説明

ナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末及びその調製方法

本発明は、複数の結晶構造のナノ粒子の層で被覆されたセラミック粉末、及びセラミック粉末を得る方法に関する。セラミック粉末の被覆は前駆体を油中水型エマルジョン中に導入することで得られる。前駆体は、その爆発の間、分解によりナノ粒子を形成し、ナノ粒子は被覆しようとするセラミック粒子の表面に付着する。後者の塩基性のセラミック粉末はエマルジョン爆発中に合成されうる。または単に直接その組成で置かれる。得られた被覆の特性、例えば厚さ、密着、孔隙率及び被覆された表面の割合は、所望の用途、ナノテクノロジーのいくつかのタイプの領域に応用可能な被覆されたセラミック粉末に従って調製されうる。例えば、電気、生物医薬、化学、セラミックス及びエネルギー産業である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の結晶構造、厚さ、密着性能及び微結晶サイズのナノ粒子層に被覆されたセラミック粉末、及びナノ粒子層に被覆された粉末の調製方法に関する。
【0002】
そのため、本発明のセラミック粉末は、被覆されていない粉末の光学的、機械的、電気的、磁気的、触媒的及び反応的特性と実質的に異なるそれらの特性を示す。その特性は、それらを、例えば、機能的を発揮するように表面被覆された磁気ナノ粒子−特定の抗体、薬物に結合するように活性化されたナノ粒子−を用いた癌治療、電気のようなナノテクノロジー分野の一連の応用を特に魅力的にする。例えば、セラミック産業における光触媒において−エネルギー応用における焼結助剤を得るためのような−電気伝導度を増加させるためのある物質の表面におけるナノ黒鉛材料分解におけるような−応用である。
【背景技術】
【0003】
過去数年において、ナノ粒子被覆中のカプセルに包まれたセラミック粉末の使用は、化学、生物医薬、電気、セラミック及びエネルギー分野における非常に多くの用途のため、世界的な研究の集中的ターゲットであった。その目的は、基礎粒子の性質と、その表面を被覆することからなるナノ粒子層により導入される独特な効果を結合することにより利益を得ることである。
【0004】
最近、ナノ粒子の取り扱いに伴う困難性と同様、生物中のナノ粒子の吸着から生ずる影響に関する知識の欠如を考慮すると、より大きなスケールの粒子の表面のナノ粒子層の密着に関する本技術は、ナノスケールにより与えられる固有の特性の結合の研究に用いられるが、危険性はなく結び付けられている。
【0005】
セラミック被覆を調製するために通常使われる本方法は一般的に、4つのカテゴリーに分けられる。
【0006】
I−化学的プロセスによる被覆(湿式)
微小エマルジョン及びゾル−ゲル分解の技術は、本プロセスの実施例である。後者において、4つの主な工程は以下の通りである:
a)被覆用コロイド粒子は、液体中で安定分散を形成し、それはまた被覆する前駆体を含む。
b)粒子表面上への、スプレー、浸漬又は回転によるこれらの前駆体の堆積;
c)前記粒子は安定化剤を除去する間に重合し、次いで連続する網中にゲルを製造する;
d)最後の熱処理は有機物の熱分解除去につながり、結晶又は非晶質の被覆が残る。
【0007】
湿式化学による被覆方法における主な困難は、被覆粒子形成の反応速度を制御することであり、高度の密着を伴う均一な被覆を得ることを困難にする。
【0008】
II 気相蒸着による被覆
化学的蒸着法(CVD)の技術はこのカテゴリーの非常に一般的な実施例である。この場合、被覆前駆体は高温(700−1000℃)で加熱され、蒸発させられる。その後固定される基質に蒸着される。
【0009】
これは被覆ツールにおいて一般的な方法である。被覆の厚さは厚く、典型的には5ミクロンから12ミクロンの間である。そして、個々の粒子が被覆されるのではなく、むしろいくつかの幾何学的な形状をとる基質が被覆される。
【0010】
他の技術は原子層蒸着(ALD)である。これは固体基質中で微細な層を形成することができ、2つの工程を備える;
a)気体、通常、気体の有機金属前駆体は基質表面に吸着する;
b)第一の気体の前駆体と第2の気体との反応は単一の層を形成し、両方の前駆体の間の反応サイクルの数は、最終的な薄膜の厚さを制御する要素である。
【0011】
他のより複雑な技術は基礎粒子の合成と、高温の壁のエアロゾル流式反応器中で異なる時間に2つの気体前駆体を注入して粒子を被覆することとからなる。
【0012】
本技術の鍵となる実施例はシリカ(SiO)を含むチタニア粒子(TiO)の被覆である。本方法の主な不利益は低い生産量とその高コストである。
【0013】
III 電気化学的被覆
本アプローチは、被覆しようとする粒子の懸濁から始まる。懸濁物にはカチオンセットが添加される。そのカチオンはその後電気化学的に減少し、基礎粒子の表面に蒸着される一連のナノ粒子のセットを形成する。シリカ粒子(SiO)上への酸化銅(CuO)ナノ粒子の形成と蒸着は、本技術の典型的な実施例である。
【0014】
IV 乾式被覆
例として、プロジェクション技術、ここでは被覆材料を含む高密度セラミック−ターゲットが電子によりスパッタされ、基質にほぼ原子毎に堆積させ、薄膜を形成する。しかしながら、サブミクロメートルの寸法の粒子を被覆しようとすると、非常にコストがかかる方法であるにもかかわらず、粒子の均一な被覆が困難になる。
【0015】
ここまでに列挙された4つの方法には次の限界があることが確認された。
a.基質や表面被覆に適し、個々のセラミック粒子の被覆における困難性。この困難性は基礎粒子の寸法が減少するにつれて増加する;
b.特に厚さと被覆面積の観点で、均一な被覆を得ることの極端な困難性;
c.被覆を構成するナノ粒子の結晶構造の種類による強い制限;
d.基礎粒子に優れた密着性を有する被覆を形成する困難性;
e.基礎粒子の表面に個々のナノ粒子によって形成された被覆を得る困難性;通常、粒子は連続する薄膜の被覆の状態で製造される。ナノメーターの寸法由来の効果の利点から利益を得ることができないとすれば、これは重要な制限である。
f.熱処理工程による基礎粒子結晶と被覆粒子の極端に大きな寸法。
【0016】
次に、油中水型(W/O)エマルジョンの爆発からなる本発明により提案される方法は、(W/O)エマルジョンに少なくとも固体前駆体があらかじめ添加されるが、固体前駆体はエマルジョンの爆発中に分解し、被覆のため所望の組成、量及び結晶構造を含むナノ粒子を形成する。ナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末の2つの異なる調製手段が可能であれば、本方法は計り知れない多用途性を提供する:
