説明

ドラム缶等容器のフランジの装着方法、および装着装置

【課題】ドラム缶等容器の天板のフランジ固定部にフランジを装着する方法で、フランジ筒部の高さの中央部の座屈を生じることなく、天板のフランジ固定部にフランジをしっかりと確実に装着する方法を提供する。
【解決手段】ドラム缶等容器の天板1のフランジ固定部10にフランジ2を、これの筒部上端部4aのカール工程の実施により装着する際に、フランジ2の筒部4の座屈が生じるおそれがある部分を、カール前に、座屈防止用割型21で内側より押えて支持しておき、この状態でフランジ筒部4の上端部4aのカール工程を実施することにより、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板1のフランジ固定部10にフランジ2をしっかりと確実に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム缶等容器のフランジの装着方法、および装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラム缶等容器の天板には、大小2つの圧入形フランジ(固定口金)が取り付けられ、これらのフランジには、プラグ(蓋)がそれぞれ被せ止められる。
【0003】
従来、この種のフランジをドラム缶等容器の天板に装着するには、まず天板を、これにあけられた円筒口部にフランジを下から圧入してセットした状態でプレス下型上に載置し、ついで、プレス上型を降下させて、これのカール駒部によって、フランジ筒部の上端部を上から押圧して外側に折返し状に屈曲変形せしめ、天板の円筒口部の上端部に巻き止めていた。
【0004】
本発明者は、先に、このようなドラム缶等容器のフランジの装着方法として、下記の特許文献に記載の方法を提案した。
【0005】
特許文献1および2に記載の方法は、いずれもドラム缶等容器のフランジ取付部を二重に密閉することができて、フランジのいわゆる外部ガスケットを確実に封入することができ、従来のような膨潤ガスケットのはみ出しによる内容物の漏洩事故が生じたり、あるいは気密性が損なわれたりするようなことがないドラム缶等容器のフランジの装着方法を提供するというものであった。
【特許文献1】特公平2−60415号公報
【特許文献2】特公平3−38010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のドラム缶等容器のフランジの装着方法によれば、プレス下型の上に載置した天板のフランジ固定部のフランジに対し、プレス上型を降下させて、これのカール駒部によって、フランジ筒部の上端部を屈曲変形せしめ、天板の円筒口部の上端部に巻き止める際に、フランジ筒部の高さの中央部が内方に座屈するという問題があった。
【0007】
そして、このような座屈がフランジの装着の際に生じると、フランジ筒部内側の雌ねじ部が変形するために、フランジに被せ止められるプラグの雄ねじ部と、フランジの雌ねじ部とのねじ合わせ不良が生じたり、フランジ外周のいわゆる外部ガスケットの収容部分の容積が、規定の容積よりも広くなってしまい、ガスケットの圧縮不良が生じて、いずれにしても、ドラム缶等容器の内容物の漏洩事故の原因や、あるいは気密性が損なわれる原因になるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、ドラム缶等容器の天板のフランジ固定部にフランジを装着する際に、フランジ筒部の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板のフランジ固定部にフランジをしっかりと確実に装着することができて、ドラム缶等容器の内容物の漏洩を生じることなく、優れた気密性を有していて、非常に安全性が高くかつ品質の良いドラム缶等容器の作製に寄与し得る、ドラム缶等容器のフランジの装着方法、および装着装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ドラム缶等容器の天板にフランジを装着する際、カール工程では、プレス上型を降下させ、これのカール駒部によって、フランジ筒部の上端部を上から押圧するために、フランジの底部がいわゆる支点となって、フランジ筒部の上端部を外側に折返し状に屈曲変形せしめると、フランジ筒部の高さの中央部は内方に必ず座屈するものであり、特に、上型のカール駒部の滑りが悪いとき、あるいはまたカール駒部内のいわゆるカール領域に対してこの領域に入り込む天板部分やフランジ筒部の上端部分のボリューム(容量)が天板やフランジの製作誤差により多くなったときなどには、より一層、カールによるフランジ筒部の座屈が生じやすいことを見出した。
【0010】
そして、このようなフランジの装着時のカールの際に必ず生じるフランジ筒部の高さの中央部の座屈を有効に防止するためには、カール工程においてフランジの筒部の座屈が生じるおそれがある部分を、カール前に、座屈防止用割型で内側より支持しておき、この状態でフランジ筒部の上端部のカール工程を実施することにより、フランジ筒部の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板のフランジ固定部にフランジをしっかりと確実に装着することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ドラム缶等容器の天板1を、これのフランジ固定部10にフランジ2をセットした状態でプレス下型20上に載置し、プレス上型30を降下させて、これのカール駒部31によって、フランジ筒部4の上端部4aを上から押圧して外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止めるドラム缶等容器のフランジの装着方法において、