説明

ナノ多孔膜及びその製造方法

本発明はマイクロまたはナノ気孔を有する分離膜支持体の片面または両面にカーボンナノ構造体−金属複合体がコーティングされたカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜に関する。また、本発明は、カーボンナノ構造体−金属複合体を界面活性剤存在下で分散させた後、分離膜支持体の片面または両面にコーティングする段階と、前記コーティングされた分離膜支持体を熱処理を施して前記金属を前記分離膜支持体に融着させる段階と、を含むカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜製造方法に関する。
本発明によるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜は前記カーボンナノ構造体−金属複合体で金属のサイズが数nm〜数百nmであるため低温で溶融する特徴を有する。従って、低温で熱処理を施すことにより前記金属とカーボンナノ構造体を網状に連結し、前記金属を分離膜支持体に融着させることで製造される新しい形態のナノ多孔膜及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によるナノ多孔膜を水処理分離膜として使用する場合、分離膜における問題、即ち細菌が原因となる詰まり現象による分離膜寿命の問題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロまたはナノ気孔を有する分離膜支持体の片面または両面にカーボンナノ構造体−金属複合体がコーティングされたカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜及びその製造方法に関する。また、本発明は、水処理用分離膜の製造、電界放出ディスプレイの製造、水素貯蔵装置結合体の製造、電極の製造、スーパーキャパシタの製造、電磁波シールドの製造、軽量で高強度なアプリケーション製造などに使用されるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年産業の高度化につれ、高純度の分離能を有した分離膜技術が極めて重要な分野として認識されている。化学工業、食品工業、薬品工業、医療、生化学及び環境分野を含む幅広い分野において重要性が増しており、特に環境分野において清浄水に対する要求と水不足に対する認識が増加するにつれて、これを解決するための一つの案として、分離膜を利用した技術が大きく注目されている。
【0003】
一方、カーボンナノ構造体が最近発見されたが、形態に応じて、カーボンナノチューブ(carbon nano tube)、カーボンナノホーン(carbon nano horn)、カーボングラフェン(carbon graphene)、カーボンナノファイバー(carbon nano fiber)などに分けられる。特にカーボンナノチューブは、機械的強度、熱伝導度、電気伝導度及び化学的安定性に優れているため、エネルギー、環境及び電子素材などの様々な分野に応用することができる。
【0004】
カーボンナノ構造体−金属複合体は、カーボンナノチューブに官能基を誘導し、誘導された官能基に金属(コバルト、銅、ニッケル、銀など)を反応させて化学的に結合したものであって、含有している金属成分により電界放出ディスプレイの製造、水素貯蔵装置結合体の製造、電極の製造、スーパーキャパシタ(Super Capacitor)の製造、電磁波シールドの製造、軽量で高強度なアプリケーションの製造などの構造体成形製造に優れた特性を有している。
【0005】
このようなカーボンナノ構造体−金属複合体に対する素材の製造方法は、韓国登録特許第0558966号、韓国出願特許第2007−0072669号及び韓国出願特許第2008−0049464号に開示されている。
【0006】
特に、分離膜は、水処理分野において精密濾過(Micro Filtration;MF)膜、限外濾過(Ultra Filtration;UF)膜、ナノ濾過(Nano Filtration;NF)膜、逆浸透(Reverse Osmosis;RO)膜、イオン交換膜として使用されており、産業排水処理、浄水処理、下水処理、廃水処理、海水淡水化の用途に使用されている。精密濾過膜は、水処理工場で使用されており、膜バイオリアクタ(Membrane Bio Reactor;MBR)による下水処理にも使用されている。細菌除去が可能な限外濾過膜は浄水処理用に使用されており、逆浸透膜は海水淡水化施設に使用されている。イオン交換膜は主に脱塩工程に使用されている。静岡技術センターはナノ濾過膜を開発して緑茶成分分離に成功し、東京大学の山本グループは高度浄水処理のためのMBRを開発し、廃水を高度浄水処理する技術が実用化段階に入った。
【0007】
しかし、このような分離膜の最大の問題は、膜汚染である。特に微生物による膜汚染は分離性能を落とし、分離膜寿命に大きな障害を起こす。即ち、微生物による膜汚染が分離膜の性能及び寿命を減少させるという問題点がある。従って、前記の問題点を解消するために様々な機能を有する分離膜に対する研究が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第0558966号
【特許文献2】韓国出願特許第2007−0072669号
【特許文献3】韓国出願特許第2008−0049464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によると既存の分離膜にカーボンナノ構造体−金属複合体をコーティングすることにより前記問題点を解決することができることが分かり、本発明を提供する。即ち、本発明は、新しい形態のカーボンナノ構造体−金属複合体がコーティングされたナノ多孔膜に関する。
【0010】
また、本発明は、触媒効果、微生物除去効果を有する新しいナノ多孔膜に関し、カーボンナノ構造体−金属複合体により気孔のサイズが調節された微多孔性を有するナノ多孔膜に関する。さらに、本発明は、水処理用分離膜の製造、電界放出ディスプレイの製造、水素貯蔵装置結合体の製造、電極の製造、スーパーキャパシタの製造、電磁波シールドの製造、軽量で高強度なアプリケーション製造などに使用されるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜及びその製造方法に関する。
【0011】
これにより本発明は、数nm〜数百nmの金属粒子が均一に分散されたカーボンナノ構造体−金属複合体を使用して新しいカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は前記の目的を果たすために研究を重ねた結果、新素材であるカーボンナノ構造体−金属複合体を使用してカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜を製造することができ、製造したナノ多孔膜は抗菌性を有していることを見つけた。以下、本発明について説明する。
