説明

ドライバの支持機構、および回路基板の調整装置

【課題】回路基板に実装された電子部品の回路定数の調整を容易且つ的確に行うことが可能なドライバ支持機構を提供する。
【解決手段】ドライバ支持機構は、挿入孔を有する支持部材と、それに挿入され、当該挿入孔への挿入方向に可動なドライバと、ドライバをその可動方向に付勢する弾性部材とを含む。ドライバの外周表面及び当該挿入孔の内周表面の少なくとも一方は、支持部材又はドライバの構成部材よりも摩擦係数の大きな移動阻害部材により構成され、移動阻害部材と、ドライバの外周表面又は当該挿入孔の内周表面とが接触してなる。従って、ドライバが元の位置に戻る際に、移動阻害部材の摩擦力によりドライバの移動速度を遅くできる。その結果、ドライバが元の位置へ戻る際の勢いで、例えば回路定数を適切に調整し終えた電子部品の調整ボリュームを不用意に回転させてしまうのを防止でき、電子部品の回路定数の調整を容易且つ的確に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバが支持部材に移動可能に支持されたドライバの支持機構に関するものであり、特に、回路基板に実装された電子部品の回路常数をドライバによって回転調整することが可能な回路基板の調整装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機、携帯情報端末機、コンピュータディスプレイなどの電子機器において、表示装置として液晶装置が好適に用いられている。
【0003】
このような液晶装置では、一般的に、電子機器と電気的に接続する媒体としての回路基板が実装されている。例えば、回路基板としては、FPC(Flexible Printed Circuit)などが挙げられる。かかる回路基板には、供給される電圧などを調整する目的で、調整ドライバなどの調整治具を用いて回路定数(抵抗など)を変えることのできる半固定抵抗などの電子部品が実装されることがある。
【0004】
例えば、液晶装置の検査工程では、液晶装置の電源電圧などを調整して適切な映像を得るために、調整治具を用いて半固定抵抗などの電子部品の回路定数の調整を行う(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−241783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、回路基板に実装された電子部品の回路定数の調整を容易且つ的確に行うことが可能なドライバの支持機構、および回路基板の調整装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点では、ドライバの支持機構は、挿入孔を有する支持部材と、前記挿入孔に挿入され、前記挿入孔への挿入方向に可動なドライバと、前記ドライバをその可動方向に付勢する弾性部材と、を備え、前記ドライバの外周表面、及び前記挿入孔の内周表面の少なくとも一方は前記支持部材又は前記ドライバを構成する部材よりも摩擦係数の大きな部材により構成されており、前記摩擦係数の大きな部材と、前記ドライバの外周表面又は前記挿入孔の内周表面とが接触してなることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、ドライバの先端部に向かい合うように台座を設けてもよい。台座には、例えば、回路定数を調整可能な調整ボリュームを有する電子部品が実装された回路基板等が載置される。台座には、ドライバが挿入される挿入孔が設けられた他の支持部材を支持部材とは別途に取り付けてもよい。支持部材によって支持されたドライバは、他の支持部材に設けた挿入孔を貫通し、その先端部が、例えば前述の回路基板と対峙することとなる。そして、可動なドライバを台座方向に移動させて、ドライバの先端を例えば前述の調整ボリュームに係合させ、そして回転させることにより調整ボリュームの回路定数を調整する。調整後には、弾性部材の付勢によりドライバは元の位置に戻る。
【0009】
本発明によれば、ドライバの外周表面、又は前記挿入孔の内周表面は前記支持部材又は前記ドライバを構成する部材よりも摩擦係数の大きな部材により構成され、そしてその部材と、ドライバの外周表面又は挿入孔の内周表面とが接触している。したがって、ドライバが元の位置に戻る際に、部材の摩擦力によりドライバの移動速度を遅くすることができる。その結果、ドライバがその弾性力が作用する方向へ移動するときの勢いで、例えば、回路定数を適切に調整し終えた電子部品の調整ボリュームを不用意に回転させてしまうといったことを防止できる。
【0010】
