説明

ドライブ装置及び光ディスク装置

【課題】光ピックアップのアクチュエータ駆動方式としてPWM方式を採用し、サーボ帯域からの要求と信号帯域からの要求との両者に対して、十分高いPWM周期と十分低いPWM周期を両立させる。
【解決手段】ドライブ装置は、対物レンズ4及び該対物レンズ4を移動可能に支持するアクチュエータ5、6を含み、光ディスク1に対して対物レンズ4を介して情報信号を再生又は記録する光ピックアップ10における、アクチュエータを駆動する。ドライブ装置は、PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、生成された駆動信号によってアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバ27を備える。アクチュエータドライバ27は、再生された情報信号により示される再生状態情報及びアクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報のうち少なくとも一方に基づいて、PWM周期を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ディスクに対して情報信号の読取及び・又は書込みを行う光ピックアップにおける対物レンズを移動させるアクチュエータを、駆動するドライブ装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドライブ装置によれば、光ディスク上の目的位置に光を合焦させるため、対物レンズを移動可能に支持するアクチュエータが駆動される。アクチュエータの駆動には、連続的なアナログ電圧/電流が用いられる場合の他、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式で変調された駆動電圧・電流が用いられる場合も多い。特にスリムタイプのドライバにおいては、ドライバ部での消費電力低減のためPWM駆動が多く用いられる。
【0003】
例えば、PWM駆動方式でアクチュエータVCM(Voice Coil Motor:ボイスコイルモータ)を駆動すると共に、アクチュエータを駆動する一対の駆動信号をフレキシブル基板部の両面に対向するように配置し、ノイズの誘起を抑制する光ディスク装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−59402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばPWM駆動方式では、ある電圧値を表現するために、最低でもPWM周期分の時間が必要である。このことは、サーボループ内でPWM駆動を用いると、無駄な時間要素が挿入されることで位相まわりが発生することを意味する。このため、メディア毎の種類や、記録再生倍速によって、必要なサーボ帯域に対して、PWM周波数(即ちPWM周期の逆数)が、十分高くなるように設定される必要がある。
【0006】
更に、最もサーボ帯域が広い場合でも、PWM駆動による遅延が問題とならないのは勿論のこと、ジャンプ時のようにより高速の駆動波形を必要とする場合においても対応可能なように十分高いPWM周波数が設定される必要がある。
【0007】
他方、PWM駆動はアナログ駆動と異なり、振幅の大きなパルス波形が常時存在する。このため、微弱である光ディスクからの再生情報信号等に悪影響を与えやすい。再生情報信号自体は、PWM基本周波数より高い帯域に分布するため、駆動信号が、再生情報信号へ干渉する可能性を考慮すると、PWM周波数は情報信号帯域に対して十分低く選択したいという要求もある。
【0008】
従って、上記特許文献1に記載された技術によれば、単一のPWM周期のドライブ装置を用いることから、高倍速化やメディアの多様化が進むと、(i)メディア・倍速の組合せによってはより高くなり得るサーボ帯域に対して、十分高いPWM周波数とすることと、(ii)より低い情報信号帯域をもつメディア・倍速に対して、十分低いPWM基本周波数とすることとを、同時に満たすことは困難であるという技術的問題点がある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、PWM方式を採用しつつ、サーボ帯域からの要求と信号帯域からの要求との両者に対して、十分高いPWM周期と十分低いPWM周期とを両立させ得るドライブ装置、及びこのようなドライブ装置を備えてなる光ディスク装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載のドライブ装置は上記課題を解決するために、光学素子及び該光学素子を移動可能に支持するアクチュエータを含み、光ディスクに対して前記光学素子を介して情報信号を再生又は記録する光ピックアップにおける、前記アクチュエータを駆動するためのドライブ装置であって、PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、前記生成された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する駆動信号生成手段を備え、前記駆動信号生成手段は、前記再生された情報信号により示される再生状態情報及び前記アクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記PWM周期を変化させる。
【0011】
本発明の請求項8記載の光ディスク装置は上記課題を解決するために、上述した本発明に係るドライブ装置と、前記光ピックアップとを備える。
【0012】
本発明の請求項9記載のドライブ装置は上記課題を解決するために、被移動物を移動可能に支持するアクチュエータを駆動するためのドライブ装置であって、PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、前記生成された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する駆動信号生成手段を備え、前記駆動信号生成手段は、前記アクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報に基づいて、前記PWM周期を変化させる。
【0013】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための実施の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(ドライブ装置の第1実施形態)
