説明

ナトリウムチャネルαサブユニットの変種

本発明は、ヒトでもっとも一般的なSCN5A変種を代表する4つのSCN5A変種グループを開示する。前記変種の1つにおける特有の変種を示して、ヒトの心疾患に関連して他の変種および公知のヒトナトリウムチャネルαサブユニットと異なる表現型を対応する変異とともに明示した。本発明は、ナトリウムチャネル関連疾患または症状に関連する変異を研究するための新規なツール、並びに前記疾患または症状のための新規な診断および治療方法または物質を考案もしくは特定するための新規なツールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、参照によりその全体が本明細書に含まれる米国仮特許出願60/401,018(2002年8月2日出願)に対して優先権を主張する。
連邦政府支援研究開発に関する記述
本発明は、NIHグラント番号HL56441によって提供された合衆国政府の援助により達成された。合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
背景技術
筋肉細胞、ニューロンおよび他の興奮性細胞に埋め込まれたナトリウムチャネルタンパク質は、電気的インパルスの生成および増加を助け、さらにヒトの多くの疾患および症状に関係する。ナトリウムチャネルはしばしば、ポア形成αサブユニット(前記は4つの相同なドメインDI−DIVおよび各ドメインに6つのトランスメンブレン領域S1−S6を有する)、および少なくとも3つの補助サブユニットβ1、β2およびβ3を含む。前記αサブユニットは細胞膜を貫通するナトリウム電流の流れを発生させる機能的チャネルを形成するために十分である。下記文献(Annual Review of Physiology 64:431-75(2002))に報告された心イオンチャネルに関する徹底的な概説はその全体が参照により本明細書に含まれる。
ヒトの心ナトリウムチャネルは心臓の興奮において決定的な役割を果す。hNav1.5(SCN5A遺伝子によってコードされるヒト心ナトリウムチャネルαサブユニット)は、心臓における内向きのNa電流(INa)を運ぶ機能的な単体ナトリウムを形成する。INa電流は、作動中の心筋層の興奮および伝導のために、および特殊化された伝導組織(例えばプルキンエ線維)に不可欠である。
【0003】
hNav1.5ヒト心ナトリウムチャネルをコードする3つの別個の完全長の、多形性を示すSCN5Aクローン(SCN5AhH1、SCN5AhH1aおよびSCN5AhH1b(または単にそれぞれhH1、hH1a、hH1b)と称される)が、ヒト心臓cDNAライブラリーから単離された(M.E. Gellens et al., “Primary structure and functional expression of the human cardiac tetrodotoxin-insennsitive voltage-dependent sodium channel,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:554-558(1992); H.A. Hartmann et al., “Effects of III-IV linker mutations on human heart Na+ channel inactivation gating,” Circ. Res. 75:114-122(1994); B. Ye and J. Makielski, “Third complete sequence of human cardiac sodium channel αsubunit reveals polymorphism in domain I and II,” Biophys. J. 80(1):225c(2001);前記文献は各々参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
Ye and MakielskiによるhH1bの配列の発表に続いて、前記著者らは報告したSCN5AhH1タンパク質配列における誤りを発見した。hH1、hH1aおよびhH1b間の真の多形性は下記の表1に反映されている。アミノ酸番号は、最初のhH1クローン(前記は2016のアミノ酸を含む)に従う。相違の全てが、DI−II間およびDII−III間の細胞質リンカーに限定される。簡単に記せば、hH1およびhH1aは以下のようにそれぞれ完全長の2016/2015アミノ酸において単に3つのアミノ酸で異なるだけである:T559に対しA559、Q1027に対しR1027、およびQ107に対しQ1077del(それぞれhH1のアミノ酸に対してhH1aのアミノ酸を表示)。前記hH1Bタンパク質は、558位および618位と同様に、559位、1027位および1077位でhH1またはhH1aのどちらかと異なっている。hH1bの558位のアルギニンは以前に性状が決定されたヒスチジンからアルギニンへの多形性現象と一致する(Iwasa et al., “Twenty single nucleotide polymorphisms(SNPs) and their allelic frequencies in four genes that are responsible for familial long QT syndrome in the Japanese population,” J. Hum. Gene. 45:182-183)。618位のイソロイシンは公知の高頻度偶発的保存的ロイシンからイソロイシンへの置換と一致する。
【0004】
ナトリウムチャネルにおける多形性現象の重要性は未だ明らかになっていない。例えば、そのような多形性がSCN5Aの変異表現型にどのように影響するかは不明である。にもかかわらず、特定された多形性現象は、SCN5Aにおける疾患附随変異の特定に役立つ。例えば、種々のSCN5A変異は先天性長QT症候群(Long QT syndrome)、特発性心室細動およびブルガーダ(Brugada)症候群に附随(associate)している(Keating and Sanguinetti 2001)。
別個の研究で、2つの公知の多形性型がカイネティクスにおけるわずかな相違を示しただけであり、前記相違は、発現系の相違および実験技術の相違(溶液、温度およびプロトコルを含む)に帰することができる(M.E. Gellens et al. 上掲書;Wattanasirichaigoon et al. 1999)。しかしながら、カイネティクス(例えば減衰速度、不活化中点および後期INa)における微妙な相違は再分極の制御に重要であるかもしれない。SCN5AhH1aクローンによってコードされるナトリウムチャネルαサブユニット(アミノ酸1766位にメチオニンからロイシンへの不整脈惹起性ミスセンス変異(M1766L)を含む)はさらに、野生型hH1aクローンによってコードされるチャネルの電流レベルと比較して、顕著な内向きのナトリウム電流レベルの降下を示す。最近になってhH1aバックグラウンドのM1766Lはトラフィッキング欠損(trafficking defect)をもち、QTの延長および心室細動を引き起こすことが示された。前記の症状は低温、抗不整脈薬剤およびβ1サブユニットによって回復させることができる(C.R. Valdivia et al.,”A novel SCN5A arrhythmia mutation M1766L with expression defect rescued by mexiletine,” Cardiovasc. Res. 54(3):624-9(2002))。
【0005】
別の面においては、ナトリウムチャネルの活性を変化させることができる薬剤は、ある種の状態(例えば心不整脈)を示す症状を緩和または予防することができる。心不整脈は、心悸動の速度、規則性もしくは発生部位の異常、または心房もしくは心室活性化の正常な流れを変化させるインパルスの伝導障害である。心不整脈を治療する公知のある方法は、心臓のナトリウムチャネルの活性をブロックすることである。心不整脈治療に用いられるナトリウムチャネルブロッカーには以下が含まれる:キニジン、リドカイン、プロカインアミド、メキシレチン、フレカイニド、モリシジンおよびジソピラミド。ヒト心臓ナトリウムチャネルの他の多形性型を特定することによって、ナトリウムチャネル関連心疾患の理解が深まり、診断、予防および治療方法の開発のための新規なツールが提供されるであろう。
前記多形性SCN5A単離クローンのいずれが標準またはリファレンスhNav1.5タンパク質をコードするかについては不確かである。この不確かさが、密接に結びつくバックグラウンドにおける特定アミノ酸残基の変異の十分な理論的分析を妨げている。対象における1つまたは2つ以上の変異を評価するときは、実際の変異の効果を観察することができるように適切な遺伝的バックグラウンドをもつチャネルタンパク質利用することが重要である。さらにまた、心チャネルとの直接的または間接的に能力をもつ薬剤の相互作用を調べるときは、適切な環境の中でこれら相互作用を査定することが重要である。hNav1.5における変異の遺伝的バックグラウンドの完全な意味はこれまで理解されていなかった。
【0006】
発明の要旨
本発明は、SCN5A変種[H558;Q1077]、[H558R]、[Q1077del]および[H558;Q1077del]と称される新規なhNav1.5ナトリウムチャネルαサブユニットポリペプチドとともに前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。前記新規なhNav1.5ポリペプチドは、これまでに報告されたhH1、hH1aおよびhH1bとはアミノ酸559位、618位および1027位において異なっている。
当技術分野では、hH1、hH1aおよびhH1bは、それに対して種々のSCN5A変異の作用が判定されねばならない“野生型”または“リファレンス”バックグラウンド配列をコードするとこれまでは推定されていたという点で本発明は特に興味深い。しかしながら本明細書では、開示の配列は調査した何百もの個体で観察され、それらはヒトで真の標準的なバックグラウンド配列であるということが確立された。心臓のナトリウムチャネルを評価する場合に適切なバックグラウンド配列を選択することの影響が、本発明のバックグラウンドペプチドに加えた単一アミノ酸変化の種々の作用を、これまでのhNav1.5ペプチドに加えた同じ変化とは対照的に示すことによって下記実施例で明瞭に提示されている。
【0007】
