説明

ナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法

【課題】流出体と帯電電極との間の距離を一定に維持しつつ溶媒の揮発量を増加するように原料液などの飛翔経路を決定することができるナノファイバ製造装置の提供。
【解決手段】原料液300を一定の方向に流出させる流出孔118を有する流出体115と、流出体115と所定の間隔を隔てて配置され、導電性を有する帯電電極128と、流出体115と帯電電極128との間に所定の電圧を印加する帯電電源122と、流出孔118の先端開口部119とナノファイバ301の収集場所である収集部Aとを仮想的に最短で結ぶ最短経路長Bに対し、原料液300などの飛翔経路長Cが最短経路長よりも長くなるように原料液300などの飛翔経路を決定する決定手段102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、静電延伸現象によりサブミクロンオーダーやナノオーダーの細さである繊維(ナノファイバ)を製造するナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂などから成り、サブミクロンスケールやナノスケールの直径を有する糸状(繊維状)物質を製造する方法として、静電延伸現象(エレクトロスピニング)を用いた方法が知られている。
【0003】
この静電延伸現象とは、溶媒中に樹脂などの溶質を分散または溶解させた原料液を空間中にノズルなどにより流出(噴射)させるとともに、原料液に電荷を付与して帯電させ、空間を飛行中の原料液を電気的に延伸させることにより、ナノファイバを得る方法である。
【0004】
より具体的に静電延伸現象を説明すると次のようになる。すなわち、帯電され空間中に流出された原料液は、空間を飛行中に徐々に溶媒が蒸発していく。これにより、飛行中の原料液の体積は、徐々に減少していくが、原料液に付与された電荷は、原料液に留まる。この結果として、空間を飛行中の原料液は、電荷密度が徐々に上昇することとなる。そして、溶媒は、継続して蒸発し続けるため、原料液の電荷密度がさらに高まり、原料液の中に発生する反発方向のクーロン力が原料液の表面張力より勝った時点で原料液が爆発的に線状に延伸される現象が生じる。これが静電延伸現象である。この静電延伸現象が、空間において次々と幾何級数的に発生することで、直径がサブミクロンオーダーやナノオーダーの樹脂から成るナノファイバが製造される。
【0005】
以上のような静電延伸現象を用いてナノファイバを製造する場合、特許文献1に記載の装置のように、原料液を空間中に流出させるノズルと、前記ノズルと離れて配置され前記ノズルとの間に高電圧が印加される電極とを備える装置が用いられる。そして、原料液の帯電量は、前記ノズルと前記電極との距離、および、印加される電圧に依存し、原料液を構成する溶媒の蒸発量は、前記ノズルと前記電極との距離に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、製造対象であるナノファイバの種類、つまり、原料液を構成する溶質の種類によって、溶媒を変更する場合がある。また、同じ溶媒でも、気温や湿度によって揮発状態が変化する場合がある。つまり、原料液の種類やナノファイバ製造時の環境によっては、溶媒が充分に揮発しない状態で原料液が電極に到達するため、十分な静電延伸現象を得ることができず、良好なナノファイバを製造できない事態が生じる。
【0008】
このような問題を解消するには、前記ノズルと前記電極との距離、つまり、原料液が飛翔する距離を長くし、溶媒が揮発する時間を長く確保することが考えられる。しかしこの場合、前記ノズルと前記電極との距離を長くした分両者に印加する電圧を高くしなければ、原料液を充分に帯電させることはできず、良好なナノファイバを得ることができない。しかも、高い電圧を印加するためには、装置に高度な絶縁を施さなければならない。また、前記ノズルと前記電極との距離を長くするためには装置を大型化する必要がある。
【0009】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルなどの原料液を流出させる流出体と当該流出体との間で高電圧が印加される電極との距離を一定に維持しつつ、原料液に含まれる溶媒の揮発量を制御して良好なナノファイバの製造を確保することのできるナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造装置は、原料液を空間中で電気的に延伸させてナノファイバを製造し、該ナノファイバを所定の領域に堆積させるナノファイバ製造装置であって、原料液を一定の方向に流出させる流出孔を有する流出体と、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置され、導電性を有する帯電電極と、前記流出体と前記帯電電極との間に所定の電圧を印加する帯電電源と、前記流出孔の先端開口部とナノファイバの収集場所である収集部とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長に対し、原料液、または、ナノファイバの飛翔経路長が最短経路長より長くなるように原料液、または、ナノファイバの飛翔経路を決定する決定手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
