説明

ナノサイズの半球状凸部を有する基板または電極を用いた高効率有機発光素子およびその製造方法

本発明は、第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部が形成された透明基材と、 基板、第1電極、有機物層および第2電極を順次含む有機発光素子において、前記第1電極と接しない基板の下面および/または前記有機物層と接しない第2電極の上面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を有する有機発光素子、および多孔性アルミニウム酸化膜形成工程を用いたこれらの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子、特に非平坦構造の有機発光素子およびその製造方法に関する。具体的に、本発明は、ナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材、それを用いた高効率有機発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。具体的な原理は、次のとおりである。陽極と陰極との間に有機物層を位置させたとき、両電極の間に電圧をかけると、陽極では正孔が、陰極では電子がそれぞれ有機物層に注入される。この注入された正孔と電子が結合するとき、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンがさらにグラウンド状態に落ちながら発光する。このように生成された光は、陽極、陰極または両電極を介して放出されるが、光の放出方向によって、有機発光素子は、通常、前面発光型(top emission)、後面発光型(bottom emission)および両面発光型に分類される。
【0003】
最近では、この種の有機発光現象を用いてディスプレイまたは照明器具を製造しようとする研究が盛んに行われている。また、効果的な有機発光素子を製造するために、有機物層を単層ないし多層の構造で蒸着させる研究が行われてきた。現在使用される大部分の有機発光素子は、電極と有機物層が平坦に蒸着された構造を持っている。図1に示すように、正孔注入層103、正孔伝達層104、発光層105および電子伝達層106を含む多層の有機物層と電極が平坦に蒸着された構造を持つ有機発光素子が広く用いられている。
【0004】
図1に示した有機発光素子の発光層から発生した光は、次の2つの異なる経路を経ることができる。すなわち、光が透明な陽極層およびガラス基板を介して素子の外に放出される場合と、ガラス基板または陽極の表面から全反射されて素子内に閉じ込められる場合である。この際、素子の外に放出できる光の量は、発光層から発生した光の全量の1/2n(nは有機物層の屈折率)である。有機物層の屈折率が1.7であると仮定すると、発生した光の17%以下のみが有機発光素子の外に放出できる。
【0005】
かかる問題を克服し、有機発光素子の外にさらに多くの光が放出されるようにするために、図1に示した有機発光素子とは異なり、平坦ではない層を持った構造、すなわち非平坦構造を持つ有機発光素子を作るための方法が試みられてきた。このような方法は、2つの方法に大別される。
【0006】
第1の方法によれば、ガラス基板に透明な陽極を蒸着する前にフォトリソグラフィ法を用いて凸凹構造の光結晶(photonic crystal)を作り[米国特許第6630684号および文献Y. Lee et al., Appl. Phys. Lett. 82, 3779(2003)]、あるいは光の干渉現象を用いて波形構造を実現することにより[国際特許出願公開第2000/70691号および文献B. J. Matterson et al., Adv. Mater. 13, 123(2001)]、発光効率を増加させる方法である。具体的に、前者の場合は、ガラス基板に光結晶構造を形成し、その上部をSiNを用いて平坦化させた後陽極層を蒸着させる方法であり、後者の場合は、フォトレジスト物質と光の干渉現象を用いてガラス基板上に透明な高分子で波形構造を作った後、この波形構造を維持させながら電極と有機物を蒸着させる方法である。
【0007】
第2の方法は、図1に示すように、平坦構造の有機発光素子を製造した後、ガラス基板の表面にマイクロメートルサイズのレンズ構造[国際特許出願公開第2003/007663号および文献S. Moller et al. J. Appl. Phys. 91, 3324(2002)]またはミリメートルサイズのレンズ構造(国際特許出願公開第2001/33598号)を付着させることにより、素子の発光効率を増加させる方法である。
【0008】
前記方法らを用いた場合、いずれの場合も発光効率が増加したが、商用化製品に使用するためにはいろいろの問題がある。
【0009】
例えば、第1の方法は、フォトリソグラフィ法を使用するため、光結晶構造または波形構造を大面積に経済的に実現することが不可能であるという問題がある。光結晶構造を用いる場合、蒸着工程、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を順次経なければならないが、この過程で真空下における基板処理を2回以上行わなければならないためである。また、波形構造を用いる場合、光の干渉を利用するフォトリソグラフィ工程を使用するが、この方法では、数cm以上の基板に均一な波形構造を実現することが不可能であると知られている。
【0010】
第2の方法は、レンズ構造の大きさが数十マイクロメートルないし数ミリメートルサイズの範囲内なので、ディスプレイにおける使用に限界があり、準備方法のため、大面積に適用することが不適である。また、前記国際特許出願公開第2003/007663号に記載のレンズ構造は、最小平面寸法が有機発光素子から放出される可視光線の最大波長より大きい、数ミクロン以上のレンズ構造に限定されており、国際特許出願公開第2001/33598号に記載のレンズ構造は、その大きさが1単位の有機発光素子より大きい場合に限られている。
【発明の開示】
【0011】
