説明

ドライブレコーダおよびドライブレコーダシステム

【課題】ドライブレコーダにおいて、動画としての性能の低下を抑制しつつ、一般的な表示規格にしたがった汎用の表示装置によって再生可能な映像を得る。
【解決手段】所定の周波数(一般的な表示規格に適合した基本的な周波数)で露光動作を行うカメラ10(撮像部)と、カメラ10の露光動作により撮像された映像を記録する記録部20と、カメラ10の露光期間が、所定の周波数またはその整数倍の周波数と近接した周波数で点灯と消灯とを繰り返すLED灯火の信号機(特定の撮像対象物)の消灯の期間と同期しうる状況か否かを判定する判定部30(判定手段)と、判定部30が、同期しうる状況であると判定したときは所定の周波数を変化させ、判定部30が、同期しうる状況でないと判定したときは所定の周波数を変化させないように、カメラ10の露光動作を制御するシステム制御部40(撮像制御部)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダおよびドライブレコーダシステムに関し、詳細には、カメラの撮像周波数の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像部およびこの撮像部によって得られた映像を記録する記録部を含むドライブレコーダを自動車に設置して、この自動車の周辺を映像情報として記録し、後に、この記録部に記録された映像情報を再生表示することで、交通事故などの原因分析に役立てることが行われている。
【0003】
ところで、ドライブレコーダにより記録される映像は、後の再生表示の便宜のために、すなわち、日本国内における一般的なアナログ表示の規格であるNTSC規格(National Television System Committee(全米テレビジョン放送方式標準化委員会)が策定したカラーテレビジョン放送方式の規格)で表示するために、その撮像周波数がNTSC規格に適した59.94[Hz]に設定されている。
【0004】
一方、省エネルギや視認性向上等の観点から、信号機の灯火としてLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いたものが普及し始めている。
【0005】
LEDは直流で点灯させるのが一般的であるが、信号機に用いられているLEDは、その設置地域における交流の商用電源を使用しており、全波整流により商用電源の2倍の周波数で点灯と消灯とを繰り返している。すなわち、東日本では100[Hz](=50[Hz]×2)、西日本では120[Hz](=60[Hz]×2)の周波数で点滅している。
【0006】
ここで、ドライブレコーダの撮像部の撮像周波数は上述したように略60[Hz]であるため、信号機のLEDが120[Hz]の周波数で点滅を繰り返す西日本においては、LEDを駆動するパルス信号のデューティと撮像部の露光期間(周囲の明るさに依存して変化する)との関係で、撮像部の露光期間がLEDの消灯期間のタイミングに合致すると、ドライブレコーダは、信号機が点灯している状態の映像を、長時間に亘って記録できない状態となる。
【0007】
そして、信号機の点灯色に基づいて交通事故の原因を特定しようとする場面においては、そのような信号機が点灯していない状態で記録された映像(信号機自体は点灯している期間もあるが、点灯していない期間のみが記録された映像)から有用な情報を得ることができない。
【0008】
そこで、信号機が点灯していない映像が長時間継続して記録されるのを防止するために、撮像部による撮像の周波数を、NTSC規格である59.94[Hz]よりも低い周波数とし(例えば、NTSC規格ではフレームレートとして30[フレーム/sec]で撮像すべきころ、30[フレーム/sec]よりも小さいフレームレートで撮像する。)ことが提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4152424号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】株式会社ジェ・エー・エフ・メイト社,"ドライブレコーダー「ドラドラDD−01」の取扱説明書 P28(28頁)",[online],[平成22年5月11日検索],インターネット<URL:http://www.jafmate.co.jp/dr/support/download/DD01_manual_v103.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した先行技術は、本来のフレームレートよりも小さいフレームレートでの撮像となるため、得られた動画としての性能は、本来のフレームレートのものよりも低下し、ドライブレコーダとしての性能も低くなる。
【0012】
また、ドライブレコーダは、上述したように、撮像して記録された映像に基づいて交通事故の原因を究明する一助とすることが主な使用目的であったが、その使用用途は多様化していて、事故当時の映像だけでなく、走行中の映像を所望とするタイミングで記録し、その記録された映像を後に再生して楽しむ、ということも行われている。
【0013】
このような場合も、動画性能が低下するのは好ましくなく、また、、フレームレートが一般的な表示規格(例えば、NTSC規格等)とは異なるものでは、上述したような再生映像を一般的な表示機器で再生表示することができず、例えばパーソナルコンピュータを用いて、専用のソフトウェア上でしか再生表示しなければならないなど、手近な表示装置で手軽に再生映像を楽しむことができない。
【0014】
したがって、ドライブレコーダで記録された映像を、車両に備えられたカーナビゲーションシステムの、一般的な表示規格にしたがった表示装置を用いて再生することができれば利便性が高いが、上述したように、フレームレートが一般的な表示規格とは異なるものでは、車載の表示装置を利用することができない。
【0015】
まら、ドライブレコーダに表示装置を加えたドライブレコーダシステムを構築する場合にも、その表示装置に汎用のものを利用することができない、という問題も生じる。
【0016】
なお、以上の問題は、撮像対象が上述したLED灯火の信号機の場合に限定されるものではなく、ドライブレコーダの撮像装置の撮像周波数と近い周波数またはその倍数の周波数で点灯、消灯を繰り返す特定の撮像対象物(例えば、街頭の大型スクリーンや交通標識等)を撮像する場合にも同様に起こりうる。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、動画としての性能の低下を抑制しつつ、一般的な表示規格にしたがった汎用の表示装置によって再生可能な映像を得ることができるドライブレコーダおよびドライブレコーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るドライブレコーダは、LED灯火の信号機などの特定の撮像対象物を、その特定対象物の消灯期間とドライブレコーダの撮像部による撮像期間とが同期して撮像されうる状況下でのみ、撮像のフレームレートを変化させ、それ以外の状況下では、NTSC規格等の一般的な表示規格に合致した通常の撮像周波数で撮像することで、動画としての性能が低下する期間を限定的なものとし、これにより動画としての性能の低下を抑制するとともに、一般的な表示規格に合致した撮像周波数で撮像された映像については汎用の表示装置での再生を可能としたものである。
【0019】