本実施形態のドライブ装置は上記課題を解決するために、光学素子及び該光学素子を移動可能に支持するアクチュエータを含み、光ディスクに対して前記光学素子を介して情報信号を再生又は記録する光ピックアップにおける、前記アクチュエータを駆動するためのドライブ装置であって、PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、前記生成された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する駆動信号生成手段を備え、前記駆動信号生成手段は、前記再生された情報信号により示される再生状態情報及び前記アクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記PWM周期を変化させる。
【0015】
本発明のドライブ装置の駆動対象たるアクチュエータを含むピックアップでは、例えば光ピックアップ内に配置された半導体レーザーを光源とし、光ピックアップ内の光学素子を介して光ディスク上に光ビームが照射される。照射された光は光ディスク上で反射され、光ピックアップ内の光学素子を介して光検出器へと導かれる。光検出器では光ディスクから反射されてきた光の強度分布の変化等により再生情報信号や追従制御のための制御信号が検出される。
【0016】
光ピックアップは、光源からの光ビームを光ディスク上に合焦させ、且つまた、光検出器で光ディスクからの反射光が検出できるように光学素子を移動することができるアクチュエータを含む。ここに「光学素子」は、通常、アクチュエータによって移動させられる対物レンズの場合が多いが、BD(Blu‐ray Disk)対応ピックアップのコリメータレンズのように、対物レンズに加えて又は代えて他の光学素子も可動とする物でもよい。また光学素子の「移動」は、位置を変える動きのみならず、姿勢や向き或いは傾き等を変化させる動きをも意味する。
【0017】
光学素子を移動させて位置制御を行うアクチュエータは、通常、光ディスクに垂直な方向に対物レンズを移動させ、光ディスク上に光ビームを合焦させるフォーカスアクチュエータと、光ディスクの半径方向に対物レンズを移動させ、光ビームを光ディスク上のトラックに追従させるトラッキングアクチュエータとを備える。即ちアクチュエータは、典型的には「アクチュエータ群」として設けられる。但し、アクチュエータが一つであっても本発明における以下に詳述する作用効果は相応に発揮される。
【0018】
アクチュエータにはまた、ディスクの反りによる収差を補正するために、対物レンズを傾けることが出来るチルト機構を備えることができる。このチルト機構は単独で対物レンズを傾けるチルトアクチュエータである場合の他に、フォーカスアクチュエータを例えばチルト方向に分割した2つのボイスコイルモータで構成し、2つのボイスコイルモータによるフォーカス方向の移動量の差分によって、レンズチルトを実現するように構成することもできる。
【0019】
アクチュエータは、例えばシステムコントローラの指示のもと、光検出器から抽出される各種サーボ信号に従って、ドライブ回路内で作られた駆動信号によって駆動される。
【0020】
この際、本発明に係るドライブ装置では、駆動信号生成手段によって、駆動信号をPWM周期毎に生成し、生成された駆動信号によってアクチュエータを駆動する。例えば、フォーカスドライブ回路において、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ制御用の駆動信号が生成される。更に、このフォーカスサーボ制御用の駆動信号に基づいて、フォーカスアクチュエータが駆動制御され、対物レンズが光ディスクに垂直な方向にシフトされる。他方、トラッキングドライブ回路において、トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキングサーボ制御用の駆動信号が生成される。更に、このトラッキングサーボ制御用の駆動信号に基づいて、トラッキングアクチュエータが駆動制御され、対物レンズが光ディスクの径方向にシフトされる。
【0021】
ここで「駆動信号」とは、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)された駆動信号(即ち、PWM駆動信号)であり、「PWM」とはある基本単位時間内にどれだけの期間の幅を持つパルスを発生させるかを制御することにより、一定の波高値をもつパルスを用いて、あたかも波高の異なる電圧若しくは電流が加えられているかのように制御する手法である。この時の基本単位時間をPWM周期と呼び、一定の駆動信号を出力し続ける場合、駆動信号としてはPWM周期ごとに同じパルス波形を繰り返すこととなる。言い換えれば、PWM周期ごとにパルスのON/OFFを繰り返すのであるから、PWM周期の開始時点ではそれまでOFFであったパルスがONへと変化し、PWM周期内のいずれかのタイミングでON状態のパルスがOFFへと変化する事を意味している。
【0022】
ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)のようなアクチュエータを考えるとき、ボイスコイルの両端に加える電圧関係を逆にすることでアクチュエータの移動方向を反転させることが出来る。この為にPWMパルスに負の波高値をもつパルスを用いることもできるが、通常はボイスコイル両端をいずれも例えばデューティ50%の変調幅をもつ駆動信号で駆動しておき、ボイスコイルを正方向に駆動するときは一端のデューティを例えば60%に増加し、逆に負方向に駆動するときは他の一端のデューティを例えば60%に増加させることで、ボイスコイル両端の電圧差を逆転させるような制御手法が行われる。
【0023】
光ピックアップにはまた、対物レンズを移動させるアクチュエータの他に、ディスクの球面収差を補正することの出来るコリメータアクチュエータや、LDノイズを低減するためにLDから出射光までの透過率を変化させるような光学フィルタアクチュエータを備える場合がある。
【0024】
光ディスクは、例えば光検出器により検出された各種信号に基づき光ディスクの回転数を制御する回転制御回路からの信号を受け、スピンドルドライブ回路で駆動されたスピンドルモータによりその回転数が制御される。
【0025】
光ピックアップ全体は、光ディスクのトラックに追従するトラッキングアクチュエータが、おおむね中立位置に位置するようにスレッドモータにより半径方向に移動される。
【0026】
