説明

ナノ分散体

本発明は、水混和性溶媒および水を含んでなるビヒクル中に分散されている平均サイズ300nm未満のナノ粒子を含んでなるナノ分散体であって、前記ナノ粒子が、1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなるナノ分散体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タキサン誘導体の「ナノ分散体(nanodispersion)」およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液に難溶性または不溶性である多数の医薬品がある。そのような薬剤は、低い経口バイオアベイラビリテイを持つ点で、または特に静脈内経路による薬物送達のためにそれらを処方する点で、難題を与える。薬剤が静脈内投与される場合、粒子は、塞栓を起こさずに毛細血管を無事に通るよう十分小さくなくてはならない。静脈内投与では、溶液、エマルション、リポソーム、ナノ分散体などの形態で薬剤を投与するのが安全であると認識されている。特に疎水性薬剤のために薬剤送達系を処方する一方で満たされなければならない他の要件は、製剤が物理的に安定でなくてはならず、室温で所望の期間保存する時に、薬剤の実質的な凝集も結晶化もなく製剤の外観の変化もないことである。
【0003】
難溶性薬剤の例には、その抗ガン活性のためよく知られているタキサン誘導体がある。タキサン誘導体またはタキソイドは、主にタイヘイヨウイチイ、タキサス・ブレビフォリア(Taxus brevifolia)の樹皮から誘導される複雑なジテルペノイド天然生成物であり、基本的にタキサン骨格を有する。タキサンは、種々の化学療法薬剤の製造に使用されてきた。現在、2種のタキサン誘導体パクリタキセルおよびデセタキセルが、効力のある抗ガン剤として市販されている。
【0004】
タキサン誘導体は、水および薬剤的に許容できるほとんどの溶媒に対する溶解度が非常に低く、そのため患者への投与が制限される。この望ましくない固有の性質により、市販のパクリタキセル注射液であるTAXOL注射液は、クレモホール(商標)EL(ポリエトキシ化ヒマシ油)および無水アルコールの非水性溶液として処方される。しかし、クレモホール(商標)ELなどの多量の可溶化剤の使用は、重篤なまたは致死的な過敏反応および昇圧反応、徐脈性不整脈、貧血、好中球減少、および/または末梢神経疾患などの種々の有害作用につながる。したがって、パクリタキセルを投与される患者は全て、ステロイド、抗ヒスタミン剤、およびH2受容体拮抗剤を前投与(premedicated)され、次いでパクリタキセルが少なくとも3時間以上かけて非常にゆっくりと注入される。
【0005】
Taxol製剤に関連するこれらの問題を鑑み、研究者らは、クレモホールELなしにTaxol製剤を調製しようと試みた。
【0006】
米国特許第6537579号は、パクリタキセルなどの実質的に水に不溶性の薬理学的に活性な薬剤の組成物を記載しており、その中で、薬理学的に活性のある薬剤はタンパク質(可溶化剤として作用)により被覆された懸濁粒子の形態で存在する。詳細には、生体適合性のある分散媒体中のタンパク質および薬理学的に活性な薬剤は、従来の界面活性剤が全く存在せず、粒子用のポリマー性コア材料も全く存在しない状態で、高剪断にかけられる。この手順は、直径が約1ミクロン未満の粒子を生み出す。前記特許により製造された粒子系は、タンパク質により被覆された水不溶性薬剤のナノ粒子および薬理学的に活性な薬剤の分子が結合している遊離タンパク質を含んでなる再懸濁可能な乾燥粉末に変換できる。
【0007】
米国特許第6017948号は、ポリエトキシ化ヒマシ油(クレモホール)が組成物から除外されるという条件で、薬剤的に許容できる水混和性の非水性溶媒(N−メチルピロリドンのような)中のパクリタキセルの溶液の形態のパクリタキセルを含んでなり、薬剤的に許容できる可溶化剤(トリアセチンなど)をさらに含んでなる組成物に関する。好ましい態様によれば、多量の溶媒、すなわち4000mgのNMP(実施例1)または2000mgのNMPと2000mgのエタノールの組み合わせ(実施例2)が、穏やかな攪拌下で10mgのパクリタキセルの可溶化に使用された。治療上有効な量の薬剤をそのような組成物により送達する場合、過剰量のエタノール、非水溶性溶媒、または可溶化剤が体内へ入ることになるだろう。
【0008】
米国特許第6046230号は、パクリタキセルおよび2種の可溶化剤、オキシエチレンソルビトールオレアートおよび(オキシエチレングリコール)15−20脂肪酸モノエステルを、ポビドンおよびポリエチレングリコールなどの追加の成分と共に含む安定な注射製剤に関する。前記製剤に使用される主な可溶化剤である、パームオレイン誘導オレイン酸のエチレンオキシド付加生成物であるポリエトキシ化ソルビトールオレイン酸ポリエステルは、10℃未満の温度で凝固する固有の性質があり、単独使用の場合パクリタキセルの可溶化には不適である。しかし、補助的な可溶化剤ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステルと組み合わされると、2種の可溶化剤は共に、水および無水アルコールへの良好な溶解度を示し、低温においても流体相のままである。そのため、2種の可溶化剤を一緒に使用することが必須である。また、必須の条件として、所望の特性を満たす可溶化剤のHLB値が、15もの高値であるが13以上でなければならない。得られる製剤は溶液である。
【0009】
国際公開第2006/133510号は、ドセタキセルまたはその薬学的に許容できる塩;1種以上のグリコールおよび薬剤的に許容できる非水性溶媒系を含んでなる非経口投与用の液体医薬製剤を開示しているが、前記製剤は2.5から7.0の範囲のpH計の示度を有する。前記特許の態様は、毒性の副作用を生じうる非常に多量の界面活性剤(約25v/v%のポリソルベート80または30v/v%のクレモホール)の使用を含む。前記出願は、製剤の効力および毒性プロファイルを開示していない。さらに、前記510号出願により開示される製剤は、注入希釈剤(0.9%NaClまたは5%ブドウ糖溶液)との混合時に注入溶液を生じる非水性溶媒系に溶けている薬剤の溶液である。新規薬剤送達系またはナノ分散体は、このプロセス中のどこにも形成されていない。また、注入希釈剤による希釈後の製剤溶液の安定性が約4から6時間の非常に短い時間であり、その投与効率を限定することがある。
【0010】
米国公開特許第2002/0058060号(以下で、060号特許出願と称する)は、疎水性物質および相転移温度の異なる2種のリン脂質およびコレステロールのようなリポソーム形成物質および親水性ポリマー修飾脂質を含むリポソームを開示している。薬剤とリン脂質およびリポソーム形成物質との比を変えて、異なるリポソーム製剤が得られる。060号特許出願は、体内への過剰量の脂質の注射がある程度の毒性につながるので、使用する脂質の総量を減らすように、2つの特定の種類のリン脂質の使用により、薬剤:脂質比が高いタキサンのリポソームを処方するいくつかの試みを示している。
【0011】
このように、タキサン組成物の処方に関連する大きな問題が、以下のようなタキサンの疎水性であることは従来技術から明らかである:
(a)可溶化された形態の前記薬剤を含み、所望の期間まで薬剤の実質的な凝集または結晶化も製剤の外観の変化も全くない安定した組成物を処方するのが困難であり、
(b)多量の可溶化剤、リン脂質、および界面活性剤の使用を必要とする。
【0012】
また、TAXOL(クレモホールおよびアルコール中のパクリタキセルの市販溶液)の毒性試験は、米国特許第6753006号に開示されているとおり、7.5〜12.0mg/kgの低いLD50値を示し、溶液の形態で投与される薬剤の治療指数が非常に低く、中程度の投与量ですら重篤な副作用および中毒反応を示すことがあることを示す。
そのため、以下のようなタキサン誘導体の注射用製剤が必要とされている:
(a)多量の賦形剤の使用を回避し、
(b)クレモホールの使用を回避し、
(c)LD50値が高く、溶液形態の薬剤の投与に関連する毒性副作用を最低限にする新規送達系により薬剤を送達し、
(e)その疎水性に関連した薬剤の限界を克服し、投与の間および保存の間の所望の期間、薬剤の実質的な凝集または結晶化も製剤の外観の変化もなく安定である。
【0013】
本発明者らは、水混和性溶媒および水を含んでなるビヒクルに分散され平均サイズが300nm未満であり、タキサン誘導体、ポリマー、および非常に少量の界面活性剤を含んでなるナノ粒子を含んでなるナノ分散体を見出した。本発明は、クレモホールの使用を回避し、はるかに低減された量の添加剤(リン脂質)を使用し、ナノ粒子の形態で薬剤を送達し、そのように薬剤の投与に関連した中毒反応および副作用を最低限にする製剤を提供する。本発明の製剤に観察されるLD50値は、342.5mg/kgであり、米国特許第6753006号に開示される市販のTAXOL(登録商標)溶液の7.5〜12.0mg/kgというLD50値よりはるかに大きい。また、本発明の製剤は安定であり、投与の間および保存の間の所望の期間、薬剤の実質的な凝集または結晶化も製剤の外観の変化も全くない。
【発明の目的】
【0014】
本発明の目的は、非経口経路による投与の前およびその間の所望の期間安定である、タキサン誘導体のナノ分散体を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、室温で4時間より長く保存する時に凝集の兆候も外観の変化も全く示さないナノ分散体を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、化学的に安定で、室温で少なくとも3ヶ月保存する時に凝集の兆候も外観の変化も全く示さず、水性液体ビヒクルによる希釈時に安定なナノ分散体を生じる、タキサン誘導体のプレコンセントレートを提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、2つの容器を有するキットであって、第1容器が水混和性溶媒中のタキサン誘導体のプレコンセントレートを含んでなり、第2容器が水性液体ビヒクルを含んでなり、第2容器の内容物を第1容器の内容物に加え、またはその逆に加えると、穏やかな攪拌または振盪を加えるのみで静脈内投与に好適な安定なナノ分散体が形成されるキットを提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、3つ以上の容器、例えば2つの容器を有するキットであって、第1容器が凍結乾燥された形態のナノ分散体を含んでなり、第2容器が水性液体ビヒクルを含んでなり、第2容器の内容物を第1容器の内容物に加え、またはその逆に加えると、穏やかな攪拌または振盪を加えるのみで静脈内投与に好適な安定なナノ分散体が形成されるキットを提供することにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、ガンを治療する方法であって、前記ナノ分散組成物をその必要のある患者に投与する工程を含む方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、水混和性溶媒および水を含んでなるビヒクル中に分散された平均粒径が300nm未満のナノ粒子を含んでなるナノ分散体であって、前記ナノ粒子が1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなるナノ分散体を提供する。
【0021】
本発明は、水混和性溶媒中に、1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなる溶液であって、水性液体ビヒクルによる希釈時にナノ分散体を生じる溶液も提供する。
【0022】
本発明は、1種以上のタキサン誘導体、ステロールまたはその誘導体またはその塩と脂肪酸またはその塩との混合物を含んでなる界面活性剤、および、ポリマーを含む、平均粒径が300nm未満のナノ粒子も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例27に詳述される試験に従い、対照試料、参照試料(ABRAXANE(登録商標))、および試験試料(本発明の実施例12aの組成物)のメスのBalb/cヌードマウスに移植したヒト乳ガン異種移植片(MX−1)の時間(日)による腫瘍体積の変化の比較評価である。
【図2】実施例28に詳述される試験に従い、対照試料、参照試料(ABRAXANE(登録商標))、および試験試料(本発明の実施例9の組成物)のメスの無胸腺ヌードマウスに移植したヒト乳ガン異種移植片(MX−1)の時間(日)による腫瘍体積の変化の比較評価である。
【図3】実施例29に詳述される試験に従い、対照試料、試験試料(本発明の実施例9の組成物)、および2種の参照試料(ABRAXANE(登録商標)およびONCOTAXEL(登録商標))のオスの無胸腺ヌードマウスに移植したヒト結腸ガン異種移植片(HT−29)の時間(日)による腫瘍体積の変化の比較評価である。