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21を設け、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33を設けておき、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1を、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置し、ついで、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33を降下させて、割型押開き部材33をフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込むことにより該割型21を拡開せしめ、拡開した割型21の外周部を、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめ、この状態で、プレス上型30をさらに降下させて、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aを上から押圧し、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5を内側から押えて支持しながら、フランジ2の筒部上端部4aを外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止めることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、ドラム缶等容器の天板1が、これのフランジ固定部10にフランジ2をセットした状態で載置されるプレス下型20と、フランジ取付用カール駒部31を有するプレス上型30とを備えているドラム缶等容器のフランジの装着装置において、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21が取り付けられ、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33が取り付けられており、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1が、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置され、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33が降下し、割型押開き部材33がフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込まれることにより該割型21が拡開せしめられ、拡開した割型21の外周部が、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめられ、この状態で、プレス上型30がさらに降下して、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aが上から押圧され、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5が内側から押えられて支持されながら、フランジ2の筒部上端部4aが外側に折返し状に屈曲変形せしめられて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止められるようになされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、ドラム缶等容器のフランジの装着方法において、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21を設け、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33を設けておき、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1を、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置し、ついで、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33を降下させて、割型押開き部材33をフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込むことにより該割型21を拡開せしめ、拡開した割型21の外周部を、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめ、この状態で、プレス上型30をさらに降下させて、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aを上から押圧し、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5を内側から押えて支持しながら、フランジ2の筒部上端部4aを外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止めるもので、請求項1の発明によれば、ドラム缶等容器の天板のフランジ固定部にフランジを装着する際に、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板のフランジ固定部にフランジをしっかりと確実に装着することができて、ドラム缶等容器の内容物の漏洩を生じることなく、優れた気密性を有していて、非常に安全性が高くかつ品質の良いドラム缶等容器の作製に寄与し得るという効果を奏する。
【0014】
