓性があるフレキシブルで薄型の表示体を目指して研究が進められている。電子ペーパーの応用先としては、電子ブック、電子新聞、電子ポスターなどが考えられている。
【0004】
電子ペーパーの表示方式として、電気泳動方式、電子粉流体方式、ツイストボール方式、液晶表示ディスプレイ、有機EL表示ディスプレイなど各種の表示方式が提案されている。電気泳動方式は、帯電粒子を液体で移動させる方式である。電子粉流体方式は、帯電トナーを気体中で移動させる方式である。ツイストボール方式は、二色に色分けされた帯電粒子を回転させる方式である。有機EL表示素子(有機エレクトロ・ルミネッセンス表示デバイス)は、有機材料からなる複数の薄膜を陰極と陽極で挟み込んだ構造の自発光型のディスプレイである。有機EL表示素子は、メモリ性が無いため、電子ペーパーの分類に入れない場合もある。液晶表示装置は、液晶層をそれぞれ画素電極と対向電極で挟み込んだ構造を有する非自発光型のディスプレイである。
【0005】
液晶ディスプレイによる電子ペーパーは、液晶層の干渉反射を利用した双安定性のある選択反射型のコレステリック液晶を用いて研究・開発が進められている。コレステリック液晶は、カイラルネマティック液晶とも称されることがあり、ネマティック液晶にキラル性の添加剤(カイラル材)を比較的多く(数十%)添加することにより、ネマティック液晶の分子がらせん状のコレステリック相を形成する液晶である。ここで、双安定性とは、液晶が2つの異なった配向状態で安定性を示す性質であり、コレステリック液晶は、プレーナ状態とフォーカルコニック状態という2つの安定状態が電界除去後にも長時間保持される性質を有している。コレステリック液晶では、プレーナ状態で入射光が干渉反射され、フォーカルコニック状態では入射光が透過する。このため、液晶層にコレステリック液晶を用いた液晶パネルでは、液晶層での入射光の選択反射により光の明暗を表示できるため、偏光板が不要となる。コレステリック液晶は、半永久的な表示保持(メモリ性)や鮮やかなカラー表示、高コントラスト、高解像度といった優れた特徴を有している。
【0006】
以上説明したように、各種電子ペーパーが開発され、電子ペーパーの定義も各種あるが、以下の説明では、コレステリック液晶を用いたフレキシブルなパッシブ型液晶表示素子を例として説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0007】
特許文献1はコレステリック液晶表示装置の構成を記載している。本出願において、特許文献1の記載内容は参照され、コレステリック液晶表示装置の構成および動作についての説明は省略する。
【0008】
図1は、カラー表示用コレステリック液晶表示素子の基本構成を示す図である。図示のように、カラー表示用コレステリック液晶表示素子は、積層した3枚の液晶表示パネル10B、10G、10Rと、裏面に設けられた光吸収層17と、を有する。液晶表示パネル10B、10G、10Rの間にカラーフィルタを設ける場合もある。液晶表示パネル10B、10G、10Rは、類似の構成を有するが、波長反射特性が異なる。具体的には、液晶表示パネル10Bは主として480nm付近の光を反射するので青色を表示し、液晶表示パネル10Gは主として550nm付近の光を反射するので緑色を表示し、液晶表示パネル10Rは主として630nm付近の光を反射するので赤色を表示する。液晶表示パネル10B、10G、10Rのそれぞれは、上側透明基板11B、11G、11R、液晶層12B、12G、12R、下側透明基板13B、13G、13R、上側電極14B、14G、14R、および下側電極15B、15G、15Rを有する。ほかに、液晶を封止するシール材やスペーサが設けられるが図示を省略している。また、表示装置では、上側電極および下側電極をそれぞれ駆動する駆動回路が設けられる。
【0009】
図2は、図1のカラー表示用コレステリック液晶表示素子を構成する1枚分の液晶パネルの構成をより詳細に示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は上面図である。
【0010】
