説明

ドライエッチング装置、ドライエッチング方法、フォトマスク製造装置及びフォトマスク製造方法

【課題】任意の領域のプラズマ密度を自在に可変して、グローバルローディングを低減したエッチング処理ができるドライエッチング装置、ドライエッチング方法、フォトマスク製造装置及びフォトマスク製造方法を提供する。
【解決手段】ドライエッチング装置20は、被エッチング材料をエッチングするドライエッチング装置である。演算機構34は、被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する。また、マグネット30などによって構成されるプラズマ制御機構は、エッチング処理の際に被エッチング材料のプラズマ密度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチングとフォトマスクの製造装置及び製造方法に関するものであり、特にフォトマスクパターンを安定して高精度に形成することが可能なドライエッチング装置、ドライエッチング方法、フォトマスク製造装置及びフォトマスク製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクの製造において、ドライエッチング時に発生するグローバルローディング効果が素子寸法特性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
グローバルローディング効果とは、パターン周辺の被エッチング面積によって、エッチャントの消費される量に違いが生じ、エッチングレートにバラつきが発生してパターンの寸法が変動してしまう現象である。
【0004】
上記問題に対応すべく、グローバルローディング効果の低減に向けての手法が特許文献1に開示されている。この特許文献1に示す技術は、描画時にドライエッチングによるグローバルローディング効果の補正を入れてパターンを描画する手法である。
【0005】
特許文献1の手法では、ドライエッチングで発生するグローバルローディング効果を予想して、パターンにグローバルローディング効果が打ち消されるような補正を入れて描画することにより、グローバルローディング効果を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−33025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のフォトマスク製造方法では、ドライエッチング時に発生するグローバルローディング効果が大きければ描画の補正量が大きくなり、プロセス誤差によりバラつきが大きくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、フォトマスクパターンを安定して高精度に形成することが可能なドライエッチング装置、ドライエッチング方法及びフォトマスク製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、被エッチング材料をエッチングするドライエッチング装置であって、前記被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する演算機構と、エッチング処理の際に前記被エッチング材料のプラズマ密度を変更するプラズマ制御機構と、を備えることを特徴とするドライエッチング装置である。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記演算機構は、前記プラズマ制御機構による前記プラズマ密度の変更状態を、算出した前記パターン密度に対応して設定することを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング装置である。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記プラズマ制御機構は、前記被エッチング材料の任意の領域毎の前記プラズマ密度を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドライエッチング装置である。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記プラズマ制御機構は、複数のマグネットを用いて前記プラズマ密度を変更することを特徴とする請求項1〜3に記載のドライエッチング装置である。
【0013】
本発明の請求項5に記載の発明は、前記プラズマ制御機構は、前記エッチング処理の際に前記被エッチング材料が設置される平面状部材の前記被エッチング材料設置面と反対の面に前記マグネットを設置可能な機構を備えることを特徴とする請求項4に記載のドライエッチング装置である。
【0014】
本発明の請求項6に記載の発明は、前記設置機構は、1つ以上の前記マグネットを保管できる格納棚と、前記マグネットを前記格納棚から搬出し任意の箇所に搭載するアームと、を備えることを特徴とする請求項5に記載のドライエッチング装置である。
【0015】
本発明の請求項7に記載の発明は、被エッチング材料をエッチングするドライエッチング方法であって、前記被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する演算工程と、エッチング処理の際に前記被エッチング材料のプラズマ密度を変更するプラズマ制御工程と、を含んだことを特徴とするドライエッチング方法である。