請求項2の発明は、ドラム缶等容器のフランジの装着装置において、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21が取り付けられ、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33が取り付けられており、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1が、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置され、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33が降下し、割型押開き部材33がフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込まれることにより該割型21が拡開せしめられ、拡開した割型21の外周部が、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめられ、この状態で、プレス上型30がさらに降下して、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aが上から押圧され、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5が内側から押えられて支持されながら、フランジ2の筒部上端部4aが外側に折返し状に屈曲変形せしめられて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止められるようになされているもので、請求項2の発明によれば、ドラム缶等容器の天板のフランジ固定部にフランジを装着する際に、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板のフランジ固定部にフランジをしっかりと確実に装着することができて、ドラム缶等容器の内容物の漏洩を生じることなく、優れた気密性を有していて、非常に安全性が高くかつ品質の良いドラム缶等容器の作製に寄与し得るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
図1〜図3は、本発明のドラム缶等容器のフランジの装着方法を実施する装置の具体例を示すもので、工程順に示している。
【0017】
まず、図1において、本発明によるフランジの装着方法をドラム缶に適用した場合について説明する。
【0018】
ドラム缶用圧入形フランジ2の多角形状外周縁3aを有する鍔部3には、プレス加工により平面よりみて円形の環状突部6が上方突出状に設けられて、環状突部6とフランジ2の雌ねじ部5を有する筒部4との間にガスケット収容間隙7が形成され、このガスケット収容間隙7内にいわゆる外部ガスケット8が嵌め入れられる。
【0019】
このガスケット8としては、シリコンゴムよりなるガスケットをライニングにより取り付けるのが望ましいが、その他O−リング、断面角形の環状ガスケットを使用してもよく、あるいはまたドラム缶のいわゆるチャイム部分に封入するようなシーリング・コンパウンドを使用してもよい。
【0020】
一方、天板1には、これの所定位置に天板1より連設された水平断面多角形状の裾部11とこれの上縁より水平に伸びるように連なった環状段部12と、これの内縁より傾斜面部14を介して立上がり状に連なった円筒口部13とによって構成されたフランジ固定部10が形成されている。
【0021】
天板1のフランジ固定部10の円筒口部13の内側に、上記ガスケット8付フランジ2の筒部4を下から圧入し、プレスの下型20上に載置する。
【0022】
本発明によるフランジの装着方法において、プレス下型20には、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21が設けられている。
【0023】
すなわち、固定基台29に設置されたプレス下型20に、割型収容凹部24が設けられ、この凹部24内に、上方に突出した割型取付用係止突部26を有する取付基板25が収められ、この取付基板25上に、この実施の形態では、例えば16分割された割型部材21bよりなるフランジ座屈防止用割型21が載置されている。なおここで、フランジ座屈防止用割型21は、16分割されたものに限らず、例えば2個、3個、4個、6個、8個というように、複数個に分割されたものであればよい。
【0024】
16分割されたフランジ座屈防止用割型21は、これらの下端寄り部分の外周に嵌め被せられた平面よりみて環状でかつ径小のコイルばね23によって一体に結束されているとともに、割型21の各割型部材21bの下端部に、係止用内方突部22が内方突出状に設けられていて、これらの係止用内方突部22が、割型取付用係止突部26の基部に設けられた環状凹所27内に嵌め入れられて、各割型部材21bの係止用内方突部22が係止突部26に係り合わせられることにより、フランジ座屈防止用割型21が収容凹部24内の所定位置に保持されている。
【0025】
一方、プレス上型30は、昇降機体39の下面に設けられている。プレス上型30には、フランジ筒部上端部カール用駒部(カール用環状凹溝)31と、これより外側の環状押え突部32とが設けられている。
【0026】
また、プレス上型30の中央部には、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに、大径のコイルばね36によって下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33が設けられている。
【0027】
