説明

ナノファイバーの合糸方法と装置

【課題】ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造するナノファイバーの合糸方法と装置を提供する。
【解決手段】高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を高速回転する円筒容器3に設けられた小穴4から電荷を帯電させて流出させ、遠心力と静電爆発にて延伸させてナノファイバー9を生成するナノファイバー生成手段2と、回転する円筒容器3と反射電極11や送風手段などの組み合わせにて生成工程中のナノファイバー9をその延伸方向に沿う軸心回りに旋回させつつ流動させる偏向流動手段10と、旋回しつつ流動するナノファイバー9を集束して撚った糸条を回収する回収手段13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質から成るナノファイバーを製造してこれを糸条にするナノファイバーの合糸方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子物質から成るサブミクロンスケールの直径を有するナノファイバーを製造する方法として、エレクトロスピニング法(電子紡糸法や電荷誘導紡糸法とも称される)が知られている。従来のエレクトロスピニング法では、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給することで、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷が帯電され、高分子溶液の溶媒蒸発に伴って帯電電荷間の距離が小さくなって作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、この静電爆発と称する現象が、一次、二次、場合によっては三次と繰り返されることで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造されるものである。
【0003】
従来のエレクトロスピニング法では、1本のノズルの先から1本のナノファイバーしか製造されないので、生産性が上がらないという問題があった。そこで、ナノファイバーを多量に製造する方法として、複数のノズルを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、バレルに貯蔵された高分子溶液をポンプにて帯電された多数のニードル状のノズルに供給し吐出させることで多量のナノファイバーを作り出し、これをノズルと異なる極性に帯電されたコレクタにて回収し積層しながら搬送することで、ナノファイバーが3次元のネットワーク構造に積層した空隙率が非常に高い高多孔性の高分子ウエブを製造する技術が開示され、従来の実験的レベルから実用性レベルに高められている。
【0004】
また、従来、電子紡糸法によるナノファイバーがウエブとして製造され、人造皮革、フィルター、おむつ、生理用ナプキン、癒着紡糸剤、ワイピングクロス、人造血管、骨固定器具など多様に活用されているが、10MPa以上の力学物性を得るのが困難で広範囲な用途への利用に限界があること、このように製造されたナノファイバーのウエブを連続した糸条にして力学物性を高めようとすると、ウエブを一定長さに切断して短繊維を製造し、この短繊維から紡績糸を製造する別途の紡績工程を経なければならない問題があることを指摘した上で、電子紡糸法にて製造されたナノファイバーのウエブを用いて連続的に糸条を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、列をなして帯電されたノズルからノズルと逆極性に帯電されたコレクタ内の水または有機溶媒の静的な表面上にナノファイバーを紡糸してウエブをなすように堆積させ、この堆積するウエブを、ノズルの列方向で見た一方の末端側より1cm以上離れた地点から一定の線速度で回転する回転ローラによって引き上げて連続した糸条とし、圧搾、延伸、乾燥および巻取りを行って連続した糸条を得ている。また、連続した糸条は撚糸することもできるとしている。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【特許文献2】特表2006−507428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、各ノズルから真下にナノファイバーを生成してコレクタ上のノズルに対応した位置へ静的に堆積させながら、その堆積域の広がりにより各ノズルから生成されたナノファイバー同士を絡み合わせて細帯状のウエブを形成し、このウエブの一端からナノファイバー群を引出すことでウエブの他端側に連続しているナノファイバー群を順次引き出し、連続した糸条に集束させるものであり、そのため各ノズルから紡糸されたナノファイバーの堆積が静的でほぼ同等であるのに対し、引き出し作用が引き出し側に近い堆積域に集中しやすくなる関係から、引き出し側に近い堆積域と遠い堆積域とでナノファイバーの引出し量とに差が生じる恐れがあり、その場合引出し量の差が堆積量の差を来たし、堆積量に差を生じた状態で引き出されることで連続した糸条の太さや力学物性を適正に制御するのは困難で安定しないという問題がある。さらに、引出し作用が引き出し側から遠い側の堆積域にも均等に及ぶようにするのに引出し速度を抑える必要があり大量に製造するのも困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、エレクトロスピニング法により製造したナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができるナノファイバーの合糸方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のナノファイバーの合糸方法は、高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を小穴から帯電させて流出させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、生成工程中のナノファイバーをその流動方向に沿う軸心回りに旋回させつつ集束してナノファイバーを撚る撚り工程と、撚られたナノファイバーを回収する回収工程とを有するものである。
