説明

ナフタロシアニン色素およびその製造方法

【課題】新規なナフタロシアニン色素、その原料及び製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(II)又は(III)で表される化合物を原料とするナフタロシアニン化合物及びその製造方法。


[(II),(III)式中、Q51及びQ61は各々独立に、N原子と共に複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R52及びR62は各々独立に置換基を表し、n51及びn61は各々独立に1〜6の整数を表し、n52及びn62は各々独立に0〜5の整数を表す。A11、A12及びA13は各々独立にO原子又はNHを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成材料、赤外線感熱型記録材料、光記録素子および光学フィルム材料等に有用なナフタロシアニン色素に関するものであり、さらに詳細には吸収特性に優れた新規なナフタロシアニン色素に関するものである。また、本発明は、該ナフタロシアニン色素の製造方法および製造原料にも関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニン類は広く顔料として使用されてきたが、その中でも特にナフタロシアニン色素は可視光を実質的に吸収しないが、赤外線を吸収する近赤外色素として盛んに研究されてきた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ナフタロシアニン色素としては、ナフタレン環上の置換基として、ハロゲン原子、炭素結合型置換基(例えばアルキル基、アリール基)、酸素結合型置換基(例えばヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基)、イオウ結合型置換基(例えばアルキルチオ基、アリールチオ基)、窒素結合型置換基(例えばアミノ基、アルキルアミノ基)、カルボニル結合型置換基(例えばオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基)、ニトリル基およびニトロ基を有するもの(例えば特許文献1、非特許文献1参照)、重合前駆体としてアクリルアミド基を有するもの(例えば特許文献2参照)、アシルアミノ基およびその前駆体を有するもの(例えば特許文献3〜5参照)等が知られていた。しかしながら、2価または3価のヘテロ原子が2つ連なって結合する置換基を有するナフタロシアニン色素はこれまでに知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平2―296885号公報
【特許文献2】特開平7−118723号公報
【特許文献3】特開平11−152413号公報
【特許文献4】特開平11−152414号公報
【特許文献5】特開平11−152415号公報
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティ,パーキン・トランザクション,I,2453〜2458頁(1988年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、画像形成材料、赤外線感熱型記録材料、光記録素子および光学フィルム材料等に有用な新規なナフタロシアニン色素を提供することにある。また本発明の目的は、該ナフタロシアニン色素の簡便な製造方法とその製造に用いる原料化合物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記手段により本発明の上記目的が達成されることを見出した。
【0007】
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

【0008】
一般式(I)中、Q11、Q21、Q31およびQ41は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R12、R22、R32およびR42は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21、n22、n31、n32、n41およびn42は各々独立に0〜6の整数を表す。ただし、(n11+n21+n31+n41)が0となることはない。M1は2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価または4価の金属原子を含む2価の置換金属原子を表す。
【0009】
(2)下記一般式(II)または(III)で表される化合物。
【化2】

【0010】
一般式(II)および(III)中、Q51およびQ61は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R52およびR62は各々独立に置換基を表し、n51およびn61は各々独立に1〜6の整数を表し、n52およびn62は各々独立に0〜5の整数を表す。A11、A12およびA13は各々独立に酸素原子またはNHを表す。
【0011】
(3)前記一般式(II)または(III)で表される化合物を原料として、前記一般式(I)で表される化合物を製造することを特徴とする、前記一般式(I)で表される化合物の製造方法。
【0012】
(4)下記一般式(IV)で表される化合物。
【化3】

【0013】
一般式(IV)中、Q111、Q112、Q121、Q122、Q131、Q132、Q141およびQ142は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R113、R123、R133およびR143は各々独立に置換基を表し、n113、n123、n133およびn143は各々独立に0〜4の整数を表す。M2は2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価または4価の金属原子を含む2価の置換金属原子を表す。
【0014】
(5)下記一般式(V)または(VI)で表される化合物。
【化4】

