説明

ドラム式洗濯機

【課題】洗剤量に応じて最適な洗浄を行い、かつ省エネルギー性の高い洗い運転を行うことができるドラム式洗濯機を提供すること。
【解決手段】洗い工程がドラム1内で洗濯物が張り付かない程度の低速で回転する工程(S12)と、洗濯物がドラム1の壁面方向に張り付いた状態となる高速で回転させる遠心力洗浄工程(S14)からなり、制御部70は、洗剤量判定部32により洗剤量が多いと判定した場合、高速で回転させる工程の回転数を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性的に支持された受筒内に洗濯物を収容して回転可能なドラム(洗濯槽)を備え、そのドラム内で洗濯物の洗い、すすぎ、脱水を行うドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム式洗濯機においては、洗濯物がドラムに投入された後、給水手段によって洗濯機外部より水道水が供給され、あらかじめ洗剤が投入されている洗剤入れを介して、ドラムを収容する受筒またはドラムに注水される。注水後は、ドラムを低速で回転させながら、洗濯物を十分に洗剤が含んだ洗浄液で濡らした後、ドラムを一定時間、洗濯物がドラム壁面に張り付かない程度の低速で回転させる。これによって、濡れた洗濯物が回転に伴ってドラムの上部より落下する際の衝撃によって汚れを落とすことで洗浄が行われている。このようなドラム式洗濯機においては、特に洗濯物の量が多い場合に、洗濯物を濡らす工程において、ドラム内に投入された洗濯物を均一に濡らすことが困難である。このために、洗いムラが発生し、洗浄性能が著しく低下するといった課題が存在した。
【0003】
そこで、給水後に、ドラムを比較的低速な所定の回転数で回転させる、たたき洗いを行うとともに、洗濯物の中の洗浄液を遠心力によりドラム状回転槽の外に排出し得る角速度以上の回転数であって、所定の回転数よりも高い回転数でドラムを回転させることが考えられている。このような構成により、しぼり洗いを行うことで、洗濯物がより入り交じるようにして撹拌がされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−299658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の洗濯機においては、投入された洗剤量の多少に関わらず、一定の高速回転動作がされるため、洗剤量が多く、洗剤濃度の高い洗浄液が衣類の汚れに作用しやすいときには、必要以上に無駄な高速回転動作をしてしまう。これになり、省エネルギー性に欠けるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、洗剤量に応じて最適な洗浄を行い、かつ省エネルギー性の高い洗い運転を行うことができるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、洗濯物を収容して回転するドラムと、前記ドラムを収容する受筒と、前記ドラムを駆動するドラム駆動部と、洗剤の量を判定する洗剤量判定部を有し、前記洗剤量判定部の判定結果を基に、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の各工程を逐次制御する制御部とを備え、前記洗い工程が、前記ドラム内で前記洗濯物が張り付かない程度の低速で前記ドラムを回転する撹拌工程と、前記洗濯物が前記ドラムの壁面方向に張り付いた状態となる高速で前記ドラムを回転させ前記洗濯物から遠心力で洗浄水を排出する遠心力洗浄工程とを含み、前記制御部は、前記洗剤量判定部が判定した前記洗剤の量が多いほど、前記遠心力洗浄工程における前記ドラムの回転数を低くするようにしたものである。
【0008】
このような構成によって、洗剤量が多いときには遠心力洗浄工程における高速回転の回転速度を低くして、ドラム駆動モータの消費電力を抑え、省エネルギー性能を確保する。一方で、洗剤量が少ないときには高速回転の回転数を高くして、効率良く洗浄液を衣類の汚れに作用させ洗浄力を高める。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドラム式洗濯機は、洗剤量に応じた最適な洗浄を行い、かつ省エネルギー性の高い洗い運転を行うことができるドラム式洗濯機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るドラム式洗濯機の概略構成を示す側面断面図
【図2】同ドラム式洗濯機の制御ブロック図
