説明

ナノ構造体シリカ多孔質材料を担体とした経皮剤及び経口剤

【課題】 有効薬物の吸着性および放出性を改善した経皮剤および経口剤を提供する。
【解決手段】 高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させた経皮剤及び経口剤を用いて、その孔径、孔の構造、粒径、粒子の形状、内外表面の化学的性質のうち少なくともいずれか一つを制御する。これにより、薬物の担体への吸着性、薬物の担体からの放出性及び担体へ吸着される薬物の選択性を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させたことを特徴とする経皮剤及び経口剤に関し、担体への薬物の吸着性を制御できる経皮剤及び経口剤、担体からの薬物の放出性を制御できる経皮剤及び経口剤又は担体へ吸着させる薬物の選択性を制御できる経皮剤及び経口剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬物を有効に作用させるためには、適切な量を適切な時間作用させるのが望ましい。このため、薬物の放出性を制御できる担体は好ましい。薬物を徐放性の担体に吸着させた薬剤は、一定量の薬剤を連続的に放出できる性質を有している。このような性質を持った薬剤は、皮膚を通じて薬物を伝達する経皮吸収局所作用を有する経皮剤として用いることができる。経皮剤の型としては、例えば、テープ剤、パッチ剤、貼付剤、軟膏剤が知られている。経皮剤の長所として、薬物の放出が持続的であるので、短時間に大量の薬物が皮膚に吸収されることによる副作用を軽減できることが挙げられる。Fickの法則より多くの量の薬物を持続的に皮膚に透過させるためには、経皮剤内の薬物の濃度を高める必要がある。現在、さまざまな経皮剤が市販されているが、経皮剤を貼付することによる皮膚刺激の問題がある。また、それらの有効薬物の経皮吸収性及び薬効持続性は十分満足できるものではなく、放出性を改善した経皮剤の開発が期待されている。
【0003】
一方、経口投与したとき、薬物の即効性又は持続性に欠けるために、所望の治療効果を奏し得ない薬剤もあることから、放出性を改善した薬剤は、経皮剤だけでなく、経口剤としての用途も期待される。また、経口投与した場合には、薬物が胃内で分解するために生じる、非ステロイド系薬物をはじめとする薬物の強い副作用の問題がある。このため、胃内における薬物溶出特性が改善され、薬物の放出が制御された経口剤が望まれている。
【0004】
これらの理由から、有効薬物の薬効持続性などで十分な効果が期待できる放出性が改善された経皮剤及び経口剤が望まれている。また。薬物の副作用の問題が生じない経皮剤及び経口剤が望まれている。薬物を含有した粉末状担体からなるシートなどが以下に開示されている。
【0005】
特許文献1には、二酸化ケイ素からなる多孔質を充填剤とした医療用シートが開示されている。しかし、シリカ微粒子同士が不規則的に集まった多孔質シリカであるため、孔同士の連結性が少なく、孔全体を有効に利用した薬物の担持および放出が困難である。
【0006】
特許文献2、3、4には、規則性を有する層状シリカやゼオライトからなる化粧料シートなどが開示されている。しかし、これらの孔径は小さいため、担持させる薬物に制限が生じる。また、担体の層状型の構造特性から薬物の効果的な放出が望めない。
【0007】
1988年に黒田らが、1990年にモービル社の研究グループが界面活性剤を鋳型とし、均一な孔径を有するナノ構造体シリカ多孔質材料の合成に成功して以来、ナノ構造体シリカ多孔質材料が次々と開発された。ナノ構造体シリカ多孔質材料は、界面活性剤などを鋳型として形成した多孔質材料であって、巨大比表面積を有し、孔径がnmオーダーで均一、かつ規則的な孔構造を有することを特徴とする。
【0008】
特許文献5には、薬理活性化合物が細孔内に充填されていて、均一な孔径から構成されるメソポーラスシリカ無機材料(ナノ構造体シリカ多孔質材料)が開示されている。巨大比表面積を有するナノ構造体シリカ多孔質材料の薬理活性化合物の吸着容量は大きいと考えられるが、孔が一次元細孔に限定されていて、薬物の担体への吸着性の制御及び薬物の担体からの放出性の制御について、高い効果を望めない。
【0009】
非特許文献1、2、3では、ナノ構造体シリカ多孔質材料への薬効成分の吸着性及びナノ構造体シリカ多孔質材料からの薬物の放出性について報告されているが、経皮剤及び経口剤の担体としてナノ構造体シリカ多孔質材料の有効性について検討された例はまだない。
【特許文献1】特開平10−316773
【特許文献2】特開平7−11233
【特許文献3】特開平9−263517
【特許文献4】特開2001−233758
【特許文献5】特開2004−26636
【非特許文献1】Na.K.Mal et al., Chem.Matter. 2003,15,3385〜
【非特許文献2】C.Y.Lai et al., J.Am.Chem.Soc. 2003,125,4451〜
【非特許文献3】C.T.Peteilh et al., New J.Chem.2003,27,1315〜
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は有効薬物の放出性を改善した経皮剤及び経口剤を提供することである。より具体的には、薬物の担体への吸着の制御が可能な経皮剤及び経口剤を提供すること、薬物の担体からの放出の制御が可能な経皮剤及び経口剤を提供することである。また、担体へ吸着した薬物の選択が可能な経皮剤及び経口剤を提供することである。より具体的には、分子径の大きな分子や難溶性薬物など幅広い薬物の担体への吸着が可能な経皮剤及び経口剤を提供することである。さらに、胃内における薬物溶出特性を改善し、所望の部位における薬物の放出を調節できる経口剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明者が鋭意検討を行った結果、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径、孔の構造、粒径、粒子の形状のうち少なくともいずれか1つを調節することにより、ナノ構造体シリカ多孔質材料に吸着される薬物の放出性を制御できる経皮剤及び経口剤を得られることを見出し、本発明に想到した。また、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面の化学的性質を制御することにより、薬物の吸着性を改善した経皮剤及び経口剤を得られることを見出し、本発明に想到した。さらに、必要に応じてナノ構造体シリカ多孔質材料をpHなどの周辺環境に応答性を有する高分子膜や大豆油などでコーティングした経口剤を用いることにより、胃内における薬物溶出特性を改善し、所望の部位における薬物の放出性を調節できる経口剤を得られることを見出し、本発明に想到した。