好適な例では、前記ドライバは、先端部と、前記先端部に連なる位置に設けられた本体と、前記本体に連なる位置に設けられた段部と、を備え、前記段部表面が、前記ドライバを構成する部材よりも摩擦係数の大きな部材により構成されてなる。また、前記支持部材の前記挿入孔の内周表面が、前記支持部材よりも摩擦係数の大きな部材にて形成されている。
【0011】
上記のドライバの支持機構の一つの態様では、前記ドライバを回転させる回転調整機構を備える。これによれば、回転調整機構によりドライバを回転させることにより、電子部品の回路定数を容易に調整することが可能となる。
【0012】
上記のドライバの支持機構の他の態様では、前記支持部材に取り付けられ、前記ドライバの移動を阻止するストッパーを備えてなる。これによれば、ユーザがドライバによって電子部品の回路定数を調整する際に、ストッパーによりドライバの移動を阻止させることで、電子部品の回路定数の調整を容易に行うことができる。例えば、ユーザがドライバを電子部品側に押圧しながら、その調整ボリュームを調整しなくてすむので、電子部品の回路定数の微調整が容易となる。即ち、ドライバの先端部を電子部品の調整ボリュームに係合させた後は、ストッパーにより支持部材に対してドライバの位置が固定され、電子部品の調整ボリュームを回転させるだけでよいので、近年薄型化しつつある電子部品を破損させることなく、その電子部品の回路定数を容易に調整することが可能となる。
【0013】
上記のドライバの支持機構の他の態様では、前記弾性部材は、前記ドライバの外周部に嵌め込まれた押しばねであり、前記ドライバにおいて、少なくとも前記押しばねが配置された部分は金属素材にて形成されている。これによれば、電子部品の回路定数の調整時に、ドライバと弾性部材との摩擦より異物は生じ難く、ドライバと弾性部材との間に異物が挟まってしまうといったことを低減できる。その結果、ドライバの先端部を電子部品の調整ボリュームに対して適切な荷重にて係合させることが可能となり、過大な荷重の付与により電子部品を破損させてしまうといったことを防止できる。
【0014】
本発明の他の観点では、上記の何れかのドライバの支持機構を備えてなる回路基板の調整装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
[回路基板調整装置の構成]
まず、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係るドライバの支持機構を有する回路基板の調整装置(以下、「回路基板調整装置」と称する)の構成について説明する。
【0017】
図1(a)は、回路基板調整装置100の高さ方向に沿った断面図を示す。図1(b)は、回路基板調整装置100の平面図を示す。図2(a)は、図1(a)の矢印Y1方向から見た回路基板調整装置100を構成するドライバ5等の側面図を示す。図2(b)は、ドライバ5の先端部5aの形状を拡大した平面図を示す。図2(c)は、回路定数を調整可能な電子部品が実装された回路基板を備える表示装置の平面図を示す。図3は、回路基板調整装置100を構成するストッパー8付近の要部平面図を示す。
【0018】
回路基板調整装置100は、回路基板に実装された電子部品の調整ボリュームを回転させて、その電子部品の回路定数(抵抗値など)を適切な値に調整する役割を有する。かかる回路基板調整装置100は、例えば、表示装置に接続された回路基板に実装された電子部品の回路定数を調整する用途として適用できる。
【0019】
例えば、表示装置50は、図2(c)に示すように、フレキシブル基板などの回路基板20と、回路基板20に実装された電子部品21と、を有する。電子部品21は、例えば半固定抵抗であり、回路定数(抵抗値)を変化させる回転式の調整ボリューム22と、基材23と、基材23上に形成された馬蹄状の平面形状を有する導電膜(抵抗膜)24と、抵抗膜24と電気的に接続され、抵抗膜24に沿って移動可能に構成される導電ブラシ25と、を有する。かかる電子部品21では、調整ボリューム22を図中矢印のように時計回り又は反時計回りの方向に回転させることにより、導電ブラシ25と抵抗膜24との接触位置が変化し、これに応じて電子部品21の回路定数(抵抗値)が変化する。
【0020】
よって、かかる表示装置50に対して回路基板調整装置100を適用する場合、表示装置50の検査工程などにおいて、その回路基板20に実装された電子部品21の調整ボリューム22を回転させることで、例えば表示装置50へ供給する電源電圧を基準電圧値となるように調整することができる。これにより、フリッカやチラツキなどのない高品位の表示画像を得ることが可能となる。なお、本発明に適用可能な電子部品は、半固定抵抗に限定されず、例えば半固定コンデンサなど回路定数を変化させることが可能なものであれば、どのようなものであってよい。
