説明

ナノ多孔質金属及びその製造方法

【課題】バルク金属と大きく異なる性質を持ち、物理分野や化学分野で注目すべき多くの機能を有すると期待されるナノ多孔質金属を提供する。
【解決手段】ナノ多孔質金属は、腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属と、該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属と、の少なくとも二つの金属を含有する合金を、該腐食作用を有する媒体に接触せしめて、該合金を、低温条件下、ナノ多孔質金属を形成するに有効な時間の間、脱成分腐食せしめ、平均気孔サイズ約33nm以下〜約5nm以下を有しており、ローダミン6Gを表面に吸着せしめてのラマン散乱信号測定で著
しい表面増強ラマン散乱が観察されるものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ多孔質金属(ナノポーラス金属)及びその製造方法に関する。特には、本発明は、ナノ多孔質金属構造物、例えば、ナノ多孔質金属薄膜(又は金属箔; metal films)及びその製造方法に関しており、該金属は、平均気孔サイズ(average pore size)として約20nmあるいはそれ以下、さらには約10nmあるいはそれ以下、特には、約8nmあるいは
それ以下、例えば、約5nmあるいはそれ以下であるものであり、該ナノ多孔質金属薄膜基
板上に吸着せしめたローダミン 6Gのラマン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱が
観察されることを可能にする性状構造特性及び/又は性状を有することを特徴とするナノ多孔質金属である。
【背景技術】
【0002】
室温でAu-Ag合金をエッチングすることにより、ポーラスな構造を有する金薄膜を生成
できることは長年知られていた〔非特許文献1: Forty, A. J., Nature, 282, pp.597-598 (1979); 非特許文献2: Pickering, H. W., Corros. Sci., 23, pp.1107-1120 (1983);
非特許文献3: Oppenheim, I. et al., Science, 254, pp.687-689 (1991); 非特許文献4: Erlebacher, J. et al., Nature, 410, pp.450-453 (2001)〕。ナノポーラス金は、
バルク金と大きく異なる性質を持ち、物理分野や化学分野で注目すべき多くの機能を有すると期待されている。例えば、ナノポーラス金は大きな表面積と優れた電気伝導性、熱伝導性を持つことから、触媒、ナノデバイスのナノ構造としての応用が期待できる〔非特許文献5: Rolison, D. R., Science, 299, pp.1698-1701 (2003); 非特許文献6: Ding, Y. et al,, J. Am. Chem. Soc. 126, pp.6876-6877 (2004);非特許文献7: Ding, Y. et al., Angew. Chem. Int. Edit. 44, pp.4002-4006 (2005)〕。
しかし、これまで平均ナノ孔サイズとしておおよそ5nm程度の非常に小さなナノ多孔質
を有しているナノポーラス金を得たり、当該ナノ孔サイズを低減して小さなサイズのものとしたり、所定のナノ孔サイズを有するものを、選択的に製造することは不可能であったり、かなり困難であった〔非特許文献8: Kramer, D. et al., Nano Lett. 4, pp.793-796 (2004)〕。
【0003】
【非特許文献1】Forty, A. J., Nature, 282, pp.597-598 (1979)
【非特許文献2】Pickering, H. W., Corros. Sci., 23, pp.1107-1120 (1983)
【非特許文献3】Oppenheim, I. et al., Science, 254, pp.687-689 (1991)
【非特許文献4】Erlebacher, J. et al., Nature, 410, pp.450-453 (2001)
【非特許文献5】Rolison, D. R., Science, 299, pp.1698-1701 (2003)
【非特許文献6】Ding, Y. et al,, J. Am. Chem. Soc. 126, pp.6876-6877 (2004)
【非特許文献7】Ding, Y. et al., Angew. Chem. Int. Edit. 44, pp.4002-4006 (2005)
【非特許文献8】Kramer, D. et al., Nano Lett. 4, pp.793-796 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノ多孔質金属は、バルク金属と大きく異なる性質を持ち、物理分野や化学分野で注目すべき多くの機能を有すると期待されている。例えば、ナノ多孔質金属は、大きな表面積と特異的なサイズ効果を示し、優れた電気的性質、物理的及び化学的性質、物性、更には光科学的並びに電磁気的効果を持つと期待され、触媒、ナノデバイスのナノ構造体としての応用が期待できる。一次元またはより多くの次元でのナノ構造を有する物質のサイズを小さくすることで、物理的、化学的、機械的特性が劇的に変化し、それらの諸特性がナノスケールでのサイズや形状制御によりさらに調節できることが、理論的にも予測され且つ
実験によっても明らかとなっている〔Kubo, R., Kawabata, A. & Kobayashi, S. Electronic-properties of small particles. Ann. Rev. Mater. Sci. 14, 49-66 (1984); Kittel, C. Introduction to Solid State Physics. Eight Edition, John Wiley & Sons, Inc, P515, (2005)〕。
ナノ多孔質金属であって、平均ナノ孔サイズとしておおよそ5nm程度の非常に小さなナ
ノ多孔質を有しているものはこれまでその製造ができなかった。また、ナノ多孔質金属において、そのナノ孔サイズを低減して小さなサイズのものとしたり、所定の必要とされるナノ孔サイズを有するものを、自由に、正確に、且つ、選択的に製造することは不可能であったり、かなり困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、問題点を解決すべく鋭意研究を進めた結果、エッチング時間及び/又はエッチング温度を制御することで、ナノ多孔質金属のナノ孔のサイズを調整することに成功し、さらに、ナノ多孔質金属の優れた機能化にも成功し、本発明を完成させた。
本発明は、以下を提供するものである。
〔1〕腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属と、該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属と、の少なくとも二つの金属を含有する合金を、該腐食作用を有する媒体に接触せしめて、該合金を、低温条件下、ナノ多孔質金属を形成するに有効な時間の間、脱成分腐食せしめ、平均気孔サイズ約33nm以下〜約5nm以下を有しており、ロ
