説明

ドリップ吸収台紙

【課題】魚介類、生肉、青果類等の生鮮食品から滲出するドリップを表面に残すことなく内部の吸液層に完全に吸収させることにより、生鮮食品の鮮度低下を防止すると共に、高い剛性を有することにより、台紙自体が変形し難く、これにより包装等の作業性の向上と商品の見栄えの良化を図ったドリップ吸収台紙を提供する。
【解決手段】少なくとも表層11、中層12、裏層13の3層以上の紙基材からなる多層抄き板紙を用い、生鮮食品15が載置される前記紙基材の表裏いずれかの片面に樹脂層16を設け、且つ該樹脂層側から少なくとも該片面樹脂層を貫通させた孔17hを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍魚介類、生肉、青果類等の生鮮食品の解凍時または保存中に生じる余剰水分や血汁等(以下、総称して「ドリップ」という)を吸収し、その鮮度を保持するために使用されるドリップ吸収台紙に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍したマグロ等の魚介類を解凍したり、低温保管(チルド状態に)したり、生肉等を低温保存したりする場合、これらの生鮮食品からドリップが滲出し、これにより品質劣化や見栄えの悪化を招くことから、ドリップ吸収台紙をこれらの生鮮食品の下に敷いてこのドリップを吸収することが行われる。
【0003】
従来、このドリップ吸収台紙として、紙あるいは不織布などの吸液層のみで構成したものが知られているが、このようなドリップ吸収台紙は、吸収性は確保できるが、吸液層に吸収されたドリップが目視できるため、商品の外観を低下させるという欠点があった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1には、紙・不織布、プラスチックフィルム等の紙基材の上面に微小な凹凸を有する多孔状表面シートを設けてなるドリップ吸着マットすなわちドリップ吸着台紙が提案されている。また、前記同様の紙基材の上面にポリアクリル酸塩等からなる吸収性樹脂を塗布してなるドリップ吸収台紙も公知である。
【0005】
しかしながら、このような紙基材、とくにプラスチックフィルム紙基材、あるいは、表面に吸液性樹脂を塗布してなる紙基材からなるドリップ吸収台紙では、ドリップがフィルムの表面、あるいは吸液性樹脂の表面に溜まり易く、これにより生鮮食品の鮮度が低下するため、長時間の保存には適さない。また、消費者が見たときに食品の鮮度が実際より低下しているような印象を与える欠点がある。
【0006】
上記理由から、最近では、例えば特許文献2に開示されているように、不織布やクレープ紙等の吸収性の高い紙基材に孔開け加工を行なったフィルムを貼り合わせる方法が主流となっており、紙基材の剛性とドリップの裏面層への浸漬を防止するためコートボールを使用してなる吸収台紙が多く用いられている。しかしながら、このような構成のドリップ吸収台紙は、吸液層と使用している不織布またはクレープ紙の剛度が低いことにより、台紙全体の剛度が低下し、このため鮮魚や生肉等の生鮮食品をこのドリップ吸収台紙に載せて包装する際に、ドリップ吸収台紙が変形して、加工作業性を低下させるという欠点があった。また、鮮度を長く保つために真空パック包装がされるが、その際にドリップ吸収台紙に外力がかかるため、ドリップ吸収台紙が変形し、これによりドリップ吸収台紙を載せた商品の見栄えが悪くなるという欠点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−44802号公報
【特許文献2】特開2000−16463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、魚介類、生肉、青果類等の生鮮食品から滲出するドリップをドリップ吸収台紙の表面に残すことなく内部の吸液層に完全に吸収させることにより、生鮮食品の鮮度低下を防止すると共に、高い剛性を有することにより、台紙自体が変形し難く、これにより包装等の作業性の向上と商品の見栄えの良化を図ったドリップ吸収台紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、少なくとも表層、中層、裏層の3層以上の紙基材からなる多層抄き板紙を用い、生鮮食品が載置される前記紙基材の表裏いずれかの片面に樹脂層を設け、且つ該樹脂層側から少なくとも該片面樹脂層を貫通させた孔を有することを特徴とするドリップ吸収台紙を提供することにより達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記樹脂層は不透明な樹脂フィルムを前記紙基材の表裏いずれかの片面に接着剤で貼着してなっていることを特徴とするドリップ吸収台紙を提供することにより効果的に達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、前記紙基材は、密度が0.40〜0.75g/cmであり、且つ前記表層及び前記裏層は強サイズ層、前記中層は吸液層となっていることを特徴とするドリップ吸収台紙を提供することにより効果的に達成される。