【0021】
具体的に、回路基板調整装置100は、台座1と、水平移動機構2と、第1支持部材3と、第2支持部材4と、ドライバ5と、弾性部材6と、環状部材7と、ストッパー8と、一対の移動規制部材(9a、9b)と、を有するドライバの支持機構を備える。
【0022】
台座1は、板状の形状を有し、水平移動機構2と、第1支持部材3と、第2支持部材4と、ドライバ5と、弾性部材6と、環状部材7と、ストッパー8と、一対の移動規制部材(9a、9b)を支持する。また、台座1は、表示装置50を収容するための凹部1aを有する。この凹部1a内に表示装置50が収容されることにより、台座1に対する表示装置50の移動が規制される。
【0023】
水平移動機構2は、後述する第1支持部材3を水平方向に移動させる役割を有する。水平移動機構2としては、例えば、レール2aと、図1(b)の矢印Y10方向に示すようにレール2aに沿って移動する移動部2bと、を備えるものが挙げられる。例えば、台座1の凹部1a内に表示装置50を収容する場合には、水平移動機構2を通じて、第1支持部材3を凹部1aと平面的に重ならない位置に移動させてから、表示装置50を台座1の凹部1a内に収容する。なお、台座1の凹部1a内へ表示装置50を収容した後は、ドライバ5により、電子部品21の調整ボリューム22を回転させることが可能な位置に配置されるように、第1支持部材3を移動させる。一方、台座1の凹部1a内に収容された表示装置50を取り出すには、水平移動機構2を通じて、第1支持部材3を凹部1aと平面的に重ならない位置に移動させてから、表示装置50を台座1の凹部1a内から取り出す。このように、水平移動機構2を設けることにより、台座1等に対する表示装置50のセッティングを容易に行うことができる。
【0024】
第1支持部材3は、板状の形状を有し、複数の支柱部材30を介して水平移動機構2の移動部2bに取り付けられている。また、第1支持部材3は、ドライバ5を挿入するための挿入孔3aを有し、第2支持部材4と共にドライバ5を回路基板調整装置100の高さ方向Y2又は高さ方向Y2とは逆方向Y3に移動自在に支持する。
【0025】
第2支持部材4は、板状の形状を有し、複数の支柱部材30を介して第1支持部材3に取り付けられている。また、第2支持部材4は、ドライバ5を挿入するための挿入孔4aを有し、ドライバ5を回路基板調整装置100の高さ方向Y2又は高さ方向Y2とは逆方向Y3に移動自在に支持する。第2支持部材4の挿入孔4aは、第2支持部材4に対して、後述するドライバ5の段部5cを摺動させることが可能な大きさ(本例では直径)を有する。また、第2支持部材4の挿入孔4aには、摩擦係数の大きな素材(例えばゴムなど)にて形成された移動阻害部材(例えばOリング)33が嵌め込まれている。これにより、第2支持部材4の挿入孔4aの内周表面(移動阻害部材の部分)が、第2支持部材4よりも摩擦係数の大きな部材にて形成されている。移動阻害部材33は、ドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22との係合を解除する際に、ドライバ5の移動に伴って後述するドライバ5の段部5cと接触することで、第2支持部材4に対してドライバ5の移動を阻害する役割を有する。また、第2支持部材4上には、ドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22との係合を補助するアライメントマーク(図1(b)において破線で示す)4bが形成されている。ユーザが、後述するドライバ5の回転調整機構5dを通じて、後述する突起部7aを基準位置としてのアライメントマーク4bと平面的に重なり合わせることにより、ドライバ5の先端部5aが電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合される位置に配置される。
【0026】
ドライバ5は、第1支持部材3の挿入孔3a及び第2支持部材4の挿入孔4aに挿入され、挿入孔3a及び4aへの挿入方向に可動可能に構成される。そして、ドライバ5は、回路基板20に実装された電子部品21の調整ボリューム22を回転させて、その電子部品21の回路定数を適切な値に調整する。具体的に、ドライバ5は、先端部5aと、本体5bと、段部5cと、回転調整機構5dと、を有する。
【0027】