割型押開き部材33は、プレス上型30の中央部に設けられた支持壁部37から垂下軸34によって吊下げ状に保持されている。垂下軸34は、プレス上型30の支持壁部37にあけられた貫通孔38内に挿通され、貫通孔38より上方に突出した垂下軸34の上端部に掛止部35が水平状に設けられていて、この掛止部35が支持壁部37の上面に当接せしめられている。昇降機体39の下面と、プレス上型30の支持壁部37の上面との間には、掛止部35が収められかつ掛止部35および垂下軸34の一部の昇降を許容する空間部40が設けられている。
【0028】
そして、割型押開き部材33の上面と支持壁部37の下面との間に、垂下軸34に嵌め被せられた大径のコイルばね36が介在させられている。これによって、フランジ座屈防止用割型押開き部材33は、それ自体上下動自在となされているとともに、コイルばね36の弾発力により、常に下方に付勢されているものである。
【0029】
本発明の方法により天板1にフランジ2を装着するには、まず、フランジ2に、これの鍔部3に沿うようにガスケット8を取り付け、ドラム缶の天板1のフランジ固定部10の内側に、上記ガスケット8付フランジ2の筒部4を下から圧入してセットする。
【0030】
ついで、図1に示すように、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1を、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置する。このとき、フランジ座屈防止用割型21のテーパ状内周面21aが、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に対応するように配置されている。
【0031】
つぎに、図2に示すように、プレス上型30の降下(1次降下)と共に割型押開き部材33を降下させて、割型押開き部材33をフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込むことにより該割型21を拡開せしめ、拡開した割型21の外周部を、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめる。
【0032】
そして、この状態で、図3に示すように、プレス上型30をさらに降下(2次降下)させて、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aを上から押圧し、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5を内側から押えて支持しながら、天板1の円筒口部13の上端より上方に突出したフランジ2の筒部上端部4aを外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止める。
【0033】
そして、このように、フランジ2の筒部4の上端部4aを上型30のカール用駒部31の内面に沿わせて円筒口部13の上端部13aに巻き止めると同時に、上型30の環状突部6外周下縁の角部に対応する環状段部12と傾斜面部14との間の部分を、上型30の環状押え突部32によって該角部に沿うように上から押圧して屈曲せしめ、該屈曲部において天板素材の弾発復元力により、環状殴部12の外周縁内面を鍔部3の外周縁部の上面に、傾斜面部14の下縁内面を環状突部6の上端部にそれぞれ密着せしめるものである。
【0034】
ここで、図3に示すように、上型30の環状押え突部32によって押圧変形せしめられた天板1の環状段部12と傾斜面部14との間の屈曲部は、天板素材の弾発復元力(いわゆるスプリングパック)により押圧変形前の傾斜状態に戻ろうとする力が常に作用することになるので、この屈曲部の一側において環状段部12の外周縁内面が鍔部3の外周縁に、同他側において傾斜面部14の下縁内面が環状突部6の上端部外周縁にそれぞれしっかりと押え付けられることになり、気密性が保持されるものである。
【0035】
ところで、従来は、ドラム缶の天板1にフランジ2を装着する際、カール工程では、プレス上型30を降下させ、これのカール駒部31によって、フランジ筒部4の上端部4aを上から押圧すると、フランジ2の底部がいわゆる支点となって、フランジ筒部4の上端部4aが外側に折返し状に屈曲変形せしめられるために、フランジ筒部4の高さの中央部が内方に、ほとんどの場合、座屈を生じていた。そして特に、上型30のカール駒部31内面の滑りが悪いとき、あるいはまたカール駒部31内のいわゆるカール領域に対してこの領域に入り込む天板部分やフランジ筒部4の上端部分のボリューム(容量)が天板やフランジの製作誤差により多くなったときなどには、より一層、カールによるフランジ筒部4の座屈が生じやすかった。
【0036】
ところが、本発明の方法によれば、このようなフランジ2の装着時のカールの際に生じるフランジ筒部4の高さの中央部の座屈を有効に防止するために、カール工程においてフランジ2の筒部4の座屈が生じるおそれがある部分を、カール前に、座屈防止用割型21で内側より支持しておき、この状態でフランジ筒部4の上端部4aのカール工程を実施するものであるから、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板1のフランジ固定部10にフランジ2をしっかりと確実に装着することができるものである。
【0037】
従って、本発明の方法によれば、例え、上型30のカール駒部31内面の滑りが悪いとき、あるいはまたカール駒部31内のいわゆるカール領域に対してこの領域に入り込む天板部分やフランジ筒部4の上端部分のボリューム(容量)が天板やフランジの製作誤差により多くなったような場合でも、カール工程においてフランジ2の筒部4の座屈が生じるおそれがある部分を、カール前に、座屈防止用割型21で内側より支持した状態でフランジ筒部4の上端部4aのカール工程を実施するものであるため、ドラム缶の天板1のフランジ固定部10にフランジ2を装着する際に、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じることが全くなく、天板1のフランジ固定部10にフランジ2をしっかりと確実に装着することができるものである。