【図4】図4−aは、開始時の実施例9のナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムであり、図4−bは、室温で24時間保存された実施例9パクリタキセルのナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムである。
【図5】図5−aは、開始時の実施例24Dのナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムであり、図5−bは、室温で8時間保存された実施例24Dのドセタキセルのナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、水混和性溶媒および水を含んでなり水性ビヒクル中に分散された平均粒径が300nm未満のナノ粒子を含んでなるナノ分散体であって、前記ナノ粒子がタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩と、ステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含むナノ分散体を提供する。
【0025】
本発明は、水混和性溶媒中に、タキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩と、ステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含む溶液であって、水性ビヒクルにより希釈するとナノ分散体が得られる溶液も提供する。
【0026】
本発明は、タキサン誘導体、ステロールまたはその誘導体またはその塩と、脂肪酸またはその塩との混合物を含む界面活性剤、およびポリマーを含む、平均粒径が300nm未満のナノ粒子にも関する。本発明のナノ分散体は、クレモホールなどの毒性賦形剤を含まず、タキサン誘導体の安定なナノ分散体の処方に要するはるかに低減された量の添加剤(界面活性剤およびリン脂質など)の使用を含み、それにより関連する中毒反応を最低限にする。
【0027】
ナノ粒子またはナノサイズの粒子は、それ自体効率よい薬剤送達の点で多くの利点を与える。送達ビヒクル中への薬剤の取込みまたはビヒクルへの薬剤の付着のいずれによっても、薬剤の遊離形態での投与に比べ多くの利点が得ることが可能であることが理解された。ビヒクル中への薬剤の取込みは、組織特異的分布、特に対象とする特定の組織中または疾患部位での優先的な蓄積、特定の細胞型への薬剤の標的化、血液成分との相互作用の減少、早期の分解からの薬剤の保護増大、および循環時間の増加に影響を与えうる。ナノ粒子は、そのような重要な薬物送達ビヒクルの1つである。ナノ粒子は、巧みに調節された特異性を有し、所望の位置または作用標的部位に、高濃度の医薬品を送達できる(Kayser et al, Current Pharmaceutical Biotechnology, 2005, 6, page number 3-5)。標的化薬剤送達は多くの用途で重要であり、特に薬剤が全身に送達される時に薬剤の毒性が問題になる場合に重要である。標的化薬剤送達は、他の有益な特徴の中でも、毒性の副作用を無くすかまたは少なくとも最低限にするのに役立ち、要求される投与量を低くするのに役立つことがある。作用部位に薬剤を標的化する種々の手法がある。非常に単純であるが、その適用性において限定されている手法は、標的部位での直接注射であり、例えば腫瘍組織への注射である。別な手法は、種々の投与経路用の特別なキャリア系(例えば局所送達用のトランスフェロソーム)の使用であり、経口および非経口投与用のミクロスフィアまたはナノ粒子である。非経口経路のうち、静脈内注射が最も利用頻度が高い。静脈内投与されると、粒子は肝臓および脾臓マクロファージにより認識され、選択的に肝臓マクロファージにより取り込まれる。この作用を利用して、薬剤を充填したキャリアを、肝臓および脾臓に、または一般的にマクロファージに標的化し、MPS(単核食細胞系)またはRES(細網内皮系)の感染症を治療できるが、この標的現象は、「受動的標的化」と呼ばれることが多い。ポリエチレングリコール(PEG)部分またはPoloxamine908などのPEG鎖含有ポリマーによりキャリアの表面を修飾して、MPS/RES認識を逃れることが可能である。これにより、静脈内注射時に、血流中のキャリアの循環期間が延びる。正常で長時間循環するキャリアは、一般的にリガンドと呼ばれる、標的化部分(レシチンまたはモノクローナル抗体またはマンノース/ガラクトースのような糖類)を備えることがある。このようなリガンドは、薬剤含有キャリアを、リガンドの適切な受容体を持つ所望の標的細胞に向ける。標的化リガンドの使用により得られるこの部位特異的送達は、能動的プロセスを含む。そのためそれは「能動的標的化」とも呼ばれる。特定の大きさを持つナノ粒子は、腫瘍生物学の特徴を利用する現象により、固形腫瘍を受動的に標的にできる。腫瘍組織には、血管の漏れ、透過性の増大、およびリンパ排液の低下がある。対照的に、正常組織中の血管内皮細胞は、腫瘍組織に比べ、ナノ粒子の透過性が低い。これにより、ナノキャリアが腫瘍中に蓄積できる。この効果は、血管透過性と滞留性亢進効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)すなわちEPR効果として知られている(Nanoparticle Technology for drug delivery, edited by Ram B. Gupta and Uday B. Kompella, published by Taylor and Francis, 2005, page 539)。また、200nm未満のナノ粒子は、細網内皮系を巧みに避け、長時間循環したままである(Naoparticle Technology for drug delivery, edited by Ram B. Gupta and Uday B. Kompella, published by Taylor and Francis, 2005, page 540)。
【0028】
本明細書で使用されるナノ粒子という用語は、ナノメートル程度の制御された寸法を持つ任意の粒子を意味する。本発明で特許請求されるナノ粒子は、ポリマーナノ粒子(薬剤を閉じ込めるポリマーのマトリックス)、および/またはポリマーナノベシクル(薬剤をカプセル化するポリマー安定化ナノサイズベシクル)、および/またはポリマーナノカプセル(コアの薬剤を取り巻くポリマーメンブレン)、および/または界面活性剤により安定化された薬剤のナノサイズ粒子、および平均サイズ300nm未満の同様な物でよい。ナノ粒子の粒径は、粒径を測定し表現する従来の方法を利用して測定されるが、マルバーン粒径分析、ふるい分け、光散乱光学顕微鏡測定、画像分析、沈降法、および当業者に公知の他の方法がある。粒径分布の情報は、マルバーン粒径測定から生じるものなど、D10、D50、およびD90の値から得ることができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、出願者らは、平均粒径が300nm未満のナノ粒子を含んでなるナノ分散体による薬剤の送達が、標的とする腫瘍組織および細胞中での薬剤の内在化および蓄積を増大させると考えている。そのような増大した内在化レベルは、ガンに関連した腫瘍を治癒するための効力ある治療戦略を与える。
【0029】
本発明の一態様によれば、ナノ粒子の粒径は10nmから275nmの範囲である。本発明の好ましい態様によれば、粒径は200nm未満である。本発明の特に好ましい態様によれば、粒径は10nmから200nmの範囲である。
【0030】
本発明は、水混和性溶媒および水を含んでなるビヒクル中に分散された平均サイズが300nm未満のナノ粒子を含んでなるナノ分散体であって、前記ナノ粒子が、1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなるナノ分散体を提供する。
【0031】
本発明は、水混和性溶媒中に、1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含んでなる界面活性剤を含む溶液であって、水性液体ビヒクルによる希釈時にナノ分散体を生じる溶液も提供する。
【0032】
本発明のナノ粒子は、平均粒径が300nm未満であり、前記粒子は、1種以上のタキサン誘導体、ステロールまたはその誘導体またはその塩と脂肪酸またはその塩との混合物を含んでなる界面活性剤、およびポリマーを含んでなる。
【0033】
タキサン誘導体は、本発明の態様に言及されるとおり、基本的にタキサン骨格を有する化合物であり、イチイの木、タキサス・ブレビフォリア(Taxus brevifolia)の樹皮などの天然源から主に誘導される、または細胞培養から、もしくは化学合成された分子から誘導される複雑なジテルペノイド天然生成物である。タキサンクラスの薬剤の主な作用機序は、微小管機能の阻害である。微小管中のGDP結合チューブリンの安定化により阻害を行う。微小管は細胞分裂には必須であり、したがってタキサンはこれを停止し、「凍結された有糸分裂」(frozen mitosis)と呼ばれる。
【0034】
本発明の組成物に使用されるこの群の最も有名な代表物には、パクリタキセルおよびデセタキセルおよびそれらの薬学的に許容できる塩、誘導体、アナログ、および異性体があり、例えば、7−エピパクリタキセル、t−アセチルパクリタキセル、10−デスアセチル−パクリタキセル、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル、7−キシロシルパクリタキセル、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル、7−L−アラニルパクリタキセルなどおよびそれらの混合物がある。
【0035】
パクリタキセルは、抗腫瘍活性のある天然生成物である。パクリタキセルは、タキサス・ブレビフォリア(Taxus brevifolia)および/またはタキサス・バッカータ(Taxus baccata)から半合成プロセスにより得られる。パクリタキセルの化学名は、(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンの5α,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4,10−ジアセタート2−ベンゾアート13−エステルである。パクリタキセルは、TAXOL注射液として米国で市販されている。パクリタキセルは、進行性卵巣ガンの治療の第1選択療法および術後療法として指示される。第1選択療法として、パクリタキセルはシスプラチンと組み合わせて指示される。パクリタキセルは、標準的なドキソルビシン含有多剤併用化学療法に続いて投与される、リンパ節転移陽性乳ガンの補助療法にも指示される。パクリタキセルは、転移性疾患の多剤併用療法の失敗または術後補助化学療法6ヶ月以内の再発の後、乳ガンの治療にも指示される。パクリタキセルは、シスプラチンと組み合わされて、治癒の可能性のある手術および/または放射線治療の候補者でない患者の非小細胞肺ガンの第1選択治療にも指示される。パクリタキセルは、AIDS関連カポジ肉腫の第2選択治療にも指示される。
【0036】
ドセタキセルは、タキソイド類に属する他の抗腫瘍薬である。イチイの木の再生可能な針状葉バイオマスから抽出された前駆体により始まる半合成法により調製される。ドセタキセルの化学名は、5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4−アセタート2−ベンゾアートの(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン、N−tert−ブチルエステル、13−エステル、三水和物である。ドセタキセルは、TAXOTERE(登録商標)注射濃縮液として米国で市販されている。ドセタキセルは、単剤として、先の白金系化学療法が失敗した後の局所的に進行した、または転移性の非小細胞ガンの患者の治療に指示される。ドセタキセルは、シスプラチンと組み合わされて、切除不能か、局所的に進行した、または転移性の非小細胞肺ガンの患者であって、この病態の化学療法を受けていない患者の治療に指示される。ドセタキセルはプレドニゾンと組み合わされて、アンドロゲン非依存性(ホルモン不応性)転移性前立腺ガンの患者の治療に指示される。ドセタキセルはシスプラチンおよびフルオロウラシルと組み合わされて、進行性疾患のための先の化学療法を受けていない、食道胃接合部の腺ガンを含む進行性胃腺ガンの患者の治療に指示される。ドセタキセルはシスプラチンおよびフルオロウラシルと組み合わされて、頭部および頸部の手術不能な局所的に進行した扁平細胞ガンの患者の導入治療に指示される。本発明の態様は、約0.001mg/mlから約15.0mg/ml、より好ましくは約0.1mg/mlから約10.0mg/ml、特に好ましくは約1.5mg/mlから約5.0mg/mlの量のパクリタキセルを含んでなる。ドセタキセルは、本発明の態様によれば、約0.001mg/mlから約10.0mg/ml、より好ましくは約0.1mg/mlから約1.0mg/ml、特に好ましくは約0.3mg/mlから約0.7mg/mlの量で使用される。
