説明

ナトリウム/カルシウム交換体「フォワードモード」調節化合物を検出するための蛍光ベースのアッセイ

トランスポーターは、科学的及び経済的な機会を提供する、非常に大きな可能性を有する、新たな標的ファミリーである。ナトリウム/カルシウム交換体は、種々の細胞からCa2+を除去するための重要な機構である。心臓において、それは、Ca2+チャネルを通って入っていたCa2+を排出して、収縮を開始させ、この間にNa+が心臓細胞に入る。ナトリウム/カルシウム交換体の活性を調節する化合物を同定することは、非常に興味深い。本発明は、NCX及びNCKX「フォワードモード」調節化合物を検出するための蛍光ベースのアッセイに関する。それは、さらに、ナトリウム/カルシウム交換体をエクスプライムする細胞を含むパーツのキット、及びナトリウム/カルシウム交換体のアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性について化合物をテストするためのパーツのキットの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム/カルシウム交換体及びそれらの活性を測定するための方法に関する。より詳しくは、本発明は、ナトリウム/カルシウム交換体「フォワードモード」調節化合物を検出するための蛍光ベースのアッセイに関する。それは、さらに、ナトリウム/カルシウム交換体を発現する細胞を含むパーツのキット、及びパーツのキットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生命についての基本的な要件は区画化であり、生体膜はこの原則を実現するための自然のツールである。しかし、脂質二重層−細胞膜の基礎となる構造−は、輸送が細胞及び生物において生活機能を維持するために必須である、大抵のイオン及び化合物に対して不透過性である。このパラドックスに対する答えは、細胞膜の半透過性にあり、膜を通過しなければならない溶質は、特定の膜タンパク質によって輸送される。これらの輸送体は、イオン勾配の発生及び維持、栄養素の取り込み、代謝産物の輸送、シグナル伝達分子の再取り込み、並びに毒性化合物及び老廃化合物の処分を担っている。従って、輸送体は、この文脈において、疾患に関連する異常に対して直接的な影響を与える、可能性のある薬物標的である。
【0003】
ナトリウム/カルシウム交換体ヒト遺伝子ファミリー(NCX又はSLC8としても公知)は、3つの別個のタンパク質、NCX1、NCX2及びNCX3を包含する。SLC8は、SLC24と共に、Na+/Ca2+カウンタートランスポーターのスーパーファミリーを構成する。SLC24ファミリーメンバーはまたK+を輸送し、それらはNCKXとしても公知である。
【0004】
NCX1は、このファミリーの最も高度にキャラクタライズされたメンバーであり、その発現は、ヒトの心不全においてアップレギュレートされ、心筋梗塞後の虚血−再灌流損傷に関与する。NCX1の阻害は、心不全において心筋収縮性を正常化し、虚血後再灌流の間、心臓保護的に作用する(非特許文献1、2)。NCX2は脳において、NCX3は脳及び骨格筋において主に発現され、それらの生理学的役割は、分かりにくいままである。
【0005】
ナトリウム/カルシウム交換体は、種々の細胞からCa2+を除去するための重要な機構である。心臓において、それは、Ca2+チャネルを通って入っていたCa2+を追い出し、収縮が開始され、一方、Na+は心臓細胞に入る。心臓血管疾患におけるその関連性は、例えば、非特許文献3において説明されている。従って、製薬産業は、例えば、非特許文献4に記載されているように、NCXを阻害する化合物を開発した。例えば非特許文献5において電気生理学的な手段によって示されたように、Na+/Ca2+交換体は、逆方向に動く各Ca2+について3〜4個のNa+を起電的に輸送する。NCXは、細胞質のCa2+濃度([Ca2+]イン)を、細胞外のCa2+濃度([Ca2+]アウト)よりも3〜4桁下に維持することができる。それにもかかわらず、正味のCa2+輸送の方向は、Na+の電気化学的な勾配に依存する。Na+及びCa2+の移動について、同時の及び連続的な輸送モデルが提案されており、証拠の大部分が後者を支持している。
【0006】
輸送体は、科学的及び経済的な機会を提供する、非常に大きな可能性を有する、新たな標的ファミリーである。他方では、輸送体は、創薬技術の点で困難な標的クラスである。
【0007】
例えば、カルシウム流を遮断すること及び/又はカルシウムチャネルの活性化を阻害することによって、チャネル活性を調節する化合物を同定することが、非常に興味深い。それを行うための1つの標準法は、パッチクランプ実験の使用による。これらの実験において、細胞は、膜電位の変化及び/又はテスト化合物の適用に応答して細胞膜を流れるカルシウム電流を測定することによって、非常に熟練したオペレーターにより、個々に順々に評価されなければならない。イヌ心室乳頭筋における活動電位に対する、NCXの新しい特異的な阻害剤である、Sea0400の効果が、研究及び開示された(非特許文献6、7)。
【0008】
ジャイアントパッチ中のイオン流束を定量するためにイオン選択的電極技術を使用して、心臓のNa+/Ca2+交換体が多数の輸送モードを有することが示された(非特許文献8)。
【0009】
これらの実験は、有効かつ有益であるが、非常に時間がかかり、カルシウムイオンチャネル活性を調節する化合物についてのハイスループットアッセイへ適合可能でない。
【0010】
種々の技術が、電気生理学の標準法の代替法として開発されてきた。例えば、放射性流束アッセイが使用され、ここで、細胞は放射性トレーサー(例えば、45Ca)に曝露され、放射標識Caの流束がモニタリングされる。トレーサーがロードされた細胞が、化合物へ曝露され、トレーサーの流出を増強又は減少させる化合物が、細胞膜中のイオンチャネルの可能性のある活性化剤又は阻害剤として同定される。具体例は、非特許文献9に含まれている。特許文献1は、筋細胞膜小胞体(sarcolemmal vesicle)を使用してNa+/Ca2+交換体活性を測定する方法を開示しており、45Ca放射能を測定することによって、筋細胞膜小胞体中のCa2+取り込みの濃度を決定している。
【0011】
多くの放射性イオン輸送体アッセイは、感度が限られており、従って、データの質が不十分である。さらに、放射能スクリーニング技術に関連する費用及び安全性の問題は、広範囲の適用を妨げるハードルである。
