説明

ナノカーボン材料製造用触媒の製造方法及びナノカーボン材料の製造方法

【課題】連続的に大量生産することができ且つ純度の高い単層のカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造用触媒の製造方法及びナノカーボン材料製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるナノカーボン材料製造用触媒の製造方法は、活性金属を含む原料塩と、凝集防止材用の原料塩とを溶媒中にて溶解することで溶解液を作製する工程と、前記溶解液に担体材料を投入し、撹拌しながら造粒物を作製する工程と、前記造粒物を乾燥した乾燥造粒物を作製する工程と、前記乾燥造粒物を整粒することで粒径制御触媒を得る工程とを有するナノカーボン材料製造用触媒の製造方法であって、前記凝集防止材用の原料塩がアルカリ土類金属又はアルカリ金属の一種又は二種以上の組み合わせを含み、且つ前記凝集防止材が前記担体材料と同一成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料を効率的にしかも純度良く製造することができるナノカーボン材料製造用触媒、触媒微粒子、ナノカーボン材料製造用触媒の製造方法及びナノカーボン材料製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、黒鉛(グラファイト)シートが円筒状に閉じた構造を有するチューブ状の炭素多面体である。このカーボンナノチューブには、黒鉛シートが円筒状に閉じた多層構造を有する多層ナノチューブと、黒鉛シートが円筒状に閉じた単層構造を有する単層ナノチューブとがある。
【0003】
一方の多層ナノチューブは、1991年に飯島により発見された。すなわち、アーク放電法の陰極に堆積した炭素の塊の中に、多層ナノチューブが存在することが発見された(非特許文献1)。その後、多層ナノチューブの研究が積極的になされ、近年は多層ナノチューブを多量に合成できるまでにもなった。
【0004】
これに対して、単層ナノチューブは概ね0.4〜10ナノメータ(nm)程度の内径を有しており、その合成は、1993年に飯島とIBMのグループにより同時に報告された。単層ナノチューブの電子状態は理論的に予測されており、ラセンの巻き方により電子物性が金属的性質から半導体的性質まで変化すると考えられている。従って、このような単層ナノチューブは、未来の電子材料として有望視されている。
【0005】
単層ナノチューブのその他の用途としては、ナノエレクトロニクス材料、電界電子放出エミッタ、高指向性放射源、軟X線源、一次元伝導材、高熱伝導材、水素貯蔵材等が考えられている。また、表面の官能基化、金属被覆、異物質内包により、単層ナノチューブの用途はさらに広がると考えられている。
【0006】
従来、上述した単層ナノチューブは、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン等の金属を陽極の炭素棒に混入し、アーク放電を行うことにより製造されている(特許文献1)。
しかし、この製造方法では、生成物中に、単層ナノチューブの他、多層ナノチューブ、黒鉛、アモルファスカーボンが混在し、収率が低いだけでなく、単層ナノチューブの糸径・糸長にもばらつきがあり、糸径・糸長の比較的揃った単層ナノチューブを高収率で製造することは困難であった。
【0007】
なお、カーボンナノチューブの製造方法としては、上述したアーク法の他、気相熱分解法、レーザー昇華法、凝縮相の電解法などが提案されている(特許文献2乃至4)。
【0008】
しかしながら、これらの文献等に開示する製造方法はいずれも実験室又は小規模レベルの製造方法であり、特に炭素材料の収率が低く、しかも純度が低い、という問題がある。
近年炭素材料の用途が拡大しており、このため、大量に効率良く製造することができると共に、純度が良好なカーボン材料を製造する装置の出現が望まれている。
【0009】
そこで、本発明者等は、カーボンナノファイバの製造を流動層で行うことを先に提案した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−280116号公報
【特許文献2】特許第3100962号公報
【特許文献3】特表2001−520615号公報
【特許文献4】特開2001−139317号公報
【特許文献5】特開2004−76197号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S.Iijima,Nature,354,56(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献5の流動層方式で単層のカーボン材料を製造するに際し、図15に示すように、活性金属1が担体2に担持されている触媒を流動剤と兼用して用いる場合、触媒製造の際に活性金属1同士が凝集粗粒子化し、ナノカーボン材料の合成における単層ナノカーボンチューブ3と多層ナノカーボンチューブ4との選択性が悪くなる、という問題がある。すなわち、凝集した活性金属からは多層ナノカーボンチューブ4が成長する割合が多くなるので、単層ナノカーボンチューブ3の収率が低下してしまう、という問題がある。
【0013】
また、触媒製造においては微細な活性金属1が担体2に分散担持されていても、流動層反応器において高温でナノカーボン材料を製造する場合には、活性金属1同士の凝集が進行し、同様に多層ナノカーボンチューブ4が成長する割合が多くなり、単層ナノカーボンチューブ3の収率が低下してしまう、という問題がある。
【0014】