本発明はまた種々の関連核酸分子およびポリペプチドを含み、前記は種々の適用、たとえばサブユニット検出および前記サブユニットの抗体作製に有用である。本発明はまた、クローニングおよび発現ベクター並びに前記を含む細胞に関する。さらにまた、本発明はナトリウムチャネル活性を変化させる(増進または低下させる)物質のスクリーニング方法を含む。さらにまた、本明細書に開示したSCN5A変種を検出するため、および前記変種の検出および精製を目的とする抗体を作製するために前記核酸およびポリペプチドを使用する方法もまた本発明に含まれる。種々のナトリウムチャネル関連疾患および症状に対する新規な診断および治療方法もまた本発明によって可能になる。SCN5A変種のポリペプチドはバックグラウンドとしての使用で特に重要である(前記バックグラウンドに仮説的な疾患惹起変異が機能分析のために導入される)。この場合、前記バックグラウンドはこれまでのヒト心ナトリウムチャネルよりも集団にとってより典型的であり、特にhH1(本発明者らが集団全体に広く分布してはいないと決定したとしても事実上の標準的チャネルと考えられている)よりも典型的である。
【0008】
本発明の目的は、ヒト心臓ナトリウムチャネルのもっとも一般的な形態のいくつかを特定することである。
本発明のまた別の目的は、ナトリウムチャネル関連疾患および症状の診断および治療方法をデザインするための新規なツールを提供することである。
SCN5Aアミノ酸配列がヒト集団において一般的であるということは本発明の利点である。
本発明のSCN5Aポリペプチドはアミノ酸559位にスレオニンを、アミノ酸618位にロイシンを、アミノ酸1027位にアルギニンを、さらにアミノ酸558位にヒスチジンまたはアルギニンを有し、さらにアミノ酸1077位にグルタミンを有するかまたは1077位のグルタミンは択一的mRNAスプライシングのために失われているということは本発明の特徴である。本発明のポリペプチドの例には配列番号:2、4、6および8が含まれるが、ただしこれらに限定されない。さらにまた、本発明のポリペプチドは、当業界で公知の方法を用いてその中に1つまたは2つ以上の更なる変異を導入することができる適切なバックグラウンドタンパク質配列を代表し、さらに配列番号:2、4、6または8と配列番号:2、4、6または8の全長にわたって20またはそれ以下のアミノ酸の相違を有するポリペプチドの使用は本発明の範囲内であると本発明者らは解している。より好ましくは、改変ポリペプチドは、配列番号:2、4、6または8とは10またはそれ以下の相違、または5またはそれ以下の相違、もっとも好ましくはただ1つの相違を含む。
【0009】
本発明のさらに別のポリペプチドセットはさらに1766位にロイシンを含むが、その他の点では上述のポリペプチドセットのアミノ酸配列を維持する。
関連する特徴では、本発明はまた上述の本発明のポリペプチドのいずれかをコードする単離ポリヌクレオチドに関する。本発明のポリヌクレオチドは単離核酸分子、例えばmRNA分子、一本鎖もしくは二本鎖DNA分子またはcDNA分子(クローニングベクターまたは発現ベクター上で提供されると否とにかかわらない)、の他に上述のいずれかの相補物であろう。前記ポリヌクレオチドが発現ベクター上で提供される場合は、前記ベクターは、本発明のポリヌクレオチドの転写および翻訳を助けるために必要な上流および/または下流の調節エレメントを含むことができる。
本発明の他の目的、利点および特徴は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白となろう。
【0010】
発明の詳細な説明
本明細書では、現存のSCN5Aクローン(hH1、hH1aおよびhH1b)のいずれも、それら各々はアミノ酸の559位、618位および1027位に1つまたは2つ以上の稀な変種を含むので、SCN5Aのための一般的な配列を表していないということが示される(表1参照)。本発明者らは、上記のアミノ酸の位置の他にさらに2つの位置(558および1077)に関してもっとも一般的なSCN5A変種を代表する4つのSCN5A変種グループを特定した。前記SCN5Aバックグラウンドは疾患を惹起する変種の機能のために重要であろう。例えばブルガーダ(Brugada)症候群変異T1620Mはバックグラウンド内に比較的一般的ではない変種R1232Wが存在する場合にのみトラフィッキング欠損を示した(G. Baroudi et al., Cieculation Research 90:E11-E16(2002))。別の例では、H558Rバックグラウンドは伝導障害変異T512Iのカイネティクスに影響を与えた(P.C. Viswanathan et al., J. Clin. Invest. 111:341-346(2003))。下記の実施例では、M1776L不整脈変異は、[1077del]バックグラウンドの場合のみSCN5Aトラフィッキングに影響を与えるが、[H558R;1077del]バックグラウンドでは影響しなかった。したがって、SCN5Aバックグラウンドにおける疾患惹起変異または潜在的な疾患惹起変異を調べ検査することが重要である。薬剤スクリーニングのために関連するSCN5Aバックグラウンドを用いることもまた重要である。患者のSCN5Aバックグラウンドに関する情報は診断および治療のために重要であろう。本明細書で開示したもっとも一般的なSCN5A変種はSCN5A関連検査の実施に新規なツールを提供する。
【0011】
本発明者らが特定したSCN5A変種の4グループの全てが、アミノ酸559位にスレオニンを、アミノ酸618位にロイシンを、さらにアミノ酸1027位にアルギニンを有している。グループ1はアミノ酸558位にヒスチジンおよびアミノ酸1077位にグルタミンを有している。グループ2はアミノ酸558位にアルギニンおよびアミノ酸1077位にグルタミンを有している。グループ3はアミノ酸558位にヒスチジンを有し、アミノ酸1077位のグルタミンを欠失している。グループ4はアミノ酸558位にアルギニンを有し、アミノ酸1077位のグルタミンが欠失している。前記4グループではSCN5A変種の他の位置については変動が可能である。例えば、アミノ酸1103位は全てのグループでセリン(全集団の大半)またはチロシン(黒人集団の13.2%)であろう。1−4の変種グループの全集団に対する予想される頻度はそれぞれ24.5%、10.5%、45.5%および19.5%である。変種グループ1−4の各々のSCN5Aアミノ酸配列例は、それぞれ配列番号:2、4、6および8で提供される。対応するヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号:1、3、5および7である。
【0012】
1077位のグルタミンの有無は、正常なタンパク質発現プロセスの一部分として択一的mRNAスプライシングから生じると考えられる。個体は、558位でヒスチジンまたはアルギニンについてホモ接合体またはヘテロ接合体であろう。558位でヘテロ接合体である個体は、したがってhNav1.5イオンチャネルで4つの形態の全てをもつと予想されるであろう。558位は、hNav1.5ナトリウムイオンチャネルのタンパク質キナーゼA(PKA)リン酸化部位またはその近傍に位置すると考えられ、このアミノ酸の位置は前記チャネルの機能調節に役割をもつことができよう。
本発明の目的のために、GenBankアクセス番号AC137578の2016アミノ酸配列を参照してSCN5A変種のアミノ酸に番号を付した。したがって1077が欠失した変種では、アミノ酸1076の後ろのアミノ酸は1078と番号が付与され、それにより最後のアミノ酸は2015ではなくやはり2016である。例えば、心室転移症の素因であると思われる最近報告された多形性は“Y1102”ではなくS1103Yと称されるであろう(P.C. Viswanathan et al., J. Clin. Invest. 111:341-346(2003))。リフェレンス配列から見て配列の変動を示すチャネルはセミコロンで分け、さらに括弧でくくったアミノ酸置換によって表される。したがって、本明細書に開示したように、グループ1−4のSCN5A変種はそれぞれ、[H558;Q1007]、[H558R]、[Q1077del]および[H558R;Q1077del]と表される。添付の配列リストでは、配列番号:6および8のアミノ酸は、PatentInプログラムが自動的に連続番号をアミノ酸に付与するので2015系によって番号付けされていることに留意されたい。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる“単離核酸”または“単離ポリペプチド”という用語は、その天然の環境から単離されたか、または合成方法(例えば当業者に公知の方法)を用いて調製された核酸またはポリペプチドを指す。いずれの場合においても完全な精製は要求されない。天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドとフランキングしているそれぞれアミノ酸およびヌクレオチド配列は、前記単離された形態には存在しなくてもよいが、存在してはならないということではない。本発明のポリペプチドおよび核酸は、通常附随している物質から一般的な方法で単離および精製することができ、それによって精製調製物では前記ポリペプチドまたは核酸が前記調製物中で優勢な物質ある。少なくとも前記精製度は、前記調製物中の異物が本発明のポリペプチドまたは核酸の本明細書で開示した使用を妨げないようなものである。前記ポリペプチドまたは核酸は好ましくは少なくとも約85%純粋、より好ましくは少なくとも約95%純粋、もっとも好ましくは少なくとも約99%純粋である。
【0014】
さらにまた、単離核酸は、3つ以上の別個の遺伝子に広がる天然に存在するいずれのポリヌクレオチドの構造とも、または天然に存在するゲノムポリヌクレオチドのいずれのフラグメントの構造とも同一ではない構造を有する。単離核酸にはまた以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:(a)天然に存在するゲノム核酸または染色体外核酸分子の配列を有するポリヌクレオチドあるが、その本来の位置に存在する前記配列にフランキングするコード配列によってフランキングされていない前記ポリヌクレオチド;(b)ベクターまたは原核細胞もしくは真核細胞ゲノムに取り込まれたポリヌクレオチドであって、得られた分子が天然に存在するベクターまたはゲノムDNAのいずれとも同一でないように取り込まれた前記ポリヌクレオチド;(c)別個に分離した分子、例えばcDNA、ゲノムフラグメント、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成されたフラグメント、または制限フラグメント;および(d)ハイブリッド遺伝子(すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子)の部分であるリコンビナントヌクレオチド配列。上記の定義から特に排除されるものはクローンの混合物中に存在するポリヌクレオチド、例えばDNAライブラリー(例えばcDNAまたはゲノムライブラリー)に存在するポリヌクレオチドである。単離核酸は改変もしくは未改変DNAまたはRNAであろう。前記は部分的もしくは完全な一本鎖または二本鎖であるかにかかわらず、たとえ三本鎖であってもよい。核酸は化学的または酵素的に改変してもよく、いわゆる非標準塩基(例えばイノシン)を含むことができる。
【0015】