すなわち、本発明に係るドライブレコーダは、所定の周波数で露光動作を行う撮像部と、前記撮像部の露光動作により撮像された映像を記録する記録部と、前記撮像部の露光期間が、前記所定の周波数またはこの所定の周波数の整数倍の周波数と近接した周波数で点灯と消灯とを繰り返す特定の撮像対象物の前記消灯の期間と同期しうる状況か否かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記同期しうる状況であると判定したときは前記所定の周波数を変化させ、前記判定手段が前記同期しうる状況でないと判定したときは前記所定の周波数を変化させないように、前記撮像部の露光動作を制御する撮像制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
ここで、撮像部は、例えばCCDやCMOS等の撮像素子などであるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
記録部は、各種記憶媒体(フラッシュメモリが組み込まれた記憶媒体やハードディスク等)に情報を記録させ、また、これら各種記憶媒体から情報を読み出す動作を行うものであれば、公知の種々のものを適用することができる。
【0022】
また、特定の撮像対象物は、LED灯火の信号機、灯火式交通標識、灯火式道路標識、街頭の大型スクリーンなど、ドライブレコーダの撮像部の撮像周波数と近い周波数またはその倍数の周波数で点灯、消灯を繰り返すものである。
【0023】
判定手段が、上述の同期しうる状況でないと判定するときは、
(1)撮像部の撮像周波数が、特定の撮像対象物の点灯、消灯の周波数もしくはこの周波数の整数倍の周波数とは異なる状況のとき、
(2)撮像部の撮像周波数が特定の撮像対象物の点灯、消灯の周波数もしくはこの周波数の整数倍の周波数と略同一であっても、撮像部の露光期間が特定の撮像対象物の消灯期間よりも長い状況のとき、
(3)撮像部が特定の露光対象物を撮像することがない状況のとき、
などである。
【0024】
したがって、判定手段が、上述の同期しうる状況であると判定するときは、上述した(1)〜(3)にそれぞれ対応しない下記(1′)〜(3′)のときであり、
(1′)撮像部の撮像周波数が、特定の撮像対象物の点灯、消灯の周波数もしくはこの周波数の整数倍の周波数と同じか近接している状況のとき、
(2′)撮像部の撮像周波数が特定の撮像対象物の点灯、消灯の周波数もしくはこの周波数の整数倍の周波数と略同一であって、撮像部の露光期間が特定の撮像対象物の消灯期間よりも短い状況のとき、
(3′)撮像部が特定の露光対象物を撮像しうる状況のとき、
などである。
【0025】
このように構成された本発明に係るドライブレコーダによれば、判定手段が、撮像部の露光期間が所定の周波数またはこの所定の周波数の整数倍の周波数で点灯と消灯とを繰り返す特定の撮像対象物の消灯の期間と同期しうる状況か否かを判定し、この判定手段により、同期しうる状況であると判定されたときは、撮像制御部が、撮像部の露光動作の周波数を、他の周波数(元の基本的な周波数(一般的な表示規格に適合した撮像周波数)よりも高い周波数であってもよいし、低い周波数であってもよい。)に変化させるように撮像部を制御し、判定手段により、同期しうる状況でないと判定されたときは、撮像制御部が、撮像部の露光動作の周波数を、他の周波数に変化させることなく、そのままの基本的な周波数を維持させるように撮像部を制御する。
【0026】
この結果、撮像部の露光期間が、特定の撮像対象物の消灯期間に同期したままとなる状況下、すなわち、特定の撮像対象物の点灯状態を撮像できない状況下においては、撮像周波数が変化して、撮像対象物の点灯状態を撮像できる状態に移行し、撮像対象物の点灯状態を記録部に記録することができる。
【0027】
一方、撮像部の露光期間が、特定の撮像対象物の消灯期間に同期したままとならない状況下、すなわち、特定の撮像対象物を撮像する可能性が極めて低い状況や、露光期間の少なくとも一部に撮像対象物の発光期間が重畳する状況においては、NTSC規格等の一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで、特定の撮像対象物の点灯状態や他の露光対象物を記録部に記録することができるため、動画としての性能が低下することがない。
【0028】
しかも、そのような一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像は、一般的な表示規格の表示装置で再生させることができる。
【0029】
なお、撮像周波数が基本的な周波数から他の周波数に移行して撮像、記録された映像については、パーソナルコンピュータを用いて、専用のソフトウェア上で再生表示させることができる他、特定のフレームを複写してフレーム数を一般的な表示規格に適合させる特別な処理を施すことで、一般的な表示規格の表示装置で再生させることは可能である。
【0030】
以上の通り、本発明のドライブレコーダによれば、撮像される映像は、撮像部の露光期間が特定の撮像対象物の消灯期間に同期したままとなる状況(特定の撮像対象物を撮像する可能性が極めて低い状況も含む)においてのみ、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となるだけであるため、一般的な表示規格に常時対応しない従来のものよりも、動画としての性能が低下するの抑制することができる。
【0031】
また、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間が限定的であるため、その限定的な期間以外の映像すなわち一般的な表示規格に対応した映像は、一般的な表示装置で再生することができ、手軽に映像を再生するという利便性を確保することができる。
【0032】
本発明に係るドライブレコーダシステムは、本発明に係るドライブレコーダに加えて、映像を再生表示する表示装置を備えたものであり、前記撮像部による露光動作の前記所定の周波数が、前記表示装置の表示規格に適合したものであることを特徴とする。
【0033】
このドライブレコーダシステムの表示装置の表示規格としては、例えば一般的なNTSC規格やPAL規格などであり、NTSC規格に適合した撮像部の撮像周波数(所定の周波数)は、59.94[Hz]である。
【0034】
このように構成された本発明に係るドライブレコーダシステムにおける表示装置は、ドライブレコーダの撮像部により撮像され、記録部に記録された映像を再生表示するものであるため、撮像部による撮像周波数は、基本的に再生表示装置の表示規格に適合した周波数に設定されている。
【0035】
したがって、撮像部が所定の周波数で露光動作を行っている限りにおいては、記録部に記録された映像を、特別な処理(フレーム数の調整等)を行うことなく、そのまま表意装置で再生表示することができる。
【0036】
一方、撮像部の露光期間が、上述したLED灯火の信号機等、撮像部の基本的な撮像周波数(所定の周波数)またはこの所定の周波数の整数倍の周波数と近接した周波数で点灯と消灯とを繰り返す特定の撮像対象物の消灯の期間と同期しうる状況にあっては、その特定の撮像対象物の点灯状態を撮像するために、ドライブレコーダの撮像制御部が撮像部の撮像周期を、上記基本的な所定の周波数から他の周波数に変更させるため、そのように変更された周波数で記録部に記録された映像は、表示装置の表示規格に適合したものではないため、その映像に対して特別な処理を行わなければ、その表示装置で表示することはできない。
【0037】