よって、高純度の単層のナノカーボン材料を例えば流動層方式等により工業的に製造することが望まれている。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑み、連続的に大量生産することができ且つ純度の高い単層のカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造用触媒の製造方法及びナノカーボン材料製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、活性金属を含む原料塩と、凝集防止材用の原料塩とを溶媒中にて溶解することで溶解液を作製する工程と、前記溶解液に担体材料を投入し、撹拌しながら造粒物を作製する工程と、前記造粒物を乾燥した乾燥造粒物を作製する工程と、前記乾燥造粒物を整粒することで粒径制御触媒を得る工程とを有するナノカーボン材料製造用触媒の製造方法であって、前記凝集防止材用の原料塩がアルカリ土類金属又はアルカリ金属の一種又は二種以上の組み合わせを含み、且つ前記凝集防止材が前記担体材料と同一成分を含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、前記活性金属を含む原料塩として、Mo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を添加することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0018】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記活性金属を含む原料塩がV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれか一種又はこれらの組合せであり、前記担体がアルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種を用いることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0019】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記凝集防止材の添加量が活性金属成分に対して複合形態を取ったときの等量モル比に対して10−1000%であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0020】
第5の発明は、活性金属を含む原料塩と、凝集防止材用の原料塩とを溶媒中にて溶解することで溶解液を作製する工程と、前記溶解液に担体材料を投入し、撹拌しながら造粒物を作製する工程と、前記造粒物を乾燥することで乾燥造粒物を作製する工程と、前記乾燥造粒物を整粒することで粒径制御触媒を得る工程と、前記粒径制御触媒を活性化ガスで熱処理することで活性化触媒を得る活性化工程と、前記活性化触媒に炭素ガスを接触させることでナノカーボン材料を合成させる合成工程とを有するナノカーボン材料の製造方法であって、前記凝集防止材用の原料塩がアルカリ土類金属又はアルカリ金属の一種又は二種以上の組み合わせを含み、且つ前記凝集防止材が前記担体材料と同一成分を含むことを特徴とするナノカーボン材料の製造方法にある。
【0021】
第6の発明は、第5の発明において、前記活性金属を含む原料塩として、Mo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を添加することを特徴とするナノカーボン材料の製造方法にある。
【0022】
第7の発明は、第5又は6において、前記活性金属を含む原料塩がV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれか一種又はこれらの組合せであり、前記担体がアルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種を用いることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法にある。
【0023】
第8の発明は、第5乃至7のいずれか一つの発明において、前記凝集防止材の添加量が活性金属成分に対して複合形態を取ったときの等量モル比に対して10−1000%であることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法にある。
【0024】
第9の発明は、第5乃至8のいずれか一つにおいて、前記活性化工程により活性金属と凝集防止材との複合酸化物を得ることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法にある。
【0025】
第10の発明は、第5乃至9のいずれか一つの発明において、前記活性化工程と前記合成工程が流動層反応器を用いていることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法にある。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、触媒の製造の際又はナノカーボン材料の製造の際のいずれにおいても、活性金属の凝集が抑制されるので、カーボン材料を製造する際に発生する不純物である多層のナノカーボン材料を製造せず、単層のナノカーボン材料のみを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、実施例に係るナノカーボン材料製造用触媒の模式図である。
【図2】図2は、本発明品により製造されたナノカーボン材料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図3−1】図3−1は、本発明品により製造されたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャート(1700〜1300cm-1)である。