【0013】
本発明は、マイクロまたはナノ気孔を有する分離膜支持体の片面または両面にカーボンナノ構造体−金属複合体がコーティングされたカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜に関する。
【0014】
また、本発明は、カーボンナノ構造体−金属複合体を溶媒及び界面活性剤に分散させた後、分離膜支持体の片面または両面にコーティングする段階と、前記コーティングされた分離膜支持体に熱処理を施して前記金属を前記分離膜支持体に融着させる段階と、を含むカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜の製造方法を提供する。
【0015】
前記カーボンナノ構造体−金属複合体のナノ金属または金属酸化物は、低温で溶融または焼結が可能であり、前記金属を溶融または焼結してカーボンナノ構造体を網状構造に連結してナノ多孔膜を製造することができる。前記カーボンナノ構造体及び金属は、数nm〜数百nmのサイズを有しており、より具体的に1nm〜500nmの球状金属粒子及びカーボンナノ構造体からなっている。前記金属のサイズがナノ単位であるため、通常サイズの金属に比べて金属の溶融点が低くなる。そのために比較的低温で熱処理を施しても前記金属が溶融または焼結し、カーボンナノ構造体−金属複合体を網状構造に連結してカーボンナノ構造体−金属複合体と分離膜支持体がよく結合できるようにすることができる。また、前記製造されたナノ多孔膜は気孔のサイズのため微生物が濾過されることができず、前記ナノ多孔膜を水処理分離膜に使用した際に効果的に微生物を除去することができる。
【0016】
本発明において前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、カーボンナノ構造体と金属または金属酸化物とが接着または結合されてなることを特徴とする。より詳細には、本発明において前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、カーボンナノ構造体と金属または金属酸化物を混合して製造した混合物を含む。カーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜は、カーボンナノ構造体と金属または金属酸化物を混合して加熱または圧縮などの方法を用いて結合した混合物により製造されることもできる。
【0017】
また、本発明は、カーボンナノ構造体の直径サイズによりカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜の気孔サイズが制御されることを特徴とする。前記カーボンナノ構造体の種類に応じてカーボンナノ構造体の直径が異なるためカーボンナノ構造体の種類により気孔のサイズを制御することができる。本発明によるナノ多孔膜は前記カーボンナノ構造体の間に気孔を有し、前記気孔サイズが0.1〜500nmであることを特徴とする。また本発明においてナノ多孔膜は分離膜に応用されることができる。
【0018】
以下、前記カーボンナノ構造体−金属複合体についてより詳細に説明する。
【0019】
前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、還元性溶媒に分散させたカーボンナノ構造体の分散液と金属前駆体とを混合し熱処理を施して製造することを特徴とする。
【0020】
前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、前記分散液に安定剤をさらに含めて混合し、熱処理を施して製造してもよい。
【0021】
本発明において前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、カーボンナノ構造体と金属または金属酸化物が結合されたものであり、前記カーボンナノ構造体は、単層カーボンナノチューブ(single wall carbon nanotube)、二層カーボンナノチューブ(double wall carbon nanotube)、多層カーボンナノチューブ(multi wall carbon nanotube)、カーボンナノホーン(carbon nano horn)、カーボングラフェン(carbon graphene)、カーボンナノファイバー(carbon nano fiber)またはこれらの混合物から選択されてもよく、単層カーボンナノチューブ(single wall carbon nanotube)、二層カーボンナノチューブ(double wall carbon nanotube)、多層カーボンナノチューブ(multi wall carbon nanotube)を使用することがさらに好ましい。前記カーボンナノ構造体の種類に応じて本発明により製造されたナノ多孔膜の気孔サイズを制御することができる。
【0022】
前記金属は、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Hf、Ir、Pt、Tl、Pb及びBiからなる群から選択される一つ以上の金属を含んでもよい。
【0023】
前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、多価アルコール、グリコールエーテル類またはその混合物から選択される還元性溶媒に前記カーボンナノ構造体を分散させた後、安定剤と金属前駆体とを加えて熱処理を施すことにより製造してもよい。
【0024】
より具体的に、前記カーボンナノ構造体−金属複合体は、カーボンナノ構造体を還元性溶媒に分散させて分散液を製造する段階と、前記分散液に金属前駆体を加えて混合液を製造する段階と、前記混合液に熱処理を施して金属前駆体を還元させる段階と、を含んで製造されてもよい。また、前記分散液に安定剤をさらに含んで製造されてもよい。
【0025】
前記多価アルコールは、下記化学式1のグリコール類、グリセリン、トレイトール、アラビトール、グルコース、マンニトール、ガラクチトール及びソルビトールからなる群から選択され、前記グリコールエーテル類は、下記化学式2の化合物から選択されて製造されてもよい。
【0026】
[化学式1]
H−(OR−OH
【0027】
[化学式2]
−(OR−OR
【0028】
(前記化学式中、R及びRは、独立して直鎖または分岐鎖の(C〜C10)アルキレンから選択され、Rは水素原子、アリル、(C〜C10)アルキル、(C〜C20)アリール、または(C〜C30)アラルキル基であり、Rはアリル、(C〜C10)アルキル、(C〜C20)アリール、(C〜C30)アラルキル基、または(C〜C10)アルキルカルボニル基から選択され、前記アルキルカルボニル基のアルキルは炭素鎖に二重結合を含んでもよく、n及びmは独立して1〜100の整数である。)