先端部5aは、図2(a)及び(b)に示すように、電子部品21の調整ボリューム22の鉤形状の溝22aに係合又は嵌合する断面鉤形状を有する鉤状部分5axを有する。具体的に、先端部5aの鉤状部分5axは、断面円形状の円形部5abと、円形部5abから外側に突出する突起部5acと、を有する。
【0028】
本体5bは、先端部5aに連なる位置に設けられ、棒状の形状を有する。本体5bは、例えば金属素材(例えばステンレスなど)にて形成されている。本体5bは、第2支持部材4の挿入孔4aより断面形状又は直径が小さい。段部5cの表面は、ドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22との係合を解除する際に、第2支持部材4に対してドライバ5の移動を阻害する移動阻害部材にて形成されている。例えば、段部5cの表面は、ドライバ5を構成する部材よりも摩擦係数の大きな移動阻害部材により構成されている。ここで、移動阻害部材としては、例えば、本体5bに比べて摩擦力の大きい素材(ゴムなど)であることが好ましい。段部5cは、本体5bに連なる位置に設けられている。段部5cの断面形状は、本体5bの断面形状より大きい。本例では、段部5cの直径d1は、本体5bの直径d2より大きい。なお、段部5cは、第2支持部材4の挿入孔4aと略同一の大きさを有する。
【0029】
回転調整機構5dは、ドライバ5の先端部5aとは逆側に且つ段部5cに連なる位置に設けられ、ユーザによって回転させられることにより、ドライバ5の先端部5aを回転させ、これにより電子部品21の調整ボリューム22を回転させるための機能を有する。電子部品21の調整ボリューム22の微調整を容易とするためには、回転調整機構5dの直径又は外形は出来る限り大きいほうが望ましい。
【0030】
弾性部材6は、例えばドライバ5の本体5bの外周部に嵌め込まれた押しばねである。弾性部材6は、第2支持部材4及びドライバ5に取り付けられた環状部材7に支持され、ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22から離隔させる方向(即ち、ドライバ5をその可動方向)に付勢する役割を果たす。なお、本実施形態では、弾性部材6はドライバ5と独立の構成要素として構成されているが、これに限らず、本発明では、弾性部材6はドライバ5の構成要素として構成されていてもよい。
【0031】
環状部材7は、第2支持部材4の挿入孔4aより大きな形状を有する環状の部材であり、第1支持部材3と第2支持部材4との間に配置された本体5bに対して取り付けられる。環状部材7は、主として、ドライバ5の移動による弾性部材6の伸長時にドライバ5が第2支持部材4から離脱を防止する機能と、ドライバ5の移動による弾性部材6の収縮時にその弾性部材6の形状を保持する機能とを有する。環状部材7には、外側へ突出する突起部7aが設けられている。突起部7aは、ドライバ5の先端部5aに設けられた突起部5acと同一直線上に位置している。突起部7aは、ドライバ5の回転調整機構5dを回転させて当該突起部7aと第2支持部材4のアライメントマーク4bとを平面的に重なり合わせることで、ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合させる位置に配置する役割を有する。なお、本実施形態では、環状部材7及び突起部7aはドライバ5と独立の構成要素として構成されているが、これに限らず、本発明では、環状部材7及び突起部7aはドライバ5の構成要素として構成されていてもよい。
【0032】
ストッパー8は、図1(b)及び図3に示すように、板状の形状を有し、第2支持部材4に取り付けられた支持部材31に取り付けられている。支持部材31は、第2支持部材4に対して、ストッパー8を水平方向に回転させる役割を果たす。つまり、ストッパー8は、支持部材31を基点にして、第2支持部材4に対して水平方向に回転可能に構成される。また、ストッパー8は、段部5cに係合する切り欠き形状の係合部8aを有する。ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合させる際に、ストッパー8の係合部8aに段部5cを係合させることで、第2支持部材4に対してドライバ5の移動が規制される。このため、ユーザがドライバ5によって電子部品21の回路定数を調整する際に、ストッパー8によりドライバ5の移動を阻止させることで、電子部品21の回路定数の調整を容易に行うことができる。例えば、ユーザがドライバ5を電子部品21側に押圧しながら、その調整ボリューム22を調整しなくてすむので、電子部品21の回路定数の微調整が容易となる。