【0037】
ナノ粒子を含んでなるナノ分散体は、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、5−HT拮抗剤、H受容体拮抗剤、ビタミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される追加の治療上活性な薬剤をさらに含んでなっていてよい。本発明の組成物に使用できる抗炎症剤は、ステロイド性抗炎症剤および非ステロイド性抗炎症剤から選択できる。本発明の態様は、好ましくはグルココルチコイドなどのステロイド性抗炎症剤を含んでなる。本発明の組成物に使用できるグルココルチコイドの例は、コルチゾールまたはヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ブデゾニド、トリアミシノロンなどおよびそれらの混合物から選択できる。本発明の好ましい態様によれば、デキサメタゾンが抗炎症剤として使用される。本発明の組成物に使用できる抗ヒスタミン剤またはヒスタミン拮抗剤は、エチレンジアミン(メピラミン、アンタゾリン)、エタノールアミン(ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート)、アルキルアミン(フェニラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、トリプロリジン)、ピペラジン(シクリジン、クロルシクリジン、ヒドロキシジン、メクリジン)、三環系および四環系(プロメタジン、アリメマジン、シプロヘプタジン、アザタジン、ケトチフェン)などの第一世代抗ヒスタミン剤;アクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、ロラチジン、ミゾラスチン、テルフェナジン、アゼラスチン、レボカバスチン、オラパチジン(olapatidine)などの第二世代抗ヒスタミン剤;レボセチリジン、デスロラチジン、フェキソフェナジンなどの第三世代抗ヒスタミン剤、およびそれらの混合物から選択できる。本発明の組成物に使用可能な5−HT拮抗剤は、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、シランセトロンなど、およびそれらの混合物から選択できる。本発明の組成物に使用可能なH受容体拮抗剤またはH拮抗剤は、シメチジン、ラニチジン、ニザチジン、ファモチジン、ロキサチジン、プリマミド、メチアミドなど、およびそれらの混合物から選択できる。本発明の組成物に使用可能なビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKなどの脂溶性ビタミンおよびビタミンCおよびビタミンB、例えばビタミン(B1:チアミン;B2:リボフラビン;B3:ナイアシン;B5:パントテン酸;B7:ビオチン;B9:葉酸;B12:シアノコバラミン)などの水溶性ビタミンおよびそれらの混合物から選択できる。本発明の一態様によれば、使用されるビタミンはビタミンDである。
【0038】
本発明のナノ分散体中に存在するナノ粒子は、1種以上のポリマーを含んでなる。本発明のナノ粒子に好適なポリマー(複数可)は、好ましくは水溶性である。水溶性ポリマーの例には、ポリビニルピロリドン、ポロクソマー(poloxomer)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ジェランガム、カラギーナン、キサンタンガム、硫酸デキストラン、硫酸コンドロイチン、ペクチナート、ヘパリン、メタクリル酸コポリマー、デルマタン硫酸、セルロースポリマー、例えばカルボキシメチルセルロールナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロールなど、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0039】
ポリビニルピロリドンは、直線状に配列された1−ビニル−2−ピロリドンのモノマーユニットを有する第三級アミドポリマーであり、以下でPVPと称するが、ポビドンとしても知られる。それは、平均分子量が約10,000から約700,000の範囲の一連の製品として市販されている。種々の製品が、K値と呼ばれる平均分子量により市販されており、例えば、GAF Corporationは、以下のK値を有するPVPを販売している。
K値 平均分子量
15 約10,000
30 約40,000
60 約160,000
90 約360,000
他の供給業者、BASFは、異なる水溶性グレードのポリビニルピロリドンをKollidonとして提供しており、例えば分子量2000から3000(Kollidon 12 PF)、7000〜11,000(Kollidon 17 PF)、28,000〜34,000(Kollidon 25)、1,000,000〜1,500,000(Kollidon 90 F)のグレードがある。態様によれば、ポリビニルピロリドンが水溶性ポリマーとして使用される。本発明に好適なポリビニルピロリドンのグレードには、分子量が約1,000から約45,000のグレード、好ましくは約4,000から約30,000のグレードがある。本発明の一態様によれば、ナノ分散体に使用されるポリマーの量は、約0.001w/v%から約20w/v%である。ポリマーは、好ましくは約0.01w/v%から約5.0w/v%の量で使用される。特に好ましくは、約0.01w/v%から約1.0w/v%の量で使用される。
【0040】
本発明のナノ分散体は、1種以上の界面活性剤を含んでなる。界面活性剤という用語は、「界面活性剤」のブレンドである。界面活性剤は、水溶性(親水性)部分と脂溶性(親油性)部分を含む分子である。本発明のナノ分散体に使用される界面活性剤は、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む。
【0041】
脂肪酸という用語は、動物性または植物性の脂肪、油、または蝋中のエステル化形態から誘導された、またはエステル化形態で含まれている脂肪族(飽和または不飽和)モノカルボン酸を包含する。本発明の組成物に使用可能な脂肪酸またはその塩の例には、約4から約28の範囲の「n」個の炭素原子を持つ脂肪酸またはその塩があるが、これらに限定されない。脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でも、それらの塩および組み合わせでもよい。飽和脂肪酸およびその塩は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、カプリル酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなどおよび/またはそれらの混合物から選択できる。不飽和脂肪酸およびその塩は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、αリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、オレイン酸ナトリウム、アラキドン酸ナトリウムなどおよび/またはそれらの混合物から選択できる。
【0042】
本発明のナノ分散体またはナノ粒子に使用可能なステロールまたはその誘導体またはその塩の例は、ステロールの酸エステルであろう。本発明により好適なステロールには、コレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、胆汁酸塩、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。使用可能なコレステロールの酸塩には、硫酸コレステリル、酢酸コレステロール、クロロ酢酸コレステロール、安息香酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ヘミコハク酸コレステロール、リン酸コレステロール、リン酸コレステロール、ホスホン酸、ホウ酸、硝酸、ケイ皮酸コレステロール、クロトン酸コレステロール、酪酸コレステロール、ヘプタン酸コレステロール、ヘキサン酸コレステロール、オクタン酸コレステロール、ノナン酸コレステロール、デカン酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、吉草酸コレステロール、炭酸ジコレステリルなど、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。本発明の組成物に使用可能なフィトステロールには、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、および、その誘導体、塩、およびそれらの混合物がある。例えば、Sigma USAにより市販されているPhytosterols*は、βシトステロール、カンペステロール、およびジヒドロブラシカステロールを含む。胆汁酸には、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ウルソデオキシコール酸、および、その誘導体、塩、およびそれらの混合物がある。ステロールは、ヘミコハク酸コレステロールを含むコレステロールのエステルでも、硫酸水素コレステロールおよび硫酸コレステロールを含むコレステロールの塩でも、エルゴステロールでも、ヘミコハク酸エルゴステロールを含むエルゴステロールのエステルでも、硫酸水素エルゴステロールおよび硫酸エルゴステロールを含むエルゴステロールの塩でも、ラノステロールでも、ヘミコハク酸ラノステロールを含むラノステロールのエステルでも、硫酸水素ラノステロールおよび硫酸ラノステロールを含むラノステロールの塩でもよい。
【0043】
本発明の一態様によれば、ナノ粒子は、ステロールまたはその誘導体またはその塩と脂肪酸またはその塩との混合物である界面活性剤を含んでなる。他の好ましい態様によれば、ナノ粒子は、極性の酸のコレステロールエステルで構成される。好ましい態様によれば、ナノ分散体に使用される界面活性剤は、カプリル酸と硫酸コレステリルとの混合物である。カプリル酸は、オクタン酸としても知られるが、約0.001w/v%から約5.0w/v%、より好ましくは約0.01w/v%から約1.0w/v%、特に好ましくは約0.01w/v%から約0.5w/v%の量で、態様中で使用できる。硫酸コレステリルは、本発明の態様中で、約0.001w/v%から約5.0w/v%、より好ましくは約0.01w/v%から約1.0w/v%、特に好ましくは約0.01w/v%から約0.5w/v%の量で使用される。
【0044】
界面活性剤のこの特別な混合物が、界面活性剤とタキサン誘導体との比が低い場合ですら6時間より長く安定なままでいる、タキサン誘導体のナノ分散体を生じることが、意外にも見いだされた。本発明のナノ分散体において、界面活性剤とタキサン誘導体との比は、約1:5から約1:10である。本発明のナノ分散体は少なくとも6時間安定なままであり、特に、パクリタキセルを含んでなるナノ分散体は24時間安定なままであることが見いだされ、ドセタキセルを含んでなるナノ分散体は8時間安定なままであることが見いだされた。
【0045】
他の好ましい態様によれば、使用される界面活性剤は、オレイン酸および硫酸コレステリルおよび/またはそれらの混合物から選択される。
【0046】
本発明の他の態様によれば、使用される界面活性剤は、飽和脂肪酸および胆汁酸または胆汁酸塩および/またはそれらの混合物から選択される。好ましい態様によれば、使用される界面活性剤は、カプリル酸およびグリココール酸ナトリウムまたはウルソデオキシコール酸および/またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
使用される場合、胆汁酸塩は、約0.001w/v%から約5.0w/v%、より好ましくは約0.01w/v%から約1.0w/v%、特に好ましくは約0.01w/v%から約0.75w/v%の量で使用される。
【0048】
本発明の組成物は、少量のレシチン/リン脂質および/またはそれらの誘導体をさらに含んでなることがある。本明細書での「少量」という用語は、リン脂質対タキサン誘導体の比が、約1:4から約1:10であり、リン脂質が使用される場合でも、それらは非常に定量で使用され、すなわちタキサン誘導体の量に比べ、リン脂質の量は非常に少ないことを意味する。一般的に、リポソームである従来技術の組成物は、薬剤の量に比べて多量のリン脂質を必要とする。
【0049】