【0016】
本発明の請求項8に記載の発明は、前記プラズマ制御工程では、前記被エッチング材料の任意の領域毎の前記プラズマ密度を変更することを特徴とする請求項7に記載のドライエッチング方法である。
【0017】
本発明の請求項9に記載の発明は、フォトマスクを製造するフォトマスク製造装置であって、請求項1〜6のいずれか1つに記載のドライエッチング装置を用いてエッチング処理をおこなうことを特徴とするフォトマスク製造装置である。
【0018】
本発明の請求項10に記載の発明は、フォトマスクを製造するフォトマスク製造であって、請求項7または8に記載のドライエッチング方法を用いてエッチング処理をおこなうことを特徴とするフォトマスク製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドライエッチングにおけるグローバルローディング効果を低減できる。これにより、高精度な素子寸法特性を安定して実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るドライエッチング装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るマスクパターンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示す本発明の実施の形態に係るマグネットを備えたドライエッチング装置20について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るドライエッチング装置20を示す概略断面図である。図1に示すように本発明の実施の形態に係るドライエッチング装置20は、チャンバー21を所定の真空度まで排気した後、ガス供給口24から反応性ガスを供給する。また、排気口25を通して反応性ガスが排気されるので、チャンバー21内は適当な圧力(約0.1mTorr〜数100mTorr)に制御される。チャンバー21の上部と下部には、それぞれアノード(陽極)23及びカソード(陰極)22があり、カソード(陰極)22上には、被エッチング材料10が載置されている。カソード(陰極)22には、インピーダンス整合器(M.B)27、ブロッキングコンデンサ26を介して、RF(高周波)電源(高周波発振器)28が接続され、チャンバー21内のガス中にRF(高周波)電力が供給される。
【0024】
さらに、本発明の実施の形態に係るエッチング装置20は、被エッチング材料に対してプラズマ密度を自在に可変できるマグネット30と、マグネット30を任意の領域に設置する機構(プラズマ制御機構)と、被エッチング材料のパターンデータを記憶しパターンの密度を算出する演算機構34を備えている。すなわち、これらが被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する演算機構と、エッチング処理の際に被エッチング材料のプラズマ密度を変更するプラズマ制御機構と、に対応する。
【0025】
マグネット30は被エッチング材料下部にあるマグネット置き場31とマグネット格納棚33の間をマグネットアーム32で移動する。マグネット置き場31は、ブロッキングコンデンサ26とカソード22との間、かつカソード22の側面側にある。すなわち、プラズマ制御機構は、エッチング処理の際に被エッチング材料が設置される平面状部材(カソード22)の被エッチング材料設置面と反対の面にマグネット30を設置可能な設置機構を備える。また、この機構は、1つ以上のマグネット30を保管できるマグネット格納棚33と、マグネット30をマグネット格納棚33から搬出し任意の箇所に搭載するマグネットアーム32と、を備える。
【0026】
ここで演算機構34によって算出されたパターン密度に応じて、マグネット30が被エッチング材料下部に配置される。そうすると、パターン密度に対して各任意の領域のプラズマが磁場の影響を受けてプラズマ密度が可変してグローバルローディングの影響を低減できる。すなわち、演算機構は、プラズマ制御機構によるプラズマ密度の変更状態を、算出したパターン密度に対応して設定する。また、プラズマ制御機構は、被エッチング材料の任意の領域毎のプラズマ密度を変更する。
【0027】
本発明の実施の形態に係るエッチング装置20は、パターン密度に応じてマグネット30の磁場の影響を用いてプラズマ密度を可変することで、グローバルローディングの影響を低減してエッチング処理する。そうすることで、プロセスバラつきが小さくなり、フォトマスクの生産性を向上させることができる。
【実施例1】
【0028】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例は、本発明に係る実施例の一つであって、図1に示すエッチング装置20を用いて、グローバルローディングを低減する方法の具体例について説明する。
【0029】
本エッチング装置20は、被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する演算機構34を備えている。また、マグネット30の磁場の影響でプラズマ密度を制御できる。よって、算出されたパターン密度を基にして、グローバルローディングが低減されるようマグネット30を演算機構34で設定してマグネットアーム32を用いて配置すれば、グローバルローディングを低減できる。