【0033】
一対の移動規制部材(9a、9b)は、例えば一対の棒状部材であり、第2支持部材4に取り付けられた支持部材32に取り付けられている。一対の移動規制部材(9a、9b)は、支持部材32において相互に一定の間隔をおいて配置されていると共に、回転調整機構5dの中心Oから放射方向に配置されている。一対の移動規制部材(9a、9b)は、突起部7aの回転範囲を規制する役割を果たす。即ち、突起部7aの可動範囲は、一対の移動規制部材(9a、9b)の間においてのみ回転可能に構成される。これにより、電子部品21の回路定数を調整する際に、抵抗膜24に対して適切な範囲でブラシ25を移動させることができる。そのため、ユーザが、誤って、電子部品21のブラシ25を基材21における抵抗膜24の形成されていない領域に位置させるといったことを防止できる。
【0034】
(回路基板調整装置による電子部品の回路定数の調整方法)
次に、図4及び図5等を参照して、本実施形態に係る回路基板調整装置100による電子部品21の回路定数の調整方法の一例について説明する。
【0035】
図4及び図5は、図1(b)に対応する拡大断面図であり、回路基板調整装置100を用いた電子部品21の回路定数を調整するための調整工程を示す。
【0036】
まず、図4に示すように、台座1の凹部1a内へ表示装置50を収容する。これにより、台座1に対して表示装置50の移動が規制される。次に、図1(b)及び図4に示すように、回転調整機構5dを時計方向又は反時計方向に回転させて、突起部7aとアライメントマーク4bとの位置合わせを行いつつ、さらに弾性部材6の弾性力に抗してドライバ5を電子部品21に近づく方向(矢印Y3方向)に移動させ、図5に示すように、ドライバ5の先端部5aの鉤状部分5axを電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに嵌合又は係合させる。次に、図3に示すように、ストッパー8を、支持部材31を基点にして第2支持部材4に対して水平方向に回転させ、ストッパー8の係合部8aを、ドライバ5の段部5cに係合させる。これにより、第2支持部材4に対するドライバ5の移動が阻止される。
【0037】
次に、回転調整機構5dを時計方向又は反時計方向に回転させることで、電子部品21の調整ボリューム22を時計方向又は反時計方向に回転させて、電子部品21の回路定数が目的とする基準範囲内となるように調整する。このとき、回転調整機構5dにより、突起部7aを一対の移動規制部材(9a、9b)の範囲内において回転させることで、電子部品21の回路定数を基準範囲内となるように容易に調整することができる。これにより、例えば表示装置50の場合は、供給される電源電圧が基準電圧値となるように調整することで、フリッカやチラツキなどのない高品位の表示画像を得ることが可能となる。
【0038】
次に、ストッパー8を、支持部材31を基点にして第2支持部材4に対して水平方向に回転させ、ドライバ5の段部5cに対するストッパー8の係合部8aの係合を解除する。これにより、ドライバ5は、弾性部材6の持つ弾性力(付勢力)によって回路基板調整装置100の高さ方向Y2に移動する。このとき、つまりドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22との係合を解除する際に、ドライバ5は、第2支持部材4の挿入孔4aの内周部に配置された移動阻害部材33と移動規制部材により形成された段部5cとの接触によって、回路基板調整装置100の高さ方向Y2への移動が妨げられる。そのため、回路基板調整装置100の高さ方向Y2へのドライバ5の移動速度が遅くなる。その結果、ドライバ5がその高さ方向Y2へ移動するときの勢いで、回路定数を適切に調整し終えた電子部品21の調整ボリューム22を不用意に回転させてしまうといったことを防止できる。そして、ドライバ5の本体5bが第2支持部材4の挿入孔4aに位置した段階で、弾性部材6の持つ弾性力によりドライバ5は速やかに規定の静止位置まで移動して静止する。これは、ドライバ5の本体5bの形状が第2支持部材4の挿入孔4aより小さいためである。こうして、電子部品21の回路定数の調整作業に要する時間を短縮化することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係るドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100の作用効果の一例について説明する。
【0040】