【0015】
一般式(V)および(VI)中、Q151、Q152、Q161およびQ162は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R153およびR163は各々独立に置換基を表し、n153およびn163は各々独立に0〜4の整数を表し、A111、A112およびA113は各々独立に酸素原子またはNHを表す。
【0016】
(6)前記一般式(V)または(VI)で表される化合物を原料として、前記一般式(IV)で表される化合物を製造することを特徴とする、前記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、画像形成材料、赤外線感熱型記録材料、光記録素子および光学フィルム材料等に有用な新規なナフタロシアニン色素を提供することができる。また、このナフタロシアニン色素は、本発明の製造原料化合物を用いて、本発明の製造方法を実施することにより簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下において、本発明の化合物について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0019】
まず、本明細書における置換基などの定義を記載する。
本明細書において脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基を意味する。アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成(すなわち、シクロアルキル基)していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることがさらに好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アルケニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成(すなわち、シクロアルケニル基)していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることがさらに好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成(すなわち、シクロアルキニル基)していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることがさらに好ましい。置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同様である。
【0020】
置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基としては、例えばハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル)基、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル)基、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル)基、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基)、
【0021】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0022】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、
【0023】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2―ピリジルカルボニル基、2―フリルカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、
【0024】
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールもしくはヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)が挙げられる。
【0025】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニルが挙げられる。
【0026】
置換アラルキル基のアリール部分の置換基としては、下記置換アリール基の置換基が挙げられる。
【0027】
本明細書において芳香族基は、アリール基および置換アリール基を意味する。またこれらの芳香族基は脂肪族環、他の芳香族環または複素環が縮合していてもよい。芳香族基の炭素原子数は6〜40が好ましく、6〜30がさらに好ましく、6〜20がさらに好ましい。またその中でもアリール基としてはフェニル基またはナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0028】
置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基で挙げた置換基が挙げられる。
【0029】
次に一般式(I)〜(VI)で表される化合物について説明する。
一般式(I)において、Q11、Q21、Q31およびQ41は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、複素環とは5員または6員で窒素原子を含み、飽和または不飽和複素環であることが好ましく、この複素環は窒素原子が遊離の原子価(一価)を有する(複素環は窒素原子において結合する)。複素環の結合部の窒素原子以外のヘテロ原子としては、B、N、O、S、SeおよびTeが挙げられる。ヘテロ原子としてはN、OおよびSが好ましい。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。好ましい複素環基の炭素原子数は1〜40であり、より好ましくは1〜30であり、さらに好ましくは1〜20である。飽和複素環の例には、ピロリジン環、モルホリン環および1,3−チアゾリジン環が含まれる。不飽和複素環の例には、イミダゾール環、ピラゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドール環、ベンゾトリアゾール環およびプリン環が含まれる。複素環基は置換基を有していても良い。置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基として挙げた置換基が挙げられる。
【0030】
12、R22、R32およびR42は各々独立に置換基を表し、置換基の例としては前述の置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基で挙げた置換基が挙げられる。R12が複数存在するときは、複数のR12は互いに結合して環状構造を形成してもよい。R22、R32、R42も同じである。R12、R22、R32およびR42として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリールチオ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜8のアリールオキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数6〜8のアリールチオ基である。
【0031】