これによれば、流出体と帯電電極との間の距離を一定に維持しつつ、原料液、または、ナノファイバの飛翔経路を決定することにより、原料液に含まれる溶媒の揮発時間を長くして揮発量を確保することができる。しかも、流出体と帯電電極との間に印加する電圧をも、流出体と帯電電極との間の距離に対応して一定に維持することができるため、コンパクトな装置で、放電などの危険性を回避しつつ良好なナノファイバを製造することが可能となる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかるナノファイバ製造方法は、原料液を空間中で電気的に延伸させてナノファイバを製造し、該ナノファイバを所定の領域に堆積させるナノファイバ製造方法であって、原料液を一定の方向に流出させる流出孔を有する流出体から原料液を流出させ、前記流出体と所定の間隔を隔てて配置され、導電性を有する帯電電極と、前記流出体との間に所定の電圧を印加する帯電電源により所定の電圧を印加し、前記流出孔の先端開口部と前記収集部とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長に対し、原料液、または、ナノファイバの飛翔経路長が最短経路長より長くなるように原料液、または、ナノファイバの飛翔経路を決定手段により決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、流出体と帯電電極との間の距離を一定に維持し、印加する電圧を一定に維持する場合でも、異なる原料液を用いて一定品質のナノファイバを製造することができる。また、同じ種類の原料液を使用する場合でも、ナノファイバを製造する環境によって溶媒の揮発量を制御し、製造するナノファイバを一定の品質に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ナノファイバ製造装置を示す斜視図である。
【図2】流出体を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】ナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図4】設定長Dを決定するためのフローチャートである。
【図5】他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図6】他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図7】他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図8】他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図9】流出体の別例を示す斜視図である。
【図10】他の実施の形態にかかるナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図11】他の実施の形態にかかるナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図12】他の実施の形態にかかるナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【図13】他の実施の形態にかかるナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明に係るナノファイバ製造装置、ナノファイバ製造方法を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、ナノファイバ製造装置を示す斜視図である。
【0017】
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、原料液300を空間中で電気的に延伸させてナノファイバ301を製造し、ナノファイバ301を所定の収集部Aに収集する装置であって、流出体115と、帯電電極128と、帯電電源122と、決定手段102とを備えている。さらに本実施の形態の場合、ナノファイバ製造装置100は、収集部Aに配置される被堆積部材200によりナノファイバ301を堆積させて収集し、堆積したナノファイバ301を被堆積部材200ごと回収する回収手段129とを備えている。
【0018】
なお、本明細書や図面において、原料液300とナノファイバ301とを便宜上区別して記載しているが、ナノファイバ301の製造過程、つまり、静電延伸現象が発生している段階においては原料液300からナノファイバ301が徐々に製造されるものであるため、必ずしも原料液300とナノファイバ301の境界が明確ではない。
【0019】
図2は、流出体を切り欠いて示す斜視図である。
【0020】
流出体115は、原料液300の圧力(重力も含む場合がある)により原料液300を空間中に流出させるための部材であり、流出孔118と貯留槽113を備えている。流出体115は、流出する原料液300に電荷を供給する電極としても機能しており、原料液300と接触する部分の少なくとも一部は導電性を備えた部材で形成されている。本実施の形態の場合、流出体115全体が金属で形成されている。なお、金属の種類は導電性を備えておれば、特に限定されるものではなく、黄銅やステンレス鋼など任意の材料を選定しうる。
【0021】
流出孔118は、原料液300を一定の方向に流出させるための孔である。本実施の形態の場合、流出孔118は、流出体115に複数個設けられており、流出体115が備える細長い短冊状の面に、流出孔118の先端にある先端開口部119が並んで配置されるように設けられている。そして、流出孔118から流出する原料液300の流出方向が流出体115に対して同じ方向となるように流出孔118は流出体115に設けられている。
【0022】
なお、流出孔118の孔長や孔径は、特に限定されるものではなく、原料液300の粘度などにより適した形状を選定すれば良い。具体的には、孔長は、1mm以上、5mm以下の範囲から選定されるのが好ましい。孔径は、0.1mm以上、2mm以下の範囲から選定されるのが好ましい。また、流出孔118の形状は、円筒形状に限定されるわけではなく、任意の形状を選定しうる。特に先端開口部119の形状は、円形に限定されるわけではなく、三角形や四角形などの多角形、星形など内側に突出する部分のある形状などでもかまわない。