【0012】
また、本発明の上記目的は、前記樹脂層を設ける面の付け量が30〜100g/m、前記樹脂層を設ける面と反対側の面の付け量が80〜180g/m、前記中層の付け量が300〜500g/mであることを特徴とするドリップ吸収台紙を提供することにより効果的に達成される。
【0013】
また、本発明の上記目的は、前記表層及び前記裏層のコッブサイズ度が20〜100g/m、前記中層のコッブサイズ度が500〜1500g/mであることを特徴とするドリップ吸収台紙を提供することにより効果的に達成される。
【0014】
さらにまた、本発明の上記目的は、前記樹脂層の孔がスリット孔加工であって、孔深さが125〜1075μmであることを特徴とするドリップ吸収台紙を提供することにより効果的に達成される。
【発明の効果】
【0015】
上記構成からなる本発明によれば、表層又は裏層のいずれかの片面に樹脂層を設け、この表面に吸液性を確保するために孔加工を施し、この孔の大きさを調整することにより、魚介類、生肉、青果類等の生鮮食品から滲出するドリップを表面に残すことなく内部の吸液層に完全に吸収させることができ、これにより生鮮食品の鮮度低下を防止することができる。
【0016】
また、本発明によれば、紙基材自体に剛性が付与されるので、生鮮食品をこのドリップ吸収台紙に載せて包装する際に変形することがなく、これにより作業性が向上すると共に見栄えの良い商品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るドリップ吸収台紙(以下、単に「吸収台紙」という)について、実施の形態に基づき詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【0018】
以下に説明するように、本吸収台紙は、少なくとも表層、中層、裏層からなる3層以上の紙基材からなる多層抄き板紙を用い、この1枚の板紙に、ドリップ吸収とドリップ抜け防止の2つの機能を持たせたものであって、吸液層と裏面からのドリップ抜け防止層を別の用紙で構成してなる従来の吸収台紙とは構成が本質的に異なっている。1層抄きの板紙では、吸液層または裏面からのドリップ抜け防止層のいずれかの機能しか持たせることができないのに対し、多層抄きの本吸収台紙によれば、上記の2つの機能を1枚の板紙に付与することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収台紙10断面図である。図示するように、本吸収台紙10では、表層11、中層12、裏層13からなる紙基材14の表面、すなわち生鮮食品15が載置される表層11の表面に樹脂層16が設けられ、この樹脂層16の表面にスリット孔加工17が施されており、生鮮食品15から滲出するドリップ15dが紙基材14の表面に残らないように構成されている。これにより生鮮食品15の鮮度劣化が防止される。
【0020】
なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも、樹脂層16を表層11の表面に設ける場合であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、この樹脂層16を裏層13の表面であってもよい。すなわち、本発明に係る吸収台紙10は、生鮮食品15が陳列あるいは包装等の目的で直に載置され、あるいは接触する面であれば紙基材14の表裏いずれの面に樹脂層16を設けてもよい。
【0021】
本吸収台紙10では、上述したように上記の2つの機能を1枚の紙基材14に付与するため、樹脂層16を設ける層(本実施形態では表層11)と設けない層(本実施形態では裏層13)の両方に、夫々強サイズ層11s、13sが設けられ、この中間層すなわち中層12には吸液層12aが設けられている。
【0022】
このように強サイズ層11sを樹脂層16を含む表層11に設けると、樹脂層16を紙基材14の表面に貼り合わせる際に、使用する接着剤18が紙基材14の表面に沈むことがなく、これにより両者を強固に接着することができる。
【0023】