【図3】同ドラム式洗濯機における洗濯運転時の制御部の動作を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態4に係るドラム式洗濯機の概略構成を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明のドラム式洗濯機は、洗濯物を収容して回転するドラムと、前記ドラムを収容する受筒と、前記ドラムを駆動するドラム駆動部と、洗剤の量を判定する洗剤量判定部を有し、前記洗剤量判定部の判定結果を基に、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の各工程を逐次制御する制御部とを備え、前記洗い工程が、前記ドラム内で前記洗濯物が張り付かない程度の低速で前記ドラムを回転する撹拌工程と、前記洗濯物が前記ドラムの壁面方向に張り付いた状態となる高速で前記ドラムを回転させ前記洗濯物から遠心力で洗浄水を排出する遠心力洗浄工程とを含み、前記制御部は、前記洗剤量判定部が判定した前記洗剤の量が多いほど、前記遠心力洗浄工程における前記ドラムの回転数を低くするようにしたものである。
【0012】
このような構成によって、洗剤量が多いときには高速回転の回転速度を低くして、ドラム駆動モータの消費電力を抑えることで、省エネルギー性能を高くすることができる。また、洗剤量が多いために洗剤濃度が高い状態で、ドラムの高速回転の回転速度を低くするので、異常発泡の発生を低減することができる。一方で、洗剤量が少ないときには、高速回転の回転速度を高くして、効率良く洗浄液を衣類の汚れに作用させ、洗浄力を高めることができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明のドラム式洗濯機は、前記洗濯物に前記洗浄水を含水させる含水手段をさらに備え、前記含水手段は、前記遠心力洗浄工程において前記洗濯物に前記洗浄水を含水させるようにしたものである。
【0014】
このような構成によって、洗濯物に付着した汚れに対して、積極的に洗剤成分を含んだ洗浄水を作用させ、洗浄力を高めることができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第2の発明のドラム式洗濯機の前記含水手段は、前記受筒の内底部に溜まった前記洗浄水に前記洗濯物の一部が浸漬することで含水することを特徴とするものである。
【0016】
このような構成によって、受筒の内定部に溜まった汚れがまだ付着していない洗浄水を洗濯物に効果的に吸収させて、さらに、遠心力により、洗濯物から汚れ成分を含む洗浄水が脱水されて、衣類繊維に含まれる洗浄水の入れ替わりを促進することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明のドラム式洗濯機の前記含水手段は、前記受筒の前記内底部に溜まる前記洗浄水を吸引して前記ドラム内の前記洗濯物に再び吐出す
る循環シャワーであることを特徴とするものである。
【0018】
このような構成によって、洗浄水の循環は循環ポンプの制御のみで行えるので、ドラム回転による水流など、通常、洗浄力を制御する洗浄制御とは関係なく洗浄水を循環させることができる。汚れがまだ付着していない洗浄水を洗濯物に効果的に吸収させて、さらに、遠心力により、洗濯物から汚れ成分を含む洗浄水が脱水されて、衣類繊維に含まれる洗浄水の入れ替わりを促進することができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つのドラム式洗濯機の前記洗剤量判定部による前記洗剤の量の判定は、濁度、導電率、色度の少なくとも1つ以上のセンサを用いて行うようにしたものである。
【0020】
このような構成によって、洗剤量判定部が洗剤の種類や洗剤成分に応じた精度の良い洗剤量判定をすることができ、洗剤量に応じた洗浄に対応することができる。
【0021】
第6の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つのドラム式洗濯機は、収容した前記洗濯物の量を検知する布量検知部をさらに備え、前記洗剤量判定部は、前記布量検知部が検知した前記洗濯物の量に応じて前記洗剤の量を決定するようにしたものである。
【0022】
このような構成によって、新たに洗剤量検知手段を設ける必要がなく、低コストで洗剤量の判定を実現することができる。
【0023】
