説明

ナノ銀を用いた骨接合

本発明は銀からなる抗菌コーティング、該コーティング含有医療器具及びインプラント、及び該コーティングの作製方法及び装置に関する。医療器具又は歯科用並びに整形外科用のインプラントが、被処理表面を有する金属又は金属合金であって、該被処理表面を少なくとも一部、コロイド分散系を用いたプラズマ電解酸化により酸化物膜に変換し、変換された表面が一部、該コロイド分散系のコロイド分散銀粒子で形成される島に覆われている、被処理表面を有する金属又は金属合金を含む。本発明のAg−TiOコーティングは抗菌効力、接着性及び生体適合性に関して優れた特性を示す。ヒトの体内でのインプラントの寿命が増大する。抗菌コーティングは、特に高い感染リスクがある場合に外傷学、整形外科、骨接合及び/又は身体内補綴の分野に使用可能である。現存する多くの医療器具及びインプラントが該コーティングの恩恵を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、銀からなる多機能抗菌コーティングに、かかるコーティングを含むインプラント及び/又は医療器具に、並びにかかるコーティングを作製する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀イオンが細菌及び他の微生物の成長を強く阻害することが知られている。銀イオンは微生物の重要な細胞成分を破壊し、そのためそれらの生体機能が全く働かなくなる。銀は広範な抗菌活性を示し、更には抗生物質耐性株にも有効である。さらに、銀は細菌細胞内の多くの部位を標的とし、このため細菌が任意の種の耐性を発現する機会が低減する。
【0003】
ほとんどの病原菌が通常用いられる抗生物質に対する耐性が増大しているため、近年銀は抗菌活性物質として見直されている。実際、その消毒性のため、銀は衛生目的及び医療目的で長年用いられてきた。
【0004】
例えば銀化合物は、抗生物質が現れるまで第一次世界大戦中の創傷感染に対する主要な対抗手段であった。1884年、ドイツ人産科医C. S. F. Credeが新生児淋病性眼炎(Gonococcal ophthalmia neonatorum)の予防のための眼科用溶液として1%硝酸銀を導入した。おそらくはこれが銀を医療に使用した初めての科学論文である。さらに、銀スルファジアジンのクリームは重篤な熱傷創の標準的な抗菌処理であったが、未だに火傷治療室で広く用いられている。
【0005】
現在、創傷包帯、カテーテル及び/又は腫瘍補綴システム等の多くの銀含有製品が市販されている。
【0006】
既知のコーティング作製方法の1つは、医療用インプラントの表面の細菌コンタミネーションに対する確実な保護を与える真空コーティング法に基づいている。純銀コーティングをPVD(物理蒸着)プロセスにより塗布し、その後酸化ケイ素のコーティングをPECVD(プラズマ促進化学蒸着)プロセスにより堆積する。コーティングの厚さは一般的に200nm未満である。
【0007】
PVDプロセス及びCVDプロセスには通常、非常に高価なコーティングシステムが要求される。さらにPVDプロセス及びCVDプロセスは、高真空要件のためにエネルギー消費も高い。またPVD技法は「LOS(line-of-sight:視界)」技法であり、これは複雑な表面を均質にコーティングするのが非常に困難であることを意味する。
【0008】
さらに、起こり得る「過剰な」銀堆積による皮膚及び/又は眼の不可逆的な色素沈着、すなわち銀中毒又は銀症は、銀又は銀化合物への長時間の曝露後に発症する可能性がある。
【0009】
加えて、白血球減少症及び神経筋の損傷が銀濃度の増大により引き起こされる可能性がある。アレルギー反応が文献に説明されている。銀塩又は銀元素を用いた、これまでのコーティングの試みによって、関係患者の血清中の銀濃度の著しい増大が引き起こされるという報告があった。
【0010】
したがって、高度な特性のコーティングを有する(例えばインプラントとして具現化されている)医療用デバイスを提供することが本発明の目的である。
【0011】
好ましくはかかるコーティングは(例えば金属製のインプラント上に)抗菌コーティングとして与えられるものとする。
【0012】
特にかかるコーティングの抗菌効力、例えば浸出速度を制御又は適合させることが可能であるとする。
【0013】
好ましくはヒト組織及び/又は骨の成長はインプラント上のかかるコーティングにより促進されるものとする。
【0014】
かかるコーティングの作製は簡単でかつコストが削減されたコンセプトに基づくものとする。
【発明の概要】
【0015】
驚くべきことに、本発明による目的の解決は添付された各独立クレームのそれぞれの主題により達成される。
【0016】
有益なかつ/又は好ましい実施の形態又は改良形態は添付された各独立クレームの主題である。
【0017】
したがって本発明は、好ましくは非生分解性材料の医療用デバイス、特に金属製の医療用デバイスの表面を処理する方法であって、
コロイド分散系を準備する工程と、
処理対象の医療用デバイスの表面が前記コロイド分散系に浸漬するように、該医療用デバイスを該コロイド分散系に曝す工程と、
前記コロイド分散系に配置される第一電極及び/又は第二電極として前記医療用デバイスの間で、好ましくは非対称若しくは対称の、又は非対称と対称との組合せのAC電圧差を発生させる工程と、
を含み、プラズマ電解酸化により浸漬した表面を酸化物膜へと変換させ、該変換された表面が前記コロイド分散系のコロイド分散粒子で形成される島に一部覆われている、好ましくは非生分解性材料の医療用デバイス、特に金属製の医療用デバイスの表面を処理する方法を提唱する。
【0018】
本発明は、被処理表面を有する好ましくは非生分解性の金属又は金属合金を備える医療用デバイスであって、該被処理表面を少なくとも一部、コロイド分散系を用いたプラズマ電解酸化により酸化物膜に変換し、変換された表面が一部、該コロイド分散系のコロイド分散粒子で形成される島に覆われている、被処理表面を有する好ましくは非生分解性の金属又は金属合金を備える医療用デバイスも提唱する。
【0019】
多孔性の酸化物膜又は酸化物層はプラズマ電解酸化(PEO)プロセスにより成長する。PEOプロセスにより、金属基板が「電解槽」中で第一電極として、好ましくはアノードとして与えられる。その表面が印加電場下で対応する金属酸化物に変換される。酸化物膜は、表面の多孔性が高く、基板としてコロイド分散系及び医療用デバイス、例えばインプラントの両方に由来する構成要素を有する結晶相からなる。in situ堆積により金属酸化物粒子−ナノコンポジットコーティングの合成が与えられる。医療用デバイス表面を酸化すると粒子が医療用デバイス表面上に塗布される。本発明により、あらゆるタイプの形状の医療用デバイス上にコーティングを形成することが可能となる。
【0020】
コロイド分散系は分散液と呼ぶこともできる。分散液は分散粒子、特にコロイド分散粒子を含有する液体である。コロイド分散粒子の平均径は100nm以下、好ましくは50nm以下、最も好ましくは30nm以下である。粒子はナノ粒子とも称される。粒子はコロイド分散系に分散しても、溶解はしない。
【0021】
好ましくは、粒子は一般的に広域なサイズ分布を有する粉末としては与えられない。好ましい実施の形態では、粒子のサイズ分布は狭く、FWHM(半値全幅)が25nm以下である。かかるサイズ分布により、分散液中での均一な島の形成及び伝導率の改善が可能になる。
【0022】
好ましい1つの実施の形態では、粒子は銀粒子(Ag粒子又はAgナノ粒子)により与えられる。医療用デバイス表面、例えばインプラント表面上のかかるナノ銀コーティングは、幾つかの有益な効果:細菌付着の低減及び細菌成長の阻害を示す。これまで銀効果に対する耐性機構は報告及び検出されなかった。銀は抗生物質というよりは消毒剤のように作用するため、かかるナノ銀コーティングは、(更に多重耐性株に対する)抗菌効力、接着性及び生体適合性に関して優れた特性を示す(更なる利点に関しては、本発明の詳細な説明を参照されたい)。このナノ銀含有層はプラズマ電解酸化により誘導されるインプラントの表面化学変換により与えられる。
【0023】