n11、n12、n21、n22、n31、n32、n41およびn42は、各々独立に0〜6の整数を表す。好ましくは、n11、 n21、n31およびn41が同じ数で1または2となり、かつn12、n22、n32およびn42が同じ数で0、1または2となる場合である。さらに好ましくはn11、n21、n31およびn41が同じ数で1または2となり、かつn12、n22、n32およびn42が同じ数で0または1となる場合である。さらに好ましくはn11、n21、n31およびn41が2となり、かつn12、n22、n32およびn42が同じ数で0または1となる場合である。さらに好ましくはn11、n21、n31およびn41が2となり、かつn12、n22、n32およびn42が0となる場合である。また最も好ましくはn11、n21、n31およびn41が2となり、かつn12、n22、n32およびn42が0となり、さらにQ11、Q21、Q31およびQ41と窒素原子からなる複素環の置換位置が全て同じでナフタレン環のα位に置換している場合である。
【0032】
1として好ましくは2個の水素原子、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+およびBe2+、Mg2+、Ca2+、Ti2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、 Cu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Pd2+、Pt2+、Ba2+、Cd2+、Hg2+、Pb2+、Sn2+、Al−Cl、Al−Br,Al−F、Al−I、Ga−Cl、Ga−F、Ga−I、Ga−Br、In−Cl、In−Br、In−I、In−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Tl−F、Mn−OH、Fe−Cl、Ru−Cl、CrCl2、SiCl2、SiBr2、SiF2、SiI2、ZrCl2、GeCl2、GeBr2、GeI2、GeF2、SnCl2、SnBr2、SnI2、SnF2、TiCl2、TiBr2、TiF2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、Sn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、SnR2、GeR2、Si(OR)2、Sn(OR)2、Ge(OR)2、Ti(OR)2、Cr(OR)2、Sn(SR)2、Ge(SR)2[Rは脂肪族基、芳香族基を表す]、VO、MnO、TiOであり、さらに好ましくは2個の水素原子、Li+、Na+、K+、Rb+およびBe2+、Mg2+、Ca2+、Ti2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Pd2+、Pt2+、Ba2+、Sn2+、Al−Cl、Al−Br,Ga−Cl、Ga−F、Ga−I、Ga−Br、In−Cl、In−Br、Tl−Cl、Tl−Br、Mn−OH、Fe−Cl、Ru−Cl、CrCl2、SiCl2、SiBr2、ZrCl2、GeCl2、GeBr2、SnCl2、SnBr2、 TiCl2、TiBr2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、Sn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、SnR2、GeR2、Si(OR)2、Sn(OR)2、Ge(OR)2、Ti(OR)2、Cr(OR)2、Sn(SR)2、Ge(SR)2[Rは脂肪族基、芳香族基を表す]、VO、MnO、TiOであり、さらに好ましくは2個の水素原子、Li+、Na+、K+、 およびBe2+、Mg2+、Ca2+、Ti2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Pd2+、Pt2+、Ba2+、Sn2+、Al−Cl、Ga−Cl、In−Cl、 Tl−Cl、Mn−OH、Fe−Cl、Ru−Cl、CrCl2、SiCl2、ZrCl2、GeCl2、TiCl2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、GeR2、Si(OR)2、Ge(OR)2、Ti(OR)2、Cr(OR)2[Rは脂肪族基、芳香族基を表す]、VO、MnO、TiOである。
【0033】
一般式(II)において、Q51およびR52は各々前述のQ11およびR12と同義であり、好ましい範囲も同一である。n51として好ましくは1または2であり、さらに好ましくは2であり、さらに好ましくは2でナフタレン環のCNの隣のα位に置換する場合である。n52として好ましくは0〜2であり、さらに好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0034】
一般式(III)において、Q61およびR62は各々前述のQ11およびR12と同義であり、好ましい範囲も同一である。n61およびn62はn51およびn52と同義であり、好ましい範囲も同一である。A11、A12およびA13は各々独立に酸素原子またはNHを表し、A11とA12が同一になるのが好ましい。
【0035】
一般式(IV)において、Q111、Q112、Q121、Q122、Q131、Q132、Q141およびQ142は前述のQ11と同義であり、好ましい範囲も同一である。R113、R123、R133およびR143はR12と同義であり、好ましい範囲も同一である。n113、n123、n133およびn143として好ましくは0〜3であり、さらに好ましくは0〜2であり、さらに好ましくは0または1であり、最も好ましくは0である。M2はM1と同義であり、好ましい範囲も同一である。
【0036】
一般式(V)において、Q151およびQ152は前述のQ11と同義であり、好ましい範囲も同一である。R153およびn153は各々R113およびn113と同義であり、好ましい範囲も同一である。
【0037】
一般式(VI)において、Q161およびQ162は前述のQ11と同義であり、好ましい範囲も同一である。R163およびn163は各々R113およびn113と同義であり、好ましい範囲も同一である。A111、A112およびA113はA11、A12およびA13と同義であり、好ましい範囲も同一である。
【0038】
次に本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0039】
(一般式(I)または(IV)で表される化合物)
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
(一般式(II)、(III)、(V)または(VI)で表される化合物)
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