本発明者らは、多孔性アルミニウム酸化膜形成工程を用いて製造したナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム基板を鋳型として使用すれば、大面積の透明基材にナノサイズの連続した半球状凸部を経済的に形成することができるということを見出した。また、このような方法によって製造された透明基材を用いて有機発光素子にナノサイズの連続した半球状凸部を形成することができ、この場合、有機発光素子の有機物層で生成された光を最大限素子の外に放出することができるということも見出した。
【0012】
そこで、本発明は、第1主表面にナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材、前記透明基材を基板および/または電極に付着させることにより、基板および/または電極にナノサイズの連続した半球状凸部を有する有機発光素子、およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部が形成された透明基材を提供する。
【0014】
また、本発明は、
a)少なくとも一面がアルミニウムよりなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階と、
b)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階と、
c)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む方法によって製造された、第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を有する透明基材を提供する。
【0015】
また、本発明は、基板、第1電極、有機物層および第2電極を順次積層された形で含む有機発光素子において、前記第1電極と接しない前記基板の下面、前記有機物層と接しない前記第2電極の上面、またはこれらの両面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部が備えられたことを特徴とする、有機発光素子を提供する。
【0016】
また、本発明は、
a)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には、前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階と、
b)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階と、
c)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む、第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を有する透明基材の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、
a)基板上に第1電極、有機物層および第2電極を形成して有機発光素子を製造する段階と、
b)前記有機発光素子において、前記第1電極に接しない基板の下面、前記有機物層に接しない第2電極の上面、またはこれらの両面に透明基材を付着させる段階と、
c)前記b)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成されたアルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む、有機発光素子の製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、
a)基板上に透明基材を付着させる段階と、
b)前記a)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階と、
c)連続した半球状凸部が形成された透明基材が付着している面と反対の基板の上面上に第1電極、有機物層および第2電極を形成して有機発光素子を製造する段階と、任意に
d)前記有機発光素子の中で前記有機物層と接しない第2電極の上面に透明基材を付着させる段階と、
e)前記d)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記第2電極の上面上の透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む、有機発光素子の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の様態】
【0019】
この発明の前記及び他の目的、特徴及び利点は、添付図面を参照する次の説明によって明確に理解されるであろう。
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
ナノサイズとは、通常、ナノメートル単位の大きさである1〜1,000nmを意味するが、本明細書では、本発明によってアルミニウム基板または透明基材上に実質的に形成できる凹部または凸部の直径範囲である25〜1,000nmを意味する。
【0022】
また、本明細書において、透明基材の第1主表面とは、アルミニウム基材を鋳型として凸部が形成される面をいうものであって、素子が付着される反対面を意味する。
【0023】
本発明に係る第1主表面にナノサイズの連続した凸部が形成された透明基材は、後述する本発明の方法によってのみ製造できる新規な構造のものであって、これは、平面ディスプレイ素子分野で素子の外にさらに多くの光を放出させるために全反射条件を緩和するための用途として使用できる。例えば、本発明に係る透明基材を有機発光素子に適用する場合、下記の作用原理が適用される。
【0024】