ーダミン6Gを表面に吸着せしめてのラマン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱が観察されるものであるナノ多孔質金属を得ることを特徴とするナノ多孔質金属の製造方法。
〔2〕脱成分腐食が、約0℃〜約−42℃の温度の低温条件下に行われるものであることを
特徴とする上記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕脱成分腐食が、約−20℃〜約−42℃の温度の低温条件下に行われるものであることを特徴とする上記〔1〕記載の製造方法。
〔4〕脱成分腐食が、約30分間以上〜約8時間以上の時間の間行うものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載の製造方法。
〔5〕脱成分腐食が、約1時間以上〜約8時間以上の時間の間行うものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載の製造方法。
〔6〕出発合金が、Au-Ag合金であることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一
記載の製造方法。
〔7〕出発合金が、50wt%Au-50wt%Ag合金であることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕の
いずれか一記載の製造方法。
〔8〕腐食作用を有する媒体が硝酸を含有するものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の製造方法。
〔9〕腐食作用を有する媒体が濃硝酸であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の製造方法。
〔10〕平均気孔サイズ約10nm以下のナノ多孔を有していることを特徴とするナノ多孔質金属。
〔11〕ナノ多孔質金属が、平均気孔サイズ約33nm以下〜約5nm以下を有しており、ロー
ダミン6Gを表面に吸着せしめてのラマン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱が観察されるものであることを特徴とするナノ多孔質金属。
〔12〕腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属と、該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属と、の少なくとも二つの金属を含有する合金を、該腐食作用を有する媒体に接触せしめて、該合金を、温度及び処理時間を制御して、脱成分腐食せしめて平均気孔サイズを調節して所要の平均気孔サイズを有するナノ多孔質金属を得ることを特徴とするナノ多孔質金属の製造方法。
〔13〕平均気孔サイズ約20nm以下のナノ多孔と平均厚さサイズ約3nm以上〜約20nm以下
の金属からなる結合部を有していることを特徴とするナノ多孔質金属。
〔14〕平均気孔サイズ約10nm以下のナノ多孔と平均厚さサイズ約3nm以上〜約20nm以下
の金属からなる結合部を有していることを特徴とするナノ多孔質金属。
〔15〕平均気孔サイズ約10nm以下のナノ多孔と平均厚さサイズ約7nm以上の金属からな
る結合部を有していることを特徴とするナノ多孔質金属。
〔16〕平均気孔サイズ約10nm以下のナノ多孔と平均厚さサイズ約8nm以上の金属からな
る結合部を有していることを特徴とするナノ多孔質金属。
〔17〕平均気孔長さ約13nm以上のナノ多孔と平均長さサイズ約12nm以上の金属からなる結合部を有していることを特徴とする上記〔10〕〜〔16〕のいずれか一記載のナノ多孔質金属。
〔18〕平均気孔長さ約14nm以上のナノ多孔と平均長さサイズ約13nm以上の金属からなる結合部を有していることを特徴とする上記〔10〕〜〔16〕のいずれか一記載のナノ多孔質金属。
〔19〕平均気孔長さ約15nm以上のナノ多孔と平均長さサイズ約14nm以上の金属からなる結合部を有していることを特徴とする上記〔10〕〜〔16〕のいずれか一記載のナノ多孔質金属。
【発明の効果】
【0006】
本発明で合金を脱成分腐食せしめてナノ多孔質金属を生成する場合に、温度及び処理時間を制御して、正確に、所定のナノ孔サイズのものを得ることができるので、ラマン散乱測定用基板材料など、病気の検知、診断、モニタリングのための分子診断における医療用途の材料開発に有用である。本発明で約5nmあるいはそれ以下といったシングルナノサイ
ズの平均ナノ孔サイズを持つナノ多孔質金属を生成できることから、優れたナノ孔サイズ効果をもつ材料使用の用途開発に有用である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ナノ孔サイズを調節した機能性ナノ多孔質金属(ナノポーラス金属)及びその製造方法を提供する。特には、本発明は、ナノ孔サイズを調節した機能性ナノポーラス金などのナノ多孔質金属構造物、例えば、ナノ多孔質金属薄膜及びその製造方法を提供しており、好ましくは、該金属は平均気孔サイズとして約20nmあるいはそれ以下、さらには約10nmあるいはそれ以下、特には、約8nmあるいはそれ以下、例えば、約5nmあるいはそれ以下であるものであり、該ナノ多孔質金属薄膜基板上に吸着せしめたローダミン 6Gのラ
マン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱が観察されることを可能にする構造特性及び/又は性状を有するナノ多孔質金属である。
本発明は、エッチング温度とエッチング時間をコントロールすることで、合金を選択的成分腐食して得られる生成物ナノポーラス金属のナノ孔のそれぞれ等しい直径もしくは金属からなる結合部(又は結合帯あるいは領域; metal ligament)のそれぞれ等しい幅(又は厚み)により規定されるナノ孔のサイズを、それぞれ正確に、特定のサイズに制御すること、例えば、数十ナノメートルから3〜5ナノメートルまでの大きさの孔のサイズに調整する技術をあたえるものである。
本発明は、調節したナノ孔サイズを有する機能性ナノ多孔質金属の用途、例えば、センサー、ナノスケールウェーブガイド具、電磁気分野並びに光伝達分野などにおけるエンハンサー用材料、水素ガスなどのガスや元素、分子用の表面プラスモン共鳴(surface plasm
on resonance: SPR)のセンサー、表面増強ラマン散乱用センサー用材料としての使用を提供する。
【0008】
本明細書で「脱成分腐食」(dealloy, dealloying)とは、合金金属、合金金属材料、そ
の一部、あるいは合金金属箔(又は合金金属薄膜)を腐食作用(又はエッチング作用)を有する媒体と接触せしめて、該合金金属から少なくとも一種の金属構成成分を除去してナノ多孔質金属(ナノポーラス金属: nanoporous metal)、ナノ多孔質材料、その一部、あるいはナノ多孔質金属箔(又はナノ多孔質金属薄膜)を形成することを意味し、さらに、該合金から少なくとも一種の金属構成成分を除去し且つナノ多孔質金属(ナノ多孔質金属薄膜を含む)を形成するに充分な時間の間、該金属と該腐食作用を有する媒体とを接触せしめることを意味ししてよい。こうしたナノ多孔質金属とは、平均気孔サイズ(average pore size)として約33nmあるいはそれ以下の気孔サイズを示すといったナノ多孔質な(nanoporous)構造を有しているもの、さらには平均気孔サイズ約20nmあるいはそれ以下を示す