【0029】
前記グリコール類は、例えば、エチレングリコール(Ethylene glycol)、ジエチレングリコール(Diethylene Glycol)、トリエチレングリコール(Triethylene Glycol)、テトラエチレングリコール(Tetraethylene Glycol)、ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol)、プロピレングリコール(Propylene Glycol)、ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol)、ポリプロピレングリコール(Polypropylene Glycol)、へキシレングリコール(Hexylene Glycol)などであってもよく、エチレングリコールがより好ましいが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0030】
前記グリコールエーテル類に含まれる化合物は、例えば、メチルグリコール(Methyl Glycol)、メチルジグリコール(Methyl Diglycol)、メチルトリグリコール(Methyl Triglycol)、メチルポリグリコール(Methyl Polyglycol)、エチルグリコール(Ethyl Glycol)、エチルジグリコール(Ethyl Diglycol)、ブチルグリコール(Butyl Glycol)、ブチルジグリコール(Butyl Diglycol)、ブチルトリグリコール(Butyl Triglycol)、ブチルポリグリコール(Butyl Polyglycol)、ヘキシルグリコール(Hexyl Glycol)、ヘキシルジグリコール(Hexyl Diglycol)、エチルヘキシルグリコール(Ethyl Hexyl Glycol)、エチルヘキシルジグリコール(Ethyl Hexyl Diglycol)、アリルグリコール(Allyl Glycol)、フェニルグリコール(Phenyl Glycol)、フェニルジグリコール(Phenyl Diglycol)、ベンジルグリコール(Benzil Glycol)、ベンジルジグリコール(Benzil Diglycol)、メチルプロピレングリコール(Methyl Propylene Glycol)、メチルプロピレンジグリコール(Methyl Propylene Diglycol)、メチルプロピレントリグリコール(Methyl Propylene Triglycol)、プロピルプロピレングリコール(Propyl Propylene Glycol)、プロピルプロピレンジグリコール(Propyl Propylene Diglycol)、ブチルプロピレングリコール(Butyl Propylene Glycol)、ブチルプロピレンジグリコール(Butyl Propylene Diglycol)、フェニルプロピレングリコール(Phenyl Propylene Glycol)、メチルプロピレングリコールアセテート(Methyl Propylene Glycol Acetate)、ポリメチルグリコールなどであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明による還元性溶媒として前記グリコール類をグリコールエーテル類と混合して使用することが好ましく、具体的に、グリコール類とメチルポリグリコールを混合して使用することがさらに好ましい。
【0031】
前記安定剤は、界面活性剤、水溶性高分子、アミン類及びこれらの混合物から選択して使用してもよい。前記水溶性高分子の具体例としてはポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)が挙げられ、アミン類は、一次アミン、二次アミン、三次アミン、芳香族アミン及びこれらの混合物から選択されてもよく、より具体的には、オレイルアミン(Oleylamine)が挙げられる。
【0032】
前記金属前駆体は、硝酸銀(Silver Nitrate)、銀アセチルアセトネート(Silver Acetylacetonate)、銀アセテート(Silver Acetate)、銀カーボネート(Silver Carbonate)、銀クロライド(Silver Chloride)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum hydroxide)、アルミニウムクロライド(Aluminum Chloride)、アルミニウムアセチルアセトネート(Aluminum Acetylacetonate)、アルミニウムアセテート(Aluminum Acetate)、アルミニウムナイトレート(Aluminum Nitrate)、マンガンカーボネート(Manganese Carbonate)、マンガンクロライド(Manganese Chloride)、マンガンナイトレート(Manganese Nitrate)、マンガンアセチルアセトネート(Manganese Acetylacetonate)、マンガンアセテート(Manganese Acetate)、亜鉛クロライド(Zinc Chloride)、亜鉛ナイトレート(Zinc Nitrate)、亜鉛アセテート(Zinc Acetate)、亜鉛アセチルアセトネート(Zinc Acetylacetonate)、コバルトアセチルアセトネート(Cobalt Acetylacetonate)、コバルトアセテート(Cobalt Acetate)、銅アセチルアセトネート(Copper Acetylacetonate)、銅アセテート(Copper Acetate)、ニッケルアセチルアセトネート(Nickel Acetylacetonate)、ニッケルアセテート(Nickel Acetate)、鉄アセチルアセトネート(Iron Acetylacetonate)、鉄アセテート(Iron Acetate)、チタンアセテート(Titanium Acetate)、チタンアセチルアセトネート(Titanium Acetylacetonate) 及びこれらの水化物から選択され使用されてもよい。
【0033】
本発明において炭素構造体−金属複合体は、前記のように、1〜500nmの球状金属粒子及びカーボンナノチューブからなるカーボンナノ構造体−金属複合体を使用してもよい。
【0034】
以下、本発明によるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜についてより詳細に説明する。
【0035】