【図3−2】図3−2は、本発明品により製造されたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャート(300〜100cm-1)である。
【図4】図4は、比較品により製造されたナノカーボン材料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図5−1】図5−1は、比較品により製造されたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャート(1700〜1300cm-1)である。
【図5−2】図5−2は、比較品により製造されたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャート(300〜100cm-1)である。
【図6】図6は、本発明品と比較品により製造されたナノカーボン材料の単層カーボンと多層カーボンとの割合を示すグラフである。
【図7】図7は、本実施例にかかる流動層方式によるナノカーボン材料の製造装置の概略図である。
【図8】図8は、本実施例にかかる移動層反応方式の概略図である。
【図9】図9は、本実施例にかかる固定層反応方式の概略図である。
【図10】図10は、本実施例にかかる気流層反応方式の概略図である。
【図11】図11は、ナノカーボン材料の製造システムの概略図である。
【図12】図12は、2つの流動層反応器を用いて触媒の活性とナノカーボン材料の製造を連続して行なうシステム構成概略図である。
【図13】図13は、2つの流動層反応器を用いて触媒の活性とナノカーボン材料の製造を連続して行なう他のシステム構成概略図である。
【図14】図14は、ナノカーボン材料製造用流動層反応器の概略図である。
【図15】図15は、従来の活性金属が凝集する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0029】
本発明による実施例に係るナノカーボン材料製造用触媒について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るナノカーボン材料製造用触媒の模式図である。
図1に示すように、本実施例に係るナノカーボン材料製造用触媒10は、炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、担体12の表面に活性金属の凝集を防止する凝集防止材15を介在して活性金属11が担持されてなるものである。
【0030】
ここで、前記凝集防止材15としては、例えばMg、Ca等のアルカリ土類金属、Na、K等のアルカリ金属の一種あるいは二種以上の組合せとするのが好ましい。この内でも、担体と同一のあるいは同一成分を含むと、担体と凝集防止材の親和性がより高まり、活性金属の凝集防止効果を向上させることができる。
【0031】
この凝集防止材15を用いて活性金属11の凝集を抑制するのは、触媒製造において、活性化処理をさせて活性金属と凝集防止材との複合酸化物を製造して、活性金属のアンカー効果を発揮させることによる。
【0032】
本カーボン材料製造用触媒の製造方法の一例を以下に示す。
例えば担体12として酸化マグネシウム及び活性金属11としてFeを用い、凝集防止材としてMgを用いる場合、先ず硝酸鉄、硝酸マグネシウムを所定の割合にて溶媒中に溶解する。この溶解液に担体12である酸化マグネシウムを投入し、撹拌しながら乾燥させる。次いで、溶媒を除去して触媒を得る。また、必要に応じて、ロールミル等の粉砕装置で粉砕し、所定粒径の微粒子に整粒する。
【0033】
次に、得られた触媒を反応器中で連続的に、不活性ガス雰囲気下高温で熱処理する。
この熱処理において活性金属と凝集防止材或いは担体との複合酸化物(MgFe24)を部分的に形成することとなる。
【0034】
ここで、前記不活性ガス雰囲気下での熱処理の温度は例えば500〜1200℃、好適には800℃前後とするのが好ましい。
【0035】
図2はこの凝集防止材による活性金属の凝集を抑制した触媒を用いてナノカーボン材料を製造したTEMの写真である。
【0036】
このときに触媒は、Feを活性金属とし、凝集防止材をMgとし、担体をMgOとした。活性化処理は800℃で13分行なった。そして、得られた触媒を用いて横型管状炉に磁製ボートに触媒を1gを入れて、炭素原料としてメタン(20%)を用い、800℃、15分でナノカーボン材料を製造した。
【0037】
また、図3−1、図3−2はそれにより得られたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャートであり、図3−1は1700〜1300cm-1、図3−2は300〜100cm-1におけるラマンシグナル強度を示している。
また、図4はこの凝集防止材を用いない活性金属の凝集を抑制できない触媒を用いてナノカーボン材料を製造したTEMの写真であり、図5−1、図5−2はそれにより得られたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャートである。
確認は計測10点とした。なお、ピークの高さにバラツキがあるのは、その視野における存在割合が低いものであり、純度が悪いことを意味するものではない。
【0038】
ここで、1700〜1300cm-1は、単層カーボンナノチューブのグラファイト面内の振動モードに由来するピークを確認するものであり、1580cm-1はグラファイト(G:結晶性)のピークであり、1360cm-1は、アモルファスカーボン(D:欠陥構造が多い)のブロードのピークである。また、300〜100cm-1は、単層カーボンナノチューブのチューブ構造(Radial Breathing Mode:RBM)に由来するものである。
【0039】