補助形態として又は代替形態としては、粒子はアパタイト粒子、好ましくはHA粒子(ヒドロキシアパタイト)により与えられる。アパタイトは、ヒドロキシアパタイト、Si置換ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト及び炭酸アパタイトからなる群から選択される少なくとも1つのアパタイトである。アパタイトの少なくとも1つのCa原子をMg、Zn、Cu、Na、K及びSrに置き換えることができる。
【0024】
ヒドロキシアパタイトは骨再生(osteoconduction)を改善させる。これにより、例えばヒト又は動物の身体内に挿入されたインプラントの強固な固定が可能になる。本発明によるHA粒子にはHA−Si化合物(Si置換ヒドロキシアパタイト)も含まれる。HA−Si化合物は、少なくとも1つのPO3−基がSiO3−基に置き換わったHA化合物である。かかるHA−Si化合物は生体適合性の改善を特徴とする。
【0025】
更なる補助形態として又は更なる代替形態として、粒子は銅及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種類の粒子により与えられる。この種の粒子も抗菌効果を示す。
【0026】
更なる実施の形態では、添加剤、好ましくはナノサイズの添加剤が分散液中で与えられる。したがって、粒子は金属、酸化物、土類鉱物及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの材料である添加剤を含む。幾つかの典型例はマグネシア、リン酸カルシウム、α−TCP(リン酸三カルシウム)、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス及び/又はケイ素である。水ガラスは骨石灰化に有効である。添加剤がコロイド分散系中に溶解又は分散される。上述の添加剤は例示であり、この列挙に限定されないことを強調する。
【0027】
コロイド分散系は、特に低伝導率又は無伝導率のあらゆる種の液体に基づき得る。1つの実施の形態では、コロイド分散系は水性分散系として与えられる。好ましくは、分散手段は純水又はイオン交換水である。用いられる水には本質的に電解質が含まれない。好ましい実施の形態では、意図的に付加的な電解質を蒸留水に導入しない。用いられる水のpH値は7以下であるか、又は用いられる水のpH値は7.4以下である。
【0028】
分散液の分散相である粒子は100mg/l以下、好ましくは20mg/l以下、最も好ましくは2mg/l以下の濃度で与えられる。最も好ましい実施の形態では、濃度は2mg/l以下である。この値は金属粒子、特にAg粒子が細胞毒性効果を回避するのに特に好適である。さらに、これらの値は金属粒子、特にAg粒子がコロイド分散系に十分な導電性を与えるのに特に好適である。
【0029】
好ましい実施の形態では、コロイド分散系における導電性は本質的にコロイド分散粒子自体のみで、又はコロイド分散粒子自体のみで与えられる。このことは特に乳化剤と組み合わせた金属粒子、例えばAg粒子に特に好適である。好ましくは粒子、例えばAgナノ粒子は唯一の担体であるか、又は分散液中で電荷に対して最も活性のある担体である。好ましい実施の形態では、粒子又は金属粒子は酸化物膜上に島を形成する材料により与えられる。材料例の一つは銀である。補助形態として又は代替形態として、金属粒子又は分散金属粒子は基板材料の構成要素により与えられる。例えば粒子は基板(医療用デバイスを示す)がチタンを含む場合、Ti粒子により与えられる。コンタミネーションを回避することができる。また溶解物質、例えば浸漬された医療用デバイスの溶解物質がコロイド分散系における導電性に寄与し得る。
【0030】
補助形態として又は代替形態として、少なくとも1つの電解質がコロイド分散系において与えられる。電解質はコロイド分散系に溶解する。1つの実施の形態では、電解質は金属、酸化物、土類鉱物及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の実施の形態では、電解質は基板材料の構成要素から選択される少なくとも1つの電解質を含む。すなわち電解質は基板材料に適合される。例えば、基板(インプラントを示す)がチタンを含む場合、電解質はTiイオンにより与えられる。コンタミネーションを回避することができる。上述の電解質は例示であり、この列挙に限定されないことを強調する。
【0031】
更なる実施の形態では、ガスがコロイド分散系において与えられる。例えばガスは或る種の発泡により与えられる。特にガスはPEOに影響を与えるように、及び/又はPEOに関与するように与えられる。ガスは、N、Ar、Kr及びXeからなる群から選択される少なくとも1種類のガスを含む。言及される希ガスは特に、変換層の緻密化の改善を達成するのに好適である。
【0032】
変換される医療用デバイスの表面、例えば変換されるインプラントの表面が酸化物層で均一に覆われている。好ましくは、変換される表面が酸化物層で連続的に覆われている。酸化物膜は1μm〜100μm厚、好ましくは10μm〜100μm厚、最も好ましくは20μm〜40μm厚である。酸化物膜は溝及び/又はチャネルにより分断された丘及び/又は台地を特徴とする。このような外観はPEOプロセスの典型的特徴を示す。このような構造により、比表面積が大きい医療用デバイス表面又はインプラント表面が得られる。
【0033】
前の記載で既に述べられたように、医療用デバイス表面を酸化させると、粒子が医療用デバイスの表面上に塗布される。ほんのわずかの粒子が酸化物層に埋め込まれてもいる。大部分の粒子は島を形成する酸化物層の表面上に堆積されている。
【0034】
酸化物層と堆積粒子層との間にははっきりとした境界は存在しない。表面が変換された医療用デバイス、例えば表面が変換されたインプラント中の粒子濃度は深度が増すにつれて、減少する、好ましくは連続的に減少する。
【0035】
島はPEOプロセスにおける短時間電孤により、例えば分散粒子の注入(implantation)及び/又は堆積及び/又は凝集により与えられる。島は酸化物層に囲まれている。島の通常の平均サイズは300nm未満である。平均厚さは5nm〜400nmの範囲である。幾つかの島を互いに接続することもできる。通常、島(特にナノ領域を形成する)において多孔性が本質的にないか、又はわずかである。
【0036】
しかしながら、島は酸化物膜上の例えば銀の非連続層又は非連続膜を示す。1つの実施の形態では、医療用デバイス表面はTiO−Agナノコンポジットコーティングである。したがって、Ti、TiO、Ag及びAgOの元素又は化合物はそれぞれ表面上で直接検出可能な「可視的な」ものである。被処理表面の島の被覆平均量は20%以下、好ましくは10%以下である。
【0037】
被処理表面の化学的性質により、0.5原子%〜10原子%、好ましくは1原子%〜10原子%、最も好ましくは2原子%〜6原子%というコロイド分散粒子、好ましくは銀の組成が得られる。
【0038】
チタン上又はチタン合金上でのナノ銀の化学的特性化により、以下の組成が得られる:
【0039】
【表1】

【0040】
島の被覆量の制御を用いて島の「効果」を調整することができる。例えば、抗菌効力を調整することができる。抗菌効力のパラメータの1つは例えば銀イオンの浸出速度を示す。
【0041】
Ag粒子の実施の形態では、被処理表面のAgイオン浸出速度は120ng/cm/日未満である。銀、それぞれナノ銀による表面処理は、潜在的な副作用をほとんど伴わずに非常に高い抗微生物効力を示す。ナノ粒子(好ましいサイズは2nm〜50nm)の表面積対体積比が高いことから、少ない用量であっても効率が高いことが予測され、このため細胞に対する有害効果のリスクが低減する。
【0042】
AC電圧、すなわち交流電圧を第一電極及び/又は第二電極に印加する。AC電圧は0.01Hz〜1200Hzの周波数で与えられる。
【0043】