また、強サイズ層13sを樹脂層16とは反対側の裏層13に設けると、中間の吸液層12aで吸収したドリップ15dがこの裏層13から抜けることがなく、これにより生鮮食品15の鮮度低下を防止することができ、また、商品の見栄えを良くすることができる。
<原料・薬品>
本吸収台紙10の表層11、中層12、裏層13で使用される原料パルプには、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプ、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻等非木材パルプを主原料として化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを柔らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ等が、またクラフトパルプ、セミケミカルパルプ、酵素漂白パルプを含むオフィス上物古紙を脱墨、漂白したパルプ、牛乳パック古紙上質断裁落ち古紙、コート断裁落ち古紙、上白、特白、中白等未印刷、地券、新段、新聞、クラフト封筒、模造、雑誌古紙から得られる回収パルプ等が挙げられる。
【0024】
なお、食品用途として使用されるため、蛍光染料と夾雑物の問題から、古紙は配合しない方が好ましい。また、見栄えの点から未晒パルプは使用されないことが多い。
【0025】
本吸収台紙10においては、剛性と吸収性の面から、針葉樹晒クラフトパルプと広葉樹晒クラフトパルプを混合して配合し、その配合率を、針葉樹晒クラフトパルプ80〜20%、広葉樹晒クラフトパルプ20〜80%としたものが好ましい。
【0026】
本吸収台紙10の表層11、中層12、裏層13に配合される薬品には、表層11と裏層13にカチオン化澱粉とサイズ剤が、中層12にカチオン化澱粉が使用される。
【0027】
また、このサイズ剤には、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、弱酸性ロジンエマルジョンサイズ剤が一般的に使用され、コッブサイズ度(2分)で20〜40g/mが確保できれば、上述したサイズ剤を適宜変更しても良い。
<抄紙>
本吸収台紙10における紙基材14の密度(シート密度)は0.40〜0.75g/cmとすることが好ましく、さらに好ましくは0.55〜0.75g/cm、最も好ましくは0.55〜0.70g/cmである。この密度が0.40g/cm未満になると、ドリップの吸収性能は確保されるが、紙厚が巾方向及び流れ方向で均一にならないため、樹脂層16と紙基材14とを接着させた際に接着されない部分が発生する。一方、この密度が0.75g/cmを超えると、紙基材14の表面にドリップ15dが溜まって生鮮食品15の鮮度低下をきたし、また、樹脂層16の表面に膨れが発生して商品の見栄えが悪くなるので好ましくない。
【0028】
樹脂層16を貼り合わせる面の付け量は30〜100g/mとすることが好ましく、さらに好ましくは30〜80g/m、最も好ましくは30〜60g/mである。この付け量が30g/m未満になると、巾方向及び流れ方向に均一な強サイズ層11sを施すことができなくなり、樹脂層16との接着性が悪くなる。一方、この付け量が100g/mを超えると、吸液性を確保するために行なうスリット孔加工17のスリット孔17hの深さを深くする必要があり、これにより加工作業性が低下すると共に、付け量が30〜100g/mで得られた吸収性能が確保できなくなるので好ましくない。
【0029】
また、紙基材14の樹脂層16を設ける面と反対側の面の付け量は80〜180g/mとすることが好ましく、さらに好ましくは90〜160g/m、最も好ましくは90〜150g/mである。この付け量が80g/m未満になると樹脂層16から吸収したドリップ15dがこの反対側の面に浸漬し、付け量が少なくなるに従って抜け易くなる。一方、この付け量が180g/mを超えると、樹脂層16とこの反対側の面からのドリップ15dの抜けは無くなるが、吸液層12aの厚みが薄くなるため、吸液層12aでのドリップ15dの吸収性が低くなり、これによりドリップ15dが紙基材14の表面に残って生鮮食品15の鮮度低下をきし、また、樹脂層16の面からの見栄えが悪くなるので好ましくない。
【0030】
また、吸液層12aである中層12の付け量は300〜500g/mとすることが好ましく、さらに好ましくは350〜450g/m、最も好ましくは350〜400g/mである。この付け量が300g/m未満になると、吸液層12aでのドリップ吸収量不足により、紙基材14の裏面にドリップ15dが抜け、見栄えを悪くする。一方、この付け量が500g/mを超えると、樹脂層16の接着性及び裏面へのドリップ15dの抜け防止を目的として吸液層12aの上下層に強サイズ層11s、13sが120〜250g/m配合されていることから、紙基材14の剛性が高くなり、これにより生鮮食品15を真空パックに包装する等の作業がし難くなるので好ましくない。