【0012】
本発明の請求項1記載の経皮剤は、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2記載の経皮剤は、前記請求項1記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造を虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つとしたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3記載の経皮剤は、前記請求項1又は2記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を1nmから100nmの範囲内の任意の孔径としたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4記載の経皮剤は、前記請求項1〜3のいずれか1項記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状を球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つとしたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5記載の経皮剤は、前記請求項1〜4のいずれか1項記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径を、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径としたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6記載の経皮剤は、前記請求項1〜5のいずれか1項記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基で修飾したことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項7記載の経皮剤は、請求項6記載の経皮剤で、疎水性分子基がチオール基であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項8記載の経皮剤は、前記請求項1〜5のいずれか1項記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面がフリーシラノール基を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項9記載の経皮剤は、前記請求項1〜8のいずれか1項記載の経皮剤で、鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤、抗関節炎剤、抗炎症剤、血液循環改善剤、抗細菌剤、精神安定剤、避妊剤又は禁煙剤のいずれか1つであることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項10記載の経皮剤は、前記請求項1〜8のいずれか1項記載の経皮剤で、前記薬物がペプチドホルモンを含む糖尿病治療薬剤であることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項11記載の経口剤は、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させたことを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項12記載の経口剤は、前記請求項11記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造を虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つとしたことを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項13記載の経口剤は、前記請求項11又は12記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を1nmから100nmの範囲内の任意の孔径としたことを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項14記載の経口剤は、前記請求項11〜13のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状を球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つとしたことを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項15記載の経口剤は、前記請求項11〜14のいずれか1項記載の経皮剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径を、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径としたことを特徴とする。
本発明の請求項16記載の経口剤は、前記請求項11〜15のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基で修飾したことを特徴とする。
本発明の請求項17記載の経口剤は、請求項16記載の経口剤で、疎水性分子基がチオール基であることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項18記載の経口剤は、前記請求項11〜15のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面がフリーシラノール基を有することを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項19記載の経口剤は、前記請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料を大豆油でコーティングしたことを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項20記載の経口剤は、前記請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料を、疎水性を有する高分子膜でコーティングしたことを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項21記載の経口剤は、前記請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料を、グルコース応答性を有する高分子膜でコーティングしたことを特徴とする。