【0030】
従来のドライエッチング装置と描画機での補正を用いて、図2に示すパターンをエッチング処理した結果を表1に示す。図2のマスクパターン40の左領域41、右領域42にはそれぞれ200nmのパターンが30本配置されている。また、右領域はエッチング面積と非エッチング面積がそれぞれ50%になるようにダミーパターンが配置されている。これにより、左領域と右領域を比較することにより、グローバルローディングの影響を評価できる。表1の結果は30本の平均値である。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明の図1のマグネットを備えたドライエッチング装置20を用いて図2に示すパターンをエッチング処理した結果を表2に示す。表2の結果は30本の平均値である。
【0033】
【表2】

【0034】
以上より、従来工程を用いてエッチングした結果と本発明に係るドライエッチング装置20を用いてエッチングした結果とを比較すると、本発明に係るドライエッチング装置20の方がパターン密度による寸法誤差が小さかった。これにより、本発明に係るドライエッチング装置20を用いることによって、微細パターンの高精度な素子寸法特性が安定して実現できることがわかる。
【0035】
なお、本発明に係るドライエッチング装置20またはドライエッチング方法を、フォトマスクを製造するフォトマスク製造装置やフォトマスク製造方法に適用してもよい。この場合も、上記したドライエッチング装置20の効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0036】
10…被エッチング材料、20…エッチング装置、21…チャンバー、22…カソード(陰極)、23…アノード(陽極)、24…ガス供給口、25…排気口、26…ブロッキングコンデンサ、27…インピーダンス整合器(M.B)、28…RF(高周波)電源(高周波発振器)、30…マグネット、31…マグネット置き場、32…マグネットアーム、33…マグネット格納棚、34…演算機構、40…フォトマスクパターン、41…マスクパターン左領域、42…マスクパターン右領域(ダミー50%配置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被エッチング材料をエッチングするドライエッチング装置であって、
前記被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する演算機構と、
エッチング処理の際に前記被エッチング材料のプラズマ密度を変更するプラズマ制御機構と、
を備えることを特徴とするドライエッチング装置。
【請求項2】
前記演算機構は、前記プラズマ制御機構による前記プラズマ密度の変更状態を、算出した前記パターン密度に対応して設定することを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング装置。
【請求項3】
前記プラズマ制御機構は、前記被エッチング材料の任意の領域毎の前記プラズマ密度を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載に記載のドライエッチング装置。
【請求項4】
前記プラズマ制御機構は、複数のマグネットを用いて前記プラズマ密度を変更することを特徴とする請求項1〜3に記載のドライエッチング装置。
【請求項5】
前記プラズマ制御機構は、前記エッチング処理の際に前記被エッチング材料が設置される平面状部材の前記被エッチング材料設置面と反対の面に前記マグネットを設置可能な設置機構を備えることを特徴とする請求項4に記載のドライエッチング装置。
【請求項6】
前記設置機構は、1つ以上の前記マグネットを保管できる格納棚と、前記マグネットを前記格納棚から搬出し任意の箇所に搭載するアームと、を備えることを特徴とする請求項5に記載のドライエッチング装置。
【請求項7】
被エッチング材料をエッチングするドライエッチング方法であって、
前記被エッチング材料のパターンデータを記憶してパターン密度を算出する演算工程と、
エッチング処理の際に前記被エッチング材料のプラズマ密度を変更するプラズマ制御工程と、
を含んだことを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項8】
前記プラズマ制御工程では、前記被エッチング材料の任意の領域毎の前記プラズマ密度を変更することを特徴とする請求項7に記載のドライエッチング方法。
【請求項9】
フォトマスクを製造するフォトマスク製造装置であって、
請求項1〜6のいずれか1つに記載のドライエッチング装置を用いてエッチング処理をおこなうことを特徴とするフォトマスク製造装置。
【請求項10】
フォトマスクを製造するフォトマスク製造であって、
請求項7または8に記載のドライエッチング方法を用いてエッチング処理をおこなうことを特徴とするフォトマスク製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76790(P2013−76790A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215789(P2011−215789)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】