第7の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つのドラム式洗濯機は、前記洗剤を投入するための洗剤投入部と、前記洗剤投入部の前記洗剤の重量を検知する洗剤投入部重量検知部とをさらに備え、前記洗剤量判定部は、前記洗剤投入部重量検知部が検知した前記洗剤の重量に応じて前記洗剤量を決定するようにしたものである。
【0024】
このような構成によって、使用者によって投入された洗剤量を直接重量で検知することができ、高精度で洗剤量を判定することができる。
【0025】
第8の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つのドラム式洗濯機は、入力設定部をさらに備え、前記洗剤量判定部は、前記入力設定部を介して設定された洗剤量に応じて前記洗剤の量を決定するようにしたものである。
【0026】
このような構成によって、新たに洗剤量検知手段を設ける必要がなく、また判定時間を要することもないため、簡易な構成とすることができる。
【0027】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つのドラム式洗濯機と、洗濯した衣類を乾燥するための乾燥手段と、を含むドラム式洗濯乾燥機である。
【0028】
このように、上記の何れかのドラム式洗濯機を適用することにより、洗剤量に応じた、洗浄力が高くて省エネなドラム式洗濯乾燥機を実現できる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るドラム式洗濯機の概略構成を示す側面断面図である。また、図2は本発明の実施の形態1に係るドラム式洗濯機の制御ブロック図である。
【0031】
図1において、受筒2は、筐体100内に弾性的に支持されて、洗剤成分を含む洗浄水を貯める筒状の水槽である。前面開口で底面を有する筒状のドラム1は、受筒2に回転可能に内包され、洗濯物を収容する。受筒2の背面には、ドラム1の回転軸を前上がりに傾斜して回転させるドラム駆動モータ3(ドラム駆動部)が取り付けられている。
【0032】
給水口4は水道に接続されており、給水弁5を介して受筒2やドラム1を順次、水で満たしていく。
【0033】
給水弁5と受筒2の間にはあらかじめ洗剤を投入するための洗剤ケース18(洗剤投入部)が設けられている。給水された水と、投入された洗剤が混ざり合いながら、給水配管19を通じて、ドラム1内に注水される。
【0034】
受筒2の最低部には図示しないが、受筒2に貯まった洗浄水を加熱するためのヒータ(加熱部)が設けられ、水道水が低温の場合であっても、洗浄水の温度を高くすることができ、洗剤の洗浄能力を高めることができる。
【0035】
受筒2の最低部には、取水口6が接続されており、排水弁7を介して、排水管8から洗い後の洗浄水や、すすぎ後のすすぎ水が機外に排水される。
【0036】
取水口6には、受筒2およびドラム1に給水された水位を検知するための水位センサ9(水位検知部)が設置されている。
【0037】
また、取水口6と排水弁7の間からは、取水口6から取り込んだ洗浄水やすすぎ水を、ドラム1に吐出する吐出口10につながった循環水路11が連通されている。受筒2の洗浄水やすすぎ水が、取水口6から、循環水路11を通り、吐出口10からドラム1内に送水されることで、循環できる。循環水路11への水の取り込みは、含水手段としての循環ポンプ12を用いて行うこととすれば、循環水路11による洗浄水の循環は、循環ポンプ12の制御のみで行えるので、ドラム1の回転による水流など、通常洗浄力を制御する洗浄制御とは関係なく循環させることができる。
【0038】
循環時の循環水(洗浄水やすすぎ水)に洗濯物の繊維や髪の毛などの異物が多く含まれると、循環ポンプ12が詰まる恐れがあるため、循環ポンプ12の上流に排水フィルタ13が設置されている。排水フィルタ13により、洗濯物の繊維や髪の毛などの異物が取り除かれる。
【0039】
本実施の形態において、洗剤量を検知するために、循環水路11内を通過する水の透過度を検出することができる濁度センサ14が、循環水路11に設けられている。濁度センサ14は、発光素子であるLEDと、受光素子であるフォトトランジスタで構成され、循環水路11を挟んで左右の略水平位置に対峙して設置されている。投入された洗剤が水と混ざり合って溶けた際に、洗剤量に応じて洗浄水の透過率(濁度)が変動することから、濁度センサ14の出力結果に応じて洗剤量が検知される。濁度センサ14は、赤外光線を出射する発光素子と、発光素子から出射された赤外光線を受光する受光素子とを含む。発光素子及び受光素子は、循環水路11の外側に位置し、互いに対向する。したがって、発光素子と受光素子の間には、赤外光線の光軸が形成されるため、濁度センサ14が取り付けられた循環水路11は、少なくとも部分的に、赤外光線を透過させる材質を含む。濁度センサ14が取り付けられている位置に相当する循環水路11内の洗浄水中を、発光素子からの赤外光線が通過する。洗浄水の洗剤量が多く、濁りが大きいとき、受光素子に到達する赤外光線の光量は小さくなり、洗浄水の洗剤量が少なく、濁りが小さいとき、受光素子に到達する赤外光線の光量は大きくなる。したがって、濁度センサ14は、洗浄水の濁