基板、第1電極、有機物層および第2電極を順次積層された形で含む有機発光素子において、本発明に係る第1主表面にナノサイズの連続した半球状凸部が形成された透明基材は、第1電極と接しない基板の下面および/または有機物層と接しない第2電極の上面に配置できる。ここで注目すべき点は、本発明に係る半球状凸部は素子が形成された内部ではない外側、すなわち基板の下面および/または第2電極の上面に備えられるようにすることが好ましいという点である。これは、有機発光素子が無機電界発光素子など他の発光素子とは異なり非常に薄い厚さに形成されなければならないので、素子の内部に非平坦構造が形成される場合、これが素子の形成に影響して素子の作動に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
【0025】
図4に例示されているように、表面が平坦構造である有機発光素子では、光が全反射によって素子内に閉じ込められることがあるが、表面にナノサイズの連続した凸部を有する有機発光素子では、光が前記透明基材で何回か、好ましくは1〜2回の反射のみを経ると、素子の外に放出できる。このような原理によってナノサイズの連続した凸部が備えられた表面を有する本発明の有機発光素子は、さらに多くの光を素子の外に放出させることができる。
【0026】
また、本発明によって有機発光素子の表面に備えられた半球状凸部はナノ単位の大きさを有するが、これは、光の波長と類似なので、有機物層から放出される光との相互作用によって単純なレンズ効果以上の効果を示すことができる。このような点において、本発明のナノサイズの半球状凸部は、従来の技術に記載のマイクロサイズのレンズ構造とは異なる(国際特許出願公開第2003/7663号)。次に、これについてより具体的に説明する。
【0027】
本発明においては、有機発光素子の基板または電極に備えられた半球状凸部がナノサイズなので、素子の有機物層からの光の放出の際に光の波動性によって有機発光素子の輝度を増加させることができる。例えば、前記半球状凸部の直径が可視光線の波長と同一またはより短い場合、この半球状凸部の構造は、光の乱反射または散乱現象によって光の経路を変える。その結果、この半球状凸部は、平坦構造に比べて全反射条件を緩和させて有機発光素子の外にさらに多くの光が放出されるようにすることができる。このような効果は、半球状凸部の直径が可視光線の半波長と波長間の値を有する場合にさらに大きくなれる。
【0028】
一方、本発明は、第1の主表面に複数の連続した半球状凸部を有する透明基材を多孔性アルミニウム酸化膜形成工程を用いて製造することを特徴とする。前記多孔性アルミニウム酸化膜形成工程は、本発明と異なる技術分野で公知となっている技術であるが、これをナノサイズの凸部を有する透明基材の製造に使用した例がない。本発明者らは、前記工程をナノサイズの凸部を有する透明基材の製造に使用することにより、これを大面積および経済的に製造することができ、これにより前記非平坦構造の透明基材を大面積の有機発光素子などの平板ディスプレイ素子に経済的に適用することができるということを見出した。
【0029】
本発明においては、前述した効果を達成するために、本発明の有機発光素子の基板または電極上に備えられた半球状凸部は、直径が可視光線の半波長と波長の間の値、すなわち200〜800nmの値を有することがさらに好ましい。また、前記半球状凸部は、均一に分布していることが好ましい。本発明において、前記ナノサイズの連続した凸部が備えられた表面は、図7に例示されている。
【0030】
多孔性アルミニウム酸化膜形成工程に対する詳細な説明は、例えば文献[A. P. Li et al. J. Appl. Phys., 84, 6023(1998)]に記載されている。簡略に説明すると、次のとおりである。少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を適切な酸溶液、例えば硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸などの酸溶液に浸漬した後、適切な酸化電圧、例えば10〜400Vの電圧を加えると、前記アルミニウム基板に、直径約25〜1000nm、好ましくは200〜800nm、厚さ数百nm〜数μmの凹部が均一に設けられている酸化膜を形成することができる。前記凹部の厚さは、実験時間に比例する。この際、前記酸化膜とアルミニウム基板との界面には、前記酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成される。
【0031】
前記方法による多孔性アルミニウム酸化膜の形成過程は、図5に例示されている。図5のa)〜d)は、多孔性アルミニウム酸化膜形成過程で時間経過に伴って形成される酸化膜の形態変化を示す。初期には、アルミニウム基板502上に薄くて均一な酸化膜501が形成される(a)。時間経過に伴って、酸化膜の容積が膨張しながら酸化膜の表面が不均一になる(b)。このように酸化膜の表面が不均一になると、電流密度もやはり不均一になる。すなわち、酸化膜の表面のうち、陥没部では電流密度が増加し、隆起部では電流密度が減少する。次いで、電場の作用および酸溶液の電解質作用により、電流密度の大きい陥没部には微細な凹部が形成され、ある程度時間が経過すると、前記微細凹部の直径の増加は停止する(c)。そして、凹部の数は、一定に保たれながら、この凹部が形成されている表面の垂直方向に厚さが速く増加する(d)。この際、前記凹部の厚さの増加により、アルミニウム酸化膜501とアルミニウム基板502との界面には、前記酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成される(図5のc)およびd))。
【0032】
このような方法によってアルミニウム基板に多孔性酸化膜を形成した後、アルミニウム基板から多孔性酸化膜を除去することにより、図5のe)のような複数の連続した半球状凹部が形成された基板を製造することができる。酸化膜除去方法としては、化学的エッチング法、電気化学的エッチング法または電気的衝撃法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記酸化膜除去方法の中でも、化学的エッチング法とは、酸溶液を用いて酸化膜をエッチングする方法である。ここで、酸溶液としては例えばリン酸とクロム酸との混合溶液などを用いることができる。電気化学的エッチング法とは、酸化膜が形成された基板を電極として用い、酸溶液の下で電気化学反応によって酸化膜を除去する方法である。ここで、酸溶液としては、例えばエタノールと過塩素酸(HClO)との混合溶液などを用いることができる。電気的衝撃法とは、電気化学的に電圧を調節して前記基板に電気的衝撃を加えることにより、アルミニウム層から酸化膜を剥離する方法である。
