説明

ドラムブレーキ用ブレーキシュー

【課題】シューリムの外周面の精度を低下させることなく、そのシューリムの外周面上にライニングの位置を従来に比較して正確に且つ早く位置決めするドラムブレーキ用ブレーキシューを提供する。
【解決手段】シューリム42の貫通穴42bを通してその外周面42aから突出した位置決め突部40aの先端部にライニング44を当接させることによりシューリム42の外周面42a上におけるそのシューリム42の周方向Fのライニング44の位置が位置決めされるので、シューリム42の外周面42a上にライニング44の位置を従来に比較して正確に且つ早く位置決めさせることができる。また、位置決め突部40aを通すシューリム42の貫通穴42bは、シューウェブ40とシューリム42とを位置決めするために従来から備えられているものであるので、シューリム42の外周面42aの精度が従来に比較して低下することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキ用ブレーキシューに関し、特にそのブレーキシューの製造時における作業性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキ用ブレーキシュー100には、たとえば図12、図13に示すように、円弧形状をした長手板状のシューウェブ110と、そのシューウェブ110の外周縁に沿って一体的に固定された板状のシューリム120と、そのシューリム120の外周面120aに固着されたライニング130とを備えるものがある。
【0003】
このようなドラムブレーキ用ブレーキシュー100において、シューリム120の外周面120aにライニング130を固着せる場合には、例えばシューリム120の外周面120aおよびライニング130の内周面130aに熱硬化性樹脂から成る接着剤が塗布されたシューリム120とライニング130とを作業者が位置決めしそのシューリム120とライニング130とが加圧治具を介して相互に加圧され且つ加熱されて固着されるものであるが、シューリム120の外周面120aとライニング130の内周面130aとを隙間なく固着させるためには作業者がシューリム120とライニング130との位置を正確に位置決めしなければならない。
【0004】
そのため、上記のようなドラムブレーキ用ブレーキシュー100において、シューリム120の一端部には、図12、13に示すように作業者がそのシューリム120の外周面120a上にライニング130を位置決めするための目印となるようなシューリム120の両側に切り欠かれた一対の切欠120bやシューリム120の外周面120aに刻まれた略H形状の一対の刻印120cが設けられており、作業者はその切欠120b或いは刻印120cを目印としてシューリム120の外周面120a上におけるそのシューリム120の周方向のライニング130の位置を位置決めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平05−25041号公報
【特許文献2】特開平10−252792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなドラムブレーキ用ブレーキシュー100において、シューリム120の外周面120a上にライニング130の位置を位置決めする際、作業者はシューリム120の一対の切欠120b或いは一対の印120cを目印にしてその目印を目視しながら目分量でその位置決め作業を行わなければならないので、シューリム120の外周面120a上におけるそのシューリム120の周方向のライニング130の位置がばらついたり、シューリム120の外周面120a上にライニング130を位置決めする時間が比較的多くかかってしまうという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献1および特許文献2に記載されるようなドラムブレーキ用ブレーキシューが提案されている。このドラムブレーキ用ブレーキシューでは、シューリムの一端部に特許文献1では絞りを加えそのシューリムの外周面から凸形状の位置決め突部を突出させそのシューリムの外周面上にライニングを位置決めする際そのシューリムの位置決め突部にライニングを当てることによって、比較的短い時間でシューリムの外周面上にライニングを位置決めさせ且つそのシューリムの外周面上におけるそのシューリムの周方向のライニングの位置を正確に位置決めさせるものである。
【0008】
しかしながら、上記のような従来のドラムブレーキ用ブレーキシューにおいて、上記位置決め突部はシューリムの一端部の一部が突き出るように一体に成形されるものであり、そのシューリムの一端部に上記位置決め突部が成形されることによりそのシューリムの外周面すなわちライニングの接着面が歪んでその接着面の精度が悪くなってしまう可能性があった。接着面の精度が悪くなるとシューリムとライニングとを固着させた際そのシューリムの外周面とライニングの内周面とに隙間ができそのシューリムとライニングとの接着強度が低下する等の影響が懸念される。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、シューリムの外周面の精度を低下させることなく、そのシューリムの外周面上にライニングの位置を従来に比較して正確に且つ早く位置決めするドラムブレーキ用ブレーキシューを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 外周縁の一端部から外周側へ突き出る位置決め突部を有し円弧形状をした長手板状のシューウェブと、そのシューウェブの位置決め突部を嵌め入れる貫通穴を一端部に有しそのシューウェブの外周縁に沿って一体的に固定された板状のシューリムと、そのシューリムの外周面に固着されたライニングとを備えるドラムブレーキ用ブレーキシューであって、(b) 前記シューウェブの位置決め突部は、前記シューリムの貫通穴を通して前記シューリムの外周面から突き出し、(c) 前記ライニングは、前記シューリムの外周面から突き出された前記位置決め突部の先端部に当接させて周方向に位置決めされるものである。
