説明

ドラムブレーキ

【課題】一対のブレーキシューの一端部の一方がアンカーに受け止められる際の衝撃音を低減するドラムブレーキを提供する。
【解決手段】一対のブレーキシュー22,24の一端部に配設された、アンカー26の外周面の曲率半径Rよりも小さい曲率半径Rを有してアンカー26の外周面に当接させられる当接凹面22b,24bとを備えるため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際、上記一方の当接凹面22b,24bは、当接凹面22bとアンカー26の外周面との曲率半径の相違により小さな当接面積でアンカー26の外周面を挟むようにそれに摩擦接触させられることによって摩擦力を大きく発生させ、摩擦減衰によってその衝突を低減するため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際の衝撃音を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関し、特にドラムブレーキから発生する異音を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムブレーキには、たとえば特許文献1に示すように、車輪と共に回転する回転ドラムと、その回転ドラムの開口を塞ぐように非回転部材に固定されたバッキングプレートと、そのバッキングプレート上に拡開可能に支持され且つリターンスプリングによって一端部が互いに接近する方向に付勢された円弧状を成す一対のブレーキシューと、その一対のブレーキシューの一端部間に位置し且つそのバッキングプレート上に固設された円柱状のアンカーと、ブレーキ操作力によってその一対のブレーキシューの一端部間を拡大させる拡開機構と、その一対のブレーキシューの他端部間を連結する連結部材とが備えられ、その拡開機構によりその一対のブレーキシューの一端部間が拡大されて前記回転ドラムの内周面に当接しその一対のブレーキシューの一端部の一方がそのアンカーの外周面に受け止められることによってその回転ドラムの回転を制動するものがある。
【0003】
上記のようなドラムブレーキは、上記ブレーキ操作力の解除時に上記リターンスプリングの付勢する力によって上記一対のブレーキシューの一端部が上記アンカーの外周面に当接すなわち衝突するために衝撃音(異音)が発生するという問題があり、特許文献2では、その衝撃音を低減するために上記円柱状のアンカーの外周にばね鋼板等で造った筒状部材をそのアンカーの外周面とその筒状部材の内周面とに隙間ができるように配設して、その衝突を筒状部材の弾性変形によって低減しその衝撃音を低減している。
【特許文献1】特開2006−46385号公報
【特許文献2】特開平11−182593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の方法では、前記ブレーキ操作力の解除時の衝撃音は低減できるが、ドラムブレーキ制動時すなわち前記一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーの外周面に受け止められる際の比較的大きなトルクによる激しい衝突により発生する衝撃音は低減することができず、ドラムブレーキ制動時または人の乗り降りにより車輪が僅かに回転するとき等においてドラムブレーキから衝撃音が発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、一対のブレーキシューの一端部の一方がアンカーに受け止められる際の衝撃音を低減するドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 車輪と共に回転する回転ドラムと、その回転ドラムの開口を塞ぐように非回転部材に固定されたバッキングプレートと、そのバッキングプレート上に拡開可能に支持され且つリターンスプリングによって一端部が互いに接近する方向に付勢された円弧状を成す一対のブレーキシューと、その一対のブレーキシューの一端部間に位置し且つそのバッキングプレート上に固設された円柱状のアンカーと、ブレーキ操作力によってその一対のブレーキシューの一端部間を拡大させる拡開機構と、その一対のブレーキシューの他端部間を連結する連結部材とを備え、その拡開機構によりその一対のブレーキシューの一端部間が拡大されて前記回転ドラムの内周面に当接しその一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーの外周面に受け止められることによってその回転ドラムの回転を制動するドラムブレーキであって、(b) 前記一対のブレーキシューの一端部に配設された、前記アンカーの外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有して前記アンカーの外周面に直接又は間接的に当接させられる当接凹面を備えることにある。
【0007】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記円柱状のアンカーの外周には、弾性変形可能な一体構造または分割構造の中空部材が配設されており、前記当接凹面は、前記中空部材を介して前記アンカーの外周面に当接するものである。
【0008】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記中空部材は、円筒状を成し、前記アンカーの外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径の内周面を備えることにある。
【0009】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項2または3に係る発明において、前記中空部材は、金属メッシュが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであることにある。