好ましい実施の形態では、AC電圧は非対称のAC電圧として与えられる。非対称のAC電圧差又は非対称のAC電圧は不平衡のAC電圧を示す。これは負の成分及び正の成分に対する振幅が異なる交流電圧である。パルスDC電圧もAC電圧と解釈することができることを強調する。負の成分は、−1200V〜−0.1Vの範囲の振幅で与えられる。好ましくは、負の成分は、−350V〜−0.1Vの範囲の振幅で与えられる。1つの実施の形態では、負の成分は、−180V未満又は−350V〜−180Vの範囲の振幅で与えられる。正の成分は、0.1V〜4800Vの範囲の振幅で与えられる。好ましくは、正の成分は、0.1V〜1400Vの範囲の振幅で与えられる。1つの実施の形態では、正の成分は、+250V超又は+250V〜1400Vの範囲の振幅で与えられる。特に、正の振幅を負の振幅で除算した商を調整する必要がある。商の絶対値は1より大きく4までの範囲である。
【0044】
別の実施の形態では、AC電圧は対称のAC電圧として与えられる。AC電圧の負の成分は、−2400V〜−0.1Vの範囲の振幅で与えられる。好ましくは、負の成分は、−1200V〜−0.1Vの範囲の振幅で与えられる。AC電圧の正の成分は、+0.1V〜+2400Vの範囲の振幅で与えられる。好ましくは、正の成分は、0.1V〜1200Vの範囲の振幅で与えられる。
【0045】
非対称のAC電圧と対称のAC電圧との組合せも可能である。かかる電圧分布は例えば、1つのコーティングを作製するための段階的プロセス又は多段階プロセスに好適である。第1の工程では、非対称の電圧又は対称の電圧を印加して、コーティングを形成する。更なる又は第2の工程(特に遮断後)では、それぞれ対称の電圧又は非対称の電圧の印加により、コーティングの形成が継続される。
【0046】
電圧差はPEOを実施するのに十分な振幅で与えられる。この電圧はインプラントの表面上で成長する酸化物膜の破壊電圧を超える。好ましくはAC電圧差の最大値は、0.1V〜4800Vの範囲で与えられる。最も好ましくは、AC電圧差の最大値は、100V〜1400Vの範囲で与えられる。コロイド分散系及び任意の付加的な電解質の導電性に応じて、印加される電圧差により、0.00001A/dm〜500A/dm、好ましくは0.00001A/dm〜100A/dmの電流密度が生じる。好ましくは、印加される電圧又は電圧分布は本質的に一定であるか、又は不変であり、PEOプロセス中に電流密度を調整する。
【0047】
0.01μm/秒〜1μm/秒の範囲の堆積速度が得られる。したがって、酸化物層及び/又は島の粒子の有益な厚さに関しては、1秒〜1200秒、好ましくは1秒〜300秒、最も好ましくは20秒〜260秒の範囲の堆積時間で達成することができる。
【0048】
安定な分散を可能にするために、コロイド分散系は、−20℃〜+150℃、好ましくは−20℃〜+100℃、最も好ましくは0℃〜75℃の温度で与えられる。コロイド分散系は0リットル/分〜5000リットル/分、好ましくは0.01リットル/分〜500リットル/分の循環速度で循環する。例えばミキサー又は混合手段又は攪拌手段によりこれが達成される。任意の補助形態として、乳化剤がコロイド分散系において、特に粒子の凝集を回避又は低減するために与えられる。コロイド分散系の通常容量は、0.001リットル〜500リットル、好ましくは0.1リットル〜500リットル、最も好ましくは3リットル〜20リットル程度である。かかる容量が分散系における電場分布の改善を支持する。
【0049】
全く研磨されていない初期段階の医療用デバイス表面は、好適な均一の変換表面、及び変換表面とバルク材料との好適な安定した接着を達成するのに十分である。初期状態の表面は医療用デバイスをPEOプロセスにかける前の表面を示している。初期状態の表面の機械的な研磨は特性を改善させるのに十分である。コスト集約型の電解研磨により、非常に平滑な表面を得る必要はない。
【0050】
本発明は、プラズマ電解酸化により医療用デバイス、特に金属製の医療用デバイスの表面を処理する装置であって、以下の構成要素:
コロイド分散系を含有する槽と、
好ましくは前記槽中でコロイド分散系を混合する手段と、
処理対象の医療用デバイスの表面がコロイド分散系に浸漬するように医療用デバイスを保持する手段であって、医療用デバイスが第一電極を与える、手段と、
前記槽中に含有されるコロイド分散系に第二電極を与える手段と、
前記第一電極及び/又は前記第二電極に供給されるAC電圧を発生させる電源ユニットと、
前記第一電極及び/又は前記第二電極を前記電源ユニットに接続する手段と、
を備え、前記第一電極を接続する手段を、断面積比が0.1〜10の範囲になるように浸漬した医療用デバイスに適合させる、装置も提唱している。好ましくは、断面積比は0.75〜4の範囲である。
【0051】
断面積比は、医療用デバイスの断面積を第一電極を接続する手段の断面積で除算した商を示す。適合比は特に、医療用デバイスと接続手段との境界近くで求められる。
【0052】
好ましくは第一電極を接続する手段は、第一電極と第二電極との間の本質的に均一な電場分布を、特に医療用デバイスの被処理表面近くに設けるために具現化されている。
【0053】
第一電極と第二電極との間の均一な電場分布は、均一性が改善した表面変換を達成するのに有利である。驚くべきことに本発明者らは、第一電極と第二電極との間の電場分布が第一電極を接続する手段の具現化に強く影響されることを発見した。詳細には、電場分布は、第一電極を接続する手段の設計及び/又は寸法に強く依存する。
【0054】
要求される均一な電場分布は、接続される医療用デバイスの断面に応じて適合させた低減断面積又は適合させた増大断面積を有する第一電極を接続する手段により達成される。1つの実施の形態では、第一電極を接続する手段は、平均径が5mm以下、好ましくは1.5mm以下の好ましくは円形の断面を有する。好ましい実施の形態では、第一電極を接続する手段はワイヤーとして与えられる。ワイヤーは金属製である。ワイヤーは電流を伝導するように具現化され、例えばスレッド、ロッド又はストランドとして具現化される。ワイヤーは柔軟性又は非柔軟性であり得る。第一電極を接続する手段は第一電極である医療用デバイスに固定される。第一電極を接続する手段、特にワイヤーは、溶接、接着、クランプ及び/又は嵌め込みにより固定することができる。好ましくは、第一電極を接続する手段は、接続される医療用デバイスと同じ材料で与えられる。第一電極を接続する手段は医療用デバイスを保持する手段によっても与えられ得ることを強調する。すなわち医療用デバイスを保持する手段及び医療用デバイスを接続する手段は1つだけの構成要素により与えられる。1つの実施の形態では、第一電極を接続する手段は少なくとも一部はスレッドで与えられる。
【0055】
更なる実施の形態では、電場を適合させる手段が与えられる。例えば、電場を適合させる手段は、エッジを回避し、それにより電場密度が改善した領域を回避する構成要素として与えられる。本発明による1つの変形形態では、電場を適合させる手段はキャップとして具現化される。このキャップはスレッド上に嵌め込むことができる。
【0056】
別の実施の形態では、コロイド分散系へのガス供給が与えられる。
【0057】
本発明による抗菌コーティングを、外傷学、整形外科、骨接合及び/又は内部補綴の分野(特に高い感染リスクが存在する場合)で使用することができる。現在存在するインプラント又は製品の多くが、かかる殺菌コーティングの恩恵を受けることができる。
【0058】
医療用デバイスは、ヒト身体及び/又は動物身体に少なくとも一部挿入又は配置される医療用デバイスである。医療用デバイスはあらゆる種の医療用デバイスであり得る。
【0059】
1つの実施の形態では、医療用デバイスはインプラントである。インプラントは歯科用インプラント又は整形外科用インプラントである。本発明によるかかるインプラントの例示的な実施の形態はプレート型、スクリュー型、ネイル型、ピン型、及び/又は全て、好ましくは外部の固定システムである。これらの用途は例示的であり、この列挙に限定されないことを強調する。
【0060】
別の実施の形態では、医療用デバイスは医療機器又は医療器具である。かかる医療機器の例示的な実施の形態は、外科用機器及び/又は診断用機器である。外科用機器の一例は外科用メスである。診断用機器の一例は内視鏡である。これらの用途は例示的であり、この列挙に限定されないことを強調する。
【0061】
好ましい実施の形態では、本発明による表面を変換させたインプラントは生体適合材料を基にしているが、好ましくは生分解性材料を基にはしていない。これらのインプラントは、長期間、例えば数日〜最大数ヶ月の適用、及び/又は半永久的な適用、例えば外科用インプラント及び/又は補綴の長期間の埋め込みを意図している。しかしながら、本発明は生分解性材料にも適用可能である。