しかし、本発明に係るドライブレコーダシステムによれば、撮像部の露光期間が特定の撮像対象物の消灯の期間と同期しうる状況の場合にのみ、撮像部の撮像周期を変更させるだけであるため、そのように撮像周波数が変更されている期間以外、すなわち撮像部の露光期間が特定の撮像対象物の消灯の期間と同期しうる状況でない場合に撮像され、記録された映像については、特別な処理を施すことなく、このドライブレコーダシステムの表示装置に再生表示させることができ、特別な処理を施さなければ再生できない映像を最小限に抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るドライブレコーダによれば、撮像して得られる映像の、動画としての性能の低下を抑制するとともに、一般的な表示規格にしたがった汎用の表示装置によって再生可能な映像を得ることができる
また、本発明に係るドライブレコーダシステムによれば、撮像して得られる映像の、動画としての性能の低下を抑制するとともに、このドライブレコーダシステムの、一般的な表示規格にしたがった汎用の表示装置によって再生可能な映像を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図2】カメラの露光期間と、西日本地域におけるLED灯火の信号機の消灯(非発光)期間との関係を説明するためのタイミングチャートであり、(a)は西日本地域の商用電源の周波数に対応した周期、(b)は(a)を全波整流した場合((a)の周波数の2倍)の周期、(c)はデューティ50[%]とした場合の、(b)によるLED灯火の信号機の発光期間および消灯期間、(d)はカメラの露光期間(最大で16.8[msec]の例)の一例、(e)はカメラの撮像周期の一例、をそれぞれ表す。
【図3】本発明の実施形態2に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態3に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態3の変型例に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態4に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態4の変型例に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態5に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態5の変型例に係るドライブレコーダの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係るドライブレコーダおよびドライブレコーダシステムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態であるドライブレコーダ100の構成を示すブロック図である。
【0041】
図示のドライブレコーダ100は、車両に搭載されて、車両の進行方向の風景を、所定の周波数(一般的な表示規格に適合した基本的な周波数)で露光動作を行うカメラ10(撮像部)と、カメラ10の露光動作により撮像された映像を記録する記録部20と、カメラ10の露光期間が、上記所定の周波数またはこの所定の周波数の整数倍の周波数と近接した周波数で点灯と消灯とを繰り返すLED灯火の信号機(特定の撮像対象物)の消灯の期間と同期しうる状況か否かを判定する判定部30(判定手段)と、判定部30が、上記「同期しうる状況である」と判定したときは上記所定の周波数を変化させ、判定部30が、上記「同期しうる状況でない」と判定したときは上記所定の周波数を変化させないように、カメラ10の露光動作を制御するシステム制御部40(撮像制御部)と、を備えた構成である。
【0042】
ここで、カメラ10が露光動作を行う所定の周波数は、例えば一般的な表示規格であるNTSC規格に対応した映像を得る59.94[Hz](撮像周期16.8[msec])である。
【0043】
また、カメラ10は、例えばCCDやCMOS等の撮像素子などが2次元に配列されたものであり、必ずしも撮像周期の全期間を露光しているとは限らずに、入射する光量に応じて露光期間の長短が電子シャッタによって調整されている。
【0044】
記録部20は、各種記憶媒体(フラッシュメモリが組み込まれた記憶媒体やハードディスク等)に情報を記録させ、また、これら各種記憶媒体から情報を読み出す動作を行うものであり、読み出された情報は、一般的な表示規格の表示装置によって再生表示させることで、可視的な視聴が可能となる。
【0045】
LED灯火の信号機は、東日本においては商用電源の周波数50[Hz]の2倍の周波数である100[Hz]で点灯と消灯とを繰り返しており、また西日本においては商用電源の周波数60[Hz]の2倍の周波数である120[Hz]で点灯と消灯とを繰り返している。
【0046】
すなわち、西日本においてLED灯火の信号機は、カメラ10の露光動作の周波数(59.94[Hz])の整数倍(2[倍])の周波数(119.88[Hz])と近接した周波数(120[Hz])で点灯と消灯とを繰り返している。
【0047】
したがって、図2に示すように、西日本(商用電源の周期16.7[msec];図2(a))においては、この商用電源の交流を整流し(周期8.3[msec];図2(b))、LED灯火の信号機の点灯のデューティ(例えば50[%];図2(c))とドライブレコーダ100のカメラ10の露光期間(図2(d)、撮像周期は図2(e)に示す16.8[msec])との関係によっては、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯の期間と略同期する状況となり、カメラ10によってLED灯火の信号機が点灯している映像を長時間に亘って撮像できない状況となりうる。
【0048】
判定部30は、このように、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機(特定の撮像対象物)の消灯の期間と同期しうる状況か否かを判定するが、この判定の具体的な方法については、後述の実施形態において説明する。
【0049】
システム制御部40は、判定部30が、上記「同期しうる状況である」と判定したときはカメラ10の上記所定の周波数(撮像周波数)を、59.94[Hz]とは異なる他の周波数に変化させるようにカメラ10を制御する。他の周波数としては、具体的には例えば、54[Hz](27[フレーム/sec])や58[Hz](29[フレーム/sec])など、単位時間あたりのフレーム数を元のフレーム数よりも低減させた周波数であるが、必ずしもフレーム数を低減させる方向に撮像周波数を変化させるのではなく、62[Hz](31[フレーム/sec])や64[Hz](32[フレーム/sec])など、単位時間あたりのフレーム数を元のフレーム数よりも増加させた周波数としてもよい。
【0050】
このように、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとなる可能性のある状況下、すなわち、LED灯火の信号機の点灯状態を撮像できない可能性がある状況下においては、システム制御部40の制御によりカメラ10の撮像周波数が変化することで、カメラ10の露光期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期しなくなり、これによって、カメラ10はLED灯火の信号機の点灯状態を撮像できる状態に移行し、LED灯火の信号機の点灯状態を記録部20に記録することができる。
【0051】