光ピックアップが、光ディスクの半径方向に移動できるように、光ピックアップと装置本体に固定されたメイン基板との間はFFC、FPC(フレキシブルプリント基板)等のフレキシブルな部材で信号のやりとりが行われる。この時フレキシブル部材の中では駆動信号のようなエネルギーの大きい信号とディスクからの再生信号のような微弱信号とが並行して配線されることとなる。
【0027】
ここで、微弱信号にはフォーカス及びトラッキングサーボをかけるためのエラー信号、
ディスクに書き込まれた情報を再生したRF(Raido Frequency)信号、LDの光量をモニタする光量モニタ信号、光量モニタ信号をもとにLDへの駆動電流を制御する光量制御信号などがある。
【0028】
本発明では特に、駆動信号生成手段は、例えばシステムコントローラを含んでなり、再生された情報信号により示される再生状態情報及びアクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報のうち少なくとも一方に基づいて、PWM周期を変化させる。
【0029】
ここに「再生状態情報」とは、光ディスクの種類、光ディスクの再生倍速、光ディスクの種類及び倍速の組合せなどの再生された情報信号により示される、当該光ディスクの再生状態に関連する情報を意味する。「駆動状態情報」とは、サーボの引き込み時、又はトラックジャンプの時にサーボの安定状態、並びにサーボ信号におけるエラー情報の量などの、当該ドライブ装置による駆動状態に関連する情報を意味する。
【0030】
このような再生状態情報や駆動状態情報に基づいて「PWM周期を変化させる」とは、駆動信号におけるPWM周期を、必要に応じて適宜長く又は短くすることを意味する。言い換えれば、駆動信号におけるPWM周波数が、適宜低く又は高くなるように変更されることを意味する。即ち、再生状態情報や駆動状態情報の内容によっては、常時変化させる必要は無く、再生状態情報や駆動状態情報の内容に応じて適宜に変化させればよいという趣旨である。また例えば、ドライブ装置は、PWMの基準となる発振周波数が直接的に増減変更されてもよい。即ち、PWM周期が増減変更された駆動信号が、発生手段から直接発生されてもよい。例えば、分周器、分周回路などによって、連続的または離散的な複数の周波数から、発振周波数を選択するように構成してもよい。或いは、PWM周期が基本周期とされている駆動信号が一旦発振された後に、分周器、分周回路などによって、PWM周期が適宜に増減変更(言い換えれば“調整”)されてもよい。
【0031】
このように駆動信号生成手段によって、光ディスクの種類や倍速などの再生状態情報や、サーボの安定状態などの駆動状態情報に基づいて、駆動信号のPWM周期が適宜に変化或いは調整された駆動信号が、アクチュエータに対して供給されることになる。
【0032】
ここで特に例えば、PWM駆動方式は、ある電圧値を表現するために、最低でもPWM周期分の時間が必要であるので、仮に何らの対策も施さないとすれば、無駄な時間要素の挿入によって、無視し得ない程度の位相まわりが発生してしまう。
【0033】
しかるに本発明によれば、駆動信号生成手段によって、PWM周期を適宜短くする、即ちPWM周波数を適宜高めることが可能である。このため、必要なサーボ帯域に対して、PWM周期が十分高くなるように設定できる。これにより、位相まわりの発生を、極めて効果的に抑止或いは防止できる。しかも、光ディスクの種類別の線速の違いや、記録再生倍速によって異なる必要サーボ帯域に対しても、臨機応変に対応可能となる。例えばサーボ帯域が広い場合でも、PWM駆動による遅延が問題とならないようにでき、更に、ジャンプ時のようにより高速の駆動波形を必要とする場合においても、PWM駆動による遅延が問題とならないようにできる。
【0034】
他方、PWM駆動はアナログ駆動と異なり、振幅の大きなパルス波形が常時存在するため、仮に何らの対策も施さないとすれば、光ディスクからの再生する情報信号等の微弱信号に対して、無視し得ない程度の悪影響を与えてしまう。
【0035】
しかるに本発明によれば、駆動信号生成手段によって、PWM周期を適宜長くする、即ちPWM周波数を適宜低めることが可能である。このため、光ディスクやドライブ装置に関する状況が様々であっても、光ディスクの情報信号が、駆動信号のPWM周波数より高い帯域に分布する環境を構築できる。よって、駆動信号が情報信号へ干渉する可能性を低減でき、最終的には、高品位の情報信号の再生や記録を実施可能となる。
【0036】
以上詳細に説明したように、高倍速化や光ディスクの多様化が進むことに応じて、(i)最も高いサーボ帯域を要求する光ディスクの種類・倍速の組合せに対して、十分高いPWM周期であることと、(ii)最も低い情報信号帯域をもつ光ディスクの種類・倍速に対して、十分低いPWM基本周期であることとを、同時に満たすことが可能となる。しかも、PWM駆動を行うことで、ドライバ部分の損失を低下させ消費電力を減らすことが可能である。
【0037】
本実施形態の一態様では、前記駆動信号生成手段は、前記駆動信号を発生する発生手段と、前記発生された駆動信号における前記PWM周期を、前記少なくとも一方に基づいて、調整する周期調整手段とを含み、前記調整された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する。
【0038】
この態様によれば、先ず、発生手段によってPWM基本周波数の駆動信号が発生され、その後、周期調整手段によって、再生状態情報や駆動状態情報に基づいて、この発生された駆動信号のPWM周期が調整される。即ち、PWM周期は、光ディスクやドライブ装置の状態或いは状況に応じて適宜に増減変更される。従って、比較的容易にして且つ確実にして、駆動信号のPWM周期を変化させることが可能となる。
【0039】
この周期調整手段に係る態様では、前記周期調整手段は、前記再生状態情報として前記光ディスクの種類に基づいて、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を調整してもよい。
【0040】
このように構成すれば、周期調整手段によって、再生状態情報としての光ディスクの種類に基づいて、発生された駆動信号のPWM周期が切替え可能となる。例えば、ドライブ装置は例えばDVDの高倍速再生のようなサーボ帯域を広くとりたいと同時に再生信号帯域も高い周波数範囲に存在する場合には、PWM周波数を上げることで対応可能となる。一方、AudioCDの読み出しのような、サーボ帯域はそれほど必要ではないが再生信号を高精度に読み出したいにもかかわらず、再生信号帯域が低いためPWM駆動周波数との干渉が懸念される場合には、PWM駆動周波数を下げることで対応可能となる。即ち、これにより再生信号への影響を避けることが可能となる。