a)被覆層を形成するナノ粒子として、2つの被覆用セラミック粉末も同じ(W/O)エマルジョン爆発工程中で合成すること。この目的のために、それらの前駆体に対して2つの反応速度が別に用いられる。生成反応はセラミック粉末に対して極端に速く、前駆物質の分解の場合は遅い。前駆物質は、被覆層を構成するナノ粒子を発生させる。
b)先に被覆用セラミック粉末を、(W/O)エマルジョン出発組成物中に入れること。セラミック粉末は、爆発中に、被覆層を形成するナノ粒子に分解する前駆体と共にあらかじめ調製されている。
【0017】
前述の柔軟性とは別に、前記方法は以下を可能にする:
a.セラミック粉末、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、不活性金属、特に、ナノメーターの寸法から約500ミクロンまでのものを被覆すること。;
b.爆発反応中、(W/O)エマルジョンへの化学量論的比率での異なる前駆体の添加とそれらの化合により、窒化物、不活性金属、炭化物、硫化物等の(2次元、3次元、又はそれ以上の次元の)多様な結晶構造中に酸化物ナノ粒子で被覆されたものが得られる;
c.高温、圧力及びナノ粒子の基礎粒子上へのプロジェクション速度の結果として、非常に優れた密着品質を有する被覆が得られること;
d.連続する薄膜の形成なしに、それゆえ基礎粒子の光学的、機械的、電気的、磁気的及び触媒の特性の変更が可能であり、個々のナノ粒子による被覆の獲得;
e.基礎粒子と被覆ナノ粒子それぞれに対して、50ナノメートル以下と20ナノメートル以下の結晶サイズを得ること;
f.W/Oエマルジョンの高速爆発反応による高生産能力。
【0018】
ナノ粒子合成のための(W/O)エマルジョン概念の使用は、非特許文献1中で言及されている。この文献には、ナノメーターのアルミナ粉末の合成のための新しい方法が開示されている(エマルジョン燃焼方法―ECM)。(W/O)エマルジョンの大気中の空気との燃焼により、中空のアルミナ粒子が得られる。しかしながら、本発明の方法は異なる型を使用する。反応の発生方式は燃焼ではなく、爆発であると考えられる。さらに、本発明の方法は外部空気を必要としない。これにより、形成される生産物と構造の型のより優れた制御が可能になる。
【0019】
次に、特許文献1には、マイクロメートルとナノメートルの粉末の製造のための爆発のサイクリックプロセスと、異なる基質中での高速プロジェクションが記載され、被覆された表面が得られる。爆発が細かい粒度分布の金属を添加した気体混合物中で起こり、懸濁液が形成される。本発明の方法は、液相において、(W/O)エマルジョンを使用することにより、特許文献1よりも優れている。(W/O)エマルジョンに、固体の前駆体が添加され、又は溶解され、又は、さらに不活性なセラミック粉末が、ナノ粒子層で被覆された個々の粒子を得ることを可能にする。
【0020】
近年、セラミック材料の製造のための(W/O)エマルジョン爆発について、一群の引用文献で紹介された:
【0021】
特許文献2は、(W/O)エマルジョンの高温(2000℃より高い)での爆発方法を開示する。(W/O)エマルジョンは、高密度のマイクロメートルの球形粒子を得るために、その組成中に金属と溶解された少なくとも1つの前駆体とを含む。今回開示された被覆方法において、(W/O)エマルジョン爆発に基づくけれども、このエマルジョンには、新規の前駆体、被覆するための不活性のセラミック粒子と固体のナノ粒子前駆体が添加されている。これらは、最終結果である、ナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末に対して重要な要素である。
【0022】
特許文献3は、低温(2000℃以下)で2つの(W/O)エマルジョンの爆発からナノ材料を得る方法を開示している。第1は、爆発フロントを安定化させること、第2はその組成中に3種類の前駆体、すなわち、内相に溶解した酸化物、外相に混合燃料及び固体状態の金属又は合金を有し、これらは爆発中にナノメートルの寸法の材料を合成するために混合する。しかしながら、本発明の方法では、(W/O)エマルジョンは、既に前記文献で既に開示された種類の前駆体に加えて、ナノ粒子で被覆されたセラミック粉末を得るため、基礎粒子とナノ粒子の十分に分化した形成速度が保証される方法で、(W/O)エマルジョンに添加される、固体状態の少なくとも1つの前駆体を有する。本発明の他の実施形態では、被覆用不活性セラミック粒子が直接、(W/O)エマルジョンに添加される。そして、引用文献の前駆体とは異なり、それは(W/O)エマルジョンの爆発反応中には関与せず、ナノ粒子を不活性セラミック粒子の表面に堆積することを可能にする。
【0023】
非特許文献2は、軍用火薬(RDX)により感作された(W/O)エマルジョン中に溶解したナノ粒子の前駆体とともに、MnFe204ナノ粉末の(W/O)エマルジョンの爆発による合成を開示する。しかしながら、本発明の方法では、(W/O)エマルジョンは、内相に溶解した酸化物の他に、前記文献に同様に引用されたように、ナノ粒子で被覆されたセラミック粒子を得るため、基礎粒子とナノ粒子の十分に分化した形成速度を保証する方法で、(W/O)エマルジョンに固体状態で添加された少なくとも1つの前駆体を必要とする。本発明の他の実施形態では、被覆用不活性セラミック粒子は直接、(W/O)エマルジョンに添加され、前記文献中の前駆体とは異なり、(W/O)エマルジョンの爆発反応には関与せず、セラミック粒子表面にナノ粒子を堆積することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許5855827号公報
【特許文献2】ポルトガル国103838号公報
【特許文献3】ポルトガル国104085号公報
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】"Metal oxidize powder synthesis by the Combustion Method" Takoa Tami, Kazumasa Takatari, Naoysashi Watanable and Nabuo Kaniya - Journal of Materials Research (1997)
【非特許文献2】"Nano-MnFe204 powder synthesis by detonation of emulsion explosive" Xiao Hong Wang et al.