図3−1、図3−2の凝集防止材を用いた本実施例の触媒により得られたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャートから得られるG/D(平均)は10.0であり、RBM/(G/D)は6.6であり、単層カーボンナノチューブの存在量が多いことが確認された。
【0040】
これに対し、図5−1、図5−2の凝集防止材を用いない従来触媒により得られたナノカーボン材料のラマン分光計測結果のチャートから得られるG/D(平均)は2.7であり、RBM/(G/D)は0.012であり、多層カーボンナノチューブ、アモルファスカーボン等の不純物の存在量が多いことが確認された。
【0041】
この結果を図6に示す。図6に示すように、凝集防止材を用いて、活性金属の凝集を防止することで、単層カーボンナノチューブの存在割合が向上することが確認された。
すなわち、例えばFe等の活性金属とともに凝集防止材を担持することで、担持時の活性金属の粗粒化を防ぐと共に、カーボン材料の合成時などの例えば500℃以上の高温環境下においても、活性金属の担体表面での凝集による粗粒化を防ぎ、選択性よく単層のナノカーボン材料を製造することとなる。
【0042】
また、助触媒として、Moを添加した場合には、生成炭素/触媒が3.97%から、生成炭素/触媒が10.7%に増加した。
【0043】
また凝集防止材15の添加量が活性金属成分に対して複合形態を取ったときの等量モル比に対して10〜1000%、好ましくは50〜200%とするのが好ましい。これは、10%未満であると、部分的な効果しか発現されず、一方1000%を超えると、更なる凝集抑制効果が発現されないからである。
【0044】
ここで、ナノカーボン材料の製造用の触媒を構成する前記活性金属11としては、特に限定されるものではないが、例えばV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれか一種又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0045】
また、活性金属11を担持する担体12としては、例えばアルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種を挙げることができる。
【0046】
また、前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含むようにしてもよい。これは、前記Mo等の助触媒を少量添加することにより、炭素原料の分解を促進させると共に、炭素の鉄等の活性金属への取込みを促進し、カーボン材料の生成を促進させるからである。
【0047】
本発明にかかるナノカーボン材料製造用触媒を用いて、ナノカーボン材料を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば図7に示すような、流動層炉101の内部に流動材であるナノカーボン材料製造用の触媒10を入れて流動させ、原料ガス103を下部から入れて上方から抜き出し反応を行う流動層方式を挙げることができる。
【0048】
その他の製造方法としては、図8に示すように、移動層炉104内に触媒10を充填し、ナノカーボン材料製造用の触媒10を徐々に投入すると共にその一部を抜き出すと共に、原料ガス103を下部から入れて上方から抜き出し反応を行う移動層方式を挙げることができる。
【0049】
その他の製造方法としては、図9に示すように、固定層炉105内に原料ガス103を下部から入れて上方から抜き出し反応を行う固定層方式、又は図10に示すように、気相反応炉106の一端から原料ガス103と共に、ナノカーボン材料製造用の触媒10を投入し、反応を行い、他端で反応物を回収する気流層方式等を挙げることができる。
【0050】
ここで、図7に示すような前記流動層方式に用いる場合のナノカーボン材料製造用の触媒微粒子の粒径としては、細粒のままの触媒ではなく、細粒触媒を造粒した後に整粒して、例えば0.05〜10mmの範囲、好適には、0.4〜2.0mmであることが好ましい。これは流動層反応方式の場合には、流動化ガスにより触媒が飛散してしまうのを防止することが好ましいからである。
【0051】
よって、本発明においては、触媒が極微粒であるので、例えば造粒等により所定径の触媒微粒子16となるように調整している。
また、移動層方式、固定層方式及び気流層方式の場合には、各々適宜好適な粒径とするのが好ましい。
【0052】
次に、本実施例のナノカーボン材料製造用触媒の製造とこのナノカーボン材料製造用触媒を用いてナノカーボン材料の製造システムの一例を図11に示す。
本実施例に係るナノカーボン材料の製造システム30は、担体12と活性金属11用の原料塩と凝集防止材15用の原料塩と溶媒16とを供給する攪拌造粒器31と、前記攪拌造粒器31で得られた担持造粒触媒32を粉砕し整粒する粉砕整粒器33と、前記粉砕整粒器33で粒径を整えた粒径制御触媒34を活性化処理する活性化処理装置35と、前記活性化処理装置35で活性化処理された活性化触媒36と原料ガス38とを供給してナノカーボン材料を製造するナノカーボン材料製造装置37と、前記ナノカーボン材料製造装置37で製造された触媒付ナノカーボン材料39から活性化触媒36を除去してナノカーボン材料精製物41を得る触媒除去精製装置42とを具備するものである。
【0053】
前記攪拌造粒器31には、活性金属11用の原料塩(硝酸鉄)と、凝集防止材15用の原料塩(硝酸マグネシウム)とを所定の割合にて溶媒(エタノール)中に溶解する。その後、この溶解液に担体である酸化マグネシウム(MgO)を投入し、撹拌させつつ造粒し、減圧条件下で加熱乾燥させる。
その後、エタノールを蒸発乾固させた塊は粉砕整粒器(例えばロールミル等)33で粉砕し、0.5〜1.7mmの粒径に整粒し、粒径制御触媒34を得る。
【0054】