まず、本実施形態に係るドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100は、挿入孔4aを有する第2支持部材4と、挿入孔4aに挿入され、挿入孔4aへの挿入方向に可動なドライバ5と、ドライバ5をその可動方向に付勢する弾性部材6と、を備え、ドライバ5の外周表面、及び第2支持部材4の挿入孔4aの内周表面の少なくとも一方は、第2支持部材4又はドライバ5を構成する部材よりも摩擦係数の大きな移動阻害部材により構成されており、移動阻害部材と、ドライバ5の外周表面又は第2支持部材4の挿入孔4aの内周表面とが接触してなる。したがって、ドライバ5が元の位置に戻る際に、移動阻害部材の摩擦力によりドライバ5の移動速度を遅くすることができる。その結果、ドライバ5がその弾性力が作用する方向へ移動するときの勢いで、例えば、回路定数を適切に調整し終えた電子部品21の調整ボリュームを不用意に回転させてしまうといったことを防止できる。そのため、電子部品21の回路定数の調整を容易且つ的確に行うことができる。
【0041】
好適な例では、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100は、抵抗などの回路定数を調整可能な調整ボリューム22を有する電子部品21が実装された回路基板20を載置する台座1と、台座1に支持され、挿入孔3aを有する第1支持部材3と、第1支持部材3に支持され、挿入孔4aを有する第2支持部材4と、第1支持部材3及び第2支持部材4の挿入孔3a、4aを貫通する位置に設けられ、電子部品21の調整ボリューム22を時計方向又は反時計方向に回転させて、電子部品21の回路定数を変化させるドライバ5と、第2支持部材4及びドライバ5に支持され、ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22から離隔させる方向に付勢する弾性部材6と、を備える。そして、ドライバ5の段部5c及び第2支持部材4の挿入孔4aにおける内周部に配置された移動阻害部33は、それぞれ、ドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22の溝22aとの係合を解除する際に、第2支持部材4に対してドライバ5の移動を阻害する移動阻害部材にて形成されている。
【0042】
これにより、第2支持部材4に対してドライバ5の移動が阻害され、回路基板調整装置100の高さ方向(弾性部材6の弾性力が作用する方向)Y2へのドライバ5の移動速度を遅くすることができる。その結果、ドライバ5がその高さ方向Y2へ移動するときの勢いで、回路定数を適切に調整し終えた電子部品21の調整ボリューム22を不用意に回転させてしまうといったことを防止できる。
【0043】
なお、これに限らず、本発明では、上記同様の作用効果を得るためには、ドライバ5の段部5c及び第2支持部材4の挿入孔4aにおける内周部の何れか一方が、ドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22の溝22aとの係合を解除する際に、第2支持部材4に対してドライバ5の移動を阻害する移動阻害部材にて形成されている構成であればよい。
【0044】
また、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100は、第2支持部材4に回転自在に支持され、且つドライバ5の先端部5aを調整ボリューム22の溝22aに係合させた際に、ドライバ5の段部5cと係合することで、第2支持部材4に対するドライバ5の移動を阻止するストッパー8を備えている。これにより、ユーザがドライバ5を電子部品21側に押圧しながら、その調整ボリューム22を調整しなくてすむ。即ち、ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22に係合させた後は、ストッパー8の働きにより、回転調整機構5dを回転させるだけでよいので、近年薄型化しつつある電子部品21を破損させることなく、電子部品21の調整ボリューム22を通じて回路定数を容易に調整することが可能となる。
【0045】
また、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100では、弾性部材6は、ドライバ5の本体5bの外周部に嵌め込まれた押しばねであり、ドライバ5の本体5bにおいて、少なくとも押しばねが配置された部分は金属素材にて形成されているので、次のような利点がある。
【0046】