一方、システム制御部40は、判定部30が、上記「同期しうる状況ではない」と判定したときはカメラ10の上記所定の周波数(撮像周波数)を、59.94[Hz]のままで維持させるようにカメラ10を制御する。
【0052】
このように、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとならない状況下、すなわち、LED灯火の信号機の点灯状態を撮像できない可能性が低い状況下(例えば夜間などのように暗いために、露光期間が長い場合など)では、システム制御部40の制御によりカメラ10の撮像周波数が変化されずに元のNTSC規格に合致した通常の撮像周波数のままで撮像された映像が記録部20に記録されるため、動画としての性能が低下することがなく、しかも、そのような一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像は、一般的な表示規格の表示装置で再生させることができる。
【0053】
また、そもそもLED灯火の信号機を撮像する機会自体が無いかその可能性が低い状況下であっても、LED灯火の信号機の点消灯状態に応じて撮像周期を変化させる必要がないため、システム制御部40の制御によりカメラ10の撮像周波数が変化されずに元のNTSC規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像が記録部20に記録され、動画としての性能が低下することがなく、しかも、そのような一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像は、一般的な表示規格の表示装置で再生させることができる。
【0054】
以上の通り、本実施形態1のドライブレコーダ100によれば、撮像される映像は、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとなる状況(LED灯火の信号機を撮像する可能性が極めて低い状況も含む)においてのみ、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となるだけであるため、一般的な表示規格に常時対応しない従来のものよりも、動画としての性能が低下するのを抑制することができる。
【0055】
また、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間が限定的(システム制御部40により、カメラ10の撮像周波数が、基本的な周波数から他の周波数に変化させられている状態のときのみ)であるため、その限定的な期間以外の映像、すなわち一般的な表示規格に対応した映像は、一般的な表示装置で再生することができ、手軽に映像を再生表示するという利便性を確保することができる。
【0056】
なお、本実施形態1のドライブレコーダ100において、システム制御部40はカメラ10と一体的に形成されていてもよい。
(実施形態2)
図3は、本発明の他の実施形態(実施形態2)であるドライブレコーダ200の構成を示すブロック図である。
【0057】
図示のドライブレコーダ200は、判定部130が判定部30と異なる以外は、実施形態1のドライブレコーダ100と同じ構成である。
【0058】
ここで、本実施形態2のドライブレコーダ200における判定部130は、システム制御部40によるカメラ10の露光期間(電子シャッタによる開閉期間の制御状態)を解析する露光制御状態解析部150を備えるとともに、この露光制御状態解析部150により解析されたカメラ10の露光期間T1とLED灯火の信号機の発光色を再現可能の、予め定められた一定の最低露光期間T2との差Tsが、LED灯火の信号機の消灯期間T4よりも短いとき(T4>Ts=T1−T2)は、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯の期間と同期しうる状況(LED灯火の信号機の灯火状態を長期間に亘って記録出来ない状況)であると判定し、上記差Tsが、LED灯火の信号機の消灯期間T4よりも長いか、または等しいとき(T4≦Ts)は、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯の期間と同期しうる状況でないと判定する。
【0059】
カメラ10は、夜間等の暗い環境下では、、そこに入射される光量が小さいため、映像が暗くなり、視認性が低下したものとなり、これを回避するため、システム制御部40により、カメラ10の露光期間を司る電子シャッタの開閉期間が調整され、暗い環境下では露光期間が長くなり、明るい環境下では露光期間が短くなるように制御されている。
【0060】
LED灯火の信号機の消灯期間T4[sec]は、LED灯火の発光デューティを考慮した係数Aを用いて、以下の式により規定される。
T4={1/(60[Hz]×2)}×(1−A)
なお、上記式中の60[Hz]は西日本における商用電源の周波数であり、東日本においては、この数値は50[Hz]に置き換えられる。
【0061】
そして、システム制御部40は、判定部130が、上記「同期しうる状況である」と判定したときはカメラ10の上記所定の周波数(撮像周波数)を、59.94[Hz]とは異なる他の周波数に変化させるようにカメラ10を制御する。
【0062】
この結果、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとなる可能性のある状況下、すなわち、LED灯火の信号機の点灯状態を撮像できない可能性がある状況下においては、システム制御部40の制御によりカメラ10の撮像周波数が変化することで、カメラ10の露光期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期しなくなり、これによって、カメラ10はLED灯火の信号機の点灯状態を撮像できる状態に移行し、LED灯火の信号機の点灯状態を記録部20に記録することができる。
【0063】
一方、システム制御部40は、判定部130が、上記「同期しうる状況ではない」と判定したときはカメラ10の上記所定の周波数(撮像周波数)を、59.94[Hz]のままで維持させるようにカメラ10を制御する。
【0064】
このように、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとならない状況下、すなわち、LED灯火の信号機の点灯状態を撮像できない可能性が低い状況下(例えば夜間などのように暗いために、システム制御部40がカメラ10の露光期間を長くした場合など)もしくはLED灯火の信号機をそもそも撮像する機会自体が無いかその可能性が低い状況下では、システム制御部40の制御によりカメラ10の撮像周波数が変化されずに元のNTSC規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像が記録部20に記録されるため、動画としての性能が低下することがなく、しかも、そのような一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像は、一般的な表示規格の表示装置で再生させることができる。
【0065】
以上の通り、本実施形態2のドライブレコーダ200によれば、撮像される映像は、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとなる状況(LED灯火の信号機を撮像する可能性が極めて低い状況も含む)においてのみ、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となるだけであるため、一般的な表示規格に常時対応しない従来のものよりも、動画としての性能が低下するの抑制することができる。