【0062】
インプラントは、チタン、チタン合金、クロム合金、コバルト合金及びステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。合金は少なくとも50重量%の指定の主要元素を含む。チタン合金の幾つかの典型例はTiAl6V4、TiAl6Nb7及び/又はTiZrである。クロム合金の幾つかの典型例はCrNi及び/又はCrNiMoである。コバルト合金の幾つかの典型例はCoCr及び/又はCoCrMoである。ステンレス鋼の幾つかの典型例は316Lタイプ及び/又は304タイプである。上述の合金は例示的であり、この列挙に限定されないことを強調する。
【0063】
特に本発明による装置は、本発明による方法工程のいずれかを実行するために適合される。特に本発明による方法は本発明による装置により実行可能である。特に本発明による医療用デバイス、例えばインプラントが、本発明による装置を用いて、及び/又は本発明による方法により製造可能である、好ましくは製造される。その又は或る医療用デバイス(例えばインプラントとして具現化される)は、抗微生物材料、好ましくは銀の島で、及び/又はアパタイト、好ましくはHAで一部覆われている酸化物膜からなる表面を含む。
【0064】
引き続き本発明は、好ましい実施形態に基づき、添付の図面を参照してより詳細に説明される。種々の実施形態の特徴を互いに組み合わせることができる。図面中の同一の参照番号は同一又は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1a】本発明によるコーティングの作製のための装置を示す概略図である。
【図1b】医療用デバイスを電気的に接続する手段の第1の実施形態を示す概略図である。
【図1c】医療用デバイスを電気的に接続する手段の第2の実施形態を示す概略図である。
【図1d】医療用デバイスを電気的に接続する手段の第3の実施形態を示す概略図である。
【図1e】非対称のAC電圧分布の一実施形態を示す概略図である。
【図1f】対称のAC電圧分布の一実施形態を示す概略図である。
【図2a】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、ステレオ型光学顕微鏡を用いたナノ銀コーティングの画像を示す。
【図2b】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、トポグラフィ造影モードにおけるSEM画像を示す。
【図2c】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、トポグラフィ造影モードにおけるSEM画像を示す。
【図2d】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、トポグラフィ造影モードにおける傾斜SEM画像を示す。
【図2e】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、変換された表面の概略断面図を示す。
【図3a】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、化学造影モードにおけるナノ銀コーティングのSEM画像を示す。
【図3b】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、明領域のEDXスペクトルを示す。
【図4a】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、ナノ銀コーティングのXPS深度プロファイル分析を示す。
【図4b】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、ナノ銀コーティングのXPS深度プロファイル分析を示す。
【図5a】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、バイオフィルム試験の準備のための方法工程を示す。
【図5b】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、12時間のインキュベーション後のナノ銀、Agロッド及びTi合金ロッド上に見られる細菌量を示す。
【図6a】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、増殖試験の準備のための方法工程を示す。
【図6b】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、成長曲線の解釈を示す。
【図6c】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、成長曲線の解釈を示す。
【図6d】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、成長曲線の解釈を示す。
【図6e】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、得られた実験結果を示す。
【図7】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、仮動的モデルにおけるGF−AASにより得られた分析結果を示す。
【図8】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、静的モデルにおけるGF−AASにより得られた分析結果を示す。
【図9a】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、曲げ試験後のコーティングロッドのステレオ型光学顕微鏡画像を示す。
【図9b】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、曲げ試験後のコーティングロッドのステレオ型光学顕微鏡画像を示す。
【図10】本発明によるAg−TiOコーティングの結果を示す図である。詳細には、ナノ銀コーティング上のZK20細胞のSEM画像を示す。
【図11】HAコーティングにより変換されたTi表面のXRD画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
これより本発明の好ましいが、例示的な実施形態を図面に関してより詳細に説明する。
【0067】
図1は本発明によるコーティングの作製のための装置を示す。続く詳細な説明は、医療用デバイスの例示的な実施形態の一つであるインプラントに関するものにすぎない。例えば長期間の埋め込みの際の外科用インプラントのコーティングのために、プラズマ電解酸化(PEO)に基づく本発明の革新的技法が開発された。PEOは金属上に酸化物コーティングを生じさせる電気化学的表面処理プロセスである。高電圧によりコロイド分散系4又は電解質槽4にパルス交流を流すと、制御されたプラズマ放電が形成され、基板表面上にスパークが生じる。このプラズマ放電により、金属の表面が酸化物コーティングへと変換される。実際、コーティングは基板の化学変換であり、元の金属表面の内側及び外側の両方に向かって成長する。このコーティングは堆積コーティング(例えばプラズマ溶射により形成されるコーティング)ではなく変換コーティングであるため、基板金属への優れた接着を有する(図9a及び図9bを参照されたい)。広範な基板合金をこの技法を用いてコーティングすることができる。
【0068】
分散系4は槽5中で与えられる。第一電極1としてインプラント20が分散系4において与えられる。図示された実施形態では、インプラント20は液体4、それぞれ分散系4中に完全に浸漬される。第二電極2は、同様にコロイド分散系4中に浸漬されるか、又はコロイド分散系4中で与えられるカップとして与えられる。第二電極2は第一電極1を「取り囲む」。
【0069】
分散系4の温度は熱交換器6及び/又はポンプシステム7及び/又は混合手段8により維持又は制御される。分散系4の循環及び/又は混合は混合手段8により達成される。混合手段8は流体力学的な音波発生器により与えられる。示される可能な補助形態として、(例えば空気用の)ガス供給9も混合手段8に与えることができる。液体の循環により、分散系4中に含有されるナノ粒子の凝集が避けられる。
