ドハティ増幅器
【課題】特にピーク増幅器の故障が発生した場合、IMDとPARの劣化を補いながら継続稼働ができるようにしたドハティ増幅器を提供する。
【解決手段】キャリア増幅器3およびピーク増幅器6の各ゲート側に電圧変化から故障を検出する故障検出回路9,10と、故障検出回路9がキャリア増幅器3の故障を検出したとき停止部で装置の稼働を停止して二次災害の発生を防止し、故障検出回路10がピーク増幅器6の故障を検出したとき最大出力調整部で故障前よりも最大出力を下げて、IMDおよびPARをほぼスペックに合わせて稼働を継続する。
【解決手段】キャリア増幅器3およびピーク増幅器6の各ゲート側に電圧変化から故障を検出する故障検出回路9,10と、故障検出回路9がキャリア増幅器3の故障を検出したとき停止部で装置の稼働を停止して二次災害の発生を防止し、故障検出回路10がピーク増幅器6の故障を検出したとき最大出力調整部で故障前よりも最大出力を下げて、IMDおよびPARをほぼスペックに合わせて稼働を継続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、入力の大きさによってピーク増幅器とキャリア増幅器のインピーダンスを変化させて飽和出力を損なうことなく高効率を実現したドハティ増幅器が実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。このドハティ増幅器によれば、高入力時は、ピーク増幅器の出力側インピーダンスはRo(飽和マッチ)となり、同時に、キャリア増幅器の出力側インピーダンスもRoとなり、飽和出力を損なうことがない。一方、増幅器の低入力時は、C級バイアスされているピーク増幅器は停止状態となり、この影響を受けて、キャリア増幅器の出力インピーダンスは2Ro(効率マッチ)になる。またピーク増幅器の出力インピーダンスは合成器側から見てOPENになるように線路長が調整されているので、キャリア増幅器の出力はピーク増幅器側に回り込むことなく全てドハティ増幅器の出力側に出力される。このようにしてキャリア増幅器は効率マッチで動作し、その出力は合成器で損なわれないので高効率が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のドハティ増幅器では、キャリア増幅器またはピーク増幅器が故障した場合について考慮されていなかった。つまり、キャリア増幅器が故障した場合、残ったピーク増幅器はC級でバイアスされているため、基本的に出力することはできないので、この状態で稼働を続けると、他の箇所に破損が広がるなど二次災害が起きることが懸念される。一方、ピーク増幅器が故障した場合、残ったキャリア増幅器のみで出力することは可能であるが、破損前と比較して性能が低下しており、IMDとPAR(Peak to Average Ratio)は大きく劣化しており、このままでの継続稼働は難しい。
【0005】
本発明の目的は、特にピーク増幅器の故障が発生した場合、IMDとPARの劣化を補いながら継続稼働ができるようにしたドハティ増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、入力信号を分配器で分配した一方の信号をキャリア増幅器で増幅し、前記分配器で分配された他方の信号をピーク増幅器で増幅し、これらの両信号を合成器で合成して出力するドハティ増幅器において、前記キャリア増幅器および前記ピーク増幅器の各ゲート側に電圧変化から故障を検出する故障検出回路と、前記故障検出回路がキャリア増幅器の故障を検出したとき稼働を停止する停止部と、前記故障検出回路が前記ピーク増幅器の故障を検出したとき故障前よりも最大出力を下げて稼働を継続する最大出力調整部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のドハティ増幅器によれば、故障検出回路でキャリア増幅器の故障を検出したときは装置の稼働を停止させて二次災害の発生を防止することができが、故障検出回路でピーク増幅器の故障を検出したときは、故障前の最大出力よりも下げた最大出力とすることによって、IMDおよびPARをほぼスペックに合わせて装置の稼働を継続させることができるようになり、装置の信頼性を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態によるドハティ増幅器の概略構成図である。
【図2】図1に示したドハティ増幅器の最大出力を下げる最大出力調整部の一例を示すブロック構成図である。
【図3】図1に示したドハティ増幅器の故障検出時における処理動作を示すフローチャートである。
【図4】あるドハティ増幅器のIMD特性図である。