【0034】
前記の方法において、アルミニウム基板は、少なくとも一面がアルミニウムからなっていれば、基板の残り材料に大きく限定されない。例えば、本発明では、前記基板として、アルミニウムのみからなるアルミニウム基板を使用することもでき、ガラス基板のような他の基材上にアルミニウム層が積層された形の基板を使用することもできる。
【0035】
次いで、前記ナノサイズの連続した半球状凹部が形成されたアルミニウム基板を鋳型として使用することにより、透明基材に前記ナノサイズの半球状凹部の逆構造であるナノサイズの半球状凸部を形成することができる。このための方法としては、当該技術分野に知られている方法を用いることができ、特別な方法に限定されない。
【0036】
前記透明基材の材料としては、アルミニウム基板のナノサイズの半球状凹部の形状を維持しながら表面を平坦化させることが可能な複製モールディング(replica molding)物質として使用できるものであって、大部分の高分子物質が使用できる。ところが、本発明の有機発光素子に適用されるナノサイズの半球状凸部を有する透明基材は、可視光線を透過させなければならないため、前記透明基材の材料としては、ナノサイズの半球状凸部が形成された後に可視光線の透過率が60%以上となる高分子物質を使用することが好ましい。前記の条件を満足する物質は、PDMS(Poly(dimethysiloxane))[T. W. Odom et al. Langmuir, 18, 5314(2002)]またはPMMA(polymethylmethacrylate)[H. Tan et al. J. Vac. Sci. Technol. B, 16, 3926(1998)]を例として挙げることができるが、これらに限定されない。
【0037】
上述した材料の透明基材にナノサイズの連続した半球状凸部を形成するための一つの方法としては、ナノインプリント技法(Nano-imprint technique)がある。
【0038】
ナノインプリント技法とは、ナノサイズの構造を持った基板を鋳型として用いて、その逆構造を有するフィルムを製作することができる方法である。すなわち、ナノメートルサイズの構造を持った基板上に、前記構造を維持しながら表面を平坦化させることが可能な物質、例えばPDMSまたはPMMAでフィルムを形成させる。このようなフィルムは、前述した材料の溶融物を鋳型基板上に注ぎまたはスピンコートするなどの方法によって形成できる。前記フィルムに気泡が生ずる場合、前記フィルムを真空の下に硬化させることにより、気泡を除去することができる。次いで、前記フィルムを熱または紫外線を用いて硬化させた後、鋳型として使われた基板を取り外すことにより、鋳型に在ったナノ構造の逆構造を持ったフィルムを作ることができる。
【0039】
前記方法では、鋳型と鋳型の逆構造を持った透明基材フィルム間の結合を弱化させることがナノメートルサイズの構造の転移に好ましい。このために、鋳型基板を、その表面エネルギーを減少させることが可能な物質を含んだ溶液に浸漬させるか、あるいは表面エネルギーを減少させることが可能な物質の蒸気に露出させた後洗浄することにより、鋳型基板に剥離層(release layer)を形成することができる。前記鋳型基板の表面エネルギーを減少させることが可能な物質としては、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシランなどを挙げることができる。ところが、これらの方法にのみ限定されず、前記剥離層によって得られる効果と同一の効果を達成するために、当該技術分野に知られている方法を用いることができる。
【0040】
前記ナノインプリント技法において、鋳型基板として、前述したナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム基板を直接使用することができるが、前記アルミニウム基板を鋳型としてナノインプリント技法を2回以上繰り返して製造したナノサイズの連続した半球状凹部を有するポリマー鋳型を使用することもできる。この際、前記ポリマー鋳型の物質としては、硬い高分子材料が好ましく、例えばポリウレタンを挙げることができる。前記ポリマー鋳型の硬度を補強し、ナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材の製造の際に、ポリマー鋳型と透明基材の分離を円滑にするために、前記ポリマー鋳型上にポリスチレンやポリカーボネートなどを用いた耐スクラッチ用薄膜、または金属薄膜を形成させることもできる。前記アルミニウムまたはポリマー鋳型は、簡単な洗浄過程によって10回以上使用することができる。
【0041】
透明基材にナノサイズの連続した半球状凸部を形成するための別の方法としては、ナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム鋳型を用いて、透明機材上に、適当な圧力を加えながら紫外線または熱によって硬化させることにより、ナノサイズの連続した半球状凸部を形成する方法を用いることができる。このような方法では、前記鋳型をローラーに付着させるか、ローラー上にナノサイズの連続した半球状凹部を形成させた後、ローラープロセスを用いて透明基材にナノサイズの連続した半球状凸部を形成することもできる[H. Tan et al. J. Vac. Sci. Technol. B, 16, 3926(1998)]。
【0042】
本発明で前述したように製造された透明基材は、全反射条件を緩和することが要求される素子に適用できる。最近、平面ディスプレイ素子分野で全反射条件を緩和することが要求されるが、本発明の透明基材の用途がこれに限定されるのではない。本発明の一実施形態において、本発明に係る透明基材は、有機発光素子に適用できる。