【0010】
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項4に係る発明において、前記耐熱性硬質樹脂は、4フッ化エチレン樹脂であることにある。
【0011】
また、請求項6に係る発明の要旨とするところは、請求項4または5に係る発明において、前記金属メッシュは、銅−錫合金製メッシュであることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のドラムブレーキによれば、前記一対のブレーキシューの一端部に配設された、前記アンカーの外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有して前記アンカーの外周面に直接又は間接的に当接させられる当接凹面を備えるため、前記一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーに受け止められる際、上記一方の当接凹面は、その当接凹面と前記アンカーの外周面との曲率半径の相違により小さな当接面積で前記アンカーの外周面を挟むようにそれに摩擦接触させられることによって摩擦力を大きく発生させ、摩擦減衰によってその衝突を低減する。そのため、前記一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーに受け止められる際の衝撃音を低減することができる。
【0013】
請求項2に係る発明のドラムブレーキによれば、前記円柱状のアンカーの外周には、弾性変形可能な一体構造または分割構造の中空部材が配設されており、前記当接凹面は、前記中空部材を介して前記アンカーの外周面に当接するものであるため、前記一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーに受け止められる際、上記一方の当接凹面は、その当接凹面と前記中空部材の外周面との曲率半径の相違により小さな当接面積で前記中空部材の外周面を挟むようにそれに摩擦接触させられることによって摩擦力を大きく発生させ、摩擦減衰によってその衝突を好適に低減する。そのため、前記一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーに受け止められる際の衝撃音を好適に低減することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明のドラムブレーキによれば、前記中空部材は、円筒状を成し、前記アンカーの外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径の内周面を備えるため、前記一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーに受け止められる際、前記一方の当接凹面は、前記中空部材の外周面に当接しその中空部材の内周面と前記アンカーの外周面との曲率半径の相違によりできる隙間によってその中空部材を弾性変形させ、弾性減衰によって衝突音をさらに低減することができる。
【0015】
また、請求項4に係る発明のドラムブレーキによれば、前記中空部材は、金属メッシュが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであるため、前記中空部材に埋設されている金属メッシュによって前記中空部材の強度を高めることができるので前記中空部材の厚みを薄くし耐久性を高めることができる。
【0016】
また、請求項5に係る発明のドラムブレーキによれば、前記耐熱性硬質樹脂は、4フッ化エチレン樹脂であるため、前記中空部材の衝撃吸収性および耐摩耗性を高めることができる。
【0017】
また、請求項6に係る発明のドラムブレーキによれば、前記金属メッシュは、銅−錫合金製メッシュであるため、銅合金ばね材料としても用いられる銅−錫合金製メッシュが前記中空部材に埋設されているので前記一対のブレーキシューの一端部が前記アンカーに受け止められる際の衝撃音を好適に低減させることができ、耐久性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム(回転ドラム)14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0020】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、上記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0021】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられた円柱状のアンカー26と、その円柱状のアンカー26と一対のブレーキシュー22,24との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,30と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール34aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置34と、それら下端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置34を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング36とが備えられている。また、リターンスプリング28の一端部28aはストラット32側に延長されており、その一端部28aはストラット32がブレーキシュー22側に常時付勢されるようにストラット32に掛止している。
