ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法
【課題】ナノ粒子の凝集を防止し、ポリマーナノチューブの空間を利用した、触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料などの機能性の無機有機ハイブリッド材料を提供する。
【解決手段】ナノ粒子をポリマーナノチューブに接合させる。好ましくは、あらかじめナノ粒子を接合したモノマーもしくはオリゴマーからポーラスアルミナをテンプレートとして電解重合法によりナノ粒子を接合したポリマーナノチューブを製造する。
【解決手段】ナノ粒子をポリマーナノチューブに接合させる。好ましくは、あらかじめナノ粒子を接合したモノマーもしくはオリゴマーからポーラスアルミナをテンプレートとして電解重合法によりナノ粒子を接合したポリマーナノチューブを製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子を安定化して接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法に関する。特に、触媒、光学材料、磁性材料、導電材料などの機能性の無機有機ハイブリッド材料として好適に用いられるナノ粒子を接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属や半導体などの無機微粒子、特にナノサイズオーダーの微粒子(以下ナノ粒子と称す)の示す特異な挙動やその物理化学的性質に注目が集まっている。特に、触媒、光学材料、磁性材料、導電材料としての応用展開を初めとして、医療工学分野への応用も模索されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ナノ粒子はその大きな比表面積のため、凝集しやすい。そのため、ナノ粒子の特性を損なうことなく、ナノ粒子合成時もしくは合成後に表面修飾を施し、分散状態を維持させることが必要である。非特許文献2には、チオール基で安定化されたルテニウムナノ粒子や金ナノ粒子の合成について記載されている。また、特許文献1には、半導体ナノ結晶コアと導電体シェルとからなる数平均粒径が2〜50nmのコアシェル型粒子表面に表面修飾分子が結合してなるコアシェル型半導体ナノ粒子が例示されている。表面修飾分子としては、カルボニル基、エーテル結合、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、ホスホン酸基、ホスフィン基等が例示されている。
【0004】
ナノサイズのポーラスアルミナをテンプレートにして、種々の機能性材料が合成されている。特許文献2には、ポーラスアルミナのナノホールに発光物質を充填した電解発光素子が例示されている。また、特許文献3には、アルミナナノホールに充填された磁性体およびアルミナを除去して作成した異方性磁気記録媒体が例示されている。さらに、特許文献4には、アルミナナノホールに化学気相成長法により有機物質を堆積させ、しかるのち又は同時に炭化することを特徴とする炭素質ナノ構造体が例示されている。
【0005】
一方、ポリマーナノチューブは、ナノサイズのポーラスアルミナをテンプレートにして、チオフェンやピロールの電解重合によって形成させ、しかるのちにウエットエッチングによってアルミナを除去することによって得られることが知られている(非特許文献3)。このポリマーナノチューブは、直径および内径などの空間サイズ、長さといったパラメータを自在に制御できるという特徴を有する。
【0006】
【非特許文献1】日本表面化学会編集「ナノテクのための化学・材料入門」共立出版、47ページおよび82ページ(2007年3月)
【非特許文献2】Tsukatani, T., Fujihara, H., Langmuir, 21, 12093(2005)、Ito, M., Tsukatani, T., Fujihara, H.,J. Mater. Chem., 15, 960(2005)
【非特許文献3】Martin, C. R., Acc. Chem. Res., 28, 61(1995)、 Hulteen, J. C., Martin, C. R, J. Mater. Chem., 7, 1075(1997)、 Aleshin, A. N., Adv. Mater., 18, 17(2006)、 Xiao, R., Cho, S. II., Liu, R., Lee, S. B., J. Am. Chem. Soc., 129, 4483(2007)
【特許文献1】特開平2003−64278
【特許文献2】特開平2005−44619
【特許文献3】特開平2004−213764
【特許文献4】特開平2004−243477
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法を提供することにある。すなわち、ナノ粒子の凝集を防止し、ポリマーナノチューブの空間を利用した、触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料などの新規な機能性の無機有機ハイブリッド材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、ナノ粒子を接合しうる官能基、例えば、カルボニル基、エーテル結合、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、ホスホン酸基、ホスフィン基などを有するチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体などのモノマーまたはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートとして用い、電解重合法により合成し、しかる後に該ポリマーナノチューブにナノ粒子を接合することによって製造することができる。より好ましくは、あらかじめナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体などのモノマーまたはオリゴマーからポーラスアルミナをテンプレートとして用い、電解重合法によりナノ粒子を接合したポリマーナノチューブを合成することが望ましい。
