説明

ナフトピラン誘導体の製造方法

【課題】酸化劣化に対して安定な化合物を中間体に用いたナフトピラン化合物の製造方法を提供するものである。
【解決手段】
下記一般式(1)
【化1】


(式中、
1、R、R、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、環状アミノ基、アラルキル基、またはアリール基である。)
で表される化合物をアリールボロン酸誘導体存在下、アルデヒド誘導体と反応させる、または、酸触媒存在下、プロパルギルアルコール誘導体と反応させることを特徴とするナフトピラン化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた化合物と、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体とを反応させることにより、ナフトピラン誘導体を製造する新規なナフトピラン誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いくつかのベンゾピラン誘導体(該誘導体はクロメン骨格を有するのでクロメン化合物と呼ばれることもある。)は、太陽光のような紫外線を含む光を照射することによってその化学構造を変え、着色し、また、光の照射を止めると元の化学構造に戻り、着色が消えることが知られており、現在市販されているフォトクロミックレンズの主要構成成分となっている。
【0003】
ベンゾピラン誘導体のうち、発退色のスピードや耐久性などのフォトクロミック特性に特に優れる化合物として、種々の置換基を有するナフトピラン誘導体が知られている。これらナフトピラン誘導体の一般的な製造方法としては、ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体を酸触媒の存在下で攪拌混合する方法、ナフトール誘導体とアルデヒド誘導体をアリールボロン酸誘導体の存在下で攪拌混合する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0004】
以上の通り、フォトクロミック特性に優れたナフトピラン誘導体を合成するに際し、ナフトール誘導体は、非常に重要な原料化合物である。このような有用なナフトピラン誘導体の原料となる該ナフトール誘導体は、例えば、2,3−ジメチルフランとベンザインを反応させて、飽和塩化アンモニウム水溶液(pH5)で洗浄することにより3,4−ジメチル−1−ナフトールを合成する方法が知られている(非特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,931,221号公報
【特許文献2】特開2008−169127号公報
【非特許文献1】アプライド オルガノメタリック ケミストリー(APPLIED ORGANOMETALLIC CHEMISTRY)2002;16:271−276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、前記ナフトール誘導体は、それ自体の保存安定性が低く、長期間の保存ができないことが分かった。前記ナフトール誘導体は、空気中で分解して、副生物を生成し、さらに、この副生物は、プロパルギルアルコール誘導体、又はアルデヒド誘導体と反応して、ナフトピラン誘導体の収率を低下させるものと考えられる。そのため、前記ナフトール誘導体は、合成後、直ぐにプロパルギルアルコール誘導体、又はアルデヒド誘導体と反応させてナフトピラン誘導体とする必要があることが分かった。
【0007】
このナフトピラン誘導体の原料(例えば、ナフトール誘導体)の保存安定性を高めることができれば、ナフトピラン誘導体を大量に製造することができ、コスト、製造条件の改善を図ることが可能となる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、保存安定性が高く、ナフトピラン誘導体の原料として使用できる化合物を提供し、該原料化合物を使用してナフトピラン誘導体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った。そして、ナフトール誘導体の反応途中に生成する中間体について着目し、検討した結果、下記一般式(1)で示される化合物が保存安定性に優れ、かつ、従来と同じ条件でプロパルギルアルコール誘導体、又はアルデヒド誘導体と反応させることにより、高純度のナフトピラン誘導体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
下記一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基である。)
で示される化合物と、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体とを反応させてナフトピラン誘導体を製造する方法である。
【0013】
また、本発明は、アリールボロン酸誘導体の存在下、前記一般式(1)で示される化合物と、アルデヒド誘導体として、
下記一般式(2)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、
、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
a及びbは、それぞれ、1〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるアルデヒド誘導体とを反応させて、
下記一般式(3)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義であり、
、R、a、及びbは、前記一般式(2)におけるものと同義である。)
で示されるナフトピラン誘導体を製造する方法である。
【0018】
また、本発明は、酸触媒存在下、前記一般式(1)で示される化合物と、プロパルギルアルコール誘導体として、
下記一般式(4)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、
、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
a及びbは、それぞれ、1〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるプロパルギルアルコール誘導体とを反応させて、
下記一般式(3)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義であり、
、R、a、及びbは、前記一般式(4)におけるものと同義である。)
で示されるナフトピラン誘導体を製造する方法である。
【0023】
さらに、本発明は、下記一般式(1A)
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、
1A、及びR2Aは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アラルコキシ基、又はアラルキル基であり、
、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基である。)
で示される化合物である。
【発明の効果】
【0026】
前記一般式(1)で示される化合物と、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体とを反応させることにより、ナフトピラン誘導体を製造することができる。この反応は、従来のナフトール誘導体と、アルデヒド誘導体、またはプロパルギルアルコール誘導体との反応と変わりがなく、製造条件を変更する必要がない。
【0027】
また、この化合物は、それ自体、保存安定性が高く、長期保存後の該化合物を使用したとしても、得られるナフトピラン誘導体の収率を低下させることがない。そのため、該化合物は、例えば、ナフトピラン誘導体を大量に生産する際に好適に使用することができ、該化合物を原料とすることにより、ナフトピラン誘導体の製造条件を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、前記一般式(1)で示される化合物(以下、原料化合物とする場合もある)を原料としてナフトピラン誘導体を製造する方法である。つまり、酸触媒の存在下、原料化合物と、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体とを反応させて、ナフトピラン誘導体を製造する方法である。
先ず、この原料化合物について説明する。
【0029】
(原料化合物)
本発明において、ナフトピラン誘導体の原料として使用する化合物は、下記一般式(1)
【0030】
【化7】

