説明

ナフタレン骨格を有する樹脂組成物

【課題】 従来のフェノール樹脂よりも残炭率や架橋密度が高く、硬化物の耐熱性と機械的強度とに優れる樹脂組成物とこれを硬化した成形材料を提供すること。
【解決手段】 ナフトール類(A)とフルフラール等のフラン環含有化合物(B)、必要に応じてアルデヒド類(C)とを、好ましくは、カルボン酸等の酸性物質を触媒として反応必須成分としてなるナフタレン骨格を有する樹脂組成物、前記樹脂組成物を含有する耐火物用組成物、成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での強度に優れ、また高い比率で炭素材料を得る事が出来る有用な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、フェノール系の樹脂はその高い耐熱性、高い残炭率といった特性を有する事が知られており、幅広い分野で使用されてきている。更なる高耐熱、高残炭率の要望に対しての手法が研究されており、種々報告されている。例えば、フェノール樹脂に溶剤としてフルフラールやフルフリルアルコールを用い、残炭率を高くする手法などは良く知られている(例えば、特許文献1参照。)。一般のフェノール樹脂よりは高残炭を示すがその改善は少しである。しかし、前記樹脂系では、硬化物中のフラン環含有化合物が通常はフラン環の重合によるポリマーが生成しているため、フェノール樹脂との結合が少なくいため、相乗効果が少しであることに起因するものと考えられる。さらに、フルフラールやフルフリルアルコールがモノマーとして存在するために臭気が問題であった。
【特許文献1】特開平5−59257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来のフェノール樹脂よりも高残炭の高い、従って、硬化物の機械的強度に優れる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかるに本発明者等は、耐熱性が高く、残炭率が高い樹脂を設計すべく鋭意検討を重ねた結果、ナフトール骨格及びフラン環を化合物を縮合させる事により、同一分子内に炭素密度の高いナフトール骨格及びフラン環を多く有する樹脂組成物を開発した。同樹脂組成物をバインダーとして使用することにより、高耐熱である組成物や成形材を提供する。また同樹脂組成物は高残炭率であり、炭素材料原料としても有用であることを見いだして、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明はナフトール類(A)とフラン環含有化合物(B)の2成分系、及びナフトール類(A)とフラン環含有化合物(B)及びアルデヒド類(C)の3成分からなるナフタレン骨格を有する樹脂組成物を得て、同組成物を成形することで、高耐熱、高残炭率の成形材を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物にて製造された材料は高耐熱、高残炭の成型物が得られる利点がある。よって、耐火物用や成形材料の組成物として期待できる物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、原料として使用するナフトール類(A)としては、特に限定されるものではなく、例えば1−ナフトール(α−ナフトール)、2−ナフトール(β−ナフトール)、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。またこれらのナフトール類は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。
【0008】
フラン環含有化合物(B)としては、特に限定されるものではなく、例えばフルフラール(フルフリルアルデヒド)やフルフリルアルコールが挙げられる。またこれらの化合物は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。鎖延長の観点から見て、フルフラールを使用するのが好ましい。
【0009】
前記アルデヒド類(C)は、メチレン基供給物質であり、これらの例としては、フェノール樹脂製造の際に一般的に良く用いられるホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が有効であり、ウロトロピンが挙げられる。またこれらのアルデヒド類は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。反応性の面からパラホルムアルデヒドが好ましい。
【0010】
前記(A)と前記(B)の2成分系の場合の比率は(A)1モルに対して(B)は0.4〜1.0モル、特に0.6〜0.9モルが好ましい。(A)、(B)及び(C)の3成分系の場合、(A)1モルに対して(B)と(C)の合計がは0.4〜1.0モル、特に0.6〜0.9モルの範囲が好ましい。
【0011】
比率が0.6以下の場合には分子量が低く、残留するナフトールモノマー量が多くなる。また、比率が高すぎると、分子量が高くなりすぎて、粘度が上昇して製造しにくい傾向にある。
【0012】
(A)と(B)若しくは(A)と(B)と(C)を反応させ当該樹脂組成物を合成する際の触媒としては、塩酸、硫酸といった鉱酸、パラトルエンスルホン酸やフェノールスルホン酸などのスルホン酸、蓚酸、マレイン酸、酢酸等の有機カルボン酸及びその無水物が上げられる。鉱酸やスルホン酸などの強酸は不安定なフラン環の重合も副反応として起きやすい為、カルボン酸類を使用するのが好ましいが特に限定する物ではない。
【0013】
また(A)と(B)と(C)を反応させ当該樹脂組成物を合成する際の反応順序は、(1)一括で共縮反応させる。(2)(A)と(B)を反応させ、その後に(C)反応させる。(3)(A)と(C)を反応させ、その後に(B)を反応させる等の方法があるが、特に限定するものではない。また、同反応に於ける溶剤としては沸点が100℃以上の溶剤が好ましい。例えば、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が上げられるが、特に限定するものではない。
【0014】