本発明の請求項22記載の経口剤は、前記請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤で、ナノ構造体シリカ多孔質材料を、pH応答性を有する高分子膜でコーティングしたことを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項23記載の経口剤は、前記請求項11〜22のいずれか1項記載の経口剤で、薬物が鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤、抗関節炎剤、抗炎症剤、血液循環改善剤、抗細菌剤、精神安定剤、避妊剤又は禁煙剤のいずれか1つであることを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項24記載の経口剤は、前記請求項11〜22のいずれか1項記載の経口剤で、薬物がペプチドホルモンを含む糖尿病治療薬剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明の請求項1記載の経皮剤によれば、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料は、大きな比表面積を有するため、少量のナノ構造体シリカ多孔質材料で多量の有効薬物を吸着させることができる。これにより、経皮剤中の薬物の濃度を高めて、小さい面積の貼付で有効な薬物の放出を長く持続でき、経皮剤による皮膚刺激を最小限にできる。また、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料の孔は均一な孔径でかつ、連続的に繋がっているため、幅広い薬物の選択及び有効な放出性の制御が可能である。さらに、強い副作用を持つなどの理由から通常の投与が難しい薬物をナノ構造体シリカ多孔質材料へ吸着させて、必要な作用部位で放出させることにより、薬物の副作用を最小限に抑えた投与が可能である。
【0034】
本発明の請求項2記載の経皮剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造を虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つに制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。また、孔が一次元又は多次元に配列するように制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性の制御が可能である。アプローチ可能な表面積を増加させることにより、薬物の担体への吸着量を増加させ、時間当たりの担体からの薬物の放出量及び放出時間を増加させることができる。
【0035】
本発明の請求項3記載の経皮剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を1nmから100nmまでの範囲内の任意の孔径に制御することにより、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性の制御が可能である。また、ナノ構造体シリカ多孔質材料へ吸着させる薬物の選択が可能である。細孔容積を大きくすることにより、薬物の担体への吸着量を増加させ、時間当たりの担体からの放出量を増加させることができる。また、分子径の大きな薬物を吸着させるときには、薬物が孔内で適切に担体へ吸着し放出できるようにナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を大きくすることができる。
【0036】
本発明の請求項4記載の経皮剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状を球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つに制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。アプローチ可能な表面積を増加させることにより、薬物の担体への吸着量を増加させ、時間当たりの担体からの薬物の放出量及び放出時間を増加させることができる。
【0037】
本発明の請求項5記載の経皮剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径を、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径に制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。粒径を小さくし、薬物がアプローチ可能な表面積を増加させるとき、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着効率が高く、吸着量が多い。
【0038】
本発明の請求項2〜5記載の経皮剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径、孔の構造、粒径、粒子の形状のうち少なくともいずれか1つを調節することにより、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。このため、持続的に薬物を放出することが可能となり、短時間に大量の薬物が放出されることによる副作用を軽減できる。薬物の長時間にわたる作用が可能となり、一日当たりの投与回数を減らすことができる。また、短時間で薬物を放出したい場合には、放出量を制御することができる。さらに、例えば、孔径を大きくし、粒径を小さく制御することにより分子径の大きな分子を含めた幅広い薬物の効果的な吸着が可能となる。
【0039】
本発明の請求項6記載の経皮剤によれば、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基で修飾することにより、単純拡散による薬物の担体への吸着だけでなく、疎水性作用による薬物の担体への吸着が可能となる。これにより、難溶性薬物の吸着性を改善できる。
【0040】
本発明の請求項7記載の経皮剤によれば、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基であるチオール基で修飾することにより、単純拡散による薬物の担体への吸着だけでなく、疎水性作用による薬物の担体への吸着が可能となる。これにより、難溶性薬物の吸着性を改善できる。
【0041】