【0008】
上記構成によれば、エレクトロスピニング法により高分子物質から成るナノファイバーが生成されるとともに、その生成工程中にナノファイバーが旋回されつつ集束されて効果的に撚りがかけられるので、均質で高強度の糸条が形成され、その糸条を回収することで、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0009】
また、ナノファイバー生成工程は、1又は複数の小穴を有する導電性の回転容器内に、高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を供給し、回転容器に電荷を帯電させるとともに回転容器を回転させ、小穴から流出した線状の高分子溶液を遠心力で延伸させるとともに静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成する工程から成り、撚り工程は、生成工程中のナノファイバーを回転容器の軸心方向一側から回転容器の軸心方向他側方に向けて旋回させながら流動させる偏向流動工程と旋回流動するナノファイバーを集束させる収束工程とから成るのが好適である。
【0010】
この構成によれば、回転容器内で電荷を帯電された高分子溶液が複数の小穴から線状に流出する際に、まず遠心力の作用によって延伸されるので、静電爆発とは異なって電荷を集中させる必要がないために細長いノズルは不要であり、また電界干渉に左右されないために小穴を高密度に配設しても確実かつ効果的に延伸され、その後複数次の静電爆発によって爆発的に延伸されることで、高分子物質から成るナノファイバーを効率的に製造することができ、さらに生成工程中のナノファイバーが回転容器の軸心方向一側から回転容器の軸心方向他側方に向けて旋回させながら流動されるので、その旋回流動するナノファイバーを集束させることで、効果的に撚りがかけられて合糸される。これにより、ナノファイバーを効率的に生成できるとともに、その生成工程を利用して撚りをかけることができるため、均質で高強度の糸条をより生産性よく低コストにて製造することができる。
【0011】
また、偏向流動工程は、回転容器の軸心方向一側部から送風する送風工程、若しくは回転容器の軸心方向一側部に配設した反射電極にナノファイバーの帯電の極性と同極性の電圧を印加して生成工程中のナノファイバーを回転容器の軸心方向他側方に向けて流動させる流動工程、又は両者から成るのが好適である。特に、送風工程を有すると、ナノファイバーの流動方向に空気が流れることで、蒸発した溶媒が速やかに排出されて周辺の雰囲気中の溶媒濃度が高くならず溶媒の蒸発が円滑に行われて静電爆発作用が確実に得られ、所望のナノファイバーが確実に生成され、かつ生成工程中のナノファイバーの流動方向をより効果的に規制することができるので好ましい。また、空気の流れについては、常温でも効果はあるが、空気を常温よりも加熱して温風を送ることで、ナノファイバーの中の溶媒の蒸発が加速され、さらなる効果が得られる。また、反射電極によってもナノファイバーを効果的に偏向流動させることができる。
【0012】
また、ナノファイバー生成工程は、高分子溶液を1又は複数の小穴から流出させ静電爆発にて延伸させて生成されるナノファイバーを一方向に流動させる工程から成り、撚り工程は、高分子溶液を流出させる小穴をナノファイバーの流動方向に沿う軸心回りに回転させることで一方向に流動するナノファイバーを旋回させる工程と旋回流動するナノファイバーを集束させる集束工程から成るものであっても、同様の作用効果を奏してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0013】
また、以上の合糸方法において、その撚り工程に、生成されたナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束する集束工程を含むと、ナノファイバーをさらに効果的に撚ることができ、高強度の糸条を製造することができて好適である。
【0014】
また、ナノファイバー生成工程は、高分子溶液を1又は複数の小穴から流出させ静電爆発にて延伸させて生成されるナノファイバーを一方向に流動させる工程から成り、撚り工程は、生成されたナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束する旋回集束工程から成るものであっても、同様の作用効果を奏してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0015】
また、以上の合糸方法において、撚り工程は、ナノファイバー生成工程と回収工程との間に配置した環状電極にナノファイバーの帯電の極性と逆極性の電圧を印加若しくは接地し、生成工程中のナノファイバーを環状電極に向けて流動させつつ集束させ、環状電極内を通して回収工程に送出する集束工程を有することができる。このように環状電極を用いて集束することで、より効果的に集束して強く撚ることができ、高強度の糸条を製造することができて好適である。
【0016】
さらに、少なくとも合糸初期に、撚り工程で旋回して集束するナノファイバーの旋回軸心部を通して芯糸を供給し、この芯糸を回収工程で回収するようにすると、芯糸にナノファイバーが絡むことで、特に合糸作用の不安定な合糸初期においても確実に合糸することができる。
【0017】