【0066】
また、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間が限定的(システム制御部40により、カメラ10の撮像周波数が、基本的な周波数から他の周波数に変化させられている状態のときのみ)であるため、その限定的な期間以外の映像すなわち一般的な表示規格に対応した映像は、一般的な表示装置で再生することができ、手軽に映像を再生表示するという利便性を確保することができる。
【0067】
さらに、本実施形態2のドライブレコーダ200は、判定部130が、単に、カメラ10の撮像期間がLED灯火の信号機の消灯期間よりも長い(等しい場合を含む)か、または短いかのみの判定を行うのではなく、LED灯火の信号機の発光色を再現可能の、予め定められた一定の最低露光期間T2をも考慮して、カメラ10の露光期間とLED灯火の信号機の消灯期間とを比較しているため、LED灯火の発光色まで記録可能な状況か否かに応じて撮像周波数の変更がなされ、より実用性が高められる。
【0068】
すなわち、一定の最低露光期間T2を考慮することなく、カメラ10の露光期間T1とLED灯火の信号機の消灯期間T4とを比較した場合、LED灯火の発光有無を検出できる程度の極短い重複期間であっても、同期しうる状況でないと判定されることになるが、この場合、LED灯火の発光色が赤色であるのか、黄色であるのか、または青色であるのか、まで判別不可能な場合もある。
【0069】
そのような場合、ドライブレコーダ200の記録部20に記録された映像は、交通事故の原因を究明する上で、実効性が低いものとなる。
【0070】
しかし、上述したように、判定部30が、一定の最低露光期間T2を考慮した上で判定を行う本実施形態2のドライブレコーダ200は、そのような実効性が低いものとなることはない。
【0071】
なお、本実施形態2のドライブレコーダ200において、システム制御部40はカメラ10と一体的に形成されていてもよい。
(実施形態3)
図4は、本発明の他の実施形態(実施形態3)であるドライブレコーダ300の構成を示すブロック図である。
【0072】
図示のドライブレコーダ300は、判定部230が判定部30と異なる以外は、実施形態1のドライブレコーダ100と同じ構成である。
【0073】
ここで、本実施形態3のドライブレコーダ300における判定部230は、カメラ10の露光期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期しうる地域が予め記憶された電源周波数データ部260(記憶部)を備えるとともに、このドライブレコーダ300が搭載された車両の現在位置を表す情報の入力を外部から受け、電源周波数データ部260に記憶されている地域を参照して、車両の現在位置が、その記憶されている地域の域内か否かを判定し、車両の現在位置がその地域の域内であると判定したときは、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯の期間と同期しうる状況であると判定し、車両の現在位置がその地域の域内でないと判定したときは、カメラ10の露光期間が、LED灯火の信号機の消灯の期間と同期しうる状況でないと判定する。
【0074】
本実施形態3のドライブレコーダ300における電源周波数データ部260に記憶されている地域は、具体的には、商用電源の周波数が60[Hz]である西日本の地域である。
【0075】
これは、本実施形態3のドライブレコーダ300におけるカメラ10の撮像周波数がこの商用電源の周波数に近接している59.94[Hz]であることによるものであり、例えばカメラ10の撮像周波数が他の周波数である場合には、その撮像周波数に近接した周波数の商用電源が用いられている地域が、電源周波数データ部260に記憶されているものとする。
【0076】
すなわち、カメラ10の撮像周波数が略50[Hz]である場合には、この撮像周波数に近接した周波数の商用電源が用いられている地域、すなわち東日本の地域が、電源周波数データ部260に記憶される。
【0077】
このように構成された本実施形態3のドライブレコーダ300によれば、このドライブレコーダ300が搭載された車両の現在の位置が、外部からシステム制御部40を介して判定部230に入力され、判定部230は、その入力された現在位置と、電源周波数データ部260に記憶された地域、すなわち商用電源の周波数が60[Hz]である西日本の地域とを照合して、入力された現在位置がその西日本の地域の域内か否かを判定する。
【0078】
そして、判定部230が、入力された車両の現在位置が電源周波数データ部260に記憶された西日本の地域の域内であると判定したときは、判定部230は、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯の期間と同期しうる状況、すなわちLED灯火の信号機の点灯状態を長期間に亘って撮像できない可能性がある状況であると判定し、システム制御部40は、判定部230によるこの判定結果を受けて、カメラ10の上記所定の周波数(撮像周波数)を、59.94[Hz]とは異なる他の周波数に変化させるようにカメラ10を制御する。
【0079】
この結果、カメラ10の露光期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期しなくなり、これによって、カメラ10はLED灯火の信号機の点灯状態を撮像できる状態に移行し、LED灯火の信号機の点灯状態を記録部20に記録することができる。
【0080】
一方、判定部230が、入力された車両の現在位置が電源周波数データ部260に記憶された西日本の地域の域内でないと判定したときは、判定部230は、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯の期間と同期しうる状況ではない、すなわちLED灯火の信号機の点灯状態を長期間に亘って撮像できない可能性がある状況でないと判定し、システム制御部40は、判定部230によるこの判定結果を受けて、カメラ10の上記所定の周波数(撮像周波数)を、59.94[Hz]のままで維持させるようにカメラ10を制御する。
【0081】
このように、本実施形態3のドライブレコーダ300によれば、このドライブレコーダ300を搭載した車両が西日本に位置しているときは、ドライブレコーダ300のカメラ10の撮像周期とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期する可能性があるため、カメラ10の撮像周波数が調整されることで、LED灯火の信号機の灯火状態を撮像可能にし、一方、このドライブレコーダ300を搭載した車両が西日本に位置していないときは、ドライブレコーダ300のカメラ10の撮像周期とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期する可能性がないため、カメラ10の撮像周期は元の周期のまま、すなわち元のNTSC規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像が記録部20に記録されるため、動画としての性能が低下することがなく、しかも、そのような一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像は、一般的な表示規格の表示装置で再生させることができる。
【0082】