度に応じた出力を出力して、洗剤量判定部32が洗剤量を判定することができる。
【0040】
筐体100には、ドラム1の開口端側に対向させて扉体15が設けられており、使用者は、扉体15を開くことで、ドラム1に対して洗濯物(衣類)を出し入れすることができる。
【0041】
ドラム1の内周壁には、複数の突起体16が設けられている。ドラム1を低速で回転させることにより、衣類は突起体16により引っ掛けられて、上方に持ち上げられる。その後、衣類は適当な高さから落下する。このように、突起体16により、撹拌動作(タンブリング動作)を行うことができる。
【0042】
また、ドラム1の内周壁には、複数の透孔17が設けられており、ドラム1と受筒2の間を水が自由に往来できるようになっている。
【0043】
図2に示すように、ドラム式洗濯機は、制御部70を有している。制御部70は、入力設定部30を介して、使用者から入力される設定情報を表示部31に表示し、設定情報と各部の動作状態の監視状況とに基づいて、洗い、すすぎ、脱水にわたる一連の運転動作を制御する。
【0044】
制御部70は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、各種処理の実行時にプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース及びこれらを接続するバスにより構成することができる。また、制御部70は、洗剤量判定部32とタイマ71を有している。洗剤量判定部32は、投入された洗剤の量を判定する。タイマ71には、制御部70の動作上の内部機能として組み込まれている内部タイマが用いられる。なお、タイマ71として、制御部70とは独立したタイマ装置が用いられることとしてもよい。
【0045】
本実施の形態のドラム式洗濯機においては、交流電力20を整流器24により整流し、その後、チョークコイル25及び平滑コンデンサ26からなる平滑回路により平滑化する。そして、平滑化された直流電力を駆動電力として、インバータ回路22によりドラム駆動モータ3を回転駆動するようになっている。制御部70は、入力設定部30から入力される運転指示および各検知部により検知される運転状態の監視情報に基づいてドラム駆動モータ3の回転を制御する。さらに制御部70は、負荷駆動部23を介して給水弁5、排水弁7、循環ポンプ12などの必要負荷の動作を制御する。
【0046】
ドラム駆動モータ3は、例えば、3相巻線3a、3b、3cを有するステータと、2極の永久磁石を有するロータとを備え、3つの位置検出素子27a〜27cを設けた直流ブラシレスモータとして構成することができる。このドラム駆動モータ3は、スイッチング素子22a〜22fによりPWM制御可能に構成されたインバータ回路22によって回転制御することができる。ここで、位置検出素子27a〜27cが検出するロータ位置検出信号は制御部70に入力される。そして、制御部70は、ロータ位置検出信号に基づいてインバータ駆動回路21に制御信号を出力し、インバータ駆動回路21を介してスイッチング素子22a〜22fのオン、オフ状態をPWM制御する。このようにして、制御部70はステータの3相巻線3a、3b、3cに対する通電を制御し、ドラム駆動モータ3のロータを所望の回転速度で回転させる。なお、制御部70は、3つの位置検出素子27a、27b、27cのいずれかの信号の状態が変わるたびにその周期を検出し、その周期よりロータの回転速度を内部機能としての回転数検知部72によって算出する。
さらに、ドラム駆動モータ3に流れる電流信号を布量検知部73が検知してドラム1の重さつまり洗濯物の重量を判定する機能も有している。
【0047】
以上のように構成されたドラム式洗濯機について、以下、その動作および作用効果を、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0048】