上側基板11と下側基板13を、その上に形成された上側電極14と下側電極15が対向するように所定の間隔で貼り合わされる。上側基板11と下側基板13を所定間隔で貼り合わせるために、スペーサと呼ばれる所定の直径を有する粒体が貼り合わせ面に散布されるが、ここでは図示を省略している。上側基板11と下側基板13の間にコレステリック液晶が充填され液晶層12が形成される。上側電極14と下側電極15は、平行に配置された複数の透明な帯状電極を有し、複数の帯状電極が互いに交差するように配置され、交差部分に画素が形成される。透明な帯状電極14、15は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)などの無機透明電極材料で形成されるのが一般的である。上側基板11と下側基板13は、ガラス基板でも形成されるが、可撓性を有するパネルの場合には、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PSF、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレン)などのフィルムで形成される。
【0011】
複数の帯状電極14、15は、フィルムの一方に引き出され、その上に設けられた電極端子18、19が、ドライバ回路を搭載したフレキシブル回路基板(FPC)と接続される。図2の(A)では、下側基板13の帯状電極15と接続されるFPC21が示されている。FPC21の配線パターン22は、ACF(Anisotropic Conductive Film)などを使用した接続層23により、電極端子19に接続される。貼り合わせ部分の周囲にはシール部材16が設けられ、液晶を封止する。
【0012】
カラー液晶表示装置の場合には、反射波長の異なる3枚のパネルが積層され、最も下側に配置されるパネルの裏面に光吸収層17が形成される。帯状電極14、15間に電圧が印加されると、液晶の配列が変化し、特定の波長帯が双安定的に反射あるいは透過する。光を透過する状態では、透過した光は裏面の光吸収層で吸収されるので黒表示になる。
【0013】
図3は、図1のコレステリック液晶パネル(表示素子)を積層したカラー表示素子の反射波長特性の一例を示す図である。図3において、実線がプレーナ状態(白表示)の特性を、破線がフォーカルコニック状態(黒表示)の特性を、示す。図3に示すように、黒表示において赤色波長の反射が大きく、赤色を帯びた黒表示になる。これが、いわゆる「赤浮き」という現象である。以下、「赤浮き」現象の原因を説明する。
【0014】
図4は、上記のパネルで使用する透明電極の厚さを、130nmとした場合と26nmとした場合の1枚の基板の透過波長特性を示す図であり、実線が130nmの場合を、破線が26nmの場合を示す。図4に示すように、透明電極の厚さが130nmの時には、透過率が550nm付近で最大になることが分かる。上側および下側基板の屈折率は、基板材料がPCあるいはPESの場合1.6〜1.65、ガラスの場合約1.5であり、電極材料の屈折率はITOあるいはIZOの場合約2.0であり、界面での反射が生じる。帯状電極は、厚さを130nmとすると、520nmの波長に対して反射防止膜として働き、520nm付近の光の反射率を低減して透過率を上昇させる。厚さが26nmの場合には、可視域では反射防止膜として機能しないため、波長特性はピークを有さず、長波長になるに従って透過率が上昇する。
【0015】
一方、帯状電極の表面抵抗は電極の厚みにほぼ反比例して小さくなるため、厚い方が駆動の上では好ましいが、あまり厚いと青色および緑色での反射の増加、電極材料での光吸収の増加という問題を生じ、製造効率の上からも好ましくない。そこで、電極の厚みは一般的に130nm前後が最適とされている。しかし、電極の厚みを130nmとした場合、緑色以外のほかの波長に対しては反射防止機能が低下するので、反射率は低下せず透過率は上昇しない。これが、図4において、緑色の波長帯の透過率が高い原因である。
【0016】
しかし、電極の厚みを130nmとした場合、図1に示すような3枚のパネルを積層したカラー表示素子の帯状電極の各層で、緑色(550nm付近)以外のほかの波長の反射が相対的に大きくなる。図1に示すように、黒表示において入射した光は、すべてパネルが透過状態(フォーカルコニック状態)であるから、青色パネル10B、緑色パネル10G、赤色パネル10Rの順に透過するが、各パネルには電極の層が2層設けられているので、電極での界面反射が6回行われる。さらに、入射光は各液晶層である程度散乱され、散乱光のうち裏面(光吸収層17)に向かう光は、上記と同様に電極での界面反射を受ける。このように、黒表示において、電極での界面反射の回数が多く、緑色に比べて、赤色や青色の反射光が相対的に多くなる。図1には図示していないが、青色パネル10Bと緑色パネル10Gの間には青色カットフィルタが、緑色パネル10Gと赤色パネル10Rの間には緑色カットフィルタが設けられるのが一般的であるが、赤色パネル10Rは一番裏面側に設けられるため、赤色カットフィルタは設けない。そのため、電極での界面反射光のうち青色はカットされるので青色は低減される。このため、黒表示における赤色の反射が大きくなり、「赤浮き」現象が発生する。上記のように、赤色の電極での界面反射の回数が多く、反射率も高いため、黒表示にかなり赤みがかかった表示になる。