【0009】
即ち、本発明は、平均粒径1〜10nmのナノ粒子を接合した、平均直径100〜500nm、アスペクト比1以上のポリマーナノチューブに関する。
【0010】
さらには、ナノ粒子が、1種もしくは2種以上の金属からなる金属ナノ粒子もしくは金属と酸化物の複合ナノ粒子であることを特徴とするナノ粒子を接合したポリマーナノチューブに関する。
【0011】
また、ナノ粒子が、半導体ナノ粒子もしくは半導体と金属の複合ナノ粒子であることを特徴とするナノ粒子を接合したポリマーナノチューブに関する。
【0012】
さらに、本発明は、ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーもしくはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートにして、電解重合することによって製造することを特徴とするナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法に関する。ここで、ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体の量が10〜100 mol%である、ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規で機能性の無機有機ハイブリッド材は、凝集しやすいナノ粒子をポリマーナノチューブに接合、固定化したので、ナノ粒子の特徴を最大限に引き出させることができ、リサクル可能な触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料などとして用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、より好ましくは、あらかじめナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーもしくはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートとして用い、電解重合法によりナノ粒子を接合したポリマーナノチューブを合成することが望ましい。
【0015】
ポーラスアルミナは、アルミ基板を硫酸、シュウ酸、リン酸などの酸性電解液中で陽極酸化することによって形成されたポーラスな陽極酸化皮膜のことを言う。このポーラスアルミナは、直径が数nm〜数百nmの極めて微細な円柱状細孔(ナノホール)が、数十nm〜数百nmの間隔で平行に配列するという特異的な幾何学的構造を有する。この円柱状の細孔は、高いアスペクト比を有し、深さおよび断面の径の均一性にも優れている。ここでポーラスアルミの構造は、陽極酸化条件を変えることにより制御できる。本発明のポリマーナノチューブのテンプレートとして使用するためには、平均直径100〜500nm、アスペクト比1以上の細孔を有するポーラスアルミナを用いることが望ましい。細孔の中に1〜200nmの内径を有するアルミナ柱を形成した、円筒状の細孔でも本発明に好都合に適用される。
【0016】
ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体およびそれらのオリゴマーは、非特許文献1に記載されているように合成できる。即ち、ナノ粒子は、チオール基やホスフィン基のようなリンカー分子を介してチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体と結合することができる。ここで、リンカー分子としては、チオール基以外にもジスルフィド基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基などが適用できる。
【0017】
ナノ粒子としては、金、銀、ルテニウム、ロジウム、白金などの1種もしくは2種以上の金属からなる金属ナノ粒子、酸化亜鉛、酸化チタン、CdSe、CdSなどの半導体ナノ粒子、シリカ、アルミナ、蛍光体などの酸化物ナノ粒子、鉄、ニッケル、コバルト、白金−鉄などの磁性体ナノ粒子が例示される。特許文献1に記載されているようなコアシェル型のナノ粒子も好都合に適用できる。ナノ粒子の合成法として、液相法、気相法、固相法が適用できるが、液相法で合成したナノ粒子を用いることがプロセス上望ましい。
【0018】
本発明で用いられるナノ粒子の平均粒径は、1〜10nm、好ましくは、1〜20nmの範囲のものが適用できる。この範囲を超えると、触媒作用の点で不利になり、この範囲未満では、プラズモン吸収の発生が抑制され光学的適性が低下してしまい光学的用途には望ましくない。
【0019】
ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、非特許文献3に記載されている方法を用いて電解重合により合成できる。即ち、ポーラスアルミナをテンプレートにしたチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーおよびオリゴマーの電解重合において、ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体を重合もしくは共重合することによって製造される。ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体の共重合比率は、10〜100mol%、好ましくは、30〜100mol%の範囲のものが適用できる。この範囲未満では、ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの触媒作用が著しく低下してしまう。ここで、チオフェン誘導体としては3−メチルチオフェンが代表として挙げられ、ピロール誘導体としては3-メチルピロールが代表として挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