【0023】
なお、流出体115は、流出孔118から流出する原料液300の帯電電極128に対する方向が一定を維持する限り帯電電極128に対し移動してもかまわない。
【0024】
また、本実施の形態の場合、図1に示すように、ナノファイバ製造装置100は、供給手段107を備えている。供給手段107は、流出体115に原料液300を供給する装置であり、原料液300を大量に貯留する容器151と、原料液300を所定の圧力で搬送するポンプ(図示せず)と、原料液300を案内する案内管114とを備えている。
【0025】
帯電電極128は、図1に示すように、流出体115と所定の間隔を隔てて配置され、流出体115との間で高電圧が印加される部材であり、静電延伸現象により製造されるナノファイバ301を帯電電極128側に誘引する部材である。本実施の形態の場合、帯電電極128は、流出体115に向かって(z軸方向)緩やかに突出するように湾曲した面を一面に持つブロック状の導体からなる部材である。また、本実施の形態の場合、帯電電極128は、接地されている。帯電電極128を湾曲させることにより、帯電電極128に載置される被堆積部材200(後述)もナノファイバ301が堆積する部分が突出するように湾曲させることができる。これにより、被堆積部材200に堆積された後のナノファイバ301が収縮することによって被堆積部材200が反ってしまうことを防止することが可能となる。また、帯電電極128は、本実施の形態では、収集部Aを構成する1部材として機能しており、帯電電極128により誘引されたナノファイバ301は、帯電電極128上に載置された被堆積部材200上に堆積させることで収集される。
【0026】
帯電電源122は、流出体115と帯電電極128との間に高電圧を印加することのできる電源である。本実施の形態の場合、帯電電源122は、直流電源であり、印加する電圧は、5KV以上、100KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。
【0027】
本実施の形態のように、帯電電源122の一方の電極を接地電位とし、帯電電極128を接地するものとすれば、比較的大型の帯電電極128を接地状態とすることができ、安全性の向上に寄与することが可能となる。
【0028】
なお、帯電電極128に電源を接続して帯電電極128を高電圧に維持し、流出体115を接地することで原料液300に電荷を付与してもよい。また、帯電電極128と流出体115とのいずれも接地しないような接続状態であってもかまわない。
【0029】
また、帯電電極128は、収集部Aに存在しなくてもよい。つまり、収集部Aとは別の場所(例えば、収集部Aより流出体115の近くの場所)に帯電電極128が存在し、その帯電電極128が流出体115から流出する原料液300を帯電させるものでも構わない。また、その場合、収集部Aは、ナノファイバを電界により誘引するためだけの誘引電極を備えていてもいいし、収集部Aが電極を備えずに気体流によりナノファイバが収集部A(被堆積部材)まで搬送されるものでも良い。
【0030】
また、帯電電極128は、表面が湾曲したものばかりでなく、表面が平面のものでもかまわない。
【0031】
決定手段102は、流出孔118の先端開口部119と収集部Aとを仮想的に最短で結ぶ最短経路長B(図3参照)に対し、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路長C(図3参照)が最短経路長Bよりも長くなるように原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定する部材、または、装置である。
【0032】
なお、本実施形態の場合、最短経路長Bは流出孔118の先端開口部119と帯電電極128とを仮想的に最短で結ぶ経路の長さとなる。
【0033】
図3は、ナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【0034】
同図に示すように、本実施の形態の場合、決定手段102は、決定電極123と、印加手段121とを備えている。
【0035】
決定電極123は、流出体115と同電位となるように接続された状態で配置される導電性を備える部材である。本実施の形態の場合、決定電極123は、流出体115と帯電電極128との間に配置されており、流出孔118の先端開口部119の配列方向に沿って配置されている。ここで、「流出体115と収集部Aとの間」の語は、流出体115の隣側方や帯電電極128の隣側方も含むものとして記載している。
【0036】
なお、決定電極123は、流出体115から流出した直後やその後の原料液300を電気的に反発させうる位置に配置される。例えば、流出体115の側方、または、流出体115と収集部Aとを結ぶ最短経路の側方で比較的流出体115に近い位置に配置される場合などである。
【0037】
また、決定電極123は、流出体115として機能するものでもよい。つまり、二つの流出体115を至近距離で配置することで、一方の流出体115にとって他方の流出体115は、決定電極123として機能することとなる。
【0038】
印加手段121は、決定電極123に所定の電位を印加する部材、または、装置である。本実施の形態の場合、印加手段121は、流出体115と同電位とするために流出体115と決定電極123とを電気的に接続する導線(ブスバーなども含む)である。
【0039】
なお、印加手段121は、帯電電源122とは別の電源を備えて当該電源により所定の電位を決定電極123に対して印加するものであっても良い。また、流出体115と同電位である必要はなく、決定電極123に任意に電位を印加するものであっても構わない。
【0040】