【0070】
示されていない更なる実施形態では、第二電極2は槽5又はコンテナ5自体により与えられる。これは例えば、導電材料により与えられるコンテナ5に好適である。かかる実施形態では、槽5及び第二電極2が一体として与えられる。
【0071】
好ましい実施形態では、第一電極1は、均一な電場分布を達成するために第二電極2のほぼ中心に配置される。第一電極1を接続する手段3の設計は、第一電極1と第二電極2との間に本質的に均一な又は適合された電場分布を保持するように選択される。このために、インプラント20を接続する手段3の断面及び/又は形状をインプラント20の断面及び/又は形状に適合させる。図1b〜図1dはインプラント20を接続する手段3の3つの例示的な実施形態を概略的に示す。
【0072】
図1b〜図1dは、インプラント20に対してそれぞれ適合させた低減断面積を有する接続手段3の可能な実施形態を示す。したがって、断面積比(医療用デバイスの断面積を第一電極を接続する手段の断面積で除算した商を表す)は1より大きく、4未満である。接続手段3の断面積の低減がd1及びd2の直径(d1<d2)により図示される。特に、適合させた断面積の低減はインプラント20と接続手段3との間の境界35付近又は周辺で求められる。
【0073】
図1bでは、第一電極1(それぞれインプラント20)を接続する手段3はワイヤー3として具現化される。ワイヤー3はロッド3(好ましくは円筒形)として具現化される。ロッド3は電気接触を可能にすると共に、インプラント20を保持するために具現化されている。
【0074】
図1cは、インプラント20としてナットのコーティング構成を図示する。ナット20は一般的には極めて小さく、例えば1cm以下であるため、ナット20のコーティングは極めて「複雑である」。第一電極1を接続する手段3はワイヤー3としても具現化されている。ワイヤー3はロッド3(好ましくは円筒形)として一部具現化される。ロッド3の端部はスレッド31を有するように具現化されている。ナット20はスレッド31上に嵌め込まれている。キャップ32はスレッド31の端部に適用されている又は嵌め込まれている。ナット20の上下にある隙間のサイズは約1mmである。かかるキャップ32の適用により、ナット20の上部及び下部の前面上にも均一なコーティングを形成することが可能になる。キャップ32は電場を適合させる手段を示す。ロッド3は電気接触を可能にすると共に、インプラント20を保持するために具現化されている。
【0075】
図1dでは、第一電極1(それぞれインプラント20)を接続する手段3はワイヤー3として具現化される。ここではワイヤー3はストランド3として具現化されている。ストランド3は電気接触のみを可能とする。ストランド3はホルダー33(好ましくは非導電性である)を貫通する。ホルダー33はインプラント20を機械的に保持する。
【0076】
AC電圧は電源10により与えられる(図1aを参照されたい)。非対称のパルスAC電圧の印加により、深部コーティングが得られる。パルスの正の部分が変換表面の成長を可能にする。酸化物層の成長プロセスの開始時、変換表面は深部構造を特徴とする。酸化物層のコーティング厚が増大するにつれて、コーティングは徐々に多孔性になっていく。コーティング粒子は徐々に遊離する。パルスの負の部分でこれらの遊離した粒子を除去する。したがって、パルスの負の部分はいわゆるエッチング部分である。非対称のAC電圧は、正の成分及び負の成分に対する振幅が異なる電圧である。特に正の振幅を負の振幅で除算した商を調整する必要がある。商の絶対値は1より大きく4までの範囲である。例示目的のために、図1eは、+200V及び−50Vの振幅U1に対する非対称のAC電圧分布を概略的に示す。これらの電圧は例えば、第一電極1であるインプラント20に印加される(図1aを参照されたい)。この実施形態では、第二電極2の電圧は例えば地電位上にある。その形状を略方形状として図示する。その形状は特に部分的に一種のポケット(sinus:洞)又はポケットであってもよい。用途によっては、対称のAC電圧分布も好適である。例示的な用途の一つは、インプラント−骨接合の改善のために表面粗度が非常に高いコーティングを得ることである。例示目的のため、図1fは、−200V及び+200Vの振幅U1に対する対称のAC電圧分布を概略的に示す。
【0077】
粒度が約1nm〜20nm、好ましくは15nmのナノ銀粒子が非常に好適である。これにより、比表面積の改善、ひいては多量の溶解性の銀イオンがもたらされる。銀イオンは多様な細菌、真菌及び酵母に対する特徴的な活性に関連する。
【0078】
銀イオンは、細胞壁合成、膜貫通輸送、核酸複製又はタンパク質機能のような必須の生理学的機能を不活性化させる。これら全ての作用により、微生物の短期間の死が引き起こされる。この多重モードの抗微生物作用のために、微生物が銀に対する耐性を発現することはまずありえない。銀イオンの抗微生物活性に加えて、新たな研究プロジェクトにより、ナノ銀が特にHIV又は肝炎のようなウイルスに対する活性を示すことが示されている。
【0079】
図2a〜図11bは、本発明によるAg−TiOコーティングの実験結果を示す。用いられる基板又はインプラント材料はTiAl6V4 ELI合金である。TiAl6V4 ELI合金(極低不純物、ISO 5832−3)はより高い純度グレードのTiAl6V4合金である。このグレードはより低い酸素、炭素及び鉄含有量を有する。TiAl6V4 ELI合金は一般的に、外科用機器及び整形外科用インプラント等の生物医学用途に用いられる。
【0080】
初めに、図2a〜図2dはトポグラフィ特性化(ISO/TS 10993−19:2006による)の結果を示す。一例として、本発明によるコーティングを有するスクリューを分析した。コーティング表面のトポグラフィを、ステレオ型光学顕微鏡検査(図2a)及びトポグラフィ造影モードの走査型電子顕微鏡検査(SEM)(図2b〜図2d)で調べた。
【0081】
画像は表面の均一でかつ均質なコーティングを示す(図2a及び図2b)。より大きい倍率では、PEOコーティングの特有の特徴が示される:コーティング間で幾らかの深化を有する平坦な台地の上昇(図2c)。平均深化は20μmの深度である(図2d)。トポグラフィ特性化は比表面積が高い深部コーティングを示す。
【0082】
図2c及び図2dはPEOによる変換表面の典型的な特徴を示す。例示目的のため、図2eは、断面図における変換表面を示す概略図である。変換表面は酸化物層で連続的に覆われている。典型的な厚さは25μm未満である。酸化物膜は溝及び/又はチャネルにより隔てられた丘及び/又は台地を特徴とする。酸化物層の上部に上記島が発達し、金属Agと部分的なAgOとの非連続層を形成する。該島は台地上に、及び溝中に形成され得る。該島は100nm未満の典型的な厚さ及び5nm〜200nmの範囲の典型的な直径を有する。
【0083】
図3a及び図3bは、物理化学的特性化(ISO/TS 10993−19:2006による)の結果を示す。化学造影モードにおけるSEM画像はコーティング表面(特に島として具現化される)上の重元素の存在を示す(図3bでの明領域)。エネルギー分散型分光分析(EDS)により、銀の存在が確認される(図3a)。銀はコーティング表面全体にわたって均質又は均一に分布する。典型的な銀含有領域は1μmよりも大幅に小さい。
【0084】
図4a及び図4bでは、化学的特性化(ISO 10993−18:2005による)の結果を提示する。表面の元素組成をPHI 5500 ESCA分光計(単色Al Kα線)を用いたX線光電子分光法(XPS)により、より正確に評価した。以下で報告された値はそれぞれ、3つの独立した分析の平均値である。
【0085】
【表2】

【0086】
コーティング表面は主に、銀及び炭素と共に酸化チタンからなる。非常に少量の窒素、塩素及び硫黄も混入物質として見出されている。
【0087】
XPS深度プロファイリング(3keVのArイオンビームによるスパッタリング、3.8mm×4.2mmの表面積)をコーティング上で行い、深さ方向の組成の均一性を調べた。このようにしてコーティングの銀含有部分の推定厚さを得た:<100nm。
【0088】