洗濯機に洗濯物が投入されて洗濯が開始されると、制御部70の布量検知部73は、洗濯物の量を検出する(S1)。洗濯物の量の検出は、ドラム駆動モータ3を制御して、洗濯物とともにドラム1を回転させるときのドラム駆動モータ3の電流信号の大きさや、加速度、加速時間などを検出することによって行われる。
【0049】
基本的な給水量は、この洗濯物の量をもとに決定する。たとえば、布量検知部73が、洗濯物の量を「少」と判定した時は、制御部70は「低」水位のWL1を設定水位とする。布量検知部73が、洗濯物の量を「中」と判定した時は、制御部70は「中」水位のWL2を設定水位とする。また、布量検知部73が、洗濯物の量を「多」と判定した時は、制御部70は「高」水位のWL3を設定水位とする(S2)。
【0050】
次に、制御部70は、給水弁5を開放して(S3)、受筒2およびドラム1に設定水位になるまで給水を行う(S4)。
【0051】
次に、設定水位に到達すると(S4のYES)、給水弁5を閉じ(S5)、洗剤量判定部32が洗剤量を決定する(S6)。
【0052】
循環ポンプ12やドラム1を駆動してしまうと、洗剤が水に溶ける前に衣類が洗浄水を吸ってしまうため、洗剤量の判定は、これらを駆動させる前に実施することが望ましい。もしくは、洗剤を均一濃度にするために、洗浄水が衣類に吐出されないくらいの回転数で循環ポンプ12を駆動して、洗剤量を判定してもよい。
【0053】
洗剤量判定部32の判定結果が、所定値A以下の洗剤量であれば(S7のYES)、パラメータR(ドラム高速回転時の回転数)を300rpmとする(S8)。判定結果が所定値Aより多く、その1.2倍以下の洗剤量であれば(S9のYES)、パラメータRを200rpmとする(S10)。そうでなければ(S9のNO)、すなわち、判定結果が所定値Aの1.2倍より多い洗剤量であれば、パラメータRを150rpmとする(S17)。つまり、洗剤量判定部32が判定した洗剤量が少ないほど、パラメータRの値は大きいものとする。このようにすることで、洗剤量が多いときには高速回転の回転速度を低くして、ドラム駆動モータの消費電力を抑えることで、省エネルギー性能を高くすることができる。また、洗剤量が多いために洗剤濃度が高い状態で、ドラムの高速回転の回転速度を低くするので、異常発泡の発生を低減することができる。一方で、洗剤量が少ないときには、高速回転の回転速度を高くして、効率良く洗浄液を衣類の汚れに作用させ、洗浄力を高めることができる。
【0054】
次に、ドラム1内で洗濯物が張り付かない程度の低速でドラム1を回転する撹拌工程を開始する(S12)。ドラム1の回転速度は洗濯物がドラム1内で持ち上げられ、ドラム1の上部より重力によって落下し、落下時の運動エネルギーが効果的に加えられるようにドラム1壁面に遠心力によって張り付かない程度の回転速度である。このときの回転速度は、洗濯物の量にも依存するが50rpm以下が好ましい。回転方向は、同一方向でも、定期的に切り替えることとしてもよい。
【0055】
この時、制御部70により循環ポンプ12を制御して、洗剤が十分に溶けた洗浄水が循環水路11を介して吐出口10よりドラム1内へ循環する循環シャワーにより、洗浄水の洗濯物への浸透が促進される。このため、循環ポンプ12の回転数は、ドラム1内に循環水がしっかり吐出して洗濯物に洗浄水を浸透しやすくできる回転数とする。また、ドラム
1内の洗濯物は受筒2の内定部に溜まる洗浄水に浸漬している。ドラム1が回転することによって、洗濯物全体が繰り返し浸漬し、洗浄水の含水と脱水が繰り返されて、洗浄水の洗濯物への浸透が促進される。
【0056】
一定時間(例えば2分)経過した後(S13のYES)に、遠心力洗浄工程を行う(S14)。この時の回転速度は、上記設定したパラメータRの回転数にて高速で回転させる。
【0057】
高速にドラム1を回転させることで発生する遠心力によって、洗濯物はドラムの壁面方向に張り付いた状態となり、洗濯物が含んでいる水分は絞り出された後、ドラム1の透孔17を通過して受筒2側へ移動する。
【0058】
高速にドラム1を回転させる速度は、少なくとも、遠心力によって洗濯物が含んでいる水分が強制的に離脱することが十分可能な150rpm以上が好ましく、より好ましくは300rpm以上である。
【0059】
