説明

ナノワイヤボロメータ光検出器

放射電磁エネルギーを検出するための光検出器が、光子トラップ(205, 305, 405, 605)内において少なくとも部分的に配置された少なくとも1つのボロメータナノワイヤ(100)を備える。該少なくとも1つのナノワイヤ(100)は、少なくともある黒く染められた表面(110)を有する。該黒く染められた表面は、遠赤外線光から可視光までの範囲に及ぶ放射電磁エネルギーを吸収するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、Alexandre M. Bratkovski他の名前において2008年10月20日にファイリングされた米国暫定特許出願シリアル番号第61/106,961号からの優先権を主張して特許請求するものである。
【0002】
背景
ボロメータは、電磁放射線を吸収する材料の物理特性における測定可能な変化に従って、該電磁放射線を検出することが可能な装置である。該吸収する材料は、例えば、電磁エネルギーにさらされた時には、温度が増加することとなる可能性があり、該電磁エネルギーは該材料の抵抗に影響を及ぼす。従って、幾つかのボロメータは、制御された条件の下で、既知の寸法を有した吸収材料のある部分の抵抗を測定して、該材料によって吸収されている電磁放射線(電磁放射エネルギー)における決定された量の推定を行い、ひいては(その延長線上において)、該吸収材料の付近に存在する電磁放射線(電磁放射エネルギー)の量の推定を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボロメータは、熱放射を測定するために構成された電子機器用の光検出器内において頻繁に用いられる。例えば、あるタイプの暗視センサは、各ピクセルにおいて赤外線の光を検出するための光検出器に基づいてボロメータを用いる。現在利用可能なボロメータは、利用可能な用途(アプリケーション)に限定されるが、このことは、熱エネルギーを表す波長の狭帯域内における放射線だけしかそれらが検出しないという事実に起因する。更にいえば、現在利用可能な多くのボロメータは、周囲温度(例えば、200〜300K)において感受性が低くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】本明細書内において記載された原理の様々な例示的な実施形態による、光検出器の用途において使用されるための例示的なボロメータナノワイヤを示す図である。
【図1B】本明細書内において記載された原理の様々な例示的な実施形態による、光検出器の用途において使用されるための例示的なボロメータナノワイヤを示す図である。
【図1C】本明細書内において記載された原理の様々な例示的な実施形態による、光検出器の用途において使用されるための例示的なボロメータナノワイヤを示す図である。
【図2】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、例示的なナノワイヤボロメータ検出器における部分的な断面の斜視図を示す図である。
【図3】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、例示的なナノワイヤボロメータ光検出器の断面図を示す図である。
【図4】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、例示的なナノワイヤボロメータ光検出器の部分的な断面の斜視図を示す図である。
【図5】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、例示的なナノワイヤボロメータ光検出器の部分的な断面の斜視図を示す図である。
【図6】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、例示的なナノワイヤボロメータ光検出器の部分的な断面の斜視図を示す図である。
【図7】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、例示的なナノワイヤボロメータ光検出器の部分的な断面の斜視図を示す図である。
【図8】本明細書内において記載された原理の例示的な一実施形態による、放射された電磁エネルギーを検出する例示的な一方法の流れ図である。
【実施例】
【0005】
添付図面は、本明細書内において記載された原理の様々な実施形態を例示しており、本明細書の一部である。それらの示された実施形態は、単なる例であり、特許請求の範囲を限定しない。