といったナノ多孔質な構造を有しているもの、より好ましくは、平均気孔サイズ約10nmあるいはそれ以下を示すといったナノ多孔質な構造を有しているもの、特には、平均気孔サイズ約8nmあるいはそれ以下、例えば、平均気孔サイズ約5nmあるいはそれ以下を示すといったナノ多孔質な構造を有しているものが挙げられる。
【0009】
本明細書で「金属箔」とは、金属合金からなる薄いシート及び/又は金属合金からなる薄膜を意味してよい。金属箔は、典型的な場合、約50nmあるいはそれ以上の厚さを有していてよく、また、約5μmあるいはそれ以下の厚さを有するもの、さらには、約1μmあるいはそれ以下の厚さを有するもの、例えば、500nmあるいはそれ以下の厚さを有するもの
などが挙げられる。金属箔を製造するのに使用される合金は、二種あるいはそれ以上の金属元素が構成成分として含まれていてよい。
ナノ多孔質金属を製造するのに使用する合金は、少なくとも二種の金属元素を構成成分として含有しているもので、例えば、該二種の金属元素の一方は腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属元素であり、他方は該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属元素が挙げられる。また、該二種の金属元素の一方はイオン化エネルギー(ionization energy、又はイオン化ポテンシャル: ionization potential)が他方より大きな
ものであり、一方、該二種の金属元素のうちの他方は前記金属元素よりイオン化ポテンシャルが低いものであるといったものであってもよい。
【0010】
当該合金を得るために使用される金属(金属元素)の組み合わせとしては、脱成分腐食をすることが可能であるようにその互いの化学的性状が異なったものとすることができる。金属元素としては、遷移金属元素、典型金属元素などからなる群から選択されたものが挙げられ、例えば、鉄族元素、白金族元素、銅族元素、亜鉛族元素、アルミニウム族元素、マンガン族元素、クロム族元素、土酸金属元素、チタン族元素、希土類元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、ランタノイド、アクチノイド、錫、鉛、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンなどから選択されたものであってよい。合金には、典型非金属元素が含有されていてよく、そうした元素としては、炭素族元素、窒素族元素、酸素族元素、ハロゲン、ホウ素などから選択されたものが挙げられる。
適している合金としては、それに限定されるものでなく、当該分野で当業者に知られているものの中から適宜適切なものを選択することもできるが、例えば、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などから選択されたものを含有している合金が挙げられる。より具体的な合金としては、Au-Ag
合金、Au-Cu合金、Zn-Cu合金、Pt-Cu合金、Ni-Al合金、Cu-Al合金などが挙げられる。好
適に脱成分腐食してナノポーラス金属を得るのに使用できる合金としては、Au-Ag合金、Zn-Cu合金などが挙げられる。
【0011】
本発明では、出発物質である合金としては、好適には、金属箔、金属澄などを使用する
。当該合金の箔は、好ましくは、約50nm〜約5μmの範囲の厚さを有するもの、さらには、約50nm〜約1μmの範囲の厚さを有するものであり、より好ましくは約50nm〜約500nmの範
囲の厚さを有するもの、あるいは約80nm〜約400nmの範囲の厚さを有するもの、さらに好
ましくは約100nm〜約360nmの範囲の厚さを有するもの、あるいは約100nm〜約130nmの範囲の厚さを有するものなどが挙げられる。好ましい具体例では、約250nmの厚さを有する金
属合金箔や約100nmの厚さを有する金属合金箔などが挙げられる。
【0012】
本発明の一つの態様では、金属合金は、様々な量比(パーセント)で構成金属元素を含有していてよい。例えば、金銀合金(Au-Ag合金)の場合では、重量比で約30%〜約80%の
銀(Ag)と残部として金(Au)を含有しているものが挙げられる。より好適な例としては、約50wt%Au及び約50wt%Agという量比で金及び銀を含有している合金、すなわち、50Au-50Ag
合金などが挙げられる。
金属箔は、例えば、次のようにして調製される。合金材料の金属元素を混合しルツボに入れて加熱熔解後金型に流し入れ冷却して合金インゴットを得る。合金は次に帯状に延ばされて延べとし、それを台切りで小片に切る。得られた合金板の小片(延金)を打紙にのせ、それを複数重ねてから、打ち延ばし、適宜、裁断しながら、本打ち延ばし工程を繰り返し、金属箔を得ることができる。金属箔は、市販されているものを使用することもでき、また、様々な厚みのものや様々な金銀配合比のものを入手できる。
【0013】
本発明で使用される腐食作用(又はエッチング作用)を有する媒体としては、当該金属合金から成分である金属のうちの少なくとも一種を選択的に溶解せしめることのできるものである。該腐食作用を有する媒体の組成は、脱成分腐食せしめられるべき金属合金の種類により適宜適切なものが選択される。該合金が二種以上の構成金属元素成分を含有している場合には当該構成金属元素成分のうちの少なくとも一種以上を溶解せしめるようにせしめられる。好適には、該腐食作用を有する媒体としては酸が挙げられる。本発明を実施するのに適している酸としては、有機酸及び無機酸が挙げられる。好ましくは、該酸としては、無機酸が挙げられ、より好ましくは、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸などの鉱酸が挙げられる。本発明のある種の好ましい態様では、該酸は硝酸、又は、過塩素酸であり、好ましくは、硝酸が挙げられる。酸は単独でも混合して使用するものでもよい。
【0014】
該腐食作用を有する媒体は、濃縮物であっても希釈物であってもよい。好ましくは、当該媒体は、濃硝酸などのような濃度の高い酸であってよい。本発明のある種の好ましい態様では、該媒体は、酸であり、少なくとも約1モルの濃度、好ましくは少なくとも約5モルの濃度、より好ましくは少なくとも約10モルの濃度、さらに好ましくは少なくとも約17モルの濃度を有するものが挙げられる。本発明の一つの好ましい態様では、該媒体は70容量%(volume%)硝酸である。
【0015】
本発明の一つの態様に従うと、該腐食作用を有する媒体による出発材料である合金の処理、すなわちは脱成分腐食処理は、室温あるいはそれより低温で行われる。より好適には、該脱成分腐食処理は、低温条件下で行われる。本発明のある種の好ましい態様では、該脱成分腐食は約0℃〜約−42℃の温度の低温条件下に行われ、より好ましくは、約−20℃
〜約−42℃の温度の低温条件下に行われる。また、該脱成分腐食は、任意の時間行うことができるが、好適には、該合金から少なくとも一種の金属構成成分を除去し且つナノ多孔質金属を形成するに充分な時間の間とされる。本発明のある種の好ましい態様では、該脱成分腐食は約30分間以上〜約8時間以上の時間の間行うものであってよく、好適には、約1時間以上〜約8時間以上の時間の間行うものであってよい。該脱成分腐食における処理温度並びに処理時間は、目的とするナノ多孔質金属が備えるべき性状に応じて適切な値を適宜選択できる。
【0016】