2分間のスパッタリング後、炭素含有量が急激に減少し、これにより小さい有機物による表面のコンタミネーションの存在が示される(図4a)。この炭素による表面のコンタミネーションは多くの場合、XPSにより見出され、分析前のサンプルの輸送及び操作によるものであると考えられる。またスパッタリングの2分後に、最高濃度のAgが検出される(図4b)。
【0089】
その後、Ag濃度の連続的な減少が観察され、これにより銀の酸化物層への拡散パターンが明らかになる。この観察結果は、銀が連続層ではなく、小さい粒子として存在することを示すSEM結果とも一致する。酸化物層とAgの島との間にははっきりした境界はない。例えばこれは、酸化物に変換され、Agコーティングが堆積した表面とは対照的である。
【0090】
高分解能の結合スペクトルも記録した(結果は示していない)。O結合スペクトルは、少量の金属酸化物(主にAl及びAg)もあるが主にTiOを示す。Ag結合スペクトルは酸化銀及び金属銀の存在を示し、塩化銀は観察されなかった。
【0091】
続いて本発明によるコーティングの抗菌効力の評価に関する結果を示す。骨接合材料(例えばピン、スクリュー等)は、良好な生体融合のために非常に特徴的な表面を必要とし、これにより同時にヒト組織細胞が骨接合材料上に定着することが可能になる。この表面は細菌が定着することを可能にし、このため細菌が表面上での増殖に関してヒト細胞と競合する。
【0092】
ナノ銀コーティングの目的は、コーティング骨接合材料の表面上での問題となる細菌成長の予防である。本発明の課題の一つは、全く細胞毒性効果を伴わずに高い抗菌活性を示す、コーティングに最適な銀濃度を見つけることである(ISO 10993−5による)。
【0093】
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)ATCC 35984細菌株を全ての試験に使用した。
【0094】
この細菌株は以下の特性を有する:
皮膚への常在(Primary occupant)、
補綴デバイスの表面へのコロニー形成、
バイオフィルム形成→患者の免疫系に対する遮断→抗生物質の使用の必要性、
抗生物質耐性株の蔓延(ドイツにおける全ての表皮ブドウ球菌株に対するMRSEの実際の割合:約70%)。
【0095】
バイオフィルム形成の阻害を評価するための関連基準は一般文献に見られない。そのため特別な(custom-made)試験を開発した。この試験は表皮ブドウ球菌ATCC 35984株を使用して行った。純銀のロッドを陽性対照として使用し、純チタン合金のロッドを陰性対照として使用した。
【0096】
図5aはサンプルを調製する工程を示し、図5bは上記バイオフィルム形成試験の結果:インキュベーション時間に応じたナノ銀、Agロッド及びTi合金ロッド上に見られる細菌量を示す。12時間のインキュベーション後、チタン合金と比較して、Ag−TiOコーティング上で細菌量の急激な減少が観察された(log3超の減少)。ナノ銀コーティングは更に、純銀よりも良好な結果を示す(図5b)。18時間のインキュベーション後であっても、Ag−TiOコーティングの表面上では細菌は見られなかった。一つの説明は、ナノ銀コーティングの表面積対体積比の改善に基づいている。
【0097】
コーティング表面の抗菌活性を求める標準試験方法が幾つか存在する。スクリーニング目的では、増殖試験を使用する。細菌は一般的に表面上に付着する傾向がある。この性質(ambition)は主に表面の抗菌機能付与及び/又は疎水性機能付与により阻害され、これにより細菌付着の強い低減が得られる。増殖試験は特別な試験手順によりこの効果を示す。この細菌成長の挙動により、処理されていない表面と比較して処理された表面上の抗微生物効果の推測が得られる。図6aは増殖試験を行う工程を示す。
【0098】
この試験を、市販の96ウェルマイクロタイタープレートを用いて指数関数的に成長する細菌で実施した。試験試料は直径が4mmで、長さが12mmの円筒状であるのが理想である。
【0099】
細菌増殖を、特別に設計された64倍光度計において578nmでの光学密度を測定することにより求める。
【0100】
それぞれのサンプルに対して、個々の成長曲線を示す(図6eを参照されたい)。成長曲線の解釈は図6b〜図6dに示す:(b)指数関数的な成長−抗菌活性なし、(c)遅滞期(lag phase)成長−わずかな抗菌活性、及び(d)検出可能な成長なし−強い抗菌活性。
【0101】
サンプル(各回の試験で、内部対照も試験した):
陰性対照:HDPEロッド(指数関数的な成長を示すものとする)、
中程度の成長対照:マイクロタイタープレートの幾つかのウェルに、最適な条件下で細菌成長を制御するためにコンタミネーションした栄養溶液を充填した、
滅菌対照:ブランクウェル及びコンタミネーションしていないサンプルは全く細菌成長を示さないものとする、
陽性対照:純Agロッド(成長が検出不可能なものとする)。
【0102】
ナノ銀コーティングの抗菌効力は、その表面上の細菌成長を処理していない表面(ブランク)と比較することにより推定される。
ブランクサンプル:TiAl6V4 Eli合金ロッド、
ナノ銀コーティングを有するサンプル:Ag−TiOコーティング(5%処方)を有するTiAl6V4 Eli合金ロッド。
【0103】
結果を図6eに提示する。全ての対照は予測された成長曲線を示すため、この試験は有効である。純チタンロッドと比較して、Ag−TiOコーティングロッドは、純銀ロッドと同程度である強い抗菌効力を示す。
【0104】
抗微生物活性及び抗微生物効力に関する試験をJIS Z2801に従って行った。JIS Z 2801標準は抗微生物製品の表面上の細菌に対する抗微生物活性及び抗微生物効力を評価する試験方法を規定している。抗微生物活性の値は、細菌の接種及びインキュベーション後の抗微生物製品と処理していない製品との間の生存細胞数の対数値の差を示す。そのため増殖試験とは対照的に、抗菌活性を定量化することができる。
【0105】
この試験方法は、繊維製品以外の製品、例えばプラスチック製品、金属製品及びセラミック製品に適用可能である。
【0106】
試験サンプルを調製後に或る特定数の細菌で接種した。接種材料の良好な分布を確実なものにするために、試験片を特別なフィルム(PEホイル)で覆う。試験片を37℃で18時間インキュベーションする。インキュベーション後、細菌を栄養溶液で洗い流した。この洗浄懸濁液を用いて、生存細胞のカウントを実施する(寒天プレート培養方法)。
【0107】
サンプル:
ブランクサンプル:TiAl6V4 Eli合金板、
ナノ銀コーティングを有するサンプル:Ag−TiOコーティング(5%処方)を有するTiAl6V4 Eli合金板、
陰性対照:ポリスチレン表面(或る特定数の細菌が生存しなければ、試験を取りやめる必要がある)。
【0108】
結果は、TiAl6V4 Eli合金と比較してlog4を超える低減という、ナノ銀の強い抗微生物活性を示す。
【0109】
更なる研究は銀浸出に関するものであった(ISO 10993−17:2002による)。このワークパッケージの意図は、抗菌活性とサンプル表面から放出される銀イオンの量との間の相関付けを含む。適切なサンプル調製方法を用いた銀追跡及び種分析の方法が開発されている。黒鉛炉原子吸光分析法(GF−AAS)により分析を行う。主な焦点は生理学的条件下での銀放出機構にある。患者の組織におけるコーティングの環境と同様の条件をシミュレートする試験設定を作り出す必要がある。これにより、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を浸出剤として選択した。
【0110】
試験手順は以下の通りである:
試験シリーズA(仮動的モデル):
サンプルを1mlのPBSに浸漬させ、
1日20℃でゆっくりと振盪した後、サンプルを新たなPBSの入った次のバイアルに移す。
試験シリーズB(静的モデル):
サンプルを10mlのPBSに浸漬させ、
或る特定間隔の37℃でのゆっくりとした浸盪の後、アリコート(0.5ml)を新たなバイアルに移す。
【0111】
以下の試験工程は両方の試験シリーズで共通するものである:
PBSにおけるAg含有量を硝酸の添加後に分析し、
黒鉛炉原子吸光分析法(GF−AAS)により銀分析を行う。
【0112】