【発明の概要】
【0026】
本発明は、異なる組成を有するナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末及びそのセラミック粉末を得るための方法に関する。
【0027】
本発明の被覆は、多様な一連の用途のために、結晶構造の多様性、5〜150nmの間の被覆層の厚さ、50〜95%の被覆表面積の割合、支持基礎粒子への高い密着性を提供し、それらの特性を変更し、基礎セラミック粉末を機能的にする。
【0028】
1−ナノ粒子層で被覆したセラミック粒子を得る方法
異なる結晶構造のナノ粒子層でセラミック粉末の表面を被覆する方法は、固体状態又は油中水型(W/O)エマルジョンに溶解した状態の少なくとも1つの前駆体を導入することに基づいている。前駆体は爆発中に分解してナノ粒子を生じる。このナノ粒子は被覆しようとする基礎粒子上に堆積する。
【0029】
爆発用の前記エマルジョンは、(W/O)型であるが、広く使用され、例えば、爆発性のエマルジョンの製造に使用される。このエマルジョンは、界面活性剤の作用の下で、2つの密接な関連のある相:内相(水)と外相(不溶性)を有する。
【0030】
本発明の方法は、2つの異なる実施態様を取りうる。被覆用の基礎粒子(A)の形成におけるだけでなく、被覆層のナノ粒子(b)を生じる前駆体の導入においても異なる(図1)。
【0031】
従って、第1の実施態様では、基礎セラミック粒子と被覆ナノ粒子の両方が(W/O)エマルジョンの爆発中に形成されるが、第2の実施態様では、被覆用のセラミック粒子が、直接(W/O)エマルジョン中に入れられ、均質化される。
【0032】
第1のケースでは、被覆ナノ粒子の前駆体が固体状態で添加され、第2のケースでは、前駆体が通常(W/O)エマルジョンの内側の構造中に溶解される。
【0033】
1.1 基礎粒子Aと被覆するbの合成
第1のケースでは、基礎セラミック粒子(A)と被覆ナノ粒子(b)の両方が、(W/O)エマルジョンの爆発工程で合成される。この変形の鍵となる態様は、被覆用のセラミック粒子(A)の前駆体と、被覆層を構成するナノ粒子(b)の前駆体が、(W/O)エマルジョンの爆発中にかなり異なる反応速度を示すことである。
【0034】
この反応速度を得るために、基礎セラミック粒子Aの前駆体は、エマルジョンの内部構造の一部で、その内相に溶解され、外相に均一に溶解され、又は高い反応性を持つ金属であり、その金属により、古典的な爆発モデル中で衝撃波の進展に先立ち、支持する領域である反応ゾーンの内部又はすぐ後ろで反応する、極端に速い反応速度を示すことを可能にする。
【0035】
ナノ粒子固体前駆体は窒化物、硫化物、炭化物、塩化物等の形態であるが、前駆体は固体状態であり、それぞれの分解反応がかなりの吸熱反応であるため、前駆体は反応ゾーンで反応するのではなく、粒子Aが既に形成されたテイラーゾーン(又は気体拡散)と呼ばれるまさにそれに続く相において反応する。一度温度が融点以下になると、次いで、合体を基礎とする成長はもはや起こらないという結果になる。
【0036】
そうであれば、ナノ粒子(b)が基礎粒子(A)の表面に堆積され、被覆する。固体前駆体のこのように遅い反応速度は、(W/O)エマルジョンの爆発速度の減少(添加された固体前駆体の量に従い100〜1000m/sの間)により、反応ゾーン内で形成される少ない気体の結果として、証明される。
【0037】
この改良型は(W/O)エマルジョンの爆発工程の間、莫大な利点を示し、基礎粒子(A)と被覆層のナノ粒子(b)が形成される。
【0038】
プロセス変数の適切な制御により、異なる寸法及び構造の基礎粒子の莫大な多様性だけでなく、基礎ナノ粒子の被覆物を得ることが可能になる。また、2成分構造(単一の前駆体由来の2つの要素)だけでなく、3成分構造(分解反応中に結合する2つの固体前駆体由来)も得られる。そうであれば、例えば、MgAl、MgAlのナノ粒子で被覆されたようなスピネル型(spynel-type)構造の基礎セラミック粒子を得ることも可能である。(W/O)エマルジョンは、その内相中に、溶解したマグネシウムとアルミニウムの塩の化学量論的な量を含み、同時にまた、被覆する厚さに基づいて、同じ要素(マグネシウムとアルミニウム)の所定量の固体前駆体が添加され、混合される。前駆体の量は、厚さと被覆する面積の割合が増加するにつれて多くなる。
【0039】
それゆえ、爆発の第1のフェーズにおいて、MgAl基礎粒子は、(W/O)エマルジョン中に溶解した塩の反応により形成される。爆発の第2のフェーズにおいて、形成された粒子の合体と成長プロセスが起こり、それに続くフェーズにおいて、外側の固体前駆体が分解して結合し、次いで、MgAlナノ粒子を発射して被覆するMgAlナノ粒子を形成する。
【0040】
そうであれば、要約形式では、このナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末の調製方法の改良型は次の工程により構成される。
【0041】
1.1.1−(W/O)エマルジョンの構造に含まれる前駆体量の決定
(W/O)エマルジョンの成分は、可溶性の酸化物前駆体、可溶性燃料、混和性燃料の群から選択される。その性質と相対比の選択は、経験則、構造型及び被覆しようとするセラミック粉末(A)の寸法に基づく。化学反応の化学量論から始めることで、特定の化合物の形成のための各前駆体の必要量を算出することができる。そして、同時に、化学反応のエンタルピーから粒子の爆発温度と結合時間を予測することができる。これらのデータにより、形成される粒子の寸法を予測することができる。
【0042】
1.1.2−(W/O)エマルジョンの調製
前の工程で組成を決定した後、(W/O)エマルジョンの形成のための工程が始まる。(W/O)エマルジョンは、界面活性剤の作用の下で、2つの密接に関連する相:不連続な内相(水性の)と連続する外相(不溶性の)からなる。
【0043】
1.1.2.1−内相の調製
(W/O)エマルジョンの内相は、1.1.1で選択したエマルジョンの組成に従って、前駆体を水に溶かした結果である。この相は、完全に溶解するように、全ての成分の結晶化温度以上(35〜105℃)の間の温度に加熱される。溶解は形成された生産物の良好な均一性を得るために重要である。
【0044】