また、所定軸心回りに回転する小穴から高分子溶液を流出させる工程と、小穴に対して所定軸心方向に距離をあけて配置した所定軸心を中心とする環状電極と小穴との間に高電圧を印加してそれらの間に電界を発生させ、小穴から流出する高分子溶液を帯電させて静電爆発にて環状電極に向けて旋回流動するナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、芯糸を小穴側から所定軸心を通り環状電極の略中心を貫通して供給し、旋回流動するナノファイバーを芯糸に絡ませて集束する集束工程と、芯糸に絡んで集束したナノファイバーを芯糸とともに回収する回収工程とを有しても、同様の作用効果を奏してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができ、特に環状電極を用いて集束し、芯糸に絡ませることで、より効果的に集束して強く撚ることができ、高強度の糸条を製造することができて好適である。
【0018】
また、本発明のナノファイバーの合糸装置は、回転自在に支持されるとともに回転軸心から径方向に距離をあけて1又は複数の小穴を有する導電性の回転容器と、回転容器を回転駆動する回転駆動手段と、回転容器内に高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段と、回転容器の小穴から流出する高分子溶液に電荷を帯電させる高電圧発生手段と、回転容器の小穴から流出した高分子溶液が遠心力と静電爆発にて延伸されて生成されたナノファイバーを回転容器の軸心方向一側部から他側方に向けて偏向流動させる偏向流動手段と、旋回しつつ流動するナノファイバーを集束して回収する回収手段とを備えたものである。
【0019】
この構成によれば、上記ナノファイバーの合糸方法を実施してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができ、特に回転容器を用いることにより上記のようにさらにナノファイバーを効率的に生成できるとともに、その生成工程を利用して撚りをかけることができるため、均質で高強度の糸条をより生産性よく低コストにて製造することができる。
【0020】
また、偏向流動手段を、回転容器の軸心方向一側部から他側方に向けて送風する送風手段と、回転容器の軸心方向一側部に配設した反射電極にナノファイバーの帯電の極性と同極性の電圧を印加する電圧印加手段との何れか一方、若しくは両者にて構成すると、送風手段による送風によって溶媒の蒸発が円滑に行われ、静電爆発作用が確実に得られて所望のナノファイバーが確実に生成され、かつ生成工程中のナノファイバーの流動方向をより効果的に偏向させて確実に旋回流動させることができる。また、空気の流れについては、常温でも効果はあるが、空気を常温よりも加熱して温風を送ることで、ナノファイバーの中の溶媒の蒸発が加速され、さらなる効果が得られる。また、反射電極によってもナノファイバーを効果的に偏向流動させることができる。
【0021】
また、本発明の別のナノファイバーの合糸装置は、高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を高電圧を印加して1又は複数の小穴から流出させ、静電爆発にて延伸させて生成されるナノファイバーを一方向に流動させるナノファイバー生成手段と、ナノファイバー生成手段をナノファイバーの流動方向に沿う軸心回りに回転させて生成されるナノファイバーを旋回させる回転手段と、旋回するナノファイバーを集束してナノファイバーを撚った状態で回収する回収手段とを備えたものであり、このように小穴から高分子溶液を流出させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成手段を回転させてナノファイバーを旋回させても、上記ナノファイバーの合糸方法を実施してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0022】
また、以上のナノファイバーの合糸装置において、生成されて旋回しつつ流動するナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束させる旋回流発生手段を設けると、ナノファイバーをさらに効果的に撚ることができ、高強度の糸条を製造することができて好適である。
【0023】
また、本発明のさらに別のナノファイバーの合糸装置は、高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を高電圧を印加して1又は複数の小穴から流出させ、静電爆発にて延伸させて生成されたナノファイバーを一方向に流動させるナノファイバー生成手段と、生成されたナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束させる旋回流発生手段と、旋回されつつ集束されて撚られた状態のナノファイバーを回収する回収手段とを備えたものであり、このように小穴から高分子溶液を流出させるナノファイバー生成手段にて生成されたナノファイバーを旋回流発生手段にて旋回させても、上記ナノファイバーの合糸方法を実施してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0024】
また、上記旋回流発生手段を、回収手段側に向けて径が縮小するテーパ円筒体と、テーパ円筒体の周囲から略接線方向にかつ径小方向に傾斜した方向から気体を吹き出す気体送給手段を備えた構成とすることで、テーパ円筒体内に発生する旋回流にて効果的にナノファイバーに撚りをかけつつ集束することができて好適である。
【0025】
また、テーパ円筒体が導電性部材から成り、テーパ円筒体にナノファイバーの帯電極性と同極性の電圧又は交番電圧を印加する電圧印加手段を設けると、ナノファイバーがテーパ円筒体内面に付着堆積する恐れがなく、上記作用効果を確実に奏することができて好適である。
【0026】