【0012】
上述の創薬技術の中で、イオンチャネル及びイオン輸送体の活性を調節する化合物を同定するための放射性流束アッセイの使用は、細胞からのCa2+の流束をモニタリングすることによって、可能性のある活性化剤又は阻害剤としてテスト化合物が同定され得る技術であるので、本発明に最も近い先行技術である。放射性アッセイについての主な問題は、1秒当り約1〜1000分子−大抵のイオンチャネルよりも104倍少ない−のイオン輸送体の限られたターンオーバーを検出することにおける困難性に基づく。
【0013】
従って、最先端技術から生じる課題は、ナトリウム/カルシウム交換体モジュレータのハイスループットスクリーニング及びプロファイリングについて非常に良好な感度及び有用性を有するロバストなアッセイを同定することであった。その課題の解決法が、本発明によって提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP1031556
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Flesch et al., Circulation 1996
【非特許文献2】Komuro and Ohtsuka, Journal of Pharmacological. Sciences. 2004
【非特許文献3】Hobai, JA & O'Rourke,B (2004) Expert Opin. Investig. Drugs, 13, 653-664
【非特許文献4】Iwamoto, T. et al. (2004) J. Biol. Chem., 279, 7544-7553
【非特許文献5】Hinata, M. et al. (2002) J. Physiol. 545, 453-461
【非特許文献6】K. Acsai, “ESC Congress 2004” in Munich, Poster Nr. 2886, 表題: Effect of a specific sodium-calcium exchanger blocker Sea0400 on the ventricular action potential and triggered activity in dog ventricular muscle and Purkinje fiber
【非特許文献7】C. Lee et al., The journal of pharmacology and experimental therapeutics; Vol. 311: 748-757, 2004; 表題: Inhibitory profile of SEA0400 [2-[4-[(2,5-Difluorophenyl)methoxy]phenoxy]-5-ethoxyaniline] assessed on the cardiac Na+/Ca2+ exchanger, NCX1.1
【非特許文献8】Tong Mook Kang & Donald W. Hilgemann; Nature; Vol. 427, 5 February 2004; 表題: Multiple transport modes of the cardiac Na+/Ca2+ exchanger
【非特許文献9】T. Kuramochi et al.; Bioorganic & Medicinal Chemistry; 12 (2004) 5039-5056; 表題: Synthesis and structure-activity relationships of phenoxypyridine derivates as novel inhibitors of the sodium-calcium exchanger
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの主題は、ナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイに関し、ここで:
a)ナトリウム/カルシウム交換体を発現する細胞を備え;
b)細胞内カルシウムを測定するための着色物質を備え;
c)細胞をナトリウム/カルシウム交換体活性化剤と接触させ;そして
d)該着色物質からの発光シグナルのカルシウム媒介変化を、対照実験において生じた発光シグナルと比較する。
【0017】
本発明の別の主題は、化合物の添加に応答してのナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイに関し、ここで:
a)ナトリウム/カルシウム交換体を発現する細胞を備え;
b)細胞内カルシウムを測定するための着色物質を備え;
c)細胞を化合物と接触させ、ここで、該細胞は、該化合物で処理する前に、ナトリウム/カルシウム交換体活性化剤で処理される;そして
d)該着色物質からの発光シグナルのカルシウム媒介変化を、対照実験において生じた発光シグナルと比較する。
【0018】
一般的に、使用されるナトリウム/カルシウム交換体は、哺乳類起源のものであり、特に、ヒト起源のものであった。ナトリウム/カルシウム交換体は、以下のナトリウム/カルシウム交換体タンパク質:NCX1、NCX2、NCX3、NCX4、NCX5、NCX6及び/又はNCX7、特に、NCX1、NCX2及び/又はNCX3の1つから;及び/又は以下のナトリウム/カルシウム/カリウム交換体タンパク質:NCKX1、NCKX2、NCKX3、NCKX4及び/又はNCKX5の1つから選択される。
【0019】
一般的に、本発明のアッセイにおいて使用される細胞は、任意の真核生物から誘導され得る。好ましい実施態様において、細胞は哺乳類細胞である。より好ましい実施態様において、細胞は、CHO(CCL-61)、HEK(CCL-1573)、COS7(CRL-1651)及び/又はJURKAT(CRL-1990)細胞である。
【0020】
特に、本発明のアッセイにおいて使用されるナトリウム/カルシウム交換体活性化剤は、イオノマイシンである。
【0021】
好ましい実施態様において、前記着色物質は、細胞に入ることができそして色素に加水分解され得る色素前駆体として、細胞に添加され、それによって、色素が、該細胞中においてカルシウムと複合体化し、発光シグナルを与える。さらに、前記色素前駆体は、好ましくは、アセトキシメチルエステル誘導体であり得、前記色素は、好ましくは、カルシウム感受性蛍光色素fluo-4であり得る。より好ましい実施形態において、前記発光シグナルは蛍光であり、前記工程c)モニターすることはFLIPR装置を使用する。