以上の通り、本実施形態3のドライブレコーダ300によれば、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとなる状況においてのみ、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となるだけであるため、一般的な表示規格に常時対応しない従来のものよりも、動画としての性能が低下するの抑制することができる。
【0083】
また、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間が限定的(システム制御部40により、カメラ10の撮像周波数が、基本的な周波数から他の周波数に変化させられている状態のときのみ)であるため、その限定的な期間以外の映像すなわち一般的な表示規格に対応した映像は、一般的な表示装置で再生することができ、手軽に映像を再生表示するという利便性を確保することができる。
【0084】
なお、本実施形態3のドライブレコーダ300は、外部から、車両の現在位置の情報を取得するが、この車両の現在位置の情報は、例えばGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信情報に基づいて取得すればよく、その車両がカーナビゲーションシステムを搭載しているものにあっては、そのカーナビゲーションシステムが取得したGPS受信情報の入力を受けるようにしてもよい。
【0085】
また、電源周波数データ部260が記憶している情報も、そのカーナビゲーションシステムが有する地図情報等に基づいて取得するものとしてもよい。
【0086】
さらに、本実施形態3のドライブレコーダ300は、車両の現在位置の情報は外部から入力される構成であるが、このように車両の現在位置を外部から取得する構成ではなく、例えば図5に示すように、ドライブレコーダ300の構成の一部として、ドライブレコーダ300の現在位置を検出する現在位置検出部270を備え、この現在位置検出部270によって検出されたドライブレコーダ300の現在位置を、車両の現在位置として適用するものとしてもよい。
【0087】
この場合の現在位置検出部270としても、上述したGPSの情報を受信するGPS受信機などを適用することができる。
【0088】
なお、本実施形態3のドライブレコーダ300においても、システム制御部40はカメラ10と一体的に形成されていてもよい。
(実施形態4)
図6は、本発明の他の実施形態(実施形態4)であるドライブレコーダ400の構成を示すブロック図である。
【0089】
図示のドライブレコーダ400は、実施形態2のドライブレコーダ200と実施形態3のドライブレコーダ300との判定部130,230を融合した構成のドライブレコーダであり、その他の構成(カメラ10、記録部20、システム制御部40)については、作用も含めて他の実施形態1〜3と同じである。
【0090】
このドライブレコーダ400の判定部330は、実施形態2における判定部130の露光制御状態解析部150と実施形態3における判定部230の電源周波数データ部260とを備え、ドライブレコーダ400が搭載された車両の現在位置を表す情報の入力を受け、電源周波数データ部260に記憶されている地域(西日本の地域)を参照して、車両の現在位置が西日本の地域の域内か否かを判定し、露光制御状態解析部150により解析されたカメラ10の露光期間T1とLED灯火の信号機の発光色を再現可能の、予め定められた一定の最低露光期間T2との差Ts(=T1−T2)が、LED灯火の信号機の消灯期間T4よりも短く(T4>Ts)、かつ、車両の現在位置が西日本の地域の域内であると判定したときは、カメラ10の撮像期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが長期間に亘って同期しうる状況であると判定する。
【0091】
一方、判定部330は、上記差TsがLED灯火の信号機の消灯期間T4よりも長いか、もしくは等しいとき(T4≦Ts)、または車両の現在位置が西日本の地域の域内でないと判定したときは、カメラ10の撮像期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期しうる状況ではないと判定する。
【0092】
このように構成された実施形態4のドライブレコーダ400によれば、このドライブレコーダ400を搭載した車両が西日本に位置し、かつ上記不等式T4>Tsが成立するとき(例えば、明るい状況のとき)は、ドライブレコーダ300のカメラ10の撮像周期とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期する可能性があるため、システム制御部40によってカメラ10の撮像周波数が調整される(59.94[Hz]から他の周波数に)ことで、LED灯火の信号機の灯火状態を撮像可能にし、一方、このドライブレコーダ400を搭載した車両が西日本に位置していないか、または、上記不等式T4>Tsが成立しないとき(不等式T4≦Tsが成立するとき;例えば、夜間等暗い状況のとき)は、ドライブレコーダ400のカメラ10の撮像周期とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期する可能性がないため、カメラ10の撮像周期は元の周期のまま、すなわち元のNTSC規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像が記録部20に記録されるため、動画としての性能が低下することがなく、しかも、そのような一般的な表示規格に適合した基本的な撮像周波数のままで撮像された映像は、一般的な表示規格の表示装置で再生させることができる。
【0093】
以上の通り、本実施形態4のドライブレコーダ400によれば、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯期間に同期したままとなる状況においてのみ、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となるだけであるため、一般的な表示規格に常時対応しない従来のものよりも、動画としての性能が低下するの抑制することができる。
【0094】
また、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間が限定的(システム制御部40により、カメラ10の撮像周波数が、基本的な周波数から他の周波数に変化させられている状態のときのみ)なものとなるため、その限定的な期間以外の映像すなわち一般的な表示規格に対応した映像は、一般的な表示装置で再生することができ、手軽に映像を再生するという利便性を確保することができる。
【0095】
さらに本実施形態4のドライブレコーダ400は、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間を、上述した実施形態2のドライブレコーダ200や実施形態3のドライブレコーダ300よりも、一層限定的なものとすることができるため、NTSC規格等の一般的な表示規格に対応できない動画となる期間を短縮することができる。
【0096】
なお、本実施形態4のドライブレコーダ400においても、図7に示すように、ドライブレコーダ400の現在位置を検出する現在位置検出部270を備え、この現在位置検出部270によって検出されたドライブレコーダ400の現在位置を、このドライブレコーダ400を搭載した車両の現在位置として適用するものとしてもよい。
【0097】
また、本実施形態4のドライブレコーダ400においても、システム制御部40はカメラ10と一体的に形成されていてもよい。