【0022】
スプリング36の中間部分は間隙調節装置34のアジャストホイール34aに接触されており、アジャストホイール34aが振動等によって回転しないようになっている。それら間隙調節装置34およびスプリング36は、一対のブレーキシュー22,24の他端部間を相対回転可能に連結するものであるので、間隙調節機能を備えた連結部材38として機能している。
【0023】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ40,42と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム44,46と、それらシューリム44,46の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング48,50とを備えてそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ40およびシューウェブ42にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置52,54によってバッキングプレート18側へ押圧されることによりそのバッキングプレート18に対して面方向の相対移動が可能に保持されている。バッキングプレート18、シューウェブ40,42、シューリム44,46は、いずれも鋼板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。また、ブレーキシュー22および24には、ストラット32を支持するために相手に向かって支持突起22aおよび24aがそれぞれ形成されている。
【0024】
図1において左側に位置するブレーキシュー22の一端部には、平板状のブレーキレバー56の基端部56aがピン58により回動可能に連結されており、ブレーキレバー56の中間部であってピン58に近い部分は、ストラット32のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面32aにシューウェブ40と共に係合させられている。また、ブレーキレバー56の先端部56bは、パーキングブレーキケーブル60に連結されている。
【0025】
図2に示すように、アンカー26の外周面と一対のブレーキシュー22,24の一端部との間には、中空部材62が配設されている。図3に示すように中空部材62は、円筒状の円筒部62aと、その円筒部62aの一方の縁からバッキングブレート18の外周方向に延長されたフランジ部62bとを備えており、一枚の板状複合材料をプレスによって一体的に曲成された一体構造の中空部材62である。中空部材62は、一枚の板状複合材料をプレスによって一体的に曲成されたものであるためその円筒部62aにはスリット63が設けられており、そのスリット63は、中空部材62がアンカー26回りに回動しドラムブレーキ10の作動時に円筒部62aのどの位置に一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方が衝突しても耐えられるようにブレーキシュー22、24の厚み方向に対して斜めたとえば45°方向に配置されている。フランジ部62bは、ブレーキシュー22,24の厚み方向において図2に示すように一対のブレーキシュー22,24とアンカー26との間に介在されているため車両走行時の振動によってブレーキシュー22,24とアンカー26とが当接することを防止し、異音の発生を防ぐことができる。
【0026】
図4に詳しく示すように中空部材62は、弾性変形可能なたとえば耐熱性硬質樹脂である4フッ化エチレン樹脂62cと、その4フッ化エチレン樹脂62cの全体に埋設された銅−錫合金製メッシュ62dとを含む板状複合材料によって構成されている。中空部材62は埋設された銅−錫合金製メッシュ62dによって強度が高められておりその厚みは薄くたとえば0.5mm程度の厚みのものである。銅−錫合金製メッシュ62dは、図5に示すような複数本の銅−錫合金の線材62eをたとえば平織で編むことによってできたものである。
【0027】
図6はドラムブレーキ10の作動前を示すものであり、その図6に示すように中空部材62の円筒部62aの内周面の曲率半径は、円柱状のアンカー26の外周面の曲率半径より大きく、中空部材62がアンカー26の外周に配設されると中空部材62の内周面とアンカー26の外周面の間には隙間64ができる。そのため、図6に示すように一対のリターンスプリング28,30の付勢力によって中空部材62の外周面に当接された一対のブレーキシュー22,24の一端部は、上記隙間64によりその隙間64に相当する分だけブレーキドラム14の内周面16側に接近して位置するため、ドラムブレーキ10の作動開始時には、従来のドラムブレーキよりも早くブレーキドラム14の内周面16と当接する。
【0028】
また、図6に示すように一対のブレーキシュー22,24の一端部には、アンカー26の外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有した当接凹面22b,24bが備えられている。中空部材62の外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径である当接凹面22b,24bは、図6に示すように、その両端部22c,24cをアンカー26の外周面に間接的すなわち中空部材62を介してアンカー26の外周面に当接するので、当接凹面22b,24bと中空部材62との当接する当接面積は、当接凹面22b,24bの面積より小さいものになる。
【0029】