【0022】
本発明は、さらに、ナトリウム/カルシウム交換体のアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性について化合物をテストするための前述のアッセイの使用に関する。別の好ましい実施形態において、本発明は、ナトリウム/カルシウム交換体の変化した発現に関連する疾患の診断のための前述のアッセイの使用に関する。
【0023】
本発明は、さらに、
a)ナトリウム/カルシウム交換体をエクスプライムする(expriming)凍結乾燥細胞;
b)着色物質;
c)化合物緩衝液;及び
d)着色物質緩衝液、
を含むパーツのキットに関する。
【0024】
本発明のパーツのキットの好ましい実施態様において、前記着色物質は、カルシウム感受性蛍光色素fluo-4である。別の好ましい実施態様において、使用されるナトリウム/カルシウム交換体は、哺乳類起源のものであり、特に、ヒト起源のものであった。ナトリウム/カルシウム交換体は、以下のナトリウム/カルシウム交換体タンパク質:NCX1、NCX2、NCX3、NCX4、NCX5、NCX6及び/又はNCX7、特に、NCX1、NCX2及び/又はNCX3の1つから;及び/又は以下のナトリウム/カルシウム/カリウム交換体タンパク質:NCKX1、NCKX2、NCKX3、NCKX4及び/又はNCKX5の1つから選択される。
【0025】
本発明は、さらに、ナトリウム/カルシウム交換体のアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性について化合物をテストするための前述のパーツのキットの使用に関する。別の好ましい実施態様において、本発明は、ナトリウム/カルシウム交換体の変化した発現に関連する疾患の診断のための前述のパーツのキットの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1a】配列番号1で示されるNCX1のアミノ酸配列を示す図である。
【図1b】配列番号2で示されるNCX2のアミノ酸配列を示す図である。
【図1c】配列番号3で示されるNCX3のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】イオノマイシン添加後のCHO-NCX1細胞の蛍光シグナルを示すグラフである。細胞質ゾルカルシウムの増加に起因して、NCX1の阻害(高コントロール、30μM A000135933、破線)は蛍光の増加をもたらした。数秒後、活性なNCX1は、初期カルシウム負荷を確立した(低コントロール、実線)。
【図3】生データ:種々の濃度のA000135933についての、イオノマイシン添加後の、蛍光変化の動態を示すグラフである。50〜90秒の蛍光値の合計を使用し、コントロールと比較してのパーセンテージ蛍光変化を計算した。結果を図4に示す。
【図4】高コントロール及び低コントロール並びに種々の濃度のA000135933を含む96ウェルプレートについてのアッセイ統計を示す図である。計算されたシグナル対バックグラウンド比(S/B)、z'、及び種々の濃度のA000135933の50〜90秒の蛍光増加がリストされる(図2を参照のこと)。この実施例について、A000135933の計算されたIC50は7.16μMであった(平均IC50:5.9μM)。
【図5】A000135933の化合物濃度と比較してのパーセンテージ蛍光増加及び対応するフィット曲線を例証するグラフである。この実施例について、A000135933の計算されたIC50は7.16μMであった(平均IC50:5.9μM)。
【図6a】FLIPRからの生データプリントアウトの図である。
【図6b】FLIPRからの生データプリントアウトの図である。
【図6c】FLIPRからの生データプリントアウトの図である。
【図6d】FLIPRからの生データプリントアウトの図である。
【図6e】FLIPRからの生データプリントアウトの図である。
【図7】1つの化合物クラスの、NCX1蛍光ベースのFLIPRアッセイと電気生理学ベースのSURFE2R技術との間の相関を示す図である。両方の場合において、10μMでNCX1の阻害を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
用語「アッセイ」は、系又は物の特性を測定する手順を指す。アッセイは、生物学的アッセイについて一般的に使用される省略用語であり、インビトロ実験の一種である。アッセイは、典型的に、生きている生物に対する物質の効果を測定するために行われる。アッセイは定性的又は定量的であり得、それらは新薬の開発に必須である。
【0028】
本発明のアッセイは広いダイナミックレンジを提供し、その結果、ナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定することができる。特に、本発明は、ナトリウム/カルシウム交換体と特異的に相互作用しナトリウム/カルシウム交換体の活性を調節する薬学的に有効な化合物をスクリーニング及びプロファイリングするための迅速で効果的なアッセイを利用可能にする。
【0029】
用語「ナトリウム/カルシウム交換体」又は「NCX」は、本発明の文脈において、単独の又は互いに組み合わせた、以下のNa+/Ca2+交換体タンパク質のリストのいずれか一つ:NCX1、NCX2、NCX3、NCX4、NCX5、NCX6、NCX7;又は以下のNa+/Ca2+交換体タンパク質のリストのいずれか一つ:NCKX1、NCKX2、NCKX3、NCKX4、NCKX5を意味する。特に好ましいのは、アミノ酸配列が、それぞれ、配列番号1、配列番号2及び配列番号3に対応する、SLC8ファミリーメンバーNCX1、NCX2及び/又はNCX3である。
【0030】
このようなナトリウム/カルシウム交換体は、任意の脊椎動物、特に哺乳動物種(例えば、イヌ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ニワトリ、類人猿、ヒトなど)から誘導され得る。ナトリウム/カルシウム交換体は、このような脊椎動物生物の組織プローブから単離され得るか、又はナトリウム/カルシウム交換体を発現し得る組換え生物学的材料によって製造され得る。
【0031】