リン脂質が少量使用されるいくつかの態様によれば、そのようなリン脂質の例には、天然で部分的に水素化されているレシチンもしくは水素化されているレシチンまたはスフィンゴリピドがあるが、これらに限定されない。天然レシチンもまた、異なるリン脂質の混合物である。本発明の組成物に使用可能なリン脂質は、ホスファチジルコリン(ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアリロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−ホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン);ホスファチジルエタノールアミン(ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、リゾファチジルエタノールアミン);スフィンゴミエリン(脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン);リゾレシチン;セレブロシドなど、およびそれらの混合物から選択される。さらに、ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)、メトキシポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルコリンm-PEG-DSPCなど、およびそれらの混合物などの脂質のポリエチレングリコール誘導体も、本発明の組成物に使用できる。好ましくは、本発明の組成物に使用可能なブチレンシド(butylenesids)は、m-PEG-DSPE(メトキシポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)である。
【0050】
本発明の一態様によれば、使用されるリン脂質はmPEG-DSPEである。それは、約0.001w/v%から約10.0w/v%、より好ましくは約0.01w/v%から約5.0w/v%、特に好ましくは約0.03w/v%から約0.5w/v%の量で使用される。
【0051】
本発明の組成物に使用される非水性溶媒は、タキサン誘導体が比較的可溶性なものである。非水性溶媒は水または水性溶媒と混和性である。本発明に使用されるそのような水混和性溶媒の例には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびその誘導体などのグリコール;PEG400またはPEG3350などのポリエチレングリコール;プロピレングリコールおよびその誘導体、例えばPPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、;グリセロール;グリコフロールなど、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の一態様によれば、非水性溶媒は、アルコール、ポリエチレングリコール、および/またはそれらの混合物からなる群から選択できる。本発明の好ましい態様によれば、エタノールとPEG(ポリエチレングリコール)との混合物が水混和性溶媒として使用される。エタノールは、約0.001w/v%から約5w/v%、より好ましくは約0.05w/v%から約0.5w/v%、特に好ましくは約0.1w/v%から約0.25w/v%の量で本発明のナノ分散組成物中に使用される。好ましく使用されるポリエチレングリコールにはPEG−400およびPEG−3350がある。PEG−400は、本発明の態様に、約0.01w/v%から約20.0w/v%、より好ましくは約0.05w/v%から約5.0w/v%、特に好ましくは約1.0w/v%から約2.5w/v%の量で使用される。PEG−3350は、本発明の態様に、約0.001w/v%から約10.0w/v%、より好ましくは約0.05w/v%から約5.0w/v%、特に好ましくは約0.1w/v%から約3w/v%の量で使用される。
【0053】
一般的に、タキサンプレコンセントレート、すなわち、溶液が、水性ビヒクルにより希釈すると少なくとも約4時間安定なままでいるナノ分散体が得られることが望ましい。この時間は、ナノ分散体が、注入の形態で患者に投与される時間である。そのため、本発明のナノ分散体の最低で4時間の安定性を得ることが常に望ましい。ビヒクルは、注射用の水に溶けている約5%から約10.0w/v%のブドウ糖溶液または他の任意の薬剤的に許容できる静脈用水性液体ビヒクルおよびそれらの混合物をさらに含んでなっていてよい。タキサン誘導体がパクリタキセルである本発明の一態様、水性ビヒクルはこの安定性を向上させるために5%ブドウ糖溶液をさらに含んでなるが、追加の安定剤が水相に存在してもよい。そのような安定剤の例は、ヘタスターチ、デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウム、グルタチオン、オルニチン−L−アスパルテートなどおよびそれらの混合物である。他の態様によれば、5%ブドウ糖溶液中の0.01%アルギニンの使用が、8時間安定なドセタキセルのナノ分散体を生じるが、5%ブドウ糖溶液中の1%ヒスチジンの使用が5時間安定なドセタキセルのナノ分散体を生み出すことが見出された。ドセタキセルがタキサン誘導体として使用される態様によれば、水性ビヒクルは、ヘタスターチ、デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウム、グルタチオン、オルニチン−アスパルテート、ヒスチジン、アルギニンなどのアミノ酸など、およびそれらの混合物をさらに含んでなっていてよい。これらの追加の安定剤は、水性ビヒクルの約0.02%から約5%の量で存在してよい。好ましい態様によれば、ドセタキセルのナノ分散体用の5%ブドウ糖溶液中の0.5%ヘタスターチの使用が、粒径の点で5時間より長く安定であることが見出された。
【0054】
本発明のタキサン誘導体のナノ分散体は、典型的には、以下に列挙された方法のいずれか1つにより調製できる。
【0055】
1)治療上活性な成分(タキサン誘導体および/または他の薬剤)、ポリマー(複数可)、および脂肪酸またはその塩、ステロールまたはその誘導体またはその塩およびそれらの混合物から選択される界面活性剤(複数可)を、エタノールおよび/またはPEGなどの水混和性溶媒中に、攪拌および加熱しながら溶解させ、薬剤の濃縮溶液を得る。このように得られた溶液を、メンブランフィルターで濾過する。この溶液に、水性液体ビヒクル(5%ブドウ糖溶液)をゆっくりと加え、混合物を振盪/攪拌し、本発明のナノ分散体の形成をもたらす。このように形成されたナノ分散体を、任意に均質化および/または超音波処理し、濾過または凍結乾燥する。薬品の凍結乾燥されたパウダーは、水性媒体により再構成でき、患者へ投与する前に本発明のナノ分散体を再び作ることができる。
【0056】
2)タキサン誘導体、ポリマー(複数可)、および、脂肪酸またはその塩、ステロールまたはその誘導体またはその塩およびそれらの混合物から選択される界面活性剤(複数可)を、エタノールおよび/またはPEGなどの水混和性溶媒中に、攪拌および加熱しながら溶解させ、薬剤の濃縮溶液を得る。このように得られた溶液を、メンブランフィルターで濾過し、水性媒体(5%ブドウ糖溶液)に加え、混合物を振盪/攪拌し、本発明のナノ分散体の形成をもたらす。このように形成されたナノ分散体を、任意に均質化および/または超音波処理し、濾過または凍結乾燥する。薬品の凍結乾燥されたパウダーは、水性媒体により再構成でき、患者へ投与する前に本発明のナノ分散体を再び作ることができる。
【0057】
3)タキサン誘導体、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含んでなる界面活性剤(複数可)を、丸底フラスコ中で、40℃で軽く温めながらエタノールおよび/またはPEGなどの水混和性溶媒に溶解させ、溶媒を蒸発させ、薬剤の薄膜を形成する。ポリマー(複数可)を、要求される量の水性媒体に溶解させ、この溶液を、穏やかに攪拌および振盪しながら3〜4時間前記膜に加え、本発明のナノ分散体の形成をもたらす。このように形成されたナノ分散体を、任意に均質化および/または超音波処理し、濾過または凍結乾燥する。薬品の凍結乾燥されたパウダーは、水性媒体により再構成でき、患者へ投与する前に本発明のナノ分散体を再び作ることができる。
【0058】
本発明のナノ分散体は、平均サイズが300nm未満のナノ粒子を含んでなるタキサン誘導体のコロイド状ナノ分散体であるので、物理的および化学的安定性に関して試験した。粒子が、室温で約8時間から約24時間保存した時凝集せず、ナノ分散体が外観の変化の兆候を全く示さないことが観察され、ナノ分散体が、投与の前およびその間の所望の時間、安定であることが推測される。
【0059】
また、水混和性溶媒中のタキサン誘導体および/または他の薬剤の溶液を試験すると、少なくとも3ヶ月溶液が物理的および化学的に安定のままであり、薬剤のアッセイに実質的な変化がなく、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが観察された。これらの観察結果を、次に来る実施例に示す。
【0060】
本発明のナノ分散体は、2つ以上の容器、例えば2つの容器を有するキットであって、第1容器が、水混和性溶媒中のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩とステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含んでなる界面活性剤の溶液を含み、第2溶液が水性液体ビヒクルを含んでなり、穏やかに攪拌または振盪しながら、第2容器の内容物を第1容器の内容物に加え、またはその逆に加えると、静脈内投与に好適な本発明のナノ分散体が形成されるキットとしても提供できる。追加の容器は、タキサンナノ分散体の形成の前、または前記タキサンのナノ分散体が形成された後に混合するための第3成分を含んでよい。
【0061】
本発明は、2つの容器を有するキットであって、第1容器が凍結乾燥された形態のナノ分散体を含んでなり、第2容器が水性液体ビヒクルを含んでなり、患者への投与前に、穏やかに攪拌または振盪しながら、第2容器の内容物を第1容器の内容物に加え、またはその逆に加えると、本発明のナノ分散体が形成されるキットも提供する。
【0062】
本発明のナノ分散体の、その必要のある患者への投与は、当分野に公知の様々な種類のガンを治療する効果的な方法を提供する。
【0063】
本発明のナノ分散体の効能および毒性を、Abraxane(登録商標)、Oncotaxel(登録商標)などの市販のタキセル製品と比較した。効能は以下のパラメータに基づき評価した。
1.腫瘍評価:日で表す時間に対する腫瘍体積(mm)の減少に関して腫瘍を評価した。腫瘍を42日間評価した。
2.パーセンテージT/C=(X日の薬剤治療群の平均腫瘍体積/X日の薬剤治療群の平均腫瘍体積)×100
3.腫瘍縮小:実験動物腫瘍モデルにおける腫瘍縮小は、臨床の適切さにおける重要なエンドポイントである。腫瘍縮小は、腫瘍体積が、測定可能な大きさ未満に小さくなることなく、治療開始時の腫瘍体積の50%未満に小さくなれば部分的(PR)であると記録され、腫瘍量が手で触って感じられなくなると完全(CR)であると記録される。
4.特異的な腫瘍成長遅延(SGD)は、薬剤治療腫瘍および対照腫瘍がある体積(V)に達する時間の差と、対照腫瘍が同じ体積(V)に達する時間の比として定義されるが、Vは治療開始時の初期腫瘍体積から2回の体積倍加の後の腫瘍体積であり、Tvは、薬剤治療群または対照群が前記のある体積に達する時間である。V値値が45日までに試験群動物または参照群動物で達成されない場合、同じ値*45日をその動物のTvと考えた。この試験は、SGDパラメータが1を超える場合、効能があると考えられる。
5.体重変化は、((X日の動物の体重−0日の動物の体重)/0日の動物の体重)×100として計算した。
6.生存分析は、カプランマイヤー法により行った。0.05未満のP値を有意であると考えた。
本発明のナノ分散体の効力を上述のパラメータにより評価したが、他の任意の好適な試験方法および類似の試験方法を採用して、ナノ分散体の効力を測定できる。本発明の試験されたナノ分散体は、実施例27、28、および29に例示されるとおり効力があることが分かった。
【0064】
本発明のナノ分散体の毒性は、静脈内経路によりCD−1マウスに試験を投与して測定した。最後の注射の後、動物を1時間観察し、投薬後4〜6時間の間観察した。その後、マウスを1日2回、臨床症状および死亡率について15日間観察した。全生存動物の体重を、投薬後1、7、および14日に記録した。15日に、生存動物の剖検を実施し、もしあれば総病理(gross pathology)を記録した。毒性試験の結果を、実施例25および26に、それぞれパクリタキセルのナノ分散体およびドセタキセルのナノ分散体について詳細に記載した。
【0065】
本発明は、上記で全般的に開示されたが、以下の実施例に関連して追加の態様がさらに議論および説明される。しかし、実施例は本発明の説明だけにのみ示され、本発明を限定するとは考えないものとする。
【実施例】
【0066】
実施例1〜5
本発明のナノ分散体を以下の表1に説明する。
【表1】

