説明

ナノ微粒子複合体の製造方法

【課題】ナノサイズの微粒子を均一、かつ安定的に微分散することが可能なナノ微粒子複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】非水媒体中に、N含有(メタ)アクリル系重合体(1)と、(メタ)アクリル系重合体(2)とを有し、さらに重合体(1)が有するアミノ基と、P含有(メタ)アクリルモノマーおよび/または(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体が分散した分散用液に、微粒子を添加することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程と、上記(メタ)アクリロイル基同士を重合させて、ナノ微粒子複合体を得る硬化工程とを有するナノ微粒子複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズの微粒子を均一、かつ安定的に微分散することが可能なナノ微粒子複合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芯物質となる微粒子を他の材料で被覆した微粒子複合体として、マイクロカプセルが種々の産業において用いられている。従来のマイクロカプセルは、化学的製造方法、例えば、界面重合法(2種のモノマーもしくは反応物を分散相と連続相とに別々に溶解しておき、両者の界面において、モノマーを重合させて、壁膜を形成させる方法)、懸濁重合法(水性媒体中で芯物質を溶解させた水媒体中に水不溶のモノマーを添加して、攪拌し、乳化剤のミセルにモノマーを取り込ませ、ミセル内でモノマーを重合して壁膜を形成させる方法)、in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)や、物理化学的製造方法、例えば、コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子溶液を高分子濃度の高い濃厚相と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)、液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて複合エマルジョンとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)等によって製造されている。
【0003】
ところが、このようなコアセルベーション法等の物理化学的製造方法では、高分子化合物の溶解・析出を利用する製造方法であるため、耐熱性、耐溶剤性に劣るといった問題があった。
また、化学的製造方法では、ナノオーダーでのカプセル化が難しく、主に水溶媒中で製造するため、溶媒の再置換、乾燥等の工程が付加的に必要となるといった問題があった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1では、上記界面重合法を改良し、非水媒体中で疎水性の繰り返し単位のブロックと親水性の繰り返し単位とを有するブロックポリマーを保護コロイドとして用いることで、2種類の反応性モノマーのうち、一方を芯物質と共に保護コロイド中に包含し、一方を上記保護コロイドが分散した溶媒中に添加することにより、上記保護コロイドの界面で、上記2種類の反応性モノマー同士を反応させる方法が開示されている。この方法によれば、上記反応性モノマーが上記保護コロイド内に包含されることにより、上述した化学的方法で見られるような粒径が大きくなりすぎる等の問題を抑えることができる。しかしながら、上記方法では、非水媒体がアルカン類や芳香族炭化水素類に限られるといった問題があった。
【0005】
また、上記以外の微粒子複合体の製造方法としては、微粒子表面にポリマーをグラフト重合したものが提案されている(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、上記方法では、粒子表面に官能基を有している必要があるため、芯物質が限定される、あるいは芯物質の表面改質が必要といった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−246329号公報
【特許文献2】特開平5−339516号公報
【特許文献3】特開平8−302227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ナノサイズの微粒子を均一、かつ安定的に微分散することが可能なナノ微粒子複合体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、非水媒体中に、下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに上記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)および/または下記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体が分散した分散用液に、微粒子を添加することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程と、上記(メタ)アクリロイル基同士を重合させて、ナノ微粒子複合体を得る硬化工程とを有することを特徴とするナノ微粒子複合体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
(式(I)〜(IV)中、Rは、水素、またはメチル基であり、RおよびRは、水素、または炭素数が1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、QおよびQは、炭素数1〜8のアルキレン基、−(CH(R)−CH(R)−O)−CH(R)−CH(R)−および−((CH−O)−(CH−からなる群から選択される置換基である。また、RおよびRは、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。
また、RおよびRは、炭素数が1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−(CH(R)−CH(R)−O)−Rおよび−((CH−O)−Rからなる群から選択される置換基であり、芳香環中の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基で置換することができる。
ここで、Rは水素、または炭素数が1〜18の直鎖、分枝または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、および−CHCOORからなる群から選択される置換基である。Rが水素以外である場合、R中の炭素原子上の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基またはF、Cl、Brで置換することができる。また、Rは水素、または炭素数が1〜5のアルキル基である。
また、xは0〜18の整数であり、yは1〜5の整数であり、zは0〜18の整数である。l、mは1〜200の整数であり、nは1〜2の整数である。)
【0014】
本発明によれば、上記分散工程が、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体を用いるものであることにより、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものとすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子の分散性および安定性に優れたナノ微粒子分散体を形成することができる。