また、以上のナノファイバーの合糸装置において、回収手段より手前位置に、ナノファイバーの旋回軸心を中心として配置した環状電極と、環状電極にナノファイバーの帯電の極性と逆極性の電圧を印加する電圧印加し若しくは環状電極を接地する手段とから成る集束手段を配置すると、生成工程中のナノファイバーを環状電極に向けて流動させつつ集束させ、環状電極内を通して回収手段に送出することができ、環状電極にてより効果的に集束して強く撚ることができるので、高強度の糸条を製造することができて好適である。
【0027】
また、旋回して集束するナノファイバーの旋回軸心部を通して回収手段に回収されるように芯糸を送給する芯糸供給手段を配設すると、上記のように少なくとも合糸初期に芯糸を旋回軸芯部を通して回収手段で回収することで、この芯糸にナノファイバーが絡んで確実且つ安定して合糸することができ、特に合糸作用の不安定な合糸初期に適用すると効果的である。
【0028】
また、本発明のさらに別のナノファイバーの合糸装置は、軸心まわりに回転自在に支持されるとともに回転軸心から径方向に距離をあけて1又は複数の小穴を有する導電性の回転容器と、回転容器を回転駆動する回転駆動手段と、回転容器内に高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段と、回転容器に対してその軸心方向に距離をあけて同一軸心状に配置した環状電極と、回転容器と環状電極との間に高電圧を印加してそれらの間に電界を発生させる高電圧発生手段と、芯糸を回転容器側からその回転軸心を通り環状電極の略中心を貫通して供給する芯糸供給手段と、環状電極に向けて集束して芯糸に絡んだナノファイバーを芯糸とともに回収する回収手段とを備えたものであり、上記合糸装置と同様の作用効果を奏してナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができ、特に環状電極を用いて集束し、芯糸に絡ませることで、より効果的に集束して強く撚ることができ、高強度の糸条を製造することができて好適である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のナノファイバーの合糸方法と装置によれば、エレクトロスピニング法により高分子物質から成るナノファイバーを生成し、その生成工程中にナノファイバーを旋回させつつ集束させることで、効果的に撚りをかけることができて均質で高強度の糸条を形成でき、その糸条を回収するので、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のナノファイバーの合糸方法と装置の各実施形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
まず、本発明のナノファイバー合糸装置の第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0032】
図1、図2において、1はナノファイバー合糸装置であって、ナノファイバー生成手段2と偏向流動手段10と回収手段13と芯糸供給手段23を備えている。ナノファイバー生成手段2は、垂直な軸心周りに回転自在に支持され、周面に直径が0.01〜2mm程度の小穴4が数mmピッチ間隔で多数、あるいは場合によって1又は少数形成されている回転容器としての円筒容器3と、円筒容器3を回転駆動する回転駆動手段5と、円筒容器3内に高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液7を供給する高分子溶液供給手段6と、円筒容器3に1kV〜100kV、好適には10kV〜100kVの高電圧を印加して高分子溶液7に電荷を帯電させる第1の高電圧発生手段8とを備え、円筒容器3の小穴4から流出した高分子溶液7を遠心力と静電爆発にて延伸させてナノファイバー9を生成するように構成されている。
【0033】
偏向流動手段10は、円筒容器3の上部に配設された反射電極11と、反射電極11に円筒容器3と同極の高電圧を印加する第2の高電圧発生手段12とを備え、反射電極11にてナノファイバー生成手段2で生成されたナノファイバー9を円筒容器3の下方に向けて旋回しつつ流動させるように構成されている。また、回収手段13は、偏向流動手段10にて旋回しながら下方に向けて流動するナノファイバー9を集束して巻き取る回転部材14と、回転部材14に円筒容器3とは逆極性の高電圧を印加する第3の高電圧発生手段15とを備えている。なお、回転部材14に第3の高電圧発生手段15により高電圧を印加する代わりに、グランドに接続(接地)しても同様の効果が得られる。芯糸供給手段23は、円筒容器3の下部の軸心位置に配設され、芯糸24を下方に向けて供給し、その芯糸24が回収手段13の回転部材14に巻き取られるように構成されている。芯糸供給手段23による芯糸24の供給は、少なくとも合糸初期のナノファイバー9の巻き取り・回収が安定するまでの一定期間であれば良い。
【0034】
次に、各手段の詳細構成と作用について説明する。まず、ナノファイバー生成手段2について、図2を参照して説明する。円筒容器3の上端の軸心部に回転筒体16の端部が貫通されて一体固定され、回転筒体16にて円筒容器3がその軸心回りに矢印Rのように回転可能に支持されている。回転筒体16は電気絶縁性の高い材料にて構成されている。円筒容器3の下端は閉鎖又は立ち上げ周壁を有する開口が軸心部に形成されている。回転筒体16は、電気絶縁性の高い材料にて構成された支持フレーム17にてベアリング18を介して回転自在に支持され、回転駆動手段5にて30〜10000rpmの回転速度で回転駆動される。回転駆動手段5は、支持フレーム17に設置されたモータ19と、モータ19の出力軸に設けられたプーリ20と、回転筒体16の外周に設けられたプーリ21と、プーリ20、21間に巻回されたベルト22にて構成されている。モータ19としては、センサが高圧ノイズの影響を受けて誤動作する恐れがあるので、センサレスDCモータが好適に適用される。
【0035】