本発明の請求項8記載の経皮剤によれば、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面にフリーシラノール基を新しく作り出すことにより、薬物の吸着能を上昇させることができる。これにより、薬物の吸着性を改善できる。
【0042】
本発明の請求項9記載の経皮剤によれば、経皮剤に吸着させる薬物として、鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤、抗関節炎剤、抗炎症剤、血液循環改善剤、抗細菌剤、精神安定剤、避妊剤又は禁煙剤のいずれか1つを選択できる。
【0043】
本発明の請求項10記載の経皮剤によれば、経皮剤に吸着させる薬物として、ペプチドホルモンを含む糖尿病治療薬剤を選択できる。
【0044】
本発明の請求項11記載の経口剤によれば、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料は、大きな比表面積を有するため、少量のナノ構造体シリカ多孔質材料で多量の有効薬物を吸着させることができる。また、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料の孔は均一な孔径でかつ、連続的に繋がっているため、幅広い薬物の選択及び有効な放出性の制御が可能である。さらに、ナノ構造体シリカ多孔質材料は酸に強い性質を有するため、ナノ構造体シリカ多孔質材料へ吸着された薬物の胃酸での分解を防ぐことができ、薬物が効果的に腸内へ到達できる。
【0045】
本発明の請求項12記載の経口剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造を虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つに制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。また、孔が一次元又は多次元に配列するように制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性の制御が可能である。アプローチ可能な表面積を増加させることにより、薬物の担体への吸着量を増加させ、時間当たりの担体からの薬物の放出量及び放出時間を増加させることができる。
【0046】
本発明の請求項13記載の経口剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を1nmから100nmまでの範囲内の任意の孔径に制御することにより、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性の制御が可能である。また、ナノ構造体シリカ多孔質材料へ吸着させる薬物の選択が可能である。細孔容積を大きくすることにより、薬物の担体への吸着量を増加させ、時間当たりの担体からの放出量を増加させることができる。また、分子径の大きな薬物を吸着させるときには、薬物が孔内で適切に吸着し放出できるようにナノ構造体シリカ多孔質の孔径を大きくすることができる。
【0047】
本発明の請求項14記載の経口剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状を球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つに制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。アプローチ可能な表面積を増加させることにより、薬物の担体への吸着量を増加させ、時間当たりの担体からの薬物の放出量及び放出時間を増加させることができる。
【0048】
本発明の請求項15記載の経口剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径を、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径に制御することにより、薬物がアプローチ可能な表面積を変化させて、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。粒径を小さくし、薬物がアプローチ可能な表面積を増加させるとき、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着効率が高く、吸着量が多い。なお、粒径を小さくすることにより、腸内で留まる時間を伸ばすことができ、より持続的な薬物の吸収・投与が可能である。
【0049】
本発明の請求項12〜15記載の経口剤によれば、薬物によって、ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径、孔の構造、粒径、粒子の形状のうち少なくともいずれか1つを調節することにより、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着性及び薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料からの放出性を制御できる。このため、持続的に薬物を放出することが可能となり、短時間に大量の薬物が放出されることによる副作用を軽減できる。薬物の長時間にわたる作用が可能となり、一日当たりの投与回数を減らすことができる。また、短時間で薬物を放出したい場合には、放出量を制御することができる。さらに、例えば、孔径を大きくし、粒径を小さく制御することにより、分子径の大きな分子を含めた幅広い薬物の効果的吸着が可能である。
【0050】
本発明の請求項16記載の経口剤によれば、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基で修飾することにより、単純拡散による吸着だけでなく、疎水性作用による吸着が可能となる。これにより、難溶性薬物の吸着性を改善できる。
【0051】
本発明の請求項17記載の経口剤によれば、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基であるチオール基で修飾することにより、単純拡散による吸着だけでなく、疎水性作用による吸着が可能となる。これにより、難溶性薬物の吸着性を改善できる。
【0052】
本発明の請求項18記載の経口剤によれば、ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面にフリーシラノール基を新しく作り出すことにより、薬物の吸着能を上昇させることができる。これにより、薬物の吸着性を改善できる。
【0053】
本発明の請求項19記載の経口剤によれば、大豆油でコーティングすることにより、胃内での分解を防ぎ、所望の部位における薬物の放出を調節できる。