【0006】
図面全体にわたり、同一の参照番号は、同様の要素であるが、必ずしも同一であるとは限らない要素を指す。
【0007】
詳細な説明
上述のように、電子機器の光検出器内においてボロメータは使用され得る。しかしながら、現在利用可能なボロメータは、比較的狭い帯域の波長からだけしか、それらが放射線(放射エネルギー)を検知することができないように制限されている。
【0008】
遠赤外線から可視光までの波長の範囲にわたる放射電磁エネルギーの広範囲な温度スペクトラム(又は熱スペクトラム)を検出することが可能な、ボロメータベースの光検出器を本明細書は開示する。該光検出器は、光子トラップ内において少なくとも部分的に配置された少なくとも1つのナノワイヤを含み、該少なくとも1つのナノワイヤは、遠赤外線から可視光までを吸収するよう構成された黒く染められた表面を含む。この帯域内において、光検出器により検出される光の量は、少なくとも1つのナノワイヤにおける抵抗の変化を測定することによって決定され得る。
【0009】
本明細書内において及び添付の特許請求の範囲内において用いられると、用語「ナノワイヤ」は、典型的には50nm未満の半径を有した細長い構造のことを指す。
【0010】
本明細書内において及び添付の特許請求の範囲内において用いられると、用語「光子トラップ」は、ある構造内へと向けられた放射電磁エネルギーを、該構造内における内部反射(内面反射)に、該構造の外側に逃がすことなく、少なくとも一時的に制限するよう設計された該構造のことを指す。
【0011】
本明細書内において及び添付の特許請求の範囲内において用いられると、用語「光」は、約20μmから約380nmまでの間の波長を有した放射電磁エネルギーのことを指す。
【0012】
本明細書内において及び添付の特許請求の範囲内において用いられると、用語「可視光」は、約380nmから約760nmまでの間の波長を有した放射電磁エネルギーのことを指す。
【0013】
本明細書内において及び添付の特許請求の範囲内において用いられると、用語「遠赤外線」は、約8μmから約1mmまでの間の波長を有した放射電磁エネルギーのことを指す。
【0014】
以下の記載では、説明することを目的として、本システム及び方法の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細事項が記載されている。しかしながら、本システム及び方法を、これらの特定の詳細事項無しに実践することができることが、当業者であれば理解されよう。本明細書内における「一実施形態」か、「一例」か、又は類似の言葉への言及は、該実施形態又は例に関連して説明されるある特定の特徴か、構造か、又は特性が、少なくともその1つの実施形態内に含まれるが、他の実施形態内には必ずしも含まれるとは限らないということを意味する。語句「一実施形態において」か又は本明細書内の様々な箇所における類似の語句の様々な事例は、必ずしも全てが同じ実施形態のことを指しているとは限らない。
【0015】
例示的なナノワイヤボロメータ、例示的な光検出器、及び光検出の例示的な方法に関して、本明細書内において開示した原理が次に説明される。
【0016】
例示的なナノワイヤボロメータ
次に、図1A、図1B、及び図1Cを参照すると、例示的なボロメータナノワイヤ(100)が示されている(必ずしも一定の縮尺に従っているとは限らない)。図1Aは、ボロメータナノワイヤ(100)の外部の斜視図を示しており、図1B及び図1Cは、図1Aのナノワイヤ(100)についての異なる実現可能な実施形態の断面図である。
【0017】
ナノワイヤ(100)には、本明細書内において記載された原理のある特定用途に適合可能な任意の技法を用いて製造された半導体コア(105)を含めることができる。半導体コア(105)には、シリコン、ゲルマニウム、及びそれらの合金などの、少なくとも1つの半導体材料を含めることができる(但しそれらに限定されない)。本明細書の原理に一致するナノワイヤ(100)は、約30μm〜約50nmまでの間の半径を有することが可能である。
【0018】