以上の決定手段102によれば、流出体115と同電位にある決定電極123により、流出体115と帯電電極128との間に生じる電界が影響を受け、つまり、原料液300、または、ナノファイバ301は決定電極123に反発して決定電極123から遠くなる経路で飛翔し、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路長Cが最短経路長Bに加えて設定長Dだけ長くなるように決定される。この記載は、厳密に言えば、設定長Dだけ水平方向に飛翔し、その後Bだけ垂直落下するような飛翔経路になる場合に該当する。しかし、実際には、図3に示す経路のように、原料液300、または、ナノファイバ301は、下降しながら水平方向にDだけ移動するため斜めに落下し、その後、決定手段102の影響がなくなれば鉛直方向に降下する経路をたどることとなる。従って、上記記載は、厳密には、「最短経路長Bにおいてナノファイバ301が収集部Aに到達する位置から最終降下位置が設定長Dだけ水平方向にシフトするように飛翔経路長Cが決定される。」となる。つまり、上記記載は、この意味も含んでいる。
【0041】
これにより、流出体115と帯電電極128の最短経路長Bを変更することなく設定長Dに対応する時間分原料液300から溶媒が揮発する時間を長くすることができる。従って、静電延伸現象が発生する可能性を高めることができ、良質なナノファイバ301を製造することが可能となる。
【0042】
なお、原料液300やナノファイバ301の飛翔経路を決定するためには、本実施の形態の場合、決定電極123の位置を変更するための位置変更手段を備えれば良い。また、決定電極123の形状や大きさを変更するものでもよい。さらに決定電極123に他の電源が接続している場合、決定電極123に印加する電圧を変更して、飛翔経路を変更してもかまわない。
【0043】
被堆積部材200は、シート状の部材であって、供給ロール127に巻き付けられた状態で供給される。また、被堆積部材200は、回収手段129に巻き取られることによって、図1中に矢印で示される方向に移動可能となっている。また、被堆積部材200は、帯電電極128の湾曲に沿って配置され、また、移動できるように、帯電電極128の両端縁近傍に配置される回転可能に取り付けられる棒状の押さえ部材125で上方から押さえつけられている。
【0044】
次に、上記構成のナノファイバ製造装置100を用いたナノファイバ301の製造方法を説明する。
【0045】
図4は、設定長Dを決定するためのフローチャートである。
【0046】
同図に示すように、決定手段102がない、または、決定手段102による決定がなされていない場合の基準時間Tを算出、または、測定する(S101)。ここで基準時間Tとは、決定手段102がない、または、決定手段102による決定がなされていない状態において、原料液300が流出体115から流出し、当該原料液300がナノファイバ301に変化し、当該ナノファイバ301が帯電電極128に到達するまでの時間であって、原料液300やナノファイバ301の飛翔経路長が最短経路長Bであるときの時間である。
【0047】
次に、基準時間Tと乾燥所要時間DRとを比較する(S104)。ここで、乾燥所要時間DRとは、流出体115から原料液300が流出した後、十分な静電延伸現象が発生して、良好なナノファイバ301が得られるまでの時間である。
【0048】
比較した結果、基準時間Tが乾燥所要時間DRより長い場合、原料液300やナノファイバ301の飛翔経路を決定する必要が無いため、設定長Dを算出することなく終了する(S104:Yes)。
【0049】
一方、基準時間Tが乾燥所要時間DRより短い場合、次の行程に移る(S104:No)。
【0050】
次に、追加飛翔時間Uを算出する。具体的にはU=DR−Tの式を用いて算出する(S107)。
【0051】
次に、追加飛翔時間Uを満たす設定長Dを算出する(S110)。なお厳密には、追加飛翔時間Uを満たす最終降下位置の水平方向のシフト量である設定長Dを算出する。
【0052】
以上により設定長Dが算出される。そして、算出された設定長Dとなるように決定手段102を調整する。
【0053】
なお、設定長Dは、決定電極123の位置や形状、大きさを調整し、流出体115から原料液300が流出した後、十分な静電延伸現象が発生して、良好なナノファイバ301が得られる状態を実験的に決定した結果として得られるものでもかまわない。また、決定電極123に他の電源が接続している場合、決定電極123に印加する電圧を変更して、良好なナノファイバ301が得られる状態を実験的に決定した結果として得られるものでもかまわない。
【0054】
以上の様にして調整されたナノファイバ製造装置100を用い、ナノファイバ301を製造する。
【0055】
まず、供給手段107により流出体115に原料液300を供給する(供給工程)。以上により、流出体115の貯留槽113に原料液300が満たされる。
【0056】
ここで、ナノファイバ301を構成する樹脂であって、原料液300に溶解、または、分散する溶質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体等の高分子物質を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記樹脂に限定されるものではない。
【0057】
原料液300に使用される溶媒としては、揮発性のある有機溶剤などを例示することができる。具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を挙示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明に用いられる原料液300は上記溶媒を採用することに限定されるものではない。
【0058】