【0043】
本発明に係る透明基材を有機発光素子の透明基板および/または透明電極に付着させるが、透明基材を基板又は電極に付着させる前または後に、前述した方方によって前記透明基材にナノサイズの連続した半球状凸部を形成させることにより、ナノサイズの連続した半球状凸部を有する有機発光素子を製造することができる。前記透明基材を透明基板または透明電極に付着させる過程、および透明基材にナノサイズの連続した半球状凸部を形成する過程は、有機発光素子を製作した後に行ってもよく、有機発光素子製作の前に行ってもよい。
【0044】
前記透明基材を基板または電極に付着させる方法は、特に限定されず、当該技術分野に知られている方法を用いることができる。
【0045】
透明基材を有機発光素子の基板または電極に付着させる方法の一例としては、酸素プラズマなどの方法を用いて基板または電極の表面を活性化させた後、熱または紫外線によって基板または電極に透明基材を付着させて基板または電極と透明基材間の空気層を除去する方法がある。
【0046】
透明基材を有機発光素子の基板または電極に付着させる方法の別の例としては、透明基材と基板または電極間の結合力を高めるために、基板または電極上にSAM(self-assembled monolayer)を形成する方法がある。その一例として、ガラス基板とPDMS基材間の結合力を高めるために、5−ヘキセニルトリクロロシラン(5-hexenyltrichlorosilane)をトルエンなどの溶媒に溶かし、その後ガラス基板を前記溶液に浸漬させることにより、ガラス基板上にSAMを形成することができる。
【0047】
透明基材を基板または電極に付着させる別の方法としては、基板または電極上に透明基材材料の溶融物を注ぎまたはスピンコートする方法などによってポリマーフィルムを形成する方法がある。
【0048】
本発明において、透明基材を透明基板に付着させる場合、透明基板としては、機械的、熱的安定性を有しながら水分と酸素に対する透過性の低い物質を使用することが好ましい。前記物質としては、ガラス、石英、さらに高分子並びに水分および酸素に対するバリア(barrier)特性に優れた金属酸化物の積層構造を有する物質などを使用することが好ましいが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の有機発光素子は、前述した方法によって有機発光素子の基板および/または電極の表面にナノサイズの連続した半球状凸部を有する以外は、当該技術分野に知られている方法によって製造でき、当該技術分野に知られている構造を持つことができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、図2に例示した構造を持つことができる。図2の有機発光素子は、スパッタリング(sputtering)や電子ビーム蒸発(e-beam evaporation)などのPVD(physical vapor deposition)方法を用いて、ナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材208が付着している透明基板201上に、金属または伝導性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて陽極202を形成し、その上に正孔注入層203、正孔伝達層204、発光層205、電子伝達層206を含む有機物層を形成した後、その上に陰極207として使用できる物質を蒸着させることにより製造できる。
【0051】
このような方法の他にも、基板上に陰極物質から有機物層、陽極物質を順次蒸着させて有機発光素子を作ることもできる[国際特許出願公開第2003/012890号]。前記有機物層は、正孔注入層、正孔伝達層、発光層および電子伝達層などを含む多層構造であってもよいが、これらに限定されず、単層構造であってもよい。また、前記有機物層は、様々な高分子素材を用いて蒸着法ではなく溶媒プロセス(solvent process)、例えばスピンコーティング、スクリーンプリンティングまたはインクジェット方法によってさらに少ない数の層に製造することができる。
【0052】
前記陽極物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑に行われるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明で使用できる陽極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの伝導性高分子などがあるが、これらに限定されるものではない。ここで、有機発光素子の陽極側に光を放出させるためには、陽極物質として透明度の高い物質(>50%)を使用することが好ましく、特に亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物、または薄い金属薄膜などの物質が好ましい。有機発光素子の陰極側に光を放出させるためには、陽極物質として反射度の高い物質(>50%)を使用することが好ましく、Ag、Al、Ni、Cr、Auまたはこれらを含む合金などの物質がさらに好ましい。
【0053】
前記陰極物質は、通常、有機物層への円滑な電子注入のために仕事関数の小さい物質であることが好ましい。陰極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらに限定されない。ここで、有機発光素子の陰極側に光を放出させるためには、陰極物質として透明度の高い物質(>50%)を使用することが好ましく、特にMgとAgとの混合物またはAlを透明性を持つように薄膜に作った後、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物などの透明な伝導性物質を蒸着して製造した物質を使用することがさらに好ましい。
【0054】