ここで、ドライバ5の本体5bが樹脂により形成されている場合、電子部品21の回路定数の調整時に、本体5bの当初より存在するバリや、ドライバ5と弾性部材6との摩擦により生じる異物などがドライバ5と弾性部材6との間に挟まることで、ドライバ5の移動を妨げる虞がある。そうすると、ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合させるときに、当該溝22aに対して必要以上の荷重がかかり、或いはドライバ5の先端部5aが電子部品21の調整ボリューム22の溝22aでない部位に接触して、電子部品21を破損させてしまうといったことが起こり得る。
【0047】
この点、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100では、ドライバ5の本体5bにおいて、少なくとも押しばね(弾性部材6)が配置された部分は金属素材にて形成されているので、電子部品21の回路定数の調整時に、ドライバ5と弾性部材6との摩擦より異物は生じ難く、ドライバ5と弾性部材6との間に異物が挟まってしまうといったことを低減できる。その結果、ドライバ5の先端部5aを電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに対して適切な荷重にて係合させることが可能となり、過大な荷重の付与により電子部品21を破損させてしまうといったことを防止できる。
【0048】
また、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100では、電子部品21の調整ボリューム22は、鉤状の形状を有する溝22aを有し、ドライバ5の先端部5aは、溝22aに嵌合する鉤状部分5axを有し、ドライバ5には、鉤状部分5axと溝22aとを係合させる位置に配置するための突起部7aが取り付けられている。これにより、ドライバ5の先端部5aと電子部品21の調整ボリューム22の溝22aとの係合時に、ドライバ5の先端部5aの鉤状部分と、電子部品21の調整ボリューム22の溝22aとの位置を容易に一致させることができる。
【0049】
また、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100では、第2支持部材4は、ドライバ5の先端部5aの鉤状部分5axが電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合した際に、突起部7aと平面的に重なる位置に形成されたアライメントマーク4bを備えている。そして、突起部7aをアライメントマーク4bと平面的に重なり合わせることにより、鉤状部分5axが電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合される位置に配置される。これにより、的確にドライバ5の先端部5aの鉤状部分5axを、電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合させることができる。
【0050】
また、ドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100は、突起部7aの両側に設けられた一対の移動規制部材(9a、9b)を備え、一対の移動規制部材(9a、9b)は、電子部品21の調整ボリューム22の可動範囲が基準範囲内となるように突起部7aの回転方向の動きを規制する。これによれば、突起部7aを一対の移動規制部材(9a、9b)の範囲内において回転させることで、電子部品21の回路定数を基準範囲内となるように容易に調整することができる。
【0051】
[変形例]
本発明では、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形をすることが可能である。
【0052】
例えば、図6は、図4に対応する、変形例に係るドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100aの断面図を示す。
【0053】
このドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100aでは、第2支持部材4にアライメントマーク4bを設ける代わりに、ドライバ5の突起部5fを電子部品21側へ案内する案内部35を備えている。なお、このドライバ支持機構を有する回路基板調整装置100aは、上記した回路基板調整装置100に対して、この点を除けば同様の構成を有する。案内部35は、ドライバ5の先端部5aの鉤状部分5axが電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに対して係合するように突起部7aの回転方向の動きを規制する。これにより、的確にドライバ5の先端部5aの鉤状部分5axを、電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合させる位置に配置することができる。