【0067】
手順
薬剤、硫酸コレステリル、カプリル酸、およびPVP K−30をバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、攪拌および45℃で加熱しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させ、溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターに通して濾過した。
次いで、ブドウ糖溶液(5%)を、薬剤の溶液を収容しているバイアルにゆっくりと加え、穏やかに振盪すると、透明から半透明なナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により測定する。
観察された組成物の外観、pH、および粒径を、以下の表2にまとめる。
【0068】
【表2】

【0069】
本発明のナノ分散体が物理的に安定であり、室温で24時間保存時に、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが分かった。
【0070】
これらの実施例のナノ分散組成物は、150mg/100mlのパクリタキセルを含む。70kgの人へのおよそ300mgのパクリタキセルのヒト投与量には、200mlの各ナノ分散組成物を患者に投与できる。したがって、20から80mgの硫酸コレステリル、25から100mgのカプリル酸、65から250mgのPVP、および約300mgのエタノールが、実施例1から5のパクリタキセル組成物の単一の成人投与量で与えられるであろう。このように、本発明の組成物は、活性薬剤と同時投与される賦形剤の量が非常に少ないナノサイズの粒子を提供する。
【0071】
以下の実施例6〜7に記載されている医薬組成物は、患者への投与前に本発明のナノ分散体を得るために、希釈剤(5w/v%ブドウ糖溶液)により数倍に希釈する必要のある濃縮溶液である。
【0072】
本発明は特定の態様および用途の点で記載されてきたが、当業者は、本教示に照らして、特許請求された発明の精神から逸脱せずに、またはその範囲を超えることなく、追加の態様および改良を生み出せる。本発明の上述の態様、特に「好ましい」態様が、単に本発明の実施の可能性のある例に過ぎず、本発明の原理の明確な理解のために述べられているのみであることを強調すべきである。
【0073】
したがって、本明細書の図面および説明が、本発明の理解を容易にするための例示のために好ましく、その範囲を限定すると解釈すべきでないことが理解できよう。
【0074】
実施例6〜7
タキサン誘導体の濃縮溶液としての本発明の医薬組成物を、以下の表3に説明する。
【表3】