1.1.2.2−外相の調製
(W/O)エマルジョンの外相は、炭化水素又は有機材料の混合により得られる。それらは、低いpH値(2と5の間)に適する界面活性剤と共にエマルジョンの外相を構成し、安定で再現性のある爆発を行うために要求される2相の良好な乳化を保証するために重要な内相と近い温度での混合物の適当な粘度を保証するために35〜85℃の間でソフトに加熱される。
【0045】
1.1.2.3−乳化
本発明の(W/O)エマルジョンは、乳化マトリックス中で、前述の、予め調製した内相と外相の乳化により得られる。続いて、残りの前駆体の混合の間、非分解性のエマルジョンである、安定なエマルジョンを作るように1〜10ミクロンのミセルを得るために、約60〜150psiで精製される。
【0046】
1.1.2.4−有機増感剤の添加
約0.2〜2%の、不純物を含まない発泡スチロール又はプラスチック球のような有機増感剤が(W/O)エマルジョンに添加される。有機増感剤は爆発反応中で消費され、感受性レベルを保証するために、密度を1.15と1.25g/cmの間に制御することに関与する。有機増感剤は安定な爆発速度に到達するために要求とされる。爆発速度は、(W/O)エマルジョンの密度により、4000〜6000m/sの間で変化する。
【0047】
1.1.2.5−金属の添加
被覆用粒子(A)の寸法に従って、(W/O)エマルジョン中での均一化により固体状態の金属の添加が保証される。エマルジョンの均一化は、爆発反応のパラメーターが時間と空間を通して安定に保たれることを保証するために必須である。
【0048】
粒子Aの寸法は、反応温度と合体時間(coalescence time)に依存する。2つのパラメーターである反応温度と合体時間は、前駆体の量と製造される最終物質により変化する。反応/爆発温度は試薬と最終生産物の形成エンタルピーの違いの結果である。
【0049】
1.1.3−ナノ被覆の固体前駆体の添加
1.1.2で(W/O)エマルジョンが調製された後、続いて均一化により、窒化物、硫化物、塩化物、炭化物等のような固体ナノ粒子前駆体が多量に添加される。それらは被覆層のための構造の型と他の性質、例えば、厚さ、被覆領域表面の割合、密着グレード、孔隙率等に従って決定される。被覆の一部であるナノ粒子の寸法は、反応温度と合体時間に従って決定される。反応温度は、基本的に反応エンタルピーにより決定される。前駆体の良好な均一化は、前駆体間の完全な反応と、被覆された再現性のあるセラミック粉末群を得るために必須である。
【0050】
1.1.4−(W/O)エマルジョンの爆発
(W/O)エマルジョンは、続いて、円筒形のカートリッジ、例えば、合成物質に不純物を導入しないために選択された紙、ポリエチレン、又は他の物質等の爆発に適当な材料の中に入れられる。カートリッジは、その臨界直径より大きな直径を持つ(臨界直径は爆発を維持することが可能な直径であり、通常、実験により決定される)。次いで、起爆剤、容量放電システム、レーザーシステム等のような爆発システム由来の適当なチャンバの中で、爆発が開始される。
【0051】
1.1.5−反応生産物の収集と処理
粉末は、爆発反応に由来する気体によって膨張チャンバの中に引きこまれ、そこで冷却され、乾燥又は湿式手段で収集される。続いて、乾燥プロセスと特性評価に供される。
【0052】
1.2−粒子Aと被覆(b)の合成
本発明の別の実施態様においては、先に記載した方法論とは主に2つの異なる態様がある。第一の態様は、前に記載した本発明の実施態様に従って合成する代わりに、被覆用のセラミック粉末(A)を直接(W/O)エマルジョン中に入れることである。
【0053】
第二の態様は、ナノ粒子(b)前駆体に関する。前駆体は、(W/O)エマルジョンの内部構造の既に一部であり、前述した本発明の実施態様と異なり、その後固体状態で添加されない。これにより、最終組成物中の全固体量の減少だけでなく、(W/O)エマルジョンのレオロジー、処理しやすさ及び爆発性の改善が可能となる。固体のエマルジョンへの取り込みは、その粘度を顕著に増加させる。それは、導入可能と考える固体%に限界を設け、その均一化を困難にする。この方法は、内相中でそれらを溶解させることが好ましい。
【0054】
(W/O)エマルジョンの爆発反応の間、これら前駆体は急速にナノ粒子に分解され、出発物質のセラミック粉末(A)の表面に堆積する。
【0055】
この実施態様において、被覆プロセスの鍵となる工程は、システム雰囲気タイプ(酸化剤/還元的/不活性)、主に、次の2つの重要な態様を保証するために、(W/O)エマルジョン爆発温度の制御を含む。:a)基礎粒子Aは分解しない。例えば、炭化物は高温で固体の酸化物に分解し、気体のCOを放出する。b)固体状態で、基礎粒子(A)と被覆を構成するナノ粒子(b)の間で反応が起こらない。例えば、MgOナノ粒子で基礎アルミナ粒子を被覆しようとするとき、(W/O)エマルジョン爆発温度は800℃以下であり、そのような値より高い温度は、固体状態でアルミナと酸化マグネシウムの間に好ましくない副反応を起こし、単一の被覆されていない粒子の形状の他の構造(スピネルMgAl)の形成につながる。
【0056】
a)に記載された状況を避けるために、爆発温度を、被覆しようとする粒子Aの分解温度以下に維持することが必要である。爆発反応の温度が常にスピネル型の化合物又は他の構造の形成温度より低ければ、固体状態の反応を常に避けることができる。これらのデータは温度に従った組成物を示す相ダイヤグラムで理解できる。
【0057】
しかしながら、複数の結晶構造(2成分、3成分そしてそれ以上)を有するセラミック粉末の形成は、極めて興味深く、かつ他の非被覆化合物の合成方法を構成するということに特に留意されたい。爆発温度が所望の構造の形成温度よりも高いときに、スピネル型の結晶構造の間で、基礎粒子(A)とナノ粒子(b)の間の固体状態の反応により現れる。
【0058】
先に記載された実施態様と比較すると、本発明の方法のこの実施態様は、被覆用セラミック粉末が直接(W/O)エマルジョンに入れられるが、被覆用粒子が先に何らかの方法により合成されていなければならないという欠点を有する。しかし、補償として、それは、被覆用の粒子と被覆するナノ粒子の両方をより多様化することができ、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、希/不活性金属を含むことを可能にする。それは本質的に次の段階を含む。