円筒容器3内には、回転筒体16を貫通して円筒容器3内に挿入された高分子溶液供給手段6を通して高分子溶液7が供給される。高分子溶液7を構成する高分子物質としてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が好適なものとして例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
また、使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0037】
このナノファイバー生成手段2の構成により、円筒容器3が回転駆動手段5にて高速で回転駆動されると、電荷を帯電された高分子溶液7に遠心力が作用して各小穴4から線状に流出し、さらに遠心力の作用で延伸されて細い高分子線状体が生成されるとともにその溶媒が蒸発することで高分子線状体の径が細くなる。それに伴って、帯電されていた電荷が集中し、そのクーロン力が高分子溶液7の表面張力を超えた時点で一次静電爆発が生じて爆発的に延伸され、その後さらに溶媒が蒸発して同様に二次静電爆発が生じて爆発的に延伸され、場合によってはさらに三次静電爆発等が生じて延伸されることで、サブミクロンの直径を有する高分子物質から成るナノファイバー9が効率的に製造される。
【0038】
また、偏向流動手段10の反射電極11は、円筒容器3の上方に適当間隔あけて対向するように支持フレーム17に配設され、この偏向流動手段10にて円筒容器3から流出・延伸されて生成された高分子線状体及びその後に静電爆発にて生成されるナノファイバー9が、矢印Fで示すように円筒容器3の下方に向けて、さらに円筒容器3の高速回転により円筒容器3の軸心回りに旋回しながら下方に向けて流動することになる。なお、反射電極11に付加して、若しくは反射電極11に代えて送風手段(図示せず)を配設して、このナノファイバー9の流動方向に向けて反射電極11側から送風するようにしても良い。そうすると、ナノファイバー9の流動方向に空気が流れることで、蒸発した溶媒が速やかに排出されて周辺の雰囲気中の溶媒濃度が高くならず、溶媒の蒸発が円滑に行われて静電爆発作用が確実に得られ、所望のナノファイバー9が確実に生成され、かつ生成工程中のナノファイバー9の流動方向をより効果的に規制でき、さらに旋回流動を強化するようにすることも可能である。また、空気の流れについては、常温でも効果はあるが、空気を常温よりも加熱して温風を送ることで、ナノファイバーの中の溶媒の蒸発が加速され、さらなる効果が得られる。
【0039】
回収手段13の回転部材14は、矢印wのように、水平軸心回りに巻き取り方向に回転駆動可能に構成されており、図3(a)に示すように、第3の高電圧発生手段15にて円筒容器3とは逆極性の高電圧を印加するため、軸芯部は導電性の円柱軸若しくは円筒軸から成る巻取軸体25にて構成され、その両側に巻き取ったナノファイバー9を保持する合成樹脂製の保持鍔26が設けられている。巻取軸体25に、円筒容器3とは逆極性の高電圧を印加されていることで、旋回しながら下方に向けて流動してきた複数本のナノファイバー9が図1に示すように収束され、その結果複数本のナノファイバー9に撚りがかけられて合糸され、図3(b)に示すように、回転部材14に巻き取られて回収されることになる。
【0040】
また、上記回収手段13にて旋回流動する複数本のナノファイバー9を収束させ、撚りをかけて合糸する作用は、少なくとも合糸を開始するときから合糸初期の間は不安定となる場合がある。そのため、図1に示すように、合糸を開始する前に、芯糸供給手段23から芯糸24を引き出してその先端を回収手段13の回転部材14に巻回した状態とし、その後ナノファイバー生成手段2及び偏向流動手段10を作動させ、回収手段13に逆極性の高電圧を印加すると、複数本のナノファイバー9が生成されて旋回しながら下方に向けて流動して回収手段13に近づいて収束し始める。ここで、回収手段13の回転部材14を巻き取り回転することで、収束しつつ流動するナノファイバー9が芯糸24に絡み付いて一挙に収束され、芯糸24の回りに確実に合糸されて回収される。なお、回転部材14に第3の高電圧発生手段15により高電圧を印加する代わりに、グランドに接続(接地)しても同様の効果が得られる。逆に、第3の高電圧発生手段15にて回収手段13に高電圧を印加する場合、第1の高電圧発生手段8や第2の高電圧発生手段12を設けずに、円筒容器3や反射電極1を接地しても良い。
【0041】
また、回収手段13における回転部材14による糸条の巻き取りが安定すると、芯糸24を供給しなくても、先に収束されて合糸されつつあるナノファイバー9に後続するナノファイバー9が絡みついて合糸され、芯糸24の機能が合糸されつつあるナノファイバー9によって果たされるようになるため、図4に示すように、芯糸供給手段23から芯糸24を供給することなく、合糸することができる。なお、中芯に芯糸24のある糸条を製造したい場合には、当然のことながら芯糸24を継続して供給すれば良い。この場合には、図1の例では円筒容器3の下部に必要量の芯糸24を収容した芯糸供給手段23を配設したが、大量の芯糸24を供給できる芯糸供給手段23を円筒容器3の上方に配設し、回転筒体16及び円筒容器3の軸芯部を貫通させて回収手段13に向けて供給するようにするのが好適である。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第2の実施形態について、図5、図6を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明では、先行する実施形態の構成要素と共通する構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
【0043】