【図5】あるドハティ増幅器のPAR特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態によるドハティ増幅装置を示す概略構成図である。
入力端子1から入った信号RoΩは、分配器2で分配され、分配された一方の信号は、キャリア増幅器3で増幅されて出力され、λ/4変成器4でインピーダンス変換される。また、分配器2で分配されたもう一方の信号は、移相器5でキャリア増幅器3の増幅信号とピーク増幅器6の増幅信号が合成される合成点において同相となるように位相が調整されピーク増幅器6で増幅されて出力される。λ/4変成器4からの出力とピーク増幅器6との出力は合成点において合成され、このとき合成された信号は、出力負荷に整合するためλ/4変成器7でインピーダンス変換され、出力端子8から出力する。また、キャリア増幅器3およびピーク増幅器6の各ゲート側にはそれぞれ電圧変化から故障を検出する故障検出回路9,10を設けている。
【0011】
上述したドハティ増幅装置では、キャリア増幅器3の増幅素子がAB級にバイアスされ、ピーク増幅器6の増幅素子がC級にバイアスされており、主として作用するキャリア増幅器3が飽和しても、それ以上のレベルの部分を補助的な増幅器であるピーク増幅器6で増幅し、これらの両増幅器の信号を合成して出力することができる。高入力時では、ピーク増幅器6およびキャリア増幅器3は共にRo(飽和マッチ)になっているので、飽和出力を損なうことはない。また、低出力時では、ピーク増幅器6が停止するのでキャリア増幅器3の出力インピーダンスは2Ro(効率マッチ)になっており、ピーク増幅器6の出力インピーダンスはOPENに見えるためキャリア増幅器3側に回り込むことなく全て出力ポートに出力される。
【0012】
ところで、増幅器の増幅素子FETが破損した場合、ゲート側がショートすることが多く、そのため増幅素子FETにかかるゲート電圧は0Vとなる。そこで故障検出回路9,10はオペアンプ11を使用してキャリア増幅器3およびピーク増幅器6のゲート電圧を常時検出し、ゲート電圧が0Vとなったときに制御装置12へ信号を取り込んで増幅器が破損したと判断するようにしている。この故障検出回路9,10では、オペアンプ11を使用してゲート電圧を検出しているが、この構成に限らず電圧変化を検出できる回路を用いたその他の故障検出回路を使用することができる。
【0013】
次に、故障検出回路9,10および制御装置12による故障検出時の処理動作について、図3に示したフローチャートを用いて説明する。
先ず、装置起動後に、ステップS1で故障検出回路9,10を用いてドハティ増幅器のゲート電圧の監視を開始する。ここでキャリア増幅器3が破損した場合、故障検出回路10はステップS2でキャリア増幅器3のゲート電圧が0Vとなったことを検出し、この検出信号を制御装置12に通知する。この場合、残ったピーク増幅器6はC級でバイアスされているため、入力があってもピーク増幅器6のみで出力することは基本的に不可能であるから、制御装置12はステップS3で二次災害を防ぐために装置の稼働を停止する。
【0014】
しかしながら、キャリア増幅器3は健全であるにも拘わらずピーク増幅器6が故障した場合、故障検出回路9はステップS4でピーク増幅器6のゲート電圧が0Vとなったことを検出し、この検出信号を制御装置12に通知する。この場合、健全なキャリア増幅器3のみでも出力することが可能であるが、ピーク増幅器6の分だけ飽和出力が低下しているため、破損前と比較してIMDとPARが劣化しており、出力が高い場合に増幅装置の特性を満足することができない。
【0015】
つまり、図4および図5に示すIMD特性図およびPAR特性図のようにIMDとPARが変化してしまう。図4はIMD特性図であり、装置の規格を満足するのに必要なIMDスペック13と、ドハティ増幅器としての特性曲線14と、ピーク増幅器6が破損してキャリア増幅器3だけで稼働させたときの特性曲線15とを比較して示している。この図4から分かるように装置の規格を満足するのに必要なIMDスペック13に対して、ドハティ増幅器として稼働させたときの特性曲線14は約47dBmまで満足しているが、キャリア増幅器3のみで稼働させた場合の特性曲線15は、約44dBmまでしか満足していない。
【0016】
また図5はPAR特性図であり、装置の規格を満足するのに必要なPARスペック16と、ドハティ増幅器としての特性曲線17と、ピーク増幅器6が破損してキャリア増幅器3だけで稼働させたときの特性曲線18とを比較して示している。この図5から分かるように装置の規格を満足するのに必要なPARスペック16に対して、ドハティ増幅器として稼働させたときの特性曲線17は約47dBmまで満足しているが、キャリア増幅器3のみで稼働させた場合の特性曲線18は、約44dBmまでしか満足していない。