【0041】
一般に、高倍速再生の場合、光ディスクの外周部分で達成されるが、ディスク外周部はディスク自体の物理特性も劣りがちなうえ、指紋等の汚れもつきやすい。このような状態の光ディスクをトレースすることを考えると、サーボ帯域として十分な帯域を確保したい。例えば、DVDの高倍速再生を考えると、トラッキングのサーボ帯域としては10kHz程度を確保できることが望ましい。ここで、サーボ帯域というのはループゲインの0dBとなる周波数であるから、サーボ系を成立させるためには、更に数倍程度の帯域を確保する必要がある。この範囲に対して、PWM駆動の無駄時間が影響を及ぼさないようにしたければ、結局サーボ帯域の十数倍程度以上の高い周波数を選択すればよいことになる。
【0042】
ここで、仮に、PWM周波数を200KHzと設定したとする。従来は、PWM周波数が可変できないので、CDの4倍速再生や、DVDの1倍速再生でも同じPWM周波数を使わざるを得ない。このとき、CD4倍速の再生信号の長ピットは600kHz程度、DVD1倍速の長ピットでも1MHz程度であり、PWMの基本周期に対して十分な周波数帯域の違いがあるとは言い難い。さらにPWM波形は、デューティの偏った方形波であるため、基本周期に対して高調波成分を多く含み、飛びつきが生じた時の再生信号とノイズの分離が困難となる。
【0043】
なお、全ての光ディスクの種類にそれぞれPWM周波数を変更しなくてもよい。例えば、DVD‐RAMのようにランドグルーブの切替えが頻発するような光ディスクに関しては、PWM周波数の変更を行わないという選択も出来る。
【0044】
なお、PWM周期の切替えを行うタイミングについては、例えば、切り替えられる2つのPWM周期が同時に終了した時点であるが、実際には即時切替してもサーボループが閉じていれば切替え前後の半端なPWMによるDCエラーは圧縮されてしまうので大きな問題とはならない。勿論、即時切替えを行うよりも、より低周波数のPWM周期が終了するタイミングで切替えた方が望ましい。
【0045】
上述の周期調整手段に係る態様では、前記周期調整手段は、前記再生状態情報として前記光ディスクの倍速数に基づいて、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を調整してもよい。
【0046】
このように構成すれば、周期調整手段によって、再生状態情報としての光ディスクの倍速数に基づいて、発生された駆動信号のPWM周期が切替え可能となる。例えば、高倍速時にはPWM周波数が200kHzであるが、低倍速時には、例えば必要とするサーボ帯域3kHzの20倍すなわち60kHzを選択してもよい。
【0047】
なお、全ての倍速にそれぞれPWM周波数を変更しなくてもよい。例えば、CAV(即ち定角速度で回転する)動作をしている場合、内周と外周で再生倍速は異なることになるが、ディスクの回転数は同じであり、例えばフォーカスサーボに求められる帯域はさほど変化しないから、再生倍速によらず一定のPWM周波数を使用すればよい。
【0048】
なお、ここに再生倍速に応じてPWM周期が調整されることは、光ディスクの種類と関係なしで行ってもよいし、光ディスクの種類によっては倍速変更してもPWM周期を変えないという方式を使ってもよい。
【0049】
上述の周期調整手段に係る態様では、前記周期調整手段は、前記光ピックアップのジャンプの時又はサーボ引き込みの時に、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を、前記駆動状態情報により示される前記ジャンプ又はサーボ引き込みに応じて、調整してもよい。
【0050】
このように構成すれば、周期調整手段によって、光ディスク装置のジャンプの時又はサーボ引き込みの時に、駆動状態情報により示されるジャンプ又はサーボ引き込みに応じて、発生された駆動信号のPWM周波数が、高周波数側に切り替え可能となる。
【0051】
情報信号の読取中は、基本的に光ディスクのトラックのトレースを続けるだけでよく、ドライブ信号に急峻な変化を必要としない場合が多いが、トラックジャンプやフォーカスレイヤージャンプ等の場合は定常サーボ時の駆動と比べ急峻なキックパルス、ブレーキパルスを必要とする。
【0052】
例えばトラックジャンプには、倍速と関係なく、十数kHz程度のブレーキパルスが必要になる。また、フォーカス、トラッキング等のサーボ引込み時には十分なアクチュエータの応答性が確保されないと、サーボの引込みに失敗する。よって、これらのタイミングでは、PWM周波数を十分高くすればよい。
【0053】
更に、ジャンプ中やサーボの引込み時には再生情報信号を同時に読む必要はないため、PWM駆動波形が再生信号に漏れこんだとしても大きな問題は引き起こさない。従って、ドライブ装置では、サーボ信号を重視したい場面ではPWM周波数を高くすればよく、再生情報信号を重視したい場合にはPWM周波数を低くすればよい。これらによって、サーボの安定性と再生情報信号の品質との両者を確保できる。
【0054】
なお、ジャンプ時又はサーボ引込み時、その動作を行うにあたりPWM周波数を高めたいことは事前に分かっている。このため、PWM周期に対して十分な時間的余裕をもって切替えのトリガを出し、低周波数側のPWM周期の終了時点で切替えを行うことが可能となる。
【0055】
上述の周期調整手段に係る態様では、前記周期調整手段は、前記駆動状態情報として前記光ピックアップにおけるサーボエラー信号のレベルに応じて、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を調整してもよい。
【0056】
このように構成すれば、周期調整手段によって、駆動状態情報としてのサーボエラー信号のレベルに応じて、発生された駆動信号のPWM周波数が、高周波数側へ切り替え可能となる。例えば、PWM周波数を下げている状態で、サーボエラー信号の乱れが大きくなってきたら、PWM周波数を上げればよい。
【0057】
光ディスクの傷、汚れによる擬似エラーのためや、振動、衝撃が加わって、光ピックアップのトレース位置が微妙にずれた場合には、サーボエラー信号に急激な変化が観察され、これを補正するために駆動信号にも急速に追従する必要が発生するが、PWM周波数が上がっていれば対応可能となる。
【0058】
この際、振動、衝撃の検出には、専用のショックセンサーを用いてもよい。サーボエラー信号を観察することで、エラー信号に乱れが多く、十分な追従性を求められると予測される場合に、PWM周波数を予め高くすればよい。