試験サンプル:
ブランクサンプル:TiAl6V4 Eli合金ロッド(Tiロッド)、
ナノ銀コーティングを有するサンプル:Ag−TiOコーティングを有するTiAl6V4 Eli合金ロッド、
陽性対照:純銀ロッド(Agロッド)。
【0113】
以下の結果が得られる:
試験シリーズA:ナノ銀コーティングは、純銀ロッドと酷似した銀放出を示す。
【0114】
図7は、PBSにおいて室温で浸漬時間(日)に応じてサンプル表面(mm)から放出されるAg量(ng)のGF−AASにより得られる分析結果を示す。示される誤差バーは3つの独立した分析の分散を示す。浸出速度は浸漬時間に応じて本質的に均一である。
【0115】
15日後:
純銀ロッドからの1日の放出は1日目の減少後、一定のままである。
ナノ銀ロッドからの1日の放出は一定であり、
15日間の浸出の間に浸出したAg量の合計:6.3μg。
【0116】
抗菌活性(増殖試験で示される)は放出される銀イオンの量に対応する。
【0117】
試験シリーズB:本発明の反応速度試験条件に従うと、24時間後に平衡に達する。
Agaq⇔Agsolid[酸化Ag(AgCl、AgO...)由来]
この場合、平衡時の銀放出は約0.4ng/g/mmである。
【0118】
10ml溶液を8週間、毎日変えると、総銀放出が約22.4ng/g/mmになると予測することができる。
【0119】
図8は、PBSにおける37℃での時間(日)に応じたサンプル表面(mm)から放出されたAg(ng)のGF−AASによる結果を示す。分析データは3つの独立した分析の平均値である。浸出速度は浸漬時間に応じて本質的に均一又は一定である。
【0120】
図9a及び図9bは、機械的試験の結果を示す。曲げ試験後のコーティングロッドのステレオ型光学顕微鏡画像が提示される。Ag−TiOコーティング接着はASTM B571−97標準に従って調べた。コーティングサンプルを様々な角度に曲げ、コーティングの基板からの剥離の何らかの兆候に関して、変形領域をステレオ型光学顕微鏡検査によって観察した。基板の損傷が起こった後でも、コーティングの剥離は観察されなかった。コーティングの接着強度は基板の凝集強度よりも大きく、このことにより使用される標準に従った完全な接着が明らかになる。
【0121】
図10は生体適合性評価に関する実験結果を示す:ナノ銀/TiAl6V4板上のZK20細胞成長。
【0122】
基板としてコーティングしたTiAl6V4板とコーティングしていないTiAl6V4板とを用いて細胞培養を行った。この研究では、2つの細胞系を選択している:骨肉種細胞系(HOS TE85)及びヒト骨粉由来の初代(primary)間葉幹細胞(ZK20)。サンプルのインキュベーションを95%空気−5%CO雰囲気下、37℃で行った。様々なインキュベーション時間(細胞系に応じて数日又は数週間)後に、サンプルを光学顕微鏡分析のために調製し、細胞の生存率及び増殖を調べた。
【0123】
この2種類の細胞は2種類の表面(TiAl6V4及びナノ銀)上で良好な付着及び増殖を示す。2種類の細胞はナノ銀コーティング表面上で凝集する傾向にある。
【0124】
構造の歪みが可能な限り最も少ない細胞の破壊を目的とする特別な固定手順後に、サンプルを電子顕微鏡検査により分析した。ナノ銀コーティング上のZK20細胞のSEM画像が提示される。SEM画像により、ナノ銀コーティング表面上での良好な細胞の付着及び増殖が確認される。さらに一種の細胞アンカーを見ることができる。
【0125】
まとめると、本発明によるAg−TiOコーティングは、抗菌効力(多重耐性株に対しても)、接着性及び生体適合性に関して優れた特性を示すことが示された。
【0126】
最後に図11は、HAコーティング(ヒドロキシアパタイト)を有するTiスクリューのXRD画像を示す図である。詳細には、角度2θに応じて検出されたカウント数が提示される。
【0127】
この分析のパラメータは以下の通りである:
装置:Bruker D8 GADDS XRD(電圧:40KV及び電流の強さ:40mA)
測定範囲:角度θ:17°〜93.7°、増分:0.02°、及びステップ時間:60秒
測定点:チタンスクリューの最上部。
【0128】
サンプルは主にチタン及びアナターゼ(TiO)を含有している。チタン及びTiOはバルク、それぞれ変換表面に由来する。また非常に少量のHAが検出される。或る特定のHAピークの強度差は、スクリューの表面上の晶子の選択的(preferential)配向によるものである。しかしながらこれらは、HAの構成要素だけではなく、変換表面上でHA自体を検出することが可能であるという第1の示唆である。
【0129】
選択された実験設定の構成から、検出された少量のHAを説明することができる。分析ビームの選択された角度範囲により、TiO層(数μmの厚さ)で覆われたバルク材料(Ti)に対する感受性の向上、並びにHA(数百(some 100)nm以下の厚さ)の表面及び表面近くの組成物に対する感受性の低減が得られる。
【0130】
いわゆる斜入射形状においてHAの量の増大を検出することが予測される。この形状では、分析ビームは、分析対象の表面に対して小さい角度(例えば約1.5°)で表面に向いている。表面の組成物及び表面近くの組成物に対する感受性がこの斜入射形状で高まっている。
【0131】
本発明はそれらの精神又は重要な特性を逸脱することがなければ、他の特定の形態に具体化され得ることが理解されるであろう。そのため本発明の実施例及び実施形態は全ての点で例示的であり、限定されないものと解釈し、本発明は本明細書で与えられる詳細に限定されない。したがって上記の特定の実施形態の複数の特徴を互いに組み合わせることができる。さらには、発明の概要に記載の複数の特徴を互いに組み合わせることができる。また、上記の特定の実施形態の特徴と、発明の概要に記載の特徴とを互いに組み合わせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイス、特に金属製の医療用デバイスの表面を処理する方法であって、
コロイド分散系を準備する工程と、
処理対象の医療用デバイスの表面が前記コロイド分散系に浸漬するように、該医療用デバイスを該コロイド分散系に曝す工程と、
前記コロイド分散系に配置される第一電極及び/又は第二電極として前記医療用デバイスの間でAC電圧差を発生させる工程と、
を含み、プラズマ電解酸化により浸漬した表面を酸化物膜へと変換させ、該変換された表面が前記コロイド分散系のコロイド分散粒子で形成される島に一部覆われている、医療用デバイス、特に金属製の医療用デバイスの表面を処理する方法。
【請求項2】
前記AC電圧差の最大値が0.1V〜4800Vの範囲で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AC電圧が0.01Hz〜1200Hzの周波数で与えられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記AC電圧が非対称のAC電圧として与えられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記AC電圧の負の成分が−1200V〜−0.1Vの範囲の振幅で与えられ、かつ/又は該AC電圧の正の成分が0.1V〜4800Vの範囲の振幅で与えられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記正の振幅を前記負の振幅で除算した商を1超から4までの範囲の商の絶対値に調整する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記AC電圧が対称のAC電圧として与えられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記AC電圧の負の成分が−2400V〜−0.1Vの範囲の振幅で与えられ、かつ/又は該AC電圧の正の成分が+0.1V〜+2400Vの範囲の振幅で与えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