さらに、原料液300に無機質固体材料を添加してもよい。当該無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、製造されるナノファイバ301の耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al23、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B23、P25、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb23、As23、CeO2、V25、Cr23、MnO、Fe23、CoO、NiO、Y23、Lu23、Yb23、HfO2、Nb25等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明の原料液300に添加される物質は、上記添加剤に限定されるものではない。
【0059】
原料液300における溶媒と溶質との混合比率は、選定される溶媒の種類と溶質の種類とにより異なるが、溶媒量は、約60重量%から98重量%の間が望ましい。好適には溶質が5〜30重量%となる。
【0060】
次に、帯電電源122により流出体115を正または負の高電圧とする。接地されている帯電電極128と対向する流出体115の先端開口部119に電荷が集中し、当該電荷が流出孔118を通過して空間中に流出する原料液300に転移し、原料液300が帯電する(帯電工程)。
【0061】
前記帯電工程と供給工程とは同時期に実施され、流出体115の先端開口部119から帯電した原料液300が流出する(流出工程)。
【0062】
流出体115から流出した原料液300やナノファイバ301の飛翔経路は、流出孔118の先端開口部119と収集部A(帯電電極128)とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長Bに対し、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路長Cが最短経路長Bに加えて設定長Dだけ長くなるように決定手段102により決定される(決定工程)。
【0063】
次にある程度空間中を飛行した原料液300に静電延伸現象が作用することによりナノファイバ301が製造される(ナノファイバ製造工程)。ここで、各流出孔118から飛行する原料液300は、相互にまとまることなく細い状態で流出する。これにより、原料液300のほとんどがナノファイバ301に変化していく。また、原料液300は、流出孔118の先端開口部119と帯電電極128とが最短経路長Bを維持した状態であるため、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出させることが可能となる。一方、原料液300やナノファイバ301が飛翔する距離である飛翔経路長Cは最短経路長Bよりも長くなるため、静電延伸が何次にもわたって発生し、線径の細い良好なナノファイバ301が大量に製造される。
【0064】
この状態において、ナノファイバ301は、流出体115と帯電電極128との間に発生する電界に沿って被堆積部材200に向かって飛行し、被堆積部材200の収集部Aにナノファイバ301が堆積して収集される(堆積工程)。被堆積部材200は、回収手段129によりゆっくり移送されているため、ナノファイバ301も移送方向に延びた長尺の帯状部材として堆積する。
【0065】
以上のような構成のナノファイバ製造装置100を用いることによって、コンパクトなナノファイバ製造装置100でありながら、充分に静電延伸現象を発生させることができ、良好なナノファイバ301を製造することが可能となる。また、決定電極123の位置や形状、大きさなどを変更することによって、原料液300が異なる場合でも対応することが可能となる。
【0066】
次に、決定手段102の他の実施の形態を説明する。
【0067】
図5は、他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【0068】
同図に示すように、決定手段102は、決定電極123と、印加手段121とを備えている。
【0069】
決定電極123は、流出体115よりも帯電電極128の近くに配置されており、流出孔118の配置方向に沿って延びた丸棒状の金属である。決定電極123は、丸棒形状とすることにより、帯電電極128の近傍に配置されていても帯電電極128との間で放電し難いものとなっている。
【0070】
印加手段121は、決定電極123に所定の電位を印加することのできる直流電源である。
【0071】
本実施の形態の決定手段102の場合、印加手段121により決定電極123の電位を変化させることで、設定長Dを任意に変化させることができる。なお、本実施の形態においても、決定電極123の位置や大きさ、形状を変更しても、本願発明に含まれ、同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
図6は、他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【0073】
流出体115に備えられる流出孔118は、流出孔118の先端開口部119と帯電電極128とを最短経路で仮想的に結ぶ線(最短経路長B)と交差する一定の方向に原料液を流出させるように設けられている。
【0074】
決定手段102は、流出孔118から流出する原料液300の圧力を決定する加圧手段124を備えている。具体的に加圧手段124は、原料液300を所定の圧力で圧送することのできる液体ポンプである。
【0075】