【0059】
この構成によれば、PWM周波数を低く設定している状態でディスクの傷、汚れ等により、又は振動、衝撃により、サーボ乱れが予想される場合、PWM周波数を高めることで、十分なサーボ帯域を確保できる。これにより、光ピックアップのトレース能力を確保することが出来る。
【0060】
上述の周期調整手段に係る態様では、前記周期調整手段は、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を、分周することにより調整してもよい。
【0061】
このように構成すれば、周期調整手段は、例えば分周器、分周回路などの分周手段を含んでなり、発生手段で発生された駆動信号のPWM周期を、分周することにより調整する。例えば、発生手段の一例としてドライブ装置の内部にPWM周波数の基準となる発振器があり、分周手段を含んでなる周期調整手段によって発振器の分周比を選択することで、PWM周波数を変化させられる。
【0062】
PWM周期の切替えタイミングについては、例えば、同一の源発振をn分周したPWM周期とm分周したPWM周期とは、mとnの最小公倍数毎に双方のPWM周期が終了することから、この時点で切替えを行えば、切り替えに伴う誤差は、殆ど発生しない。特に、源発振をn分周したPWM周期と、それをさらにk分周したPWM周期とを使用すれば、第2のPWM周期の終了時点では常に、第1のPWM周期もその周期を終えるので、切替えタイミングの選択が容易となる。
【0063】
この構成によれば、ドライブ装置のPWM基準発振器を一つにすることが出来る他、選択できるPWM周期同士の位相関係が一定である。このため、周波数の切替えがよりスムーズに行えることが可能となる。
(光ディスク装置)
本実施形態に係る光ディスク装置は上記課題を解決するために、上述した実施形態に係るドライブ装置(但し、その各種態様を含む)と、前記光ピックアップとを備える。
【0064】
本実施形態の光ディスク装置によれば、上述した本発明に係るドライブ装置を備えるので、上述した本発明に係るドライブ装置の場合と同様に、高倍速化や光ディスクの多様化が進むことに応じて、(i)最も高いサーボ帯域を要求する光ディスクの種類・倍速の組合せに対して、十分高いPWM周期であることと、(ii)最も低い情報信号帯域をもつ光ディスクの種類・倍速に対して、十分低いPWM基本周期であることとを、同時に満たすことが可能となる。しかも、PWM駆動を行うことで、ドライバ部分の損失を低下させ消費電力を減らすことが可能である。
(ドライブ装置の第2実施形態)
本実施形態に係るドライブ装置は上記課題を解決するために、被移動物を移動可能に支持するアクチュエータを駆動するためのドライブ装置であって、PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、前記生成された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する駆動信号生成手段を備え、前記駆動信号生成手段は、前記アクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報に基づいて、前記PWM周期を変化させる。
【0065】
本実施形態のドライブ装置によれば、上述した本発明に係るドライブ装置の第1実施形態の場合と同様に、駆動信号生成手段によって、PWM周期を適宜短くする、即ちPWM周波数を適宜高めることが可能である。このため、必要なサーボ帯域に対して、PWM周期が十分高くなるように設定できる。これにより、位相まわりの発生を、極めて効果的に抑止或いは防止できる。しかも、例えば記録媒体の種類別の線速の違いや、記録再生倍速によって異なる必要サーボ帯域に対しても、臨機応変に対応可能となる。例えばサーボ帯域が広い場合でも、PWM駆動による遅延が問題とならないようにでき、更に、ジャンプ時のようにより高速の駆動波形を必要とする場合においても、PWM駆動による遅延が問題とならないようにできる。しかも、PWM駆動を行うことで、ドライバ部分の損失を低下させ消費電力を減らすことが可能となる。
【0066】
尚、本実施形態に係るドライブ装置は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)のような、信号検出部をその近傍に置いたアクチュエータで駆動するような装置に備えられてもよい。
【0067】
本実施形態に係るドライブ装置の一態様では、前記アクチュエータは、記録媒体に対して前記被移動物を介して情報信号を再生又は記録する再生・記録ヘッドにおいて、前記被移動物を移動可能に支持し、前記駆動信号生成手段は、前記駆動状態情報に加えて又は代えて、前記再生された情報信号により示される再生状態情報に基づいて、前記PWM周期を変化させる。
【0068】
この態様によれば、上述した本発明に係るドライブ装置の第1実施形態の場合と同様に、駆動信号生成手段によって、PWM周期を適宜短くする、即ちPWM周波数を適宜高めることが可能である。
【0069】
同時に、駆動信号生成手段によって、PWM周期を適宜長くする、即ちPWM周波数を適宜低めることが可能である。このため、記録媒体やドライブ装置に関する状況が様々であっても、記録媒体の情報信号が、駆動信号のPWM周波数より高い帯域に分布する環境を構築できる。よって、駆動信号が情報信号へ干渉する可能性を低減でき、最終的には、高品位の情報信号の再生や記録を実施可能となる。
【0070】
これらの結果、(i)最も高いサーボ帯域を要求する記録媒体の種類・倍速の組合せに対して、十分高いPWM周期であることと、(ii)最も低い情報信号帯域をもつ記録媒体の種類・倍速に対して、十分低いPWM基本周期であることとを、同時に満たすことが可能となる。
【0071】
本実施形態の作用及び他の利得は次に説明する実施するための実施例から明らかにされる。
【0072】
以上詳細に説明したように、ドライブ装置の第1実施形態によれば、駆動信号生成手段を備えるので、PWM方式を採用しつつ、サーボ帯域からの要求と信号帯域から要求との両者に対して、十分高いPWM周期と十分低いPWM周期とを両立できる。更に、光ディスク装置の実施形態は、ドライブ装置及び光ピックアップを備えるので、夫々の光ディスクの種類及び倍速に対して、サーボの安定性と再生情報信号の品質との両者を確保することが出来る。また、ドライブ装置の第2実施形態によれば、駆動信号生成手段を備えるので、PWM方式を採用しつつ、サーボ帯域からの要求に対して、適切なPWM周期を実現できる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明のドライブ装置及び光ディスク装置に係る実施例を図面に基づいて説明する。