【0059】
1.2.1−(W/O)エマルジョン中のナノ粒子前駆体
窒化物、混和性燃料の合成のための(W/O)エマルジョンの成分は、可溶性の酸化剤前駆体、可溶性燃料、例えば、ヒドラジンと尿素等の群から選択される。その相対比率は、経験則や、構造型や、所望のナノ被覆(b)の特性(厚さ、基礎粒子で被覆される面積の割合、密着性)に基づく。前駆体の選択は、1.1.1に記載されたようにして達成される。
【0060】
1.2.2−(W/O)エマルジョンの調製
(W/O)エマルジョンの調製は1.1.2に記載されたようにして実施される。
【0061】
1.2.2.1−内相の調製
(W/O)エマルジョンの内相の調製は1.1.2.1に記載のようにして実施される。
【0062】
1.2.2.2―外相の調製
(W/O)エマルジョンの外相の調製は1.1.2.2に記載のようにして実施される。
【0063】
1.2.2.3−乳化マトリックス中での2つの相の乳化
(W/O)エマルジョンを得るため、2つの相の乳化は、1.1.2.3に記載のようにして実施される。
【0064】
1.2.2.4―有機増感剤の添加
有機増感剤の添加は、1.1.2.4に記載のようにして実施される。
【0065】
1.2.3−被覆用基礎粒子Aの添加
続いて、被覆用基礎粒子Aが、先に記載されたようにして調製され、後述するように均一化された(W/O)エマルジョンに用量添加される。
【0066】
1.2.4−(W/O)エマルジョンの爆発
(W/O)エマルジョンの爆発は、1.1.4に記載のようにして実施される。
【0067】
1.2.5−反応生成物の収集と処理
反応生成物の収集と処理は、1.1.5に記載のようにして実施される。
【0068】
2−被覆の特徴付け
本発明の被覆は、セラミック粉末を対象とし、ナノ粒子層からなり、本発明の方法による(W/O)エマルジョンの爆発に基づく。それらは同時に、高温高圧で得られるため、一群の特別な特性を示す。
【0069】
2.1 被覆用基礎セラミック粒子の特徴付け
これら粒子は主な特徴として次のようなものを示す:
a)粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、希金属等の多様な化学的化合物属により構成される。
b)粒子は、粒子の形態が被覆のタイプには影響しない場合、異なる形態の20nmから500μmの範囲の寸法からなる。
c)粒子は50nm以下の結晶サイズを示す。
【0070】
2.2 被覆層の特徴付け
a)被覆層は、2成分、3成分又はそれ以上の構造の金属酸化物ナノ粒子層、又は窒化物、炭化物、硫化物、希/不活性金属の層により形成される。
b)被覆層は、形成されるナノ粒子の量とサイズにより、5nmと150nmの間で変化し得る。
c)被覆層は、用途に応じて基礎粒子の全表面積の50〜95%の面積を被覆する。
d)被覆層は、20と100nmの間の個々の球形の一次粒子により形成される。一次粒子は、基礎セラミック粒子の光学的、磁気的、電気的、熱的及び触媒的特性を変えることを可能にする。
e)被覆層は20nm以下の微結晶を示す。
f)被覆層は、水懸濁液中の被覆粒子が400ワットの音波処理にさらされても、被覆を維持することを可能にする基礎粒子への密着性度合を示す。
g)被覆層は、70%以上の高度な均一度を示す。
【0071】
上述の特性を特徴づけるために、次の物理化学的方法に注意を喚起することが必要である。
【0072】
X線回折
X線回折は、特定の試料中に存在する化合物の同定が可能になると、被覆の特性評価をする際に欠くことのできない分析である。粒子A(基礎粒子)が粒子(B)で被覆されたとき、2つの異なる化合物がX線回折技術により同定されることを意味する。単一の化合物が同定されるとき、基礎粒子の化合物が被覆化合物と同じである場合を除き、爆発反応の条件が被覆形成にとって理想的でなかったことを意味する。X線回折技術を使用することで、特定の試料中の各化合物の割合を定量できる。微結晶のサイズの値は、X線回折図形の最も強いものの半分の高さにおける幅の値と共にシェラーの式(Scherrer equation)から決定される。しかしながら、この技術は走査型電子顕微鏡により相補されるべきである。
【0073】
走査型電子顕微鏡−SEM
走査型電子顕微鏡は、個別の粒子又はナノメートルの寸法の粒子で被覆された粒子であるか否かの評価方法で、特定の化合物の形態観察を可能にするならば、被覆の特性評価に基礎的な役割を果たす。この技術はさらに、被覆に関するナノ粒子の寸法/厚さと同様に基礎粒子の寸法の定量も可能にする。
【0074】
今日では、高分解能装置は、被覆の特性評価及び試料の化学組成分析−EDX−エネルギー分散形X線分析に通常使われる技術を備える。本技術は、試料中、粒子中、又は極限で、粒子の特定領域に存在する化学元素の評価を可能にする。X線回折からの結果と結合されたこの技術の情報により、基礎粒子と被覆組成物の決定が可能になる。EDXが実行X線回折図のオプションを供給する場合、適当なイメージソフトウエアを通して被覆面積の定量が可能である。X線回折図の結果は、異なる色で同定された試料の元素イメージである。
【0075】
要するに、SEMとEDXによれば、基礎粒子の被覆に関するナノ粒子の被覆の均一性、寸法/厚さと、被覆面積のそれぞれの割合が評価できる。
【0076】
粒子サイズ分布
粒子サイズ分布を決定するための懸濁液の調製は、基礎粒子へのナノ粒子の密着性を定量的に評価するために決め手となる。粒子サイズ分布が、音波処理(試料に超音波の適用)の強度及び時間に影響されなければ、被覆の密着は非常に強いことを意味する。粒子サイズ分布の結果は、SEMにおいて基礎粒子と被覆ナノ粒子のサイズを評価できる場合、SEM画像と結合されるべきである。粒子サイズ分布において、被覆するナノ粒子に特徴的な寸法を有する粒子が現れると、そのような結合が試料の懸濁液の調製中の超音波適用により破壊されたのであれば、基礎粒子への密着が弱いことを意味する。例えば、基礎粒子への被覆の優れた密着の場合、粒子サイズ分布は、SEMにおいて観察されたサイズを有する基礎粒子サイズのみを反映する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の2つのプロセスの部分である3つの工程を示す図