用語「ナトリウム/カルシウム交換体タンパク質」は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3に含まれるアミノ酸配列に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、若しくは500又はそれ以上のアミノ酸の領域にわたって、約80%より大きなアミノ酸配列同一性、85%、90%、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%又はそれより大きなアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、ポリペプチド、多型変異体、突然変異体、及び種間ホモログを指す。
【0032】
用語「生物学的材料」は、遺伝情報を含み、それ自体を複製することができるか、又は生物系中において複製され得る、任意の材料を意味する。組換え生物学的材料は、当業者に周知の組換え技術によって生産されたか、変えられているか、又は修飾された任意の生物学的材料である。
【0033】
以下の参考文献は、特定のNCXタンパク質のクローニングの例である:イヌのNa+/Ca2+交換体NCX1は、Nicoll, DA.ら(Science. 250(4980): 562-5, 1990;表題:Molecular cloning and functional expression of the cardiac sarcolemmal Na(+)-Ca2+ exchanger.)によってクローニングされた。ヒトのNa+/Ca2+交換体NCX1は、Komuro, I.ら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89 (10), 4769- 4773, 1992;表題:Molecular cloning and characterization of the human cardiac Na+/Ca2+ exchanger cDNA)及びKofuji, P.ら(Am. J. Physiol. 263 (Cell Physiol. 32): C1241-C1249, 1992;表題:Expression of the Na-Ca exchanger in diverse tissues: a study using the cloned human cardiac Na-Ca exchanger)によってクローニングされた。ヒトのNa+/Ca2+交換体NCX2は、Li, Z.ら(J. Biol. Chem. 269(26): 17434-9, 1994;表題:Cloning of the NCX2 isoform of the plasma membrane Na(+)-Ca2+ exchanger)によってクローニングされた。ラットのNa+/Ca2+交換体NCX3は、Nicoll, DA.ら(J. Biol. Chem. 271(40): 24914-21. 1996;表題:Cloning of a third mammalian Na+/Ca2+ exchanger, NCX3)によってクローニングされた。ヒトのNa+/Ca2+交換体NCX3は、Gabellini, N.ら(Gene. 298: 1-7, 2002;表題:The human SLC8A3 gene and the tissue-specific Na+/Ca2+ exchanger 3 isoforms)によってクローニングされた。
【0034】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において交換可能に使用される。前記用語は、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が対応の天然アミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0035】
用語「ナトリウム/カルシウム交換体の活性」は、細胞から細胞内Ca2+を除去する機構を指す。心臓において、それは、Ca2+チャネルを通って入っていたCa2+を追い出し、収縮が開始され、一方、Na+は心臓細胞に入る。心臓血管疾患におけるその関連性は、例えば、非特許文献3において説明されている。従って、製薬産業は、例えば、非特許文献4に記載されているように、NCXを阻害する化合物を開発した。例えば非特許文献5において電気生理学的な手段によって示されたように、Na+/Ca2+交換体は、逆方向に動く各Ca2+について3〜4個のNa+を起電的に輸送する。NCXは、細胞質のCa2+濃度([Ca2+]イン)を、細胞外のCa2+濃度([Ca2+]アウト)よりも3〜4桁下に維持することができる。それにもかかわらず、正味のCa2+輸送の方向は、Na+の電気化学的な勾配に依存する。Na+及びCa2+の移動について、同時の及び連続的な輸送モデルが提案されており、証拠の大部分が後者を支持している。ナトリウム/カルシウム交換体の活性は、カルシウムと複合体化している好適な着色物質から生じる増強されたルミネセンスを測定することによって決定される。
【0036】
用語「ナトリウム/カルシウム交換体を発現する細胞」は、関心対象の交換体を内因的に発現する細胞又は組換え細胞を指す。
【0037】
用語「組換え」は、例えば、細胞、又は核酸、タンパク質、又はベクターを参照して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入又は野生型核酸若しくはタンパク質の変化により修飾されていること、又は細胞がそのように修飾された細胞から誘導されることを意味する。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の野生型(非組換え)形態内で見出されない遺伝子を発現するか、又はさもなければ異常に発現されるか、過小発現されるか、又は全く発現されない野生型遺伝子を発現する。本発明において、これは、典型的には、ナトリウム/カルシウム交換体をコードする核酸配列でトランスフェクトされている細胞を指す。
【0038】
アッセイは、好適な培養培地を有する好適な容器中で細胞を増殖させることによって、簡単に行なわれる。細胞がアッセイの間維持され得、培養培地中で望ましいように増殖し得さえすれば、細胞は、天然の細胞、野生型細胞、樹立細胞株、市販される細胞、遺伝子操作された細胞などであり得る。
【0039】