【0017】
「赤浮き」を防止する1つの方法は、電極の厚みを26nm程度に極端に薄くすることである。この場合、550nm付近の透過率が低下して明るさが若干落ちるが、赤色の透過率が相対的に増加して、すなわち赤色の反射が相対的に減少して「赤浮き」現象がなくなる。しかし、帯状電極の表面抵抗が大きくなり、駆動ができないという問題を発生する。
【0018】
【特許文献1】国際公開WO2007/110949A1
【特許文献2】特開昭60−088986号公報
【特許文献3】特開2007−128879号公報
【特許文献4】特開2006−012785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記の問題を解決するには、電極を形成する材料の屈折率を小さくして」、基板との屈折率差を小さくすることが考えられる。基板と電極の屈折率差が小さくなれば、界面反射率が小さくなる。そのため、タッチパネルなどで実用化されている基板との屈折率差の小さい有機導電材料で電極を形成することが考えられるが、使用できる有機導電材料は、透過率が低く、表面抵抗も高いため、帯状電極には使用できない。
【0020】
また、表面抵抗を小さくするために、銅などの金属補助配線を設ける方法も行われているが、金属材料は光を透過しないので、表示の明るさが低下するという問題がある。また、補助配線は、透明な電極とは別の工程で形成する必要があるため、製造コストが増加するという問題もある。
【0021】
特許文献2から4は、透明電極を2層構造にして、1層の厚さを薄くし、合成表面抵抗を小さくする構成を記載しているが、2層構造のため製造が複雑で、製造コストが増加するという問題がある。
【0022】
本実施形態は、「赤浮き」が小さく、透明帯状電極の表面抵抗が駆動可能な程度に十分に小さい透明な帯状電極の新しい構造を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を実現するため、本実施形態によれば、透明帯状電極を単一導電材料で形成され、部分的に厚みを異ならせる。
【0024】
透明帯状電極は、表示部の一部で薄く、それ以外の部分で厚くする。
【0025】
このような構造の透明帯状電極を形成した基板を利用して製作した液晶表示素子、およびそのような液晶表示素子を積層したカラー表示用の反射型表示素子では、「赤浮き」現象が低減される。
【発明の効果】
【0026】
本実施形態によれば、透明帯状電極の一部、特に表示部の一部が薄いため、可視域での反射波長特性に差がなく、「赤浮き」現象は発生しない。また、厚さが薄いのは一部であるので、透明帯状電極の表面抵抗は駆動可能な程度に十分に小さくできる。さらに、透明帯状電極は、部分的に厚さが異なるが、同一材料で形成されるため、若干の工程を加えるだけで製造可能であり、製造コストの増加は小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、3枚のパネルを積層した図1のカラー表示用コレステリック液晶表示素子を例として実施形態を説明する。
【0028】
図5は、カラー表示用コレステリック液晶表示素子を構成する1枚分の液晶表示素子(パネル)の構成を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は上面図である。図2と比較して明らかなように、実施形態の液晶表示素子(パネル)は、従来例と類似の構成を有するが、透明な帯状電極14および15の厚さが部分的に異なることが、従来例と違っている。
【0029】
図5に示すように、下側帯状電極は、表示範囲内の薄い部分15bと、表示範囲外の電極の引き出し配線部に対応する厚い部分15aと、で構成される。厚い部分15aおよび薄い部分15bは、ITOあるいはIZOで作られ、厚い部分15aは、例えば150nmの厚さで、表面抵抗は20Ω/□、薄い部分15bは、例えば30nmの厚さで、表面抵抗は150Ω/□である。同様に、上側帯状電極も、表示範囲内の薄い部分14bと、表示範囲外の電極の引き出し配線部に対応する厚い部分14aと、で構成され、それぞれ30nmと150nmの厚さのITOあるいはIZOで作られる。