上記実施形態のナノファイバー合糸装置1では、回転駆動される円筒容器3を備えたナノファイバー生成手段2と、反射電極11若しくは送風手段又は両者を備えた偏向流動手段10とを組み合わせて、複数本のナノファイバー9が旋回しながら流動するようにした例を示したが、本実施形態のナノファイバー合糸装置31では、図5に示すように、高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を高電圧を印加して複数の小穴から流出させ、静電爆発にて延伸させて生成された複数本のナノファイバー9を一方向に略ストレートに流動させるナノファイバー生成手段32と、生成されたナノファイバー9を渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束させる旋回流発生手段33とを備えている。なお、旋回されつつ集束されて撚られた状態のナノファイバー9を回転部材14に巻き取る回収手段13は第1の実施形態と同じである。
【0044】
ナノファイバー生成手段32の具体例としては、図6(a)に示すように、高分子溶液を高電圧を印加して流出させる複数のノズル部材34を、1列又は複数列に配置したり、マトリックス状又は多重環状に配置したものや、図6(b)に示すように、第1の実施形態と同様に回転駆動される円筒容器35に高電圧発生手段36から高電圧を印加するとともに、内部に高分子溶液7を供給して遠心力と静電爆発でナノファイバー9を生成するとともに、円筒容器35に外周に配設した放物反射電極(図示せず)等にて一方向に流動させるようにしたものでも良い。
【0045】
旋回流発生手段33の具体例としては、回収手段13側に向けて径が縮小するテーパ円筒体37と、テーパ円筒体37の上部にその周囲から略接線方向にかつ径小方向に傾斜した方向から内部にエア又はその他の気体を吹き出す1又は複数の気体送給手段38を配置して構成されている。また、テーパ円筒体37は導電性部材にて構成されており、このテーパ円筒体37に電圧印加手段39にて交番電圧又はナノファイバー9の帯電極性と同極性の比較的に低い電圧が印加され、テーパ円筒体37の帯電によるナノファイバー9の付着堆積を防止し、さらにはナノファイバー9の収束を助長するように構成されている。なお、テーパ円筒体37は、正確な接頭円錐形である必要はなく、むしろ多少ラッパ状に湾曲した形状の方が収束作用にとって好適である。
【0046】
本実施形態においては、ナノファイバー生成手段32にて生成されたナノファイバー9を、旋回流発生手段33のテーパ円筒体37内に発生する旋回流にて効果的に撚りをかけつつ集束することができ、それを回収手段13の回転部材14に巻き取ることで合糸して回収することができ、ナノファイバー9から成る高強度で均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができる。
【0047】
本実施形態の変形構成例として、旋回流発生手段33を配設する代わりに、又は旋回流発生手段33と併用して、ナノファイバー生成手段32をナノファイバー9の流動方向に沿う軸心回りに回転させる回転手段(図示せず)を設け、ナノファイバー生成手段32で生成されて一方向に流動するナノファイバー9に旋回運動を与えるようにしても良い。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第3の実施形態について、図7を参照して説明する。
【0049】
本実施形態は、図7に示すように、第1の実施形態に第2の実施形態の旋回流発生手段33をさらに付加したものである。この実施形態によれば、ナノファイバー生成手段2と偏向流動手段10の組み合わせにより、生成されて旋回しつつ流動するナノファイバー9を、さらに旋回流発生手段33にて渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束することができるので、ナノファイバー9をさらに効果的に撚ることができ、高強度の糸条を製造することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第4の実施形態について、図8を参照して説明する。
【0051】
本実施形態では、図8に示すように、芯糸供給手段23として、芯糸供給リール41から引き出した芯糸24を円筒容器3の上方に配置したガイドローラ42にて円筒容器3の回転軸心を通るように案内させ、円筒容器3の回転軸心位置を貫通して回収手段13の回転部材14に巻き取られるように構成し、かつ円筒容器3から適当な距離をあけた位置で、芯糸24が中心位置を貫通するように環状電極43を配設している。第3の高電圧発生手段15による回収手段13の回転部材14への高電圧の印加に代えて、環状電極43に第3の高電圧発生手段15からナノファイバー9の帯電電荷の極性とは逆極性の高電圧を印加するように構成し、回転容器3と環状電極43との間で電界を発生させるように構成している。この電界の作用にて小穴4から流出する高分子溶液が帯電されて静電爆発にてナノファイバー9が生成され、かつ環状電極43に向けて偏向流動されるとともに集束され、芯糸24に絡まって撚られ、芯糸24に絡まって撚られたナノファイバー9が回収手段13にて回収される。
【0052】
本実施形態では、円筒容器3と環状電極43との間の電界にてナノファイバー9を生成するとともに偏向流動させるので、図8に示すように、反射電極11や送風手段は配設する必要がない。勿論、それらを付加的に設けることは構わない。また、円筒容器3と環状電極43との間に電界を発生させればよいので、第3の高電圧発生手段15を設ければ、第1の高電圧発生手段8を無くして円筒容器3を接地しても良く、逆に第1の高電圧発生手段8にて円筒容器3に高電圧を印加すれば、環状電極43を接地しても良い。勿論、図8に示すように、円筒容器3と環状電極43に互いに逆極性の高電圧を印加すると、高分子溶液に対する電荷の帯電作用や帯電したナノファイバーの偏向流動作用や集束作用をより強く得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のナノファイバーの合糸方法と装置によれば、エレクトロスピニング法により高分子物質から成るナノファイバーを生成し、その生成工程中にナノファイバーを旋回させつつ集束させることで、効果的に撚りをかけて均質で高強度の糸条を形成でき、その糸条を回収するので、ナノファイバーから成る均質な糸条を生産性よく低コストにて製造することができ、ナノファイバーから成る高強度の糸条の生産に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態におけるナノファイバー生成手段と偏向流動手段の構成を示す斜視図。