本発明の方法で得られる該ナノ多孔質金属は、典型的には、約1nm〜約33nmの範囲のサ
イズの孔(又は気孔: pore、あるいはトンネル: tunnel)を多数有しているものであり、ある場合には、約1.5nm〜約33nmの範囲のサイズの多数の気孔を有しているもの、好まし
くは約2nm〜約25nmの範囲のサイズの多数の気孔を有しているもの、さらに好ましくは約2.5nm〜約20nmの範囲のサイズの多数の気孔を有しているもの、また、約3nm〜約15nmの範
囲のサイズの多数の気孔を有しているもの、より好ましくは約3nm〜約10nmの範囲のサイ
ズの多数の気孔を有しているもの、さらに、好ましくは、約3nm〜約8nmの範囲のサイズの多数の気孔を有しているもの、また、約3nm〜約5nmの範囲のサイズの多数の気孔を有しているものが挙げられる。典型的な場合、上記気孔のサイズは、平均のサイズを指してよい。当該気孔のサイズとは、直径(diameter)のサイスを意味するものであってよい。
該ナノ多孔質金属は、典型的には、多数の孔(又は気孔)は上記したサイズのナノ孔でありそれは内部にも連なっていって内部の通路を形成し、トンネルとなっており、通常、当該トンネル同士も互いに内部で連通して迷路のようになっている。好ましい場合、該ナノ多孔質金属は、約12nm以上の平均ナノ孔長さ(length :又はトンネルの長さ)の孔を多数有しているものであり、ある場合には、約13nm以上の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているもの、好ましくは約14nm以上の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているもの、さらに好ましくは約15nm以上の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているもの、また、約15nm〜約50nmの範囲の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているもの、より好ましくは約16nm以上の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているもの、さらに、好ましくは、約17nm以上の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているもの、また、約18nm以上の平均ナノ孔長さの孔を多数有しているものが挙げられる。
【0017】
本発明の方法で得られる該ナノ多孔質金属は、典型的には、約2nm〜約50nmの範囲のサ
イズの幅の結合部(又は結合帯: ligament、あるいはトンネルの壁)を有しているものであり、ある場合には、約2.5nm〜約33nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、好ま
しくは約3nm〜約25nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、さらに好ましくは約3.5nm〜約20nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、また、約4nm〜約15nmの範囲のサ
イズの結合部を有しているもの、より好ましくは約5nm〜約10nmの範囲のサイズの結合部
を有しているもの、さらに、好ましくは、約3nm〜約8nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、また、約3nm〜約5nmの範囲のサイズの結合部を有しているものが挙げられる。別の態様では、本発明の方法で得られる該ナノ多孔質金属は、典型的には、約5nm〜約10nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、好ましくは約5nm〜約15nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、さらに好ましくは約5nm〜約20nmの範囲のサイズの結合部を有
しているもの、また、約5nm〜約25nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、より好
ましくは約5nm〜約35nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、さらに、好ましくは
、約5nm〜約45nmの範囲のサイズの結合部を有しているもの、また、約5nm〜約50nmの範囲のサイズの結合部を有しているものが挙げられる。典型的な場合、上記結合部のサイズは、平均のサイズを指してよい。当該結合部のサイズとは、気孔(又はトンネル)の壁の厚さ(diameter) のサイスを意味するものであってよい。
好ましい場合、該ナノ多孔質金属は、約11nm以上の平均長さ(length :又はトンネル壁
の長さ)の結合部を多数有しているものであり、ある場合には、約12nm以上の平均長さの
トンネル壁を多数有しているもの、好ましくは約13nm以上の平均長さのトンネル壁を多数有しているもの、さらに好ましくは約15nm以上の平均長さのトンネル壁を多数有しているもの、また、約15nm〜約50nmの範囲の平均長さのトンネル壁を多数有しているもの、より好ましくは約16nm以上の平均長さのトンネル壁を多数有しているもの、さらに、好ましくは、約17nm以上の平均長さのトンネル壁を多数有しているもの、また、約18nm以上の平均長さのトンネル壁を多数有しているものが挙げられる。上記結合部は、残留している金属などの成分で構成されている。代表的なナノ多孔質金属は、図6及び7に示される特徴を有するものである。
【0018】
本発明の方法で得られる該ナノ多孔質金属は、典型的には、非常に大きな表面積を有し
ており、例えば、その比表面積は約10m2/gのオーダーあるいはそれ以上を示すものが挙げられる。より好適なナノ多孔質金属としては、比表面積が約12m2/gあるいはそれ以上を示すものが挙げられる。
本発明の一つの態様に従うと、該ナノ多孔質金属は、薄膜の形態のものであり、当該膜の厚さとしては様々な厚さのものを製造できる。当該ナノ多孔質金属の厚さは、使用する合金出発材料の厚さに応じて異なることになるものであってよい。好ましくは、該ナノ多孔質金属は、約50nm〜約5μmの範囲の厚さを有するもの、さらには、約50nm〜約1μmの範囲の厚さを有するものであり、より好ましくは約50nm〜約500nmの範囲の厚さを有するも
の、あるいは約80nm〜約400nmの範囲の厚さを有するもの、さらに好ましくは約100nm〜約360nmの範囲の厚さを有するもの、あるいは約100nm〜約130nmの範囲の厚さを有するもの
などが挙げられる。好ましい具体例では、約250nmの厚さを有するものや約100nmの厚さを有するものなどが挙げられる。
本発明の一つの態様に従うと、出発合金を脱成分腐食せしめてナノ多孔質金属を生成する場合に、温度及び処理時間を制御して、正確に、所定のナノ孔サイズのものを得る技術を提供している。本方法では、腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属と、該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属と、の少なくとも二つの金属を含有する合金を、該腐食作用を有する媒体に接触せしめて、該合金を、温度及び処理時間を制御して、脱成分腐食せしめて平均気孔サイズを調節して所要の平均気孔サイズを有するナノ多孔質金属を得るもので、上記したようなエッチング温度及び/又はエッチング時間を、適切に選択することにより、上記したような特性を有するナノ多孔質金属を選択的に生成せしめることができる。