【0031】
強サイズ層11s及び13sである表層11及び裏層13のコッブサイズ度(2分コッブ)は20〜100g/mとすることが好ましく、さらに好ましくは20〜70g/m、最も好ましくは20〜30g/mである。このコッブサイズ度が20g/未満になると、樹脂層16との接着性及び裏面からのドリップ15dの抜けは確保できるが、吸液層12aへのドリップ吸収速度が著しく悪くなる傾向がある。一方、このコッブサイズ度が100g/mを超えると、吸液層12aに吸収されたドリップ15dを保持することができ難くなり、これにより裏面層への吸収を促進させることになり、必要とする剛度が確保でき難くなるので、好ましくない。
【0032】
また、吸液層12aである中層12のコッブサイズ度(2分コッブ)は500〜1500g/mとすることが好ましく、さらに好ましくは700〜1500g/m、最も好ましくは1000〜1200g/mである。このコッブサイズ度が500g/m未満になると、裏層13へのドリップ15dの抜けが発生する。一方、このコッブサイズ度が1500g/mを超えると、ドリップ吸収性が高くなり過ぎることにより、ドリップ吸収後の剛性が無くなり、袋詰め等の作業が悪くなるので好ましくない。
<加工>
本吸着台紙10における樹脂層16は、樹脂フィルムを接着剤18で紙基材14と貼り合せて設けることが好ましい。
【0033】
この樹脂フィルムには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなるフィルムが使用される。
【0034】
このフィルムは、黒色あるいは紺色等の不透明性の高い色を有するものであることが好ましい。このように、樹脂層16を吸液性を有さない不透明なシートで構成すると、本吸収台紙10に生鮮食品15を載せた際に、ドリップ15dの色が樹脂層16を通して表面に見えることを防止することができ、これにより商品の見栄えを良くすることができる。
【0035】
なお、樹脂層16を紙基材14に樹脂を直接塗布することにより設けることも可能ではあるが、ドリップ吸収度及び台紙の剛性の点で、あまり好ましいものではない。
【0036】
樹脂フィルムを紙基材14に貼着するために用いられる接着剤18には、酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルアミド等の水系の熱可塑性樹脂が使用される。
【0037】
樹脂層16の表面には、樹脂層16を貫通する孔が深さ125〜1075μmをもってスリット孔加工により施されている。このスリット孔17hはスリット状に限らずホール状でもよい。なお、このスリット孔17hは、孔面積が0.03〜0.05mm、100mm×100mm当り22.5〜37.5mm、カット長が1mm、タイ長が0.5mm、スリット間隔が5mmであることが好ましい。カット長、タイ長、スリット間隔、孔深さをこのような数値に設定することにより、ドリップ15dの吸収性及びドリップ台紙の剛性を確保することができるので、好ましい。
【0038】
とくに、スリット孔17hの深さを125μm未満にすると、スリット孔17hが吸液層12aまで到達しないため、ドリップ15dの吸収性が悪くなり、紙基材14の表面にドリップ15dが溜まって樹脂層16に膨れを発生し、一方、このスリット孔17hの深さを1075μmを超えた値に設定すると、ドリップ15dの裏層13への抜けを生じるので好ましくない。
【0039】
さらに付言すれば、このスリット孔17hについては、ドリップ吸収性と裏層13へのドリップ15dの抜けの面から、樹脂層16側(表層11)の樹脂層16ないし接着剤18を貫通していることが好ましく、さらに強サイズ層11sについては貫通していることが好ましくないし最も好ましく、中層12の吸液層12aについては吸液層12a厚の1/3〜貫通が好ましく、最も好ましくは2/3〜貫通であり、また裏層13の強サイズ層13sについては、無孔〜1/2とすることが好ましく、さらに好ましくは無孔〜1/4、さらに好ましくは無孔である。
【0040】
本吸収台紙10の吸収量(15分コッブサイズ度)は、300g/m以上が好ましく、さらに好ましくは300g/m〜400g/m未満、最も好ましくは500g/m以上である。この吸収量が300g/m未満になると、樹脂層16と紙基材14にドリップ15dが溜まり、膨れが発生し、あるいは強サイズ層11sからドリップ15dが溢れ出して端面から吸液層12aに浸透するので好ましくない。