【図2】細分化したプロセスIIを示す図
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は本発明の2つのプロセスの部分である3つの工程を説明する。
【0079】
プロセスI−Aとbの同時合成
プロセスII−Aの配置とbの合成
A−基礎セラミック粒子
b−被覆するナノ粒子
【0080】
プロセスIにおいて、基礎セラミック粒子Aと被覆層(b)のナノ粒子が同時に合成される。工程1は、前駆体、例えば、溶解した塩又は基礎セラミック粒子(A)等を含む(W/O)エマルジョンの調製からなる。工程2では、より遅い反応速度を示すナノ粒子固体前駆体が添加される。最後に、工程3では、(W/O)エマルジョン爆発が起こり、結果としてセラミック粒子(A)がナノ粒子層(b)により被覆される。
【0081】
プロセスIIでは、最初の工程は、塩又は可溶性燃料としてナノ粒子前駆体を含むエマルジョン(W/O)の調製により構成される。工程2では、被覆用基礎セラミック粒子が被覆用(A)に添加される。最後に、工程3では、プロセスIのように、工程Iの(W/O)エマルジョンの爆発からなる。ナノ粒子(b)で被覆されたセラミック粒子(A)が生じる。
【0082】
プロセスII−bがより多く合成されたAの配置
a)−ナノ粒子(b)により被覆されるセラミック粒子(A)
b)−単一の結晶構造を有するセラミック粒子(Ab)−被覆なしの単一粒子の製造
A−基礎セラミック粒子
b−被覆するナノ粒子
T−(W/O)エマルジョンの反応温度
Trs−固体状態の反応温度
【0083】
図2はプロセスIIの細分化したものを説明する。ここでは、(W/O)エマルジョン爆発の温度に基づいて、生産物の点で異なる状況が得られる。すなわち、
a)−粒子(A)とナノ粒子(b)の間の、固体状態での反応温度(Trs)以下での(W/O)エマルジョン爆発の温度。この場合、ナノ粒子(b)で被覆された基礎粒子(A)を生じる。
b)−基礎セラミック粒子(A)とナノ粒子(b)の間の、固体状態での反応温度を超える(W/O)エマルジョン爆発の温度。この場合、2成分、3成分又はそれ以上の成分の結晶構造を有する均一なセラミック粉末(被覆されない)を生じさせる。
【0084】
1.セラミック粒子中においてナノ粒子被覆を得る方法
ナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末を得る方法は、第一に、被覆しようとする粉末タイプによって決まる。:
【0085】
a)基礎粒子Aと被覆するbの合成
酸化物の場合、それを本実施形態中の同じ又は他の酸化物のナノ粒子を用いて、被覆用酸化物の形成のために速い分解速度、及び被覆する酸化物のナノ粒子形成のための遅い分解速度の前駆体を導入することにより、合成し被覆することが可能である。この方法は次の工程で示される:
【0086】
1.1.a.前駆体の定量
被覆用粒子の式、構造及び寸法に従って、(W/O)エマルジョンの内相に溶解するための速い分解速度の前駆体量の決定。
【0087】
1.2.a.内相の調製
内相の調製のため、前もって選択された組成に従って、前駆体は水に溶解される。続いて、溶液は異なる試薬の結晶温度を超える温度(35−105℃)に加熱される。
【0088】
1.3.a.外相の調製
エマルジョンの外相の調製は、外相を構成する炭化水素又は有機物質を、混合物のpH値に適当な界面活性剤とともに混合することにより行われる。前記混合物は35〜85℃の範囲の温度に加熱される。
【0089】
1.4.a.内相の外相との乳化
乳化マトリックス中の2つの相の乳化は、適当な粘度範囲の乳化剤の下で行われ、乳化マトリックスが得られる。続いて、精製が、エマルジョンを静的ミキサーを通させることにより、約60〜150psiで行われる。
【0090】
1.5.a.(W/O)エマルジョンの増感
直後に、不純物を含まない発泡スチロール又はプラスチック球のような有機増感剤(0.2〜2%)の添加が行われる。有機増感剤は、爆発反応中に消費され、安定な爆発速度に到達するように要求される感受性レベルを確保するため、密度を1.25g/cm以下の値に制御することに関与する。
【0091】
1.6.a.前駆体の添加及び均一化
爆発組成物調製の最終工程は、増感した(W/O)エマルジョンと2つの前駆体を予め決定した割合で混合するものである。この混合物、すなわち、爆発組成物は、前駆体の摩擦や分解を避けるために、非常に遅い速度で機械的に撹拌されるタンク中で形成される。
【0092】
1.7.a.(W/O)エマルジョンの爆発
続いて、(W/O)エマルジョンは、紙、ポリエチレン又は他の材料で形成され、臨界的な直径よりも大きい直径を有する円筒形(又は異なる形状、例えば、球形又は平面等を示す)カートリッジに入れられる。適当なチャンバの中で、起爆装置、又は同じ効果を有する他のシステム、例えば、容量放電システム、レーザーシステム等により起爆される。
【0093】
1.8.a.反応生成物の収集と処理
粉末は、爆発反応により生じた気体により、拡張チャンバ内に引き込まれる。拡張チャンバでは、粉末が冷却され、乾燥した手段又は湿った手段により収集される。
【0094】
b)粒子(A)とナノ粒子(b)の合成
この方法は、以前のものに対して、被覆用粒子である粒子Aが、爆発反応中に合成される代わりに、組成物中に導入される点で際立っている。
【0095】
方法の工程は以下の通りである:
【0096】
1.1.b.前駆体/粒子Aの定量
ナノ粒子の式、構造及び意図する被覆特性に従って、粒子Aと前駆体の量を決定すること。
【0097】
1.2.b.内相の調製
内相の調製のために、予め選択された組成に従って前駆体は水に溶解される。続いて、溶液は、異なる試薬の結晶点より高い温度(35〜105℃)までに加熱される。
【0098】
1.3.b.外相の調製
エマルジョンの外相の調製は、外相を構成する炭化水素又は有機材料を、混合物のpH値に適当な界面活性剤と共に混合することにより行われる。合体したものは35℃〜85℃の範囲の温度まで加熱される。
【0099】
1.4.b.外相と内相の乳化