本発明は、前記カーボンナノ構造体−金属複合体を前記分離膜支持体にコーティングして圧着、加熱または焼結して製造し、カーボンナノ構造体の間にナノ気孔を有する構造からなるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜を提供する。前記ナノ気孔のサイズは、0.1nm〜500nmからなるため微生物が前記ナノ多孔膜を通過することができず、微生物除去効果を有することができる。より具体的に、本発明によるナノ多孔膜は抗菌水処理の分離膜に使用することができる。
【0036】
本発明は、カーボンナノ構造体−金属複合体を溶媒及び界面活性剤に分散させた後、分離膜支持体の片面または両面にコーティングする段階と、前記コーティングされた分離膜支持体に熱処理を施して前記金属を前記分離膜支持体に融着させる段階と、を含むカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜の製造方法を提供する。
【0037】
前記分離膜支持体には、HEPAフィルター、ULPAフィルター、ガラス繊維フィルター、ガラス粉末焼結フィルター、高分子不織布フィルター、テフロン分離膜フィルター、金属粉末焼結フィルター及び金属ワイヤ織りフィルターなどが使用されてもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0038】
本発明で前記コーティングは、カーボンナノ構造体−金属複合体を分離膜支持体に濾過して前記分離膜支持体に残存するカーボンナノ構造体−金属複合体を圧着することを特徴とする。
【0039】
本発明において、前記金属のサイズは1〜500nmであり、前記金属粒子がナノサイズである場合、低温で溶融する特徴がある。そのため、本発明では熱処理を100〜700℃、より好ましくは100〜500℃で施し、前記金属が銀である場合、100〜300℃で熱処理を施すことができる。前記金属粒子を溶融してカーボンナノ構造体−金属複合体を互いに連結し、網状構造のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜を製造することができる。また、本発明において前記温度で熱処理を施すことにより、分離膜支持体が溶融されずカーボンナノ構造体−金属複合体が前記分離膜支持体に融着されることができるようにする長所がある。
【0040】
より具体的に説明すると、カーボンナノ構造体−金属複合体を分離膜支持体に結合させる原理は次のとおりである。カーボンナノ構造体自体は互いの間に結合力を有していない。しかし、カーボンナノ構造体−金属複合体の場合、金属が結合されており、金属粒子がナノサイズである場合、低温で溶融する特徴がある。このような金属成分を用いてカーボンナノ構造体−金属複合体に熱処理を施して互いを連結し、前記分離膜支持体に融着させて網状構造のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜を製造することができる。
【0041】
より具体的に、本発明で前記金属として銀を使用してもよく、銀を含むナノ多孔膜は抗菌水処理の分離膜に使用してもよい。前記銀は、カーボンナノ構造体に対して5〜70重量%含むことにより抗菌性を効果的に示すことができる。5重量%より少ないとカーボンナノチューブを網状構造に製造することが難しく、70重量%を超えると分離膜を銀が塞ぐため液体の流れが円滑にならないという問題点がある。
【0042】
下記の図3、図4及び図5の写真は、カーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜に抗菌効果があることを確認することができる写真であり、図面に対する説明は以下の実施例及び試験例でより具体的に説明する。本発明により製造されたカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜を分離膜として使用した場合、細菌による分離膜詰まり現象がないため分離膜の寿命を長くするナノ−分離膜を提供することができる。
【0043】
カーボンナノ構造体−金属複合体は、界面活性剤100重量部に対して10〜50重量部を混合して分散することができ、前記範囲においてカーボンナノ構造体−金属複合体の絡みを防止し、効果的に分散することができる。
【0044】
前記溶媒は、水、アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル類及びこれらの混合物からなる群から選択して使用してもよい。具体的に、前記アルコールは、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクチルアルコールからなる群から選択して使用してもよく、プロピルアルコールを使用することがより好ましい。
【0045】
前記多価アルコール、グリコールエーテル類に対する詳細な説明は、前記カーボンナノ構造体−金属複合体の製造方法説明に記載しているためここでは省略する。
【0046】
本発明において使用される前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びこれらの混合物から選択されてもよい。
【0047】
より具体的に、前記界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium bromide)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium chloride)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate)、ステアリン酸(Stearic Acid)、メチルグルコシド(Methyl glucoside)、オクチルグルコシド(Octyl glucoside)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Polyoxyethylene sorbitan monolaurate)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Polyoxyethylene sorbitan monopalmitate)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Polyoxyethylene sorbitan monostearate)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Polyoxyethylene sorbitan monooleate)、ソルビタンモノラウレート(Sorbitan monolaurate)、エチレングリコールモノラウレート(Ethylene glycol monolaurate)、プロピレングリコールモノラウレート(Propylene glycol monolaurate)、トリグリセロールモノラウレート(Triglycerol monostearate)またはその混合物などが挙げられ、臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは塩化セチルトリメチルアンモニウムがより好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0048】