また、上記硬化工程において、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルの(メタ)アクリロイル基同士を重合させることにより、上記ブロック共重合体を上記微粒子表面に固定させることができるため、上記ナノ微粒子分散体よりも上記微粒子の分散性および安定性により優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。
さらに、上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものであるため、上記硬化工程によって形成されたナノ微粒子複合体の粒径を小さなものにすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができる。そのため、例えば、上記ナノ微粒子複合体を上記非水媒体から取出し、乾燥した後に、用途に応じた適切な溶媒に再分散することを可能とすることができる。
またさらに、溶媒への溶解度の差を利用して析出させることによりナノ微粒子複合体を形成するものではないため、溶媒の再置換、乾燥等の工程を不要とすることができ、生産性を向上させることができる。
【0015】
本発明においては、上記微粒子の粒径が10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。上記微粒子の粒径が、10nm〜100nmの範囲内であることにより、上記ナノ微粒子複合体の粒径を微細なものとすることができるからである。上記ナノ微粒子複合体の粒径を微細なものとすることができる理由としては、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積し、安定なナノ微粒子分散体を形成することができ、さらにその状態で上記硬化工程を実施することが可能であるためである。
【0016】
本発明においては、上記ナノ微粒子複合体の粒径が、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。上記ナノ微粒子複合体の粒径が10nm〜200nmの範囲内であることにより、上記微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。微粒子を微分散するほど、上記微粒子の表面積が広くなり、その微粒子の持つ特性をより効果的に発揮することができるが、通常であれば、上記微粒子の粒子径を小さくした場合には、上記微粒子の表面積が大きくなるに従い、上記微粒子同士の凝集性が強くなり、分散性および安定性が低いものとなる。しかしながら、上記ナノ微粒子複合体は、上記微粒子表面の全体を覆うように集積させたブロック共重合体同士を重合することで、上記微粒子表面に固定させたものであるため、上記分散性および安定性を有したまま、上記微粒子を微分散することができ、上記微粒子が有する特性を安定的に発揮することができるからである。
また、上記微粒子が、例えば、耐溶剤性、耐熱性、分散性等に劣るといった性質を有するものであった場合には、微分散することにより、上記性質の影響を受けやすくなるが、上記微粒子表面の全体を覆うように集積させたブロック共重合体同士を重合させたナノ微粒子複合体とすることにより、このような性質を効果的に保護することが可能となるからである。
【0017】
本発明においては、上記非水媒体に、極性部位を有する機能性モノマーを添加する工程を、上記硬化工程前に有するものであってもよい。
上記極性部位を有する機能性モノマーが極性部位を有することにより、上記機能性モノマーと上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体とを、上記微粒子表面およびその近傍に選択的に集積させることができるためからである。したがって、上記非水媒体に、極性部位を有する機能性モノマーを添加する工程後に、上記硬化工程を行うことにより、上記機能性モノマーが、上記微粒子表面および近傍に集積させた状態で、ブロック共重合体の(メタ)アクリロイル基と上記機能性モノマーとを共重合させることができ、上記ナノ微粒子複合体に、上記機能性モノマーを取り込ませることにより他の機能を容易に付与することができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ナノサイズの微粒子を均一、かつ安定的に微分散することが可能なナノ微粒子複合体の製造方法を提供するといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ナノ微粒子複合体の製造方法に関するものである。以下、本発明のナノ微粒子複合体の製造方法について説明する。
【0020】
本発明のナノ微粒子複合体の製造方法は、非水媒体中に、下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに上記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)および/または下記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体が分散した分散用液に、微粒子を添加することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程と、上記(メタ)アクリロイル基同士を重合させて、ナノ微粒子複合体を得る硬化工程硬化工程とを有することを特徴とするものである。
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
(式(I)〜(IV)中、Rは、水素、またはメチル基であり、RおよびRは、水素、または炭素数が1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、QおよびQは、炭素数1〜8のアルキレン基、−(CH(R)−CH(R)−O)−CH(R)−CH(R)−および−((CH−O)−(CH−からなる群から選択される置換基である。また、RおよびRは、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。
また、RおよびRは、炭素数が1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−(CH(R)−CH(R)−O)−Rおよび−((CH−O)−Rからなる群から選択される置換基であり、芳香環中の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基で置換することができる。
ここで、Rは水素、または炭素数が1〜18の直鎖、分枝または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、および−CHCOORからなる群から選択される置換基である。Rが水素以外である場合、R中の炭素原子上の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基またはF、Cl、Brで置換することができる。また、Rは水素、または炭素数が1〜5のアルキル基である。
また、xは0〜18の整数であり、yは1〜5の整数であり、zは0〜18の整数である。l、mは1〜200の整数であり、nは1〜2の整数である。)
【0026】
本発明によれば、上記分散工程が、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体を用いるものであることにより、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものとすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子の分散性および安定性に優れたナノ微粒子分散体を形成することができる。
また、上記硬化工程において、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルの(メタ)アクリロイル基同士を重合させることにより、上記ブロック共重合体を上記微粒子表面に固定させることができるため、上記ナノ微粒子分散体よりも上記微粒子の分散性および安定性により優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。