【0054】
本発明の請求項20記載の経口剤によれば、疎水性を有する高分子膜でコーティングすることにより、胃内での分解を防ぎ、所望の部位における薬物の放出を調節できる。
【0055】
本発明の請求項21記載の経口剤によれば、グルコース応答性を有する高分子膜でコーティングすることにより、インスリンなどの糖尿病治療薬剤の投与の際、糖に反応し薬剤が放出するような自発的な血糖値の制御ができ、糖尿病治療のために有効に薬物を作用させることが可能である。
【0056】
本発明の請求項22記載の経口剤によれば、pH応答性を有する膜でコーティングすることにより、強酸性の胃内での薬物の放出を防ぎ、胃内での副作用を低減するとともに、pHが塩基性や中性の部位で薬物を放出できるように調節し薬物の利用効率を上げることができる。
【0057】
本発明の請求項23記載の経口剤によれば、経口剤に吸着させる薬物として、鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤、抗関節炎剤、抗炎症剤、血液循環改善剤、抗細菌剤、精神安定剤、避妊剤又は禁煙剤のいずれか1つを選択できる。
【0058】
本発明の請求項24記載の経口剤によれば、経口剤に吸着させる薬物として、ペプチドホルモンを含む糖尿病治療薬剤を選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0060】
本発明は、高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させたことを特徴とする経皮剤及び経口剤に関する。高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させた経皮剤及び経口剤を用いて、その孔径、孔の構造、粒径、粒子の形状、内外表面の化学的性質のうち少なくともいずれか一つを制御する。これにより、薬物の担体への吸着性、薬物の担体からの放出性及び担体へ吸着される薬物の選択性を制御できる。
【0061】
本発明でいう高分子テンプレート法は、ブロックコポリマーなどの高分子の自己組織化により形成された規則的な液晶構造を鋳型として無機物質を転写させる方法をいう。ナノ構造体シリカ多孔質材料は、高分子テンプレート法で合成したシリカ多孔質材料であり、ナノメートルオーダーの均一な孔径、巨大な比表面積、規則的な孔構造を特徴とする。ナノ構造体シリカ多孔質材料は、粒子から構成され、その粒子に多数の孔を有する。
【0062】
本発明でいう吸着は、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料を担体とし、この担体への吸着をいう。本発明でいう吸収は、薬物の皮膚への吸収をいう。本発明でいう放出は、薬物を吸着したナノ構造体シリカ多孔質材料からの薬物の放出をいう。本発明でいう薬物がアプローチ可能な表面積とは、ナノ構造体シリカ多孔質材料中で、薬物が到達できる部位の表面積である。
【0063】
ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造としては、孔が規則的な配列をした六方型(Hexagonal)、立方型(Cubic)、層状型(Lamellar)の構造が従来から知られている。また、孔が不規則に配列し、孔が虫食い穴のようになっている虫食い型(worm hole−like)が従来から知られている。ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造は虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つとする。また、孔は一次元又は多次元に配列している。これらの孔の構造に関しては、例えば、「すぐに役立つ 粒子設計・加工技術」(粉体工学会 製剤と粒子設計部会)p.437〜を参照することができる。孔の構造は、X線回折装置(XRD)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で確認する。
【0064】
ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径は1nmから100nmまでの範囲内の任意の孔径とする。ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径は均一な大きさを有する。孔径は、窒素吸着測定及び透過型電子顕微鏡(TEM)で確認する。
【0065】
ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状は球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つとする。粒子の形状は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)で確認する。
【0066】
ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径は、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径とする。粒径は、粒子の大きさを直径であらわしたものであるが、板状などの形状は粒径が位置により異なるので、最小径と最大径を用いて表す。最小径はナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径の最小値、最大径はナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径の最大値を表す。粒径は電界放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)で確認する。
【0067】
「本発明のナノ構造体シリカ多孔質材料の代表的な製法」
本発明のナノ構造体シリカ多孔質材料の代表的な製法を以下に述べる。
【0068】
高分子テンプレートとしてブロックコポリマーを用いる。本発明のナノ構造体シリカ多孔質材料の製法に用いるブロックコポリマーとしては、P123、F127、F108(Aldrich社製品)などが挙げられる。
【0069】
2gのブロックコポリマーを、ブロックポリマーの50〜100wt%の1、3、5−トリメチルベンゼン(TMB)と120mlの2M HClを混合した溶液に8.3gのテトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane)(TEOS)と5gのKClを加え、反応液Aとする。前記反応液Aを40℃で一日間強く攪拌しながら反応させる。シリカ表面にチオール基を修飾し、表面の疎水性をあげる場合には、TEOSの代わりに、TEOSとMPTMS(メルカプトプロピルトリエトキシシラン)(Mercaptopropyltriethoxysilane)をTEOS:MPTMS=19:1(モル比)の割合で混合したものを加える。オートクレーブに一日間攪拌した前記反応液Aを移し、100〜140℃で1〜3日間熱処理を行う。ろ過又は遠心分離により沈殿を採集し、乾燥させた後、550℃〜650℃で焼成させることにより、高分子テンプレートを除去し、これをナノ構造体シリカ多孔質材料とする。