ある特徴では、本発明は、本明細書に開示するSCN5A変種のアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドに関する。前記SCN5A変種は、アミノ酸559位にスレオニンを、アミノ酸618位にロイシンを、アミノ酸1027位にアルギニンを、アミノ酸558位にヒスチジンまたはアルギニンを有し、さらにアミノ酸1077位にグルタミンを有するかまたは前記を欠失している任意のSCN5A配列であろう。SCN5A変種のアミノ酸配列例は、配列番号:2、4、6および8で提供される。概して、本発明のSCN5A変種は、配列番号:2、4、6または8とは558位、559位、618位、1027位および1077位以外で20以上のアミノ酸と異なることはないであろう。好ましくは、相違は10またはそれ以下、より好ましくは5またはそれ以下、およびもっとも好ましくは1つまたはそれ以下に限定される。しかしながら、例えば保存的置換のような置換は本質的ではないアミノ酸の位置に導入することは可能であり、前記はたとえ20以上のアミノ酸が置換されたときでも前記機能に実質的に影響を与えないことは理解されよう。そのような置換をもつSCN5A変種は本発明の範囲内に包含される。
【0016】
さらにまた、本発明のポリペプチドは、本明細書に開示するSCN5A変種のN-末端およびC-末端のどちらかまたはその両方に1つまたは2つ以上のアミノ酸を含むことができ、その場合、前記付加アミノ酸は前記変種の機能に実質的に与えない(前記機能は表3に示したパラメーターを用いて決定できる)。付加的アミノ酸はいずれも(ただし必ずしもというわけではないが)前記ポリペプチドの精製、検出または安定化に有益である。同様に、前記ポリペプチドの機能に影響を与えない、前記ポリペプチド内の小さな欠失または他の再アレンジメントもまた本発明の範囲内である。そのような欠失は、好ましくは100以下のアミノ酸、より好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下のアミノ酸の欠失である。
関連する特徴では、本発明はまた、本明細書に開示するSCN5A変種の免疫原性フラグメントおよびそのような免疫原性フラグメントと特異的に結合する抗体を含む。そのような免疫原性フラグメントは、本発明のSCN5A変種を検出または単離またはその両者を実施するために用いることができる特異的抗体の作製に用いられる。一般的には、前記免疫原性フラグメントは、SCN5A変種の少なくとも15の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも20の連続するアミノ酸、もっとも好ましくは少なくとも25の連続するアミノ酸を含み、前記連続するアミノ酸は558位を含有する。本発明の変種に特異的な抗体は、hH1、hH1aまたはhH1bに対するよりも前記変種に対してより高い親和性を有するであろう。当業者は、本発明のポリペプチドのいくつかまたは全てに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を作製し、さらに前記抗体の特異性を評価することができる。さらにまた、本明細書に開示された変種はhNAv1.5タンパク質の“一般的”または“標準的”形態であることが本発明者らによって今や示されたように、前記タンパク質を単に特定するだけの抗体は、hH1、hH1aまたはhH1bに対するその特異性に関係なく種々の使用に十分であろう。
【0017】
別の特徴では、本発明はコードポリヌクレオチドまたはその相補物(complement)を含む単離核酸に関し、この場合前記コードポリヌクレオチドは上記に示した本発明のポリペプチドをコードする非分断配列を有する。前記コードポリヌクレオチと前記コードポリヌクレオチドの全長にわたって少なくとも80%同一であるポリヌクレオチドまたはその相補物を含む核酸を前記コードポリヌクレオチド検出のプローブとして用いることができ、したがって前記核酸は本発明の範囲内に包含される。
関連する特徴では、上記で述べた本発明のいずれの核酸も当業者に公知の態様によりベクターで提供することができる。前記ベクターはクローニングベクターでも、発現ベクターでもよい。発現ベクターでは、前記ポリペプチドコードポリヌクレオチドは1つまたは2つ以上の本来のものではない発現コントロール配列(前記ポリヌクレオチドと天然の状態では隣接して見出されることがないプロモーターを含むことができる)の制御下にあり、それによって前記ベクターが適合するホスト細胞または無細胞転写翻訳系に提供されたとき、前記コードされたポリペプチドを生成することができる。そのような細胞含有系または無細胞系は当業者には周知である。本発明の核酸を含有するベクターを含む細胞自体が本発明の範囲内に包含される。さらにまた本発明の範囲内に包含されるものは本発明の核酸を有するホスト細胞であって、前記核酸は前記ホストのゲノム内の本来ではない部位に組み込まれてある。さらにまた、上記の本発明の細胞は、本発明の4つの変種グループの2つ以上に由来するSCN5A変種を含むことができる。
【0018】
本発明はまた、本明細書に開示したSCN5A変種の連続する少なくとも12、15、20または25ヌクレオチドのフラグメントまたはその相補物、特にコドン558、1077またはその両方を含むフラグメントを含有する単離核酸分子を含む。そのような核酸分子を用いて細胞内でのSCN5A変種の発現を検出することができる。前記検出反応は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、例えば5倍のSSC/5倍のデンハルト溶液/1.0%SDS中で68℃でハイブリダイズし、0.2倍のSSC/0.1%SDS中で室温で洗浄することによって実施できる。中等度にストリンジェントな条件(3倍のSSC、42℃での洗浄を含む)もまた用いることができる。
本発明はまた、ナトリウムチャネルの活性を阻害または強化することができる物質のスクリーニング方法を可能にする。そのような方法では、本明細書に開示した1つまたは2つ以上のSCN5A変種を発現する本発明のホスト細胞に物質が暴露され、前記物質の前記変種に対する作用が、前記物質に暴露さていないコントロール細胞と比較することによって決定される。SCN5A変種の活性は多くの方法で測定することができる。前記には細胞膜を貫通するナトリウム電流、ナトリウム電流カイネティクス活性、膜電位または細胞内ナトリウムレベルの測定が含まれるが、ただしこれらに限定されない。SCN5A変種の発現を調節することができる物質は、前記変種の発現が本来の発現制御配列によって制御されている変種を含む細胞を用いて同様にスクリーニングすることができる。さらにまた、ナトリウムチャネルの過剰発現または無発現(例えばトランスジェニックまたはノックアウト動物)に附随する表現型もモニターすることができる。in vitroでは活動電位に対する影響は問題のチャネルを適切な細胞(例えば心臓細胞)にトランスフェクトした後測定することができる。多くの疾患および症状(例えば不整脈およびブルガーダ症候群)がナトリウムチャネル活性の上昇または低下に起因するので、ナトリウムチャネル活性に影響を及ぼす多くの物質が所望される。特にナトリウムチャネルαサブユニットの種々の形態が機能的に異なることを理解するためには、個体に存在する各形態の作用を判定することが重要である。実際に、ある個体に存在するαサブユニットの形態を判定した後、前記個体に適した治療を仕立てることが可能である。ナトリウムチャネル活性はピークナトリウム電流をもたらす開放チャネル活性を意味する。ナトリウムチャネル活性は、調節物質が存在しない場合よりも前記開放状態の確率が高いまたは低いときに、およびピーク電流が低いまたは高いときに、それぞれ強化または阻害される。
【0019】
下記実施例に記載したヒト胎児腎臓細胞株(HEK)は、SCN5A変種の機能に影響を及ぼすことができる物質のスクリーニングのために、本発明の種々のSCN5A構築物をトランスフェクトすることができる適切な細胞株である。都合のよいことには、前記細胞は、トランスフェクトした問題のSCN5Aに由来するシグナルと干渉する内因性SCN5Aタンパク質を欠いている。しかしながら、他の適切な細胞もまた用いることができる。内因性SCN5Aを発現する細胞(例えば心臓細胞)が用いられる場合、前記内因性タンパク質に起因するシグナルはトランスフェクトされたSCN5Aの活性を測定するときに差し引かれねばならない。
スクリーニングのための物質セットは種々の化学ライブラリー(ペプチドライブラリーを含む)の形態で市販されている。そのようなライブラリーの例には、ASINEXから得られるもの(例えば24,000の手動合成された有機分子を含むCombined Wisdom Library)、ケンブリッジ社(Chembridge Corporation)から得られるもの(例えば50,000の手動合成された化合物を含むDIVERSet(登録商標)ライブラリー;24,000の手動合成された化合物を含むSCREEN-Set(登録商標)ライブラリー;11,000の化合物を含むCNS-Set(登録商標)ライブラリー;300,000までの化合物をCherry-PicK(登録商標)ライブラリー)が含まれる。ナトリウムチャネルタンパク質の活性を増加または減少させる所望の能力を有する物質が特定されたら、前記物質の誘導体で構成された1つまたは2つ以上のライブラリーを用いてスクリーニングをさらに繰り返して優れた作用を有する物質を特定することができる。
上記のスクリーニング方法によって、ヒトまたはヒト以外の対象に投与しようとする物質が所望されないまたは意図しない副作用を誘発する蓋然性を、すなわち対象で細胞のSCN5Aの活性を変化させることによって決定することが可能になる。
【0020】
本発明はまた、一般的なSCN5Aバックグラウンド上のある変異がナトリウムチャネル関連疾患に附随するか否かを当業者が決定することを可能にする。前記を実施するために、変異を本明細書に開示したSCN5A変種に導入し、続いて前記変異の影響を適切な前記疾患のモデルで検査する。
本発明のポリペプチド,ポリヌクレオチドおよび抗体は、個々の対象が4つのSCN5Aグループのどれに属するかを特定するためのスクリーニングツールとして特に有用である。前記情報はいくつかの局面において有用である。例えば、前記情報は対象者の後天的不整脈の素因を判定するために役立つであろう。例えば対象者が低発現チャネル、例えば[H558R]を高率で有する場合、前記対象者は後天的不整脈を発症しやすいであろう。さらにまた、ナトリウムチャネル関連疾患をもつ対象者については、前記対象者のSCN5Aバックグラウンドを知ることは治療方法の選択に有益であろう。
【0021】