次に、得られた粒径制御触媒34は、活性化処理装置35中で、例えば連続的に800℃、窒素ガス中で所定の滞留時間で熱処理し、活性化処理される。
【0055】
活性化処理された活性化触媒36は、ナノカーボン材料製造装置37に投入される。このナノカーボン材料製造装置37では、例えば800℃、原料ガス(CH4=20%(N2バランス)にて、所定の滞留時間反応させることにより、活性化触媒上にナノカーボン材料が成長する。
【0056】
前記ナノカーボン材料製造装置37で得られた触媒にナノカーボン材料が成長した触媒付ナノカーボン材料39は、触媒除去精製装置42の塩酸溶液中に投入され、触媒成分等(Mg,Fe等)を溶解除去することで、高純度のナノカーボン材料精製物41を得ることができる。
【0057】
図12は2つの流動層反応器を用いて、触媒の活性とナノカーボン材料の製造を連続して行なうシステム構成図である。
図12に示すように、本実施例では、前段側の反応器を触媒活性化用流動層反応器51とし、後段の反応器をナノカーボン材料製造用流動層反応器52としている。
そして、触媒活性化用流動層反応器51に粒径が制御された粒径制御触媒34を投入し、活性化ガスを供給して所定の温度で活性化処理を行なって活性化触媒36を得た後、引き続き活性化触媒36をナノカーボン材料製造用流動層反応器52に供給して、連続してナノカーボン材料を製造する。その後、触媒除去精製装置(図示せず)を経て後、ナノカーボン材料生成物41を得るようにしている。
なお、連続式とせずに、バッチ式として必要量に応じた処理を行なうようにしてもよい。
【0058】
また、図13に示すように、原料を部分酸化装置54で部分酸化させて高温の原料ガス55として、ナノカーボン材料製造用流動層反応器52に供給するようにしてもよい。これにより高温の原料ガス55を導入することとなるので、カーボン材料製造のための熱源としても活用でき、反応における外部からの加熱を不要又は削減することができる。
【0059】
ここで、原料53としては先の可燃性ガスの他、可燃性液体の他に例えば黒鉛、石炭、等の含C可燃性固体材料を挙げることができる。熱源が原料ガス55になるため、反応場の温度均一性がますます高まり、この結果カーボン材料の純度及び収率を向上させることができる。
また、スケールアップの際の加熱が容易となり、設備構成を簡略化することができる。
【0060】
次に、図11に示すナノカーボン材料製造装置として流動層反応器を用いた場合の具体例について図14を参照しつつ説明する。なお、本実施例では、凝集防止材により活性金属(鉄)を分散担持した担体(酸化マグネシウム)からなる一次粒子を圧密した所定粒径の二次粒子の活性化した活性化触媒36を用いて、触媒作用と流動作用とを兼用とする流動触媒を用いている。
【0061】
図14に示すように、本実施例にかかるナノカーボン材料製造用流動層反応器52は、内部に触媒と流動材とを兼用した活性化触媒36を充填した流動層反応部62−1と、炭素源である炭素ガス38を前記流動層反応部62−1内に供給する原料供給装置63と、活性化触媒36を前記流動層反応部62−1内に供給する流動触媒供給装置64と、前記流動層反応部62−1内の流動材である活性化触媒36が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部62−2と、前記流動層反応部62−1に導入し、内部の活性化触媒36を流動させる流動ガス65を供給する流動ガス供給装置66と、流動層反応部62−1を加熱する加熱部62−3と、該フリーボード部62−2から排出される排ガス22を処理する排ガス処理装置67と、前記流動層反応部62−1から触媒付ナノカーボン材料39を回収ライン68により抜出して回収する回収装置23と、触媒付ナノカーボン材料39を精製する触媒除去精製装置42とを具備するものである。
前記流動層反応部62−1の流動層反応形式には気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
【0062】
本実施例では、流動層反応部62−1とフリーボード部62−2と加熱部62−3とから流動層反応器62を構成している。また、フリーボード部62−2は、流動層反応部62−1よりもその流路断面積の大きいものが好ましい。
【0063】
前記原料供給装置63より供給される原料ガスである炭素ガス38は、炭素を含有する化合物であれば、いずれのものでもよく、例えばCO、CO2の他、メタン、エタン、プロパン及びヘキサン等のアルカン類、エチレン、プロピレン及びアセチレン等の不飽和有機化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等の含酸素官能基を有する有機化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料、又は石油や石炭(石炭転換ガスを含む)等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、酸素濃度制御のため、含酸素炭素源CO、CO2、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等と、酸素を含まない炭素源とを2つ以上組合わせて供給することもできる。
【0064】
この炭素ガス38は、流動層反応部62−1内にガス状態で供給し、流動材である活性化触媒36による攪拌により均一な反応が行われ、ナノカーボン材料を成長させている。この際、所定の流動条件となるように、別途流動ガス65として流動ガス供給装置66により不活性ガスを流動層反応部62−1内に導入している。
【0065】
そして、加熱部62−3により流動層反応部62−1内を300℃〜1300℃の温度範囲、より好ましくは400℃〜1200℃の温度範囲とし、メタン等の炭素ガス38を不純物炭素分解物の共存環境下で一定時間触媒に接触することによってナノカーボン材料を合成している。