電解重合によって合成したナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、重合後にアルカリ水溶液でポーラスアルミナを溶解させることによって得られる。該ポリマーナノチューブの平均直径は5〜1000nm、好ましくは10〜500nm、アスペクト比は1以上、好ましくは2以上である。
【0021】
本発明のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、直径および内部の空間サイズ、長さやアスペクト比といったパラメータを自在に制御できるため、ポリマーナノチューブ内部空間の包接、配列制御効果を活用する反応場としての応用も期待される。
【実施例1】
【0022】
(ナノ粒子を接合したチオフェン誘導体の合成)
下記1および2に示すterthiophene-linked oligoethyleneoxy-thiol(1)および-phosphine(2)で修飾したAuおよびPdは、あらかじめ液相法で合成したAuおよびPdをこれらのチオフェン誘導体と反応させ(図1)、それぞれ、1-Au、1-Pd、2-Pdと表示する。
【化1】
【実施例2】
【0023】
(1-Auの合成)
塩化金酸(100 mg, 0.25 mmol)のメタノール溶液(25 ml)に、チオール(1)(114 mg, 0.25 mmol)のトルエン溶液(25 ml)を加えた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(151 mg, 4 mmol)のメタノール溶液(10 ml)をゆっくり滴下し、約2時間激しく撹拌した。反応終了後、ろ過を行うことにより、1-Auを得た。
【実施例3】
【0024】
(1-Pdの合成)
テトラクロロパラジウム (II) 酸カリウム(100 mg, 0.31 mmol)の水溶液(10 ml)に、チオール(1)(279 mg, 0.62 mmol)のTHF溶液(30 ml)を加えた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(140 mg, 3.7 mmol)の水溶液(8 ml)を加え、約1時間激しく撹拌した。反応終了後、クロロホルムに溶解させイオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧下留去することで1-Pdを得た。
【実施例4】
【0025】
(2-Pdの合成)
テトラクロロパラジウム (II) 酸カリウム(100 mg, 0.31 mmol)の水溶液(10 ml)に、ホスフィン(2)(279 mg, 0.62 mmol)のTHF溶液(30 ml)を加えた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(140 mg, 3.7 mmol)の水溶液(8 ml)を加え、約1時間激しく撹拌した。反応終了後、クロロホルムに溶解させイオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧下留去することで2-Pdを得た。
【実施例5】
【0026】
(ナノ粒子を接合したポリチオフェンの合成)
1-Auおよび1-Pdをナノポーラスアルミナ膜(Whatman Anodise製、平均孔径200nm、厚み60μm)をテンプレートにして電解重合を行った。電解重合は、アルミナ膜をPt電極に取り付け、対極はPt電極をそのまま用い、Ag/0.1MAgNO3を対照電極にして行った。電解質溶液は、1-Auおよび1-Pdを12mg含む0.1MBu4NClO4-CH2Cl23mlを用いた。1Vの電圧をかけて、30分電解重合を行った。
【0027】
電解重合を終了した後、アルミナ膜を1MNaOHに溶解して、1-Auからなるポリチオフェン(1-Au-PT-NTs)と1-Pdからなるポリチオフェン(1-Pd-PT-NTs)を得た。1-Pd-PT-NTsの紫外可視スペクトル(HITACHI製紫外可視分光光度計U-4000型自記分光光度計)から、520nmのポリチオフェンに帰属される吸収が認められた。一方、1-Au-PT-NTsの紫外可視スペクトルは、550nmに吸収を示し、ポリチオフェンとAuナノ粒子による表面プラズモン吸収に帰属できる。
【0028】
ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ(1-Au-PT-NTsと1-Pd-PT-NTs)はSEM(HITACHI製電界放射形走査電子顕微鏡S-4800)およびTEM(日本電子JEOL-JEM-3010型透過型電子顕微鏡)観察に供した。図2は1-Au-PT-NTsのSEMおよびTEM写真であるが、直径240nmのポリマーナノチーブを形成し、2-9nmのAuナノ粒子が接合していることが分かる。形成したポリマーナノチーブの長さは約20μmであり、アスペクト比は約80であった。
【0029】
また、外径200nm、内径110nmからなる円筒状の細孔にPdナノ粒子(1-Pd)を接合したポリマーナノチューブ(1-Pd-PT-NTs)作成した。図3に該ナノチューブのSEMおよびTEM写真を示す。EDX分析からPdとSが検出され、ポリマーナノチーブがPdとSから形成されていることが分かる。
【実施例6】
【0030】
(ナノ粒子を接合したポリマーナノチーブの応用例)
ホスフィンで安定化したPdナノ粒子のチオフェン誘導体(2-Pd)を前記と同様にポーラスアルミナをテンプレートにして電解重合を行い、Pdナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ(2-Pd-PT-NTs)を作成した。ナノ粒子の粒径5nm、直径200nm、アスペクト比約100のポリマーナノチューブであった。