本明細書における開示に関して、4つのSCN5Aグループのどれに対象が属するかを決定することは当業者には容易であろう。そのような決定はポリヌクレオチドレベルまたはタンパク質レベルで実施することができる。ポリヌクレオチドレベルでは、4つのSCN5Aグループの各々を特異的に増幅するか、またはこれに特異的にハイブリダイズするプライマーおよびプローブを用いることができる。また別には、直接的な配列決定も用いることができる。タンパク質レベルでは、4つのSCN5Aグループの各々に特異的な抗体を作製しこれを用いることができる。また別には、SCN5Aタンパク質のアミノ酸配列を直接決定してもよい。
本明細書で述べたいずれの生成物も、例えば診断または治療に有用なキットの形態で、当業者の理解にしたがって1つまたは2つ以上の他の試薬、緩衝物質などと組合せることができる。
本発明は前述の記載に限定しようとするものではなく、むしろ添付の請求の範囲に含まれるそのような全ての変更および改変を包含しようとするものである。本発明は下記の実施例(同様に本発明の範囲を限定しようとするものではない)の考察によりさらに完全に理解されるであろう。
【0022】
実施例
材料と方法
残基558、559、618および1027の遺伝子型決定:SCN5A変種についての対立遺伝子座頻度(エクソン12のH558R、エクソン12のT559A、エクソン12のL618I、およびエクソン17のR1027Q)を、100人の白人のヴァリエーションパネルおよび100人のアフリカ系アメリカ人のヴァリエーションパネル(Corriell Cell RepositoriesおよびNational Institute of General Medical Sciences)から得た400のリファレンス対立遺伝子座の直接的ゲノムDNA配列決定によって確立した。これらの変種を含むタンパク質コード配列を以前に報告されたイントロン/エクソンプライマー5を用いポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、続いて染料-ターミネーター自動サイクルシークェンシングによりABIプリズム377で配列決定した。蛍光の検出は、ddNTPターミネーターヌクレオチドに結合させたレポーター染料に由来する。アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)のビッグ-ダイ=ターミネーターサイクルシークェンシング(Big-Dye Terminator Cycle Sequencing)v1.0キット(ABI part#4303154)を全てのサンプルの配列決定に用いた。残基558、559および618の状態を決定するために、SCN5Aエクソン12を2つのオーバーラップフラグメント12A(フォーワードプライマー:GCCAGTGGCTCAAAAGACAGGCT(配列番号:9)およびリバースプライマー:CCTGGGCACTGGTCCGGCGCA(配列番号:10))および12B(フォーワードプライマー:CACCACACATCACTGCTGGTGC(配列番号:11)およびリバースプライマー:GGAACTGCTGATCAGTTTGGGAGA(配列番号:12))のPCR増幅によって分析した。アンプリコン12Aおよび12BのPCR増幅反応は、50ngのゲノムDNA、各々16pmolのプライマー、各々200μMのdNTP、50mMのKCl、10mMのトリス塩酸(pH8.3)、2.0mMのMgCl2および1.0Uのアンプリタックゴールド(Amplitaq Gold, Applied Biosystems, Branchburg, NJ)を用い20μLの容積で実施した。前記反応混合物を95℃5分の初期変性に付し、続いて94℃20秒、64℃20秒および72℃30秒の5サイクル、続いて94℃20秒、62℃20秒、72℃30秒の35サイクル、さらに72℃10分の最終伸長を実施した。SCN5Aエクソン17(R1027Q変種)の増幅に用いたPCR反応は、50ngのゲノムDNA、各々16pmolのプライマー(フォーワードプライマー:GCCCAGGGCCAGCTGCCCAGCT(配列番号:13)およびリバースプライマー:CTGTATATGTAGGTGCCTTATACATG(配列番号:14))、各々200pMのdNTP、50mMのKCl、10mMのトリス塩酸(pH8.3)、1.0mMのMgCl2、8%DMSOおよび1.0Uのアンプリタックゴールド(Amplitaq Gold, Perkin-Elmer)を用い20μLの容積で実施した。サイクリング条件は以下のとおりであった:94℃10分の初期変性、続いて94℃30秒、60℃30秒、72℃30秒の40サイクル、さらに72℃10分の最終伸長。エクソン12(12Aおよび12B)およびエクソン17のPCR生成物を製造元のプロトコルにしたがいEXOSAP-it(USB Inc., Cleveland, OH)により酵素的に処理して取り込まれなかったdNTPおよびプライマーを除去した。処理生成物を染料-ターミネーター=サイクルシークェンシングを用いABI377で配列決定を実施した。得られたクロマトグラフィー写真から固有の変種を分析した。
【0023】
残基1077のグルタミンの挿入または欠失のどちらかをコードする択一的にスプライスされたSCN5A転写物の特定、性状決定および定量:メッセンジャーRNAから得られた、エクソン17/18に照準をあわせたRT-PCR作製生成物で直接的DNA配列決定を実施した。前記mRNAは、i)乳児突然死症候群(n=5)、乳児非事故死(n=5)または成人事故死の剖検、またはii)心筋肥大の成人の筋切除(n=5)のいずれかから得られた心筋組織から抽出された。約25mgの心臓組織片の全RNAをアールエヌイージー(Rneasy(登録商標))線維組織ミニキット(FibrousTissue Mini kit, Qiagen, Valencia, CA)を用いて単離し、第一鎖cDNA合成は、アイスクリプト(iScript(登録商標))cDNA合成キット(BioRad, Hercules, CA)を用いて製造元の説明書にしたがい500ngの全RNAでトリプリケートで実施した。PCR反応は、2μLのcDNA、各々16pmolのプライマー(17Fフォーワード:CCAAGAAGAGGATGAGGAGA(配列番号:15)および18Rリバース:GAGGCAGTCGCTGACACC(配列番号:16))、各々200μMのdNTP、50mMのKCl、10mMのトリス塩酸(pH8.3)、2.0mMのMgClおよび1.0Uのアンプリタックゴールド(Perkin-Elmer)を用い20μLの容積で実施した。サイクリング条件は以下のとおりであった:94℃10分の初期変性、続いて94℃30秒、58℃30秒、72℃30秒の35サイクル、さらに72℃10分の最終伸長。PCR生成物はEXOSAP-it(USB Inc., Clevland, OH)で精製し、自動AB1377シークェンサー(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA)を用いて配列を決定した。続いて2つの択一スプライス転写物の相対量を定量した。各事例のcDNAのトリプリケートサンプルを、上記と同じPCRプライマーおよび条件を用い0.2μLのα-32PラベルdCTP(10mCi/mL)を添加しPCR増幅に付した。直接的DNA配列決定によって全てのサンプルが両転写物を保有することが示されたので、ホモ接合体Q1077およびQ1077del転写物を表すコントロール鋳型を合成し、インテグレーテッドDNAテクノロジー(Integrated DNA technologies, Inc., Coralville, IA)によってPAGE精製を実施した。得られた放射性ヌクレオチドを取り込んだPCR生成物(下記のどちらかを含む:1)残基1077のグルタミン挿入をコードする転写物(135塩基対)または2)残基1077のグルタミンをコードしない転写物(132塩基対))を変性ゲル電気泳動(6%ポリアクリルアミドゲル(19:1)、7M尿素ゲルで70ワットで2時間45分)によって分離した。ホスホイメージャー445SIによるオートラジオグラフィーおよびイメージクァント(ImageQuant)5.0ソフト(Molecular Dynamics, Piscataway, NJ)を用いて2つの択一スプライス転写物のシグナルを定量した。
【0024】
遺伝子の発現、突然変異誘発および命名:SCN5AクローンhH1(GenBank No.M77235)はDr. Al. George(ME. Gellens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:554-558, 1992、前記文献は参照により本明細書に含まれる)の好意によりprcCMV(Invitrogen)として提供された。hH1c構築物(GenBank No.AY148488)はhH1Bクローン(GenBank AF48298)(B. Ye et al., Physiol. Genomics 12:187-193,2003、前記文献は参照により本明細書に含まれる)から、558位のアルギニン(R)をヒスチジン(H)に、さらに618位のイソロイシン(I)をロイシン(L)に下記の方法によって変異させることによって構築した。コンセンサスリファレンス配列(GenBank No.NM_00035 June 2003)は2015のアミノ酸を有し、hH1cと同一である。命名とリファレンスの目的で、我々は、SCN5Aのための配列としてIHGSC(GenBank No. AC137587、2003年4月に寄託)から推定される完全長の2016個のアミノ酸の方が好ましいと考える。なぜならば前記の命名は、最初のSCN5AクローンhH1(ME. Gellens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:554-558, 1992)によってコードされる2016個のアミノ酸を基準にした既に確立された番号付与システムを維持するからである。前記リファレンス配列から生じる配列の変動を含むチャネルは、den Dunnen & Antonarakisden (JT den Dunnen et al., Hum. Mutat. 15:7-12, 2000)が推奨したように、セミコロンで分けられ、さらに括弧内に収められたアミノ酸置換によって示される。変種チャネル[H558R]、[Q1077del]、[H558R;Q1077del]、[H558R;Q1077del;M1766L]および[Q1077del;M1776L]は以下の方法によって適切な残基での突然変異誘発によって作製された。
【0025】