一般式(I)または(IV)で表される化合物を得る反応は一般式(II)、(III)、(V)または(VI)で表される化合物(成分A)と、金属塩(成分B)を溶媒の存在下、あるいは無溶媒にて混合して行う。ここで用いる金属塩とは1〜15族およびランタノイド系の金属が含まれる有機および無機の化合物である。金属として好ましくは、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ga、Ru、Sn、Rb、Cs、Be、Rh、Pd、Pt、Ba、CdおよびPbであり、さらに好ましくはLi、Na、Mg、Al、K、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnであり、さらに好ましくはLi、Na、Mg、K、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnである。金属塩を形成する金属以外の成分は好ましくはハロゲンイオン(例えばF―、Cl―、Br―)、CN―、SO42-、HO―、NO3―、CO32-、カルボン酸イオン(例えば酢酸イオン、シュウ酸イオン)、スルホン酸イオン(例えばメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン)、リン酸イオン、アルコキシイオン(例えばメトキシイオン、エトキシイオン、イソプロポキシイオン、フェノキシイオン)等が挙げられる。さらに好ましくはCl―、CN―、SO42-、HO―、 CO32-、酢酸イオン、アルコキシイオンであり、さらに好ましくはCl―、CN―、SO42-、HO―、酢酸イオン、アルコキシイオンである。
【0046】
反応に用いる原料の比率は1モルの成分Aに対して、好ましい成分Bの量は0.01〜10モルであり、さらに好ましくは0.1〜5モルであり、さらに好ましくは0.2〜2モルであり、さらに好ましくは0.25〜1モルである。
【0047】
反応に用いる溶媒としては例えばアミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン)、アルコール系溶媒(例えば1−ブタノール、エチレングリコール、シクロヘキサノール)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)を単独或いは混合して用いることができる。好ましくはアミド系溶媒、スルホン系溶媒、ウレイド系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、ピリジン系溶媒であり、さらに好ましくはアミド系溶媒、スルホン系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒であり、さらに好ましくはアミド系溶媒、アルコール系溶媒であり最も好ましい溶媒はアミド系溶媒である。
【0048】
反応温度は通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜150℃であり、さらに好ましくは65〜130℃の範囲が好ましく、反応の途中で反応温度を変更すること(例えば前半50℃、後半120℃)も好ましく、反応時間は通常5分〜30時間の範囲で行う。
【0049】
反応には、含窒素化合物を添加することも好ましい。好ましい含窒素化合物としてはウレア、ヘキサメチルジシラザンおよびアンモニアガス(吹き込み)が挙げられる。
この際の添加量としては1モルの成分Aに対して含窒素化合物を通常0.1〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.5〜20モルであり、さらに好ましくは1〜10モルであり、さらに好ましくは1.5〜5モルであり、さらに好ましくは2〜3モルである。
【0050】
反応中、副生する水を系外に除くことも好ましく、減圧下あるいは常圧にて単独或いは溶媒とともに留去する方法、或いはモレキュラーシーブ等の吸収剤を用いる方法、無水酢酸等の脱水縮合剤を用いる方法等が好ましく用いられる。また、本反応は密閉系で行うことも好ましい。
【0051】
また一般式(II)、(III)、(V)または(VI)で表される化合物を得る反応は各々対応するハロゲン化物(例えばクロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド)、エステル[例えばスルホン酸エステル(例えばp−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート)、カルボン酸エステル(例えばアセテート、トリフルオロアセテート、ベンゾエート)]等(成分M)と複素環化合物(成分N)を反応させることにより、得ることができる。
【0052】
反応に用いる原料の比率は1モルの成分Mに対して、好ましい成分Nの量は1.5〜20モルであり、さらに好ましくは2〜10モルであり、さらに好ましくは2〜6モルであり、さらに好ましくは2〜3モルであり、さらに好ましくは2〜2.5モルである。成分Nの量が4モル以下の場合は塩基を共存させることが好ましい。塩基としては有機(例えばトリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン)および無機(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)の塩基を用いることができる。
【0053】
反応に用いることができる溶媒としては、例えば、前述の溶媒であり、好ましくはアミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ピリジン系溶媒である。
【0054】
反応温度は通常0〜250℃、好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは20〜80℃である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0056】
(実施例1)
3ツ口フラスコに例示化合物(R−1)37.2g、塩化銅8.1g、DMF150ml、tert−ブタノール150mlを入れ、内温90℃にて3時間加熱攪拌した。このものを減圧下にて溶媒を留去した後、クロロホルム3Lを添加し、水3Lを添加して抽出した。得られたクロロホルム溶液に水3Lを添加して洗浄する操作を3回行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物にメタノールを500ml添加して、得られた結晶を吸引濾過し、乾燥して目的の例示化合物(NC−1)を33.3g得た(収率85%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=1,303(主ピーク)であった。
【0057】
(実施例2)
3ツ口フラスコに例示化合物(R−11)39.3g、バナジウムオキシトリクロリド4.2g、tert−ブタノール400mlを入れ、内温85℃にて3時間加熱攪拌した。室温まで冷却した後、ここへメタノールを500ml添加して、得られた結晶を吸引濾過し、乾燥して目的の例示化合物(NC−7)を24.3g得た(収率62%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=1,307(主ピーク)であった。
【0058】
(実施例3)
3ツ口フラスコに例示化合物(R−14)46.4g、塩化スズ(II)6.8g、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン96.8g、メタノール500mlを入れ、加熱還流条件にて3時間加熱攪拌した。このものを減圧下にて溶媒を留去した後、クロロホルム3Lを添加し、水3Lを添加して抽出した。得られたクロロホルム溶液に水3Lを添加して洗浄する操作を3回行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物にメタノールを500ml添加して、得られた結晶を吸引濾過し、乾燥して目的の例示化合物(NC−9)を20.9g得た(収率44%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=1,584(主ピーク)であった。