【0074】
先ず、本発明の実施例に係る光ディスク装置の全体構成について図1を参照して説明する。ここに図1は、本発明の実施例に係る光ディスク装置の全体の構成を示すブロック図である。
【0075】
図1において、光ディスク装置は、光ピックアップ10及びアクチュエータドライバ27を備えて構成されている。光ピックアップ10とアクチュエータドライバ27との間は、FFC、FPC等のフレキシブルな配線部で接続されている。
【0076】
光ピックアップ10は、対物レンズ4、半導体レーザー11、レーザードライバ12、ビームスプリッタ13及び光検出器14を備える。レーザードライバ12は、レーザーを駆動するパルス波形を生成し、光ピックアップ10の光源である半導体レーザー11を駆動する。半導体レーザー11から発生された光ビーム9は、ビームスプリッタ13及び対物レンズ4を介して、光ディスク1に照射される。そして、光ビーム9が光ディスク1によって光検出器14に反射される。このように光照射により光ディスク1に対する情報の記録又は再生が行われる。
【0077】
光ディスク装置は更に、スピンドルモータ2及びスレッドモータ3を備えている。スピンドルモータ2によって、光ディスク1が回転駆動される。他方、アクセス動作などのトラック間を大きく移動する際、スレッドモータ3によって、光ピックアップ10が光ディスク1の半径方向に移動され駆動される。
【0078】
光ピックアップ10は更に、フォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6を備える。フォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6は夫々、本発明に係る「アクチュエータ」の一例であり、光ディスク1上の目的位置に光を合焦させまたトラッキングするため、対物レンズ4を移動させる。
【0079】
フォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6は、例えば電磁力を利用したボイスコイル形のアクチュエータである。フォーカスアクチュエータ5は、光ピックアップ10における対物レンズ4を光ディスク1の記録面に対して焦点を合わせるため、対物レンズ4を光ビーム9の光ディスク1に入射する方向に沿って移動させる。他方、トラッキングアクチュエータ6は、対物レンズ4の光スポットをディスク半径方向に微小距離変位させて光ディスク1の記録面上のトラックに高精度に位置決めする。ここのフォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6の駆動には、PWM変調された駆動電圧/電流(即ち、PWM駆動信号)が用いられる。
【0080】
アクチュエータドライバ27は、システムコントローラ26と共に、本発明に係る「ドライブ装置」の一例を構成しており、再生信号処理回路21、サーボ信号抽出回路22、スレッドドライブ回路24、サーボエラーセンサー25、システムコントローラ26、回転制御回路28、及びスピンドルドライブ回路29と共に、光ピックアップ10とは別に設けられたメイン基板20に配置されている。
【0081】
スピンドルドライブ回路29、並びにメイン基板20における回転制御回路28及びシステムコントローラ26は、スピンドルモータ駆動信号を生成し、スピンドルモータ2の回転速度及び回転位置を制御する。
【0082】
スレッドドライブ回路24は、対物レンズ4のシフト量が一定量に達すると、スレッドモータ用駆動信号を発生し、対物レンズ4が取り付けられる光ピックアップ10を光ディスク1の径方向に移動させる。
【0083】
アクチュエータドライバ27では、PWM基準信号、サーボ信号抽出回路22から受信されたフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ制御用の駆動信号(即ち、フォーカス制御用のPWM駆動信号)及びトラッキングサーボ制御用の駆動信号(即ち、トラッキング制御用のPWM駆動信号)が生成される。この生成された駆動信号に基づいて、フォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6は駆動制御され、対物レンズ4を光ディスク1に垂直な方向及び光ディスク1の径方向に移動させる。尚、ここでの対物レンズ4の「移動」とは、位置を変える動きのみならず、姿勢や向き或いは傾き等を変化させる動きをも意味する。
【0084】
光ピックアップ10で、光ディスク1から再生された情報信号が、メイン基板20における再生信号処理回路21へ伝送され、フォーラスサーボエラー信号及びトラッキングサーボエラー信号などサーボエラー信号がサーボ信号抽出回路22へ伝送される。これと相前後して或いは並行して、光ディスク1に記録される記録信号及びアクチュエータドライバ27で生成された駆動信号が光ピックアップ10へ伝送される。アクチュエータドライバ27は、システムコントローラ26と協働して、フォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6を駆動する。
【0085】
*種類(即ち、光ディスク1の型式)や倍速などの再生状態情報は、再生される情報信号と同じように再生信号処理回路21へ伝送され、更にシステムコントローラ26へ伝送される。アクチュエータドライバ27は、システムコントローラ26と協働で、再生状態情報に基づいて、発振周波数を調整する、即ちPWM信号のPWM周期を調整する。
【0086】
サーボの安定状態及びサーボエラー信号などの駆動状態情報は、サーボ信号抽出回路22によって発生され、これに従ってアクチュエータドライバ27がフォーカスアクチュエータ5及びトラッキングアクチュエータ6を駆動することで、定常的なサーボ系が校正される。駆動状態情報はまた、サーボエラーセンサー25においてその状態を評価され、システムコントローラ26へ伝送される。
安定なサーボクローズ状態では、アクチュエータドライバ27は、システムコントローラ26と協働で、駆動状態情報により発振周波数を下げる、即ちPWM信号のPWM周期を調整する。
【0087】
一方、サーボ引き込み又はトラックジャンプなどの場合、システムコントローラシステムコントローラ26は、PWM周波数を例えば何割など高くなるように、アクチュエータドライバ27を制御する。
