説明

ナノスケールコーティングを備えたカレントコレクタを含む電極及びその製造方法

リチウムポリマー電気化学セルに有用な電極に関連するカレントコレクタ及び方法が提供される。提供されるカレントコレクタは、金属性基材、実質的に均一なナノスケール炭素コーティング、及び電極活物質を含む。このコーティングは、約200ナノメートル未満の最大厚さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウムポリマー電気化学セルに有用な電極に関連するカレントコレクタが提供される。
【背景技術】
【0002】
リチウムポリマー又はリチウムイオン電気化学セルなどの二次電気化学セルは、カレントコレクタを含む電極を備えて構築される。そのような電気化学セル用の典型的な電極において、電気的活物質がカレントコレクタに接着され、カレントコレクタと電気的に接触する。カレントコレクタは通常、導電性の金属ストリップである。この金属ストリップには、カレントコレクタとの電気的接触を強化する導電性コーティングが含まれ得、これが腐食に対する保護を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低コストであり、溶媒の使用量を最小限にして製造することが可能な、高い固有エネルギー密度を有する電気化学セルの製造を可能にするカレントコレクタを備えた低コストの電極の必要性が存在する。また、これらの電極及びそれに使用されるカレントコレクタの製造方法の必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、金属性基材、実質的に均一なナノスケール炭素コーティング、及び電極活物質を含むカレントコレクタを含むリチウムポリマー電気化学セルのための電極が提供され、このコーティングは、最大厚さが約200ナノメートル未満である。
【0005】
別の態様において、提供されるのは、金属性基材を提供することと、粒子を含む乾燥組成物でこの基材をコーティングすることとを含むカレントコレクタの製造方法であり、基材のコーティングには、0より大きく約30g/cmより小さい、表面に対する垂直の圧力で、前記基材に対し前記粒子の有効量をアプリケータパッドを用いてバフがけすることが含まれ、前記アプリケータパッドは、表面のある点に対して複数の方向で前記表面に対し平行な面で動き、これにより前記粒子のほぼ均一なコーティングが得られ、前記粒子はモース硬度が0.4〜3.0の間であり、最大寸法が100マイクロメートル未満である。
【0006】
いくつかの実施形態において、リチウムポリマー電気化学セルは、提供される電極及びカレントコレクタを含んで提供される。いくつかの実施形態において、このカレントコレクタにはアルミニウムと、グラファイトを含む均一なコーティングとが含まれる。他の実施形態において、カレントコレクタには、バフがけ助剤が含まれ得る。他の実施形態において、カレントコレクタには、例えばポリフッ化ビニリデンなどの結合剤を含んだコーティングが含まれ得る。
【0007】
この出願では:
「活物質」は、リチウムと電気化学的に反応し得る物質を指す。
「カレントコレクタ」は、不活の導電性材料でコーティングされ得る金属性基材を指す。
「ナノスケール」は、最大寸法が約500ナノメートル未満である特徴を指す。
【0008】
1つ以上の実施形態の詳細は、以下の明細書に記載される。他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】提供される電極の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)。
【図1b】提供される電極の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)。
【図2】提供される電極の加熱処理後の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態を想到し実施し得ることが、理解されるべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0011】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、物理特性を表す数字は全て、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用には、その範囲内に含まれる全ての数(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)及びその範囲内のあらゆる範囲が包含される。
【0012】
リチウムポリマー電気化学セルは、より一般的にはリチウムポリマー電池として知られるものであり、リチウムイオン電気化学セルのようにリチウム塩電解質が有機溶媒中に保持されることのない、充電可能な電池である。この電解質は他と違い、ポリエチレンオキシド又はポリアクリロニトリルなどの固体ポリマー複合材料である。
【0013】