さらに、上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものであるため、上記硬化工程によって形成されたナノ微粒子複合体の粒径を小さなものにすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができる。そのため、例えば、上記ナノ微粒子複合体を上記非水媒体から取出し、乾燥した後に、用途に応じた適切な溶媒に再分散することを可能とすることができる。
また、さらに、本発明の製造方法によれば、溶媒への溶解度の差を利用して析出させることによりナノ微粒子複合体を形成するものではないため、溶媒の再置換、乾燥等の工程を不要とすることができるため、生産性を向上させることができる。
【0027】
本発明のナノ微粒子複合体の製造方法は、分散工程と、硬化工程とを有するものである。以下、本発明のナノ微粒子複合体の製造方法の各工程について説明する。
【0028】
1.分散工程
まず、本発明に用いられる分散工程について説明する。本工程は、非水媒体中に、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体が分散した分散用液に、微粒子を添加することによりナノ微粒子分散体を形成する工程である。
【0029】
本工程においては、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体を用いるものであることにより、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものとすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子の分散性および安定性に優れたナノ微粒子分散体を形成することができる。
【0030】
本工程は、分散用液に、微粒子を分散させて、ナノ微粒子分散体を形成する工程である。以下、本工程について詳細に説明する。
【0031】
(1)分散用液
本工程に用いられる分散用液は、非水媒体中にブロック共重合体が分散したものである。以下、このような分散用液の各構成について説明する。
【0032】
(a)ブロック共重合体
本工程に用いられるブロック共重合体としては、下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)および/または下記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したものであり、上記構成単位(2)が後述する非水系媒体に可溶性を有し、上記構成単位(1)に含まれるアミノ基と上記酸性リン酸エステルとが形成する塩形成部位が上記非水媒体に対して不溶性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
(式(I)〜(IV)中、Rは、水素、またはメチル基であり、RおよびRは、水素、または炭素数が1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、QおよびQは、炭素数1〜8のアルキレン基、−(CH(R)−CH(R)−O)−CH(R)−CH(R)−および−((CH−O)−(CH−からなる群から選択される置換基である。また、RおよびRは、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。
また、RおよびRは、炭素数が1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−(CH(R)−CH(R)−O)−Rおよび−((CH−O)−Rからなる群から選択される置換基であり、芳香環中の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基で置換することができる。
ここで、Rは水素、または炭素数が1〜18の直鎖、分枝または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、および−CHCOORからなる群から選択される置換基である。Rが水素以外である場合、R中の炭素原子上の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基またはF、Cl、Brで置換することができる。また、Rは水素、または炭素数が1〜5のアルキル基である。
また、xは0〜18の整数であり、yは1〜5の整数であり、zは0〜18の整数である。l、mは1〜200の整数であり、nは1〜2の整数である。)
【0038】
(i)構成単位
本工程に用いられるブロック共重合体は、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有するものである。
【0039】
上記置換基Qは、炭素数1〜8のアルキレン基、−(CH(R)−CH(R)−O)−CH(R)−CH(R)−および−((CH−O)−(CH−からなる群から選択される置換基である。また、RおよびRは、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。また、xは0〜18の整数であり、yは1〜5の整数であり、zは0〜18の整数である。
【0040】
本工程に用いられる炭素数1〜8のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等を挙げることができる。
【0041】
また、本工程に用いられるx、y、zは、−(CH(R)−CH(R)−O)−、−((CH−O)−、および−((CH−O)−(CH−のそれぞれのユニットの繰り返し数を示し、xは0〜18の整数であり、yは1〜5の整数であり、zは0〜18の整数である。
本工程において、xは、0〜4の範囲内であることが好ましく、特に0〜2の範囲内であることが好ましい。
また、yは、1〜4の範囲内であることが好ましく、特に2〜3の範囲内であることが好ましい。
また、zは、0〜4の範囲内であることが好ましく、特に0〜2の範囲内であることが好ましい。x、y、zが、上記範囲内であることにより、ナノ微粒子分散体の安定性を向上させることができ、ナノ微粒子複合体をより安定的なものとすることができるからである。
【0042】
本工程に用いられるQとしては、なかでも、アルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)を用いることが好ましく、特に、炭素数が1〜2の範囲のアルキレン基である、メチレン基またはエチレン基であることが好ましい。炭素数が大きく、嵩高いものであると、上記ナノ微粒子分散体、およびナノ微粒子複合体の安定性が低くなる恐れがあるからである。
【0043】
上記置換基RおよびRとしては、水素、または炭素数が1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基であれば特に限定されるものではない。このような置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等を挙げることができる。本工程においては、なかでもメチル基またはエチル基を用いることが好ましい。
【0044】
また、本工程においては、上記置換基RおよびRが、同一の置換基からなるものであってもよく、異なる置換基であってもよい。
【0045】
上記置換基Rは、炭素数が1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−(CH(R)−CH(R)−O)−Rおよび−((CH−O)−Rからなる群から選択される置換基であり、芳香環中の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基で置換することができる。また、RおよびRは、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。