図1A、図1B、及び図C内に示されているように、ナノワイヤ(100)には、黒く染められた表面(110)を含めることができる。ナノワイヤ(100)の半導体材料が本質的に透過性であるような波長において電磁放射線を吸収するよう構成された少なくとも1つの染料を有したポリマーにより、ナノワイヤ(100)の外部(外側)をコーティングすることによって、この黒染めを成し遂げることができる。例えば、ポリマー内に含まれ得る1つの染料は、カーボンブラック染料である。追加的には或いは代替的には、出来るだけ多くの範囲の波長の電磁エネルギーの吸収を助長するために、複数の染料か、又は光を吸収する他の類のものを、ポリマー内に含めることができる。ナノワイヤ(100)上において所望の黒染め効果を達成させるために、ある実施形態では、ポリマーの、複数のコート(コーティング膜)が、半導体材料のコアに対して提供され得る。
【0019】
図1C内に示されているように、ある実施形態において、半導体コア(105)の両端部(115、120)は、それぞれの電極に対する電気的な伝達を容易にするために、p型ドーピングか又はn型ドーピングがなされ得る。代替的には、図1B内に示されるように、半導体コア(105)は、ナノワイヤ(100)の長さに沿って、本来備わったままの(固有な)ものであることが可能である。
【0020】
例示的な光検出器
次に図2を参照すると、ある例示的な光検出器(200)が示されている。該光検出器は、光子トラップ(205)内に配置された図1A〜図1Cのナノワイヤに一致する、複数の黒く染められたナノワイヤ(100)を含む。光子トラップ(205)には、半導体基板(210)上に形成された開放型反射性キャビティ(open reflective cavity)を含めることができる。光子トラップ(205)の壁(215、220)は、ドープされた半導体材料から形成され得り、電気的に及び物理的にナノワイヤ(100)に対して結合され得る。該ナノワイヤ(100)は、第1の壁(215)から第2の壁(220)まで水平に延在することが可能である。酸化物(225)の1つか又は複数の層は、第1及び第2の壁(215、220)を、互いに絶縁させることが可能であり、且つ、半導体基板(210)から絶縁させることが可能である。
【0021】
光子トラップ(205)の内面は、例えば、銀及び/又はアルミニウムの層のような反射層(230)でコーティングされ得る。反射層(230)及び壁(215、220)の導電性のドープされた部分間に配置される絶縁層及び/又は反射層(230)内の、例えばある不連続性によって、壁(215、220)は、互いに電気的に絶縁されたままであることが可能である。追加的には或いは代替的には、ナノワイヤボロメータ(100)が壁(215、220)をつなぎ合わせる場所であるナノワイヤボロメータ(100)の各側部の周辺境界線の周囲の壁(215、220)の各々の中の領域は、反射層(230)の反射性材料を取り除くことができる。この例では、光子トラップ(205)の第1の壁(215)の内面は、半導体基板(210)からある角度をなしており、それにより、傾斜した鏡が形成されている。本明細書内において記載された原理のある特定の用途に最も適合することが可能であるように、反射面における多くの異なる形状とコンフィギュレーションとが、光子トラップ(205)内において使用され得る。構造内へと向けられた放射電磁エネルギーを、該構造内における内部反射(内面反射)に少なくとも一時的に制限するよう光子トラップ(205)内の反射面の配向が構成(設定)され得り、その結果として、受け取った光を、ナノワイヤ(100)付近に集中させることができる。例えば、光源(245)からの放射光の例示的な経路(235、240)が、図2内に示されている。すなわち、光子トラップ(205)を放射光が出ていく前に、該経路(235、240)は、光子トラップ(205)内における複数の跳ね返りを含んでいる。
【0022】
光子トラップ(205)内において配置されたボロメータナノワイヤ(100)を有する光検出器(200)の物理的な特性の簡単な説明が、吸収される電磁放射線の影響に関連して次になされる。
【0023】
1つか又は複数のナノワイヤによって吸収される、放射線の電力量は、ΦNW=ΦA/Nに等しい。ここで、Φは、放射電力(電力束)の密度であり、A=Lは、感光領域(例えば、L=30μm)の面積であり、Nは、ナノワイヤの数である。遠赤外線から可視光までの範囲内の電磁放射線を吸収する黒く染められた表面を有したシリコンか又はゲルマニウムのナノワイヤ(100)のセットから作られた光集線装置を有した光検出器(200)において、ネット・ヒートバランス式を、次のように記載することができる。
【0024】
【数1】