【0070】
ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔内に吸着させる薬物の分子サイズおよび薬物の放出速度によって孔径を制御する必要がある場合は、孔径の制御は高分子テンプレートの選択及び膨張剤の投与により行う。孔経を大きくしたい場合はブロックコポリマーを、小さくしたい場合は界面活性剤を高分子テンプレートとして選択する。
【0071】
ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造、粒子の形状及び粒径の制御は、前記反応液Aについて、無機塩の添加、攪拌速度又は反応液のpHを制御することにより行う。例えば、無機塩の添加を制御することにより針状で1〜2μmの粒子を得ることができる。ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造、粒子の形状及び粒径の制御については、従来から知られていて、例えば、Chem.Mater.2004、16、889−898又はChem.Rev.2002、102、4093−などを参照することができる。
【0072】
「薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着」
薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着について、以下に例を述べる。薬物とシリカ表面の等電点を考慮し緩衝液を選択する。このとき、薬物とシリカ表面の電荷が反対になるように緩衝液を選択するのが好ましい。この緩衝液に薬物(0.004〜1mg/ml)を溶解した後、ナノ構造体シリカ多孔質材料(薬物の1〜10倍の重量)を分散させ、密閉容器で一日間攪拌する。遠心分離で薬物含有ナノ構造体シリカ多孔質を沈殿させて、それを真空乾燥させる。遠心分離の上澄み液を採集して分光光度計にて上澄み液中の薬物の吸光度を測定し、緩衝液中の薬物の除去率からナノ構造体シリカ多孔質材料内の薬物の含有率を求める。また、液体クロマトグラフィーによって、上澄み液中の薬物濃度測定も同時に行う。また、時間経過ごとに上澄み液を採集し薬物の吸着を測定することもできる。
【0073】
「薬物の放出速度の測定」
薬物の放出速度の測定について以下に例を述べる。リン酸塩緩衝液(pH7.4)に薬物含有物を分散させる。時間毎に緩衝液を採集し、採集した緩衝液を遠心分離し、上澄み液を得る。このとき、採取した緩衝液の量だけ新しい緩衝液を補充する。分光光度計及び液体クロマトグラフィーを用いて、前記上澄み液中の薬物の濃度を測定する。
【0074】
「ナノ構造体シリカ多孔質材料を用いた経皮剤及び経口剤」
薬物を吸着させた本発明のナノ構造体シリカ多孔質材料を用いて、従来知られている方法で、テープ剤、パッチ剤、パップ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、液剤、ゲル製剤などの医薬上許容される任意の単位剤形で経皮剤として提供することができる。
【0075】
薬物を吸着させた本発明のナノ構造体シリカ多孔質材料を用いて、従来知られている方法で、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤などの医薬上許容される任意の単位剤形で経口剤として提供することができる。胃内での分解を防ぐために又は薬物を適切な部位で作用させるために、必要に応じて、本発明による経口剤を大豆油でコーティングすること、疎水性を有する高分子膜でコーティングすること、又はグルコース応答性を有する高分子膜でコーティングすることができる。さらに、温度、湿度、pHなど外部要因に対する応答性を有する物質でコーティングしてもよい。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例1】
【0077】
「インスリンの吸着と放出」
粒径が異なる2種類のナノ構造体シリカ多孔質材料を用いた錠剤の吸着と放出特性を比較した。吸着させる薬物としてインスリンを用いた。上記「本発明のナノ構造体シリカ多孔質材料の代表的な製法」に従い、粒経が0.5μmまでの範囲であるナノ構造体シリカ多孔質材料(シリカA)と、粒経が5μmまでの範囲であるナノ構造体シリカ多孔質材料(シリカB)の2種類を作成した。このとき、シリカAとシリカBは、粒経以外の孔の構造、孔経、および粒子の形状が同じ特徴を持つように作成された。また、その重量を等しくした。そして、上記「薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料への吸着」に従い、同一濃度のインスリン溶液中でインスリンを吸着させた後、それぞれのシリカへの吸着量を測定した。インスリンの最大吸着量を比較すると、シリカAが約100mg/g、シリカBが約52mg/gとシリカAがシリカBの約2倍多かった。また、インスリンの吸着速度を比較すると、シリカAが1時間以内に全インスリン量の50%を吸着し、24時間でほとんど100%のインスリンを吸着し平衡に達するのに対して、シリカBは平衡に達するのに約3日間かかった。インスリンを吸着させ平衡に達した後、それぞれを錠剤の形とした(シリカAは錠剤A、シリカBは錠剤B)。錠剤Aと錠剤Bの薬物放出速度を上記「薬物の放出速度の測定」に従い、測定した。放出速度においては錠剤Aの場合は放出実施後160時間まで最初の2時間(1.1mg/h)を除いては一定の放出速度(0.61mg/h)でほとんどすべてのインスリンの放出が認められた反面、錠剤Bの場合は、最初の1.5時間は錠剤Aと類似な挙動を示すが、それ以降は放出速度の時間経過によるバラつきが見られ、錠剤Aと同じ時間内では吸着したインスリンの60%の放出しか認められず、すべてのインスリンを放出するのに約300時間がかかった。この結果により、ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径の差により、薬物の吸着性と放出性が異なることが明らかになった。ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒経が小さいほど、薬物のナノ構造体シリカ多孔質材料へのアクセス経路が短く、ナノ構造体シリカ多孔質材料全体を担体として利用することが可能であることから、錠剤中のインスリンの吸着と放出効率が増加することがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させたことを特徴とする経皮剤。