【0088】
サーボエラーセンサー25は、サーボクローズ状態でのサーボエラー信号などの駆動状態情報を観察し、エラーレベルを検出して、更にシステムコントローラ26へ伝送する。システムコントローラ26は、PWM周波数を例えば数割程度高くなるように、アクチュエータドライバ27を制御する。
【0089】
次に図2を参照して、本発明の実施例に係るサーボエラーセンサー25について説明する。ここに図2は、本発明の実施例に係るサーボエラーセンサーの構成を示すブロック図である。
【0090】
図2に示すように、サーボエラーセンサー25は、サーボエラー検出部25a、エラーレベル算出部25b及びメモリ25cを備えて構成されている。
【0091】
サーボエラー検出部25aは、サーボ信号抽出回路22から伝送されるサーボエラー信号によって、サーボエラーの量を検出する。
【0092】
エラーレベル算出部25bは、サーボエラー検出部25aによって検出されるサーボエラーの量によって、サーボエラーのレベルを算出する。すると、アクチュエータドライバ27はシステムコントローラ26の制御下で(図1参照)、このように算出されたサーボエラーレベルに応じて、発生された駆動信号のPWM周波数を上げる。即ち、算出荒れたサーボエラーのレベルに応じた、PWM周波数の調整が実行される。例えば、PWM周波数を下げている状態で、サーボエラー信号の乱れが大きくなってきたら、PWM周波数を上げる。
【0093】
メモリ25cは、サーボエラー検出部25aにおいて検出されたサーボエラー信号の量とPWM周波数を上げる量との調整関係又は比率を記憶している。なお、メモリ25c内のPWM周波数の調整関係は、その特性を示す演算式の形や、ルックアップテーブルの形で記憶されるなどされても良く、その態様は特に限定されるものではない。また、その存在位置はサーボエラー検出部に限らず、システムコントローラ内のメモリの一部を共有する形でも良い。
【0094】
サーボエラーセンサー25が動作する時に、例えば、エラーレベルが低い、即ちサーボエラー信号の量が少ない場合、エラーレベル算出部25bはメモリ25cに格納されている調整関係を読み出す。すると、アクチュエータドライバ27はシステムコントローラ26による制御下で(図1参照)、このように読み出された調整関係に基づいて、PWM周波数を上げる。即ち、サーボエラーのレベルが低い場合における、PWM周波数の調整が実行される。他方、エラーレベルが高い、即ちサーボエラー信号の量が多い場合、エラーレベル算出部25bはメモリ25cに格納されている調整関係を取り出す。すると、アクチュエータドライバ27はシステムコントローラ26による制御下で(図1参照)、このように読み出された調整関係に基づいて、PWM周波数をより多く上げる。即ち、サーボエラーのレベルが高い場合における、PWM周波数の調整が実行される。
【0095】
次に図3を参照して、本発明の実施例に係るアクチュエータドライバ27について説明する。ここに図3は、本発明の実施例に係るアクチュエータドライバの構成を示すブロック図である。
【0096】
図3において、このアクチュエータドライバ27は、PWM基準発振器27a、第1分周部27b、第2分周部27c、分周切替部27d及びスイッチ27eを備えて構成されている。
【0097】
PWM基準発振器27aは、本発明に係る「発生手段」の一例を構成しており、PWM基準周期を有するPWM基準信号S0を生成して、第1分周部27bへ出力する。PWM基準信号は例えばPWM周期を周期とする「のこぎり波」(即ち、時間軸上での電圧変化が、のこぎり波の形状をなす信号)である。
【0098】
第1分周部27b、第2分周部27c、分周切替部27d及びスイッチ27eは、本発明に係る「周期調整手段」の一例を構成しており、第1分周部27b及び第2分周部27cは本発明に係る「分周手段」の一例である。
【0099】
第1分周部27bは、光ディスク1の種類に応じて、PWM基準周期の周波数をn分周する。第2分周部27cは、光ディスク1を再生する倍速に応じて、光ディスク1の種類によってn分周された周波数を更にm分周する。そして、アクチュエータドライバ27は、分周切替部27dよりスイッチ27eを切り換えることで、n分周された信号S1又はn*m倍分周された信号S2を選択する、即ちPWM基準発振器27aの分周比を選択する。これによって、PWM周波数を適宜に変化させる。
【0100】
PWM周期の切替えタイミングについては、例えば、同一の源発振をn分周したPWM周期とm分周したPWM周期とは、mとnの最小公倍数毎に双方のPWM周期が終了することから、この時点で切替えを行えば、切り替えに伴う誤差は発生しない。特に、源発振をn分周したPWM周期と、それをさらにk分周したPWM周期とを使用すれば、PWM周期2の終了時点では常にPWM周期1もその周期を終える。このため、切替えタイミングの選択が容易となる。
【0101】
次に図4を参照して、本発明の実施例に係るPWM周波数の調整動作時におけるサーボ帯域と情報信号との関係を説明する。ここに図4は、本発明の実施例に係るPWM周波数の調整動作時におけるサーボ帯域と情報信号との波形を示す波形図(即ち、周波数スペクトル)である。図4の横軸は、周波数であり、縦軸は信号のパワーである。
【0102】
図4(a)には、フォーカスサーボ又はトラッキングサーボ制御で反応する周波数であるサーボ帯域100、情報信号の帯域300、及びPWMノイズの帯域200が示されている。例えば、光ディスク1を高倍速で再生する場合に、高倍速に必要なサーボ帯域に対して、PWM周波数が十分高くされる。即ち、PWM周波数は、例えば200KHzと設定される。この時、飛びつきが生じたとしても、PWMノイズ200と、情報信号の帯域300とが分離されている。
【0103】
更に、図4(b)に示すように、再生倍速が低倍速の時、仮にPWM周波数を200KHzのままとすると、PWM駆動信号は、デューティの偏った方形波であるため、基本周期に対して高調波成分を多く含む。このため、飛びつきが生じた時の情報信号とノイズ(即ちPWM駆動信号の高周波側の成分)との相互分離が、困難となる。なお、この際に、低倍速で再生するため、サーボ帯域の周波数は、PWM駆動信号の周波数である200KHzよりも、遥かに低い。即ち、図4(a)及び図4(b)の両者を相互比較すれば分かるように、高倍速の場合と比べて、PWM周波数の下限は、低くなる。
【0104】