【0038】
本発明の方法によって装着されたフランジ2を具備する天板1を用いて作製されたドラム缶によれば、容器内容物の漏洩を生じることなく、優れた気密性を有しており、非常に安全性が高くかつ品質の良いドラム缶の作製に寄与し得るものである。
【0039】
なお、本発明によるドラム缶のフランジの装着装置は、上記のように、ドラム缶の天板1が、これのフランジ固定部10にフランジ2をセットした状態で載置されるプレス下型20と、フランジ取付用カール駒部31を有するプレス上型30とを備えている。
【0040】
そして、図1に示すように、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21が取り付けられ、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33が取り付けられている。
【0041】
プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1が、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置される。
【0042】
ついで、図2に示すように、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33が降下し、割型押開き部材33がフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込まれることにより該割型21が拡開せしめられ、拡開した割型21の外周部が、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめられる。
【0043】
この状態で、図3に示すように、プレス上型30がさらに降下して、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aが上から押圧され、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5が内側から押えられて支持されながら、フランジ2の筒部上端部4aが外側に折返し状に屈曲変形せしめられて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止められるようになされているものである。
【0044】
本発明によるドラム缶のフランジの装着装置によれば、同様に、ドラム缶の天板1のフランジ固定部10にフランジ2を装着する際に、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じることなく、天板1のフランジ固定部10にフランジ2をしっかりと確実に装着することができるものである。
【0045】
本発明のドラム缶のフランジの装着装置によって装着されたフランジ2を具備する天板1を用いて作製されたドラム缶によれば、容器内容物の漏洩を生じることなく、優れた気密性を有しており、安全性が非常に高くかつ品質の良いドラム缶の作製に寄与し得るものである。
【0046】
なお、上記実施の形態においては、フランジ2の鍔部3の環状突部6がプレス加工により形成されており、環状突部6に対応して鍔部3の裏側に環状凹溝が形成されているが、鍔部3を上からプレス加工することにより環状突部6だけを形成して環状凹溝を形成しない場合もある。また、プレス加工によることなく、その他素材の切削加工により鍔部3の上面に環状突部6を形成してもよい。
【0047】
また、フランジ2の筒部4の内面には雌ねじ部5を切削加工により設けているが、このような雌ねじ部5は転造により設けても勿論よい。
【0048】
なお、ガスケット8としてはライニング・ガスケットを用いれば、その取付け作業が非常に簡単であるし、またガスケット8のライニング作業のさい、環状突部6の存在により液状のガスケット素材が流れ落ちず、作業が行ないやすいという利点がある。さらにガスケット8としてシーリングコンパウンドを使用した場合にも同様の利点がある。またガスケット8としては、その他エラストマーまたは合成樹脂等によって作製された通常の環状ガスケットを使用しても勿論よい。
【0049】
また、図示のものは、フランジ座屈防止用割型21が、複数個に分割された割型部材21bの下端寄り部分に嵌め被せられた1本の環状コイルばね23によって開閉自在(拡開・縮小自在)に一体に結束されているが、このような割型21の割型部材21bの開閉自在な一体結束手段は、その他の手段であってもよい。
【0050】
また、プレス上型30に設けられたフランジ座屈防止用割型押開き部材33は、コイルばね36によって下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされているが、割型押開き部材33の下方付勢手段としては、その他、板ばね、あるいはまた油圧シリンダ、エアシリンダ等の付勢手段を用いることもできる。さらに、割型押開き部材33のそれ自体の上下動手段も、図示の構造のものに限定されず、その他の構造の上下動手段を用いてもよい。
【0051】
ところで、本発明によるドラム缶等容器のフランジの装着方法は、本発明者が先に提案した、特公平2−60415号公報に記載の方法により、ドラム缶等容器の天板にフランジを装着する場合にも、同様に、適用されるものである。
【0052】