【0019】
本発明の一つの態様に従うと、該ナノ多孔質金属は、薄膜の形態のものであり、それは非常に破れやすいものであるので、通常は、基体(あるいは基板)の上に乗せた状態(基体により支持されている状態)で取り扱われたり、あるいは使用される。本発明のある種の好ましい態様では、該基体は平らな面を有するシートあるいはそうしたシート状の形態のものである。また、本発明の別の好ましい態様では、該基体は凸面を有するもの、凹面を有するもの、球状の形態のもの、円柱状のもの、凸凹のある面を有するものなどであってもよい。代表的な場合、該基体は紙などのシート、ガラス板、シリコン板、樹脂板、セラミック板などである。
本発明の一つの態様に従うと、該基体は様々な材料から作られていることができる。例えば、ガラス、セラミック、不溶性金属、グラファイトなどの炭素材料、ゴム、ナイロン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリマー材料などの物質から製造されることができる。
【0020】
本発明の一つの好ましい態様では、Au-Ag合金を選択的且つ化学的にエッチングするこ
とにより、三次元的に双方向に連続した構造を有しているナノ多孔質金(ナノポーラス金)(又はナノ多孔質金構造体)を生成するものである。該ナノポーラス金構造体は、三次元ネットワークを持つトンネル状の気孔が互いに連なっているし、且つ、内部で連通した孔を有しているものである。例えば、厚さ約100nmのナノポーラス金は、70%硝酸を用いて銀50%-金50%合金薄膜を脱成分腐食せしめることで作製できる。このシンプルな化学腐食
プロセスは、銀原子の選択腐食をおこし、残った金原子の自己集合によりナノポーラス構造が形成される。本脱成分腐食技術は、Forty, A. J., Nature, 282, pp.597-598 (1979); Pickering, H. W., Corros. Sci., 23, pp.1107-1120 (1983); Oppenheim, I. et al.,
Science, 254, pp.687-689 (1991); Erlebacher, J. et al., Nature, 410, pp.450-453
(2001); Erlebacher, J., J. Electrochem. Soc., 151, C614-626 (2004)を参考に実施
できる。得られたナノポーラス金構造体は、その構造を定量電子線トモグラフィーにより解析でき、ナノポーラス構造は3次元的に開口であり、連続体となっていることがわかった(図1参照)。該ナノポーラス金の形態とナノ孔と金からなる結合部のサイズは統計的に同一であり、内部の表面積は約12 m2/gであると見積もられる。
【0021】
ところで、エッチング温度とエッチング時間をコントロールすることで、生成物ナノポーラス金のナノ孔のそれぞれ等しい直径もしくは金からなる結合部のそれぞれ等しい直径により規定されるナノ孔のサイズは、それぞれ数十ナノメートルから3〜5ナノメートルまで調整することが出来る。種々の温度におけるエッチング時間と孔サイズとの関係を図2(a)にプロットした。孔サイズはエッチング時間が長くなり、エッチング温度を上げるにつれ単調に増加し、この増加傾向は温度に著しく依存していることがわかった。低温は効果的にナノ孔サイズの粗大化を抑制することがわかった。例えば、マイナス20℃で8時間
エッチング後のナノ孔サイズの平均は約9nmであるが、室温での8時間エッチングの後ではナノ孔サイズは33 nmにまで大きくなる。図2(a)で示されるデータ解析より、多結晶中の
粒径サイズの粗大化傾向〔Burke, J. E., Trans. AIME, 180, pp.73-91 (1949)〕に似た
放物線関係を示していることがわかる。ナノ孔サイズの粗大化は以下の式のように表せる:
【0022】
【数1】

ここで、d(t)はエッチング時間tでの気孔のサイズ; k0 は一定値; n は粗大化係数(coarsening exponent); R は気体定数; E は活性化エネルギー; d0はAu50-Ag50合金中にす
でに存在する組成変動(compositional fluctuation)の長さ値(length scale, おおよそ1
〜2 nm)である〔Dursun, A. et al., J. Electrochem. Soc., 150, B355-360 (2003)〕。
d0 は本実施例での実験研究の中で特性を調査した気孔のほとんどのもののサイズより
ずっと小さいため、ここでは0と仮定する。かくして、粗大化係数nは図 2(b)で表すようなlnd v.s. lnt曲線をプロットすることで直接求めることが出来る。
【0023】
種々の温度で良い直線関係が得られており、ナノポーラス金の放物線的な粗大化メカニズムを支持している。異なるエッチング温度におけるフィッティング線から得た傾きはほぼどれも同一の約0.28であり、異なるエッチング温度でも変化しないような粗大化メカニズムが示唆される。ナノポーラス金の粗大化のn値は約3.4から約3.7だと決定され、その値は、動力学的パラメータの約4に非常に近いものであり、それは溶液中の粗い金属の表面レラクセーション(surface relaxation)を反映したものである〔Andreasen, G. et al., J. Electrochem. Soc., 143, 466-471 (1996)〕。
さらに、
【0024】
【数2】

と RT-1の直線関係(図2(c))に基いて、ナノポーラス金の活性化エネルギーは約 65.8 kJ/molと見積もられた。この値は、酸中の金の表面拡散の活性化エネルギー(50-60 kJ/mol) 〔Dona, J. M. & Gonzalez-Velasco, J. Phys. Chem. 97, 4714-4719 (1993).〕に非常に近い。しかし、金と真空との系における表面拡散の活性化エネルギー(167.4 kJ/mol)
〔Somorjai, G. A., Principle of surface chemistry, Prentice-Hall: Englewood Cliffs, NJ, 1972.〕よりずっと小さい。すべてのエッチング時間に渡って良い直線関係が得
られたことから、脱成分腐食反応とナノサイズの粗大化は1つの拡散プロセス、すなわち、合金と塩浴との界面における金の原子の表面拡散といったものに支配されていることがわかる。その表面拡散でコントロールされている粗大化メカニズムに基づくと、種々のエ
ッチング温度における金の原子の拡散性の性質 Ds は以下の式で計算できる〔Andreasen,
G. et al., J. Electrochem. Soc., 143, pp.466-471 (1996)〕。
【0025】
【数3】

ここでkはボルツマン定数, γは表面エネルギー, tは腐食時間, aは格子定数である。
文献〔Dursun, A., Pugh, D. V. & Corcoran, S. G. "Dealloying of Ag-Au alloys in
halidecontaining electrolytes: affect on critical potential and pore size.", J.