【図3】同実施形態における回収手段を示し、(a)は構成を示す斜視図、(b)は糸条の巻き取り状態を示す斜視図。
【図4】同実施形態の芯糸を使用しない合糸状態の全体斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図6】(a)、(b)は同実施形態のナノファイバー生成手段の構成例を示す正面図と斜視図。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図8】本発明の第4の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0055】
1 ナノファイバー合糸装置
2 ナノファイバー生成手段
3 円筒容器(回転容器)
4 小穴
5 回転駆動手段
6 高分子溶液供給手段
7 高分子溶液
8 第1の高電圧発生手段
9 ナノファイバー
10 偏向流動手段
11 反射電極
12 第2の高電圧発生手段
13 回収手段
14 回転部材
23 芯糸供給手段
24 芯糸
31 ナノファイバー合糸装置
32 ナノファイバー生成手段
33 旋回流発生手段
37 テーパ円筒体
38 気体送給手段
39 電圧印加手段
43 環状電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を小穴から帯電させて流出させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、生成工程中のナノファイバーをその流動方向に沿う軸心回りに旋回させつつ集束してナノファイバーを撚る撚り工程と、撚られたナノファイバーを回収する回収工程とを有することを特徴とするナノファイバーの合糸方法。
【請求項2】
ナノファイバー生成工程は、1又は複数の小穴を有する導電性の回転容器内に、高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を供給し、回転容器に電荷を帯電させるとともに回転容器を回転させ、小穴から流出した線状の高分子溶液を遠心力で延伸させるとともに静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成する工程から成り、撚り工程は、生成工程中のナノファイバーを回転容器の軸心方向一側から回転容器の軸心方向他側方に向けて旋回させながら流動させる偏向流動工程と旋回流動するナノファイバーを集束させる収束工程とから成ることを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項3】
偏向流動工程は、回転容器の軸心方向一側部から送風する送風工程、若しくは回転容器の軸心方向一側部に配設した反射電極にナノファイバーの帯電の極性と同極性の電圧を印加して生成工程中のナノファイバーを回転容器の軸心方向他側方に向けて流動させる流動工程を有することを特徴とする請求項2記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項4】
ナノファイバー生成工程は、高分子溶液を1又は複数の小穴から流出させ静電爆発にて延伸させて生成されるナノファイバーを一方向に流動させる工程から成り、撚り工程は、高分子溶液を流出させる小穴をナノファイバーの流動方向に沿う軸心回りに回転させることで一方向に流動するナノファイバーを旋回させる工程と旋回流動するナノファイバーを集束させる集束工程から成ることを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項5】
撚り工程に、生成されたナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束する集束工程を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項6】
ナノファイバー生成工程は、高分子溶液を1又は複数の小穴から流出させ静電爆発にて延伸させて生成されるナノファイバーを一方向に流動させる工程から成り、撚り工程は、生成されたナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束する旋回集束工程から成ることを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項7】
撚り工程は、ナノファイバー生成工程と回収工程との間に配置した環状電極にナノファイバーの帯電の極性と逆極性の電圧を印加若しくは接地し、生成工程中のナノファイバーを環状電極に向けて流動させつつ集束させ、環状電極内を通して回収工程に送出する集束工程を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項8】
少なくとも合糸初期に、撚り工程で旋回して集束するナノファイバーの旋回軸心部を通して芯糸を供給し、この芯糸を回収工程で回収することを特徴とする請求項1〜7の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項9】