以上のよう構成されたドラムブレーキ10は、図6に示す一対のリターンスプリング28,30の付勢力によって一対のブレーキシュー22,24の一端部が中空部材62を介してアンカー26に受け止められた状態から、パーキングブレーキペダル、パーキングブレーキレバー等の図示されていないブレーキ操作装置が操作されることによって発生するブレーキ操作力によって、パーキングブレーキケーブル60を介してブレーキレバー56の先端部56bが図1の矢印F方向に引っ張られブレーキレバー56が回動すると、ブレーキシュー24がストラット32に押されて図7の矢印R方向に回動させられると共にブレーキシュー22がピン58に押されて図7の矢印L方向に回動させられ一対のブレーキシュー22,24の一端部間が拡大すなわち拡開する。この際、それら一対のブレーキシュー22,24、ストラット32、ブレーキレバー56、ピン58、パーキングブレーキケーブル60は、ブレーキ操作力によって一対のブレーキシュー22,24の一端部間を拡大させる拡開機構66として機能する。また、図7は、その一対のブレーキシュー22,24の一端部間が拡大した状態を示すものであり、この状態では一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50がブレーキドラム14の内周面16に当接している。
【0030】
上記ブレーキ操作装置の操作時に、たとえば図7に示す矢印R方向に車輪が回転すなわちブレーキドラム14が回転しようとすると、ブレーキドラム14の内周面16と当接しているブレーキシュー22および24は、ブレーキドラム14の回転方向すなわち矢印R方向に連れ回されるので、ブレーキシュー22の一端部は矢印G方向に移動させられてブレーキシュー22の一端部はその一端部とアンカー26の外周面との間に備えられた中空部材62を介してアンカー26に受け止められる。図8は、そのブレーキシュー22の一端部が比較的大きなトルクで中空部材62に衝突してアンカー26に受け止められた状態を示すものである。
【0031】
図9は、ドラムブレーキ10の作動によってブレーキシュー22の一端部が矢印G方向に移動させられ中空部材62を介してアンカー26に受け止められた際の中空部材62の弾性変形の状態を詳しく説明すために、図8の中空部材62の内周面および外周面の曲率半径を大きく示した拡大図である。また、図9の一点鎖線は中空部材62が弾性変形する前の状態を示すものである。
【0032】
図9によれば、ブレーキシュー22の当接凹面22bはその両端部22cを中空部材62の外周面に当接した状態で、矢印G方向に移動すると、中空部材62は一点鎖線の状態から中空部材62の内周面とアンカー26の外周面の隙間64を小さくするように弾性変形して、その弾性変形された中空部材62の内周面の一部の曲率半径をアンカー26の外周面の曲率半径と略同じにする。ブレーキシュー22の当接凹面22bは、その中空部材62の弾性変形によって、中空部材62の内周面の曲率半径が小さくされた部分を復元しようとする矢印H,I方向すなわちアンカー26から離れる方向の弾性復帰力を受けるので、ブレーキシュー22がアンカー26の外周面に受け止められる際の弾性減衰によって衝突音が低減される。
【0033】
図10は、図9の拡大図であり、ドラムブレーキ10の作動によってブレーキシュー22の一端部がアンカー26の外周面に受け止められて中空部材62がブレーキシュー22の当接凹面22bの両端部22cとアンカー26の外周面とによって圧接された状態を詳しく説明するものである。また、図10の一点鎖線は中空部材62が当接凹面22bの両端部22cとアンカー26の外周面とに圧接される前の状態を示すものである。
【0034】
図10によれば、ブレーキシュー22の当接凹面22bが中空部材62の外周面に当接した状態からさらに矢印G方向に移動すると、中空部材62は図10で示す一点鎖線の状態すなわち中空部材62の内周面の一部の曲率半径がアンカー26の外周面の曲率半径と略同じ状態から当接凹面22bの両端部22cとアンカー26の外周面とによって圧接されて、中空部材62は図10の実線で示すように両端部22cと当接する部位の厚みを薄くすなわち中空部材62の外周面において当接凹面22b,24bの両端部22c,24cに当接されている両脇が当接凹面22b,24bの両端部22c,24cによって挟まれるように弾性変形する。ブレーキシュー22の当接凹面22bは、その中空部材62の弾性変形によって、矢印G方向の移動するに従って当接凹面22bの両端部22cと中空部材62の外周面とが摩擦接触させられ矢印J方向の摩擦力を大きくするので、ブレーキシュー22の当接凹面22bは、その矢印J方向の摩擦力によってアンカー26の外周面に受け止められる際の摩擦減衰によって衝突音が低減される。
【0035】
上述から分かるように、ドラムブレーキ10の作動時において、ブレーキシュー22の一端部がアンカー26の外周面に受け止められる際の衝突は、上記弾性復帰力による弾性減衰および上記摩擦力による摩擦減衰によって低減されてその衝突による衝撃音が低減される。
【0036】
また、中空部材62の4フッ化エチレン樹脂62cは、振動減衰機能或いは振動吸収機能が高いため、ブレーキシュー22の一端部が中空部材62に衝突したときの衝撃力をその中空部材62内において減衰され且つ吸収されるので、その衝突する際の衝撃音をさらに低減させることができる。また、中空部材62は、摩擦係数の低い4フッ化エチレン樹脂62cを使用しているので、長い期間使用してもほとんど摩耗せず、その中空部材62の性能の低下を抑制することができる。また、中空部材62は、銅合金ばね材料である銅−錫合金を使用しているので、中空部材62の付勢する力すなわち弾性復帰力および中空部材62の耐久性を一層高めることができる。
【0037】