リチウムポリマー電気化学セル用に提供される電極には、カレントコレクタが含まれる。このカレントコレクタには、導電性の高い任意の金属を含み得る金属性基材が含まれ、このような金属は、電子製品用途に有用なものとして当業者に知られている。代表的な金属の例には、アルミニウム、銅、マグネシウム、ニッケル、スズ、及びこれらの合金が挙げられる。
【0014】
提供される電極には、約500ナノメートル未満、約200ナノメートル未満、約100ナノメートル未満、又は更には約50ナノメートル未満の最大平均厚さを有するほぼ均一なナノスケール炭素コーティングも含まれる。提供される電極について、「均一」とは、基材の面の望ましい寸法にわたって、比較的一定の厚さのコーティングを有することを意味する。コーティングの均一性は、例えば、光学分光計を用いて光学的評価により評価され得る。均一性を評価するには、6つの点で反射率を測定し、これらを比較して偏差を決定する。典型的にはこの偏差は、10%以下、5%以下、又は更には3%以下の値であり得る。評価する波長は、コーティング及び基材の物理的特性に依存し、そのコーティングの均一性を正確に評価するよう適切に選択される。例えば、通常の光条件のもとで可視であるコーティングは、可視範囲にある光波長(例えば550nmなどで、これは可視光波長スペクトルの中点として一般に認められている)を使用して評価される。
【0015】
炭素コーティングは、乾燥組成物として適用することができる(実質的に溶媒が存在しない)。炭素コーティングを乾燥組成物として適用するための代表的なプロセスは、例えば、米国特許第6,511,701号(Divigalpitiya et al.)に見出すことができる。このプロセス(詳細は後述される)は、金属性基材の上に、非常に薄いナノスケールの炭素コーティングを提供することができる。
【0016】
この乾燥組成物は、炭素と、追加の構成成分を含み得る。炭素は、任意の形態又は種類の炭素であり得る。提供される電極に有用な代表的な炭素としては、グラファイト、カーボンブラック、ランプブラック、又はその他の当業者に周知の導電性炭素材料などの、導電性炭素が挙げられる。典型的には、剥落性炭素粒子(すなわち、剪断力がかかるとフレーク状、スケール状、シート状、又は層状にくずれるもの)が使用される。有用な剥落性炭素粒子の例としては、HSAG300(Timcal Graphite and Carbon(Bodio,Switzerland)から入手)がある。他の有用な材料にはSUPER P及びENSACO(Timcal)があるが、これらに限定されない。
【0017】
この乾燥組成物には結合剤も含まれ得る。結合剤は、組成物の基材に対する接着を向上させる働きをし得る。リチウム電池用の電極作成における当業者に周知の任意の結合剤を使用することができる。提供される電極に有用であり得る典型的な結合剤には、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリカルボン酸、及びこれらのリチウム塩が挙げられる。有用であり得る代表的な結合剤には、KYNAR 741(ポリフッ化ビニリデン)(Arkema(Oakville,Canada)から入手)がある。
【0018】
驚くべきことに、また有利なことに、提供される電極は、実質的に結合剤を含まないカレントコレクタを含んで製造することができる。材料が、粒子を基材に付着させる手段である場合、その材料は結合剤として作用し得る。したがって、20gの組成物を3日間、温度25℃、相対湿度40%で保管したときに、凝集状態(すなわち、バイアル瓶中の粉末が自由に流動しない状態)にならない場合、コーティングされる組成物は実質的に結合剤を含まないと見なされる。
【0019】
上記の材料の混合物は、望ましい特性のコーティングを形成するために、バフがけを行うこともできる。混合物中の構成成分の比率を変えることによって、表面特性の非常に劇的な変化を達成することができる。例えば、グラファイトとポリ二フッ化ビニリデンとの混合物では、材料の比率を変えることによって、表面抵抗が10オーム/平方〜1011オーム/平方で変化し得る。上記の例に示すように、電気的絶縁性、静電気放散性、又は導電性のコーティングを、混合物の組成を簡単に変えることで、調製することができる。
【0020】
典型的には、基材へのコーティングの接着は、バフがけ操作をした後の基材を、コーティングの接着が強化されるようなある温度まで加熱することで支援される。例えば、コーティングにポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤が含まれている場合、基材を少なくとも5分間、少なくとも175℃の温度に加熱することができる。本発明のコーティングされた基材は、驚異的に均一な概観を呈し得、驚くべきことに、本明細書に記述されるように低エネルギープロセスで適用されたコーティングが、基材に対し高い接着性を有する。コーティングの基材に対する接着性は好ましくは、加熱処理又はエージングの後、ASTM D−3359に従って、コーティングされた基材の表面に貼付し、2.04kg(4.5lb)(20ニュートン)ローラー圧力で圧した一片の3M Scotchブランドのプレミアムグレード透明セロテープ610は、肉眼での検査による評価で、コーティング材料を除去しない。