本発明による製造方法において、カーボンナノ構造体−金属複合体を溶媒に分散する方法は、公知の方法を全て使用することができるが、超音波処理による分散が製造法が容易で分散性に優れているためより好ましい。カーボンナノ構造体−金属複合体は、ほとんどが互いに絡んでいることを電子顕微鏡で確認することができる。このようなカーボンナノ構造体−金属複合体の絡みは、前記分離膜支持体にコーティングする際に、カーボンナノ構造体−金属複合体を均一に分散することを妨害する可能性があるため、超音波処理は、カーボンナノ構造体−金属複合体ナノ−分離膜を製造する際に必ず行わなければならない工程である。
【0049】
本発明による製造方法において、分離膜支持体の片面または両面にコーティングする際の前記コーティング法は、例えば、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、スプレーコーティング(spray coating)、バーコーティング(bar coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)、及び前記支持体に濾過してコーティングする方法などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0050】
前記コーティングされた分離膜支持体は、100〜700℃で3〜10時間熱処理を施すことにより、金属を溶融または焼結して網状構造を形成することができるが、前記熱処理は、例えば、通常の低温オーブンで行う方法、熱ローラーを通過させる方法、または高温の電気炉で行う方法などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0051】
添付の図1及び図2は、本発明により製造されたカーボンナノチューブ−金属複合ナノ多孔膜の走査型電子顕微鏡写真を示すものであって、前記ナノ多孔膜は、金属粒子が溶融して網状構造を成し、ナノサイズの気孔が形成されていることを確認することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜は、前記カーボンナノ構造体のサイズに応じてナノ多孔膜の気孔サイズを制御することができるという長所がある。
【0053】
本発明によるカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜は、前記カーボンナノ構造体−金属複合体の金属のサイズが数nm〜数百nmであるため、低温で溶融する特徴を有する。従って、低温で熱処理を施すことにより、前記金属とカーボンナノ構造体を網状に連結し、前記金属を分離膜支持体に融着させることで製造される新しい形態のナノ多孔膜及びその製造方法を提供することができる。比較的低温で熱処理を施しても、前記金属が溶融または焼結されてカーボンナノ構造体−金属複合体を網状構造に連結し、前記カーボンナノ構造体が分離膜支持体によく付着できるようにすることができる。また、前記製造されたナノ多孔膜は、気孔のサイズのため微生物が濾過されることができず、前記ナノ多孔膜を水処理分離膜に使用した際に効果的に微生物を除去することができる。
【0054】
また、本発明によるナノ多孔膜は、水処理分離膜として使用する場合、分離膜の問題、即ち細菌が原因となる詰まり現象による分離膜寿命の問題を解決することができる。また水質及び大気汚染の誘発物質を効果的に除去することができるため、水質及び大気浄化用フィルターとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1で製造されたカーボンナノ構造体−銀複合ナノ多孔膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【図2】実施例2で製造されたカーボンナノ構造体−コバルト複合ナノ多孔膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【図3】試験例1のa)によるカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗菌試験結果の写真である。
【図4】試験例1のb)によるカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の大腸菌(E.Coli)抗菌試験結果の写真である。
【図5】試験例2によりカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の黄色ブドウ球菌(S.aureus)を濾過した後、濾過された液体の細菌培養の写真である。
【図6】試験例4による対照群(control)のリアルタイムPCR(Real−Time PCR)の反応結果を示すグラフである。
【図7】試験例4によりカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜のコクサッキーウィルス濾過後に濾過された液体のReal−Time PCR反応結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明を具体的に説明するために例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0057】
[製造例1]カーボンナノチューブ−銀複合体の製造
500ml丸底フラスコに薄型多層カーボンナノチューブ(Nanotec、Thin Multi−wall CNT grade)0.3gを注入し、エチレングリコール(EG)280mlを丸底フラスコ反応器に投入した。攪拌機を装着して30分間攪拌した後、反応器を超音波洗浄機に入れて3時間超音波処理し、をエチレングリコールに分散させた。この際反応器の温度は50℃を超えないようにした。超音波処理が終了すると、攪拌機をまた装着して、温度計と冷却用コンデンサを連結した。反応器を攪拌しながらポリビニルピロリドン(PVP;Poly vinylpyrrolidone、Fluka製、平均分子量(Mw):40、000)1.68g、オレイルアミン(Oleylamine)5.6mlを投入してから硝酸銀(Silver Nitrate;AgNO3)1.102gを投入した。反応器に真空ポンプを連結し、反応器内部の空気を除去して窒素に置換した。窒素を連続して投入し、窒素が反応器内部を通過して外部に流れるようにして酸素流入を阻止した。フラスコ下部にマントルを設け、反応器内部の温度を40分間200℃にまで上げて、1時間反応させた。還元反応が終了すると、3時間にわたって反応器内の混合物の温度を常温まで徐々に下げた。合成されたカーボンナノチューブ−銀複合体を濾紙を用いて濾過し、エチルアセテート(Ethyl acetate)とヘキサン(Hexane)で数回洗浄してカーボンナノチューブ−銀複合体を得た。カーボンナノチューブ−銀複合体の走査型電子顕微鏡(SEM)分析結果、銀(Silver)粒子が球状であり一定のサイズで均一に分散されていることが確認できた。