Electrochem. Soc., 150, B355-360 (2003)〕によるパラメータによれば、d0 = 2×10-9
m (Au50-Ag50合金の場合), γ =1 Jm-2, a = 4.08×10-10mであり、−20℃, 0℃ 及び 25℃における金の塩浴での表面拡散は それぞれ9.0×10-18, 1.5×10-16, 及び 2.0×10-15 cm2 s-1と見積もられる。
したがって、例えば、20℃といったわずかな温度の違いにより、合金/塩浴での金の拡
散性の性質(拡散係数)を1オーダー変えることが出来る。このことは、エッチング時間とエッチング温度を変えることによりナノスケールレベルでナノ孔サイズを正確に調整できることを意味している。
【0026】
本発明では、ナノ孔サイズを約33nmから約5nmに調整することにより、表面増強ラマン
散乱が著しく改善されることを見出している。図3はエッチング温度と時間を制御することで得た4つの代表的なナノ孔サイズの電子顕微鏡写真である。三次元骨格構造を持つナノポーラス金は表面増強ラマン散乱による分子検出に適した基板であると考えられ、金のナノ粒子はいくつかの有機物と生物高分子に活性であることが報告されている〔Moskovits, M., Rev. Mod. Phys. 57, 783-826 (1985); Kneipp, K., et al., Chem. Rev. 99, 2957-2975 (1999); Kucheyev, S. O. et al., Appl. Phys. Lett. 89, 53102 (2006)〕。ところで、Kucheyev, S. O. et al., Appl. Phys. Lett. 89, 53102 (2006)の研究に従い、本発明者らは焼鈍したナノポーラス金(annealed nanoporous gold)の表面増強ラマン散乱(SERS)の影響について調査し、Kucheyev らの研究結果とかなり一致する結果を得た。ラ
マン増幅効果は焼鈍温度を400℃まで上げても低いままだった。そして600℃で焼鈍した試料では異常なラマン増幅が観察された。しかしながら、その増幅効果は本発明で開発された5nmのナノポーラス金よりも約50%も低いものであった。その異常なラマン増幅は、本発明研究で議論しているナノ孔のサイズ効果というよりも、粗大化された金からなる粗大化された結合部のヘテロジーニアスな構造に関連しているもののようである。焼鈍された試料のすべては強い蛍光バックグラウンドを示しており、その結果、検出限界は5nmのナノ
ポーラス金に比べて約10〜100程度低い値となっている。
【0027】
過去の研究では室温の脱成分腐食によって作製された数十ナノメートルのナノ孔サイズを持つものでは、優れた表面増強ラマン散乱(SERS)は示されていない〔Kucheyev, S. O. et al., Appl. Phys. Lett. 89, 53102 (2006)〕。この結果は、本発明での研究でも確認されており、室温で脱成分腐食せしめて得られた平均ナノ孔サイズ33nmの試料では、プローブ分子(10-8 mol/Lのローダミン6G)の非常に弱い表面増強ラマン散乱しか観察されない。SERS効果の非常に大きな改善は、ナノ孔サイズを5nmまで下げるように調整することで
観察される。ローダミン6G (R6G)の強いラマンバンド、すなわち、614 cm-1でのν(C-C-C)のバンド(in-plane bend mode)と1363, 1509, 1575, 1650 cm-1でのν(C-C)のバンド(stretching mode)を含むラマンバンド〔Hildebrandt, P. & Stockburger, M., J. Phys. Chem., 88, pp.5935-5944 (1984)〕が、ナノポーラス金の均一な基板上のどのような所からでも高いシグナル/ノイズ比で検出されている(図4(a))。粗大なナノポーラス金で強く表れる蛍光バックグラウンドというものは、おおよそ5×10-10 mol/Lの濃度でさえも著し
く抑制されている(図4(b))。このことは、ほとんどの染料分子が蛍光を消し去るような活性な場所に止まっていることを示している。高いシグナル/ノイズ比と低い蛍光バックグラウンドがあることにより、5nmのナノポーラス金の検出限界は、5×10-10 mol/Lとい
う値に到達しており、この値はローダミン6G/金システムにおいてこれまでで一番良い検出限界値である〔Liu, Y. C. et al., Electrochem. Commu., 7, pp.1345-1350 (2005); Siiman, O. & Ledis, S., J. Raman Spectr., 36, pp.1125-1133 (2005)〕。
【0028】
ナノポーラス金の表面増強ラマン散乱の増強因子(EF)はおよそ次のような式で計算できる〔Tao, A. et al., Nano Lett., 3, pp.1229-1233 (2003)〕:
【0029】
【数4】

ここで ISERS はナノポーラス金を用いて得られたローダミン6G のラマンスペクトルの強度; Ibulk はローダミン6G粉末より得られたラマンスペクトルの強度; MSERS はナノポーラス金に吸着されたR6Gの濃度; Mbulk はローダミン6G粉末の濃度である。
【0030】
吸着された分子の数は、種々の溶液濃度でのナノポーラス孔内の溶液の容量(体積)より見積もった。5nmのナノポーラス金の当該増強因子は1650 cm-1の振動モードで4×1011
のオーダーであると見積もることができ、それは33nmのナノポーラス金の増強因子よりも因子として約50から100だけ大きいものである。
ナノ孔サイズを小さくすることによって改善した当該増強因子と検出限界というものは、ナノポーラス金の表面増強ラマン散乱はナノ孔サイズに影響を受けると言うことを示している。ナノ孔サイズと表面増強ラマン散乱効果との相関関係を定量的に調べるため、ローダミン6G/ナノポーラス金のラマン散乱強度を10-7 and 10-8 mol/Lの濃度においてナノ孔サイズの関数としてプロットした(図4(b))。ラマンピークの強度は孔サイズが減少するにつれ劇的に増え、5nmのナノポーラス金の基板からのラマン強度は、33nmのものより
10倍以上の強いものである。興味深いことに、データフィッティングをすると(図4(b))、増大したラマン強度はナノポーラスの曲面の曲率に相当するものとおよそ比例している、すなわち、ISERS ∝ 1/dとなっている。表面増強ラマン散乱するいくつかの基板の微細構造の性状がラマン散乱に影響を与えることがわかっており、例えばナノ粒子のサイズ形状とかナノ粒子同士の間の距離というものが知られている〔サイズ形状: Kreibig, U.