【0031】
2-Pd-PT-NTsを、methyl-2-iodobenzoate(3)と2-(tributylstannyl)thiophene(4)のStille結合反応の触媒として用いた。
【化2】
【0032】
(3)を266mg(1mmol)と(4)を372mg(1mmol)とを2-Pd-PT-NTs(4mg)の存在下、KF(174mg、3mmol)、THF中で60℃、5時間反応させたところ、定量的に生成物(5)を得た。反応後にPdナノ粒子の凝集や脱落も見られず、再度触媒として用いても活性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ナノ粒子の凝集を防止し、ポリマーナノチューブの空間を利用した新規な無機有機ハイブリッド材料として、触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料として利用され、化学合成、電子情報、医療工学などの分野への応用展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】AuおよびPdナノ粒子を接合したチオフェン誘導体
【図2】本発明のAuナノ粒子を接合したポリマーナノチューブのSEM写真(a)(b)およびTEM写真(c)
【図3】本発明のPdナノ粒子を接合したポリマーナノチューブのSEM写真(a)、TEM写真(b)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子を安定化して接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法に関する。特に、触媒、光学材料、磁性材料、導電材料などの機能性の無機有機ハイブリッド材料として好適に用いられるナノ粒子を接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属や半導体などの無機微粒子、特にナノサイズオーダーの微粒子(以下ナノ粒子と称す)の示す特異な挙動やその物理化学的性質に注目が集まっている。特に、触媒、光学材料、磁性材料、導電材料としての応用展開を初めとして、医療工学分野への応用も模索されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ナノ粒子はその大きな比表面積のため、凝集しやすい。そのため、ナノ粒子の特性を損なうことなく、ナノ粒子合成時もしくは合成後に表面修飾を施し、分散状態を維持させることが必要である。非特許文献2には、チオール基で安定化されたルテニウムナノ粒子や金ナノ粒子の合成について記載されている。また、特許文献1には、半導体ナノ結晶コアと導電体シェルとからなる数平均粒径が2〜50nmのコアシェル型粒子表面に表面修飾分子が結合してなるコアシェル型半導体ナノ粒子が例示されている。表面修飾分子としては、カルボニル基、エーテル結合、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、ホスホン酸基、ホスフィン基等が例示されている。
【0004】
ナノサイズのポーラスアルミナをテンプレートにして、種々の機能性材料が合成されている。特許文献2には、ポーラスアルミナのナノホールに発光物質を充填した電解発光素子が例示されている。また、特許文献3には、アルミナナノホールに充填された磁性体およびアルミナを除去して作成した異方性磁気記録媒体が例示されている。さらに、特許文献4には、アルミナナノホールに化学気相成長法により有機物質を堆積させ、しかるのち又は同時に炭化することを特徴とする炭素質ナノ構造体が例示されている。
【0005】
一方、ポリマーナノチューブは、ナノサイズのポーラスアルミナをテンプレートにして、チオフェンやピロールの電解重合によって形成させ、しかるのちにウエットエッチングによってアルミナを除去することによって得られることが知られている(非特許文献3)。このポリマーナノチューブは、直径および内径などの空間サイズ、長さといったパラメータを自在に制御できるという特徴を有する。
【0006】
【非特許文献1】日本表面化学会編集「ナノテクのための化学・材料入門」共立出版、47ページおよび82ページ(2007年3月)
【非特許文献2】Tsukatani, T., Fujihara, H., Langmuir, 21, 12093(2005)、Ito, M., Tsukatani, T., Fujihara, H.,J. Mater. Chem., 15, 960(2005)
【非特許文献3】Martin, C. R., Acc. Chem. Res., 28, 61(1995)、 Hulteen, J. C., Martin, C. R, J. Mater. Chem., 7, 1075(1997)、 Aleshin, A. N., Adv. Mater., 18, 17(2006)、 Xiao, R., Cho, S. II., Liu, R., Lee, S. B., J. Am. Chem. Soc., 129, 4483(2007)
【特許文献1】特開平2003−64278
【特許文献2】特開平2005−44619
【特許文献3】特開平2004−213764
【特許文献4】特開平2004−243477