【0017】
従って、これら両特性図から分かるように、例示した装置ではピーク増幅器6が破損した場合でも最大出力を47dBmから44dBmに下げるならば、IMDおよびPARをほぼスペックに合わせた特性に満足させて、稼働を継続することが可能となる。
【0018】
このように図1に示したピーク増幅器6が破損した場合でも、図3に示したステップS5で装置の最大出力を下げて稼働を継続させることで装置のスペックを満足することができる。その後、ステップS6で装置の最大出力を下げた後のキャリア増幅器3のゲート電圧の監視と、ステップS7でキャリア増幅器3が故障しているかどうかの判定とを継続する。キャリア増幅器3が健全である場合は、ステップS6でキャリア増幅器3のゲート電圧監視を継続する。一方、ステップS7でキャリア増幅器3の故障を検出した場合、ステップS3で装置の稼働を停止する。
【0019】
上述した説明から分かるように、図1に示した制御装置12は、故障検出回路9でキャリア増幅器3の故障を検出したときに装置の稼働を停止させる停止部と、故障検出回路10でピーク増幅器6の故障を検出したときに増幅装置の最大出力を予め設定したり演算したりして算出した値に下げる最大出力調整部とを付加して構成すればよい。
【0020】
次に、上述の最大出力調整部の一例について説明する。
図2は、増幅装置の概略構成を示すブロック構成図である。この増幅装置は、カプラ19とドハティ増幅器21間に接続した電子アッテネータ22を有し、カプラ19で分離した信号レベルを検波する検波回路20からの信号を制御装置12に取り込み、この制御装置12で電子アッテネータ22を制御することによって装置の利得を調整可能に構成している。
【0021】
この増幅装置における通常時、その装置の利得はB(dB)、スペックを満足できる最大出力はA(dBm)、最大入力はA−B(dBm)となっているとする。ここでピーク増幅器6が故障し、故障前の最大出力A(dBm)からC(dB)だけ下げて新たな最大出力A−C(dBm)とする必要がある場合、このときの入力が最大入力A−B−C(dBm)を超えずに調整可能であれば、新たな最大入力をA−B−C(dBm)とすると、装置の利得はB(dB)であり、新たな最大出力A−C(dBm)となる。
【0022】
しかしながら、ピーク増幅器6が故障し、故障前の最大出力A(dBm)からC(dB)だけ下げて新たな最大出力A−C(dBm)とする必要がある場合、このときの入力が最大入力A−B−C(dBm)を超えてしまうときは、制御装置12により電子アッテネータ22を制御し、入力の超過分D(dB)を考慮して装置の利得をB−D(dB)に下げる。これによって、装置の新たな利得をB−D(dB)とし、新たな最大出力をA−C(dBm)とすることができる。
【0023】
以上説明したドハティ増幅器によれば、キャリア増幅器3およびピーク増幅器6の各ゲート側電圧から故障を検出する故障検出回路9,10を設け、故障検出回路9でキャリア増幅器3の故障を検出したときは停止部で装置の稼働を停止させるが、故障検出回路10でピーク増幅器6の故障を検出したときは、最大出力調整部で故障前の出力(dBm)を予め設定した分だけ下げるようにしているため、キャリア増幅器3の故障時には装置の稼働停止によって二次災害の発生を防止し、一方、ピーク増幅器6の故障時には最大出力を抑えることによってIMDおよびPARをほぼスペックに合わせることができので、装置の稼働を継続させることができ、装置の信頼性を一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、図1に示した構成のドハティ増幅器に限らず、他の構成のものにも適用することができる。また、ピーク増幅器6の故障時に最大出力を低下させる最大出力調整部も図2の構成に限らず採用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 入力端子
2 分配器
3 キャリア増幅器
4 λ/4変成器
5 λ/4移相器
6 ピーク増幅器
7 λ/4変成器
8 出力端子
9 故障検出回路
10 故障検出回路
11 オペアンプ
12 制御装置
13 IMDスペック
14 特性曲線
15 特性曲線
16 PARスペック
17 特性曲線
18 特性曲線
19 カプラ
20 検波回路
21 ドハティ増幅器