【0058】
[製造例2]カーボンナノチューブ−コバルト複合体の製造
500ml丸底フラスコにカーボンナノチューブ(Hanwha nanotec、CM−95)0.3gを注入し、トリエチレングリコール(TEG)128mlを反応器に投入した。攪拌機を装着して30分間攪拌した後、反応器を超音波洗浄機に入れて3時間超音波処理し、カーボンナノチューブを分散させた。この際反応器の温度は50℃を超えないようにした。超音波処理が終了すると、攪拌機をまた装着して、温度計と冷却用コンデンサを連結した。反応器溶液を攪拌しながらメチルポリグリコール(MPG、CH(OCHCH)nOH、n=4〜5、Hannong Chemicals Inc.、製品名:MPG)4.26mlをフラスコ反応器に投入してからコバルトアセチルアセトネート3.48gをさらに投入した。反応器に真空ポンプを連結し、反応器内部の空気を除去して窒素に置換した。窒素を連続して投入し、窒素が反応器内部を通過して外部に流れるようにして酸素の流入を阻止した。フラスコ下部にマントルを設け、1時間にわたって反応器内部温度を280℃にまで上げ、30分間維持した。還元反応が終了すると、3時間にわたって反応器内の混合物の温度を常温まで徐々に下げた。合成された複合体を濾紙を用いて濾過し、エタノールで数回洗浄してカーボンナノチューブ−コバルト複合体を得た。カーボンナノチューブ−コバルト複合体の走査型電子顕微鏡(SEM)分析結果、コバルト粒子が球状であり一定のサイズで均一に分散されていることが確認できた。
【0059】
[製造例3]カーボンナノチューブ−銅複合体の製造
金属塩として銅アセチルアセトネート4.04gを使用することを除いては製造例2と同一の条件下でカーボンナノチューブ−銅複合体を製造した。製造されたカーボンナノチューブ−銅複合体の走査型電子顕微鏡(SEM)分析結果、銅粒子が球状に近く、一定のサイズで均一に分散されていることが確認できた。
【0060】
[製造例4]カーボンナノチューブ−ニッケル複合体の製造
金属塩としてニッケルアセチルアセトネート3.48gを使用することを除いては製造例2と同一の条件下でカーボンナノチューブ−ニッケル複合体を製造した。製造されたカーボンナノチューブ−ニッケル複合体の走査型電子顕微鏡(SEM)分析結果、ニッケル粒子が球状に近く、一定のサイズで均一に分散されていることが確認できた。
【実施例1】
【0061】
カーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の製造
250ml丸底フラスコに前記製造例1で製造されたカーボンナノチューブ−銀複合体0.5g、超純水100ml、塩化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium chloride、28wt%)3mlを注入し、25〜30℃で超音波を使用して2時間分散処理した。気孔サイズ0.3μmのHEPA濾紙を直径6.2cmの円形に切断してフィルターに装着した後、前記超音波を使用して分散した分散液を30ml注入し、濾過した。濾紙を通過できなかった固形粉が前記濾紙にコーティングされると、均一なガラス板の間に入れて圧着し、150℃のオーブンで8時間熱処理を施して前記銀を濾紙に融着させた。常温に冷却した後、直径5cmに切断し、濾過装置(Advantec KP−47H)に装着して、エタノール50ml、超純水50mlで界面活性剤(cetyltrimethylammonium chloride)と微細残渣を洗浄した。また、150℃のオーブンで2次熱処理を施してカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜を製造した。製造したカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して下記図1に示しており、銀粒子がカーボンナノチューブに分散していることが確認できた。
【実施例2】
【0062】
カーボンナノチューブ−コバルト複合ナノ多孔膜の製造
250ml丸底フラスコに前記製造例2で製造されたカーボンナノチューブ−コバルト複合体0.5g、超純水100ml、塩化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium chloride、28wt%)3mlを注入し、25〜30℃で超音波を使用して2時間分散処理した。気孔サイズ0.3μmのHEPA濾紙を直径6.2cmの円形に切断してフィルターに装着した後、前記超音波を使用して分散させた分散液を30ml注入し、濾過した。濾紙を通過できなかった固形粉が前記濾紙にコーティングされると、均一なガラス板の間に入れて圧着し、450℃のオーブンで8時間熱処理を施して前記コバルトを濾紙に融着させた。常温に冷却した後、直径5cmに切断し、濾過装置(Advantec KP−47H)に装着して、エタノール50ml、超純水50mlで界面活性剤(cetyltrimethylammonium chloride)と微細残渣を洗浄した。製造したカーボンナノチューブ−コバルト複合ナノ多孔膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して下記図2に示しており、コバルト粒子がカーボンナノチューブに分散されていることが確認できた。
【実施例3】
【0063】
カーボンナノチューブ−銅複合ナノ多孔膜の製造
複合体として製造例3で合成したカーボンナノチューブ−銅複合体を使用することを除いては実施例2と同一の条件下でカーボンナノチューブ−銅複合ナノ多孔膜を製造した。製造されたカーボンナノチューブ−銅複合ナノ多孔膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で分析した結果、銅粒子がカーボンナノチューブに分散されていることが確認できた。
【実施例4】
【0064】
カーボンナノチューブ−ニッケル複合ナノ多孔膜の製造
複合体として製造例4で合成したカーボンナノチューブ−ニッケル複合体を使用することを除いては実施例2と同一の条件下でカーボンナノチューブ−ニッケル複合ナノ多孔膜を製造した。製造されたカーボンナノチューブ−ニッケル複合ナノ多孔膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で分析した結果、ニッケル粒子がカーボンナノチューブに分散されていることが確認できた。
【0065】