ここで、Rは水素、または炭素数が1〜18の直鎖、分枝または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、および−CHCOORからなる群から選択される置換基である。Rが水素以外である場合、R中の炭素原子上の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基またはF、Cl、Brで置換することができる。また、Rは水素、または炭素数が1〜5のアルキル基である。
また、上記において、RおよびRが芳香環を有する場合において、芳香環中の水素が置換される位置としては、通常、芳香環中において置換可能な水素が存在する箇所であれば特に限定されるものではない。
【0046】
上記RおよびRにおいて用いられる、炭素数が1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2-エチルヘキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ラウリル基、ステアリル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、1−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基を挙げることができる。
【0047】
本工程において、上記置換基Rとしては、なかでも、後述する非水媒体との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記ブロック共重合体を構成する構成単位等によっても異なるが、上記非水媒体が、テトラヒドロフラン、トルエン等である場合には、メチル基、エチル基、ベンジル基等を用いることが好ましく、上記非水媒体が、ペンタン、ヘキサン等のより極性の低いものである場合には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等を用いることが好ましい。
ここで、上記置換基Rをこのように設定する理由は、本工程に用いられるブロック共重合体が、上記置換基Rを含む構成単位(2)が、上記非水媒体に対する可溶性を有し、上記構成単位(1)のアミノ基と、後述する酸性リン酸エステルとが形成する塩形成部位が不溶性を有するものであることにより、後述する微粒子表面への集積性を示すことができるからである。
【0048】
さらに、上記置換基としては、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。
【0049】
本工程に用いられる構成単位(1)のユニット数lおよび構成単位(2)のユニット数mの比率l/mとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、なかでも0.05〜0.5の範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さいと上記構成単位(1)が有するアミノ基が形成する塩形成部位の割合が少なく、後述する微粒子の表面への集積性が低下する可能性があるからであり、上記範囲より大きいと、上記構成単位(2)による上記非水媒体との溶解性が低くなり、ナノ微粒子分散体の分散性、および安定性が低下する可能性があるからである。
【0050】
本工程に用いられるブロック共重合体における、上記構成単位(1)のユニット数lおよび構成単位(2)のユニット数mは、それぞれ1〜200の整数であれば特に限定されるものではないが、上記lとしては、1〜20の範囲内であることが好ましく、なかでも1〜10の範囲内であることが好ましく、さらに、上記mとしては、1〜200の範囲内であることが好ましく、なかでも20〜100の範囲内であることが好ましい。
また、上記ブロック共重合体の分子量は、500〜20000の範囲内であることが好ましく、なかでも1000〜15000の範囲内であることが好ましく、特に3000〜12000の範囲内であることが好ましい。上記範囲より大きいと、形成されるナノ微粒子分散体およびナノ微粒子複合体の粒径が大きくなり、後述する微粒子の特性の発揮が困難となる恐れがあるからである。また、上記範囲より小さいと、上記微粒子の表面間の凝集を十分に防ぐことができない恐れがあるからである。
なお、上記重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01Mの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)およびMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0051】
本工程に用いられるブロック共重合体の結合順としては、上記構成単位(1)および上記構成単位(2)を有し、後述する微粒子を安定に分散することができるナノ微粒子分散体を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、上記構成単位(1)が上記ブロック共重合体の一端のみに結合したものであることが好ましい。すなわち、上記構成単位(1)と、上記構成単位(2)とが、構成単位(1)−構成単位(2)の順で結合したものであっても良く、構成単位(1)−構成単位(2)−構成単位(1)の順で結合したものであっても良く、構成単位(2)−構成単位(1)−構成単位(2)の順で結合したものであっても良く、構成単位(1)−構成単位(2)が繰り返し結合したものであっても良いが、本工程においては、なかでも構成単位(1)−構成単位(2)の順で結合したものが好ましい。後述する微粒子表面への集積性に優れ、さらにこのようなブロック共重合体を用いたナノ微粒子分散体およびナノ微粒子複合体同士の凝集を効果的に抑えることができるからである。
【0052】
(ii)酸性リン酸エステル
本工程に用いられる酸性リン酸エステルは、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)に表されるものであり、上記構成単位(1)が有するアミノ基と塩を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。
【0053】
上記置換基Qとしては、上記置換基Qと同様のものを用いることができる。
本工程において、上記置換基Qが、炭素数が1〜2の範囲のアルキレン基であるメチレン基またはエチレン基であることが好ましい理由は、上記置換基Qが、上記炭素数より大きく、嵩高いものであると、後述する硬化工程において、上記酸性リン酸エステルが有する(メタ)アクリロイル基同士の重合が、後述する微粒子表面から離れた箇所で実施される可能性があり、上記ナノ微粒子複合体の安定性が低いものとなる可能性があるからである。そのため、上記微粒子が上記ナノ微粒子複合体から漏洩し、再凝集する恐れがあるからである。
【0054】
上記一般式(III)に含まれるnは、1〜2の整数であり、上記一般式(III)で表される酸性リン酸エステルが有する(メタ)アクリロイル基を有するユニット数を示すものである。本工程において、nは、1〜2の整数であれば特に限定されるものではなく、nが1であるものであってもよく、nが2であるものであってもよく、nが1であるものと、nが2であるものとの両方を含むものであってもよい。
【0055】
上記置換基Rとしては、上記置換基Rと同様のものを用いることができる。
【0056】
本発明に用いられる酸性リン酸エステルの含有量としては、後述する微粒子を均一に分散し、安定的に保持できるものであれば特に限定されるものではないが、上記構成単位(1)に含まれるアミノ基に対して、0.1mol%〜4.0mol%の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5mol%〜2.0mol%の範囲内であることが好ましく、特に1.0mol%〜1.5mol%の範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、微粒子の分散安定性に優れたものとすることができるからである。