22 電子アッテネータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、入力の大きさによってピーク増幅器とキャリア増幅器のインピーダンスを変化させて飽和出力を損なうことなく高効率を実現したドハティ増幅器が実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。このドハティ増幅器によれば、高入力時は、ピーク増幅器の出力側インピーダンスはRo(飽和マッチ)となり、同時に、キャリア増幅器の出力側インピーダンスもRoとなり、飽和出力を損なうことがない。一方、増幅器の低入力時は、C級バイアスされているピーク増幅器は停止状態となり、この影響を受けて、キャリア増幅器の出力インピーダンスは2Ro(効率マッチ)になる。またピーク増幅器の出力インピーダンスは合成器側から見てOPENになるように線路長が調整されているので、キャリア増幅器の出力はピーク増幅器側に回り込むことなく全てドハティ増幅器の出力側に出力される。このようにしてキャリア増幅器は効率マッチで動作し、その出力は合成器で損なわれないので高効率が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のドハティ増幅器では、キャリア増幅器またはピーク増幅器が故障した場合について考慮されていなかった。つまり、キャリア増幅器が故障した場合、残ったピーク増幅器はC級でバイアスされているため、基本的に出力することはできないので、この状態で稼働を続けると、他の箇所に破損が広がるなど二次災害が起きることが懸念される。一方、ピーク増幅器が故障した場合、残ったキャリア増幅器のみで出力することは可能であるが、破損前と比較して性能が低下しており、IMDとPAR(Peak to Average Ratio)は大きく劣化しており、このままでの継続稼働は難しい。
【0005】
本発明の目的は、特にピーク増幅器の故障が発生した場合、IMDとPARの劣化を補いながら継続稼働ができるようにしたドハティ増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、入力信号を分配器で分配した一方の信号をキャリア増幅器で増幅し、前記分配器で分配された他方の信号をピーク増幅器で増幅し、これらの両信号を合成器で合成して出力するドハティ増幅器において、前記キャリア増幅器および前記ピーク増幅器の各ゲート側に電圧変化から故障を検出する故障検出回路と、前記故障検出回路がキャリア増幅器の故障を検出したとき稼働を停止する停止部と、前記故障検出回路が前記ピーク増幅器の故障を検出したとき故障前よりも最大出力を下げて稼働を継続する最大出力調整部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のドハティ増幅器によれば、故障検出回路でキャリア増幅器の故障を検出したときは装置の稼働を停止させて二次災害の発生を防止することができが、故障検出回路でピーク増幅器の故障を検出したときは、故障前の最大出力よりも下げた最大出力とすることによって、IMDおよびPARをほぼスペックに合わせて装置の稼働を継続させることができるようになり、装置の信頼性を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態によるドハティ増幅器の概略構成図である。
【図2】図1に示したドハティ増幅器の最大出力を下げる最大出力調整部の一例を示すブロック構成図である。
【図3】図1に示したドハティ増幅器の故障検出時における処理動作を示すフローチャートである。
【図4】あるドハティ増幅器のIMD特性図である。
【図5】あるドハティ増幅器のPAR特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態によるドハティ増幅装置を示す概略構成図である。
入力端子1から入った信号RoΩは、分配器2で分配され、分配された一方の信号は、キャリア増幅器3で増幅されて出力され、λ/4変成器4でインピーダンス変換される。また、分配器2で分配されたもう一方の信号は、移相器5でキャリア増幅器3の増幅信号とピーク増幅器6の増幅信号が合成される合成点において同相となるように位相が調整されピーク増幅器6で増幅されて出力される。λ/4変成器4からの出力とピーク増幅器6との出力は合成点において合成され、このとき合成された信号は、出力負荷に整合するためλ/4変成器7でインピーダンス変換され、出力端子8から出力する。また、キャリア増幅器3およびピーク増幅器6の各ゲート側にはそれぞれ電圧変化から故障を検出する故障検出回路9,10を設けている。
【0011】
上述したドハティ増幅装置では、キャリア増幅器3の増幅素子がAB級にバイアスされ、ピーク増幅器6の増幅素子がC級にバイアスされており、主として作用するキャリア増幅器3が飽和しても、それ以上のレベルの部分を補助的な増幅器であるピーク増幅器6で増幅し、これらの両増幅器の信号を合成して出力することができる。高入力時では、ピーク増幅器6およびキャリア増幅器3は共にRo(飽和マッチ)になっているので、飽和出力を損なうことはない。また、低出力時では、ピーク増幅器6が停止するのでキャリア増幅器3の出力インピーダンスは2Ro(効率マッチ)になっており、ピーク増幅器6の出力インピーダンスはOPENに見えるためキャリア増幅器3側に回り込むことなく全て出力ポートに出力される。