【請求項2】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造を虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つとしたことを特徴とする請求項1記載の経皮剤。
【請求項3】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を1nmから100nmの範囲内の任意の孔径としたことを特徴とする請求項1又は2記載の経皮剤。
【請求項4】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状を球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の経皮剤。
【請求項5】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径を、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の経皮剤。
【請求項6】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基で修飾したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の経皮剤。
【請求項7】
前記疎水性分子基がチオール基であることを特徴とする請求項6項記載の経皮剤。
【請求項8】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面がフリーシラノール基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の経皮剤。
【請求項9】
前記薬物が鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤、抗関節炎剤、抗炎症剤、血液循環改善剤、抗細菌剤、精神安定剤、避妊剤又は禁煙剤のいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の経皮剤。
【請求項10】
前記薬物がペプチドホルモンを含む糖尿病治療薬剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の経皮剤。
【請求項11】
高分子テンプレート法で合成したナノ構造体シリカ多孔質材料を担体として、薬物を吸着させたことを特徴とする経口剤。
【請求項12】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔の構造を虫食い型、六方型、立方型、層状型のいずれか1つとしたことを特徴とする請求項11記載の経口剤。
【請求項13】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の孔径を1nmから100nmの範囲内の任意の孔径としたことを特徴とする請求項11又は12記載の経口剤。
【請求項14】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒子の形状を球状、針状、板状、多角体状のいずれか1つとしたことを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項15】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の粒径を、その最小径が10nm以上であり、その最大径が1mm以下である任意の粒径としたことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項16】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面を疎水性分子基で修飾したことを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項17】
前記疎水性分子基がチオール基であることを特徴とする請求項16項記載の経口剤。
【請求項18】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料の内外表面がフリーシラノール基を有することを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項19】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料を大豆油でコーティングしたことを特徴とする請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項20】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料を、疎水性を有する高分子膜でコーティングしたことを特徴とする請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項21】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料を、グルコース応答性を有する高分子膜でコーティングしたことを特徴とする請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項22】
前記ナノ構造体シリカ多孔質材料を、pH応答性を有する高分子膜でコーティングしたことを特徴とする請求項11〜18のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項23】
前記薬物が鎮痛剤、消炎剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤、抗関節炎剤、抗炎症剤、血液循環改善剤、抗細菌剤、精神安定剤、避妊剤又は禁煙剤のいずれか1つであることを特徴とする請求項11〜22のいずれか1項記載の経口剤。
【請求項24】
前記薬物がペプチドホルモンを含む糖尿病治療薬剤であることを特徴とする請求項11〜22のいずれか1項記載の経口剤。



【公開番号】特開2006−193462(P2006−193462A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5832(P2005−5832)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】