ただし、上記のように、洗剤量判定部32が判定した洗剤量に応じて回転数を変動させている。すなわち、洗剤量が多い(洗浄水の洗剤濃度が高い)ときには300rpmまで高速回転させず、洗濯物が含んでいる水分を離脱するのに最低限必要な150rpmにとどめ、モータ消費電力の少ない省エネ運転を行う。一方で、洗剤量が少ない(洗浄水の洗剤濃度が低い)ときには300rpmまで高速回転させて効果的に洗濯物に含まれる洗浄液の入れ替えを促進する。また、本高速回転を行う際の単位操作としては、連続的な一度の操作であっても短時間でON/OFFを行うような断続的に繰り返し行うものでも構わない。
【0060】
高速でドラム1を回転させる遠心力洗浄工程において、先に行われた撹拌工程時に、衣類繊維の汚れ物質に付着した、界面活性剤によってなる洗剤が含まれている衣類繊維近傍の洗浄水を遠心力によって除去する。これによって、繊維中から汚れ物質が洗浄水と共に効率良く除かれることが可能となる。さらに、高速回転時に洗浄水を循環ポンプ12によってドラム1内の洗濯物に向けて吐出することとすれば、汚れがまだ付着していない洗浄水が洗濯物に効果的に吸収されることにより、衣類繊維に含まれる洗浄水の入れ替わりを促進することができる。
【0061】
遠心力洗浄工程の時間は、洗濯物に含まれる洗浄水を絞り出すことができればよいため比較的短時間でよく、例えば30秒間だけ行うこととする(S15のYES)。
【0062】
続いて再びドラム1を低速で回転する撹拌工程を実施する(S16)。本工程ではS12の工程と同様に循環ポンプ12を起動させ、循環水路11を経由して吐出口10よりドラム1内へ吐出させる。この時、ドラム1は洗濯物が張り付かずドラム1内で転がる程度の回転数で回転し、循環ポンプ12を稼動させ吐出口10より洗浄水を吐出させるタイミングは連続であっても間欠であっても構わない。
【0063】
ドラム1を高速で回転させる工程の後、さらに継続して撹拌工程を行うことで、再び洗剤の化学力とドラム1の回転に伴う機械力によって繊維に残存していた汚れ物質もさらに剥ぎ取ることが可能となる。繊維間の洗浄水中の汚れ物質濃度が高い場合には、繊維への再付着が懸念されるが、洗剤の界面活性剤に付着して囲まれた汚れは再付着しにくく、汚れに付着していない界面活性剤のみが洗濯物に吸い付くので、洗剤の化学力を残った汚れに対して働かせることができる。
【0064】
その後、遠心力洗浄工程後の撹拌工程を開始してから5分経過したことをタイマ71が
確認すると(S17のYES)、ドラム1の回転を止めて洗い工程は終了する。
【0065】
遠心力洗浄工程の後の撹拌工程の時間は、残りの洗剤を洗濯物に十分に浸透させる時間があればよいため、布量にかかわらず特定の時間に固定している。1分演算や定数テーブルが少なくて済むため、制御部70の負荷を軽くすることができる。なお、本実施の形態では、遠心力洗浄工程後の撹拌工程を開始してから5分としたが、洗い工程の時間を規定し、洗い工程開始から規定時間が経過すると、遠心力洗浄工程後の撹拌工程を終了することとしてもよい。このようにすることで、洗い工程を不要に長くすることがない。
【0066】
以上のように、洗剤量判定部32が判定した洗剤量が多いほど遠心力洗浄工程におけるドラムの回転数を低くすることで、洗剤濃度の高い洗浄水が、洗濯物に含まれる洗浄水と入れ替わるだけの必要最低限のドラム駆動モータの消費電力で洗浄を行うことができる。このため、省エネルギー性の高い運転を実現することができる。一方、洗剤量判定部32が判定した洗剤量が少ないほど、遠心力洗浄工程におけるドラムの回転数を高くすることで、効果的に洗濯物に含まれる洗浄水の入れ替えを促進することができ、洗浄力を高めることができる。
【0067】
なお、本実施の形態においては、洗剤量検知手段として濁度センサ14から構成されるものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、水の導電率を検出する導電率センサから構成されるものとしてもよい。すなわち、洗剤が水と混ざり合って溶けた際に溶け出した成分に応じて水の導電率が変化することから、その変化率に応じて洗剤量を判定する構成とすることもできる。また、洗剤量判定部32は水の色度を検出する色度センサから構成されるものとしてもよい。すなわち、洗剤が水と混ざり合って溶けた際に溶け出した成分に応じて水の色度が変化することから、その変化率に応じて洗剤量を判定する構成とすることもできる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、遠心力洗浄工程(S14)を1回のみ実施する洗い工程を例示したが、これに限定されるものではない。たとえば、洗濯物量が多い場合に、遠心力洗浄工程(S14)と撹拌工程(S15)を交互に複数回繰り返すことで、ドラム高速回転の工程の頻度を増加させ、汚れをより強力に排出すことのできる洗浄工程とすることもできる。