本発明のアッセイを得るための好適な細胞としては、原核生物、酵母、又は高等真核細胞、特に哺乳類細胞が挙げられる。原核生物としては、グラム陰性生物及びグラム陽性生物が挙げられる。細胞は、通常、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、チャイニーズハムスター細胞などのような哺乳類細胞である。便利であることが見出されている細胞としては、CHO、COS7、JURKAT、HeLa、HEK、MDCK及びHEK293細胞が挙げられる。細胞は、周知の方法(Current protocols in cell biology, John Wiley & Sons Inc, ISBN: 0471241059)で作製されてもよく、又は購入されてもよい(Invitrogen Corp.、Sigma-Aldrich Corp.、Stratagene)。
【0040】
用語「着色物質」は、特に、カルシウム感受性蛍光色素を指す。色素前駆体は、アッセイの条件下では発光性でないこと、細胞に入ることができ、発光性のオキシ化合物へ細胞内で加水分解されるエステルであること、及びカルシウムと複合体化すると増強されたルミネセンスを提供することを特徴とする。細胞内加水分解酵素による加水分解を受けやすいエステルが選択される。
【0041】
用語「細胞に入ることができる」は、前駆体が細胞膜を通過し、細胞中で加水分解され得ることを意味し、色素前駆体は、pH、温度などの特定の条件下で細胞に入るか、異なる速度で細胞に入るか、又は特定の条件下で細胞に入らない。
【0042】
着色物質は、周知のプロトコルを使用して細胞に添加される(Current protocols in cell biology, John Wiley & Sons Inc, ISBN: 0471241059)。着色物質の使用が通常であり、市販の試薬(Invitrogen Corp.)並びに研究室で合成された試薬が使用され得る。上記の要件を満たす多数の市販の色素が公知である。Ca2+をモニタリングするための蛍光色素は周知であり、Molecular Probesカタログ第9版のセクション20.1〜20.4に詳細に記載されている。これらは、通常、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、アミノフェニルインドールなどのような蛍光核へ結合された2つのビス−カルボキシメチルアミノ基を有する。化合物は、大部分、3,6-ジオキシ置換キサンテンであり、ここで、前駆体においてはオキシ基が置換されており、発光色素においてそれらが非置換である。通常、フェノール及び酸を保護するアセトキシメチル基が存在する。例えば、Fluo3/4、Fura2/3、カルセイングリーンなどを参照のこと。アセチル基の加水分解は、発光生成物を生じさせる。前駆体は細胞膜を通過し得、細胞中で加水分解され得る。
【0043】
用語「ルミネセンス」は、常温及び低温で起こり得る、他のエネルギー源からの光である、「冷光」を指す。ルミネセンスにおいて、あるエネルギー源は、その「基底」(最も低いエネルギー)状態から「励起」(より高いエネルギー)状態に原子の電子を上げ;次いで、電子は光の形態でエネルギーを返し、従って、それはその「基底」状態へ戻ることができる。エネルギー源であるもの、又はルミネセンスについてのトリガーであるものに従って各々命名された、数種類のルミネセンスが存在する。
【0044】
用語「蛍光」は、光子の分子吸収がより長い波長を有する別の光子の放出を誘発する、冷体(cold body)における光学現象として主として見出されるルミネセンスを指す。吸収される光子と放出される光子との間のエネルギー差は、最後には分子振動又は熱になる。通常、吸収される光子は紫外線領域内にあり、放射光は可視領域内にあるが、これは吸光度曲線及び特定のフルオロフォアのストークスシフトに依存する。蛍光は、しばしばこの現象を示すフッ化カルシウムから構成される鉱物の蛍石にちなんで名付けられている。
【0045】
インジケーター色素からの蛍光は、ルミノメーター又は蛍光イメージャーで測定され得る。1つの好ましい検出装置は、蛍光測定画像解析用プレートリーダー(Fluorometric Imaging Plate Reader)(FLIPR)(Molecular Devices, Sunnyvale, Calif.)である。FLIPRは、本発明の方法を使用するハイスループットスクリーニングに十分に適しており、何故ならば、それは、96又は384ウェルのマイクロタイタープレートへ同時にピペッティングし得る統合液体ハンドリングと、電荷結合素子イメージングカメラに接続されたアルゴンレーザーを使用する高速動的検出とを組み込んでいるためである。
【0046】
カルシウムインジケーター色素の使用の代替法は、エクオリン系の使用である。エクオリン系は、タンパク質アポエクオリンを使用し、これは、親油性発色団セレンテラジンへ結合し、エクオリンとして公知であるアポエクオリンとセレンテラジンとの組み合わせが形成される。アポエクオリンは3つのカルシウム結合部位を有しており、カルシウム結合すると、エクオリンのアポエクオリン部分はその立体配座を変化させる。立体配座におけるこの変化が、セレンテラジンをセレンテラミド、CO2、及び青色光(466nm)の光子へ酸化させる。この光子が適切な計測装置で検出され得る。
【0047】
エクオリンの使用の概説については、Creton et al., 1999, Microscopy Research and
Technique 46:390-397;Brini et al., 1995, J. Biol. Chem. 270:9896-9903;Knight & Knight, 1995, Meth. Cell. Biol. 49:201-216を参照のこと。アポエクオリンを発現する哺乳類細胞へセレンテラジン補因子を添加することによって哺乳類細胞における細胞内カルシウムを測定する方法を記載する米国特許第5,714,666号もまた興味深い場合がある。
【0048】
「阻害剤」は、例えば結合して、活性を部分的に又は完全に遮断する、低減する、妨げる、活性化を遅延させる、不活化する、感受性を低下させる、又はナトリウム/カルシウム交換体タンパク質の活性又は発現をダウンレギュレートする化合物、例えばアンタゴニストである。「活性化剤」は、ナトリウム/カルシウム交換体活性を、増大する、開始する、活性化する、促進する、活性化を増強する、感受性を高める、アゴナイズする、又はアップレギュレートする化合物である。好ましいナトリウム/カルシウム交換体活性化剤は、ストレプトマイセス・コングロバツス(Streptomyces conglobatus)由来のイオノフォアである、イオノマイシンである。