乳化マトリックス中で、2つの相の乳化は、適当な粘度範囲の乳化剤の中で行われ、乳化マトリックスが得られる。続いて、精製が、エマルジョンを静的ミキサーに通過させることにより、約60〜150psiで行われる。
【0100】
1.5.b.増感剤の添加
直後に、不純物を含まない発泡スチロールやプラスチック球のような有機増感剤の添加が行われる(0.2〜2%)。
【0101】
1.6.b.基礎粒子(A)の添加及び均一化
被覆用基礎粒子の添加とそれに続く(W/O)エマルジョンの均一化が行われる。
【0102】
1.7.b.(W/O)エマルジョンの爆発
続いて、(W/O)エマルジョンは、紙、ポリエチレン又は他の材料で形成され、臨界直径を超える直径を有する円筒形(又は他の形状、例えば、球形又は平面)のカートリッジに入れられる。適当なチャンバの中で、起爆装置、又は、同様の効果を有する他のシステム、例えば、容量放電システム、レーザーシステム等により起爆される。
【0103】
1.8.b.生成物の収集及び処理
粉末は、爆発反応で生じた気体により、拡張チャンバ中に引き込まれる。拡張チャンバでは、粉末が冷却され、乾燥した媒体又は湿った媒体中に収集される。続いて、それらは基準とされ、特性評価される。
【0104】
実施例
明細書に示された最初の2つの実施例は、(W/O)エマルジョンを爆発させる方法により被覆を実施する2つの異なる方法を説明する。
【0105】
実施例1(基礎粒子の合成と被覆)
本実施例では、(W/O)エマルジョン組成物中で、前駆体としてアルミニウム及び硫酸銅を用いて、酸化銅のナノ粒子で被覆されたアルミナ粒子(Al)を得る。
【0106】
1. 以下の組成を有する組成物が調製された:
・増感されたW/Oエマルジョン:80%
・硫酸銅5水和物:16%
・アルミニウム(粒子サイズ<200ミクロン):4%
【0107】
1.1 爆発可能な組成物の調製は次の工程に従って行った。:
1.1.1. オキシダント溶液の調製。内相:撹拌タンク中、100℃で、窒化アルミニウム90%を純水10%と共に溶解し調製した。
1.1.2. 外相の調製:植物油80%と界面活性剤20%の均一な混合を行い、調製した。
1.1.3. 外相と内相の乳化:適当な粘度範囲の乳化剤中で、2つの相を乳化して、乳化マトリックスを得た。
1.1.4. 感光性W/Oエマルジョンの調製:機械的に撹拌されるタンク中で、乳化マトリックス99.7%と、発泡スチロール0.3%の均一な混合を行い、感光性W/Oエマルジョンと呼ばれる最終生産物を調製した。
1.1.5. 爆発のための組成物調製の最終工程は、感光性W/Oエマルジョンを両方の前駆体と上述の割合で混合することからなる。この混合物は、爆発性組成物と呼ばれ、金属の摩擦を避けるために、非常に遅い速度で機械的に撹拌されるタンク中で形成される。
【0108】
2. 爆発性組成物は、直径35mmで200mm幅の紙のカートリッジに入れられた。その後、起爆源として電気的起爆装置を用いることにより、爆発が行われた。
【0109】
3. 製品の収集、処理及び特性評価:酸化銅で被覆されたアルミニウム粉末は、湿った状態で収集され、70℃で乾燥させられた。その後、代表的なサンプルが次の分析、SEMによる観察、X線回折及び粒子サイズ分析に供された。
【0110】
実施例2(基礎的粒子の(W/O)エマルジョン中への事前導入)
酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子で被覆したチタニア(TiO)の製造
次の組成を有する組成物が調製された:
・増感したW/Oエマルジョン:85%
・チタニア(500ナノメートル以下の粒子サイズ):15%
【0111】
1.1. 爆発性組成物の調製は、次の工程に従って行われた:
1.1.1. オキシダント溶液の調製−内相:撹拌タンク中、90℃で、窒化アンモニウム50%を窒化亜鉛6水和物50%と共に溶解し均一化を行い、調製した。
1.1.2. 外相の調製;植物油70%と、約3のpH値に適当な界面活性剤30%との均一な混合をし、調製した。
1.1.3. 外相と内相の乳化:適当な粘度範囲の乳化剤中で、2つの相を乳化して、乳化マトリックスを得た。
1.1.4. 感光性W/Oエマルジョンの調製:機械的に撹拌されるタンク中で、乳化マトリックス99.5%と発泡スチロール0.5%の均一な混合を行い、感光性W/Oエマルジョンと呼ばれる最終生産物を調製した。
1.1.5. 爆発のための組成物調製の最終工程は、感光性W/Oエマルジョンを2つの前駆体と上述の割合で混合することからなる。この混合物は、爆発性組成物と呼ばれ、機械的に撹拌されるタンク中で形成される。
【0112】
2. 爆発性組成物は、直径35mm、幅200mmの紙のカートリッジ中に入れられた。続いて、起爆源として電気的起爆装置を用いることにより、爆発が行われた。
【0113】
3. 製品の収集、処理及び特性評価:酸化銅で被覆されたアルミナ粉末は、湿った状態で収集され、70℃で乾燥された。続いて、代表的なサンプルが次の分析、SEMによる観察、X線回折及び粒子サイズ分析に供された。
【0114】
実施例3(基本粒子のエマルジョン(W/O)中への事前導入)
酸化マグネシウム(不活性)及びアルミニウムからの非被覆アルミン酸マグネシウム(MgAl)の調製(プロセスII.b)
次の組成を含む組成物が調製された:
・増感されたW/Oエマルジョン:76.6%
・酸化マグネシウム(1ミクロン以下の粒子サイズ):10%
・顆粒化アルミニウム(160ミクロン以下の粒子サイズ):13.4%
1.1. 爆発性組成物の調製は、次の工程に従って行われた:
1.1.1. オキシダント溶液の調製:内相:攪拌タンク中、90℃で、窒化アンモニウム90%を純水10%と共に溶解し均一化を行い、調製した。
1.1.2. 外相の調製:植物油80%を、pH値3〜5の範囲で適当な界面活性剤20%と均一な混合をし、調製した。
1.1.3. 外相と内相の乳化:適当な粘度範囲の乳化剤中で、2つの相を乳化して、乳化マトリックスを得た。
1.1.4. 感光性W/Oエマルジョンの調製:機械的に撹拌されるタンク中で、乳化マトリックス99.6%と、発泡ポリスチレン0.4%の均一な混合を行い、感光性W/Oエマルジョンと呼ばれる最終生産物を調製した。