【0011】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記ライニングの一端には、前記シューリムの外周面から突き出された前記位置決め突部の先端部を受け入れて幅方向にも位置決めするように切り欠かれた切欠凹部が備えられていることにある。
【0012】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記ライニングの切欠凹部には、前記シューウェブの位置決め突部の先端部と当接して前記シューリムの周方向に位置決めするための当接面と、その当接面に隣接し前記シューウェブの位置決め突部の先端部と当接して前記シューリムの幅方向に位置決めするための一対の側壁面とが備えられていることにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明のドラムブレーキ用ブレーキシューによれば、(b) 前記シューウェブの位置決め突部は、前記シューリムの貫通穴を通して前記シューリムの外周面から突き出し、(c) 前記ライニングは、前記シューリムの外周面から突き出された前記位置決め突部の先端部に当接させて周方向に位置決めされるものである。そのため、前記ライニングを前記位置決め突部の先端部に当接させることにより前記シューリムの外周面上におけるそのシューリムの周方向の前記ライニングの位置が位置決めされるので、前記シューリムの外周面上に前記ライニングの位置を従来に比較して正確に且つ早く位置決めさせることができる。また、前記位置決め突部を通す前記シューリムの貫通穴は、前記シューウェブと前記シューリムとを位置決めするために従来から備えられているものであるので、前記シューリムの外周面の精度が従来に比較して低下することがない。
【0014】
請求項2に係る発明のドラムブレーキ用ブレーキシューによれば、前記ライニングの一端には、前記シューリムの外周面から突き出された前記位置決め突部の先端部を受け入れて幅方向にも位置決めするように切り欠かれた切欠凹部が備えられているため、前記ライニングの前記切欠凹部を前記位置決め突部の先端部に当接させることにより前記シューリムの外周面上におけるそのシューリムの周方向および幅方向の前記ライニングの位置が同時に位置決めされる。
【0015】
請求項3に係る発明のドラムブレーキ用ブレーキシューによれば、前記ライニングの切欠凹部には、前記シューウェブの位置決め突部の先端部と当接して前記シューリムの周方向に位置決めするための当接面と、その当接面に隣接し前記シューウェブの位置決め突部の先端部と当接して前記シューリムの幅方向に位置決めするための一対の側壁面とが備えられているため、前記切欠凹部の当接面および一対の側壁面を前記位置決め突部の先端部に当接されることにより前記シューリムの外周面上におけるそのシューリムの周方向および幅方向の前記ライニングの位置が同時に位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されたリーディング・トレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のブレーキシューを説明する図である。
【図3】図2のブレーキシューの一端部を拡大する拡大図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲まれた部分を拡大する拡大図である。
【図5】ブレーキシューの一端部に設けられたシューウェブの位置決め突部およびライニングの切欠凹部を説明する図である。
【図6】図3のブレーキシューを矢印A方向から見た図である。
【図7】ブレーキシューを製造する製造工程を説明する工程図である。
【図8】図7の接着剤塗布工程を説明する図である。
【図9】シューリムの外周面とライニングの内周面とを接着するブレーキシュー加熱接着装置を説明する図である。
【図10】図9のX-X視断線図のブレーキシュー加熱接着装置の支持治具においてその支持治具にブレーキシュー本体が装着された状態を示すと共に、図7の積層工程を説明する図である。
【図11】図7の積層工程を説明するために図10のブレーキシュー本体の一端部を拡大して示す拡大図である。
【図12】従来のブレーキシューにおいてシューリムの外周面上にライニングの位置を位置決めする従来の方法を説明する図である。