【0057】
(iii)ブロック共重合体
本工程に用いられるブロック共重合体は、上記構成単位(1)と、上記構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したものであり、上記構成単位(2)が後述する非水系媒体に可溶性を有し、上記構成単位(1)に含まれるアミノ基と上記酸性リン酸エステルとが形成する塩形成部位が上記非水媒体に対して不溶性を有することによって、後述する微粒子表面に選択的に集積することを可能とするものである。
【0058】
本工程においては、上記ブロック共重合体の含有量としては、後述する微粒子を均一に分散し、安定的に保持できるものであれば特に限定されるものではないが、上記分散用液中の含有量として、0.1質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも1質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと上記微粒子を十分に分散することが困難となる恐れがあるからであり、上記範囲より多いと、上記分散用液の粘度が高くなりすぎる恐れがあるからである。
【0059】
本工程に用いられるブロック共重合体の製造方法としては、上記構成単位(1)と、上記構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したものを製造することができる方法であれば特に限定されるものではない。本工程においては、例えば、上記構成単位(1)および構成単位(2)を公知の重合手段を用いて重合した後、上記非水媒体中に溶解または分散し、次いで上記非水媒体中に上記酸性リン酸エステルを添加し、攪拌することにより製造することができる。
【0060】
また、上記重合手段としては、上記構成単位(1)および構成単位(2)を所望のユニット比で重合し、所望の分子量とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、ビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法を用いることができ、例えばアニオン重合やリビングラジカル重合等を用いることができる。本発明においては、なかでも、資料J.Am.Chem.Soc.105、5706(1983)O.W.Websterら、に開示されているグループトランスファー重合(GTP)のようにリビング的に重合が進行する方法を用いることが好ましい。分子量、分子量分布等を所望の範囲とすることが容易であるので、後述する微粒子表面への集積性等の特性を均一にすることができるからである。
【0061】
(b)非水媒体
本工程に用いられる、非水媒体としては、上記ブロック共重合体の構成単位(2)が可溶性を示す媒体であれば特に限定されるものではないが、通常、比較的極性の低い媒体が用いられ、具体的には、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン等のアルカン類等を挙げることができ、なかでもグリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、およびジエチレングリコール類を好ましく用いることができ、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテルを好ましく用いることができる。
【0062】
また、本工程に用いられる非水媒体を、溶解性の指標であるSP値(Solubility Parameter)で示すと7〜12の範囲内であるものであることが好ましく、なかでも7〜11の範囲内であるものであることが好ましく、特に9〜10の範囲内であるものであることが好ましい。上記範囲より高いと、上記ブロック共重合体においてアミノ基と、上記酸性リン酸エステルとが形成している塩が、解離し、上記非水媒体中で上記ブロック共重合体が溶解してしまう可能性があるからである。その結果、後述する微粒子表面へ選択的に集積する特性が低くなる恐れがあるからである。
ここでSP値が上記範囲より高く、本工程において使用できないものの具体例としては、水(23.4)、エチレングリコール(14.6)、メタノール(14.5)、エタノール(12.7)、アセトニトリル(11.9)、1−ペンタノール(11.4)、tert−ブチルアルコール(10.6)等を挙げることができる。ここで、括弧内の数値はそれぞれの溶媒のSP値である。
なお、SP値(単位:(J/m1/2)とは、お互いの分子間の引き合う力、即ち凝集エネルギー密度CED(Cohensive Energy Density)の平方根で表されるものである。ここで、CEDの定義は、1cmのものを蒸発させるのに要するエネルギー量(単位:J/m)である。
【0063】
本工程に用いられる非水媒体としては、上述した1種類のみからなるものであってもよく、2種類以上を組み合わせたものであってもよい。
【0064】
(c)分散用液の調製方法
本工程に用いられる分散用液の調製方法としては、上記非水媒体中に、上記ブロック共重合体を均一に溶解または分散することができるものであれば特に限定されるものではなく、非水媒体中に上記ブロック共重合体を添加した後、分散等するものであっても良く、上述したように上記非水媒体中に、上記構成単位(1)および上記構成単位(2)を重合したものを溶解・分散し、次いで、上記酸性リン酸エステルを添加し、塩を形成させることによりブロック共重合体を形成させるものであってもよい。
【0065】
(2)微粒子
本工程に用いられる微粒子としては、上記非水媒体に対して不溶であるものであれば特に限定されるものではない。このような微粒子としては、例えば、無機・有機の顔料、金属粉末、樹脂製造用のモノマー成分、化粧品、医薬品、微生物、細胞等を挙げることができる。
【0066】
本工程に用いられる微粒子の粒径としては10nm〜100nmの範囲内であれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて選択することができるものであるが、なかでも10nm〜50nmの範囲内であることが特に好ましい。上記範囲であることにより、後述するナノ微粒子複合体の粒径を微細なものとすることができるからである。上記ナノ微粒子複合体の粒径を微細なものとすることができる理由としては、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積し、安定なナノ微粒子分散体を形成することができ、さらにその状態で上記硬化工程を実施することが可能であるためである。
なお、上記粒径の測定法としては、レーザー法により測定した平均粒径の値とする。平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を補足し、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。なお、上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、日機装社製 粒度分布測定装置 マイクロトラックUPA EX150を使用して測定した値である。
【0067】
本工程においては、上記微粒子の含有量としては、上記非水媒体中で均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではなく、用途等によって異なるものであるが、分散液中の含有量として1質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、特に1質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より多いと、上記微粒子を均一に分散することが困難となる恐れがあるからである。
【0068】
(3)ナノ微粒子分散体