【0041】
また、剛度(縦)は、50mN・m以上であることが好ましく、さらに好ましくは80mN・m以上、最も好ましくは100mN・m以上である。この剛度(縦)が50mN・m未満になると、ドリップ吸収後の剛性が弱くなり、吸収台紙10に載せた生鮮食品15を包装する際に吸収台紙10が変形し、商品の見栄えを損なわせることになるので、好ましくない。
【0042】
さらにまた、吸収後のテーバー剛度(縦)は10mN・m以上であることが好ましく、さらに好ましくは15mN・m以上、最も好ましくは20mN・m以上である。このテーバー剛度(縦)が10mN・m未満であると、袋詰め等の加工作業が悪くなるので好ましくない。
【0043】
なお、本発明に係る吸収台紙10は、図1に示した層構成のものに限定されるものではなく、例えば図2(A)〜(C)、あるいは、図3(D)〜(G)に示すような層構成のものであってもよく、場合によっては、図4(H)〜(K)に示すような層構成のものも適用が可能である。
【0044】
図2に示す層構成は、樹脂層16を設ける、すなわち吸液性を有さない不透明シートを接着剤18で貼着する表層11(強サイズ層11s)が1層である場合の例であって、(A)は裏層13(強サイズ層13s)が少なくとも2層の場合、(B)は中層12(吸液層12a)が少なくとも2層の場合、(C)は中層12(吸液層12a)と裏層13(強サイズ層13s)とが夫々少なくとも2層の場合を示している。
【0045】
また、図3に示す層構成は、上記同様に樹脂層16を設ける表層11(強サイズ層11s)が少なくとも2層である場合の例であって、(D)は中層12(吸液層12a)と裏層13(強サイズ層13s)とが夫々1層の場合、(E)は裏層13(強サイズ層13s)が少なくとも2層の場合、(F)は中層12(吸液層12a)が少なくとも2層の場合、(G)は中層12(吸液層12a)と裏層13(強サイズ層13s)とが夫々少なくとも2層の場合を示している。
【0046】
なお、図4に示す層構成は、抄き合わせた中層12(吸液層12a)に樹脂層16を直接設ける場合の例であって、(H)は中層12(吸液層12a)と裏層13(強サイズ層13s)とが夫々1層の場合、(I)は裏層13(強サイズ層13s)が少なくとも2層の場合、(J)は中層12(吸液層12a)が少なくとも2層の場合、(K)は中層12(吸液層12a)と裏層13(強サイズ層13s)とが夫々少なくとも2層の場合を示している。
【0047】
しかし、このような層構成の紙基材14H〜14Kは、表層11(強サイズ層11s)
を有しないことから、後掲の表2に示すように、吸収後の剛度(mN・m)が低いという点で若干問題がある。
【実施例】
【0048】
本発明に係る吸収台紙の効果を確認するため、各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を実施した。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分または有効成分の質量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0049】
本発明に係る32種類の吸収台紙(これを「実施例1」〜「実施例32」とする)と、これらの実施例と比較検討するために、3種類の吸収台紙(これを「比較例1」〜「比較例3」とする)を表1に示す構成条件で作製した。

【0050】
【表1】

[実施例1]
下記原料を用い、下記加工を施し、表1に示す構成条件に基づき製造した、表層(強サイズ層)及び裏層(強サイズ層)を各1層、両層間に位置する中層(吸液層)を5層とする全7層構造の吸収台紙である。
<原料・薬品配合>
(表層及び裏層)
原料パルプスラリー:針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を40質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量%、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)で460ccに調整した原料に、カチオン化澱粉(商品名:「HP−35」大和化学製)を2質量%、アルキルケテンダイマー(商品名:「AD1602」星光PMC製)を固形分換算で0.6質量%配合し、パルプスラリーを得た。
(中層)