式1において、c及びρは、それぞれ、ナノワイヤ(100)のコア内の半導体材料の特定の熱及び密度である。Tは、平均ナノワイヤ温度であり、v=sL、s=πr、S=2πr、r、及びLは、それぞれ、ナノワイヤ(100)の体積、断面積、表面積、半径、及び、長さである。ηは、吸収の量子効率を表す。式1内のJ、Jair、Jthは、放射冷却、外気への熱拡散、及び、ナノワイヤ(100)の端部を通じた流出量、に対応する熱流量を表す。ナノワイヤ(100)の長軸に沿ったx軸と、ナノワイヤ(100)の該長軸に垂直な動径ベクトルであるrとを有した円筒座標を、選択することができる。信号放射電力Φの小ささを考慮して、前記流量を、次のように表すことができる。
【0025】
【数2】

更にまた、式1を、次の形に書き換えることができる。
【数3】

ここで、σ=5.67×10−8W/m(ステファン・ボルツマン定数)であり、K及びKairは、それぞれ、ナノワイヤ(100)の半導体コアの熱伝導率、及び空気の熱伝導率であり、及び、Lairは、空気中の熱拡散の長さである。
【数4】

ここで、Cair及びρairは、それぞれ、空気の特定の熱及び密度である。ボロメータの不活発さ(inertia)は、ナノワイヤ(100)の端部を通じた熱拡散により決定されるということを、評価(推定)が示している。従って、式3を、次のように表すことができる。
【0026】
【数5】

50μmの長さを有したシリコンナノワイヤ(100)の場合には、
【数6】

である。典型的なリフレッシュレートは、40Hzであるので、式5から、ボロメータナノワイヤ(100)の温度変動は、次のようになる。
【数7】

半径r=30nmを有するナノワイヤ(100)の抵抗は、10Ω/cmを越える可能性がある。長さL=50μmのナノワイヤ(100)は、抵抗RNW≧5×10Ωを有する。全抵抗は、R=RNW/Nである。ナノワイヤ抵抗の、典型的な温度依存性は、次のように表される。
【数8】

電圧変動は、次式により提供される。
【数9】

式6及び式7に従って、電圧及び電流感度は、次式に等しい。
【数10】

典型的なシリコンパラメータを用いると、
【数11】

従って、N>15の場合には、電流感度S>9である。相対的に、光検出器及びp-i-nダイオードの電流感度は、次式に等しい。
【数12】

従って、3〜5μm、η≦0.8の範囲内のIR検出器の場合には、S≦4 A/Wにする。それ故に、N>16での黒く染められたボロメータナノワイヤ(100)に基づく、本光検出器(200)は、従来の光検出器及びp-i-nダイオードを上まわって、4倍よりも多く増加するSを提供する。
【0027】
ボロメータナノワイヤ(100)の検出能(detectivity)を、エネルギーの平均自乗変動(mean-square fluctuation)を用いて推定することができる。エネルギーの該平均自乗変動は、標準的な熱力学に従って、次のように表される。
【数13】

エネルギー変動のばらつき(分散)は、次式により与えられる。
【数14】

(r=10−4秒、及びω<10Hz) 続いて、式12及び式7から次式が得られる。
【数15】

(cmHz1/2/Wの単位における)検出能は、次式により決定される。
【0028】
【数16】

L=L=3×10−5m、r=30nm、Φ=2[W/m.K]、T=200K、η=0.8においては、
【数17】

が得られる。このことは、光子トラップ(205)による集光に起因して、シリコンボロメータナノワイヤ(100)に基づく光検出器(200)が、Background Limited Photodetection(BLIP)の限界に近い検出能を有することができるということを意味する。ここで、
【数18】