【0030】
図6は、実施形態の透明電極基板の製造プロセスを示す図である。図6の(1)に示すように、PCフィルム(基板)31の表面にITOあるいはIZOの電極層32を蒸着し、その上にレジスト層33を塗布するレジスト塗布プロセスAを行う。図6の(2)に示すように、帯状電極の間の部分を露光する露光プロセスAを行う。図6の(3)に示すように、レジスト層33を現像する現像プロセスAを行うと、帯状電極間の部分に対応するレジスト層が除去され、レジストのない部分34が形成される。図6の(4)に示すように、エッチングプロセスAを行い、レジストのない部分34に対応する電極層32が除去される。図6の(5)に示すように、レジスト層33の剥離プロセスAを行い、帯状電極32が形成される。
【0031】
図6の(6)に示すように、帯状電極32の上にレジスト層35を塗布するレジスト塗布プロセスBを行う。図6の(7)に示すように、帯状電極のうち薄くする部分32bを露光する露光プロセスBを行う。図6の(8)に示すように、レジスト層33を現像する現像プロセスBを行うと、帯状電極のうち薄くする部分32bのレジスト層が除去される。図6の(9)に示すように、エッチングプロセスBを行い、レジストのない部分に対応する電極層32bが薄くされ、30nmの厚さになる。図6の(10)に示すように、レジスト層35の剥離プロセスBを行うと、厚い帯状電極32aと薄い帯状電極32bが形成される。
【0032】
シール材の形成、スペーサの散布、組立て、液晶の注入などのほかのプロセスは、従来例と同じなので説明は省略する。
【0033】
上記のように厚い部分と薄い部分を有する帯状電極を有する基板を貼り合わせて製作した青色(B)、緑色(G)および赤色(R)の3枚のパネルを積層したカラー表示素子で、白表示および黒表示の時の反射波長特性を図7に示す。図3の従来例の反射波長特性と比較すると、黒表示での赤色(長波長)反射が低下し、「赤浮き」が解消された。また、白表示における反射率はほとんど低下せず、表示の明るさも維持された。
【0034】
電極全部にわたって厚さが130nmの従来例に比べて、実施形態においては、透明帯状電極の抵抗は、表示部が25kΩから125kΩに増大し、引き出し配線部が5kΩから3kΩに低下する。この結果、全体の抵抗は、実施形態では128kΩになり、30kΩであった従来例に比べて大きくなるが、表示素子を十分に駆動可能なレベルである。また、引き出し配線部の抵抗がかなり小さくなったため、設計上は引き出し配線部の電極幅を細くし、面積を低減することも可能である。さらに、図6で説明したように、電極材料は1種類であり、金属による補助電極に比べてコスト増加は小さい。
【0035】
図8は、実施形態の透明電極基板の製造プロセスの変形例を示す図である。(1)から(4)までは図6と同じである。エッチングプロセスAが終了した後もレジスト層33は剥離せず、図8の(5)に示すように、未露光のレジスト層のうち帯状電極のうち薄くする部分32bを露光する露光プロセスBを行う。図8の(6)に示すように、レジスト層を現像する現像プロセスBを行うと、帯状電極のうち薄くする部分32bのレジスト層が除去される。図8の(7)に示すように、エッチングプロセスBを行い、電極層32bが薄くされ、30nmの厚さになる。この時、基板31はエッチングされないエッチング処理方法を使用する。図8の(8)に示すように、レジスト層35の剥離プロセスBを行うと、厚い帯状電極32aと薄い帯状電極32bが形成される。
【0036】
図8の製造プロセスでは、最初に塗布したレジスト層を2回露光して使用するので、図6の例に比べて2つの工程を省略できた。その結果、図8に示すプロセスでは、従来例の膜厚が一定の帯状電極を形成する場合に比べて、3工程が増大するだけであり、単一材料であることも考慮すると、コスト増加は非常に小さい。
【0037】