所定軸心回りに回転する小穴から高分子溶液を流出させる工程と、小穴に対して所定軸心方向に距離をあけて配置した所定軸心を中心とする環状電極と小穴との間に高電圧を印加してそれらの間に電界を発生させ、小穴から流出する高分子溶液を帯電させて静電爆発にて環状電極に向けて旋回流動するナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、芯糸を小穴側から所定軸心を通り環状電極の略中心を貫通して供給し、旋回流動するナノファイバーを芯糸に絡ませて集束する集束工程と、芯糸に絡んで集束したナノファイバーを芯糸とともに回収する回収工程とを有することを特徴とするナノファイバーの合糸方法。
【請求項10】
回転自在に支持されるとともに回転軸心から径方向に距離をあけて1又は複数の小穴を有する導電性の回転容器と、回転容器を回転駆動する回転駆動手段と、回転容器内に高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段と、回転容器の小穴から流出する高分子溶液に電荷を帯電させる高電圧発生手段と、回転容器の小穴から流出した高分子溶液が遠心力と静電爆発にて延伸されて生成されたナノファイバーを回転容器の軸心方向一側部から他側方に向けて偏向流動させる偏向流動手段と、旋回しつつ流動するナノファイバーを集束して回収する回収手段とを備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
【請求項11】
偏向流動手段は、回転容器の軸心方向一側部から他側方に向けて送風する送風手段と、回転容器の軸心方向一側部に配設した反射電極にナノファイバーの帯電の極性と同極性の電圧を印加する電圧印加手段との何れか一方、若しくは両者にて構成したことを特徴とする請求項10記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項12】
高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を高電圧を印加して1又は複数の小穴から流出させ、静電爆発にて延伸させて生成されるナノファイバーを一方向に流動させるナノファイバー生成手段と、ナノファイバー生成手段をナノファイバーの流動方向に沿う軸心回りに回転させて生成されるナノファイバーを旋回させる回転手段と、旋回するナノファイバーを集束してナノファイバーを撚った状態で回収する回収手段とを備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
【請求項13】
生成されて旋回しつつ流動するナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束させる旋回流発生手段を設けたことを特徴とする請求項10〜12の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項14】
高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を高電圧を印加して1又は複数の小穴から流出させ、静電爆発にて延伸させて生成されたナノファイバーを一方向に流動させるナノファイバー生成手段と、生成されたナノファイバーを渦巻流に巻き込んで旋回させつつ集束させる旋回流発生手段と、旋回されつつ集束されて撚られた状態のナノファイバーを回収する回収手段とを備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
【請求項15】
旋回流発生手段は、回収手段側に向けて径が縮小するテーパ円筒体と、テーパ円筒体の周囲から略接線方向にかつ径小方向に傾斜した方向から気体を吹き出す気体送給手段を備えていることを特徴とする請求項13又は14記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項16】
テーパ円筒体が導電性部材から成り、テーパ円筒体にナノファイバーの帯電極性と同極性の電圧又は交番電圧を印加する電圧印加手段を設けたことを特徴とする請求項15記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項17】
回収手段より手前位置に、ナノファイバーの旋回軸心を中心として配置した環状電極と、環状電極にナノファイバーの帯電の極性と逆極性の電圧を印加する電圧印加し若しくは環状電極を接地する手段とから成る集束手段を配置したことを特徴とする請求項10〜16の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項18】
旋回して集束するナノファイバーの旋回軸心部を通して回収手段に回収されるように芯糸を送給する芯糸供給手段を配設したことを特徴とする請求項10〜17の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項19】
軸心まわりに回転自在に支持されるとともに回転軸心から径方向に距離をあけて1又は複数の小穴を有する導電性の回転容器と、回転容器を回転駆動する回転駆動手段と、回転容器内に高分子物質を溶媒に溶解した高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段と、回転容器に対してその軸心方向に距離をあけて同一軸心状に配置した環状電極と、回転容器と環状電極との間に高電圧を印加してそれらの間に電界を発生させる高電圧発生手段と、芯糸を回転容器側からその回転軸心を通り環状電極の略中心を貫通して供給する芯糸供給手段と、環状電極に向けて集束して芯糸に絡んだナノファイバーを芯糸とともに回収する回収手段とを備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−163539(P2008−163539A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315093(P2007−315093)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】