正孔注入物質は、低い電圧で陽極から正孔の注入をよく受けることが可能な物質であって、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が陽極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrine)、オリゴチオフェン、アリールアミン系列の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン、キナクリドン(quinacridone)系列の有機物、ペリレン(perylene)系列の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系列の伝導性高分子またはドーパント(dopant)などの伝導性高分子などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
正孔伝達物質としては、陽極または正孔注入層から正孔の伝達を受けて発光層に移すことが可能な物質であって、正孔に対する移動性の大きい物質が適する。その具体的な例としては、アリールアミン系列の有機物、伝導性高分子、および共役部分と非共役部分が共に在るブロック共重合体などがあるが、これらに限定されない。
【0056】
発光物質としては、正孔伝達層と電子伝達層から正孔と電子をそれぞれ受けて結合させることにより、可視光線領域の光を発することが可能な物質であって、蛍光またはリン光に対する量子効率の良い物質が好ましい。その具体的な例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系列の化合物;異量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系列の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)系列の高分子;ポリフェニレンビニレン(PPV)系列の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらに限定されない。
【0057】
電子伝達物質としては、陰極から電子の注入をよく受けて発光層に移すことが可能な物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が適する。その具体的な例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含んだ錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって前面発光型、後面発光型または両面発光型であっても良い。
【実施例】
【0059】
実施例1
有機発光素子の製造
ITO(インジウムスズ酸化物)が1000Åの厚さに薄膜コートされたガラス基板(corning 7059 glass)を、分散剤を溶解させた蒸留水に入れて超音波で洗浄した。洗浄剤は、Fischer Co.の製品を使用し、蒸留水は、Millipore Co.製のフィルタで2回濾過された蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間行った。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤の順に超音波洗浄を行って乾燥させた。
【0060】
前記ITO電極上にヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(500Å)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)(400Å)、Alq(300Å)および下記化学式1で表わされる化合物(200Å)を順次熱真空蒸着して正孔注入層、正孔伝達層、発光層、電子伝達層を順次形成させた。
【化1】

【0061】
前記電子伝達層上に順次厚さ12Åのフッ化リチウム(LiF)と厚さ2000Åのアルミニウムを蒸着して陰極を形成することにより、有機発光素子を製造した。
【0062】
前記の過程で有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、陰極のフッ化リチウムは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10−7〜5×10−8torrを維持した。
【0063】
ナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム鋳型の製造
アルミニウム基板をリン酸溶液に浸漬した後、196Vの酸化電圧を加えて、アルミニウム基板に、直径約200〜600nmの均一な凹部がミクロン程度の厚さに設けられている酸化膜を形成した。次いで、リン酸とクロム酸の混合溶液を用いた化学的エッチング法によって前記アルミニウム基板から酸化膜を除去することにより、ナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム基板を製造した。
【0064】
前記アルミニウム基板を酸素プラズマ処理した後、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシランの蒸気に露出させた。その後、前記アルミニウム基板をトルエンを用いて洗浄することにより、前記アルミニウム基板上にトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン単一層の剥離層を形成した。
【0065】
ナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材の製造および有機発光素子への適用
前記の方法で準備されたアルミニウム基板上にPDMSと硬化剤(Sylgard 184, Dow-Corning)の10:1混合液を注ぎ、3000rpmで回転させることによりPDMS膜を形成した後、PDMS膜からアルミニウム基板を除去した。
【0066】
前記の方法で準備された有機発光素子のうち、ITO電極と接しないガラス基板の下面に酸素プラズマ処理してガラスの表面を活性化させる。その後、前記の方法で処理された有機発光素子を、5−ヘキセニルトリクロロシランが溶解されているトルエン溶液に30分間浸漬させることにより、5−ヘキセニルトリクロロシランからなる自己組織化単層膜(self-assembled monolayer)をガラス基板上に形成した。