[試験例1]カーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の抗菌試験
a)黄色ブドウ球菌の抗菌性試験
BHI(Brain Heart Infusion)液体培地を用いてStaphylococcus aureus(S.aureus、黄色ブドウ球菌)を37℃で12時間培養した。この培養液の細菌数が103CFU/mlになるように希釈した液100ulをBHI平板培地上に塗抹(smear)した後、実施例1で製造したナノ分離膜の上に乗せて37℃で24時間培養した。培養後に分離膜を乗せた部分にコロニー(colony)が増殖したかを観察して抗菌力有無を判別した。下記図3は24時間培養後に観察された写真である。
【0066】
下記図3のように実験した菌株に対してカーボンナノチューブ−銀分離膜を乗せたプレート(plate)でコロニー(colony)が増殖しなかったため、カーボンナノチューブ−銀ナノ分離膜に抗菌力があることが確認できた。
【0067】
b)大腸菌の抗菌性試験
Staphylococcus aureus(S.aureus、黄色ブドウ球菌)の代りに大腸菌(Escherichia coli;E.coli)を使用することを除いては前記試験例1のa)と同様に実施した。下記図4は、試験例1のb)で24時間培養後に観察した写真である。カーボンナノチューブ−銀分離膜を乗せたプレート(plate)でコロニー(colony)が増殖しなかったため、カーボンナノチューブ−銀ナノ分離膜に抗菌力があることが確認できた。
【0068】
[試験例2]カーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の細菌濾過試験
BHI(Brain heart infusion)液体培地を用いてStaphylococcus aureus(S.aureus、黄色ブドウ球菌)を37℃で12時間培養した。
【0069】
前記実施例1で製造されたカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜を用いて培養液を濾過した後、濾過された液をBHI平板培地に塗抹し、37℃で12時間培養して観察した写真を下記図5に示した。細菌が増殖する場合、濾過されなかったことを意味し、細菌が増殖しなかった場合、濾過されたことを意味すると判断した。試験結果、下記図5に示されたように、Staphylococcus aureus(S.aureus、黄色ブドウ球菌)液を濾過した液体は、平板培地で細菌が検出されなかったため、Staphylococcus aureus(S.aureus、黄色ブドウ球菌)が濾過されたことが分かった。
【0070】
[試験例3]カーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜の細菌濾過試験
BHI(Brain heart infusion)液体培地を用いて大腸菌(Escherichia coli; E.colius)を37℃で12時間培養した。Staphylococcus aureus (S.aureus、黄色ブドウ球菌)の代りに大腸菌(Escherichia coli;E.coli)を使用することを除いては前記試験例2と同様に実施した。
【0071】
前記実施例1で製造されたカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜を用いて濾過した後、濾過された液をBHI平板培地に塗抹し、37℃で12時間培養して観察した。試験結果、Escherichia coli(E.coli、大腸菌)液を濾過した液体は、平板培地で細菌が検出されなかったため、Escherichia coli(E.coli、大腸菌)が濾過されたことが分かった。
【0072】
[試験例4]カーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜のウイルス濾過試験
エンテロウイルスを用いてカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜のウイルス濾過試験を行った。エンテロウイルスは、サイズが28〜30nmである単一ストランドのRNA誘電体からなるエンベロープウイルスである。コクサッキーウィルス(coxsackievirus)は、エンテロウイルス(enterovirus;EV)のうち一つであって、29種の血清型が公知されており、A群とB群に区分する。本実験ではコクサッキーウィルスA9 type(ATCC−VR186)を使用して濾過実験を行った。
【0073】
先ず、コクサッキーウィルスA9を100℃で20分間加熱して活性を無くした後、実験に使用した。ウイルス液1,000ulをカーボンナノチューブ−銀複合ナノ多孔膜に1時間ほど通過させた後、濾過されたウイルス液250ulをAccuprep Viral RNA Extraction kit(抽出キット;Bioneer、Korea)を使用してRNAを抽出すると同時に、濾過していないウイルス液250ulからもRNAを抽出して対照群(control)に使用した。RNA抽出液の最後の体積を50ulとし、リアルタイムPCR(Real−Time PCR)実験において45ulを使用した。Real−Time PCR実験にAccupower Enterovirus Real−Time RT−PCR kit(増幅キット;Bioneer、Korea)を使用してコクサッキーウィルスRNAを増幅し、コクサッキーウィルスの存在有無を確認した。
【0074】
試験の結果、対照群(control)の増幅結果は図6のとおりであり、ナノ多孔膜濾過実験群の結果は、図7のようにコクサッキーウィルス A9は増幅されず、IPC(Internal positive control)が増幅されて、コクサッキーウィルスが存在しないことが分かった。従って、コクサッキーウィルス液の濾過は、ウイルスがフィルターを通過することができないということを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロまたはナノ気孔を有する分離膜支持体の片面または両面にカーボンナノ構造体−金属複合体がコーティングされたカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項2】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、カーボンナノ構造体と金属または金属酸化物とが接着または結合により形成されることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項3】
カーボンナノ構造体の直径サイズに応じて前記カーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜の気孔サイズを制御することを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノ構造体−金属複合体ナノ多孔膜。