1.1.5. 爆発のための組成物調製の最終工程は、感光性W/Oエマルジョンを2つの前駆体と上述の割合に従って混合することからなる。この混合物は、爆発性組成物と呼ばれ、機械的に撹拌されるタンク中で形成される。
【0115】
2. 爆発性組成物は、直径35mm及び幅約200mmの紙のカートリッジ中に入れられた。続いて、起爆源として電気的起爆装置を用いることにより、爆発が行われた。
【0116】
3. 製品の収集、処理及び特性評価:アルミン酸マグネシウム粉末は、湿った状態で収集され、100℃で乾燥された。続いて、代表的なサンプルが次の分析、SEM中での観察、X線回折及び粒子サイズ分析に供された。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子層で被覆されたセラミック粉末の調製方法であって、
固体状態又は油中水型(W/O)エマルジョンに溶解した状態の少なくとも1つの前駆体を導入する工程を備え、
前記前駆体が爆発工程中の分解で被覆用基礎セラミック粒子(A)上に堆積するナノ粒子(b)を生成することにより、被覆層を形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の被覆されたセラミック粉末の調製方法であって、
爆発用の前記エマルジョンは、前記油中水型(W/O)エマルジョンであり、界面活性剤の作用の下で密接に関連する2つの相である内側の水相と外側の不溶相を有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の被覆されたセラミック粉末の調製方法であって、
被覆する前記ナノ粒子の前駆体は、固体状態で前記油中水型(W/O)エマルジョンに添加され、
前記基礎セラミック粒子と被覆する前記ナノ粒子は、前記油中水型(W/O)エマルジョンの爆発中に形成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆されたセラミック粉末の調製方法であって、
前記被覆用セラミック粉末(A)の前駆体と、前記被覆層を構成する前記ナノ粒子(b)の前駆体とは、前記油中水型(W/O)エマルジョンの爆発中に異なる反応速度を示し、
前記セラミック粉末(A)の前駆体は極めて速い反応速度をテイラーゾーンより前に示し、
前記ナノ粒子の固体前駆体はテイラーゾーンの直後に反応することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の被覆されたセラミック粉末の調製方法であって、
前記被覆用セラミック粒子は、前記油中水型(W/O)エマルジョンの内部構造中に直接配置され均一化されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の被覆されたセラミック粉末の調製方法であって、
被覆形成は前記油中水型(W/O)エマルジョンの爆発温度によって制御され、
前記爆発温度は前記被覆用セラミック粉末の分解温度よりも低く、かつ前記基礎粒子(A)と前記ナノ粒子(b)の間の固体状態の反応温度よりも低いことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5記載のセラミック粉末の調製方法であって、
前記セラミック粉末の形成は、前記油中水型(W/O)エマルジョンの爆発温度によって制御され、
前記爆発温度は、前記基礎粒子(A)と前記ナノ粒子(b)の間の固体状態の反応温度よりも高いことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるセラミック粒子の被覆であって、
前記基礎粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、希/不活性金属等の複数の化合物により構成され、20nm〜500μmの範囲の寸法を有し、異なる形状で50μmより小さい結晶サイズを示すことを特徴とするセラミック粒子の被覆。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られるセラミック粒子の被覆であって、
前記被覆層を形成する前記ナノ粒子は、特徴付けられる、2成分、3成分、又はそれ以上の成分の構造の酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、不活性金属を含み、5〜150nmの範囲で変化する厚さを有し、
前記ナノ粒子は、前記基礎粒子の全表面積の50〜95%を被覆し、20〜100nmの球形の1次粒子で形成され、20nmより小さい微結晶又はアモルファス状態を示し、400ワットの超音波処理にさらされたとき維持される前記基礎粒子への密着性を示し、
前記ナノ粒子は、高度な化学的及び表面の均一性を示すことを特徴とするセラミック粒子の被覆。
【請求項10】
請求項8又は9記載の被覆を有する被覆されたセラミック粉末であって、
前記セラミック粉末は請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により得られるナノ粒子層で被覆されることを特徴とする被覆されたセラミック粉末。
【請求項11】
請求項7記載の方法により得られるセラミック粒子であって、複数の2成分、3成分及びそれ以上の微結晶構造を有し、その間にスピネル型結晶構造が存在することを特徴とするセラミック粉末。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−505075(P2012−505075A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530979(P2011−530979)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/PT2008/000040
【国際公開番号】WO2010/059070
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(510314057)イノブナノ−マテリアイス アバンサドス,ソシエダッド アノニマ (2)
【氏名又は名称原語表記】INNOVNANO−MATERIAIS AVANCADOS,S.A.
【Fターム(参考)】