【0075】
手順
薬剤、硫酸コレステリル、カプリル酸、およびPVP K−30をガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、攪拌および45℃で加熱しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させ、濃縮薬剤溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターに通して濾過した。
実施例6の溶液をバイアル(60mgの薬剤を含むバイアルあたり1グラム)に満たし、安定性のために充填した。
安定性試料を、ナノ分散体の形態で分析した。ブドウ糖溶液(5w/v%)(40ml)を、薬剤濃縮液(60mg薬剤)を収容するバイアルに、穏やかに攪拌しながらゆっくりと加え、1.5mg/mlの希釈度を有する薬剤の透明から半透明のナノ分散体を得た。ナノ分散体を以下の試験で分析した:以下の表4に記載の外観、薬剤のアッセイ、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)、および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)。
【0076】
【表4】

【0077】
パクリタキセルのアッセイには3ヶ月間全く変化がなく、製剤が化学的に安定であると推定された。また、本発明の組成物が物理的に安定で、保存時の実質的な凝集も組成物の外観の変化も全くないことが分かった。
【0078】
実施例8
PVP K−12を利用する本発明の医薬組成物を、以下の表5に説明する。ナノ分散体の調製手順は、実施例1〜7と同じである。
【0079】
【表5】

【0080】
組成物の外観、pH、および粒径を観察し、以下の表6にまとめる。
【表6】

【0081】
本発明の組成物が物理的に安定であり、室温で24時間保存時に、実質的な凝集も組成物の外観の変化も全くないことが分かる。
【0082】
実施例9
タキサン誘導体の濃縮溶液としての本発明の組成物を、以下の表7に説明する。
【0083】
【表7】

【0084】
安定性試料は、以下に記載のとおり分析し、安定性データを以下の表8にまとめる。薬剤のアッセイは、濃縮薬剤溶液で実施した。他の観察には、ブドウ糖溶液(5w/v%)(40ml)を、薬剤濃縮液(60mgの薬剤)を収容しているバイアルに、穏やかに攪拌しながらゆっくりと加え、希釈度1.5mg/mlの薬剤の透明から半透明のナノ分散体を得た。次いで、ナノ分散体を以下の試験で分析した:外観、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)、および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)。
【0085】
【表8】

【0086】
パクリタキセルのアッセイに3ヶ月間全く変化がなく、製剤が保存時に化学的に安定であることが推定された。また、本発明の組成物が物理的に安定であり、種々の保存条件で保存時に、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが分かる。図4−aは、初期のナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムであり、図4−bは、室温で24時間保存時のパクリタキセル実施例9のナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムである。前記ヒストグラムは、室温で約24時間保存した後に、平均粒径がほとんど一定であることを示し、ナノ分散体の安定性を示している。
【0087】
実施例10
PEG−3350を含む本発明の医薬組成物を表9に説明する。
【0088】
【表9】

【0089】
調製
薬剤、硫酸コレステリル、カプリル酸、PVP K−30、およびPEG−3350をバイアル中に正確に秤量した。
バイアルの内容物を、攪拌および45℃で加熱しながら、必要な量の無水エタノールに、透明な溶液が得られるまで溶解させた。
上記のエタノール溶液を、攪拌しながらブドウ糖溶液(5%)にゆっくりと加え、ナノ分散体を形成した。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)により確認する。
ナノ分散体を、0.2μメンブランフィルターに通して濾過する。
上記のナノ分散体の20mlを、バイアルに充填し、凍結乾燥(Vitris)した。
凍結乾燥前のナノ分散体の外観および粒径を、ナノ分散体調製直後および室温で(RT)24時間および48時間保存後に観察した。これらを以下の表10にまとめる。
【0090】
【表10】

【0091】
本発明の組成物が物理的に安定であり、室温で24から48時間保存時に、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが分かった。
【0092】
凍結乾燥ケーキの再構成:凍結乾燥後、バイアル中に得られたケーキを、軽く振盪しながら注射用の水(20ml)に注入して分散させ、濃度1.5mg/mlのパクリタキセルナノ分散体を得た。
【0093】
バイアル毎の内容物および再構成されたナノ分散体の特性を、それぞれ以下の表11および12に示す。
【0094】
【表11】

【0095】
各バイアルは、組成物中に30mgのパクリタキセルを含んでいた。70kgの人のパクリタキセルのおよそ300mgのヒト投与量では、上述の組成物の10個のバイアルを、60から600mlの注射用水などの希釈剤に再構成し、0.5から5.0mg/mlのパクリタキセル注入液を得ることができる。この希釈した組成物は、患者に投与される場合、20mgの硫酸コレステリル、25mgのカプリル酸、および125mgのPVPを含むだろう。
【0096】
【表12】

【0097】
本発明の組成物が物理的に安定であり、室温で24時間保存時に、実質的な凝集も製剤の外観変化も全くないことが分かった。
【0098】
実施例11および比較例1〜3
【表13】

【0099】
【表14】

【0100】
実施例12
本発明の医薬組成物を、表15にさらに説明し、種々のパラメータの観察結果を表16に記載する。
【0101】
【表15】

【0102】
【表16】

【0103】
オレイン酸およびステアリン酸を利用して調製した本発明のナノ分散組成物を以下の表17に説明する。
【表17】

【0104】
これらの組成物の調製手順は実施例1〜5に記載のものと同じである。そのように得られるナノ分散体は、ほとんど透明から半透明であり、平均粒径はそれぞれ134nmおよび155nmであった。
【0105】
実施例15
コレステロールを利用して調製した本発明の医薬組成物を、以下の表18に説明する。
【表18】

【0106】
手順
薬剤、コレステロール、カプリル酸、およびPVP K−30を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮溶液を得た。
濃縮溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ブドウ糖溶液(5w/v%)を、穏やかに振盪しながら、濃縮溶液(100mgの薬剤)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、1.5mg/mlの希 釈度の透明から半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認する。
【0107】
この実施例のナノ分散組成物は、ほとんど透明から半透明であり、平均粒径が217nmであった。
【0108】
実施例16
胆汁酸/塩(グリココール酸ナトリウムおよびウルソデオキシコール酸)を使用して調製した本発明の医薬組成物を、以下の表19に説明する。
【0109】
【表19】

【0110】
手順
薬剤、胆汁酸/塩、カプリル酸、およびPVP K−30を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮溶液を得た。
濃縮溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ブドウ糖溶液(5w/v%)を、穏やかに振盪しながら、濃縮溶液(100mgの薬剤)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、1.5mg/mlの 希釈度の半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認する。
【0111】
このように製造されたナノ分散組成物は、ほとんど半透明の外観であり、平均粒径がそれぞれ197nmおよび180nmであった。
【0112】
PVP K−90を含む本発明の医薬組成物を、以下の表20に説明する。
【表20】

【0113】
調製の手順は、実施例1〜5に記載のものと同じである。このように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど透明から半透明であり、平均粒径が207nmであった。
【0114】
実施例18
ヒアルロン酸塩を含む本発明の医薬組成物を、表21に説明する。
【表21】

【0115】
手順
薬剤、硫酸コレステリル、およびカプリル酸を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮薬剤溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ヒアルロン酸ナトリウムをブドウ糖溶液(5w/v%)に溶解させ、濃縮薬剤溶液(30mg)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、その後残りの5w/v%ブドウ糖溶液を穏やかに振盪しながら加え、1.5mg/mlの希釈度の半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認した。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認した。
【0116】
このように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど半透明であり、平均粒径が263nmであった。
【0117】
実施例19
ポリグルタミン酸塩を含む本発明の医薬組成物を、表22に説明する。
【表22】