(実施形態5)
図8は、本発明の他の実施形態(実施形態5)であるドライブレコーダ200の構成を示すブロック図である。
【0098】
図示のドライブレコーダ500は、判定部430が図6に示した実施形態4のドライブレコーダ400の判定部330と異なる以外は、実施形態4のドライブレコーダ400と同じ構成である。
【0099】
ここで、本実施形態5のドライブレコーダ500の判定部430は、実施形態4のドライブレコーダ400の判定部330における露光制御状態解析部150と電源周波数データ部260とを備えるとともに、外部から入力された車両の現在位置が、高速自動車道路上または自動車専用道路上など、LED灯火の信号機が存在する可能性が無いか、またはその可能性が極めて小さい道路上であることを検出する高速道路走行判定部480(位置情報と地図情報とを対応づけたカーナビゲーションシステムの地図データ等を有する)を備えた構成であり、この判定部430は、高速道路走行判定部480が、車両の現在位置が高速自動車道路上または自動車専用道路上など、LED灯火の信号機が存在する可能性が無いか、またはその可能性が極めて小さい道路上であると判定したときは、露光制御状態解析部150による露光状態の解析結果や電源周波数データ部260に記憶された西日本の地域の域内か否かの結果に拘わらず、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯期間と同期しうる状況でないと判定するものである。
【0100】
すなわち、高速自動車道路上や自動車専用道路上には、信号機が設置されていることは極めて稀であり、したがって、ドライブレコーダ500を搭載した車両がこれら高速自動車道路や自動車専用道路上を走行しているときは、ドライブレコーダ500のカメラ10がLED灯火の信号機を撮像する可能性が極めて低い。
【0101】
つまり、このドライブレコーダ500を搭載した車両が、高速道路走行判定部480により、これらの道路上を走行していると検出されたときは、例え、車両の現在位置が電源周波数データ部260に記憶された西日本の地域の域内であり、かつ露光制御状態解析部150による露光状態の解析によりLED灯火の信号機の消灯期間とカメラ10の露光期間とが同期しうる結果が出力されている場合であっても、カメラ10がLED灯火の信号機を撮像する可能性は極めて低いため、電源周波数データ部260および露光制御状態解析部150の情報に基づいた判定結果に拘わらず、判定部430は、カメラ10の露光期間とLED灯火の信号機の消灯期間とが同期しうる状況ではないとの判定結果を出力する。
【0102】
そして、システム制御部40は、判定部430から出力された判定結果に基づいて、カメラ10の撮像周期を調整する。
【0103】
具体的には、判定部430から、同期しうる状況ではないとの判定結果が出力されたときは、システム制御部40は、上述した各実施形態1〜4のドライブレコーダ100〜400と同様に、カメラ10の撮像周波数を、元の59.94[Hz]のままで維持させるようにカメラ10を制御し、一方、同期しうる状況であるとの判定結果が出力されたとき(高速道路走行判定部480が、車両の現在位置が高速自動車道路上または自動車専用道路上など、LED灯火の信号機が存在する可能性が無いか、またはその可能性が極めて小さい道路上ではないと判定し、かつ、露光制御状態解析部150による露光状態の解析結果と電源周波数データ部260に記憶された西日本の地域の域内であるとの結果(実施形態4の場合と同じ))は、システム制御部40は、上述した各実施形態1〜4のドライブレコーダ100〜400と同様に、カメラ10の撮像周波数を、元の基本的な周波数59.94[Hz]から他の周波数に変更させるようにカメラ10を制御する。
【0104】
ここで、高速道路走行判定部480は、車両の現在位置だけでなく、車両の走行情報(特に車速(車速が速いときは高速自動車道路等を走行していると判定し、車速が遅いときは高速道路を走行していないと判定する))や、ETC(登録商標;Electronic Toll Collection System(自動料金収受システム))、VICS(登録商標;Vehicle Information and Communication System(道路交通情報通信システム))から受信した情報に基づいて判定するものであってもよい。
【0105】
なお、これらの情報に基づいて、高速道路走行判定部480が、車両の現在位置が高速自動車道路上または自動車専用道路上であると判定した場合であっても、参照している地図データが、その道路上にLED灯火の信号機やLED灯火の速度表示板などが存在することを示す情報が付加されている場合などは、判定部430は、上述した同期しうる状況であるとの判定結果を出力するものとする。
【0106】
以上の通り、本実施形態5のドライブレコーダ500によれば、ドライブレコーダ500を搭載した車両が高速自動車道路等のLED灯火の信号機が存在することがないか、または存在する可能性が極めて低い道路上を走行している場合には、カメラ10の撮像周波数を、一般的な表示規格に適合した元の基本的な撮像周波数のままで維持することを優先することができ、LED灯火の信号機が存在することがないか、または存在する可能性が極めて低い場合にまで、カメラ10の撮像周波数が他の周波数に変更されて、一般的な表示規格の表示装置での再生が困難になることを抑制することができる。
【0107】
その他の作用、効果は、実施形態1〜4のドライブレコーダと同様であるため、説明を省略する。
【0108】
なお、本実施形態5のドライブレコーダ500は、図6に示した実施形態4のドライブレコーダ400の判定部330を判定部430に置換した構成のものとして説明したが、図7に示した実施形態4のドライブレコーダ400の判定部330を判定部430に置換した構成のものであってもよく、この場合も上述した作用、効果を得ることができる。
【0109】
また、本実施形態5のドライブレコーダ500は、図9に示すように、図4または図5に示した実施形態3のドライブレコーダ300の判定部230に代えて、実施形態3のドライブレコーダ300の判定部230における電源周波数データ部260と高速道路走行判定部480とを備えた判定部530を適用した構成のものであってもよい。
【0110】
ここで、判定部530は、高速道路走行判定部480が、車両の現在位置が高速自動車道路上または自動車専用道路上など、LED灯火の信号機が存在する可能性が無いか、またはその可能性が極めて小さい道路上であると判定したときは、電源周波数データ部260に記憶された西日本の地域の域内か否かの結果に拘わらず、カメラ10の露光期間がLED灯火の信号機の消灯期間と同期しうる状況でないと判定するものである。
【0111】
そして、このように構成されたドライブレコーダ500によれば、このドライブレコーダ500を搭載した車両が高速自動車道路等のLED灯火の信号機が存在することがないか、または存在する可能性が極めて低い道路上を走行している場合には、カメラ10の撮像周波数を元の撮像周波数のままで維持することを優先することができ、LED灯火の信号機が存在することがないか、または存在する可能性が極めて低い場合にまで、カメラ10の撮像周波数が他の周波数に変更されて、一般的な表示規格の表示装置での再生が困難になることを抑制することができる。
【0112】