中空部材62に衝突後ブレーキシュー22の一端部は、その中空部材62を介してアンカー26に受け止められることによって、ブレーキシュー22および24のライニング48および50がブレーキドラム14の内周面16に強く押し付けられるので、ブレーキドラム14のR方向の回転すなわち車輪の回転が制動される。
【0038】
そして、ブレーキ操作力が解除されるとアンカー26の外周面に受け止められていたブレーキシュー22の一端部の当接凹面22bは、中空部材62の前記弾性復帰力によってアンカー26から離れる方向に付勢され、ブレーキシュー22の当接凹面22bがアンカー26に食い付くことなくアンカー26から容易に離れるとともに一対のリターンスプリング28,30の付勢力によってブレーキドラム14の内周面16と一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50とが離間させられドラムブレーキ10の制動力は解除される。また、ブレーキ操作力が解除されると一対のブレーキシュー22,24の当接凹面22b,24bはリターンスプリング28,30の付勢力によって中空部材62の外周面に衝突しするが中空部材62はその衝突を前述と同様に衝撃を低減させて受け止めるので、ブレーキ操作力解除時のドラムブレーキ10から発生する衝撃音を低減することができる。
【0039】
上述のように、本実施例のドラムブレーキ10によれば、(a) 円柱状のアンカー26の外周に配設された、弾性変形可能な一体構造の中空部材62と、(b) 一対のブレーキシュー22,24の一端部に配設された、アンカー26の外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有して中空部材62を介してアンカー26の外周面に当接させられる当接凹面22b,24bとを備えるため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際、上記一方の当接凹面22b,24bは、当接凹面22b,24bと中空部材62の外周面との曲率半径の相違により小さな当接面積で中空部材62の外周面を挟むようにそれに摩擦接触させられることによって摩擦力を大きく発生させ、摩擦減衰によってその衝突を低減する。そのため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際の衝撃音を低減することができる。
【0040】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、中空部材62は、円筒状を成し、アンカー26の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径の内周面を備えるため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際、前記記一方の当接凹面22b,24bは、中空部材62の外周面に当接しその中空部材62の内周面とアンカー26の外周面との曲率半径の相違によりできる隙間64によって中空部材62を弾性変形させ、弾性減衰によって衝突をさらに低減することができる。
【0041】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、中空部材62は、銅−錫合金製メッシュ62bが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであるため、中空部材62に埋設されている銅−錫合金製メッシュ62bによって中空部材62の強度を高めることができるので中空部材62の厚みを薄くし耐久性を高めることができる。
【0042】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、4フッ化エチレン樹脂62cによって中空部材62の衝撃吸収性および耐摩耗性を高めることができる。
【0043】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、銅合金ばね材料としても用いられる銅−錫合金製メッシュ62dが中空部材62の全体に埋設されているので一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26の外周面に受け止められる際の衝撃音を好適に低減させることができ、耐久性が高められる。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例の説明において前述した実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施例のドラムブレーキは、異なる中空部材68を備える以外は実施例1と略同様に構成されており、図11は、その中空部材68を説明する図であり、実施例1の図3に対応するものである。
【0046】
中空部材68は、図11に示すような実施例1の中空部材62からフランジ部62bを取り除いた中空部材62の円筒部62aに相当するものであるため、中空部材68の内周面および外周面の曲率半径、スリット70は中空部材62の内周面および外周面の曲率半径、スリット63と同様である。また、中空部材68は、実施例1と同様の耐熱性硬質樹脂である4フッ化エチレン樹脂62cと、その4フッ化エチレン樹脂62cの全体に埋設された銅−錫合金製メッシュ62dとによって構成されている。そのため、実施例2の中空部材68はフランジ部62bを備えていない以外は実施例1の中空部材62と略同様の機能を備える。
【0047】
実施例2のドラムブレーキによれば、中空部材68の形状は中空部材62に比べフランジ部62bを備えていない点で複雑ではないので、中空部材68の製造コストを安価にすることができる。
【実施例3】
【0048】
本実施例のドラムブレーキは、異なる中空部材72を備える以外は実施例1と略同様であって、図12はその中空部材72を説明する図であり、実施例1の図3に対応するものである。