& Genzel, L., Surf. Sci., 156, pp.678-700 (1985); Sun, Y. G. & Xia, Y. N., Anal. Chem., 74, pp.5297-5305 (2002)、ナノ粒子間距離: Hao, E. & Schatz, G. C., J. Chem. Phys., 120, pp.357-366 (2004)〕。
【0031】
電子線トモグラフィーによりナノ孔と金からなる結合部の形状並びに形態が同一であることが明らかにされた(図1)。ナノ孔サイズを減少せしめると、同時に金からなる結合部(結合領域)の直径とか長さを減少せしめることが起こり、それは、原子スケールでの先端部や角の部分の数を増大させ、大きな曲面の曲率をもつナノ孔を組み立てることとなる。これらのサイトは分子の吸着に活性であることが知れれており、それにより有機分子の表面増強ラマン散乱の検知を高めることとなる〔Marks, L. D., Rep. Prog. Phys., 57, pp.603-649 (1994)〕。加えて、ナノ孔のサイズ及び金からなる結合部のサイズを小さ
くすると、隣り合う金からなる結合部領域の電磁気場の重なりを引き起こし、表面増強ラマン散乱の効果を非常に改善することが明らかとなっている〔Xu, H. et al., Phys. Rev. Lett., 83, pp.4357-4360 (1999)〕。
【0032】
ナノ孔サイズを調節することにより、非常に小さい検出限度値と高いラマン散乱効果の
増強因子値を得ることができ、それはナノポーラス金薄膜を、有機分子、生物分子の検出と同定のための超敏感装置用の非常に魅力的な基板とみなしている。広く研究されている銀基板や貴金属コロイドなどの研究と比較して、本発明で開発されたナノポーラス金は熱的、化学的に安定である。表面増強ラマン散乱効果を広く応用することは、安定な基板の欠如によりネックとなっており、また、表面増強ラマン散乱活性は、銀の酸化・硫化、貴金属ナノ粒子の凝集により、悪影響をうけることが知られている〔Zhang, X. Y. et al.,
J. Am. Chem. Soc., 128, pp.10304-10309 (2006)〕。
【0033】
金は銀に比べ空気中や塩浴中でずっと安定である。ナノポーラス金は熱的に安定であり、ナノポーラス構造は200℃で数時間、室温で数年の間安定に存在していることも証明さ
れている。さらに、ナノポーラス金は厚さが数十ナノメートルから数百マイクロンまでの厚さというように変えることのできる薄膜として作製することが可能なものである。これらナノポーラス金は様々なデバイスに容易に付けることが出来、少量の検出用溶液によく対応することが出来る。それ故、3-5 nmのナノ孔サイズを有するナノポーラス金は人間の病気の検知、診断、モニタリングのための分子診断における医療用途の材料の理想的な候補の1つである。
ナノ孔のサイズを調整することでナノポーラス金が機能化することを報告する。ナノポーラス金基板上のローダミン 6G (染料高分子)のラマン散乱信号がナノ孔サイズを減らすことで著しく増幅された。ナノ孔サイズを約5nm まで下げることで、表面増強ラマン散乱の検出強度が5×10-10mol/L に 到達した。これは、これまで知られているすべてのラ
マン散乱用の金基板よりも優れている。この結果は、複雑な 3 次元ナノ構造体中のナノ
孔サイズ効果の重要性を示しており、分子診断における超敏感検出装置のためのナノポーラスフィルム開発に応用することが期待できる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0034】
〔種々のナノ孔サイズをもつナノポーラス金の作製〕
約20mm×20mm×100nmのサイズのAg50Au50箔(重量比)をナノポーラス金の作製出発物質
材料として用いた。これらの箔はガラス棒により扱い、70vol.%硝酸(HNO3)溶液中に浮か
べた。エッチングプロセスは温度制御の精度±2℃を有している冷却・加熱ステージで制
御され、3つの決められた温度条件下(25℃, 0℃ 及び −20℃)に、処理時間を変えて行
われた。得られたナノポーラス金は純水の中にいれてエッチング反応を止め、残留した酸は水で洗い流した。
−20℃の温度での処理では冷却にドライアイスを使用して行ったが、より低温の冷媒、例えば、液体窒素なども使用できるし、−20℃より低温、例えば、−42℃程度までの温度であれば任意の温度を選択できる。
【0035】
〔ナノポーラス金の組織解析〕
電子顕微鏡観察のため、純水にいれた後のナノポーラス金は銅グリッドの上に置いた。異なるエッチング条件でのナノポーラス金のナノ孔サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)によ
り測定され、ナノ孔(nanopores)の統計的な分布を解析することにより平均化された孔サ
イズを決定した。ナノポーラス金の形態は電子線トモグラフィーにより明らかにした(図1)。
図1のナノポーラス金の電子線トモグラフィーの結果より、脱成分腐食せしめて得られた
ナノポーラス金の3次元構造は薄膜厚さに方向に開口であり連続体となっている。ナノポーラス金のナノ孔と金からなる結合部の大きさと形態は3次元的に同一であることが明ら
かにされた。コンピュータ制御の透過型電子顕微鏡(TEM TecnaiTM F30, FEI Company)は
高傾斜可能な試料ホルダーを有し、-70°から+70°までそれぞれ2°の間隔で一連の環状
暗視野像(high-angle annular dark field; HAADF)の画像を取得した。これらの画像は、オフラインで微調整し、一連の二次元(2D)イメージから重み付き再構成演算法を用いてAMIRA 3.0TM (Mercury Computer Systems, Inc.)により三次元(3D)像を構築した。
エッチング時間及びエッチング温度に対する生成物ナノポーラス金におけるナノ孔のサイズの変化との関係を図2に示す。また、各条件で得られたナノポーラス金の電子顕微鏡写真を図3に示す。図6には、ナノポーラス金のナノ孔(nanopore: ナノ気孔)の長さ(length (nm):又はトンネルの長さ)及び金からなる結合部の長さ(length (nm))と、確率密度(probability density)の値との関係を示し、さらに、図7には、当該ナノポーラス金のナノ孔(nanopore: ナノ気孔)のサイズ(diameter (nm))及び金からなる結合部のサイズ(diameter length (nm) :又は壁の厚さ)と、確率密度(probability density)の値との関係を示す。
【0036】
〔ナノポーラス金の表面増強ラマン散乱測定〕
種々のナノ孔サイズを持つナノポーラス金薄膜はガラススライドの上に付けられ、ローダミン6G(rhodamine 6G; R6G)の溶液中に4時間浸けて、ローダミン6Gを十分にナノポーラス表面に吸着せしめた。真空中に1日置いて乾かした後、浸漬したナノポーラス金は514.4nm波長のアルゴンレーザーを備えたRanishaw製ラマン顕微鏡により解析した。レーザーの焦点(spot)サイズは約1マイクロメーター(〜1μm)であり、レーザーの強さは0.2mWである。ラマン増強因子はローダミン6G粉末を参照試料とすることで評価せしめられた。少量のローダミン6G粉末を2つのガラススライドの間に分散して挟んで硬く圧縮して、2つのガラススライド間を約20マイクロメーター(〜20μm)の厚さの薄いシートとし、検
出された領域にあるローダミン6G分子の数をおおよそ見積るために使用した。ナノポーラス金上に吸着せしめられたR6G分子の数は、ローダミン6G溶液濃度とナノポーラスチ
ャンネル(nonoporous channels)の容積の積に等しいと仮定した。ラマン強度と組み合わ
せることで、ラマン増強因子は上記式(3)によって計算した。