以上の構成により、加圧手段124の設定圧力により原料液300に初期速度を与えて流出体115と帯電電極128との間に発生する電界による誘引力や重力に抗して原料液300を飛翔させることができ、加圧手段124の設定圧力を変化させることによって原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定することが可能となる。これにより、流出体115と帯電電極128の最短経路長Bを変更することなく設定長Dに対応する時間分原料液300から溶媒が揮発する時間を長くすることができる。従って、静電延伸現象が発生する可能性を高めることができ、良質なナノファイバ301を製造することが可能となる。
【0076】
なお、決定手段102は、流出体115を図中の矢印方向に傾動させることのできる傾動手段を備えていてもかまわない。傾動手段によっても、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定することが可能となり、さらに、加圧手段124との組合せにより、飛翔経路をより細やかに決定することが可能となる。
【0077】
図7は、他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【0078】
決定手段102は、流出孔118の先端開口部119と収集部A(帯電電極128)とを仮想的に最短で結ぶ最短経路が鉛直方向(図中Z方向)から所定の角度で交差するように流出体115と帯電電極128との位置関係を決定する位置決定手段126を備えている。本実施の形態の場合、位置決定手段126は、同図中の矢印方向に回転可能な円板であり、流出体115と帯電電極128とは、位置決定手段126の面から図中のy方向(紙面に垂直な方向)に突出するように取り付けられている。そして、位置決定手段126を回転させて所定の位置で固定することで、流出体115と帯電電極128との位置関係、つまり、流出体115から帯電電極128を望む角度であって、鉛直方向に対する角度を決定することが可能となる。
【0079】
なお、位置決定手段126は、円板に限定される訳ではなく、上記機能を発揮できるものであれば形状は限定されない。
【0080】
以上の構成により、流出体115と帯電電極128との間に発生する電界による誘引力に交差する方向に重力を作用させて原料液300を飛翔させることができ、流出体115と帯電電極128との位置関係を変化させることによって原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定することが可能となる。これにより、流出体115と帯電電極128の最短経路長Bを変更することなく設定長Dに対応する時間分原料液300から溶媒が揮発する時間を長くすることができる。従って、静電延伸現象が発生する可能性を高めることができ、良質なナノファイバ301を製造することが可能となる。
【0081】
図8は、他の決定手段を示すためのナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【0082】
決定手段102は、流出孔118の先端開口部119と収集部A(帯電電極128)とを仮想的に最短で結ぶ最短経路と交差する方向に気体流を発生させ、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定する気体流発生手段130を備えている。
【0083】
本実施の形態の場合、気体流発生手段130は、軸流ファンやシロッコファンを備え、気体流発生手段130の周辺に存在する気体である空気を集めて所定の圧力で所定の方向に送風することのできる装置である。
【0084】
以上の構成により、流出体115と帯電電極128との間に発生する電界による誘引力に交差する方向に気体流発生手段130が発生させた気体流を作用させて原料液300を飛翔させることができ、気体流発生手段130の取付位置や気体流の圧力を変化させることによって原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定することが可能となる。これにより、流出体115と帯電電極128の最短経路長Bを変更することなく設定長Dに対応する時間分原料液300から溶媒が揮発する時間を長くすることができる。従って、静電延伸現象が発生する可能性を高めることができ、良質なナノファイバ301を製造することが可能となる。
【0085】
なお、気体流発生手段130は、空気をファンにより圧送するばかりでなく、高圧状態でタンクに保持された気体を吐出することにより気体流を発生させるものでもかまわない。また、使用する気体も空気ばかりでなく、窒素などの不活性ガスや、過熱水蒸気など用いてもかまわない。また、決定手段102は、気体流の温度を上昇させる加熱手段を備えてもかまわない。気体流を用いて原料液300やナノファイバ301の飛翔経路を決定することで、設定長Dに対応する時間分原料液300に含まれる溶媒の揮発時間を稼げるばかりでなく、気体流による溶媒の揮発促進効果を期待できる。さらに、気体流の温度を高めることでさらに揮発促進効果を期待することができる。
【0086】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態も本願発明に含まれる。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。例えば、ナノファイバ製造装置100が、図9に示すような、複数のノズルを並べて配置したような流出体115を備えていてもかまわない。また、単数のノズルからなる流出体115であってもかまわない。
【0087】
また、図10に示すように、決定手段102は、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路長Cが最短経路長Bよりも長くなるように原料液300、または、ナノファイバ301を電界により引き寄せて飛翔経路を決定するものでもよい。具体的には、帯電した原料液300、または、ナノファイバ301をある程度誘引し飛翔経路を変更することができるが、最終的にはナノファイバ301が被堆積部材200に到達するように、印加手段121により決定電極123に原料液300やナノファイバ301とは逆極性となる電位を印加する。