以上の各実施形態1〜5のドライブレコーダ100〜500は、それぞれ記録部20に記録された映像を、システム制御部40または記録部20から外部に出力して、外部の表示装置により再生表示させるものとして説明したが、本発明に係るドライブレコーダシステムは、本発明に係るドライブレコーダに、そのような外部の表示装置を加えた構成であるため、上述した各実施形態1〜5のドライブレコーダ100〜500に、外部の表示装置を構成として加えたドライブレコーダシステムは、本発明に係るドライブレコーダシステムに対応した実施形態となる。
【0113】
なお、各実施形態1〜5のドライブレコーダ100〜500およびドライブレコーダシステムは、判定部30による判定の対象を、LED灯火の信号機の消灯期間としたものであり、特定の撮像対象物としてLED灯火の信号機を適用したものであるが、本発明に係るドライブレコーダおよびドライブレコーダシステムはこれらの実施形態に限定されるものではなく、LED灯火の信号機以外の、例えば、灯火式交通標識、灯火式道路標識、街頭の大型スクリーンなど、ドライブレコーダのカメラ10の撮像周波数と近い周波数またはその倍数の周波数で点灯、消灯を繰り返すものであれば、そのようなものも特定の撮像対象物として適用することができる。
【0114】
また、上述した各実施形態3〜5のドライブレコーダ300〜500およびドライブレコーダシステムは、そのカメラ10の撮像周波数がNTSC規格の表示装置に適した59.94[Hz]のものであるため、西日本地域の商用電源の周波数60[Hz]と近接し、その結果、ドライブレコーダ300〜500またはドライブレコーダ300〜500を搭載した車両が西日本地域に存在している状態か否かの判定を行ったが、例えば、カメラ10の撮像周波数がPAL規格の表示装置に適した50[Hz]のものであって、撮像した映像を再生表示する表示装置としてこのPAL規格にしたがったものを用いる場合には、カメラ10の基本的な撮像周波数が東日本地域の商用電源の周波数50[Hz]と近接する。
【0115】
したがって、この場合は、各実施形態3〜5のドライブレコーダ300〜500およびドライブレコーダシステムは、ドライブレコーダ300〜500の存在地域が東日本地域に存在している状態か否かに応じた処理を実行するものとする。
【0116】
そして、本発明に係るドライブレコーダおよびドライブレコーダシステムは、撮像部の撮像周波数がNTSC規格の表示装置に適したものであるものに限定されず、PAL規格の表示装置や、その他の一般的な表示規格の表示装置に対応したものであってもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 カメラ(撮像部)
20 記録部
30 判定部(判定手段)
40 システム制御部(撮像制御部)
100 ドライブレコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で露光動作を行う撮像部と、前記撮像部の露光動作により撮像された映像を記録する記録部と、前記撮像部の露光期間が、前記所定の周波数またはこの所定の周波数の整数倍の周波数と近接した周波数で点灯と消灯とを繰り返す特定の撮像対象物の前記消灯の期間と同期しうる状況か否かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記同期しうる状況であると判定したときは前記所定の周波数を変化させ、前記判定手段が前記同期しうる状況でないと判定したときは前記所定の周波数を変化させないように、前記撮像部の露光動作を制御する撮像制御部と、を備えたことを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記判定手段は、前記撮像制御部による前記撮像部の前記露光期間を解析する露光制御状態解析部を備えるとともに、前記露光制御状態解析部により解析された前記露光期間と前記特定の撮像対象物の発光色を再現可能の、予め定められた一定の最低露光期間との差が、前記特定の撮像対象物の消灯期間よりも短いときは、前記同期しうる状況であると判定し、前記差が前記特定の撮像対象物の消灯期間よりも長いか、または等しいときは、前記同期しうる状況でないと判定するものであることを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記判定手段は、前記撮像部の露光期間と前記特定の露光対象物の消灯期間とが同期しうる地域が予め記憶された記憶部を備えるとともに、前記ドライブレコーダが搭載された車両の現在位置を表す情報の入力を受け、前記記憶部に記憶されている前記地域を参照して、前記車両の現在位置が、前記地域の域内か否かを判定し、前記車両の現在位置が前記地域の域内であると判定したときは、前記同期しうる状況であると判定し、前記車両の現在位置が前記地域の域内でないと判定したときは、前記同期しうる状況でないと判定するものであることを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記判定手段は、前記撮像制御部による前記撮像部の前記露光期間を解析する露光制御状態解析部と、前記撮像部の露光期間と前記特定の露光対象物の消灯期間とが同期しうる地域が対応づけられて予め記憶された記憶部とを備えるとともに、前記ドライブレコーダが搭載された車両の現在位置を表す情報の入力を受け、前記記憶部に記憶されている前記地域を参照して、前記車両の現在位置が、前記地域の域内か否かを判定し、前記露光制御状態解析部により解析された前記露光期間と前記特定の撮像対象物の発光色を再現可能の、予め定められた一定の最低露光期間との差が、前記特定の撮像対象物の消灯期間よりも短く、かつ、前記車両の現在位置が前記地域の域内であると判定したときは、前記同期しうる状況であると判定し、前記差が前記特定の撮像対象物の消灯期間よりも長いか、もしくは等しいとき、または前記車両の現在位置が前記地域の域内でないと判定したときは、前記同期しうる状況でないと判定するものであることを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記判定手段は、前記ドライブレコーダの現在位置を検出する現在位置検出部を備えるとともに、前記現在位置検出部によって検出された前記ドライブレコーダの現在位置を、前記車両の現在位置として適用するものであることを特徴とする請求項3または4に記載のドライブレコーダ。
【請求項6】
前記判定手段は、前記車両の現在位置が、高速自動車道路上または自動車専用道路上であることを検出する高速道路走行判定部を備えるとともに、前記高速道路判定部が、前記車両の現在位置が前記高速自動車道路上または前記自動車専用道路上であると判定したときは、前記判定手段による判定結果に拘わらず、前記同期しうる状況でないと判定するものであることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載のドライブレコーダ。
【請求項7】
前記所定の周波数を表示規格とする表示装置をさらに備え、前記表示装置は、前記判定手段が前記同期しうる状況でないと判定したときの、前記撮像部によって撮像して得られた映像を再生表示することを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載のドライブレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−34275(P2012−34275A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173609(P2010−173609)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】