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブおよびその製造方法を提供することにある。すなわち、ナノ粒子の凝集を防止し、ポリマーナノチューブの空間を利用した、触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料などの新規な機能性の無機有機ハイブリッド材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、ナノ粒子を接合しうる官能基、例えば、カルボニル基、エーテル結合、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、ホスホン酸基、ホスフィン基などを有するチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体などのモノマーまたはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートとして用い、電解重合法により合成し、しかる後に該ポリマーナノチューブにナノ粒子を接合することによって製造することができる。より好ましくは、あらかじめナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体などのモノマーまたはオリゴマーからポーラスアルミナをテンプレートとして用い、電解重合法によりナノ粒子を接合したポリマーナノチューブを合成することが望ましい。
【0009】
即ち、本発明は、平均粒径1〜10nmのナノ粒子を接合した、平均直径100〜500nm、アスペクト比1以上のポリマーナノチューブに関する。
【0010】
さらには、ナノ粒子が、1種もしくは2種以上の金属からなる金属ナノ粒子もしくは金属と酸化物の複合ナノ粒子であることを特徴とするナノ粒子を接合したポリマーナノチューブに関する。
【0011】
また、ナノ粒子が、半導体ナノ粒子もしくは半導体と金属の複合ナノ粒子であることを特徴とするナノ粒子を接合したポリマーナノチューブに関する。
【0012】
さらに、本発明は、ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーもしくはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートにして、電解重合することによって製造することを特徴とするナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法に関する。ここで、ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体の量が10〜100 mol%である、ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規で機能性の無機有機ハイブリッド材は、凝集しやすいナノ粒子をポリマーナノチューブに接合、固定化したので、ナノ粒子の特徴を最大限に引き出させることができ、リサクル可能な触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料などとして用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、より好ましくは、あらかじめナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーもしくはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートとして用い、電解重合法によりナノ粒子を接合したポリマーナノチューブを合成することが望ましい。
【0015】
ポーラスアルミナは、アルミ基板を硫酸、シュウ酸、リン酸などの酸性電解液中で陽極酸化することによって形成されたポーラスな陽極酸化皮膜のことを言う。このポーラスアルミナは、直径が数nm〜数百nmの極めて微細な円柱状細孔(ナノホール)が、数十nm〜数百nmの間隔で平行に配列するという特異的な幾何学的構造を有する。この円柱状の細孔は、高いアスペクト比を有し、深さおよび断面の径の均一性にも優れている。ここでポーラスアルミの構造は、陽極酸化条件を変えることにより制御できる。本発明のポリマーナノチューブのテンプレートとして使用するためには、平均直径100〜500nm、アスペクト比1以上の細孔を有するポーラスアルミナを用いることが望ましい。細孔の中に1〜200nmの内径を有するアルミナ柱を形成した、円筒状の細孔でも本発明に好都合に適用される。
【0016】
ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体およびそれらのオリゴマーは、非特許文献1に記載されているように合成できる。即ち、ナノ粒子は、チオール基やホスフィン基のようなリンカー分子を介してチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体と結合することができる。ここで、リンカー分子としては、チオール基以外にもジスルフィド基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基などが適用できる。
【0017】
ナノ粒子としては、金、銀、ルテニウム、ロジウム、白金などの1種もしくは2種以上の金属からなる金属ナノ粒子、酸化亜鉛、酸化チタン、CdSe、CdSなどの半導体ナノ粒子、シリカ、アルミナ、蛍光体などの酸化物ナノ粒子、鉄、ニッケル、コバルト、白金−鉄などの磁性体ナノ粒子が例示される。特許文献1に記載されているようなコアシェル型のナノ粒子も好都合に適用できる。ナノ粒子の合成法として、液相法、気相法、固相法が適用できるが、液相法で合成したナノ粒子を用いることがプロセス上望ましい。
【0018】
本発明で用いられるナノ粒子の平均粒径は、1〜10nm、好ましくは、1〜20nmの範囲のものが適用できる。この範囲を超えると、触媒作用の点で不利になり、この範囲未満では、プラズモン吸収の発生が抑制され光学的適性が低下してしまい光学的用途には望ましくない。
【0019】
ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、非特許文献3に記載されている方法を用いて電解重合により合成できる。即ち、ポーラスアルミナをテンプレートにしたチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーおよびオリゴマーの電解重合において、ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体を重合もしくは共重合することによって製造される。ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体の共重合比率は、10〜100mol%、好ましくは、30〜100mol%の範囲のものが適用できる。この範囲未満では、ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの触媒作用が著しく低下してしまう。ここで、チオフェン誘導体としては3−メチルチオフェンが代表として挙げられ、ピロール誘導体としては3-メチルピロールが代表として挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
電解重合によって合成したナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、重合後にアルカリ水溶液でポーラスアルミナを溶解させることによって得られる。該ポリマーナノチューブの平均直径は5〜1000nm、好ましくは10〜500nm、アスペクト比は1以上、好ましくは2以上である。
【0021】
本発明のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブは、直径および内部の空間サイズ、長さやアスペクト比といったパラメータを自在に制御できるため、ポリマーナノチューブ内部空間の包接、配列制御効果を活用する反応場としての応用も期待される。
【実施例1】
【0022】
(ナノ粒子を接合したチオフェン誘導体の合成)
下記1および2に示すterthiophene-linked oligoethyleneoxy-thiol(1)および-phosphine(2)で修飾したAuおよびPdは、あらかじめ液相法で合成したAuおよびPdをこれらのチオフェン誘導体と反応させ(図1)、それぞれ、1-Au、1-Pd、2-Pdと表示する。
【化1】
【実施例2】
【0023】
(1-Auの合成)
塩化金酸(100 mg, 0.25 mmol)のメタノール溶液(25 ml)に、チオール(1)(114 mg, 0.25 mmol)のトルエン溶液(25 ml)を加えた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(151 mg, 4 mmol)のメタノール溶液(10 ml)をゆっくり滴下し、約2時間激しく撹拌した。反応終了後、ろ過を行うことにより、1-Auを得た。
【実施例3】
【0024】
(1-Pdの合成)
テトラクロロパラジウム (II) 酸カリウム(100 mg, 0.31 mmol)の水溶液(10 ml)に、チオール(1)(279 mg, 0.62 mmol)のTHF溶液(30 ml)を加えた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(140 mg, 3.7 mmol)の水溶液(8 ml)を加え、約1時間激しく撹拌した。反応終了後、クロロホルムに溶解させイオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧下留去することで1-Pdを得た。
【実施例4】
【0025】
(2-Pdの合成)
テトラクロロパラジウム (II) 酸カリウム(100 mg, 0.31 mmol)の水溶液(10 ml)に、ホスフィン(2)(279 mg, 0.62 mmol)のTHF溶液(30 ml)を加えた。次に、水素化ホウ素ナトリウム(140 mg, 3.7 mmol)の水溶液(8 ml)を加え、約1時間激しく撹拌した。反応終了後、クロロホルムに溶解させイオン交換水で洗浄した後、溶媒を減圧下留去することで2-Pdを得た。
【実施例5】
【0026】
(ナノ粒子を接合したポリチオフェンの合成)
1-Auおよび1-Pdをナノポーラスアルミナ膜(Whatman Anodise製、平均孔径200nm、厚み60μm)をテンプレートにして電解重合を行った。電解重合は、アルミナ膜をPt電極に取り付け、対極はPt電極をそのまま用い、Ag/0.1MAgNO3を対照電極にして行った。電解質溶液は、1-Auおよび1-Pdを12mg含む0.1MBu4NClO4-CH2Cl23mlを用いた。1Vの電圧をかけて、30分電解重合を行った。
【0027】
電解重合を終了した後、アルミナ膜を1MNaOHに溶解して、1-Auからなるポリチオフェン(1-Au-PT-NTs)と1-Pdからなるポリチオフェン(1-Pd-PT-NTs)を得た。1-Pd-PT-NTsの紫外可視スペクトル(HITACHI製紫外可視分光光度計U-4000型自記分光光度計)から、520nmのポリチオフェンに帰属される吸収が認められた。一方、1-Au-PT-NTsの紫外可視スペクトルは、550nmに吸収を示し、ポリチオフェンとAuナノ粒子による表面プラズモン吸収に帰属できる。
【0028】
ナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ(1-Au-PT-NTsと1-Pd-PT-NTs)はSEM(HITACHI製電界放射形走査電子顕微鏡S-4800)およびTEM(日本電子JEOL-JEM-3010型透過型電子顕微鏡)観察に供した。図2は1-Au-PT-NTsのSEMおよびTEM写真であるが、直径240nmのポリマーナノチーブを形成し、2-9nmのAuナノ粒子が接合していることが分かる。形成したポリマーナノチーブの長さは約20μmであり、アスペクト比は約80であった。
【0029】
また、外径200nm、内径110nmからなる円筒状の細孔にPdナノ粒子(1-Pd)を接合したポリマーナノチューブ(1-Pd-PT-NTs)作成した。図3に該ナノチューブのSEMおよびTEM写真を示す。EDX分析からPdとSが検出され、ポリマーナノチーブがPdとSから形成されていることが分かる。