すなわち、図示は省略したが、本発明者の先提案による特公平2−60415号公報に記載の方法は、ドラム缶等容器用フランジ2の多角形状外周縁3aを有する鍔部3に平面よりみて円形の上向き環状突部6を設けて、環状突部6とフランジ2の筒部4との間にガスケット収容間隙7を形成し、このガスケット収容間隙7内にガスケット8を嵌め入れる点は、上記実施の形態の場合と同様であるが、先提案の方法では、ドラム缶等容器の天板1に連設せられた水平断面多角形状の裾部11と、これの上縁より水平に伸びるように連なった環状段部12と、これの内縁より傾斜面部14を介して立上がり状に連なった円筒口部13とによって構成されたフランジ固定部10の傾斜面部14に、ガスケット収容間隙7内に上から入り込む平面よりみて円形の下向き環状突部(図示略)を先に設けておく。
【0053】
そして、フランジ固定部10の内側に、上記ガスケット8付フランジ2を下から圧入し、このフランジ2の筒部4の上端部4aを円筒口部13の上端部13aに巻き止めるとともに、傾斜面部14の下向き環状突部(図示略)をガスケット収容間隙7に上から入り込ませて、該下向き環状突部によりガスケット8を上から押え付けるとともに、環状突部6外周下縁の角部に対応する環状段部12と傾斜面部14との間の部分を、該角部に沿うように上から押圧して屈曲せしめ、屈曲部において、やはり天板素材の弾発復元力により、環状段部12の外周縁内面を鍔部3の外周縁部の上面に、傾斜面部14の下縁内面を環状突部6の上端部にそれぞれ密着せしめるものである。
【0054】
このような本発明者による先提案のフランジの装着方法においても、プレス上型30を降下させて、これのカール駒部31によって、フランジ筒部4の上端部4aを上から押圧して外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止める際に、本発明の方法により、フランジ筒部4の高さの中央部に座屈を生じるのを、有効に防止することができるものである。
【0055】
すなわち、上記本発明者による先提案のフランジの装着方法において、前述の実施の形態の場合と同様に、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21を設け、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33を設けておき、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1を、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置する。
【0056】
ついで、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33を降下させて、割型押開き部材33をフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込むことにより該割型21を拡開せしめ、拡開した割型21の外周部を、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめる。
【0057】
そして、この状態で、プレス上型30をさらに降下させて、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aを上から押圧し、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5を内側から押えて支持しながら、フランジ2の筒部上端部4aを外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止めれば、よいものである。
【0058】
なお、上記のように、ドラム缶用フランジ2の鍔部3に平面よりみて円形の環状突部6を上方突出状に設けて、環状突部6とフランジ2の筒部4との間にガスケット収容間隙7を形成し、このガスケット収容間隙7内にガスケット8を嵌め入れると、ガスケット8のはみ出しがなく、フランジのいわゆる外部ガスケット8を確実に封入することができて、膨潤ガスケットのはみ出しによる内容物の漏洩事故が生じたり、あるいは気密性が損なわれたりするようなことがないので、好ましいが、このような平面よりみて円形の上方突出状の環状突部6を、ドラム缶用フランジ2の鍔部3に設けない場合もある。
【0059】
さらに、上記の本発明の実施形態では、プレス上型30に環状押え突部32が設けられているが、このような環状押え突部32をプレス上型30に設けない場合もある。
【0060】
というのは、通常、ドラム缶用フランジ2の鍔部3の多角形状外周縁3aは、ドラム缶の天板1のフランジ固定部10に取り付ける大小2個のフランジ2のうち、大きい方のフランジ2では、正八角形を有し、小さい方のフランジ2では、正六角形を有している。他方、天板1に連設されたフランジ固定部10の水平断面多角形状の裾部11は、これに対応するように、天板1の大きい方のフランジ固定部では、裾部11が正八角形を有し、小さい方のフランジ固定部では、裾部11が正六角形を有している。
【0061】
そして、天板1のフランジ固定部10の円筒口部13の内側に、ガスケット8付フランジ2の筒部4を下から圧入した際、通常は、フランジ2の鍔部3の多角形状外周縁3aが、天板1側のフランジ固定部10の水平断面同じ多角形状の裾部11に内側から嵌まり込んで、回転不可能に取り付けられ、フランジ2の筒部上端部4aが、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止められることにより、フランジ2が天板1側のフランジ固定部10にしっかりと取り付けられ、従って、プレス上型30には、上記のような環状押え突部32を設けない場合もある。
【0062】
なお、本発明のフランジの装着方法は、ドラム缶の他にガロン缶等の同種の容器にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明によるフランジの装着方法を実施する装置の具体例を示すもので、プレス下型上に、フランジがセットされた天板を載置した状態の縦断面図である。