図4に、ナノポーラス金基板の上のローダミン6Gを用いたラマン散乱で観察される表面増強ラマン散乱の得られたデータを示す。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、種々のナノ孔サイズを持つナノポーラス金属を得ることができるので、バルク金属と大きく異なる性質を持ち、物理分野や化学分野で注目すべき多くの機能を持つナノポーラス金属を広く利用することが可能になる。ナノポーラス金属の持つ大きな表面積と優れた電気伝導性、熱伝導性などの特性を利用して、触媒、ナノデバイスのナノ構造体用材料として使用される。特に本発明により、優れた表面増強ラマン散乱作用を有する材料が提供され、バイオサイエンスなどの分野、医学の分野などでタンパク質、核酸などの分子の挙動を検知、診断、モニタリングするために使用するセンサーなどの構築材料用途に有用である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】室温で脱成分腐食せしめられて得られたナノポーラス金の電子線トモグラフィーによる三次元構造のイメージを示す。ナノポーラス金の三次元構造は、開口を有しており、薄膜の厚さ方向に薄膜を横切るようにして二つの方向に気孔が連続している形態を有していることが明らかとされた。ナノ孔と金からなる結合部(又は結合帯; gold ligament)の大きさと形態は三次元的に統計上同一である。
【図2】エッチング時間及びエッチング温度に対する生成物ナノポーラス金におけるナノ孔のサイズの変化との関係を示す。a: 種々のエッチング温度並びに種々のエッチング時間でのナノ孔のサイズとの間の相関関係を示す。b: 25℃、0℃、そして−20℃というそれぞれのエッチング温度でのlnd v.s. lnt プロットによる粗大化係数測定を示す。c: 式1により、ナノ孔を粗大化するところの活性化エネルギーを見積もる。
【図3】各条件で得られたナノポーラス金の電子顕微鏡写真を示す。a: −20℃/1時間のエッチング温度/エッチング時間; b: 25℃/5分のエッチング温度/エッチング時間; c: 0℃/8時間のエッチング温度/エッチング時間; そして d: 25℃/8時間のエッチング温度/エッチング時間。エッチング時間及びエッチング温度を制御することにより、ナノポーラス金の形態とナノ孔のサイズとを調整できることが示されている。
【図4】ナノポーラス金基板の上のローダミン6Gを用いたラマン散乱で観察される表面増強ラマン散乱を示す。a: ローダミン6Gの濃度が1×10-8 mol/L であるときの図3で示されたナノポーラス金(図3, a: 5nmのナノ孔サイズ; b: 9nmのナノ孔サイズ; c: 18nmのナノ孔サイズ; そして d: 33nmのナノ孔サイズ)で得られたラマンスペクトル。b: ローダミン6Gの濃度が1×10-7と1×10-8 mol/Lであるときの1650 cm-1に相当するラマンピークを積算したラマンスペクトルの積算強度の値が、ナノ孔サイズに依存性であることを示す。挿入図は孔サイズが小さくなるに伴いラマン散乱の著しい増幅効果が得られることが ISERS ∝ 1/d という関係に従っていることを意味している。c: 5nmのナノポーラス金を基板として用いた場合の検出限界を示す。5×10-10 mol/L濃度でのローダミン6Gの主なラマンバンドは弱いがまだ可視化できることがわかる。
【図5】脱成分腐食せしめられて得られたナノポーラス金の電子線トモグラフィーによる三次元構造のイメージにおいて、切り欠きして内部構造を理解しやすいように示したイメージを示す。ナノポーラス金の気孔は連続して連なり、内部においても互いに連なっており、金からなる結合部(又は結合帯; gold ligament)の連続して連なる壁により取り囲まれているのがわかる。
【図6】−20℃で脱成分腐食せしめられて得られたナノポーラス金の電子線トモグラフィーによるデータより求められたナノ孔(nanopore: ナノ気孔)の長さ(length (nm):又はトンネルの長さ)及び金からなる結合部の長さ(length (nm))と、確率密度(probability density)の値との関係を示す。
【図7】−20℃で脱成分腐食せしめられて得られたナノポーラス金(図6と同一の試料)の電子線トモグラフィーによるデータより求められたナノ孔(nanopore: ナノ気孔)のサイズ(diameter (nm))及び金からなる結合部のサイズ(diameter length (nm) :又は壁の厚さ)と、確率密度(probability density)の値との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属と、該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属と、の少なくとも二つの金属を含有する合金を、該腐食作用を有する媒体に接触せしめて、該合金を、低温条件下、ナノ多孔質金属を形成するに有効な時間の間、脱成分腐食せしめ、平均気孔サイズ約33nm以下〜約5nm以下を有しており、ローダミ
ン6Gを表面に吸着せしめてのラマン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱が観察されるものであるナノ多孔質金属を得ることを特徴とするナノ多孔質金属の製造方法。
【請求項2】
脱成分腐食が、約0℃〜約−42℃の温度の低温条件下に行われるものであることを特徴と
する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
脱成分腐食が、約−20℃〜約−42℃の温度の低温条件下に行われるものであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
脱成分腐食が、約30分間以上〜約8時間以上の時間の間行うものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の製造方法。
【請求項5】
脱成分腐食が、約1時間以上〜約8時間以上の時間の間行うものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の製造方法。
【請求項6】
出発合金が、Au-Ag合金であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一記載の製造方
法。
【請求項7】
出発合金が、50wt%Au-50wt%Ag合金であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一記
載の製造方法。
【請求項8】
腐食作用を有する媒体が硝酸を含有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の製造方法。
【請求項9】
腐食作用を有する媒体が濃硝酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の製造方法。
【請求項10】
平均気孔サイズ約10nm以下を有していることを特徴とするナノ多孔質金属。
【請求項11】
ナノ多孔質金属が、平均気孔サイズ約33nm以下〜約5nm以下を有しており、ローダミン6
Gを表面に吸着せしめてのラマン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱が観察されるものであることを特徴とするナノ多孔質金属。
【請求項12】
腐食作用を有する媒体に対して感受性を有する金属と、該腐食作用を有する媒体に対して抵抗性を有する金属と、の少なくとも二つの金属を含有する合金を、該腐食作用を有する媒体に接触せしめて、該合金を、温度及び処理時間を制御して、脱成分腐食せしめて平均気孔サイズを調節して所要の平均気孔サイズを有するナノ多孔質金属を得ることを特徴とするナノ多孔質金属の製造方法。


【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−184671(P2008−184671A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20441(P2007−20441)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】