本工程に用いられるナノ微粒子分散体は、上述した分散用液に、上記微粒子を添加することにより、上記微粒子表面に上記ブロック共重合体が集積したものである。本工程においては、上記ブロック共重合体が有する、上記構成単位(2)が後述する非水系媒体に可溶性を有し、上記構成単位(1)に含まれるアミノ基と上記酸性リン酸エステルとが形成する塩形成部位が上記非水媒体に対して不溶性を有するものであるため、上記微粒子を添加した際には、上記微粒子の表面に選択的に集積することができる。そのため、上記微粒子の分散性および安定性に優れたナノ微粒子分散体を形成することができる。
【0069】
本工程に用いられるナノ微粒子分散体の粒径としては、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、なかでも10nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、特に10nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。後述するナノ微粒子複合体の粒子径を小さいものとすることができるため、上記微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。
なお、上記粒径の測定方法としては、上記「(2)微粒子」の項に記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0070】
本工程に用いられるナノ微粒子分散体の形成方法としては、上記分散用液に、上記微粒子を添加した後に、上記分散用液に含まれるブロック共重合体が上記微粒子の表面に集積することができるものであれば特に限定されるものではなく、公知の攪拌・分散手段を用いることができる。このような分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルを挙げることができる。この場合、ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は、0.03mm〜2.0mmが好ましく、より好ましくは0.1mm〜1.0mmである。
【0071】
2.硬化工程
次に、本発明に用いられる硬化工程について説明する。本工程は、上記ナノ微粒子分散体を形成する上記ブロック共重合体が有する(メタ)アクリロイル基同士を重合させて、ナノ微粒子複合体を得る工程である。
【0072】
本工程においては、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルの(メタ)アクリロイル基同士を重合させることにより、上記ブロック共重合体を上記微粒子表面に固定させることができるため、上記ナノ微粒子分散体よりも上記微粒子の分散性および安定性により優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。
また、上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものであるため、上記硬化工程によって形成されたナノ微粒子複合体の粒径を小さなものにすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができる。そのため、例えば、上記ナノ微粒子複合体を上記非水媒体から取出し、乾燥した後に、用途に応じた溶媒に再分散することを可能とすることができる。
さらに、本工程においては、上記ブロック共重合体が有する(メタ)アクリロイル基同士を重合させるものであり、溶媒への溶解度の差を利用して析出させることによりナノ微粒子複合体を形成するものではないため、溶媒の再置換、乾燥等の工程が不要であり、生産性を向上させることができる。
【0073】
本工程は、上記ナノ微粒子分散体を形成する上記ブロック共重合体が有する(メタ)アクリロイル基同士を重合させて、ナノ微粒子複合体を得る工程である。以下、本工程について説明する。
【0074】
本工程において、上記(メタ)アクリロイル基同士を重合させる方法としては、上記ナノ微粒子複合体が所望の強度を有するものとすることが出来るものであれば特に限定するものではなく、光重合開始剤の存在下での光の照射あるいは、熱重合開始剤の存在下での加熱により重合する方法を挙げることができる。本工程においては、いずれの方法も好適に用いることができるが、例えば、用いるナノ微粒子分散体の透明度が低く、光の照射で十分なラジカルを生じさせ、重合反応を進行させることができないような場合では、加熱により重合する方法を用いることが好ましく、上記微粒子の耐熱性が低い場合では、光の照射により重合する方法を用いることが好ましい。
【0075】
本工程において、上記光重合開始剤としては、一般的なものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、1,2−オクタジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]等の光重合開始剤が挙げられる。本発明では、これらの光重合開始剤を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0076】
本工程においては、上記光重合開始剤の含有量としては、上記ブロック共重合体の(メタ)アクリロイル基に対して0.001当量〜0.2当量の範囲内であることが好ましく、中でも0.01当量〜0.1当量の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと十分に重合させることができない可能性があるからである。また、上記範囲より多いと、重合率は大きくなるが、重合後の分子量が低くなり、ナノ微粒子複合体の強度が弱くなる恐れがあるからである。
【0077】
上記熱重合開始剤としては、例えば、アルキル過酸化物、アシル過酸化物、ケトン過酸化物、アルキルヒドロ過酸化物、ペルオキシ2炭酸塩、スルホニル過酸化物等の有機過酸化物類、無機過酸化物類、アゾニトリル等のアゾ化合物類、スルフィン酸類、ビスアジド類、ジアゾ化合物等が挙げられる。具体例としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硼酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾイソビスブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2炭酸塩、アゾビスシアノ吉草酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等を好適に使用することができる。
【0078】
本工程においては、上記熱重合開始剤の含有量としては、上記ブロック共重合体の(メタ)アクリロイル基に対して0.001当量〜0.2当量の範囲内であることが好ましく、中でも0.01当量〜0.1当量の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと十分に重合させることができない可能性があるからであり、上記範囲より多いと、重合率は大きくなるが、重合後の分子量が低くなり、ナノ微粒子複合体の強度が弱くなる恐れがあるからである。
【0079】
本工程においては、上記光重合開始剤および、上記熱重合開始剤の添加時期としては、上記硬化工程前であれば特に限定されるものではなく、上記分散工程前であってもよく、上記分散工程後であってもよく、上記光重合開始剤および上記熱重合開始剤の安定性等に応じて適宜設定することができる。
【0080】
3.その他工程
本発明においては、上述した分散工程と、硬化工程とを有するものであれば特に限定されるものではなく、他の工程を有するものであっても良い。このような工程としては、例えば、上記非水媒体に、極性部位を有する機能性モノマーを添加する工程を、上記硬化工程前に有するものであってもよい。