【0118】
ナノ分散体の調製手順は、実施例18に記載されたものと同じである。そのように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど半透明であり、平均粒径が295nmであった。
【0119】
実施例20
追加の治療薬デキサメタゾンを含む本発明の医薬組成物を、以下の表23に説明する。
【表23】

【0120】
このように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど半透明であり、平均粒径が185nmであった。
【0121】
実施例21
ドセタキセルを含む本発明の医薬組成物を、表24に説明する。
【表24】

【0122】
この実施例のナノ分散体は、実施例1〜5に与えられた手順により調製した。ナノ分散体は、青みがかった色合いのある白色であり、平均粒径は172nmであった。
【0123】
組成物は1.50mg/mlのドセタキセルを含む。70kgの人へのドセタキセルのおよそ180mgのヒト投与量には、120mlのナノ分散組成物を患者への投与に使用でき、そのため組成物は180mgのデセタキセルを含んでいた。この実施例の組成物が投与される患者は、12mgの硫酸コレステリル、15mgのカプリル酸、150mgのPVP、および約180mgのエタノールを受け取る。したがって、本発明の組成物は、活性薬剤と同時投与される最低限の量の賦形剤を含むナノサイズ粒子を与える。エタノールは、存在するとしても、非習慣性の量である。
【0124】
実施例22
ドセタキセルを含む本発明の医薬組成物を以下に示す。
【表25】

【0125】
表25に与えられた処方によるドセタキセルのプレコンセントレートを、分子量の異なるポリビニルピロリドンを使用して調製した。
ポリビニルピロリドンの分子量が増加すると、凝集およびナノ分散体が安定なままでいる時間の点で、ナノ分散体の安定性が向上することが分かった。
【0126】
実施例23および比較例4、5、および6
【表26】

【0127】
特定量の薬剤、硫酸コレステリル、およびカプリル酸を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮薬剤溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ブドウ糖溶液(5w/v%)を調製し、濃縮薬剤溶液(30mg)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、その後残りの5w/v%ブドウ糖溶液を穏やかに振盪しながら加え、1.5mg/mlの希釈度の半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認した。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認した。
【0128】
【表27】

【0129】
実施例24
【表28】

【0130】
特定量のドセタキセル、硫酸コレステリルナトリウム、カプリル酸、およびポリビニルピロリドンを、バイアル中に秤量した。乾燥させた量のアルコールおよびポリエチレングリコールを混合し、40℃でわずかに加温されている超音波処理槽中で、無色透明なプレコンセントレートが得られるまで溶解させた。プレコンセントレートを、表29に示す異なる添加剤を含む水性ビヒクルで希釈した。そのように形成されたナノ分散体に、Malvern粒径分析器を利用して平均粒径測定を行った。
【0131】
【表29】

【0132】
5%ブドウ糖注射液中の0.5%ヒスチジン、0.001%エデト酸二ナトリウムの実施例の粒径分布の結果を、図5−aおよび図%−bに示す。図5−aは、初期のナノ分散体に粒径分布(平均粒径=98nm)を示すヒストグラムであり、図5−bは、平均粒径が96.4nmである8時間でのナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムであり、ナノ分散体の安定性を示している。
【0133】
実施例25
CD−1マウスにおける本発明のパクリタキセルナノ分散体の急性毒性
試験品目
1.実施例12aの組成物を、5w/v%ブドウ糖により10mg/mlに希釈して、プラセボと共に使用した。
2.実施例9の組成物を、5w/v%ブドウ糖により8mg/mlに希釈して、プラセボと共に使用した。
3.0.9%塩化ナトリウムにより10mg/mlに希釈されるABRAXANE(登録商標)。
【0134】
CD−1マウスを、動物四等分数(animal quarter number)2で、個別換気ケージシステム(IVC)の状態に5日間順応させた。獣医学的な健康チェックの後、5匹のオスおよび5匹のメスのマウスを、各投与量群に割り付けた。マウスは、実験期間中、水および餌に自由にアクセスできた。以下の投与量の試験品目およびプラセボを、ビヒクルによる希釈をせずにそのまま、目盛り付きシリンジに結合した26ゲージの針を利用してマウスの尾部静脈を通して静脈内投与した。注射前に、尾を温水で拭き、血管を拡張させた。150、200、250、300、350、および400mg/kgの総投与量を、パクリタキセルナノ分散体(実施例12)で試験し、250、300,および400mg/kgの投与量を、プラセボ(実施例12のプラセボ)で試験し、200および250mg/kgの投与量をパクリタキセルナノ分散体(実施例9)で試験し、250mg/kgの投与量をプラセボ(実施例9のプラセボ)で試験し、300mg/kgの投与量をABRAXANE(登録商標)で試験した。これらの製剤を全て、2回の投与/注射の間に1時間の間隔をおいて3分割された投与量にして、CD−1マウスに静脈内投与した。最後の注射後、1日2回1時間、投薬後4〜6時間動物を観察した。その後、マウスを1日2回観察し、中毒症状および死亡率がある場合には、最長45日まで記録した。
【0135】
【表30】

【0136】
結果は、実施例12のパクリタキセルナノ分散体が、400mg/kgで90%死亡率を示し、300mg/kgの投与量でゼロパーセントの死亡率を示すことを示した。試験された最高投与量(400mg/kg)での実施例12のプラセボで死亡は見られなかった。パクリタキセルナノ分散体の直線外挿で、得られたLD50およびLD10値は、それぞれ342.5mg/kgおよび310mg/kgであった。同様に、実施例9のパクリタキセルナノ分散体は、250mg/kgで20%の死亡率を示し、パクリタキセルナノ分散体のLD50は250mg/kgを超えていた。試験された最高投与量(250mg/kg)での実施例9のプラセボで死亡は見られなかった。市販されているナノ粒子製剤、ABRAXANE(登録商標)は、300mg/kgで90%の毒性を示した。これらのデータは、本発明のナノ分散組成物が、市販されているABRAXANE(登録商標)より毒性が低いであろうことを明らかに示している。また、本発明のナノ分散組成物のLD50値(342.5mg/kg)を市販のTAXOL製剤のLD50値(7.5〜12.0mg/kg:米国特許第6753006号)と比較すると、本発明のパクリタキセルナノ分散体で観察されたLD50値が、市販TAXOL溶液のLD50値よりはるかに高いことが明らかである。
【0137】
SDラットにおける本発明のパクリタキセルナノ分散体の急性毒性
試験品目
1.実施例9の組成物を、5w/v%ブドウ糖により10mg/mlに希釈をして、プラセボと共に使用した。
2.0.9%塩化ナトリウムにより5mg/mlに希釈されたABRAXANE(登録商標)。
ラットを、動物四等分数3で、個別換気ケージシステム(IVC)の状態に5日間順応させた。獣医学的な健康チェックの後、5匹のオスおよび5匹のメスのSDラットを、各投与量群に割り付けた。ラットは、実験期間中、水および餌に自由にアクセスできた。以下の投与量の試験品目およびプラセボを、ビヒクルによる希釈をせずにそのまま、目盛り付きシリンジに結合した26ゲージの針を利用してラットの尾部静脈を通して静脈内投与した。注射前に、尾を温水で拭き、血管を拡張させた。注射後、1日2回1時間、投薬後4〜6時間動物を観察した。その後、ラットを1日2回観察し、中毒症状および死亡率がある場合には最長14日まで記録した。
【0138】
【表31】

【0139】
結果は、実施例9の本発明のパクリタキセルナノ分散体が、90mg/kgで死亡率40%を示したことを示す。試験された最高投与量(90mg/kg)での実施例9のプラセボで死亡は見られなかった。本発明のパクリタキセルナノ分散体のLD50値は、90mg/kgを超えていた。市販ナノ粒子製剤ABRAXANE(登録商標)は、70mg/kgで100%の毒性を示した。
【0140】
結果は、本発明のナノ分散組成物が薬剤に関連する毒性を最低限にし、薬剤の効果ある投与可能な治療範囲を広げ、ABRAXANE(登録商標)などの既存市販製剤よりも毒性が低いことを明らかに示す。
【0141】
実施例26
実施例24Bの組成物を、5w/v%ブドウ糖により10mg/mlに希釈して、プラセボと共に使用し、10mg/mlに希釈された市販製剤Taxotere(登録商標)に、CD−1マウスにおける静脈内経路によるドセタキセルのナノ分散体およびプラセボの急性毒性試験を実施した。マウスを、動物四等分数2で、実験室の状態に6日間順応させた。獣医学的な健康チェックの後、5匹のオスおよび5匹のメスのマウスを、各投与量群にランダムに割り付けた。マウスは、実験期間中、水および餌に自由にアクセスできた。試験品目およびプラセボを、ビヒクルによる希釈をせずにそのまま、目盛り付きシリンジに結合した26ゲージの針を利用してマウスの尾部静脈を通して静脈内投与した。注射前に、尾を温水で拭き、血管を拡張させた。200、250、および300mg/kgの総投与量を、ドセタキセルナノ分散体(実施例24B)で試験し、プラセボを最高投与量(実施例24Bのプラセボ)で試験した。これらの製剤を、2回の投与/注射の間に1時間の間隔をおいて3分割された投与量にして、CD−1マウスに静脈内投与した。最後の注射後、1時間、投薬後4〜6時間動物を観察した。その後、マウスを1日2回観察し、臨床症状および死亡率を15日間観察した。投薬後1日、7日、および14日に、生存している動物の体重を記録した。15日に、生存している動物の剖検を実施し、もしある場合には総病理を記録した。
【0142】
【表32】