【0049】
中空部材72は、図12に示すような略円筒形状を軸心を通る分割面で二等分割した分割構造の中空部材72a,72bによって構成されており、その分割構造の中空部材72a,72bは円筒形状を保つようにそれぞれの周方向の両端部分72cが相互に固定され或いは固定されないでアンカー26の外周に配設されている。
【0050】
また、中空部材72は実施例1と同様の耐熱性硬質樹脂である4フッ化エチレン樹脂62cと、その4フッ化エチレン樹脂62cの全体に埋設された銅−錫合金製メッシュ62dとによって構成されている。
【0051】
また、弾性部材72の分割構造の中空部材72a,72bの内周面の曲率半径は円柱状のアンカー26の外周面の曲率半径より大きく、分割構造の中空部材72a,72bの外周面の曲率半径は当接凹面22b,24bの曲率半径より大きい。つまり、中空部材72の内周面および外周面は実施例1の中空部材62の円筒部62aと同じ曲率半径であるため、中空部材72がアンカー26の外周に配設されると分割構造の中空部材72a,72bの内周面とアンカー26の外周面との間には隙間64ができ、当接凹面22b,24bがその分割構造の中空部材72a,72bの外周面に当接されると実施例1の中空部材62と同様に当接凹面22b,24bの両端部22c,24cが分割構造の中空部材72a,72bの外周面に当接される。そのため、本実施例の中空部材72は実施例1の中空部材62と形状で相違するが機能では実施例1の中空部材62と略同様である。
【0052】
中空部材72を構成する分割構造の中空部材72a,72bの周方向の両端部分72cは相対的に強度および耐久性が低いため、ドラムブレーキ作動時その両端部分72cに一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方が衝突しないように、中空部材72の位置を位置決めさせる一対のストッパー72dを備えている点が実施例1の中空部材62と相違する。ストッパー72dは、中空部材72がアンカー26を軸心として回動すると一対のブレーキシュー22,24の一端部に当接されるので中空部材72を位置決めすることができる。
【0053】
本実施例のドラムブレーキによれば、(a) 円柱状のアンカー26の外周に配設された、弾性変形可能な分割構造の中空部材72と、(b) 一対のブレーキシュー22,24の一端部に配設された、アンカー26の外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有して中空部材62を介してアンカー26の外周面に当接させられる当接凹面22b,24bとを備えるため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際、上記一方の当接凹面22b,24bは、当接凹面22b,24bと中空部材72の外周面との曲率半径の相違により小さな当接面積で中空部材72の外周面を挟むようにそれに摩擦接触させられることによって摩擦力を大きく発生させ、摩擦減衰によってその衝突を低減する。そのため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26に受け止められる際の衝撃音を低減することができる。
【実施例4】
【0054】
本実施例のドラムブレーキは、異なる中空部材74を備える以外は実施例1と略同様であって、図13、14はその中空部材74を説明する図であり、実施例1の図3、6に対応するものである。
【0055】
中空部材74は、図13、14に示すような略円筒形状を軸心を通る分割面で二等分割した分割構造の中空部材74a,74bによって構成されており、その分割構造の中空部材74a,74bは略円筒形状を保つようにそれぞれの周方向の両端部分74cが相互に固定され或いは固定されないでアンカー26の外周に配設されている。また、中空部材74は図14において楕円形状である。
【0056】
また、中空部材74は実施例1と同様の耐熱性硬質樹脂である4フッ化エチレン樹脂62cと、その4フッ化エチレン樹脂62cの全体に埋設された銅−錫合金製メッシュ62dとによって構成されている。
【0057】
また、分割構造の中空部材74a,74bの内周面の曲率半径は、実施例1の中空部材62の内周面の曲率半径より大きく、分割構造の中空部材74a,74bの外周面の曲率半径は、実施例1の中空部材62の外周面の曲率半径より大きい。そして、中空部材74がアンカー26の外周に配設されると分割構造の中空部材74a,74bの内周面とアンカー26の外周面との間には図14に示すような中空部材74の両端部分74cに近づくにつれて大きくなる隙間76ができる。本実施例の中空部材74は実施例1の中空部材62と同様にドラムブレーキ制動時、当接凹面22b,24bによって当接されることによって、中空部材74の内周面の一部をアンカー26の外周面の曲率半径と略同じにされ、当接凹面22b,24bの両端部22c,24cとアンカーの外周面とに圧接されることによって当接凹面22b,24bの両端部22c,24cと中空部材72の外周面との摩擦力を大きくするので、実施例1の中空部材62と形状で相違するが機能では実施例1の中空部材62と略同様である。
【0058】
また、中空部材74を構成する分割構造の中空部材74a,74bの周方向の両端部分74cは相対的に強度および耐久性が低いため、ドラムブレーキ作動時その両端部部分74cに一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方が衝突しないように、中空部材74の位置を位置決めさせる一対のストッパー74dを備えている点が実施例1の中空部材62と相違する。ストッパー74dは、中空部材74がアンカー26を軸心として回動すると一対のブレーキシュー22,24の一端部に当接されるので中空部材74を位置決めすることができる。