【0059】
(実施例4)
3ツ口フラスコに例示化合物(R−2)37.2g、塩化マンガン(II)10.6g、DMF100ml、tert−ブタノール400mlを入れ、加熱還流条件にて5時間加熱攪拌した。このものを減圧下にて溶媒を留去した後、クロロホルム3Lを添加し、水3Lを添加して抽出した。得られたクロロホルム溶液に水3Lを添加して洗浄する操作を3回行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物にメタノールを500ml添加して、得られた結晶を吸引濾過し、乾燥して目的の例示化合物(NC−14)を27.2g得た(収率70%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=1,295(主ピーク)であった。
【0060】
(実施例5)
3ツ口フラスコに例示化合物(R−2)37.2g、リチウムーtert−ブトキシド5.8g、DMF100ml、tert−ブタノール300mlを入れ、加熱還流条件にて3時間加熱攪拌した。このものを減圧下にて溶媒を留去した後、クロロホルム3Lを添加し、水3Lを添加して抽出した。得られたクロロホルム溶液に水3Lを添加して洗浄する操作を3回行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物にメタノールを500ml添加して、得られた結晶を吸引濾過し、乾燥して目的の例示化合物(NC−13)を26.5g得た(収率71%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=1,242(主ピーク)であった。
【0061】
(実施例6)
3ツ口フラスコに例示化合物(R−13)39.5g、塩化銅8.1g、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン96.8g、DMF100ml、tert−ブタノール400mlを入れ、加熱還流条件にて5時間加熱攪拌した。このものを減圧下にて溶媒を留去した後、クロロホルム3Lを添加し、水3Lを添加して抽出した。得られたクロロホルム溶液に水3Lを添加して洗浄する操作を3回行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物にメタノールを500ml添加して、得られた結晶を吸引濾過し、乾燥して目的の例示化合物(NC−11)を29.4g得た(収率75%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=1,303(主ピーク)であった。
【0062】
(実施例7)
3ツ口フラスコに1,4−ジクロロ−2,3−ジシアノナフタレン24.7gと1−メチルー2−ピロリドン100mlを入れ、水冷下にて攪拌しながらここへピラゾール40.8gを1−メチル−2−ピロリドン100mlからなる溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後そのまま1時間攪拌した後、内温50℃にて1時間攪拌し、さらに内温90℃にて1時間攪拌した。このものを室温まで冷却し、エバポレーターにて溶媒を留去して得られた残留物に酢酸エチル500mlと水500mlを添加して抽出し、得られた酢酸エチル溶液を水400mlで4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的の例示化合物(R−1)27.9gを得た(収率90%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=310(主ピーク)であった。
【0063】
(実施例8)
3ツ口フラスコに1,4−ジクロロ−2,3−ジシアノナフタレン24.7g、炭酸カリウム48gと1−メチルー2−ピロリドン150mlを入れ、水冷下にて攪拌しながらここへイミダゾール15.0gと1−メチルー2−ピロリドン50mlからなる溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後そのまま1時間攪拌した後、内温50℃にて1時間攪拌し、さらに内温90℃にて1時間攪拌した。このものを室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターにて濃縮し、得られた残留物に酢酸エチル500mlと水600mlを添加して抽出し、得られた酢酸エチル溶液を水400mlで4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的の例示化合物(R−2)29.4gを得た(収率95%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=310(主ピーク)であった。
【0064】
(実施例9)
3ツ口フラスコに1,4−ジクロロ−2,3−ナフタレンジカルボキシイミド26.6g、炭酸カリウム48gと1−メチル−2−ピロリドン150mlを入れ、水冷下にて攪拌しながらここへイミダゾール15.0gと1−メチルー2−ピロリドン50mlからなる溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後そのまま3時間攪拌した後、内温50℃にて1時間攪拌し、さらに内温90℃にて1時間攪拌した。このものを室温まで冷却し、ロ−タリーエバポレーターで濃縮して得られた残留物に酢酸エチル500mlと水600mlを添加して抽出し、得られた酢酸エチル溶液を水400mlで4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的の例示化合物(R−13)28.3gを得た(収率86%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=329(主ピーク)であった。
【0065】
(実施例10)
3ツ口フラスコに1,4−ジクロロ−2,3−ジシアノナフタレン24.7g、炭酸カリウム48gと1−メチル−2−ピロリドン150mlを入れ、水冷下にて攪拌しながらここへピラゾール15.0gと1−メチルー2−ピロリドン100mlからなる溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後そのまま1時間攪拌した後、内温50℃にて1時間攪拌し、さらに内温80℃にて1時間攪拌した。このものを室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで濃縮して得られた残留物に酢酸エチル500mlと水600mlを添加して抽出し、得られた酢酸エチル溶液を水400mlで4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的の例示化合物(R−1)27.9gを得た(収率90%)。このもののマススペクトルを測定したところ、M+=310(主ピーク)であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の化合物は、画像形成材料、赤外線感熱型記録材料、光記録素子および光学フィルム材料等に有用であり、これらの材料や素子の製造に効果的に使用されうるものである。また、このような化合物は、本発明の製造原料化合物を用いて、本発明の製造方法を実施することにより簡便に製造することができる。したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