【0049】
阻害剤、活性化剤、又はモジュレータはまた、ナトリウム/カルシウム交換体タンパク質の遺伝子操作されたバージョン、例えば、変化した活性を有するバージョン、並びに天然及び合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、ペプチド、環状ペプチド、核酸、抗体、アンチセンス分子、リボザイム、有機低分子などを含む。
【0050】
用語「化合物」又は「テスト化合物」又は「テスト候補物」又はそれらの文法的等価物は、ナトリウム/カルシウム交換体活性を調節する能力についてテストされる、天然又は合成の任意の分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド、有機低分子、多糖、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなどを表わす(Current protocols in molecular biology, John Wiley & Sons Inc, ISBN: 0471250961)。テスト化合物は、テスト化合物のライブラリー、例えば十分な範囲の多様性を提供するコンビナトリアルライブラリー又はランダム化ライブラリーの形態であり得る(Current protocols in molecular biology, John Wiley & Sons Inc, ISBN: 0471250937)。テスト化合物は、融合パートナー、例えば、ターゲッティング化合物、レスキュー化合物、二量体化化合物、安定化化合物、アドレス可能な化合物(addressable compound)、及び他の機能的部分へ場合により連結される。従来通り、ある所望の特性又は活性を有する、例えば活性を増強する、テスト化合物(「リード化合物」と呼ばれる)を同定し、リード化合物の変形体を作製し、そしてそれら変形体化合物の特性及び活性を評価することによって、有用な特性を有する新規の化学的エンティティーを作製する。好ましくは、ハイスループットスクリーニング(HTS)法がこのような分析のため利用される。
【0051】
前記阻害剤、活性化剤及びテスト化合物は、細胞が増殖した後に培養培地へ注入することによって細胞へ添加してもよく、又はそれらは、細胞増殖の前に培地中に存在してもよい(Current protocols in cell biology, John Wiley & Sons Inc, ISBN: 0471241059)。
【0052】
細胞は、阻害剤、活性化剤及び/又はテスト化合物上で好適な数まで増殖させてもよく、又はそれらは、その上に配置され、さらに増殖させずに使用されてもよい。細胞は、阻害剤、活性化剤及び/又はテスト化合物へ接着させてもよく、又は細胞をウェル中に配置又は増殖させる実施態様においては、細胞はウェル中の流体に懸濁されている懸濁細胞であってもよい。
【0053】
用語「対照実験」は、一緒に行うべき異なる種類の実験を指す。当業者は、本明細書中に記載される方法と一緒にコントロールを行うことは一般的に有益であることを認識する。
【0054】
例えば、ナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイについてコントロールを有することは通常有益であり、ここで、細胞は、これらの細胞が関心対象のナトリウム/カルシウム交換体を発現しないことを除いて、アッセイにおいて使用される細胞と好ましくは本質的に同一である。
【0055】
さらに、化合物の添加に応答してのナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイについてコントロールを有することは通常有益であり、ここで、これらの細胞が関心対象のナトリウム/カルシウム交換体を発現しないことを除いて、アッセイにおいて使用される細胞と好ましくは本質的に同一である細胞に対して、化合物が本発明のアッセイにおいてテストされる。このようにして、アッセイによって同定される化合物が、ある予期外の非特異的な機構を通してではなく、関心対象のナトリウム/カルシウム交換体を通してそれらの効果を実際に発揮していると決定することができる。このようなコントロール細胞についての1つの可能性は、非組換え型親細胞を使用することであり、ここで、実際の実験細胞は、関心対象のナトリウム/カルシウム交換体を発現する。
【0056】
化合物の添加に応答してのナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイについての他のコントロールは、テスト化合物を添加することなくアッセイを行うこと(低コントロール)、及び高濃度のテスト化合物を用いてアッセイを行うこと(高コントロール)である。
【0057】
他の種類のコントロールは、本発明のアッセイにより同定される化合物を関心対象のナトリウム/カルシウム交換体のアゴニスト又はアンタゴニストとして採用し、先行技術の方法でテストした場合にもこれらの化合物がアゴニスト又はアンタゴニストであることを確認するために、先行技術の方法でこれらの化合物を試験することを含む。さらに、当業者は、アッセイ値と標準値と比較することによって、統計分析を行うこともまた望ましいということを理解する。
【0058】
用語「アゴニスト」及び「アンタゴニスト」は、受容体を介してシグナル伝達を調節する受容体エフェクター分子を指す。受容体エフェクター分子は、必ずしも天然のリガンドの結合部位においてではないが、受容体に結合することができる。受容体エフェクターは、単独で使用される場合にシグナル伝達を調節し得、即ち、代理リガンドとなり得、又は、天然のリガンドの存在下でシグナル伝達を変化させ、天然のリガンドによるシグナル伝達を増強又は阻害し得る。例えば、「アンタゴニスト」は、受容体のシグナル伝達活性化を遮断するか又は低減させる分子であり、例えば、それらは、受容体からのシグナル伝達を競合的に、非競合的に、及び/又はアロステリックに阻害し得、一方、「アゴニスト」は、受容体のシグナル伝達活性を強化、誘導、又はそうでなければ増強する。
【0059】
用語「ナトリウム/カルシウム交換体の変化した発現に関連する疾患」は、拡張型心筋症、冠状動脈性心疾患、不整脈、心不全などを指す。