【0067】
前記のPDMS膜上に、準備された有機発光素子の5−ヘキセニルトリクロロシランで表面処理されたガラス基板面を接触させた。次いで、真空下に65℃で硬化(curing)させることにより、ナノサイズの連続した半球状凸部を有する有機発光素子を製造した。有機発光素子に備えられたナノサイズの連続した半球状凸部構造は、図6のとおりである。
【0068】
発光実験の結果
上述したように製作された素子に6Vの順方向電界を加えたとき、3200nitに相当するAlqからの緑色発光が観測された。
【0069】
比較例1
有機発光素子の透明基板にナノサイズの連続した半球状凸部を有するPDMSフィルムを付着させない以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【0070】
ナノサイズの半球状凸部を有しない平らなガラス基板上に形成された前記素子に順方向電界を加えたとき、同一の6Vで2300nitに相当するAlqからの緑色発光が観察された。
【0071】
比較例2
有機発光素子の透明基板に、ナノサイズの半球状凸部を有するPDMSフィルムの代わりに平坦構造のPDMSフィルムを付着させた以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【0072】
ナノサイズの半球状凸部を有しない平らなガラス基板上に形成された前記素子に順方向電界を加えたとき、同一の6Vで2100nitに相当するAlqからの緑色発光が観察された。
【0073】
実施例1および比較例1、2の結果より、同一の有機物質からなる有機発光素子において、ナノサイズの連続した凸部を有する素子が、平らな表面を有する有機発光素子よりさらに多くの光を発光することが分かる。
【0074】
産業上の利用可能性
本発明のナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材は、例えば有機発光素子などの平面ディスプレイ分野で全反射条件を緩和するための用途として使用できる。本発明に係るナノサイズの連続した半球状凸部を有する透明基材を適用した非平坦構造の有機発光素子は、平坦構造の有機発光素子に比べて、有機物層から発生する光を有機発光素子の外に最大限放出させることができる。また、本発明に係るナノサイズの連続した半球状凸部の形成方法は、多孔性アルミニウム酸化膜形成工程を用いて製造したナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム基板を鋳型として用いる方法であって、大面積に経済的に適用することができる。したがって、本発明の有機発光素子は、大面積の用途に経済的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】従来の有機発光素子の一例を示す(101:ガラス基板、102:透明陽極、103:正孔注入層、104:正孔伝達層、105:発光層、106:電子伝達層、107:金属陰極)。
【図2】本発明に係る有機発光素子の例を示す(201:ガラス基板、202:透明陽極、203:正孔注入層、204:正孔伝達層、205:発光層、206:電子伝達層、207:金属陰極、208:ナノサイズの凸部を有する透明基材)。
【図3】ナノサイズの連続した半球状凹部が形成された鋳型301とナノサイズの連続した半球状凸部が形成された透明基材302の断面の例を示す。
【図4】平坦な透明基板を有する有機発光素子およびナノサイズの連続した半球状凸部が形成された透明基材が付着している透明基板を有する有機発光素子それぞれにおける光の移動経路を例示したものである(401:有機発光素子、402:透明基板)。
【図5】ナノサイズの連続した半球状凹部を有するアルミニウム鋳型の製造過程を示すものである(501:アルミニウム酸化膜、502:アルミニウム基板)。
【図6】実施例1で製造されたナノサイズの連続した半球状凸部を有する基材の表面構造を示す電子顕微鏡写真である((a)5,000倍の拡大写真、(b)23,000倍の拡大写真)。
【図7】本発明に係る有機発光素子の例示的な模型図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部が形成された透明基材。
【請求項2】
前記透明基材が、
a)少なくとも一面がアルミニウムよりなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凸部が形成されるようにする段階と、
b)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階と、
c)前記複数の連続した半球状凹部が形成されたアルミニウム基板を鋳型として透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む方法によって製造されたことを特徴とする、請求項1に記載の透明基材。
【請求項3】
前記透明基材が、可視光線透過率60%以上の高分子物質からなることを特徴とする、請求項1に記載の透明基材。
【請求項4】
ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)よりなる群から選ばれる物質からなることを特徴とする、請求項1に記載の透明基材。
【請求項5】
前記透明基材が、全反射条件を緩和することが要求される素子に適用されるためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の透明基材。
【請求項6】
前記素子が、有機発光素子であることを特徴とする、請求項5に記載の透明基材。
【請求項7】
基板、第1電極、有機物層および第2電極を順次積層された形で含む有機発光素子において、前記第1電極に接しない前記基板の下面、前記有機物層に接しない前記第2電極の上面、またはこれらの両面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部が備えられたことを特徴とする、有機発光素子。