変異はエキサイト(Excite(登録商標))突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用い製造元の推奨するプロトコルにしたがって作製した。DNAはキアゲン(Qiagen; Valencia, CA)のカラムおよびプロトコルにより単離し精製した。全ての構築物の配列を決定し、目的のアミノ酸変化を取り込んだことを立証し、さらに意図しない変化は誘発されなかったことを確認した。これらの構築物をpCDNA3(Invitrogen, Carlsbad, CA)に配置し、スーパーフェクト(Superfect; Qiagen)を製造元の推奨するプロトコルに従って使用して1.5μgのプラスミドDNAをトランスフェクトすることによってHEK293細胞株で発現させた。マーカーとしてGFPタンパク質を(1:1で)同時トランスフェクトしトランスフェクト細胞を特定した。トランスフェクション後24時間でHEK293細胞を採集し、先に記載されたように(T. Nagatomo et al., Am. J. Physiol. (Heart 44)275:H2016-H2024 (1998)、前記文献は参照により本明細書に含まれる)肉眼的な電流を測定した。別に記載がなければ実験は一過性トランスフェクションによって実施された。いくつかの実験では安定な態様で前記の変種を発現する細胞株を使用した。前記安定な細胞株のためには、hNav1.5αサブユニットを含有するpcDNA3(Invitrogen)プラスミドDNAをHEK293細胞にトランスフェクトし、以下のように選別した。トランスフェクションの約24時間前に、60mmの直径のプレート(Falcon 3001)に約1x105細胞を3mLのMEM完全培地(2mMのL-グルタミン、10%ウシ胎児血清、1mMのピルビン酸ナトリウム溶液、0.1mMの非必須アミノ酸、10,000Uのペニシリンおよび10,000mgのストレプトマイシンを補充した最少必須培地(Gibco/Invitrogen))中で平板培養した。1.5μgのプラスミドDNAを10μLのスーパーフェクト試薬(Qiagen)とともに140μLのオプチ-MEM(Opti-MEM; Gibco/Invitrogen)と混合し、室温で10分インキュベートしてDNAを前記スーパーフェクトに結合させた。続いてこのHEK細胞を前記DNAおよびスーパーフェクト溶液ととも1mLのMEM完全培養液中で3.5時間インキュベートし、この時点で前記培養液を3mLのMEM完全培養液と交換した。トランスフェクション後24時間して、800ng/mLのG418抗生物質を添加した。MEM完全培地+G418培溶液をこの後72から96時間毎に交換した。3−4週間後に、前記トランスフェクトしたプレートから単一コロニーを単離し、6-ウェルプレート(Costar3516, Corning, NY)の別々のウェルで増殖させた。RNAを単離し(LPS(Moonachie, NJ)のRNAisolを使用)、RT-PCR分析によってスクリーニングした。RT-PCR陽性であることを調べたコロニーを電圧クランプによって分析した。
【0026】
電圧クランプ技術:完全細胞パッチ-クランプ技術を利用して肉眼的INaを測定した(T. Nagatomo et al., Am. J. Physiol. (Heart 44)275:H2016-H2024, 1998)。ピペット溶液は、120mMのCsF、15mMのCsCl、2mMのEGTA、5mMのHEPESおよび5mMのNaCl(CsOHによりpH7.4)を含んでいた。データは室温でpCLAMP8(Axon Instruments)を用いて記録した。電圧-クランププロトコルは本データと一緒に簡単に記載されており、さらに以前に詳細に報告されている(C.R. Valdivia et al., J. Mol. Cell. Cardiol. 34:1029-1039, 2002)。ピークINaおよび後期INaは、以前(T. Nagamoto et al., Am. J. Physiol.(Heart 44) 275:H2016-H2024, 1998)に記載されたように受動的リークを差し引いた後で得られた。パラメーターフィットはClampfit8(Axon Instruments)を用いて得られた。一方向ANOVAを実施し、3つ以上の群の平均データにおける統計的有意を決定した。統計的有意はP値<0.05によって決定された。
【0027】
免疫細胞化学:FLAGエピトープを免疫細胞化学実験で用いられるチャネルのドメインIのS1とS2の間に導入した。トランスフェクトおよび非トランスフェクトHEK293細胞を4%のパラホルムアルデヒドで室温で20分固定した。前記固定細胞を5%のヤギ血清および0.2%のトリトンPBS溶液で30分室温でブロックした。前記ブロック工程の後で、細胞を1:2000の割合のマウス抗FLAGM2一次抗体(Stratagene(登録商標)、La Jolla, CA)とともに一晩4℃でインキュベートした。次ぎの日、前記細胞をPBSで洗浄した後、1:100の蛍光結合ヤギ抗マウス抗体(Jackson, West Grove, PA)を二次抗体として適用し、暗所で1時間室温で反応させた。ウサギ抗カルネキシンIgGを小胞体(ER)マーカーとして用い同時局在を調べた。ウサギ抗カルネキシンIgG(1:1000希釈)の250μLは、蛍光結合ヤギ抗マウス二次抗体とのインキュベーション後直ちにトランスフェクト細胞に適用した。前記反応物は37℃で2時間インキュベートした。抗カルネキシンIgGとインキュベートした後、細胞を300μLのPBSで2回洗浄し、1:100の割合の150μLのテキサスレッド結合抗ウサギ二次抗体(Jackson, West Grove, PA)とインキュベートした。テキサスレッド結合抗ウサギ二次抗体とのインキュベーションは暗所で1時間室温で実施した。細胞はPBS溶液を洗浄し、90%グリセロールおよび10%炭酸ナトリウムを含む溶液で固定した。15mWの混合ガス(クリプトン/アルゴン)レーザーによるバイオラド(Bio-Rad)MRC1024レーザースキャンニングシステムを用いて免疫蛍光により標識された細胞を観察した。バイオラドMRC1024システムはニコンジアフォト200倒立顕微鏡に搭載した。蛍光標識細胞の画像は40倍の対物レンズおよび2xのズームの下でスキャンした。共焦点系では絞り3.6、レーザーパワー100%、カメラ感度ゲイン900に設定された。1画像につき5フレームを有するカルマン(Kalman)コレクションフィルターを適用して画像を記録した。
【0028】
結果
SCN5Aクローンの配列比較およびコントロールパネルの遺伝子型決定:hH1の配列(M.E. Gellens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:554-558, 1992)、hH1aの配列(H.A. Hartmann et al., Circulation Research 75:114-122, 1994、前記文献は参照により本明細書に含まれる)およびhH1bの配列(B. Ye et al., Physiol. Genomics 12:187-193,2003)を比較し、5残基のアミノ酸の違いを利用可能なGenBankアクセス番号とともに表1に示す。hH1bクローンの以前の研究(B. Ye et al., Physiol. Genomics 12:187-193,2003)ではhH1およびhH1aは再度配列決定され、これら2つのクローン間の相違は、以前に報告された9残基ではなく表1に示した3残基のみであることが見出された。
【0029】
表1:完全長cDNAクローン(hH1、hH1a、hH1b)、ゲノム配列決定(hH1c)およびゲノムデータベース(Celera、IHGSC)から推定されたSCN5A/Nav1.5配列の比較

aIHGSC=国際ヒトゲノム配列決定共同体(International Human Genome Sequencing Consortium sequence and reference sequence)の配列およびリファレンス配列;hH1、hH1a、hH1B=以前のSCN5AのcDNAクローン;hH1c=コントロール対象者のゲノム配列決定に由来する一般的配列(Celeraヒトゲノムデータベースの検索によって同じ配列が特定された)。
bアクセス番号=GenBankヌクレオチドアクセス番号(利用可能な場合)。
cアミノ酸番号=タンパク質のアミノ酸残基番号、IHGSCデータベースとともに最初に単離されたSCN5Aと一致する完全長の番号付与を用いた。上記の表に記載されていない全ての2011の位置について全ての配列でアミノ酸は同一である。“Δ”はこの位置のアミノ酸は存在しないことを示す(したがって生成物は長さが2016アミノ酸ではなく2015である)。調査した全ての人の集団の全タンパク質集団における558位、559位、618位、1027位および1077位のアミノ酸頻度はそれぞれ、Hが70%、Tが100%、Lが100%、Rが100%およびΔが65%である。
dセレーラ(Celera)ヒトゲノムデータベースの検索で同じ配列が特定された。
e変種の名称=[H558;Q1077](IHGSCと同一であると本明細書で示された)に対する名称。
f集団内頻度=調査集団における、この配列を有するタンパク質生成物の概算百分率。
【0030】
我々は、200人(100人の白人および100人の黒人)のコントロールパネルから問題の5つの位置についてゲノムDNAの対立遺伝子座頻度を調べた。前記5つの位置におけるもっとも一般的な残基は表1のhH1cである。559位、618位および1027位については、400のリファレンス対立遺伝子座で100%がT559、L618およびR1027を示し、現存のクローンの各々が稀な変種を含み、いずれも一般的配列を代表していないことが示唆された(表1)。セレーラ(Celera)ヒトゲノムデータベースの検索によって、推定されるアミノ酸配列はhH1cと一致することが示された。NIHの国際ヒトゲノム配列決定共同体(International Human Genome Sequencing Consortium sequence and reference sequence)の推定されるアミノ酸配列もまたhH1c配列と一致した。しかしながら、IHGSC配列は追加グルタミンを1077位に含み、前記はhH1クローンには見出されたがhH1aまたはhH1Bには見出されない。
【0031】
一般的多形性、H558R:残基558は、ヒスチジン(H)のアルギニン(R)による置換を含む一般的多形性の主役であり(H. Isawa et al., J. Hum. Genet. 45:182-183, 2000)、報告された集団内頻度は19から24%である(P. Yang et al., Circulation 105:1943-1948, 2002)。我々は、H558Rは黒人および白人の両者において一般的な多形成であることを確認した(表2)。黒人におけるH558Rの見かけ上の高頻度は統計的には有意ではない。
表2:H558Rの多形性の遺伝子型および対立遺伝子座頻度

【0032】