【0012】
ところで、増幅器の増幅素子FETが破損した場合、ゲート側がショートすることが多く、そのため増幅素子FETにかかるゲート電圧は0Vとなる。そこで故障検出回路9,10はオペアンプ11を使用してキャリア増幅器3およびピーク増幅器6のゲート電圧を常時検出し、ゲート電圧が0Vとなったときに制御装置12へ信号を取り込んで増幅器が破損したと判断するようにしている。この故障検出回路9,10では、オペアンプ11を使用してゲート電圧を検出しているが、この構成に限らず電圧変化を検出できる回路を用いたその他の故障検出回路を使用することができる。
【0013】
次に、故障検出回路9,10および制御装置12による故障検出時の処理動作について、図3に示したフローチャートを用いて説明する。
先ず、装置起動後に、ステップS1で故障検出回路9,10を用いてドハティ増幅器のゲート電圧の監視を開始する。ここでキャリア増幅器3が破損した場合、故障検出回路10はステップS2でキャリア増幅器3のゲート電圧が0Vとなったことを検出し、この検出信号を制御装置12に通知する。この場合、残ったピーク増幅器6はC級でバイアスされているため、入力があってもピーク増幅器6のみで出力することは基本的に不可能であるから、制御装置12はステップS3で二次災害を防ぐために装置の稼働を停止する。
【0014】
しかしながら、キャリア増幅器3は健全であるにも拘わらずピーク増幅器6が故障した場合、故障検出回路9はステップS4でピーク増幅器6のゲート電圧が0Vとなったことを検出し、この検出信号を制御装置12に通知する。この場合、健全なキャリア増幅器3のみでも出力することが可能であるが、ピーク増幅器6の分だけ飽和出力が低下しているため、破損前と比較してIMDとPARが劣化しており、出力が高い場合に増幅装置の特性を満足することができない。
【0015】
つまり、図4および図5に示すIMD特性図およびPAR特性図のようにIMDとPARが変化してしまう。図4はIMD特性図であり、装置の規格を満足するのに必要なIMDスペック13と、ドハティ増幅器としての特性曲線14と、ピーク増幅器6が破損してキャリア増幅器3だけで稼働させたときの特性曲線15とを比較して示している。この図4から分かるように装置の規格を満足するのに必要なIMDスペック13に対して、ドハティ増幅器として稼働させたときの特性曲線14は約47dBmまで満足しているが、キャリア増幅器3のみで稼働させた場合の特性曲線15は、約44dBmまでしか満足していない。
【0016】
また図5はPAR特性図であり、装置の規格を満足するのに必要なPARスペック16と、ドハティ増幅器としての特性曲線17と、ピーク増幅器6が破損してキャリア増幅器3だけで稼働させたときの特性曲線18とを比較して示している。この図5から分かるように装置の規格を満足するのに必要なPARスペック16に対して、ドハティ増幅器として稼働させたときの特性曲線17は約47dBmまで満足しているが、キャリア増幅器3のみで稼働させた場合の特性曲線18は、約44dBmまでしか満足していない。
【0017】
従って、これら両特性図から分かるように、例示した装置ではピーク増幅器6が破損した場合でも最大出力を47dBmから44dBmに下げるならば、IMDおよびPARをほぼスペックに合わせた特性に満足させて、稼働を継続することが可能となる。
【0018】
このように図1に示したピーク増幅器6が破損した場合でも、図3に示したステップS5で装置の最大出力を下げて稼働を継続させることで装置のスペックを満足することができる。その後、ステップS6で装置の最大出力を下げた後のキャリア増幅器3のゲート電圧の監視と、ステップS7でキャリア増幅器3が故障しているかどうかの判定とを継続する。キャリア増幅器3が健全である場合は、ステップS6でキャリア増幅器3のゲート電圧監視を継続する。一方、ステップS7でキャリア増幅器3の故障を検出した場合、ステップS3で装置の稼働を停止する。
【0019】
上述した説明から分かるように、図1に示した制御装置12は、故障検出回路9でキャリア増幅器3の故障を検出したときに装置の稼働を停止させる停止部と、故障検出回路10でピーク増幅器6の故障を検出したときに増幅装置の最大出力を予め設定したり演算したりして算出した値に下げる最大出力調整部とを付加して構成すればよい。
【0020】
次に、上述の最大出力調整部の一例について説明する。