【0021】
提供されるカレントコレクタは、導電性であり得る。導電率は通常、シート抵抗として表わされる。シート抵抗が低いほど、導電率は高くなる。提供されるカレントコレクタは、約300オーム/平方未満、約200オーム/平方未満、約100オーム/平方未満、又は更には約50オーム/平方未満のシート抵抗を有し得る。提供されるカレントコレクタは、リチウムポリマー電気化学セルに有用な電極を製造するのに使用することができる。典型的に、これらはカソードを製造するのに有用である。カソードについては、有用な活物質にはLiFePO、VO、及びこれらの組み合わせが挙げられる。提供されるカレントコレクタは、リチウムポリマー電気化学セルに有用なアノード又はその他のカソードを製造するのにも使用され得る。特に有用なカレントコレクタは、金属性基材と均一なナノスケール炭素コーティングとを含み、炭素コーティングは本質的にグラファイトを含有する。
【0022】
別の態様において、カレントコレクタの製造方法が提供される。この方法には金属性基材を提供することが含まれる。この金属性基材には、導電性の高い任意の金属が含まれ得、このような金属は、電子製品用途に有用なものとして当業者に知られている。代表的な金属には、アルミニウム、銅、マグネシウム、ニッケル、及びスズが挙げられる。
【0023】
提供される方法は更に、粒子を含む乾燥組成物でこの基材をコーティングすることを含み、基材のコーティングには、0より大きく約30g/cmより小さい、表面に対する垂直の圧力で、前記基材に対し前記粒子の有効量をアプリケータパッドを用いてバフがけすることが含まれ、前記アプリケータパッドは表面のある点に対して複数の方向で前記表面に対し平行な面で動き、これにより前記粒子のほぼ均一なコーティングが得られ、前記粒子はモース硬度が0.4〜3.0の間であり、最大寸法が100マイクロメートル未満である。提供される方法について、「乾燥」とは実質的に液体が存在しないことを意味する。したがって、提供されるプロセスにおいて、組成物は液体又はペースト形状ではなく、固体の形状で提供される。驚くべきことに、液体又はペースト形態で提供されていない乾燥粒子を使用することは、この均一性を達成するために必須であることが見出された。これは、非均一性は液体又はペースト組成物の液体担体の蒸発によって導入されるからである。
【0024】
モース硬度は、材料の硬度を示す尺度である。本発明の粒子の硬度は、バルクの材料のモース尺度硬度として確立される。モース硬度値は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、及びKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyを含む文献に広く報告されている。0.4〜3.0の間のモース硬度を有する材料の粒子は、本発明の目的において「バフがけ可能」であると見なすことができる。
【0025】
提供される方法において、バフがけパッドは、基材表面に対して平行な基材面内で移動することができる。本発明においてパッドの軌道運動は、基材又はウェブに対して垂直な回転軸で実行され得る。これによって、バフがけ適用中にパッドが複数の方向に移動でき、これには、ウェブがバフがけパッドを通り過ぎて移動する場合のウェブの方向を横断する方向が含まれる。
【0026】
典型的なプロセスは、母材ロールのためのクラッチオフのウインドステーション、ウェブ母材にバフがけを行う材料をもたらす粉末供給ステーション、バフがけステーション、調節された速度でウェブを駆動するペーサー駆動ステーション、及びクラッチ駆動巻き取りロールによって特徴づけられる。このシステムには更に、さまざまな誘導ロール及びアイドラーロールも含まれ得、また、バフがけされたウェブ表面上の過剰な材料を除去するためのバフがけ後拭き取り装置も含まれ得る。このシステムには更に、ウェブ状にバフがけされた材料の融合を向上させるための加熱装置も含まれ得る。更にこのシステムには、コーティング上又は基材上に残ったあらゆる過剰の粉末材料を除去するための真空クリーニングステーションが含まれ得る。
【0027】
驚くべきことに、ほぼ乾燥した粒子の非常に薄いコーティングは、基材の表面に対し平行な軌道様式(好ましくは、ランダムな軌道様式)で動くアプリケータを用い、約30g/cm未満の圧力で、金属性基材上に粒子をバフがけすることによって得られることが見出されている。このバフがけ操作は、基材の軟化温度より下の温度で実施することができる。
【0028】