択一的にスプライスされた一般的変種、Q1077del:hH1クローンは1076位(エクソン17の最後のコドン)および1077位(エクソン18の最初のコドン)の両アミノ酸位でグルタミン残基(Q)を含んでいた(ME. Gellens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:554-558, 1992)。エクソン18のアクセプター部位の配列はggggtcttttcagCAGGAATCC(配列番号:17)との註解が付されていた。前記で小文字はイントロン配列を表し、大文字はエクソン18の5'エクソン配列を表している(図1参照)。下線付き小文字は、スプライス部位の認識のために予想される“ag”アクセプター部位を示す。しかしながら、スプライス部位の分析ツールによれば、上記に示したagの後のCAGはまた末端イントロン配列を含み、スプライシングのために好ましいアクセプター部位となり、1077位のグルタミン残基の欠失を生じることができることが示された(Q1077del)。
【0033】
もっとも一般的にはSCN5Aは、hH1ではアミノ酸1076位および1077位の両方に、hH1aおよびhH1bでは1076位にのみグルタミン(Q)を有するのか否かの問題に答えるために、我々は、乳児突然死症候群(SIDS)、構造的に正常な心臓を有する乳児、心肥大心筋症の成人、および構造的に正常な心臓を有する成人から得られたヒト左心室心筋標本から単離したmRNAに由来するエクソン17/18照準RT-PCR生成物について直接的配列決定を実施した。全対象者が“cag”インフレーム挿入についてヘテロ接合体であり、このアクセプター部位を含む択一的スプライシングの普遍的存在を示した(図1)。各択一スプライス転写物の相対量をオートラジオグラフィーとホスホイメージングによって定量した(図2)。心筋RNAから得られたRT-PCR生成物例によって、余分のcagコドンを含む135bpの鋳型(Q1077)をもつコントロール実験および余分のcagコドンを欠く132bpの鋳型(Q1077del)について予想されたサイズ生成物が示された。要約データ(図2B)は、Q1077delは、調べた各群で有意に豊富である好ましい択一スプライス変種であることを示している。全体的に、Q1077を含む択一変種の割合は35±2.0%(31−38%の範囲にあり、n=20)であり、Q1077del転写物は65±2.0%(62−69%の範囲にあり、n=20)であった。全テストグループは男性9人および女性11人を含み、乳児グループは白人5人および黒人5人を含んでいた。この優先的スプライシング度は、年齢、性別、人種または心室肥大の有無に影響されなかった。さらにまた、Q1077およびQ1077del転写物のこれら比率は、RNAが右心房、左心房、右心室または左心室から得られたか否かにかかわらず維持された。
【0034】
ヒト集団における一般的な4つのSCN5A変種:コントロールにおける我々のゲノム配列決定およびスプライス変種Q1077delの我々の頻度測定から得られた予想アミノ酸頻度の概算値を基にして、現存クローンおよび他の完全長配列の集団頻度を概算した(表1)。これらの概算値はQ1077delスプライス変種の確立(65%)およびH558Rを含むゲノム変種の確立(30%)間の非依存性を仮定してる。以前の研究で用いられた3つのクローンhH1、hH1a、hH1bは各々における稀な変種の存在のために集団内頻度は極めて低いと概算されたことに留意されたい。もっとも一般的な変種[Q1077del](45.5%)はhH1c(セレーラ配列)と同一であり、さらにNCBIのSCN5Aのためのリファレンス配列(GenBankアクセス番号NM_00335)とも同一である。完全長のリファレンス配列SCN5A([H558;Q1077])は、実際には[Q1077del]よりも頻度は低く24.5%である。[H558;Q1077del](19.5%)および[H558R](10.5%)(我々の取り決めでは[H558R]変種はQ1077を含む)と称されるH558R多形性をもつ変種はわずかに一般性が低い。
【0035】
SCN5A変種の機能に関する性状:[H558;Q1077]並びに他の一般的変種[H558R]、[Q1077del]および[H558R;Q1077del]を発現する構築物を作製し、カイネティクス実験のために個々にHEK細胞にトランスフェクトした。もっとも古い文献の実験ではhH1が用いられていたので、我々は、比較のためにhH1を前記変種と同じ条件下で同時に発現させた。4つの変種およびhH1の代表的電流が図3に示されている。強力な電流を発現した変種では以下のパラメーターでは顕著な相違は特定されなかった:i)活性化(図4A、表3)、ii)電流減衰(表3)、iii)不活化からの回復(図4C、表3)およびiv)後期または持続電流(表3)。しかしながら、hH1の不活化の中点は、Q1077を欠く2つの変種([Q1077del]および[H558R;Q1077del])に対して有意にマイナスであった(図4Bおよび表3)。










【0036】
表3:hNav1.5チャネルの電圧依存動的パラメーター

ここに示したデータはN個の実験に適合させた曲線から得られた平均±SEMである。活性化、不活性化および不活性化からの回復パラメーターは図3の場合のようにして得られた。-30mVでのINaの減衰については、ピークの90%後のINaトレースの割合は、以下の指数関数の合計に適合させた:INa(t)=1−(Af*exp-t/τf+As*exp-t/τs)+代償(式中、tは時間であり、τfおよびτsはそれぞれ高速および低速成分の時間定数を示し、AfおよびAsはそれぞれ高速および低速成分の振幅である。後期INaは以前に記載(C.R. Valdivia et al., J. Mol. Cell Cardiol. 34:1029-1039, 2002)されたように、脱分極後720msで得られた。ボンフェローニーのT-検定による一方向ANOVAを用いたとき、星印で印しをつけたhH1の不活化の中点は、Qを欠く変種、[H558;Q1077del]および[Q1077del]に対して顕著にマイナスであった。
【0037】
もっとも劇的な発見は、Q1077を含む[H558R]は非常に低い電流密度を発現させるということであった。電流密度のデータは図5にまとめられている。図5では、[H558R]の電流密度は他の変種よりも劇的および有意に低かった。Q1077を含む他の構築物(hH1および[H558;Q1077])もまた電流の低下をもつ傾向があったが、前記相違はANOVAでは統計的な有意には達しなかった。[H558R]の一過性および安定的トランスフェクションを受けた細胞由来のmRNAのRT-PCRは両者ともに豊富な[H558R]転写物を示したが、電流は極めてわずか示されただけであった。β1サブユニットは、Nav1.5のαサブユニットと同時発現されたときに電流密度を増加させた(H.B. Nuss et al., J. Gen. Physiol. 106:1171-1191, 1995)。β1サブユニットはまたトラフィッキング欠損SCN5A変異を“レスキュー”した(C.R. Valdivia et al., Cardiovascular Research 54:624-629, 2002)。[H558R]をβ1サブユニットと同時発現させたとき電流増加が観察されたが、ただし単独で発現された他のチャネルのαサブユニットのレベルではなかった(図5)。[H558R]で認められた小さな電流は内因性電流であるのか否かを決定するために、我々はHEK細胞で電圧クランプを実施した。8つの細胞で、ただ1つの細胞のみが、[H558R]単独では2.8pA/pFおよびβ1サブユニット同時トランスフェクト[H558R]で16pA/pFと比較して0.5pA/pF未満の平均密度に対して100pAの電流を有した。β1との同時トランスフェクション(1.0±0.5pA/pF、n=9)、メキシレチン100μMとの24時間インキュベーション(1.1±0.4pA/pF、n=10)または27℃でのインキュベーション(0.9±0.4pA/pF、n=8)ではトランスフェクトされていない細胞で内因性電流を我々は有意に増加させることはできなかった。我々は、[H558R]は実際に小さな電流を生じたのだと結論した。[H558R]および[H558R;Q1007del]の両変種を同時発現させたとき(プラスミドDNA、各々0.75μg)、正常な電流密度が認められた。我々は、Q1077を含む変種はより低いINa密度をもつ傾向があり、さらにまた不活性化カイネティクスの電圧依存性をマイナス方向にシフトさせる傾向があると結論した。H558R多形性が、Q1077を含む択一スプライス転写物セットで発現されるとき、INa密度は劇的に減少する。
【0038】
[H558R]変種の細胞トラフィッキング:電流密度が減少するいくつかのSCN5A変種は、トラフィッキング欠損をもち(B. Ye et al., Physiol. Genomics 12:187-193,2003; G. Baroudi et al., Circulation Research 90:E11-E16, 2002)、細胞表面にトラフィッキングすることができないことが免疫細胞化学によって示された。[H558R]は細胞表面にトラフィッキングできるか否かを決定するために、我々は、FLAGエピトープを挿入することによりチャネル変種を標識し、免疫蛍光顕微鏡法および共焦点顕微鏡法によってチャネルの位置を決定した。図6の各パネルでは、光学顕微鏡画像で核および細胞表面が特定され、続いて共焦点免疫蛍光画像が示されている。トランスフェクトされていない細胞は予想のとおり蛍光シグナルを生じなかった(図6A)。強い電流密度を生じる[Q1077del]変種は、通常のトラフィッキングチャネルについて予想されたとおり細胞表面で蛍光の外縁を示した(図6B)。[H558R]変種はほとんど電流を発現しなかったが、細胞表面に蛍光を示し(図6C)、電流の欠如はトラフィッキング欠損によって惹起されないことを示唆した。
トラフィッキング欠損のチャネルの例として、さらに[H588R]を含む我々の実験の非トラフィッキング陽性コントロールとして、我々は前記変種でM1766L変異を作製し、これらの実験の2つに由来するデータを示す(図6DおよびE)。我々は以前に、hH1a[T559A;Q1077del;M1766L]ではM1766Lはトラフィッキング欠損であるが、hH1b[H558R;L6181;Q1077del;M1766L]では正常にトラフィッキングすることを示した。M1766L変異を[Q1077del]に配して[Q1077del;M1766L]を作製したとき、蛍光は核周辺に限られ外縁の標識は全く存在せず、トラフィッキング欠損と一致した(図6D)。これによって、hH1aにおける稀な変種T559Aは、以前に記載(B. Ye et al., Physiol. Genomics 12:187-193, 2003)されたようにトラフィッキング欠損に必要であるという可能性が排除される。小胞体に対するマーカーを含む画像は図6Dの第三番目のパネルに示され、図6Dの第四番目の画像は第二および第三の画像と重ね合わされ、チャネルと小胞体の位置が同時に示されている。M1766Lを[H558R;Q1077del]バックグラウンドに配したとき、チャネルはレスキューされ、細胞外縁にチャネルが生成され(図6E)、以前のデータと一致し、さらにまたhH1bにおける稀な変種L6181はトラフィッキング欠損の“レスキュー”に必要ではないことを示した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】SCN5Aのエクソン18での択一的スプライシングを示す。上段のパネルはヒト心室から単離されたmRNAから得られたRT-PCR生成物の配列決定データ例を示す(下記実施例参照)。エクソン17のコード領域には単一の配列が存在するが、エクソン18のコード領域には二部分から成る配列が存在することに留意されたい。ゲノムDNA内のスプライスアクセプター部位は2つの“cag”リピートを有し、1077位のグルタミンの択一的スプライシングをもたらす。これによって2つのスプライス変種(1つは2015アミノ酸(上段のmRNA)、もう1つは2016アミノ酸(下段のmRNA))がもたらされる。