【図13】従来のブレーキシューにおいてシューリムの外周面上にライニングの位置を位置決めする従来の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節装置付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0019】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0020】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18,20と、その一対のブレーキシュー18,20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18,20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたリターンスプリング24と、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡されたストラット26と、ブレーキシュー18の一端部にピン28を介して相対回転可能に連結された平板状のパーキングブレーキレバー30と、一対のブレーキシュー18,20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置固定に設けられたアンカ32と、一対のブレーキシュー18,20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカ32に常時当接させるスプリング34と、一対のブレーキシュー18,20の中央部に配設されたシューホールドダウン装置36,38とが備えられている。
【0021】
上記一対のブレーキシュー18,20は、相互に略同様に構成されているので、以下においては一方のブレーキシューであるブレーキシュー18を用いてブレーキシューを説明する。
【0022】
図2に示すように、ブレーキシュー18は、バッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ40と、そのシューウェブ40の円弧形状を成す外周縁に沿って断面が略T字状を成すように溶接などにより一体的に固定された板状のシューリム42と、そのシューリム42の外周面42aに接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング44とによって構成されている。
【0023】
ライニング44は、例えば、ガラス繊維、有機繊維、フェノール樹脂結合剤、潤滑剤、および摩擦調整剤の混合物を帯板状に成形して加熱加圧硬化させた非アスベストライニングなどから構成されている。また、ライニング44の内周面44aとシューリム42の外周面42aとを固着させる上記接着剤は、通常、衝撃や曲げに強く、剥離に対する強い抵抗力を備えた、フェノール樹脂を主剤とするフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂を主剤とするエポキシ樹脂系接着剤などの熱硬化性樹脂接着剤が用いられる。
【0024】
図3に示すように、シューウェブ40の一端部にはその外周縁の一部から一体に外周側へ突き出る断面が矩形の位置決め突部40aが備えられており、シューリム42の一端部にはその位置決め突部40aを嵌め入れるように厚み方向に貫通した貫通穴42bが穿設されている。
【0025】
図3、図4に示すように、シューリム42の貫通穴42bは、シューウェブ40の位置決め突部40aの大きさより僅かに大きくなるように設定されており、その貫通穴42bおよびその位置決め突部40aはシューリム42とシューウェブ40とを例えば溶接等で固定する際にそのシューリム42とシューウェブ40との位置を位置決めするために用いられるものである。また、シューリム42の貫通穴42bは、従来からシューリムとシューウェブとの位置を位置決めするためにそのシューリムに備えられているものである。
【0026】
図4に示すように、シューウェブ40の位置決め凸部40aの高さ距離Hは、シューリム42の厚み寸法Bより長くなるように設定されており、位置決め突部40aがシューリム42の貫通穴42b内に嵌め入れられ例えば溶接等によりシューウェブ40とシューリム42とが固定されるとその位置決め突部40aの先端部がシューリム42の外周面42a上から突き出すようになっている。
【0027】
図5、図6に示すように、ライニング44の一端には、シューリム42の外周面42aから突出した位置決め突部40aの先端部を受け入れるように矩形に切り欠かれた切欠凹部44bが備えられている。また、その切欠凹部44bの内周面には、シューウェブ40の長手方向におけるその位置決め突部40aのライニング44側の端面40bと当接する当接面44cと、その当接面44cに隣接しシューウェブ40の厚み方向におけるその位置決め突部40aの一対の側面40c,40dと対向する一対の側壁面44d,44eとが備えられている。
【0028】
図6に示すように、ライニング44の切欠凹部44b内に位置決め突部40aの先端部が受け入れられるようにその切欠凹部44bにおける一対の側壁面44d,44eの間の距離Cは、シューウェブ40の位置決め突部40aにおける一対の側面40c,40dの幅寸法すなわちシューウェブ40の厚み寸法Dより僅かに大きく設定されている。このため、ライニング44の内周面44aとシューリム42の外周面42aとが固着されていない場合において、ライニング44をシューリム42の外周面42a上に載置させてその切欠凹部44b内に位置決め突部40aの先端部が当接するように移動させるとライニング44はシューリム42の外周面42a上におけるそのシューリム42の幅方向Eの移動が一対の側壁面44d,44eと位置決め突部40aの一対の側面40c,40dとが当接することにより拘束される。