【0054】
なお、回路基板調整装置100aの高さ方向Y2に対応する案内部35の長さは、ドライバ5の先端部5aの鉤状部分5axを、電子部品21の調整ボリューム22の溝22aに係合させた場合に、突起部7aの回転方向の動きを妨げない長さとされる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の本実施形態に係るドライバ支持機構を有する回路基板調整装置の断面構成及び平面構成を示す。
【図2】回路基板調整装置を構成するドライバ等の側面図等を示す。
【図3】回路基板調整装置を構成するストッパー付近の平面構成を示す。
【図4】回路基板調整装置を用いた電子部品の回路定数を調整する工程図を示す。
【図5】回路基板調整装置を用いた電子部品の回路定数を調整する工程図を示す。
【図6】本発明の変形例に係る回路基板調整装置の断面構成を示す。
【符号の説明】
【0056】
1 台座、 1a 凹部、 2 水平移動機構、 3 第1支持部材、 3a 挿入孔、 4 第2支持部材、 4a 挿入孔、 5 ドライバ、 5a 先端部、 5ax 鉤状部分、 5b 本体、 5c 段部、 5d 回転調整機構、 6 弾性部材、 7 環状部材、 7a 突起部、 8 ストッパー、 8a 係合部、 9a、9b 移動規制部、 20 回路基板、 21 電子部品、 22 調整ボリューム、 22a 溝、 24 抵抗膜、 25 ブラシ、 33 移動阻害部材、 35 案内部、 50 表示装置、 100、100a 回路基板調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入孔を有する支持部材と、
前記挿入孔に挿入され、前記挿入孔への挿入方向に可動なドライバと、
前記ドライバをその可動方向に付勢する弾性部材と、を備え、
前記ドライバの外周表面、及び前記挿入孔の内周表面の少なくとも一方は前記支持部材又は前記ドライバを構成する部材よりも摩擦係数の大きな部材により構成されており、前記摩擦係数の大きな部材と、前記ドライバの外周表面又は前記挿入孔の内周表面とが接触してなることを特徴とするドライバの支持機構。
【請求項2】
前記ドライバは、先端部と、前記先端部に連なる位置に設けられた本体と、前記本体に連なる位置に設けられた段部と、を備え、
前記段部表面が、前記ドライバを構成する部材よりも摩擦係数の大きな部材により構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のドライバの支持機構。
【請求項3】
前記支持部材の前記挿入孔の内周表面が、前記支持部材よりも摩擦係数の大きな部材にて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドライバの支持機構。
【請求項4】
前記ドライバを回転させる回転調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドライバの支持機構。
【請求項5】
前記支持部材に取り付けられ、前記ドライバの移動を阻止するストッパーを備えてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のドライバの支持機構。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記ドライバの外周部に嵌め込まれた押しばねであり、
前記ドライバにおいて、少なくとも前記押しばねが配置された部分は金属素材にて形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のドライバの支持機構。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のドライバの支持機構を備えてなることを特徴とする回路基板の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−17827(P2010−17827A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182374(P2008−182374)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】