【0088】
また、図11に示すように、帯電電極128と決定電極123との間に流出体115から原料液300を流出するような構成を採用してもかまわない。具体的には、原料液300やナノファイバ301の飛翔経路上のいずれかの位置において、原料液300やナノファイバ301に作用する力が決定電極123に向かう力より帯電電極128に向かう力が強いが、飛翔経路長Cが最短経路長Bよりも長くなるように決定手段102より飛翔経路を決定するものでもよい。図11に示す構成では、帯電電極128に向かわせる力は、帯電電極128に発生する電界による力と重力による力との合力であり、当該合力よりも弱い力を原料液300やナノファイバ301に発生するように、決定手段102の決定電極123の位置や、決定電極123に印加する電位を設定すればよい。
【0089】
なお、同図においては、水平方向に原料液300を流出させる流出体115が記載されており好ましい態様といえるが、本構成において、原料液300が流出体115から流出する方向は下向きでもよく、特に限定されるものではない。
【0090】
(実施の形態2)
次に、本願発明にかかる他の実施の形態について説明する。なお、前記実施の形態1と同じ機能を備える部材などについては同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0091】
図12は、ナノファイバ製造装置の要部を一部切り欠いて示す側面図である。
【0092】
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、流出体115と、帯電電極128と、帯電電源122と、決定手段102と、被堆積部材200とを備えている。
【0093】
決定手段102は、決定電極123と、印加手段121とを備えている。
【0094】
決定電極123は、流出体115と同じ形状となっており、流出体115と同電位となるように接続された状態で配置される導電性を備える部材である。本実施の形態の場合、決定電極123は、流出体115と所定の間隔を隔てて配置されており、流出体115と同じ高さで配置されている。
【0095】
本実施の形態の場合、決定電極123は、原料液300の圧力(重力も含む場合がある)により原料液300を空間中に流出させるための部材としても機能しており、流出体115と同様に流出孔138と貯留槽113とを備えている。また、決定電極123は、決定電極123から流出する原料液300に電荷を供給する電極としても機能しており、全体が金属で形成されたものとなっている。
【0096】
流出孔138は、決定電極123に複数個設けられており、決定電極123が備える細長い短冊状の面に、流出孔138の先端にある先端開口部139が並んで配置されるように設けられている。そして、流出孔138から流出する原料液300の流出方向が決定電極123に対して同じ方向となるように流出孔138は決定電極123に設けられている。
【0097】
なお、流出体115、および、決定電極123に備えられる流出孔118、138は、単数でもかまわない。
【0098】
印加手段121は、流出体115と同電位とするために流出体115と決定電極123とを電気的に接続する導線である。
【0099】
上記構成は、決定電極123が流出体として機能するものである。本実施の形態のナノファイバ製造装置100において流出体115に着目すると、決定電極123は、流出体115の流出孔118の先端開口部119と収集部A(帯電電極128)とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長Bに対し、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路長Cが最短経路長Bよりも長くなる(例えば、設定長Dだけ長くなる)ように原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定する部材となる。一方、決定電極123に着目すると、流出体115は、決定電極123の流出孔138の先端開口部139と帯電電極128とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長B'に対し、原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路長C'が最短経路長B'よりも長くなる(例えば、設定長D'だけ長くなる)ように原料液300、または、ナノファイバ301の飛翔経路を決定する部材として機能する。
【0100】
以上のような構成のナノファイバ製造装置100を用いることによって、流出体115のみならず決定電極123からも原料液300を流出させてナノファイバ301を製造することができ、かつ、コンパクトなナノファイバ製造装置100でありながら、充分に長い飛翔経路長C、C'を確保して静電延伸現象を発生させることができ、良好なナノファイバ301を多量に製造することが可能となる。
【0101】
なお、流出体115は、流出孔118が複数並んだ状態で設けられており、隣合う流出孔118から流出する原料液300も電気的に反発し合う。しかし、隣合う流出孔118の間は、図2に示すように、細長い短冊状の面(先端部)で繋がっているため、イオン風の発生が抑えられ、流出体115から流出する原料液300間での反発力も抑えられる。これに対し、図12に示す流出体115と決定電極123との間にはイオン風が発生するため、流出体115から流出する原料液300と決定電極123から流出する原料液300との間では反発力は大きくなり、両者の経路が同図のようにお互いに遠ざかるものとなる。
【0102】