[一般式(I)中、Q11、Q21、Q31およびQ41は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R12、R22、R32およびR42は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21、n22、n31、n32、n41およびn42は各々独立に0〜6の整数を表す。ただし、(n11+n21+n31+n41)が0となることはない。M1は2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価または4価の金属原子を含む2価の置換金属原子を表す。]
【請求項2】
下記一般式(II)または(III)で表される化合物。
【化2】

[一般式(II)および(III)中、Q51およびQ61は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R52およびR62は各々独立に置換基を表し、n51およびn61は各々独立に1〜6の整数を表し、n52およびn62は各々独立に0〜5の整数を表す。A11、A12およびA13は各々独立に酸素原子またはNHを表す。]
【請求項3】
請求項2に記載の一般式(II)または(III)で表される化合物を原料として、請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物を製造することを特徴とする、前記一般式(I)で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(IV)で表される化合物。
【化3】

[一般式(IV)中、Q111、Q112、Q121、Q122、Q131、Q132、Q141およびQ142は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R113、R123、R133およびR143は各々独立に置換基を表し、n113、n123、n133およびn143は各々独立に0〜4の整数を表す。M2は2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価または4価の金属原子を含む2価の置換金属原子を表す。]
【請求項5】
下記一般式(V)または(VI)で表される化合物。
【化4】

[一般式(V)および(VI)中、Q151、Q152、Q161およびQ162は各々独立に、窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、R153およびR163は各々独立に置換基を表し、n153およびn163は各々独立に0〜4の整数を表し、A111、A112およびA113は各々独立に酸素原子またはNHを表す。]
【請求項6】
請求項5に記載の一般式(V)または(VI)で表される化合物を原料として、請求項4に記載の一般式(IV)で表される化合物を製造することを特徴とする、前記の一般式(IV)で表される化合物の製造方法。

【公開番号】特開2007−91877(P2007−91877A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283210(P2005−283210)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】