【0029】
また、ライニング44の内周面44aとシューリム42の外周面42aとが固着されていない場合において、図4乃至図6に示すように、ライニング44をシューリム42の外周面42a上に載置させてその切欠凹部44bの当接面44cと位置決め突部40aの側面40bとが接近するように移動させると、その切欠凹部44bの当接面44cと位置決め突部40aの端面40bとが当接しそのシューリム42の周方向Fにおける移動が拘束される。また、ライニング44の切欠凹部44bの当接面44cと位置決め突部40aの側面40bとが当接するとライニング44の内周面44aとシューリム42の外周面42aとが隙間なく接触するようにシューウェブ40の位置決め突部40aおよびライニング44の切欠凹部44bの大きさおよび位置が設計されている。
【0030】
図9、図10は、シューウェブ40とシューリム42とが固定されたブレーキシュー本体46のシューリム42の外周面42aにライニング44の内周面44aを固着させてブレーキシュー18を製造するブレーキシュー加熱接着装置48を説明する図である。
【0031】
ブレーキシュー加熱接着装置48は、図9、図10に示すように、シューリム42の内周面42cを密着状態で支持する支持面50を備えてブレーキシュー本体46を支持する支持治具52と、その支持治具52の支持面50に対向する押圧面54を備えた押圧治具56と、その押圧治具56を支持治具52側に接近させてその支持治具52に支持されたブレーキシュー本体46に載置されたライニング44を支持治具52側に押圧する図示されていない押圧装置と、その押圧装置による押圧状態において図示されていない過熱水蒸気発生装置から発生される過熱水蒸気をシューリム42の内周面42cに導くことによりシューリム42の外周面42aにライニング44を加熱接着させる図止されていない加熱装置とを備えている。
【0032】
支持治具52には、図9、図10に示すように、支持面50にシューリム42の内周面42cが密着状態で支持されるようにブレーキシュー本体46のシューウェブ40を受け入れる受入溝58と、前記過熱水蒸気発生装置によって発生させられた過熱水蒸気を導入通路60へ供給する供給管62と、シューリム42の内周面42cに供給された過熱水蒸気を排出通路64へ排出し前記過熱水蒸気発生装置へ循環させる回収管66と、一端部に導入通路60に供給された過熱水蒸気をシューリム42の内周面42cに供給する開口を有し他端部にそのシューリム42の内周面42cに供給された過熱水蒸気を排出通路64に排出する開口を有する長手状の凹溝50aとが備えられている。
【0033】
ここで、本実施例のブレーキシュー18を製造する製造工程P1乃至P4を図7乃至図11を用いて説明する。
【0034】
図7の接着剤塗布工程P1では、図8に示すように位置決め突部40aが貫通穴42b内に嵌め入れられ溶接等によりシューウェブ40とシューリム42とが固定されたブレーキシュー本体46において、そのシューリム42の外周面42aとライニング44の内周面44aとの一方または両方に接着剤が塗布され、必要に応じて乾燥炉内においてその塗布された接着剤が熱風乾燥される。
【0035】
次いで、図7の積層工程P2では、作業者はブレーキシュー本体46を図10に示すようにブレーキシュー加熱接着装置48の支持治具52に装着してそのブレーキシュー本体46のシューリム42の外周面42a上にライニング44を移動させて位置決めし積み重ねる。また、積層工程P2において、作業者は、図11に示すようにライニング44の切欠凹部44bをシューリム42の外周面42a上に突出したシューウェブ40の位置決め突部40aの先端部に当接するようにライニング44を矢印方向に移動させ、その位置決め突部40aとその切欠凹部44bの内周面すなわち当接面44cおよび一対の側壁面44d,44eとが当接してシューリム42の外周面42a上におけるそのシューリム42の周方向Fおよび幅方向Eのライニング44の位置が位置決めされる。
【0036】
次に、図7の加熱接着工程P3では、押圧治具56が支持治具52に向かって駆動され、その支持治具52に装着されたブレーキシュー本体46のシューリム42の外周面42aに対してライニング44の内周面44aが例えば0.6〜3.5MPa程度の圧力で押圧され、この押圧が1〜2分程度の押圧期間だけ持続される。同時に、この押圧期間において、数百℃たとえば300℃程度の常圧過熱水蒸気が前記過熱水蒸気発生装置から支持治具52の凹溝50a内に供給され、シューリム42は上記常圧過熱水蒸気に直接的に接触して効率良く急速加熱されて、接着剤が熱溶解されてシューリム42の外周面42aとライニング44の内周面44aとが隙間なく相互に接着される。
【0037】
その後冷却され、ライニング44が接着されたブレーキシュー18が支持治具52から取り出される。最後に図7の検査工程P4において、上記ブレーキシュー18が検査されてブレーキシュー18の製造工程P1乃至P4が終了する。
【0038】