【0066】
前記回収装置23としてサイクロン以外には、例えばバグフィルタ、セラミックフィルタ、篩等の公知の分離手段を用いることができる。
【0067】
また、前記回収装置23で分離された触媒付ナノカーボン材料39は、前述したように、触媒除去精製装置42で付着した触媒を溶解して精製され、ナノ単位のナノカーボン材料(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等)として回収するようにしている。
【0068】
このように、本実施例によれば、流動層反応形式によるナノカーボン材料を製造する際に、活性金属の凝集が防止された活性化触媒36を用いることにより、不純物である多層のナノカーボン材料或いはアモルファス状のカーボン材料を製造せず、単層のナノカーボン材料を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 ナノカーボン材料製造用触媒
11 活性金属
12 担体
15 凝集防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性金属を含む原料塩と、凝集防止材用の原料塩とを溶媒中にて溶解することで溶解液を作製する工程と、
前記溶解液に担体材料を投入し、撹拌しながら造粒物を作製する工程と、
前記造粒物を乾燥した乾燥造粒物を作製する工程と、
前記乾燥造粒物を整粒することで粒径制御触媒を得る工程とを有するナノカーボン材料製造用触媒の製造方法であって、
前記凝集防止材用の原料塩がアルカリ土類金属又はアルカリ金属の一種又は二種以上の組み合わせを含み、且つ前記凝集防止材が前記担体材料と同一成分を含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記活性金属を含む原料塩として、Mo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を添加することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記活性金属を含む原料塩がV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれか一種又はこれらの組合せであり、
前記担体がアルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種を用いることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記凝集防止材の添加量が活性金属成分に対して複合形態を取ったときの等量モル比に対して10−1000%であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
活性金属を含む原料塩と、凝集防止材用の原料塩とを溶媒中にて溶解することで溶解液を作製する工程と、
前記溶解液に担体材料を投入し、撹拌しながら造粒物を作製する工程と、
前記造粒物を乾燥することで乾燥造粒物を作製する工程と、
前記乾燥造粒物を整粒することで粒径制御触媒を得る工程と、
前記粒径制御触媒を活性化ガスで熱処理することで活性化触媒を得る活性化工程と、
前記活性化触媒に炭素ガスを接触させることでナノカーボン材料を合成させる合成工程とを有するナノカーボン材料の製造方法であって、
前記凝集防止材用の原料塩がアルカリ土類金属又はアルカリ金属の一種又は二種以上の組み合わせを含み、且つ前記凝集防止材が前記担体材料と同一成分を含むことを特徴とするナノカーボン材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記活性金属を含む原料塩として、Mo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を添加することを特徴とするナノカーボン材料の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記活性金属を含む原料塩がV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれか一種又はこれらの組合せであり、
前記担体がアルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種を用いることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一つにおいて、
前記凝集防止材の添加量が活性金属成分に対して複合形態を取ったときの等量モル比に対して10−1000%であることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一つにおいて、前記活性化工程により活性金属と凝集防止材との複合酸化物を得ることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれか一つにおいて、
前記活性化工程と前記合成工程が流動層反応器を用いていることを特徴とするナノカーボン材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−255382(P2011−255382A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213550(P2011−213550)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2006−274383(P2006−274383)の分割
【原出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】