【0060】
便利性のために、着色物質及びアッセイの他の成分は、キット中に提供され得、ここで着色物質は再構成可能な粉末として、又は氷上の冷却溶液として緩衝液中に存在し得る。キットはまた、緩衝液、活性化剤、阻害剤、テスト化合物、ナトリウム/カルシウム交換体タンパク質をエクスプライムする細胞などを含み得る。細胞は凍結乾燥細胞として存在し得る。前記パーツのキットは、拡張型心筋症、冠状動脈性心疾患、不整脈、心不全などを診断するための診断キットとして使用され得る。
【実施例】
【0061】
蛍光ベースの細胞ナトリウム/カルシウム交換体アッセイの典型的な結果を開示する、以下の図及び実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、保護範囲を限定するものではない。
【0062】
1.アッセイ手順
アッセイ試薬
以下の化学組成物をアッセイ用の試薬として使用した:
【0063】
【表1】

【0064】
アッセイ手順
1]実験の20〜24時間前に、抗生物質を含まない増殖培地(Nutrient Mixture F12 (HAM) Invitrogen, Karlsruhe、5% FCS, Biochrom, Berlin)に細胞を懸濁し、96ウェルブラッククリアボトムプレートに播種した(100μl中、25000細胞/ウェル)。
2]培地を廃棄し、続いて色素ローディング緩衝液100μlを添加し、プレートをRTで75分間暗所にてインキュベートした。
3]アッセイ緩衝液100μlで3回洗浄することによって、色素ローディグ緩衝液を除去した。緩衝液を廃棄した。
4]化合物プレートから80μlを添加し、プレートを16℃に30分間保った。
5]プレートをFLIPRに移し、以下のプロトコルを使用してアッセイした(イオノフォアプレートから40μlの添加を含んだ):
【0065】
【表2】

【0066】
データ分析
NCX細胞におけるテスト化合物の阻害活性
阻害の計算:
計算は統計エクスポートに基づいた。生データを、以下に従って阻害へ変換した:
【数1】

【0067】
平均高コントロールを、イオノマイシンを含む10または30μM A000135933の8つのペアサンプルの平均差から算出した。平均低コントロールをイオノマイシンコントロールから算出する。基底蛍光を1.3倍よりも高く増加させた化合物は破棄した。
【0068】
2.アッセイ実施例
高及び低コントロールの応答
2μMのイオノマイシンの添加後の高及び低コントロールの典型的な蛍光応答を図2に示し、以下の通りであった:NCX1が活性である場合(低コントロール)、イオノマイシン添加後、細胞に入っているカルシウムは細胞外に輸送された。数秒後、細胞の初期カルシウム負荷が回復された。細胞質ゾルカルシウムの増加に起因して、イオノマイシンの添加後、NCX1の阻害が蛍光増加をもたらした(高コントロール、30μM A000135933)。
【0069】
ツール物質:A000135933
新規なNCX1阻害剤A000135933が、最初のHTSスクリーニングにおいて発見された。図3、4及び5は、種々の濃度のA000135933の典型的な用量依存反応を示す。A000135933は、5.9μMの平均IC50を有する良好なNCX1阻害剤であり、それ以後、アッセイにおいてツール物質として使用した。この化合物のIC50を、コントロールとして各プレートに添加した。この実施例についてのS/B比及びz'値は、非常に良好であった。A000135933のIC50と一緒に、これらのパラメーターを使用して、各プレートについて良好な分析性能が示された:
1.2より大きいS/B
2.0.5〜0.7のz'値
3.ツール化合物A000135933のIC50は、およそ平均5.9μMである必要がある。
【0070】
ツール物質:アッセイ実施例
4つの化合物IC50を用いて、アッセイを二ツ組(duplicate)で行った(図6)。4つの化合物は、同一の化合物クラスに由来する。1つの化合物は、良好なNCX1阻害剤(A000135933)であり、2つの化合物は中程度の阻害を示し(A000136648、A000104243)、1つはその濃度範囲で活性ではなかった(A000103746)。この実施例は、アッセイがこのようにNCX1阻害剤をスクリーニングして構造活性相関を確立するのに適切であることを示す。
【0071】
電気生理学との相関
直接的な電気生理学的方法(IongateのSURFE2R技術)を用いる蛍光ベースのアッセイから算出されたデータの比較は、このアッセイの性能を評価するのに最良の方法であった。これらの2つの非常に異なる技術の相関は非常に良好であった(図7)。1つの化合物を除いて、SURFE2Rを用いて測定された阻害は、間接的なFLIPRアッセイから算出された阻害よりも高かった(平均14%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイであって、以下:
e)ナトリウム/カルシウム交換体を発現する細胞を備える工程;
f)細胞内カルシウムを測定するための着色物質を備える工程;
g)細胞をナトリウム/カルシウム交換体活性化剤と接触させる工程;及び
h)上記着色物質からの発光シグナルのカルシウム媒介変化を、対照実験において生じた発光シグナルと比較する工程、
を含む、上記アッセイ。
【請求項2】
ナトリウム/カルシウム交換体が、以下のリスト:NCX1、NCX2、NCX3のNCXタンパク質;又は以下のリスト:NCKX1、NCKX2、NCKX3、NCKX4、NCKX5のNCKXタンパク質である、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
ナトリウム/カルシウム交換体が、以下のリスト:NCX1、NCX2、NCX3のNCXタンパク質である、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項4】
ナトリウム/カルシウム交換体が、哺乳類起源のものであり、好ましくは、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ブタ、サル又はヒトに由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項5】
細胞が、CHO、HEK、COS7及びJURKAT細胞からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項6】