図9は、透明帯状電極の形状の変形例を示す図である。図9の(A)は、電極の表示部すべての部分を薄くせずに、一部34bのみを薄くした例である。従って、引き出し配線部および表示部の一部は,電極が厚い部分34aを有する。例えば、薄くする部分の面積を表示部の50%程度にすると、表示の半分で赤浮きが削減できるので、全体としては「赤浮き」が半減できる。この場合、電極の電気抵抗は、引き出し配線部で5kΩから3kΩに、表示部で25kΩから50kΩになり、全体で53kΩになった。この抵抗は、300mm150dpi程度の表示を十分に行えるほど十分に小さい抵抗である。
【0038】
上側帯状電極と下側帯状電極の交差部に画素が形成され、帯状電極の隙間部分は画素外である。図9の(B)は、画素部に対応する電極部分34bの厚さを薄くし、画素を囲むように厚い電極部分34aを設けた例である。画素間には20〜30μmの電極ギャップがあり、この部分を厚い透明電極にしても明るさは低下しない。これにより、電極の電気抵抗をさらに低下させることができる。
【0039】
以上、実施形態を説明したが、記載した構成以外にも各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。例えば、電極の厚さを薄くする部分の形状は各種の変形例が可能であり、電極の厚みの種類も2種類に限定されない。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、電極の一部を薄くすることにより、「赤浮き」が軽減され、しかも実用上問題のない電気抵抗の電極が得られた。また、明るさもほぼ維持され、単一の電極材料で形成するためコスト増加も小さい。また、コレステリック液晶を利用した液晶表示素子を例として説明したが、ほかの液晶を利用する表示素子に適用することも可能である。さらに、実施形態で説明したように、この技術は積層型の反射型表示素子で特に有効であるが、積層型に限らず単層型でも効果が得られるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、カラー表示用コレステリック液晶表示素子の基本構成を示す図である。
【図2】図2は、従来のカラー表示用コレステリック液晶表示素子を構成する1枚分の液晶パネルの構成をより詳細に示す図である。
【図3】図3は、従来例における白表示と黒表示時の反射波長特性を示す図である。
【図4】図4は、透明電極基板の透過率波長特性を示す図である。
【図5】図5は、実施形態のカラー表示用コレステリック液晶表示素子を構成する1枚分の液晶パネルの構成をより詳細に示す図である。
【図6】図6は、実施形態の透明電極基板の製造プロセスを示す図である。
【図7】図7は、実施形態の透明電極基板で構成した表示素子における白表示と黒表示時の反射波長特性を示す図である。
【図8】図8は、実施形態の透明電極基板の製造プロセスの変形例を示す図である。
【図9】図9は、実施形態における透明電極基板の形状の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
11 上基板(フィルム)
12 液晶層
13 下基板(フィルム)
14 上側電極
15 下側電極
16 シール部材
17 光吸収層
14a、15a 厚い電極部分
14b、15b 薄い電極部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に並行に配置された複数の帯状電極と、を備え、
前記帯状電極は、単一導電材料で形成され、部分的に厚みが異なる、ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記帯状電極は、表示部の一部で薄く、それ以外の部分で厚い、ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記帯状電極は、インジウム、錫、亜鉛の酸化物のいずれかで形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記基板の一対を所定の間隔で対向して配置し、
前記基板間に液晶を配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記帯状電極の厚い部分には、引き出し配線が接続されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−294447(P2009−294447A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148155(P2008−148155)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】