また、図13に示すように、流出体115と決定電極123とを電気的に絶縁状態とし、印加手段121と帯電電源122とによりそれぞれに独立して電位を印加できるようにするものでもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本願発明は、ナノファイバを用いた紡績や、不織布の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
100 ナノファイバ製造装置
102 決定手段
107 供給手段
113 貯留槽
114 案内管
115 流出体
116 先端部
118,138 流出孔
119,139 先端開口部
121 印加手段
122 帯電電源
123 決定電極
124 加圧手段
125 部材
126 位置決定手段
127 供給ロール
128 帯電電極
129 回収手段
130 気体流発生手段
151 容器
200 被堆積部材
300 原料液
301 ナノファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液を空間中で電気的に延伸させてナノファイバを製造し、該ナノファイバを所定の領域に堆積させるナノファイバ製造装置であって、
原料液を一定の方向に流出させる流出孔を有する流出体と、
前記流出体と所定の間隔を隔てて配置され、導電性を有する帯電電極と、
前記流出体と前記帯電電極との間に所定の電圧を印加する帯電電源と、
前記流出孔の先端開口部とナノファイバの収集場所である収集部とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長に対し、原料液、または、ナノファイバの飛翔経路長が最短経路長よりも長くなるように原料液、または、ナノファイバの飛翔経路を決定する決定手段と
を備えるナノファイバ製造装置。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記流出体と所定の距離隔てて配置される決定電極と、
前記流出体と前記決定電極とを電気的に接続する印加手段と
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項3】
前記決定手段は、
前記流出体と電気的に絶縁された状態で配置される決定電極と、
前記決定電極に所定の電位を印加する印加手段と
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項4】
前記決定電極は、
原料液を一定の方向に流出させる流出孔
を備える請求項2、または、請求項3に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項5】
前記流出孔は、前記最短経路の方向と交差する一定の方向に原料液を流出させるように設けられ、
前記決定手段は、
前記流出孔から流出する原料液の圧力を決定する加圧手段
を備える請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項6】
前記決定手段は、
前記流出孔の先端開口部と前期収集部とを仮想的に最短で結ぶ最短経路が鉛直方向から所定の角度で交差するように前記流出体と前記収集部との位置関係を決定する位置決定手段
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項7】
前記決定手段は、
前記流出孔の先端開口部と前記収集部とを仮想的に最短で結ぶ最短経路と交差する方向に気体流を発生させ、原料液、または、ナノファイバの飛翔経路を決定する気体流発生手段
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項8】
前記決定手段が決定する飛翔経路長とは、十分な静電延伸現象により良好なナノファイバが得られる長さである
請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項9】
原料液を空間中で電気的に延伸させてナノファイバを製造し、該ナノファイバを所定の領域に堆積させるナノファイバ製造方法であって、
原料液を一定の方向に流出させる流出孔を有する流出体から原料液を流出させ、
前記流出体と所定の間隔を隔てて配置され、導電性を有する帯電電極と、前記流出体との間に所定の電圧を印加する帯電電源により所定の電圧を印加し、
前記流出孔の先端開口部とナノファイバの収集場所である収集部とを仮想的に最短で結ぶ最短経路長に対し、原料液、または、ナノファイバの飛翔経路長が最短経路長よりも長くなるように原料液、または、ナノファイバの飛翔経路を決定手段により決定する
ナノファイバ製造方法。
【請求項10】
さらに、
前記流出体から原料液が流出した後、静電延伸現象によりナノファイバが得られるまでの時間である乾燥所要時間と、最短経路長における原料液、または、ナノファイバの飛翔時間である基準時間とを比較し、
基準時間が乾燥所要時間よりも短い場合に、乾燥所要時間から基準時間を引いた時間である追加飛翔時間を算出し、
原料液、または、ナノファイバが追加飛翔時間分飛翔する長さである設定長を算出し、
飛翔経路長を最短経路長に設定長を加えた長さとする
請求項9に記載のナノファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−208340(P2011−208340A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240432(P2010−240432)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【特許番号】特許第4733225号(P4733225)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】