【0143】
結果は、実施例24Bの本発明のドセタキセルのナノ分散体が、300mg/kgでの死亡率10%および投与量250mg/kgでLDを示したことを示した。試験された最高投与量で(300mg/kg)プラセボによる死亡は見られなかった。市販製剤Taxotere(登録商標)は、120mg/kgで10%の毒性を示した。本発明のドセタキセルのナノ分散体で観察されたLD10値が、市販Taxotere(登録商標)溶液製剤のLD10値よりはるかに高いことは明らかである。Taxotere(登録商標)の報告されているLD10値は、95mg/kgである(参考:SBA-NDA-20449)。
【0144】
実施例27
MX−1腫瘍異種移植片を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルナノ分散体(実施例12a)の抗腫瘍効能(腫瘍縮小)
動物:種:マウス、株:Balb/cヌード、性別:メス、年齢:6〜8週齢(18.9g±1.8g)
ヒト腫瘍異種移植片:MX−1(乳房)
試験試料:実施例12aの組成物、5%ブドウ糖により2mg/mlに希釈。
参照:市販製剤ABRAXANE(登録商標)、0.9%塩化ナトリウムにより2mg/mlに再構成。
プラセボ:タキサン誘導体のない試験試料。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内投与経路、10ml/体重kg。
試験デザイン
1.30mgから40mgの断片として、腫瘍を、動物の右脇腹に皮下経路で移植した。
2.治療開始前に、125mmから132mmのサイズ中央値に腫瘍を増大させる。
3.腫瘍を持つ動物を、10匹の動物からなる群に分ける。
4.動物に上述の投与量を与え、腫瘍を以下のとおり評価した。
【0145】
結果:腫瘍体積の有意な減少が、対照群と比べ8日より後に試験で見られた。腫瘍は、日で表す時間に対して腫瘍体積(mm)で評価した。42日間のデータを図1にグラフで表す。
中程度の抗腫瘍活性が、20mg/kgで(最適%T/C<20)(optimal T/C)で参照に見られたが、高度に有意な抗腫瘍活性が、20mg/体重kgで(最適%T/C<10)に試験で見られた。試験および参照の最適%T/C値は、それぞれ0および13.34であった。高度に有意な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるMX−1ヒト乳ガン異種移植片における20mg/kgで試験により(注射用のパクリタキセルナノ分散体濃縮液)示された。
【0146】
実施例28
MX−1腫瘍異種移植片を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルナノ分散体(実施例9の組成物)の抗腫瘍効能(腫瘍縮小)
動物:種:マウス、株:無胸腺ヌード、性別:メス、年齢:6〜8週齢(20〜25g)
ヒト腫瘍異種移植片:MX−1(乳房)
試験試料:実施例9の組成物、5%ブドウ糖により2mg/mlに希釈。
参照:市販製剤ABRAXANE(登録商標)、0.9w/v%塩化ナトリウムにより2mg/mlに再構成。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内、10ml/体重kg。
試験デザイン:
1.おおよそ2×2mmの断片として、腫瘍を、動物の右脇腹に皮下経路で移植した。
2.治療開始前に、200mmから220mmのサイズに腫瘍を増大させた。
3.腫瘍を持つ動物を、10匹の動物からなる群に分けた。
4.動物に上述の投与量を投与し、腫瘍を以下のとおり評価した。
【0147】
腫瘍評価:腫瘍は、日で表す時間に対して腫瘍体積(mm)で評価した。42日間のデータを図2にグラフで表す。
結果:高度に有意な抗腫瘍活性が、試験およびABRAXANE(登録商標)群(最適%T/C<10)で見られる。20mg/kg投与量での試験およびABRAXANE(登録商標)群の最適%T/C値は、それぞれ0.25および0.00であった。0日と比べて、プラセボ/対照群において、体重の有意な減少は見られなかった。高度に有意な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるMX−1ヒト乳ガン異種移植片における20mg/kgでの試験により(注射用のパクリタキセルナノ分散体濃縮液)示された。
【0148】
実施例29
HT−29ヒト結腸腫瘍異種移植片を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルナノ分散体(実施例9の組成物)の抗腫瘍効能(腫瘍縮小)
動物:種:マウス、株:無胸腺ヌード、性別:オス、年齢:6〜8週齢(20〜25g)
ヒト腫瘍異種移植片:HT−29ヒト結腸
試験試料:実施例9の組成物、5%ブドウ糖により2mg/mlに希釈。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内、10ml/体重kg。
参照:
(a)市販製剤ABRAXANE(登録商標)、0.9%塩化ナトリウムにより2mg/mlに再構成され2mg/mlに希釈。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内、10ml/体重kg。
(b)市販製剤Oncotaxel(登録商標)
投与量:13.4mg/kg、5日連続1日1回、静脈内
試験デザイン:
1.おおよそ2×2×2mmの断片として、腫瘍を、動物の右脇腹に皮下経路で移植した。
2.治療開始前に、130mmから160mmのサイズに腫瘍を増大させた。
3.腫瘍を持つ動物を、10匹の動物からなる群に分けた。
4.動物に上述の投与量を投与し、腫瘍を以下のとおり評価した。
腫瘍評価:腫瘍は、日で表す時間に対して腫瘍体積(mm)の減少で評価する。49日間のデータを図3にグラフで表す。
結果:高度に有意な抗腫瘍活性が、試験およびOncotaxel(登録商標)100群(最適%T/C<10)で見られる。20mg/kg投与量での試験および投与量13.4mg/kgでのOncotaxel(登録商標)100群の最適%T/C値は、それぞれ5.92および8.79であったが、中程度の抗腫瘍活性が、最適%T/C値20.33でABRAXANE(登録商標)により示される。高度に有意な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるHT−29ヒト結腸ガン異種移植片における20mg/kgでの試験により(注射用のパクリタキセルナノ分散体濃縮液)示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水混和性溶媒および水を含んでなるビヒクル中に分散された、平均サイズ300nm未満のナノ粒子を含んでなるナノ分散体であって、前記ナノ粒子が、1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩と、ステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなるナノ分散体。
【請求項2】
前記タキサン誘導体が、パクリタキセル、ドセタキセル、またはその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項3】
界面活性剤とタキサン誘導体との比が、約1:5から1:10であり、前記ナノ分散体が少なくとも4時間安定である、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項4】
界面活性剤とパクリタキセルとの比が、約1:5から約1:10であり、前記ナノ分散体が24時間安定である、請求項2に記載のナノ分散体。
【請求項5】
界面活性剤とドセタキセルとの比が約1:10であり、前記ナノ分散体が8時間安定である、請求項2に記載のナノ分散体。
【請求項6】
前記ナノ粒子の平均サイズが、約10nmから約200nmである、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項7】
前記水混和性溶媒が、アルコール、グリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、グリセロール、グリコフロール、および、それらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項8】
前記水混和性溶媒が、アルコールおよびポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される、請求項7に記載のナノ分散体。
【請求項9】
前記ポリマーが水溶性ポリマーである、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項10】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項9に記載のナノ分散体。
【請求項11】
使用されるポリビニルピロリドンが、1000から約50,000の範囲の分子量を有し、0.001w/v%から10w/v%の範囲の量で使用される、請求項10に記載のナノ分散体。
【請求項12】
前記脂肪酸またはその塩が、カプリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項13】
前記ステロールまたはその誘導体またはその塩が、コレステロール、極性酸のコレステリルエステル、フィトステロール、胆汁酸、それらの誘導体、塩、および混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項14】
前記極性酸が、コハク酸、ヘミコハク酸、硫酸、リン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ホウ酸からなる群から選択される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記界面活性剤が、約0.001w/v%〜約5.0w/v%の範囲の量で使用される、請求項1に記載のナノ分散体。
【請求項16】
水混和性溶媒中に、1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩と、ステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなる溶液であって、水性液体ビヒクルによる希釈時にナノ分散体を生じる溶液。
【請求項17】
1種以上のタキサン誘導体、ポリマー、および、脂肪酸またはその塩と、ステロールまたはその誘導体またはその塩との混合物を含む界面活性剤を含んでなり、平均粒径が300nm未満であるナノ粒子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−507946(P2011−507946A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540226(P2010−540226)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000857
【国際公開番号】WO2009/087678
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509302113)サン、ファーマ、アドバンスト、リサーチ、カンパニー、リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMA ADVANCED RESEARCH COMPANY LIMITED
【Fターム(参考)】