重要なことには、光子トラップ(205)内において配置されたボロメータナノワイヤ(100)を有する光検出器(200)は、8〜12μmの範囲を含む全ての波長における熱放射を吸収することができる。従って、本ボロメータベースの光検出器を用いて、0.5μm〜12μmの波長範囲内における電磁放射線を検出することができ、そのことにより、T=300Kの常温においてでさえ、D=(2〜3)×1010に対応するBLIP検出能が可能になる。
【0029】
次に図3を参照すると、半導体基板(310)上に作られた光子トラップ(305)内において配置された複数の黒く染められたボロメータナノワイヤ(100)を含む別の例示的な光検出器(300)の側面断面図が示されている。該ボロメータナノワイヤ(100)は、光子トラップ(305)におけるドープされた第1の壁(315)と第2の壁(320)との間につるされている。図2内に示された光検出器(図2の200)と同様に、酸化物層(325)によって、光子トラップ(305)の第1及び第2の壁(315、320)は、互いに電気的に絶縁されており、及び、半導体基板(310)から絶縁されている。反射層(330)がまた、キャビティの底と、第1及び第2の壁(315、320)の内面とを含めて、光子トラップ(305)の該キャビティの内面上に配置されている。第1及び第2の壁(315、320)は、図2に関して上記に開示した任意の対策を利用することによって、互いに電気的に絶縁されたままであることが可能である。図2に示された光検出器(図2の200)とは異なり、この例の光検出器(300)の図示された壁(315、320)が両方とも、半導体基板(310)に対して角度付けられており、それにより、少なくとも2つの傾斜した鏡が形成されている。
【0030】
ボロメータナノワイヤ(100)の抵抗における変化を監視することによって、電磁放射線を検出することができる。例えば、電圧源(350)を用いて、ナノワイヤ(100)のどちらの端部にも接続された2つの端子間に既知の電圧差を印加することができる。この例では、ドープされた壁(315、320)は、ナノワイヤ(100)に電気的に接続されており、電極として機能する。ナノワイヤ(100)によって吸収される放射エネルギーの量の変化が、ナノワイヤ(100)の抵抗に変化を生じさせることとなり、そのことが更に、端子に印加されている既知の電圧差の結果として、2つの端子間に流れる電流に変化を生じさせることとなる。電流の電気的特性におけるこれらの変化を、計測器(355)により測定することができる。この例では、計測器(355)は、電圧源(350)と直列に接続された電流メータである。回路を通じて流れるその測定された電流を、次いで用いて、ナノワイヤ(100)の抵抗における変化を決定することができ、ひいては(その延長線上において)、ナノワイヤ(100)により吸収された放射電磁エネルギーの量を決定することができる。追加的には或いは代替的には、本明細書内において記載された原理の特定用途に適合することができるように、任意の他の計測器(355)を用いて電流の特性の変化を測定することができる。
【0031】
次に図4を参照すると、別の例示的な光検出器(400)が示されている。以前の例と同様に、光検出器(400)は、半導体基板(410)上に作られた光子トラップ(405)内において配置された複数の黒く染められたボロメータナノワイヤ(100)を含む。該ボロメータナノワイヤ(100)は、光子トラップ(405)におけるドープされた第1の壁(415)と第2の壁(420)との間につるされている。酸化物層(425)によって、光子トラップ(405)の第1及び第2の壁(415、420)は、互いに電気的に絶縁されており、及び、半導体基板(410)から絶縁されている。反射層(430)がまた、キャビティの底と、第1及び第2の壁(415、420)の内面とを含めて、光子トラップ(405)の該キャビティの内面上に配置されている。第1及び第2の壁(415、420)は、図2に関して以前に記載した任意の対策を利用することによって、互いに電気的に絶縁されたままとすることができる。
【0032】
この例の光子トラップ(405)は、光子トラップ(405)のキャビティの上に配置された上部反射器(445)を有した開放型反射性キャビティを含む。上部反射器(445)の少なくとも下側には、放射電磁エネルギーを光子トラップ(405)のキャビティ内へと戻すように反射させるよう構成された上部鏡を形成する反射層(450)を含めることができ、それにより、ボロメータナノワイヤ(100)近辺内へと該電磁エネルギーが向けられる回数が増加する。
【0033】
次に図5を参照すると、別の例示的な光検出器(500)が示されている。この光検出器(500)は、この例のボロメータナノワイヤ(100)が、底部電極(505)から上部反射器(445)へと上に向かって延在している(上部反射器はまた、第2の電極として機能する)ということを除いて、図4の光検出器に類似している。