原料パルプスラリー:針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を40質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量%、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)で460ccに調整した原料に、カチオン化澱粉(商品名:「HP−35」大和化学製)を0.5質量%配合し、パルプスラリーを得た。
<加工>
上記パルプスラリーで作製した紙基材に、黒色のOPPフィルム12μmをウェットラミネーターで貼り合わせて吸収台紙を作製し、この表面にカット長1mm、タイ長0.5mm、スリット間隔5mm、スリット孔の深さ125〜1075μmのスリット孔加工を施した。なお、スリット孔の深さについては、樹脂層と接着している強サイズ層を貫通し、中層の吸液層を2/3〜貫通するまでとした。
[実施例2〜32]
実施例1と同様に3層以上の多層抄きとし、構成条件における、層構造、シート密度、付け量、コッブサイズ度、樹脂層の種類・厚み・接着方法、及びスリット孔(導孔)深さを、夫々表1に示すように実施例別に変更して作製した吸収台紙である。
[比較例1]
実施例1の吸収台紙のような樹脂層を設けず、紙基材のみで構成した吸収台紙である。
[比較例2]
実施例1の吸収台紙のような多層抄きではなく、1層抄きにして強サイズ層のみで構成した紙基材を使用し、この紙基材に樹脂層と接着してなる吸収台紙である。
[比較例3]
比較例2と同様に1層抄きにし、サイズ剤を無配合に(強サイズ層を設けず)して、吸液層のみの構成の紙基材を使用し、樹脂層と接着した。
【0051】
なお、表1の「シート密度(g/cm)」とは、JIS−P8142:2005に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して算出した値である。
【0052】
表1中の「付け量(g/m)」とは、各試料の層剥離を行ない、各層の坪量をJIS−P8142に記載の「紙及び板紙―坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
【0053】
なお、層剥離は以下の手順で行なった。まず、各試料から得た各サンプルを室温の水に約1時間浸漬する。水に浸漬した各サンプルを、角を起点として10mmΦ程度の丸棒に巻き付けた後、丸棒を転がして各サンプルをしごく。この操作を各サンプルの4隅の角を起点に繰り返し、各方向からサンプルにしごきの力を加える。これにより、各サンプルの層間の一部が剥離してくるので、これを利用して、表層、中層、及び裏層に分離して層剥離を行なう。層剥離を行なった後、各サンプルの各層を熱風乾燥機などで十分に乾燥し、試験に使用した。
【0054】
「コッブサイズ度(g/m)」(2分コッブ)とは、JIS−P8140:1998に記載の「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して測定した値である。
【0055】
「孔の深さ」とは、スリット孔加工を行なったサンプルの上記層剥離と同じ手順で行ない、スリット孔の跡が付いている部分を目視で確認した結果であり、「強サイズ層(表層)の深さ」は、全強サイズ層(表層)の厚さに対する樹脂層側からの導孔先端位置を、「吸収層(中層)の深さ」は、全吸収層(中層)の厚さに対する樹脂層側からの導孔先端位置を、「「強サイズ層(裏層)の深さ」は、全強サイズ層(裏層)の厚さに対する樹脂層側からの導孔先端位置を意味する。
【0056】
上記構成条件で作製した各試料(実施例1〜32、比較例1〜3)の品質評価結果は表2に示すとおりであった。

【0057】
【表2】

表2中の「吸収量(g/m)」とは、前記「コッブサイズ度(g/m)」に準拠し、水の浸漬時間を15分にして測定した値(15分吸水度)であり、「評価」とは、下記の判定基準により評価したものである。
【0058】
◎:吸収量が500g/m以上
○:吸収量が400〜500g/m未満
△:吸収量が300〜400g/m未満
×:吸収量が300g/m未満
「裏抜け」とは、樹脂層と紙基材を貼り合わせたサンプルを50mm×50mmに断裁し、5mlの水を直径10mmの円筒状の筒を通して樹脂層からスリット部に全量滴下した後、裏面からの抜けを下記の判定基準により目視で評価したものである。
【0059】
◎:裏抜けが無い(裏面から吸収部が分からない)。
【0060】
○:裏面から吸収跡が分かる。
【0061】
△:やや裏が湿る。
【0062】
×:裏面が完全に湿る。
【0063】
「剛度(mN・m)」とは、紙基材の抄紙方向を縦としてJIS−P8125:2000に記載の「紙及び板紙―こわさ試験方法−テーバーこわさ試験機法」に準拠して測定した値であり、「評価」とは、下記の判定基準により評価したものである。