着色物質が、細胞に入ることができそして色素に加水分解され得る色素前駆体として、細胞に添加され、それによって、色素が、該細胞中においてカルシウムと複合体化し、発光シグナルを与える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項7】
発光シグナルが蛍光であり、工程c)をモニターすることがFLIPR装置を使用する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項8】
色素前駆体が、アセトキシメチルエステル誘導体である、請求項6に記載のアッセイ。
【請求項9】
色素が、カルシウム感受性蛍光色素fluo-4である、請求項6に記載のアッセイ。
【請求項10】
ナトリウム/カルシウム交換体活性化剤がイオノマイシンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項11】
ナトリウム/カルシウム交換体のアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性について化合物をテストするための請求項1〜10のいずれか1項に記載のアッセイの使用。
【請求項12】
ナトリウム/カルシウム交換体の変化した発現に関連する疾患の診断のための請求項1〜10のいずれか1項に記載のアッセイの使用。
【請求項13】
化合物の添加に応答してのナトリウム/カルシウム交換体の活性を測定するためのアッセイであって、以下:
a)ナトリウム/カルシウム交換体を発現する細胞を備える工程;
b)細胞内カルシウムを測定するための着色物質を備える工程;
c)細胞を化合物と接触させる工程、ここで、該細胞は、該化合物で処理する前に、ナトリウム/カルシウム交換体活性化剤で処理される;及び
d)上記着色物質からの発光シグナルのカルシウム媒介変化を、対照実験において生じた発光シグナルと比較する工程、
を含む、上記アッセイ。
【請求項14】
ナトリウム/カルシウム交換体が、以下のリスト:NCX1、NCX2、NCX3のNCXタンパク質;又は以下のリスト:NCKX1、NCKX2、NCKX3、NCKX4、NCKX5のNCKXタンパク質である、請求項13に記載のアッセイ。
【請求項15】
ナトリウム/カルシウム交換体が、以下のリスト:NCX1、NCX2、NCX3のNCXタンパク質である、請求項13に記載のアッセイ。
【請求項16】
ナトリウム/カルシウム交換体が、哺乳類起源のものであり、好ましくは、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ブタ、サル又はヒトに由来する、請求項13〜15のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項17】
細胞が、CHO、HEK、COS7及びJURKAT細胞からなる群より選択される、請求項13〜16のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項18】
着色物質が、細胞に入ることができそして色素に加水分解され得る色素前駆体として、細胞に添加され、それによって、色素が、該細胞中においてカルシウムと複合体化し、発光シグナルを与える、請求項13〜17のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項19】
発光シグナルが蛍光であり、工程c)をモニターすることがFLIPR装置を使用する、請求項13〜18のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項20】
色素前駆体が、アセトキシメチルエステル誘導体である、請求項18に記載のアッセイ。
【請求項21】
色素が、カルシウム感受性蛍光色素fluo-4である、請求項18に記載のアッセイ。
【請求項22】
化合物が、ナトリウム/カルシウム交換体アンタゴニストである、請求項13〜21のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項23】
ナトリウム/カルシウム交換体活性化剤がイオノマイシンである、請求項13〜22のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項24】
a)ナトリウム/カルシウム交換体をエクスプライムする凍結乾燥細胞;
b)着色物質;
c)化合物緩衝液;及び
d)着色物質緩衝液、
を含むパーツのキット。
【請求項25】
着色物質が、カルシウム感受性蛍光色素fluo-4である、請求項24に記載のパーツのキット。
【請求項26】
ナトリウム/カルシウム交換体が、以下のリスト:NCX1、NCX2、NCX3のNCXタンパク質;又は以下のリスト:NCKX1、NCKX2、NCKX3、NCKX4、NCKX5のNCKXタンパク質である、請求項24又は25に記載のパーツのキット。
【請求項27】
ナトリウム/カルシウム交換体が、哺乳類起源のものであり、好ましくは、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ブタ、サル又はヒトに由来する、請求項24〜26のいずれか1項に記載のパーツのキット。
【請求項28】
ナトリウム/カルシウム交換体のアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性について化合物をテストするための請求項24〜27のいずれか1項に記載のパーツのキットの使用。
【請求項29】
ナトリウム/カルシウム交換体の変化した発現に関連する疾患の診断のための請求項24〜27のいずれか1項に記載のパーツのキットの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−527002(P2011−527002A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500082(P2011−500082)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001824
【国際公開番号】WO2009/115239
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(399050909)サノフィ (225)
【Fターム(参考)】