0.0001A/dm〜500A/dmの電流密度が与えられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コロイド分散系の温度が−20℃〜+150℃の範囲で与えられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コロイド分散系が0リットル/分〜5000リットル/分の循環速度で循環する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コロイド分散系が水性分散液である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
特に前記医療用デバイスの材料の少なくとも1つの構成要素である少なくとも1つの電解質が、前記コロイド分散系中で与えられる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
堆積速度が0.01μm/秒〜1μm/秒の範囲にある、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
堆積時間が1秒〜1200秒の範囲にある、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子がAg粒子として与えられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子がアパタイト粒子として与えられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子がCu粒子及び/又はZn粒子として与えられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子が前記医療用デバイスの材料の少なくとも1つの構成要素により与えられる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記粒子が添加剤として与えられ、該添加剤が金属、酸化物、土類鉱物及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子が100mg/l以下の濃度で与えられる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ガスが前記コロイド分散系において与えられる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法で作製可能な、好ましくは作製される医療用デバイス、特に医療器具又は歯科用インプラント又は整形外科用インプラント。
【請求項24】
被処理表面を有する非生分解性の金属又は金属合金を含む医療用デバイスであって、
前記被処理表面を少なくとも一部、コロイド分散系を用いたプラズマ電解酸化により酸化物膜へと変換させ、
前記変換された表面が前記コロイド分散系のコロイド分散粒子で形成される島に一部覆われている、被処理表面を有する非生分解性の金属又は金属合金を備える医療用デバイス。
【請求項25】
前記粒子がAg粒子を含む、請求項23又は24に記載の医療用デバイス。
【請求項26】
前記粒子がCu粒子及び/又はZn粒子として与えられる、請求項23又は24に記載の医療用デバイス。
【請求項27】
前記粒子が前記医療用デバイスの材料の少なくとも1つの構成要素である構成要素により与えられる、請求項23〜26のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項28】
前記粒子がアパタイト粒子を含む、請求項23、24及び27のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項29】
前記粒子が添加剤を含み、該添加剤が金属、酸化物、土類鉱物及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、請求項23〜28のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項30】
前記島の平均領域サイズが1000nm未満、好ましくは300nm未満である、請求項23〜29のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項31】
前記島の平均厚さが1nm〜1000nm、好ましくは5nm〜400nmである、請求項23〜30のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項32】
前記酸化物膜の厚さが1μm〜100μmである、請求項23〜31のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項33】
前記被処理表面の島の被覆平均量が20%未満、好ましくは10%未満である、請求項23〜32のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項34】
前記被処理表面のAg浸出速度が120ng/cm/日未満である、請求項23〜33のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項35】
前記インプラントが、チタン、チタン合金、クロム合金、コバルト合金及びステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項23〜34のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項36】
プラズマ電解酸化により医療用デバイス、特に金属製の医療用デバイスの表面を処理する装置であって、以下の構成要素:
コロイド分散系を含有する槽と、
前記槽中でコロイド分散系を混合する手段と、
処理対象の医療用デバイスの表面がコロイド分散系に浸漬するように医療用デバイスを保持する手段であって、医療用デバイスが第一電極を与える、手段と、
前記槽中に含有されるコロイド分散系に第二電極を与える手段と、
前記第一電極及び/又は前記第二電極に供給されるAC電圧を発生させる電源ユニットと、
前記第一電極及び/又は前記第二電極を前記電源ユニットに接続する手段と、
を備え、前記第一電極を接続する手段を、断面積比が0.1〜10の範囲になるように浸漬した医療用デバイスに適合させる、装置。
【請求項37】
前記第一電極を接続する手段が、接続される医療用デバイスと同じ材料で与えられる、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記第一電極を接続する手段が、平均直径が5mm未満の特に円形の断面を有する、請求項36又は37に記載の装置。
【請求項39】
前記第一電極を接続する手段がワイヤーとして与えられる、請求項36〜38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
前記第一電極を接続する手段が少なくとも一部、スレッドで与えられる、請求項36〜39のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
好ましくはキャップとして具現化される電場を適合させる手段が与えられる、請求項36〜40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記コロイド分散系へのガス供給が与えられる、請求項36〜41のいずれか一項に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2e】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−528612(P2012−528612A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513507(P2012−513507)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003308
【国際公開番号】WO2010/139451
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508106172)アーアーペー バイオマテリアルズ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】