【請求項4】
気孔サイズが、0.1〜500nmであることを特徴とする請求項3に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項5】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、還元性溶媒に分散させたカーボンナノ構造体の分散液と金属前駆体とを混合し熱処理を施して製造されることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項6】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、分散液と金属前駆体に安定剤をさらに含めて混合し熱処理を施して製造されることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項7】
還元性溶媒が、多価アルコール、グリコールエーテル類またはその混合物から選択され、前記多価アルコールが、下記化学式1のグリコール類、グリセリン、トレイトール、アラビトール、グルコース、マンニトール、ガラクチトール及びソルビトールからなる群から選択され、前記グリコールエーテル類が、下記化学式2の化合物から選択されることを特徴とする請求項5又は6に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
[化学式1]
H−(OR−OH
[化学式2]
−(OR−OR
(前記化学式中、R及びRは、独立して直鎖または分岐鎖の(C〜C10)アルキレンから選択され、Rは水素原子、アリル、(C〜C10)アルキル、(C〜C20)アリール、または(C〜C30)アラルキル基であり、Rはアリル、(C〜C10)アルキル、(C〜C20)アリール、(C〜C30)アラルキル基、または(C〜C10)アルキルカルボニル基から選択され、前記アルキルカルボニル基のアルキルは炭素鎖に二重結合を含んでもよく、n及びmは独立して1〜100の整数である。)
【請求項8】
カーボンナノ構造体が、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボングラフェン、カーボンナノファイバーまたはこれらの混合物から選択される請求項2に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項9】
金属が、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Hf、Ir、Pt、Tl、Pb及びBiからなる群から選択される一つ以上の金属を含む請求項2に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項10】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、分離膜支持体にコーティングされ、その後圧着、加熱または焼結に供される請求項1に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項11】
カーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜が、抗菌水処理に使用される請求項1に記載のカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜。
【請求項12】
カーボンナノ構造体−金属複合体を界面活性剤の存在下で溶媒に分散させた後、分離膜支持体の片面または両面にコーティングする段階と、
前記コーティングされた分離膜支持体に熱処理を施して前記金属を前記分離膜支持体に融着する段階と、
を含むカーボンナノ構造体−金属複合ナノ多孔膜の製造方法。
【請求項13】
金属が1〜500nmの大きさである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱処理が100〜700℃で施される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
金属が銀であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
金属が銀の場合、熱処理が100〜300℃で施される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
銀がカーボンナノ構造体の全量に対して5〜70重量%含まれる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
コーティングが、カーボンナノ構造体−金属複合体を分離膜支持体により濾過し、前記分離膜支持体に残存するカーボンナノ構造体−金属複合体を圧着することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、還元性溶媒に分散したカーボンナノ構造体の分散液と金属前駆体とを混合し熱処理を施して製造されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、分散液と金属前駆体に安定剤をさらに含めて混合し熱処理を施して製造されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
カーボンナノ構造体−金属複合体が、界面活性剤100重量部に対して10〜50重量部を混合して分散させる請求項12に記載の方法。
【請求項22】
溶媒が、水、アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル類及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項23】
界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びこれらの混合物から選択される請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517894(P2012−517894A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550074(P2011−550074)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001869
【国際公開番号】WO2010/110624
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(502235773)バイオニア コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】