【0069】
なお、上記の各実施の形態においては、洗濯機能のみ具備するドラム式洗濯機について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、洗濯した衣類を乾燥するための乾燥手段を備えてドラム乾燥機能を具備したドラム式洗濯乾燥機にも適用できる。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るドラム式洗濯機は、収容した洗濯物の量を検知する布量検知部73を備え、洗剤量判定部32は、布量検知部73が検知した洗濯物の量に応じて洗剤の量を決定するようにしたものである。すなわち、洗剤量判定部32は、洗濯に必要な洗剤の量を間接的に判定している。その他の構成は、本発明の実施の形態1と同様である。
【0071】
洗剤量判定部32は投入された洗濯物の量を検知する布量検知部73が検知した洗濯物量に応じて洗剤量を判定する。すなわち、洗濯物量に応じて推奨される洗剤量が洗剤の種類や銘柄によって決まっており、洗濯物量を検知すれば使用者が投入する洗剤量の目安が分かることから、布量検知部の検知結果に応じて洗剤量を判定する。このように、布量検知部73の出力から、間接的に洗剤量を判定することによって、新たに洗剤量検知手段を設ける必要がなく、低コストで洗剤量の判定を実現することができる。
【0072】
(実施の形態3)
本実施の形態に係るドラム式洗濯機は、収容した洗濯物の量を検知する布量検知部73と、洗剤自動投入装置を備え、洗剤量判定部32は、布量検知部73が検知した洗濯物の量に応じて洗剤の量を決定し、制御部70が決定された洗剤の量に応じた洗剤を洗剤自動投入装置により受筒へ供給するようにしたものである。すなわち、洗剤量判定部32は、自動的に投入される洗剤の量を決定している。その他の構成は、本発明の実施の形態1と同様である。
【0073】
洗剤量判定部32は投入された洗濯物の量を検知する布量検知部73が検知した洗濯物量に応じて洗剤量を決定する。すなわち、洗剤量判定部32は、投入する洗剤の量を検知したり、洗剤の量を推定したりすることなく、投入された洗剤の量が確実に判定できる。布量検知部の検知結果に応じて洗剤量を決定し、制御部70は、この洗剤量をもって遠心力洗浄工程におけるドラムの回転数を決定する。このように、洗剤自動投入装置を設けることで、高精度で洗剤量を判定することができる。よって、実際に投入された洗剤量に応じて、遠心力洗浄を行うことができ、省エネルギー性能の向上および洗浄力の確保ができる。
【0074】
(実施の形態4)
本実施の形態に係るドラム式洗濯機は、洗剤ケース18(洗剤投入部)の洗剤の重量を検知する洗剤投入部重量検知部33をさらに備え、洗剤量判定部32は、洗剤投入部重量検知部33が検知した洗剤の重量に応じて洗剤量を決定するようにしたものである。その他の構成は、本発明の実施の形態1と同様である。
【0075】
図4は、本発明の実施の形態4に係るドラム式洗濯機の概略構成を示す側面断面図である。洗剤ケース18の洗剤の重量を検知する洗剤投入部重量検知部33が備えられている。
洗剤ケース18に洗剤が投入されると、洗剤ケース18の重量を検知する洗剤投入部重量検知部33が洗剤の重量を検知する。検知された洗剤の重量によって、洗剤量判定部32が洗剤量を判定する。このように、投入された洗剤の重量に応じて変化する洗剤投入部の重量を直接検知して、洗剤量を判定するので、使用者によって投入された洗剤を直接重量で検知することができ、高精度で洗剤量を判定することができる。よって、実際に投入された洗剤量に応じて、遠心力洗浄を行うことができ、省エネルギー性能の向上および洗浄力の確保ができる。
【0076】
(実施の形態5)
本実施の形態に係るドラム式洗濯機は、入力設定部30を備え、洗剤量判定部32は、入力設定部30を介して設定された洗剤量に応じて洗剤の量を決定するようにしたものである。すなわち、洗剤量判定部32は、使用者の意向を反映した洗剤の量から、洗剤量判定している。その他の構成は、本発明の実施の形態1と同様である。
【0077】