本実施例のドラムブレーキ10用ブレーキシュー18によれば、シューウェブ40の位置決め突部40aは、シューリム42の貫通穴42bを通してシューリム42の外周面42aから突き出し、ライニング44は、シューリム42の外周面42aから突き出された位置決め突部40aの先端部に当接させて周方向Fに位置決めされるものである。そのため、ライニング44を位置決め突部40aの先端部に当接させることによりシューリム42の外周面42a上におけるそのシューリム42の周方向Fのライニング44の位置が位置決めされるので、シューリム42の外周面42a上にライニング44の位置を従来に比較して正確に且つ早く位置決めさせることができる。また、位置決め突部40aを通すシューリム42の貫通穴42bは、シューウェブ40とシューリム42とを位置決めするために従来から備えられているものであるので、シューリム42の外周面42aの精度が従来に比較して低下することがない。
【0039】
また、本実施例のドラムブレーキ10用ブレーキシュー18によれば、ライニング44の一端には、シューリム42の外周面42aから突き出された位置決め突部40aの先端部を受け入れてシューリム42の幅方向Eにも位置決めするように切り欠かれた切欠凹部44bが備えられているため、ライニング44の切欠凹部44bを位置決め突部40aの先端部に当接させることによりシューリム42の外周面42a上におけるそのシューリム42の周方向Fおよび幅方向Eのライニング44の位置が同時に位置決めされる。
【0040】
また、本実施例のドラムブレーキ10用ブレーキシュー18によれば、ライニング44の切欠凹部44bには、シューウェブ40の位置決め突部40aの先端部と当接してシューリム42の周方向Fに位置決めするための当接面44cと、その当接面44cに隣接しシューウェブ40の位置決め突部40aの先端部と当接してシューリム42の幅方向Eに位置決めするための一対の側壁面44d,44eとが備えられているため、切欠凹部44bの当接面44cおよび一対の側壁面44d,44eを位置決め突部40aの先端部に当接されることによりシューリム42の外周面42a上におけるそのシューリム42の周方向Fおよび幅方向Eのライニング44の位置が同時に位置決めされる。
【0041】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0042】
たとえば、本実施例のドラムブレーキ10用ブレーキシュー18において、ライニング44の一端にはシューウェブ40の位置決め突部40aを受け入れる切欠凹部44bが設けられたが、必ずしもライニング44に切欠凹部44bが設けられる必要はなく例えば切欠凹部44bが設けられていないライニング44の一端を位置決め突部40aに当接させることによりシューリム42の外周面42a上におけるシューリム42の周方向Fのライニング44の位置を位置決めすることができる。また、シューウェブ40の位置決め突部40aは、シューウェブ40の一端部に設けられた必ずしも一端部に設けられる必要はなく他端部に設けられても良い。
【0043】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
10:ドラムブレーキ
18,20:ブレーキシュー
40:シューウェブ
40a:位置決め突部
42:シューリム
42a:外周面
42b:貫通穴
44:ライニング
44b:切欠凹部
44c:当接面
44d,44e:一対の側壁面
E:幅方向
F:周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁の一端部から外周側へ突き出る位置決め突部を有し円弧形状をした長手板状のシューウェブと、該シューウェブの位置決め突部を嵌め入れる貫通穴を一端部に有し該シューウェブの外周縁に沿って一体的に固定された板状のシューリムと、該シューリムの外周面に固着されたライニングとを備えるドラムブレーキ用ブレーキシューであって、
前記シューウェブの位置決め突部は、前記シューリムの貫通穴を通して前記シューリムの外周面から突き出し、
前記ライニングは、前記シューリムの外周面から突き出された前記位置決め突部の先端部に当接させて周方向に位置決めされるものであることを特徴とするドラムブレーキ用ブレーキシュー。
【請求項2】
前記ライニングの一端には、前記シューリムの外周面から突き出された前記位置決め突部の先端部を受け入れて幅方向にも位置決めするように切り欠かれた切欠凹部が備えられていることを特徴とする請求項1のドラムブレーキ用ブレーキシュー。
【請求項3】
前記ライニングの切欠凹部には、前記シューウェブの位置決め突部の先端部と当接して前記シューリムの周方向に位置決めするための当接面と、該当接面に隣接し前記シューウェブの位置決め突部の先端部と当接して前記シューリムの幅方向に位置決めするための一対の側壁面とが備えられていることを特徴とする請求項2のドラムブレーキ用ブレーキシュー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−13152(P2012−13152A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150267(P2010−150267)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】