上記極性部位を有する機能性モノマーが極性部位を有することにより、上記機能性モノマーと上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体とを、上記微粒子表面およびその近傍に選択的に集積させることができるためからである。したがって、上記非水媒体に、極性部位を有する機能性モノマーを添加する工程後に、上記硬化工程を行うことにより、上記機能性モノマーが、上記微粒子表面および近傍に集積させた状態で、ブロック共重合体の(メタ)アクリロイル基と上記機能性モノマーとを共重合させることができ、上記ナノ微粒子複合体に、上記機能性モノマーを取り込ませることにより他の機能を容易に付与することができるからである。
【0081】
本工程に用いられる機能性モノマーが有する極性部位としては、上記非水媒体に対する親和性が低いものであれば特に限定されるものではなく、一般的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基等の極性基を有するものを用いることができる。
【0082】
また、本工程に用いられる極性部位として含まれる極性基の含有量としては、上記機能性モノマーが、上記非水媒体よりも上記微粒子に対して親和性を持つものとすることができるものであれば特に限定されるものではない。
【0083】
本工程に用いられる機能性モノマーの重合性部位としては、少なくとも上記ブロック共重合体が有する(メタ)アクリロイル基と重合可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、および(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する置換基、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)を用いることができ、なかでも本工程においては、(メタ)アクリロイル基を好ましく用いることができる。
【0084】
本工程に用いられる機能性モノマーとしては、極性部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)に表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステル等を用いることができる。上記ナノ微粒子複合体の粒子径を制御したり、上記ナノ微粒子複合体を被覆するポリマー壁の厚さを容易に調製することができるからである。
【0085】
本工程に用いられる機能性モノマーの添加量としては、上記微粒子の分散状態を阻害しなければ特に限定されるものではない。
【0086】
本発明に用いられる機能性モノマーの添加時期としては、上記硬化工程の前であり、かつ上記ナノ微粒子複合体の形成を阻害するものでなければ特に限定されるものではなく、上記分散工程前に、上記非水媒体に添加するものであっても良く、上記分散工程の後であってもよい。本発明においては、上記のいずれのタイミングであっても好適に実施することができるものであり、上記非水媒体に、極性部位を有する機能性モノマーを添加する工程によって付与する機能等に応じて、適宜選択することができる。
【0087】
4.ナノ微粒子複合体
本発明の製造方法で製造されるナノ微粒子複合体は、上記分散工程において形成したナノ微粒子分散体を構成するブロック共重合体が有する(メタ)アクリロイル基同士を、上記硬化工程において重合させたものである。
上記ブロック共重合体が有する(メタ)アクリロイル基同士を重合させることにより、上記ブロック共重合体を上記微粒子表面に固定させることができるため、上記ナノ微粒子分散体よりも上記微粒子の分散性および安定性により優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。
また、上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものであるため、上記硬化工程によって形成されたナノ微粒子複合体の粒径を小さなものにすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができる。そのため、例えば、上記ナノ微粒子複合体を上記非水媒体から取出し、乾燥した後に、用途に応じた適切な溶媒に再分散することを可能とすることができる。
さらに、本発明の製造方法によれば、溶媒への溶解度の差を利用して析出させることによりナノ微粒子複合体を形成するものではないため、溶媒の再置換、乾燥等の工程を不要とすることができ、生産性に優れたものとすることができる。
【0088】
本発明におけるナノ微粒子複合体の粒径としては、10nm〜200nmの範囲内であれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて選択することができるものであるが、なかでも10nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、特に10nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、上記微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。微粒子を微分散するほど、上記微粒子の表面積が広くなり、その微粒子の持つ特性をより効果的に発揮することができるが、通常であれば、上記微粒子の粒子径を小さくした場合には、上記微粒子の表面積が広くなるに従い、上記微粒子同士の凝集性が強くなり、分散性および安定性が低いものとなる。しかしながら、上記ナノ微粒子複合体は、上記微粒子表面の全体を覆うように集積させたブロック共重合体同士を重合することで、上記微粒子表面に固定させたものであるため、上記分散性および安定性を有したまま、上記微粒子を微分散することができ、上記微粒子が有する特性を安定的に発揮することができるからである。
また、上記微粒子が、例えば、耐溶剤性、耐熱性、分散性等に劣るといった性質を有するものであった場合には、微分散することにより、上記性質の影響を受けやすくなるが、上記微粒子表面の全体を覆うように集積させたブロック共重合体同士を重合させたナノ微粒子複合体とすることにより、このような性質を効果的に保護することが可能となるからである。
なお、上記粒径の測定方法としては、上記「1.分散工程」の「(2)微粒子」の項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0089】
5.用途
本発明の製造方法によって製造されるナノ微粒子複合体の用途としては、微粒子を分散性および安定性を保持した状態で用いることが要求される用途で用いることができる。特に、ナノサイズの微粒子を用いることが要求される分野である、印刷用インク、医療材料、塗料、記録材料、化粧品、半導体基板等に用いることができる。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0091】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0092】
[実施例1]
1.ブロック共重合体の製造
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500ml丸底4口セパラブルフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)250重量部および開始剤のジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール5.81重量部を添加用ロートを介して加え、充分に窒素置換を行った。触媒のテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの1Mアセトニトリル溶液0.5重量部をシリンジを用いて注入し、第1モノマーのメタクリル酸メチル100重量部を添加用ロートを用い、60分かけて滴下した。反応フラスコを氷浴で冷却することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、第2モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル33.3重量部を20分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール1.0重量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、ブロック共重合体を得た。