【0059】
本実施例の中空部材74は図14に示すように楕円形状であり、実施例1、2、3に比べ中空部材74の内周面および外周面の曲率半径を大きくすることができる。つまり、実施例1、2、3の中空部材62、70、72は円筒状であるので、中空部材62、70、72の内周面および外周面の曲率半径を大きくすると隙間64が大きくなりその中空部材62、70、72の外周面に当接されている一対のブレーキシュー22,24の一端部がバッキングプレート18の外周側に移動しブレーキドラム14の内周面に当接してしまうが、本実施例のような楕円形状の中空部材74はその内周面および外周面の曲率半径を大きくすると中空部材74の内周面とアンカー26の外周面との隙間76が図14に示すように中空部材74の両端部分74cに近づくにつれて大きくなっていくので中空部材74の外周面に当接されている一対のブレーキシュー22,24の一端部はバッキングプレート18の外周側に実施例1、2、3に比べ大きく移動しない。これにより、本実施例の中空部材74は、中空部材62、70、72に比べ高い付勢力すなわち高い弾性復帰力を発生することができ、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方がアンカー26の外周面に受け止められる際の衝撃を好適に低減することができる。
【実施例5】
【0060】
本実施例のドラムブレーキは、中空部材62を取り外した以外は実施例1と略同様であって、図15、16はそのドラムブレーキの制動状態を説明する図であり、実施例1の図8、9に対応するものである。
【0061】
実施例1と同様に当接凹面22b,24bの曲率半径Rは、アンカー26の外周面の曲率半径Rよりも小さく、たとえばアンカー26の外周面の曲率半径Rと当接凹面22b,24bの曲率半径Rとの差(R−R)は、0.5〜1.0mm程度のものである。
【0062】
図15に示すように、本実施例のドラムブレーキは、実施例1のドラムブレーキ10と同様に前記ブレーキ操作装置の操作時にブレーキドラム14が回転しようとすると、ブレーキドラム14の内周面16と当接している一対のブレーキシュー22,24は、そのブレーキドラム14の回転方向に連れ回され、ブレーキシュー22の当接凹面22bは、矢印G方向に移動させられてアンカー26の外周面に直接受け止められる。
【0063】
図16によれば、ブレーキシュー22の一端部がアンカー26の外周面に衝突する衝突時に、当接凹面22b,24bの曲率半径Rとアンカー26の外周面の曲率半径Rとの相違により、ブレーキシュー22の当接凹面22bの両端部22cとアンカー26の外周面とが当接し、その両端部22cとアンカー26の外周面との小さな面積の当接面に大きな力が加わるため、ブレーキシュー22の当接凹面22bの両端部22cは図16に示す矢印L、M方向に僅かに弾性変形され、ブレーキシュー22の一端部は僅かに矢印G方向に移動する。すなわち、ブレーキシュー22の当接凹面22bの両端部22cは、アンカー26の外周面を挟むように弾性変形する。そのため、ブレーキシュー22の当接凹面22bの両端部22cは、その僅かな弾性変形において、ブレーキシュー22の一端部が矢印G方向に移動するに従って当接凹面22bの両端部22cとアンカー26の外周面とが摩擦接触させられ矢印N方向の摩擦力を大きくするので、ブレーキシュー22の一端部は、その矢印N方向の摩擦力すなわちアンカー26の外周面に受け止められる際の摩擦減衰によって衝突時の衝突音が低減される。
【0064】
本実施例のドラムブレーキによれば、一対のブレーキシュー22,24の一端部に配設された、アンカー26の外周面の曲率半径Rよりも小さい曲率半径Rを有してアンカー26の外周面に直接に当接させられる当接凹面22b,24bを備えるため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方22がアンカー26に受け止められる際、上記一方22の当接凹面22bは、その当接凹面22bとアンカー26の外周面との曲率半径の相違により小さな当接面積でアンカー26の外周面を挟むようにそれに摩擦接触させられることによって摩擦力を大きく発生させ、摩擦減衰によってその衝突を低減する。そのため、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方22がアンカー26に受け止められる際の衝撃音を低減することができる。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0066】
たとえば、本発明のドラムブレーキ10において、拡開機構66は、一対のブレーキシュー22,24、ストラット32、ブレーキレバー56、ピン58、パーキングブレーキケーブル60を備えてブレーキ操作力によって一対のブレーキシュー22,24の一端部間を拡大させたが、必ずしも拡開機構66は、これら一対のブレーキシュー22,24、ストラット32、ブレーキレバー56、ピン58、パーキングブレーキケーブル60を備えなければならないものではなく、ブレーキ操作力によって一対のブレーキシューの一端部を拡大するものであれば拡開機構の構成はどのようなものが使用されても差し支えない。
【0067】
また、前述の実施例の中空部材62、70、72、74は、4フッ化エチレン樹脂62cおよび銅−錫合金製メッシュ62dから成る複合材料であったが、弾性変形するものであれば他の材料から構成されていてもよい。
【0068】
また、本発明のドラムブレーキにおいて、中空部材72、74を構成する分割構造の中空部材72a,72b、74a,74bは、形状を保つようにそれぞれの両端が固定されていたが分割構造の中空部材72a,72b、74a,74bがアンカー26から脱落しなければそれぞれの両端が固定されていなくてもよい。