【図2】同縦断面図で、プレス上型の1次降下により、これに取り付けられた割型押開き部材によってフランジ座屈防止用割型を拡開した状態を示している。
【図3】同縦断面図で、プレス上型のさらなる2次降下により、拡開したフランジ座屈防止用割型によってフランジ筒部の雌ねじ部を内側から押えて支持しながら、フランジの筒部上端部を巻き止める状態を示している。
【符号の説明】
【0064】
1:天板
2:フランジ
3:鍔部
3a:多角形状外周縁
4:筒部
4a:上端部
5:雌ねじ部
6:環状突部
7:ガスケット収容間隙
8:ガスケット
10:フランジ固定部
11:水平断面多角形状裾部
12:環状段部
13:円筒口部
13a:上端部
14:傾斜面部
20:プレス下型
21:フランジ座屈防止用割型
21a:テーパ状内周面
21b:割型部材
22:係止用内方突部
23:コイルばね
24:収容凹部
25:取付基板
26:割型取付用突部
27:環状凹所
29:固定基台
30:プレス上型
31:カール用駒部(カール用環状凹溝)
32:環状押え突部
33:割型押開き部材
33a:テーパ状外周面
34:垂下軸
35:掛止部
36:コイルばね
37:支持壁部
38:貫通孔
39:昇降機体
40:空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム缶等容器の天板1を、これのフランジ固定部10にフランジ2をセットした状態でプレス下型20上に載置し、プレス上型30を降下させて、これのカール駒部31によって、フランジ筒部4の上端部4aを上から押圧して外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止めるドラム缶等容器のフランジの装着方法において、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21を設け、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33を設けておき、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1を、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置し、ついで、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33を降下させて、割型押開き部材33をフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込むことにより該割型21を拡開せしめ、拡開した割型21の外周部を、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめ、この状態で、プレス上型30をさらに降下させて、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aを上から押圧し、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5を内側から押えて支持しながら、フランジ2の筒部上端部4aを外側に折返し状に屈曲変形せしめて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止めることを特徴とする、ドラム缶等容器のフランジの装着方法。
【請求項2】
ドラム缶等容器の天板1が、これのフランジ固定部10にフランジ2をセットした状態で載置されるプレス下型20と、フランジ取付用カール駒部31を有するプレス上型30とを備えているドラム缶等容器のフランジの装着装置において、プレス下型20に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状内周面21aを有するフランジ座屈防止用割型21が取り付けられ、プレス上型30に、下方に向かって漸次径小となるテーパ状外周面33aを有するとともに下方に付勢されかつそれ自体上下動自在となされたフランジ座屈防止用割型押開き部材33が取り付けられており、プレス下型20の上に、セットされたフランジ2を具備する天板1が、フランジ2の筒部4の内側にフランジ座屈防止用割型21が嵌め入れられた状態に載置され、プレス上型30の降下と共に割型押開き部材33が降下し、割型押開き部材33がフランジ座屈防止用割型21の内部に上から押し込まれることにより該割型21が拡開せしめられ、拡開した割型21の外周部が、フランジ筒部4内周面の雌ねじ部5に当接せしめられ、この状態で、プレス上型30がさらに降下して、プレス上型30のカール駒部31によってフランジ2の筒部上端部4aが上から押圧され、前記拡開した割型21によってフランジ筒部4の雌ねじ部5が内側から押えられて支持されながら、フランジ2の筒部上端部4aが外側に折返し状に屈曲変形せしめられて、天板1の円筒口部13の上端部13aに巻き止められるようになされていることを特徴とする、ドラム缶等容器のフランジの装着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−285691(P2009−285691A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141109(P2008−141109)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(593038826)大和システム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】