【図2】択一的にスプライスされた(Q1077をコードするかまたはQ1077を排除する(Q1077del))変種SCN5Aの転写物の定量的分析を示す。(A)3つのコントロール実験および4人の対象から得られたRT-PCR生成物例。DNAを含まないサンプル(NEG)は陰性コントロールとして利用され、“cag”リピートを含む(Q1077)135bpの合成鋳型および“cag”リピートを含まない(Q1077del)132bpの鋳型は陽性コントロールとして利用される。乳児突然死症候群(SIDS)の患者から検死で採取されたmRNAサンプル、構造的な心疾患をもたない乳児(Infant)、構造的心疾患をもたない成人(Adult)および肥大心筋症(HCM)の患者の筋腫摘出標本から得られたmRNAサンプルのRT-PCRは全て両方の転写物の存在を示した。(B)20人の対象者から得られたデータの要旨は、Q1077delをコードする転写物はQ1077と比較して常に豊富であったことを示している。棒線は、オートラジオグラフィーによるリン画像化で測定した、5人の対象者から得られた各転写物の平均および標準偏差を表している。
【図3】SCN5A変種の電圧クランプデータを示す。hH1および4つの一般的なSCN5Aチャネル変種配列の電流トレースが示されている。電流は、-140mVの保持電位から24ms持続する-140mVから+60mVまで種々のテスト電位に段階脱分極させることによって誘発した。電流タイムコースにおける明瞭な相違は観察されなかった。
【図4】SCN5変種の活性化、不活化および回復カイネティクスを示す。(A)図3のようにして得られた電流についてのピーク電流電圧関係を示すデータの要旨である。データは各データセットにおけるピークINaに対して標準化した。表示の線はボルツマン関数、Gna=[1+exp(V1/2−V)/κ]-1(式中、V1/2およびκはそれぞれ中点および勾配係数)、およびGna=INa/(V−Vrev)(式中、Vrevはリバーサル電位)によって作製した。(B)“定常状態”の不活化における電圧依存性を示すデータの要旨である。-140mVの保持電位から0mVのテスト脱分極、続いて1秒の条件付け工程から種々の条件付け電位(Vc)への反応で得られたINa。容量過渡電流(capacity transient)を標準化するために、-140への0.2msのステップバックをテスト脱分極の前に適用した。不活化関係から得られる電圧依存性利用可能性はデータを以下のボルツマン関数に当てはめて求めた:INaINa-max[1+exp(Vc−V1/2)/κ]-1(式中、V1/2およびκはそれぞれ中点および勾配係数であり、Vは膜電位である)。(C)不活化からの回復を示すデータの要旨である。不活化からの回復は2つのパルスプロトコルを用いて評価した。このプロトコルでは、0mVへの1秒間の条件付け工程によってINaを不活化し、続いて回復時間“t”の後で-140mVの回復電位で0mVへのテストパルスを実施した。テストパルスに反応したピークINaを最大ピーク電流に対して標準化し、“t”に対してプロットした。この回復プロセスは2つの指数関数の合計に適合した:標準化INa[Afexp(-t/τf)]+[Asexp(-t/τs)](式中tは回復時間の間隔であり、τfおよびτsは高速および低速時間定数であり、AfおよびAsは回復成分の割合である)。
【図5】表示の変種についてのピークINa密度を示すデータの要旨である。電流は、-140mVの保持電位から-20mVへの段階脱分極によって誘発し、膜キャパシタンスに対して標準化した。hH1クローンについてのデータが歴史的コントロールとして含まれている。β1サブユニットとの[H558R]の同時発現が右端の棒線で示されている。前記棒線は、前記棒線内に示されている各構築物についてn個を含むn個の測定値に由来する平均および標準誤差を表している。ボンフェローニー(Bonferroni)のt-検定による一方向ANOVA(自由度124)を用いて、これら振幅の有意差を評価した。ANOVAによれば、[H558R]のINa密度は[Q1077del]および[H558R;Q1077del]よりも有意に低い(p<0.05)が、しかしながらQ1007含有変種hH1または[H558;Q1077]よりは低くなかった。
【図6】[H558R]は細胞表面への正常なトラフィッキングを有することを示している。各パネルの最左端画像の標準的光学顕微鏡写真が、Naチャネルに挿入したFLAGエピトープに対し免疫染色を施したヒト胎児腎(HEK)細胞の共焦点顕微鏡写真と比較される。(A)トランスフェクトされていないHEK細胞は免疫染色を示さない。(B)[Q1077del]チャネルは外縁および核の周辺の正常な免疫染色パターンを示す。(C)[H558R]もまた正常な染色パターンを示し、前記は細胞表面にトラフィッキングすることを示唆している。(D)[Q1077del]の変異M1766Lに関しては、第二番目の画像は免疫染色が核周縁に限定されることを示している。第三番目の画像は小胞体マーカーによる免疫染色を示し(実施例参照)、さらに四番目の画像(前の2つの画像に重ね合わされている)は、非トラフィッキングチャネルと小胞体マーカーとの同時局在を示している。(E)M1766L変異が[H558R;Q1077]バックグラウンドに創出されたとき、細胞外縁への正常なトラフィッキングが認められた。ここに表示した全ての結果は、少なくとも7つのさらに別の実験でも観察された。
【配列表】









































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から成る群から選択されるポリヌクレオチドを含む単離核酸:
(1)以下の(i)−(iv)から成る群から選択されるポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、(i)アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチド、(ii)アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチド、(iii)アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し、1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチド、および(iv)アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチド;;
(2)前記第一のポリヌクレオチドと少なくとも80%同一性を前記第一のポリヌクレオチドの全長にわたって有する第二のポリヌクレオチド;
(3)1つまたは2つ以上の非決定的アミノ酸の位置において保存的置換、欠失または再配置を有する任意のSCN5Aポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド;および、
(4)前記第一、第二または第三のポリヌクレオチドの相補物である第四のポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記核酸が、第一のポリヌクレオチド、第二のポリヌクレオチドおよび前記第一または第二のポリヌクレオチドの相補物であるポリヌクレオチドから成る群から選択されるポリヌクレオチドを含む請求項1に記載の単離核酸。
【請求項3】
前記第一のポリヌクレオチドが、558位、559位、618位、1027位および1077位以外の少なくとも1991のアミノ酸位で配列番号:2と同一であるSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項4】
前記第一のポリヌクレオチドが、558位、559位、618位、1027位および1077位以外の少なくとも2001のアミノ酸位で配列番号:2と同一であるSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項5】
前記第一のポリヌクレオチドが、558位、559位、618位、1027位および1077位以外の少なくとも2006のアミノ酸位で配列番号:2と同一であるSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項6】
前記第一のポリヌクレオチドが、558位、559位、618位、1027位および1077位以外の少なくとも2010のアミノ酸位で配列番号:2と同一であるSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項7】
前記第一のポリヌクレオチドが、アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項8】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:2をコードする請求項7に記載の単離核酸。
【請求項9】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:1のヌクレオチド1から6048である請求項8に記載の単離核酸。
【請求項10】
前記第一のポリヌクレオチドが、アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項11】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:4をコードする請求項10に記載の単離核酸。
【請求項12】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:3のヌクレオチド1から6048である請求項11に記載の単離核酸。
【請求項13】
前記第一のポリヌクレオチドが、アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し、1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項14】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:6をコードする請求項13に記載の単離核酸。