【0069】
また、本発明のドラムブレーキにおいて、中空部材62,70,72,74は、その内周面とアンカー26の外周面との間に隙間64,76を備えるものであったが、中空部材62,70,72,74の内周面とアンカー26の外周面との間に隙間64,76ができないものが使用されてもよい。すなわち、ドラムブレーキ制動時のブレーキシューの一端部がアンカーに受け止められる際の衝突を主として当接凹面と中空部材との摩擦減衰で低減してもよい。
【0070】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施例のデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図1の実施例のドラムブレーキに備えられた中空部材を説明するための斜視図である。
【図4】図3のIV-IV視断面図である。
【図5】中空部材に備えられた銅−錫合金製メッシュを説明する図であり、中空部材の表面の拡大図である。
【図6】図2のVI-VI視断面図であり、一対のブレーキシューの一端部が拡大する前を示す図である。
【図7】一対のブレーキシューの一端部がブレーキ操作力によって拡大した時を示す図である。
【図8】一対のブレーキシューの一端部の一方が中空部材に衝突した時を示す図である。
【図9】一対のブレーキシューの一端部の一方が中空部材に衝突した時の弾性部材の弾性変形を説明するために、中空部材の内周面および外周面の曲率半径を大きくした図8の拡大図である。
【図10】一対のブレーキシューの一端部の一方が中空部材に衝突して当接凹面とアンカーの外周面とによって中空部材を圧接する際の中空部材の弾性変形を説明する図9の拡大図である。
【図11】本発明の実施例2の中空部材を示す図であり、実施例1の図3に対応するものである。
【図12】本発明の実施例3の中空部材を示す図であり、実施例1の図3に対応するものである。
【図13】本発明の実施例4の中空部材を示す図であり、実施例1の図3に対応するものである。
【図14】本発明の実施例4の中空部材を示す図であり、実施例1の図6に対応するものである。
【図15】本発明の実施例5のドラムブレーキの制動状態を示す図であり、実施例1の図8に対応するものである。
【図16】図15の拡大図であり、実施例1の図9に対応するものである。
【符号の説明】
【0072】
10:ドラムブレーキ
14:ブレーキドラム(回転ドラム)
16:ブレーキドラム(回転ドラム)の内周面
18:バッキングプレート
22,24:一対のブレーキシュー
22b,24b:当接凹面
26:アンカー
28,30:一対のリターンスプリング(リターンスプリング)
38:連結部材
62、70、72、74:中空部材
62c:4フッ化エチレン樹脂
62d:銅−錫合金製メッシュ
66:拡開機構
72a,72b、74a,74b:分割構造の中空部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転する回転ドラムと、該回転ドラムの開口を塞ぐように非回転部材に固定されたバッキングプレートと、該バッキングプレート上に拡開可能に支持され且つリターンスプリングによって一端部が互いに接近する方向に付勢された円弧状を成す一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一端部間に位置し且つ該バッキングプレート上に固設された円柱状のアンカーと、ブレーキ操作力によって該一対のブレーキシューの一端部間を拡大させる拡開機構と、該一対のブレーキシューの他端部間を連結する連結部材とを備え、該拡開機構により該一対のブレーキシューの一端部間が拡大されて前記回転ドラムの内周面に当接し該一対のブレーキシューの一端部の一方が前記アンカーの外周面に受け止められることによって該回転ドラムの回転を制動するドラムブレーキであって、
前記一対のブレーキシューの一端部に配設された、前記アンカーの外周面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有して前記アンカーの外周面に直接又は間接的に当接させられる当接凹面を備えることを特徴とするドラムブレーキ。
【請求項2】
前記円柱状のアンカーの外周には、弾性変形可能な一体構造または分割構造の中空部材が配設されており、
前記当接凹面は、前記中空部材を介して前記アンカーの外周面に当接することを特徴とする請求項1のドラムブレーキ。
【請求項3】
前記中空部材は、円筒状を成し、前記アンカーの外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径の内周面を備えることを特徴とする請求項2のドラムブレーキ。
【請求項4】
前記中空部材は、金属メッシュが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであることを特徴とする請求項2または3のドラムブレーキ。
【請求項5】
前記耐熱性硬質樹脂は、4フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする請求項4のドラムブレーキ。
【請求項6】
前記金属メッシュは、銅−錫合金製メッシュであることを特徴とする請求項4または5のドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−202688(P2008−202688A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39497(P2007−39497)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】