【実施例6】
【0030】
(ナノ粒子を接合したポリマーナノチーブの応用例)
ホスフィンで安定化したPdナノ粒子のチオフェン誘導体(2-Pd)を前記と同様にポーラスアルミナをテンプレートにして電解重合を行い、Pdナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ(2-Pd-PT-NTs)を作成した。ナノ粒子の粒径5nm、直径200nm、アスペクト比約100のポリマーナノチューブであった。
【0031】
2-Pd-PT-NTsを、methyl-2-iodobenzoate(3)と2-(tributylstannyl)thiophene(4)のStille結合反応の触媒として用いた。
【化2】
【0032】
(3)を266mg(1mmol)と(4)を372mg(1mmol)とを2-Pd-PT-NTs(4mg)の存在下、KF(174mg、3mmol)、THF中で60℃、5時間反応させたところ、定量的に生成物(5)を得た。反応後にPdナノ粒子の凝集や脱落も見られず、再度触媒として用いても活性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ナノ粒子の凝集を防止し、ポリマーナノチューブの空間を利用した新規な無機有機ハイブリッド材料として、触媒、光学材料、磁性材料、導電性材料として利用され、化学合成、電子情報、医療工学などの分野への応用展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】AuおよびPdナノ粒子を接合したチオフェン誘導体
【図2】本発明のAuナノ粒子を接合したポリマーナノチューブのSEM写真(a)(b)およびTEM写真(c)
【図3】本発明のPdナノ粒子を接合したポリマーナノチューブのSEM写真(a)、TEM写真(b)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1〜10nmのナノ粒子を接合した、平均直径100〜500nm、アスペクト比1以上のポリマーナノチューブ。
【請求項2】
ナノ粒子が、1種もしくは2種以上の金属からなる金属ナノ粒子もしくは金属と酸化物の複合ナノ粒子であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ。
【請求項3】
ナノ粒子が、半導体ナノ粒子もしくは半導体と金属の複合ナノ粒子であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ。
【請求項4】
ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーもしくはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートにして、電解重合することによって製造することを特徴とする、請求項1から3記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法。
【請求項5】
ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体の量が10〜100mol%である、請求項4記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法。
【請求項1】
平均粒径1〜10nmのナノ粒子を接合した、平均直径100〜500nm、アスペクト比1以上のポリマーナノチューブ。
【請求項2】
ナノ粒子が、1種もしくは2種以上の金属からなる金属ナノ粒子もしくは金属と酸化物の複合ナノ粒子であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ。
【請求項3】
ナノ粒子が、半導体ナノ粒子もしくは半導体と金属の複合ナノ粒子であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブ。
【請求項4】
ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体からなるモノマーもしくはオリゴマーを、ポーラスアルミナをテンプレートにして、電解重合することによって製造することを特徴とする、請求項1から3記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法。
【請求項5】
ナノ粒子を接合したチオフェンおよびチオフェン誘導体もしくはピロールおよびピロール誘導体の量が10〜100mol%である、請求項4記載のナノ粒子を接合したポリマーナノチューブの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−31168(P2010−31168A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196176(P2008−196176)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月19日 American Chemical Society発行の「Journal of the American Chemical Society Vol.130 No.11 2008」に発表
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月19日 American Chemical Society発行の「Journal of the American Chemical Society Vol.130 No.11 2008」に発表
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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