【0034】
次に図6を参照すると、別の例示的な光検出器(600)が示されている。以前の例と同様に、光検出器(600)は、半導体基板(610)上に作られた光子トラップ(605)内において配置された複数の黒く染められたボロメータナノワイヤ(100)を含む。該ボロメータナノワイヤ(100)は、光子トラップ(605)におけるドープされた第1の壁(615)と第2の壁(620)との間につるされている。光子トラップ(605)のキャビティの内面上に反射層(630)が配置されており、上部反射器(645)が、光子トラップ(605)のキャビティの上に配置されている。第1及び第2の壁(415、420)は、図2に関して以前に記載した任意の対策を利用することによって互いに電気的に絶縁され得る。
【0035】
追加的には、光子トラップ(605)キャビティの反射性の内面と、上部反射器(645)の反射面とには、1つか又は複数のV型溝(650、655、660)を含めることができる。該V型溝(650、655、660、665)は、ボロメータナノワイヤ(100)に向って放射電磁エネルギーが反射することの助けとなることができる。
【0036】
図7は、図6の光検出器に類似したある例示的な光検出器(700)を示す。この光検出器(700)の上部反射器(645)の反射面(750)は、形状が円錐形である。
【0037】
任意の様々なジオメトリ、寸法、及び材料が、本明細書における原理に一致する光子トラップにおいて使用され得るということが理解されるべきである。例えば、円錐形の屈折器及び/又は反射器と、反射面内において変動する回折格子又は溝と、つるされた全内面屈折器と、これらに類するものとを含む、より複雑なトラップが、本明細書内において記載された原理のある特定用途に最も適合することが可能であるように使用され得る。
【0038】
例示的な方法
次に図8を参照すると、光を検出する例示的な一方法(800)の流れ図が示されている。該方法(800)を、例えば、1つか又は複数の電子機器によって実施することができる。該1つか又は複数の電子機器は、光子トラップ内において配置された1つか又は複数の黒く染められたナノワイヤを含んでいる少なくとも1つの光検出器を含む。
【0039】
方法(800)は、少なくとも1つの黒く染められたナノワイヤを有した光子トラップ内へと放射エネルギーを受け取り(ステップ805)、及び、該少なくとも1つのナノワイヤの抵抗を測定すること(ステップ810)を含む。例えば、前記少なくとも1つのナノワイヤの両端に、ある既知の電圧差を印加して(ステップ815)、該既知の電圧差によって結果として生じる、該ナノワイヤを通じて流れる電流を、測定する(ステップ820)ことによって、前記少なくとも1つのナノワイヤの抵抗を測定することができる(ステップ810)。該電流は、該ナノワイヤの抵抗に線形に関連付けられている。
【0040】
前記少なくとも1つのナノワイヤの抵抗か又は電流が測定されると(ステップ810)、前記少なくとも1つのナノワイヤによって吸収された放射エネルギーの相対量が、該測定された抵抗と、該ナノワイヤの固有の物理特性とから決定され得る(ステップ825)。
【0041】
上記の説明は、記載した原理の実施形態及び例を図示し及び説明するためにのみ提示されてきた。この説明は、網羅的となることを、或いは開示した任意の正確な形態にこれらの原理を限定することを意図していない。上記教示を踏まえて多くの修正及び変形形態が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子トラップ(205、305、405、605)内において少なくとも部分的に配置された少なくとも1つのボロメータナノワイヤ(100)を備える光検出器(200、300、400、500、600、700)であって、
遠赤外線から可視光までを吸収するよう構成された黒く染められた表面(110)を前記ナノワイヤ(100)が含むことからなる、光検出器。
【請求項2】
シリコン、ゲルマニウム、及びシリコンとゲルマニウムの合金、のうちの少なくとも1つを、前記ナノワイヤ(100)が含むことからなる、請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記光子トラップ(205、305、405、605)が、開放型反射性キャビティを含むことからなる、請求項1又は2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)に対して傾斜した側部反射器と、円錐形の反射器と、少なくとも1つのV型溝を有する反射器と、のうちの少なくとも1つを、前記開放型反射性キャビティが含むことからなる、請求項3に記載の光検出器。
【請求項5】