【請求項15】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:5のヌクレオチド1から6045である請求項14に記載の単離核酸。
【請求項16】
前記第一のポリヌクレオチドが、アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチドをコードする請求項1に記載の単離核酸。
【請求項17】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:8をコードする請求項16に記載の単離核酸。
【請求項18】
前記第一のポリヌクレオチドが配列番号:7のヌクレオチド1から6045である請求項17に記載の単離核酸。
【請求項19】
非天然の発現制御配列と機能的に連結された請求項1のポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物。
【請求項20】
(1)アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(2)アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(3)アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し、1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および(4)アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドから成る群から選択されるポリヌクレオチドであって、各ポリヌクレオチドが非天然の発現制御配列と機能的に連結されてある前記ポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項21】
前記細胞が、アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、さらに非天然の発現制御配列と機能的に連結されてある前記ポリヌクレオチドを含む請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:2をコードする請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
前記細胞が、アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、さらに非天然の発現制御配列と機能的に連結されてある前記ポリヌクレオチドを含む請求項20に記載の細胞。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:4をコードする請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
前記細胞が、アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し、1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、さらに非天然の発現制御配列と機能的に連結されてある前記ポリヌクレオチドを含む請求項20に記載の細胞。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:6をコードする請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
前記細胞が、アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し1077位のアミノ酸が欠失したSCN5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、非天然の発現制御配列と機能的に連結されてある前記ポリヌクレオチドを含む請求項20に記載の細胞。
【請求項28】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:8をコードする請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
前記細胞がヒト胎児腎細胞株に由来する請求項20に記載の細胞。
【請求項30】
請求項1の第一または第三のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項31】
請求項1の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項32】
請求項3の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項33】
請求項4の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項34】
請求項5の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項35】
請求項6の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項36】
請求項7の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項37】
請求項8の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項38】
請求項10の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項39】
請求項11の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項40】
請求項13の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項41】
請求項14の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項42】
請求項16の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項43】
請求項17の第一のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項44】
請求項31のポリペプチドと特異的に結合する抗体。
【請求項45】
以下の工程を含む、ナトリウムチャネルの活性を変化させることができる物質を特定する方法:
請求項20に記載の培養細胞を提供し;
テスト物質に前記細胞を暴露し;
前記細胞のナトリウムチャネル活性を決定し;
前記ナトリウムチャネル活性を、前記テスト物質に暴露されていないコントロール細胞のそれと比較し、この場合ナトリウムチャネル活性の違いは、前記物質がナトリウムチャネル活性を変化させることができることを示す。
【請求項46】
前記決定工程が、細胞膜を通過するナトリウム電流、膜電位および細胞内ナトリウムレベルから成る群から選択されるパラメーターを測定することを含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
以下の工程を含む、ナトリウムチャネルの発現を変化させることができる物質を特定する方法:
請求項1の第一のポリヌクレオチドを含む細胞をテスト物質に暴露し、ここで前記ポリヌクレオチドの発現は前記細胞の天然のコントロール配列の制御下にあり;
前記ポリヌクレオチドの発現レベルをmRNAまたはタンパク質レベルで決定し;
前記発現レベルを、前記テスト物質に暴露されていないコントロール細胞のそれと比較し、この場合発現レベルの違いは、前記物質がナトリウムチャネルの発現を変化させることができることを示す。
【請求項48】
以下の工程を含む、生物学的サンプルまたは生物学的サンプルに由来する調製物が請求項32のポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸を含むか否かを決定する方法:
前記サンプルまたは調製物を、ポリヌクレオチドプローブ、一対のポリヌクレオチドプライマーまたは前記核酸もしくはポリペプチドに特異的な抗体と接触させ;さらに、
前記プローブまたは抗体が前記サンプルまたは調製物中の成分と特異的に結合するか否か、または前記プライマーが前記サンプルの成分を特異的に増幅させるかを決定し、ここで前記結合または増幅は前記サンプルが前記核酸またはポリペプチドを含むことの指標である。
【請求項49】
以下の工程を含む、ナトリウムチャネル上の変異が疾患に附随するか否かを決定する方法:
前記変異を請求項1のポリヌクレオチドに導入し;さらに
前記疾患の適切なモデルで前記変異の影響を決定する。
【請求項50】
以下の工程を含む、ヒトまたはヒト以外の対象が長QT症候群のリスクをもつか否かを決定する方法:
前記対象が、(1)アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5A変種、(2)アミノ酸558位、559位、618位、1027位および1077位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシン、アルギニンおよびグルタミンを有するSCN5A変種、(3)アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれヒスチジン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し、1077位のアミノ酸が欠失したSCN5A変種、および(4)アミノ酸558位、559位、618位および1027位にそれぞれアルギニン、スレオニン、ロイシンおよびアルギニンを有し1077位のアミノ酸が欠失したSCN5A変種から成る群から選択されるSCN5A変種上にM1766L変異を有するか否かを決定し、
ここで、(1)、(2)または(3)変種上のM1766L変異は、前記対象が長QT症候群のリスクを有することを示し、さらに(4)変種上のM1766L変異は、前記対象が長QT症候群のリスクをもたないことを示す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−515504(P2006−515504A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526329(P2004−526329)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/024190
【国際公開番号】WO2004/012668
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(500056873)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (8)
【Fターム(参考)】