そこで、本実施形態では、図4(c)に示すように、低倍速時には、PWM周波数を情報信号帯域に対して十分低くなるように設定する。例えば、分周の手法で必要とするサーボ帯域3kHzの20倍すなわち60kHzを変更する。すると、PWM駆動周波数を下げることで情報信号への影響も低くなる。よって、飛びつきが生じた時のPWMノイズ200と、情報信号の帯域300とが、ほぼ相互分離されることとなる。
【0105】
図4(a)〜図4(c)から明らかなように、本実施例によれば、(i)高いサーボ帯域を要求する光ディスク1の種類・倍速の組合せに対して、十分高いPWM周期であることと、(ii)低い情報信号帯域をもつ光ディスク1の種類・倍速に対して、十分低いPWM基本周期であることとを、同時に満たすことが可能となる。
【0106】
尚、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うドライブ装置及び光ディスク装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係るサーボエラーセンサーの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係るアクチュエータドライバの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係るPWM周波数の調整動作時におけるサーボ帯域と情報信号との波形を示す波形図である。
【符号の説明】
【0108】
1…光ディスク、2…スピンドルモータ、3…スレッドモータ、4…対物レンズ、5…フォーカスアクチュエータ、6…トラッキングアクチュエータ、7…フレキシブル配線部、9…光ビーム、10…光ピックアップ、11…半導体レーザー、12…レーザードライバ、13…ビームスプリッタ、14…光検出器、20…メイン基板、21…再生信号処理回路、22…サーボ信号抽出回路、23…アクチュエータドライバ、24…スレッドドライブ回路、25…サーボエラーセンサー、26…システムコントローラ、27…PWM分周部、28…回転制御回路、29…スピンドルドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子及び該光学素子を移動可能に支持するアクチュエータを含み、光ディスクに対して前記光学素子を介して情報信号を再生又は記録する光ピックアップにおける、前記アクチュエータを駆動するためのドライブ装置であって、
PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、前記生成された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する駆動信号生成手段を備え、
前記駆動信号生成手段は、前記再生された情報信号により示される再生状態情報及び前記アクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記PWM周期を変化させる
ことを特徴とするドライブ装置。
【請求項2】
前記駆動信号生成手段は、
前記駆動信号を発生する発生手段と、
前記発生された駆動信号における前記PWM周期を、前記少なくとも一方に基づいて、調整する周期調整手段と
を含み、
前記調整された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載のドライブ装置。
【請求項3】
前記周期調整手段は、前記再生状態情報として前記光ディスクの種類に基づいて、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を調整することを特徴とする請求項2に記載のドライブ装置。
【請求項4】
前記周期調整手段は、前記再生状態情報として前記光ディスクの倍速数に基づいて、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を調整することを特徴とする請求項2又は3に記載のドライブ装置。
【請求項5】
前記周期調整手段は、前記光ピックアップのジャンプの時又はサーボ引き込みの時に、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を、前記駆動状態情報により示される前記ジャンプ又はサーボ引き込みに応じて、調整することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のドライブ装置。
【請求項6】
前記周期調整手段は、前記駆動状態情報として前記光ピックアップにおけるサーボエラー信号のレベルに応じて、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を調整することを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のドライブ装置。
【請求項7】
前記周期調整手段は、前記発生された駆動信号の前記PWM周期を、分周することにより調整することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のドライブ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のドライブ装置と、
前記光ピックアップと
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
被移動物を移動可能に支持するアクチュエータを駆動するためのドライブ装置であって、
PWM方式によって駆動信号をPWM周期毎に生成し、前記生成された駆動信号によって前記アクチュエータを駆動する駆動信号生成手段を備え、
前記駆動信号生成手段は、前記アクチュエータが駆動される状態を示す駆動状態情報に基づいて、前記PWM周期を変化させる
ことを特徴とするドライブ装置。
【請求項10】
前記アクチュエータは、記録媒体に対して前記被移動物を介して情報信号を再生又は記録する再生・記録ヘッドにおいて、前記被移動物を移動可能に支持し、
前記駆動信号生成手段は、前記駆動状態情報に加えて又は代えて、前記再生された情報信号により示される再生状態情報に基づいて、前記PWM周期を変化させる
ことを特徴とする請求項9に記載のドライブ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−49723(P2010−49723A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210733(P2008−210733)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】