前記キャビティの上に配置された反射器(445、645)であって、前記キャビティ内へと光を反射させるよう構成された該反射器(445、645)を、前記光子トラップ(205、305、405、605)が更に含むことからなる、請求項3又は4に記載の光検出器。
【請求項6】
前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)が、前記反射性キャビティ上に水平につるされていることからなる、請求項3乃至5のいずれかに記載の光検出器。
【請求項7】
前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)は、前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)の第1の端部に配置された第1の電極と、前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)の第2の端部に配置された第2の電極とに電気的に結合されていることからなる、請求項1乃至6のいずれかに記載の光検出器。
【請求項8】
カーボンブラック層と、遠赤外線から可視光までを吸収するよう構成された光を吸収する類のものが組み込まれた状態のポリマー層と、のうちの少なくとも1つの層を、前記黒く染められた表面(110)が含むことからなる、請求項1乃至7のいずれかに記載の光検出器。
【請求項9】
光検出器(300)であって、
反射性キャビティの対向する両側部上に配置された第1及び第2の電極(315、320)と、
前記反射性キャビティ内において少なくとも部分的に配置された複数のナノワイヤ(100)であって、前記第1の電極(315)に電気的に結合された第1の端部と、前記第2の電極(320)に電気的に結合された第2の端部と、遠赤外線から可視光までを吸収するよう構成された黒く染められた表面(110)とを、前記ナノワイヤ(100)の各々が含むことからなる、複数のナノワイヤと、
前記第1の電極(315)と前記第2の電極(320)との間の電圧差を印加するよう構成された電圧源(350)と、
前記第1の電極(315)と前記第2の電極(320)との間を流れる電流の少なくとも1つの電気的特性を監視して、前記少なくとも1つの電気的特性から、前記ナノワイヤ(100)によって吸収された光の量を決定するよう構成された計測器(355)
とを備える、光検出器。
【請求項10】
シリコン、ゲルマニウム、及びシリコンとゲルマニウムの合金、のうちの少なくとも1つを、前記ナノワイヤ(100)が含むことからなる、請求項9に記載の光検出器。
【請求項11】
前記電気的特性は、前記電流の、測定された大きさであることからなる、請求項9又は10に記載の光検出器。
【請求項12】
前記反射性キャビティの上に配置された上部反射器(445、645)を更に備える、請求項9乃至11のいずれかに記載の光検出器。
【請求項13】
放射エネルギーを検出する方法であって、
光子トラップ(205、305、405、605)内において少なくとも部分的に配置された少なくとも1つのナノワイヤ(100)を含む前記光子トラップ(205、305、405、605)内へと前記放射エネルギーを受け取り、ここで、前記ナノワイヤ(100)は、遠赤外線から可視光までを吸収するよう構成された黒く染められた表面(110)を有しており、
前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)の抵抗を測定し、及び、
前記測定した抵抗から、前記少なくとも1つのナノワイヤ(100)によって吸収された光の量を決定する
ことを含むことからなる、方法。
【請求項14】
前記光子トラップが、反射性キャビティを含むことからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反射性キャビティの上に配置された上部反射器(445、645)であって、放射電磁エネルギーを前記キャビティ内へと向けるよう構成された該上部反射器を、前記光子トラップが更に含むことからなる、請求項13又は14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−506056(P2012−506056A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533190(P2011−533190)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/037019
【国際公開番号】WO2010/047844
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511076424)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (155)
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
【Fターム(参考)】