【0064】
◎:剛度が100mN・m以上
○:剛度が80〜100mN・m未満
△:剛度が50〜80mN・m未満
×:剛度が50mN・m未満
「吸収後の剛度(mN・m)」とは、上記「吸収量」で測定した残サンプルを使用して、JIS−P8125:2000に記載の「紙及び板紙―こわさ試験方法−テーバーこわさ試験機法」に準拠して測定した数値であり、「評価」とは、下記の判定基準により評価したものである。
【0065】
◎:剛度が20mN・m以上
○:剛度が15〜20mN・m未満
△:剛度が10〜15mN・m未満
×:剛度が10mN・m未満
「樹脂層接着性」とは、樹脂層と紙基材を接着したシートの層間を剥がし、紙基材とシートの毛羽取られの状態を下記の判定基準により目視で評価したものである。
【0066】
◎:吸液層または強サイズ層が破れる。
【0067】
○:吸液層または強サイズ層の表面の一部が取られる。
【0068】
△:吸液層または強サイズ層の表面が毛羽立つ。
【0069】
×:樹脂層と紙基材が接着していない部分が一部有る。
【0070】
表2の品質評価結果、とくに各評価項目において◎印で示されるように、本発明に係る吸収台紙(実施例1〜32試料)のうち、実施例1、6、16、20、30試料に係る吸収台紙は全ての評価に優れ、続いて実施例9〜12、17、23、27試料に係る吸収台紙が評価に優れていることが分かる。これらのいずれの吸収台紙も、特許請求の範囲に記載された本発明の要件を満たすものである。これに対し、比較例1〜3試料に係る吸収台紙は、いずれも、この要件を満たすものではなく、このため品質面の評価で劣っていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る紙基材の層構成を説明する断面図である。
【図2】上記紙基材層構成の変更例を示す断面図である。
【図3】上記紙基材層構成の他の変更例を示す断面図である。
【図4】上記紙基材層構成のさらに他の変更例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10、10A〜10K 吸収台紙
11 表層
11s (表層側の)強サイズ層
12 中層
12a 吸液層
13 裏層
13s (裏層側の)強サイズ層
14、14A〜14K 紙基材
15 生鮮食品
15d ドリップ
16 樹脂層
17 スリット孔加工
17h スリット孔
18 接着剤







【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、中層、裏層の3層以上の紙基材からなる多層抄き板紙を用い、生鮮食品が載置される前記紙基材の表裏いずれかの片面に樹脂層を設け、且つ該樹脂層側から少なくとも該片面樹脂層を貫通させた孔を有することを特徴とするドリップ吸収台紙。
【請求項2】
前記樹脂層は不透明な樹脂フィルムを前記紙基材の表裏いずれかの片面に接着剤で貼着してなっていることを特徴とする請求項1記載のドリップ吸収台紙。
【請求項3】
前記紙基材は、密度が0.40〜0.75g/cmであり、且つ前記表層及び前記裏層は強サイズ層、前記中層は吸液層となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリップ吸収台紙。
【請求項4】
前記樹脂層を設ける面の付け量が30〜100g/m、前記樹脂層を設ける面と反対側の面の付け量が80〜180g/m、前記中層の付け量が300〜500g/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドリップ吸収台紙。
【請求項5】
前記表層及び前記裏層のコッブサイズ度が20〜100g/m、前記中層のコッブサイズ度が500〜1500g/mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドリップ吸収台紙。
【請求項6】
前記樹脂層の孔がスリット孔加工であって、孔深さが125〜1075μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドリップ吸収台紙。















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−227299(P2009−227299A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74286(P2008−74286)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】