【0093】
得られたブロック共重合体を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、N−メチルピロリドン、0.01M臭化リチウム添加/ポリスチレン標準)を用いて確認を行ったところ、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ジメチルアミノエチルとのユニット比が、44:6であり、重量平均分子量(M)が4500、数平均分子量(M)が5330、多分散度が1.18であった。
【0094】
2.分散用液の調製
300ml丸底フラスコ中でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)110.4重量部に(1)で製造したブロック共重合体3.6重量部を溶解させ、塩形成成分であるメタクリルオキシエチルアシッドホスフェート(ホスマーM:ユニケミカル社製)0.86重量部(ブロック共重合体のDMAEMAユニットと等モル量)を加え、25℃で6時間攪拌させることで、リン酸塩を形成したブロック共重合体を含む分散用液を得た。
【0095】
3.ナノ微粒子分散体の形成
調製した分散用液28.5重量部、微粒子としてジケトピロロピロール系顔料(PR254:平均一次粒径40nm)1.5重量部、0.3mmジルコニアビーズ60重量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30重量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60重量部とをマヨネーズビンに入れ、本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、ナノ微粒子分散体Aを有する分散液Aを得た。
【0096】
得られた分散液に含まれるナノ微粒子分散体の粒度分布を、日機装(株)製「マイクロトラック粒度分布計」を使用して測定した。結果を下記表1に示す。
【0097】
4.ナノ微粒子複合体の作製
50mlスクリュー管に、上記で得られた分散液Aを30重量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70:和光純薬社製)を0.016重量部加え、超音波処理しながら50℃で10時間反応させることでナノ微粒子複合体Aを含むナノ微粒子複合体分散液Aを得た。
【0098】
得られたナノ微粒子複合体分散液Aに含まれるナノ微粒子複合体Aの粒度分布を、日機装(株)製「マイクロトラック粒度分布計」を使用して測定した。結果を下記表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
[実施例2]
微粒子としてジケトピロロピロール系顔料に替えて、酸化チタン(平均一次粒径30nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ナノ微粒子分散体Bを有する分散液Bを作製し、さらにナノ微粒子複合体Bを含むナノ微粒子複合体分散液Bを得た。
【0101】
[比較例]
実施例1で作製したナノ微粒子分散体Aを有する分散液Aを比較例とした。
【0102】
[評価]
実施例1および実施例2で得られたナノ微粒子複合体分散液、および比較例によって得られた分散液を、それぞれ、40℃で、1週間静置し、試験前後のナノ微粒子複合体分散液に含まれるナノ微粒子複合体、および分散液に含まれるナノ微粒子分散体の粒径を日機装(株)製「マイクロトラック粒度分布計」を使用して測定した。結果を表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
表2において、比較例で作製した分散液Aに含まれるナノ微粒子分散体Aは、1週間静置後に粒径が増加しているのに対し、実施例で作製したナノ微粒子複合体Aおよびナノ微粒子複合体Bは、1週間静置前後の平均粒子径が変化していないことから、ナノ微粒子複合体にすることで分散安定性が向上していることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水媒体中に、下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)および/または下記一般式(IV)で表される(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体が分散した分散用液に、微粒子を添加することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程と、前記(メタ)アクリロイル基同士を重合させて、ナノ微粒子複合体を得る硬化工程とを有することを特徴とするナノ微粒子複合体の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式(I)〜(IV)中、Rは、水素、またはメチル基であり、RおよびRは、水素、または炭素数が1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、QおよびQは、炭素数1〜8のアルキレン基、−(CH(R)−CH(R)−O)−CH(R)−CH(R)−および−((CH−O)−(CH−からなる群から選択される置換基である。また、RおよびRは、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。
また、RおよびRは、炭素数が1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−(CH(R)−CH(R)−O)−Rおよび−((CH−O)−Rからなる群から選択される置換基であり、芳香環中の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基で置換することができる。
ここで、Rは水素、または炭素数が1〜18の直鎖、分枝または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、および−CHCOORからなる群から選択される置換基である。Rが水素以外である場合、R中の炭素原子上の水素は、炭素数が1〜4の直鎖または分枝のアルキル基またはF、Cl、Brで置換することができる。また、Rは水素、または炭素数が1〜5のアルキル基である。
また、xは0〜18の整数であり、yは1〜5の整数であり、zは0〜18の整数である。l、mは1〜200の整数であり、nは1〜2の整数である。)
【請求項2】
前記微粒子の粒径が10nm〜100nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ微粒子複合体の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ微粒子複合体の粒径が10nm〜200nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のナノ微粒子複合体の製造方法。
【請求項4】
前記非水媒体に、極性部位を有する機能性モノマーを添加する工程を、前記硬化工程前に有することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のナノ微粒子複合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−207093(P2008−207093A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45998(P2007−45998)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】