【請求項8】
前記有機物層が、正孔注入層、正孔伝達層、発光層および電子伝達層を含むことを特徴とする、請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記有機発光素子が、
a)基板上に第1電極、有機物層および第2電極を形成して有機発光素子を製造する段階と、
b)前記有機発光素子において、前記第1電極に接しない基板の下面、前記有機物層に接しない第2電極の上面、またはこれらの両面に透明基材を付着させる段階と、
c)前記b)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板からアルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成されたアルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む方法によって製造されたことを特徴とする、請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記有機発光素子が、
a)基板上に透明基材を付着させる段階と、
b)前記a)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成されたアルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階と、
c)連続した半球状凸部が形成された透明基材が付着している面と反対の基板の上面上に第1電極、有機物層および第2電極を形成して有機発光素子を製造する段階とを含む方法によって製造されたことを特徴とする、請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記透明基材が、可視光線透過率60%以上の高分子物質であることを特徴とする、請求項9または10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記透明基材が、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)よりなる群から選ばれる物質からなることを特徴とする、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
a)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階と、
b)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階と、
c)前記複数の連続した半球状凹部が形成されたアルミニウム基板を鋳型として透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む、第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を有する、透明基材の製造方法。
【請求項14】
a)基板上に第1電極、有機物層および第2電極を形成して有機発光素子を製造する段階と、
b)前記有機発光素子において、前記第1電極に接しない基板の下面、前記有機物層に接しない第2電極の上面、またはこれらの両面に透明基材を付着させる段階と、
c)前記b)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む、有機発光素子の製造方法。
【請求項15】
a)基板上に透明基材を付着させる段階と、
b)前記a)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えて前記アルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階
を含む方法によって、前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を設ける段階と、
c)連続した半球状凸部が形成された透明基材が付着している面と反対の基板の上面上に第1電極、有機物層および第2電極を形成して有機発光素子を製造する段階とを含む有機発光素子の製造方法。
【請求項16】
さらに、d)前記有機発光素子の中で前記有機物層と接しない第2電極の上面に透明基材を付着させる段階と、
e)前記d)段階の前または後に、
i)少なくとも一面がアルミニウムからなるアルミニウム基板を酸溶液に浸漬した後、10〜400Vの酸化電圧を加えてアルミニウム基板の一面上にアルミニウム酸化膜を形成するが、このアルミニウム酸化膜には複数の連続した凹部が形成され、前記アルミニウム基板と前記アルミニウム酸化膜との界面には前記アルミニウム酸化膜上の凹部の曲面と同じ方向の凹部が形成されるようにする段階、
ii)前記アルミニウム酸化膜が形成された基板から前記アルミニウム酸化膜を除去して前記アルミニウム基板の一面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凹部を形成する段階、および
iii)前記複数の連続した半球状凹部が形成された前記アルミニウム基板を鋳型として前記透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階を含む方法によって、
前記第2電極の上面上の透明基材の第1主表面に直径25〜1,000nmの複数の連続した半球状凸部を形成する段階とを含む、請求項15に記載の有機発光素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−529863(P2007−529863A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503827(P2007−503827)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000732
【国際公開番号】WO2005/089028
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】