本発明に使用するためのアプリケータパッドは、表面に粒子を適用するための任意の好適な材質であり得る。例えば、アプリケータパッドは、織布若しくは不織布、又はセルロース材料であり得る。別の方法としては、このパッドは、独立気泡フォーム又は連続気泡フォーム材料であり得る。更に別の方法としては、このパッドはブラシ又は剛毛配列であり得る。典型的に、このようなブラシの剛毛は、長さが約0.2〜1.0cmであり、直径が約30〜100マイクロメートルである。剛毛は、好ましくはナイロン又はポリウレタンで製造される。好ましいバフがけアプリケータには、フォームパッド、EZ PAINTRパッド(米国特許第3,369,268号に記述)、ラムウールパッド、3M PERFECT ITパッド、及び同様物が挙げられる。バフがけアプリケータは、基材面に垂直な回転軸で、基材の表面に対して平行な軌道パターンで動く。このバフがけの運動は、単純な軌道運動又はランダムな軌道運動であり得る。使用される典型的な軌道運動は、毎分1,000〜10,000軌道の範囲である。
【0029】
バフがけコーティングの厚さは、バフがけの時間を変えることによって制御することができる。一般に、コーティングの厚さは、ある程度の急激な初期増加の後、時間経過と共に線形的に増加する。バフがけ操作時間が長いほど、コーティングが厚くなる。また、コーティングの厚さは、バフがけに使用するパッド上の粉末の量を調節することによって制御できる。提示される連続ウェブプロセスは、多くの市場に実質的な有用性を提供する独自の特徴を備えたコーティングを製造する能力を有し得る。このプロセスは、横断方向の「バフがけ」操作でウェブベース基材に粉末材料を適用することを含む。これによって製造されるコーティングは、さまざまな電気的、光学的、及び装飾的特徴を有し得る。例えば、提供される方法は、リチウムポリマー電池用のカレントコレクタを製造するのに使用することができる。驚くべきことに、この単純な、無溶媒の乾燥プロセスによって、高品質の薄いコーティングを一貫して調製することができる。
【0030】
表面抵抗がメガオーム/平方程度のグラファイトコーティングは、本開示の方法で便利に製造することができる。このような半透明の薄い導電性コーティングは、物理蒸着及びその他の同様の方法で、一貫した特性を備えたものを製造するのは困難である。例えば、そのようなグラファイトコーティングは、マイクロ波用途、光学的用途、及び例えばリチウム電気化学セル用の電極コンポーネントなどの特定の電気的用途に使用することができる。
【0031】
提供されるカレントコレクタを製造するには、Black and Deckerモデル5710(軌道動作毎分4000回、同心射程0.254cm(全体で0.508cm))などの電気軌道研磨機を使用することができる。好ましくは、パッドの同心射程は約0.013cm(全体で0.254cm)より大である。軌道研磨機の代わりに、空気圧式のものも同様に使用することができる。研磨機は、約8.9cm×15.25cmの長方形軌道パッドを有し得る。ウェブバフがけ操作において、ウェブ方向に対してバフがけパッドの短辺が平行になるようにして、ウェブが動く。これによって、バフがけパッドの長さ15.25cmが、流れ方向を横切る。あるいは、軌道パッドと粉末ディスペンサとの間に静止パッドを取り付けることができる。静止パッドで、散布された粉末を、周囲に移動させる機会が得られる前に、ウェブ上にすばやく適用できるため、過剰な粉末が基材上に確実に保持される。
【0032】
バフがけしたウェブに加熱エネルギーを適用することにより、さまざまなベース基材に適用される一部の材料の接着を改善することができる。1000ワットの放射ヒーターを使用して、バフがけ中に基材を加熱することができる。ウェブへの入熱の他の方法としては、オーブン、又は基材と接触させた加熱プラテンなどを利用することもできる。バフコーティングされた数多くのウェブにおいて、その表面に導電性がもたらされる。導電性ウェブに対する電流の直接印加によっても、望ましい加熱効果がもたらされる。この場合、望ましい適用点で直接、コーティング自体にエネルギーが発生するため、高効率の加熱が達成される。この加熱プロセスでの実際の消費電流は、ウェブの導電率の直接読み取り値であり、プロセスの監視及び制御に使用することができる。グラファイトなどの導電性コーティングについては、導電層を特に加熱する任意の方法も採用することができる。例えば、マイクロ波又は高周波(「RF」)エネルギーを、融合させる導電層の加熱に使用することができる。
【0033】
図1aは、グラファイトとPVDFが重量比50:50で含まれる乾燥組成物でコーティングされた、コーティング済みアルミホイル基材の走査型電子顕微鏡写真である。アルミホイルの滑らかな面にコーティングを行い、TEM分析により、炭素(グラファイト)コーティングの厚さは約4.1nmであることが示されている。図1bは、図1aと同じ方法で、ただし同じアルミホイルの粗い面を使用して、炭素コーティングを適用した場合の、走査型電子顕微鏡写真である。TEM分析により、このコーティングの厚さは約14.7nmであることが示されている。
【0034】
図2は、図1aと同じサンプルであるが、加熱処理を行った後の透過型電子顕微鏡写真である。このコーティングは、均一なピンホールフリーのコーティングを示している。
【0035】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0036】
(実施例1).