使用者は入力設定部30を介して洗剤量を設定する。制御部70は、設定された洗剤量に応じて、遠心力洗浄の回転数を決定する。すなわち使用者が、投入する洗濯物の量や洗濯物の汚れ度合いから、自ら洗剤量の多少を判断して洗剤量を決定し、入力設定部30を介して、入力された洗剤量を洗剤量判定部32が判定する。このような構成によって、新たに洗剤量検知手段を設ける必要がなく、また判定時間を要することもないため、簡易な構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る洗濯機および洗濯乾燥機は、家庭用のドラム式の洗濯機または洗濯乾燥機だけでなく、家庭用の縦型洗濯機または縦型洗濯乾燥機や業務用のドラム式洗濯機またはドラム式洗濯乾燥機などにも広く好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ドラム
2 受筒
3 ドラム駆動モータ(ドラム駆動部)
4 給水口
5 給水弁
6 取水口
7 排水弁
8 排水管
9 水位センサ
10 吐出口
11 循環水路
12 循環ポンプ(含水手段)
13 排水フィルタ
14 濁度センサ
15 扉体
16 突起体
17 透孔
18 洗剤ケース(洗剤投入部)
19 給水配管
32 洗剤量判定部
33 洗剤投入部重量検知部
70 制御部
73 布量検知部
100 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容して回転するドラムと、
前記ドラムを収容する受筒と、
前記ドラムを駆動するドラム駆動部と、
洗剤の量を判定する洗剤量判定部を有し、前記洗剤量判定部の判定結果を基に、少なくとも洗い工程を逐次制御する制御部とを備え、
前記洗い工程が、
前記ドラム内で前記洗濯物が張り付かない程度の低速で前記ドラムを回転する撹拌工程と、
前記洗濯物が前記ドラムの壁面方向に張り付いた状態となる高速で前記ドラムを回転させ前記洗濯物から遠心力で洗浄水を排出する遠心力洗浄工程とを含み、
前記制御部は、前記洗剤量判定部が判定した前記洗剤の量が多いほど、前記遠心力洗浄工程における前記ドラムの回転数を低くするようにしたドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯物に前記洗浄水を含水させる含水手段をさらに備え、
前記含水手段は、前記遠心力洗浄工程において前記洗濯物に前記洗浄水を含水させるようにした請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記含水手段は、前記受筒の内底部に溜まった前記洗浄水に前記洗濯物の一部が浸漬することで含水することを特徴とする請求項2に記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
前記含水手段は、前記受筒の前記内底部に溜まる前記洗浄水を吸引して前記ドラム内の前記洗濯物に再び吐出する循環シャワーであることを特徴とする請求項2または3に記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
前記洗剤量判定部による前記洗剤の量の判定は、濁度、導電率、色度の少なくとも1つ以上のセンサを用いて行うようにした請求項1から4のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
収容した前記洗濯物の量を検知する布量検知部をさらに備え、
前記洗剤量判定部は、前記布量検知部が検知した前記洗濯物の量に応じて前記洗剤の量を判定するようにした請求項1から4のいずれか1項にいずれか記載のドラム式洗濯機。
【請求項7】
前記洗剤を投入するための洗剤投入部と、
前記洗剤投入部の前記洗剤の重量を検知する洗剤投入部重量検知部とをさらに備え、
前記洗剤量判定部は、前記洗剤投入部重量検知部が検知した前記洗剤の重量に応じて前記洗剤量を判定するようにした請求項1から4のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項8】
入力設定部をさらに備え、
前記洗剤量判定部は、前記入力設定部を介して設定された洗剤量に応じて前記洗剤の量を判定するようにした請求項1から4のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機と、洗濯した衣類を乾燥するための乾燥手段と、を含むドラム式洗濯乾燥機。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−56019(P2013−56019A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195814(P2011−195814)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】