本発明による樹脂組成物は構造的に炭素密度が高く、またヘキサミン等の硬化剤を用いて硬化させた際に、一般に知られている架橋の他、更にフラン環の不飽和基の重合も進行し、架橋密度が高くなるため、高耐熱性、高残炭率を示すものになると推定される。本発明は(A)と(B)、若しくは(A)、(B)と(C)が必須成分であり、更にジビニルベンゼンやスチレン等芳香族ビニル化合物を酸性触媒下にて反応させて結合させた変性物等も含まれる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。例中「部」「%」と表示しているものはそれぞれ重量部、重量%を表す。また、数平均分子量とはGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により、分子量既知のポリスチレンに換算した分子量を示す。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
合成例1
コンデンサー、温度計、攪拌装置を備えた反応装置に1−ナフトール150gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150g、フルフラール70gを仕込み、蓚酸3gを添加し、120℃に昇温2時間保持後、150℃にて3時間反応した後、180℃まで加熱して脱溶剤を行い、ノボラック型の樹脂Aを得た。樹脂Aは、軟化点90℃、GPCによる数平均分子量Mn1613のものであった。
【0017】
合成例2
コンデンサー、温度計、攪拌装置を備えた反応装置に2,7−ジヒドロキシナフタレン150gとプロピレングリコールモノメチルエーテル150g、92%パラホルムアルデヒド10g、フルフラール46gを仕込み、マレイン酸2gを添加し、120℃に昇温、5時間反応した後、180℃まで加熱して脱溶剤を行い、ノボラック型の樹脂Bを得た。樹脂Bは、軟化点94℃、遊離モノマー1%、GPCによる数平均分子量Mn1822のものであった。
【0018】
合成例3
コンデンサー、温度計、攪拌装置を備えた反応装置に1−ナフトール150gとプロピレングリコールモノメチルエーテル150g、92%パラホルムアルデヒド15g、フルフラール30gを仕込み、蓚酸3gを添加し、120℃に昇温、5時間反応した後、180℃まで加熱して脱溶剤を行い、ノボラック型の樹脂Cを得た。樹脂Cは、軟化点87℃、GPCによる数平均分子量Mn1540のものであった。
【0019】
比較合成例1
コンデンサー、温度計、攪拌装置を備えた反応装置に1−ナフトール150gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150g、92%パラホルムアルデヒド24gを仕込み、蓚酸3gを添加し、120℃に昇温2時間保持後、150℃にて3時間反応した後、180℃まで加熱して脱溶剤を行い、ノボラック型の樹脂Dを得た。樹脂Dは軟化点86℃、GPCによる数平均分子量Mn1420のものであった。
【0020】
比較合成例2
コンデンサー、温度計、攪拌装置を備えた反応装置にフェノール94gと37%ホルマリン54gを仕込み、蓚酸1gを添加し、100℃に昇温、5時間反応した後、180℃まで加熱して脱水を行い、ノボラック型の樹脂Eを得た。樹脂Eは、軟化点85℃、GPCによる数平均分子量1340のものであった。
【0021】
実施例1
合成例1で得た樹脂100重量部及びヘキサミンを8重量部を混合粉砕して粉末状の樹脂を得た。同樹脂を150℃にて1時間、次いで180℃にて1時間熱処理して硬化物を得た。これを坩堝に秤量し、窒素雰囲気下で800℃まで昇温させ、残炭率を測定した。結果を表−1に示す。
【0022】
合成例1で得た樹脂100重量部及びヘキサミンを8重量部をメタノールに溶解させて50%固形分濃度(135℃1時間加熱による不揮発分測定:JIS K6910)溶液を作製し、この液をアラミド不織布基材に含浸させ、樹脂付着量35%の樹脂付着(65%が基材)の材料を得た。同材料を1日風乾後、150℃にて1時間、次いで180℃にて1時間熱処理して硬化物を得た。これを常温及び高温200℃にて引張強度を測定した。
【0023】
実施例2
合成例2で得た樹脂を実施例1で示す内容と同様の試験を行った。
【0024】
実施例3
合成例3で得た樹脂を実施例1で示す内容と同様の試験を行った。
【0025】
比較例1
比較合成例1で得た樹脂を実施例1で示す内容と同様の試験を行った。
【0026】
比較例2
比較合成例2で得た樹脂を実施例1で示す内容と同様の試験を行った。
【0027】
比較例3
比較合成例2で得た樹脂を残炭率に関しては実施例1で示す内容と同様の試験を行った。また高温強度に関しては、合成例1で得た樹脂100重量部及びヘキサミンを8重量部にフルフラール20重量部を加え、メタノールに溶解させて50%固形分濃度(135℃1時間加熱による不揮発分測定:JIS K6910)溶液を作製し、この液をアラミド不織布基材に含浸させ、実施例1で示す内容と同様の試験を行った。
以上の結果をまとめて表−1に示す。
【0028】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフトール類(A)とフラン環含有化合物(B)を反応必須成分としてなるナフタレン骨格を有する樹脂組成物。
【請求項2】
ナフトール類(A)とフラン環含有化合物(B)及びアルデヒド類(C)を反応必須成分としてなるナフタレン骨格を有する樹脂組成物。
【請求項3】
前記フラン環含有化合物(B)がフルフラールである請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の樹脂組成物を必須成分としてなる耐火物用組成物。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の樹脂組成物を必須成分としてなる成形材料。

【公開番号】特開2007−246594(P2007−246594A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68997(P2006−68997)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】