厚さ12.5マイクロメートルのAlホイルをきれいなガラスプレート上に置き、このガラスプレート周囲に孔のあるサンプルホルダー上にこれを保持した。工作用真空をこの孔に接続し、Alホイルを定位置に保持した。HSAG300グラファイト粉末(Timcal/Timrexから入手)をホイル上に散布し、塗装用パッドを取り付けた手持ち式のランダム軌道研磨機(米国特許第6,511,701号に記述)を使用して、8〜30秒間の範囲の異なる持続時間、一定の動きで研磨機を前後に動かすことにより、この粉末をバフがけした。イオン化空気を使用してプレート周辺の過剰な粉末を吹き飛ばし、真空の接続を外してから、ホイルを取り外した。
【0037】
コーティングされたサンプルをガラスプレート上に反対にして置き、露出している面のコーティングを繰り返して行い、これによりホイルの両面をコーティングした。SEM写真に見られるように、ホイルの両面は異なる粗さを有していた。アセトンで静かに洗浄しても、コーティングの眼に見える損傷は起こらなかった。コーティング後のすべてのサンプルの上に、2プローブ表面抵抗計(モデルPSI−870、Prostat Corp.(英国)から入手)を置き、その結果すべてが、コーティングにかかわらず、金属性の導電率範囲(10オーム/平方未満)を示した。
【0038】
(実施例2)
バイアル瓶中、手で振り混ぜることにより、HSAG300グラファイト粉末(Timcal/Timrexから入手)を、さまざまな重量パーセントでポリフッ化ビニリデン(KYNAR 741、Arkema(Oakville,Canada)から入手)と混合した。結果として得られた粉末混合物を、実施例1の方法を用いたAlホイルのバフがけコーティングに使用した。
【0039】
実施例2のサンプルの一部を、温度175℃(PVDFが存在する温度)のオーブンで空気中5分間加熱し、次いでサンプルを室温まで冷ました。サンプルに対して単純なScotchテープ試験を実施し、コーティングの接着性をチェックした。40%を超えるPVDFのサンプルは、加熱処理後に何も剥離を呈さなかった。
【0040】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。本明細書に記述される参考文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムポリマー電気化学セル用の電極であって、
金属性基材と、
実質的に均一なナノスケール炭素コーティングと、
電極活物質と、
を含む、カレントコレクタを含み、
前記コーティングが約200ナノメートル未満の最大厚さを有する、電極。
【請求項2】
前記金属性基材が、アルミニウム、銅、マグネシウム、ニッケル、スズ、及びこれらの合金から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記炭素コーティングがグラファイトを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記コーティングが、約50ナノメートル未満の最大厚さを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
結合剤を実質的に含まない、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
結合剤を更に含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記結合剤がポリフッ化ビニリデンを含む、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記コーティングが、約100オーム/平方未満のシート抵抗を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記活物質が、LiFePO、VO、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記カレントコレクタが、金属性基材と均一なナノスケール炭素コーティングとを含み、前記炭素コーティングが本質的にグラファイトを含有する、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
請求項1に記載の電極を少なくとも1つ含む、リチウムポリマー電池。
【請求項12】
金属性基材を提供することと、
前記金属性基材を、粒子を含む乾燥組成物でコーティングすることと、
を含む、カレントコレクタの製造方法であって、前記基材をコーティングすることには、0より大きく約30g/cmより小さい、表面に対する垂直の圧力で、前記基材に対し前記粒子の有効量をアプリケータパッドを用いてバフがけすることが含まれ、前記アプリケータパッドは前記表面のある点に対して複数の方向で前記表面に対し平行な面で動き、これにより前記粒子のほぼ均一なコーティングが得られ、前記粒子はモース硬度が0.4〜3の間であり、最大寸法が約100マイクロメートル未満である、製造方法。
【請求項13】
前記粒子が、カーボンブラック、グラファイト、ランプブラック、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記均一コーティングが、約200ナノメートル未満の厚さを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が結合剤を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記結合剤がポリフッ化ビニリデンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティングされた基材を、少なくとも175℃の温度で少なくとも5分間の間加熱することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングされた基材が、約1000オーム/平方未満の表面抵抗を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記カレントコレクタが、請求項12に記載の方法により製造された電極を少なくとも1つ含む、リチウムポリマー電池。
【請求項20】
前記少なくとも1つの電極が、LiFePO、VO、及びこれらの組み合わせから選択される活物質を含む、請求項19に記載の電池。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501520(P2012−501520A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525079(P2011−525079)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/054117
【国際公開番号】WO2010/025052
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】