図2は、増幅装置の概略構成を示すブロック構成図である。この増幅装置は、カプラ19とドハティ増幅器21間に接続した電子アッテネータ22を有し、カプラ19で分離した信号レベルを検波する検波回路20からの信号を制御装置12に取り込み、この制御装置12で電子アッテネータ22を制御することによって装置の利得を調整可能に構成している。
【0021】
この増幅装置における通常時、その装置の利得はB(dB)、スペックを満足できる最大出力はA(dBm)、最大入力はA−B(dBm)となっているとする。ここでピーク増幅器6が故障し、故障前の最大出力A(dBm)からC(dB)だけ下げて新たな最大出力A−C(dBm)とする必要がある場合、このときの入力が最大入力A−B−C(dBm)を超えずに調整可能であれば、新たな最大入力をA−B−C(dBm)とすると、装置の利得はB(dB)であり、新たな最大出力A−C(dBm)となる。
【0022】
しかしながら、ピーク増幅器6が故障し、故障前の最大出力A(dBm)からC(dB)だけ下げて新たな最大出力A−C(dBm)とする必要がある場合、このときの入力が最大入力A−B−C(dBm)を超えてしまうときは、制御装置12により電子アッテネータ22を制御し、入力の超過分D(dB)を考慮して装置の利得をB−D(dB)に下げる。これによって、装置の新たな利得をB−D(dB)とし、新たな最大出力をA−C(dBm)とすることができる。
【0023】
以上説明したドハティ増幅器によれば、キャリア増幅器3およびピーク増幅器6の各ゲート側電圧から故障を検出する故障検出回路9,10を設け、故障検出回路9でキャリア増幅器3の故障を検出したときは停止部で装置の稼働を停止させるが、故障検出回路10でピーク増幅器6の故障を検出したときは、最大出力調整部で故障前の出力(dBm)を予め設定した分だけ下げるようにしているため、キャリア増幅器3の故障時には装置の稼働停止によって二次災害の発生を防止し、一方、ピーク増幅器6の故障時には最大出力を抑えることによってIMDおよびPARをほぼスペックに合わせることができので、装置の稼働を継続させることができ、装置の信頼性を一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、図1に示した構成のドハティ増幅器に限らず、他の構成のものにも適用することができる。また、ピーク増幅器6の故障時に最大出力を低下させる最大出力調整部も図2の構成に限らず採用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 入力端子
2 分配器
3 キャリア増幅器
4 λ/4変成器
5 λ/4移相器
6 ピーク増幅器
7 λ/4変成器
8 出力端子
9 故障検出回路
10 故障検出回路
11 オペアンプ
12 制御装置
13 IMDスペック
14 特性曲線
15 特性曲線
16 PARスペック
17 特性曲線
18 特性曲線
19 カプラ
20 検波回路
21 ドハティ増幅器
22 電子アッテネータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を分配器で分配した一方の信号をキャリア増幅器で増幅し、前記分配器で分配された他方の信号をピーク増幅器で増幅し、これらの両信号を合成器で合成して出力するドハティ増幅器において、前記キャリア増幅器および前記ピーク増幅器の各ゲート側に電圧変化から故障を検出する故障検出回路と、前記故障検出回路がキャリア増幅器の故障を検出したとき稼働を停止する停止部と、前記故障検出回路が前記ピーク増幅器の故障を検出したとき故障前よりも最大出力を下げて稼働を継続する最大出力調整部とを設けたことを特徴とするドハティ増幅器。
【請求項1】
入力信号を分配器で分配した一方の信号をキャリア増幅器で増幅し、前記分配器で分配された他方の信号をピーク増幅器で増幅し、これらの両信号を合成器で合成して出力するドハティ増幅器において、前記キャリア増幅器および前記ピーク増幅器の各ゲート側に電圧変化から故障を検出する故障検出回路と、前記故障検出回路がキャリア増幅器の故障を検出したとき稼働を停止する停止部と、前記故障検出回路が前記ピーク増幅器の故障を検出したとき故障前よりも最大出力を下げて稼働を継続する最大出力調整部とを設けたことを特徴とするドハティ増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−49879(P2012−49879A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190906(P2010−190906)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]