【0031】
で示される化合物である。
【0032】
(基R1、R、R、R、R、及びR
前記一般式(1)において、R1、R、R、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基である。
【0033】
前記の基の内、アルキル基としては、一般的には、炭素数1〜6のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が好適であり、特に、最終的に得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性を考慮すると、メチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0034】
アルコキシ基としては、一般的には炭素数1〜6のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が好適であり、特に、最終的に得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性を考慮すると、メトキシ基が好ましい。
【0035】
アラルコキシ基としては、炭素数6〜10のもの、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が好適である。また、該アラルコキシ基は、置換基を有していてもよく、この置換基を有するアラルコキシ基としては、上記アラルコキシ基の1若しくは2以上の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基で置換されたものを挙げることができる。
【0036】
アミノ基としては、一級アミノ基に限定されず、置換基を有する2級アミノ基や3級アミノ基であってもよい。かかるアミノ基が有する置換基としては、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基が代表的である。このような置換アミノ基(2級アミノ基或いは3級アミノ基)の好適な例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;フェニルアミノ基等のアリールアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;などを挙げることできる。特に、最終的に得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性を考慮すると、ジメチルアミノ基が好適である。
【0037】
窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基としては、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることがでる。さらに、該複素環基は、メチル基等のアルキル基を置換基として有していてもよい。このような置換基を有する複素環基としては、2,6−ジメチルモルホリノ基、2,6−ジメチルピペリジノ基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。特に、最終的に得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性を考慮すると、モルホリノ基、ピペリジノ基が好適である。
【0038】
アラルキル基としては、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。また、該アラルキル基は、置換基を有していてもよく、この置換基を有するアラルキル基としては、上記アラルキル基の1若しくは2以上の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基で置換されたものを挙げることができる。
【0039】
アリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好適なアリール基を例示すると、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、該アリール基は、置換基を有していてもよく、この置換基を有するアリール基としては、上記アリール基の1若しくは2以上の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基で置換されたものを挙げることができる。
【0040】
(好適な原料化合物)
前記一般式(1)で示される化合物の中でも、ナフトピラン誘導体の原料や、その他の有用な化合物の原料として使用するためには、下記一般式(1A)で示される化合物となることが好ましい。
【0041】
【化8】

【0042】
(式中、
1A、及びR2Aは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アラルコキシ基、又はアラルキル基であり、
、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基である。)。
【0043】
前記一般式(1A)で示される化合物は、基R1A、及びR2Aが前記一般式(1)の基R、及びRにおいて、それぞれ、水素原子、アルキル基、アラルコキシ基、又はアラルキル基となる化合物である。基R1A、及びR2Aのアルキル基、アラルコキシ基、又はアラルキル基は、前記一般式(1)のR〜Rで説明した基と同一の基が挙げられる。
【0044】
また、前記一般式(1a)において、基R、R、R、及びRは、前記一般式(1)と同じ基であり、基R、R、R、及びRのアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基も、前記一般式(1)のR〜Rで説明した基と同一の基が挙げられる。
【0045】
前記一般式(1A)で示される化合物の中でも、特に好ましい化合物を具体的に示せば、1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−メチル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−1,2−ジフェニル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−フェニル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−1,2−ジフェノキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−フェノキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−1,2−ジベンジル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−ベンジル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−1,2−ジベンジルオキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−ベンジルオキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−1,2−ジイソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−6,8−ジメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2メチル−6,8−ジフェニル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2メチル−6,8−ジフェノキシ−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2メチル−6,8−ジモルホリノ−1,4−ジヒドロナフタレンが挙げられる。
【0046】
さらに、上記原料化合物の中でも、特に好ましくは、下記一般式(1B)
【0047】
【化9】

【0048】
(式中、
1Bは、メチル基、又はイソプロピル基であり、
2Bは、水素原子、又はメチル基であり、
3B、及びR5Bは、それぞれ、水素原子、又はメトキシ基である。)
で示される化合物である。前記式(1B)で示される化合物の中でも、1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレンが原料入手の面、最終的に得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性の点から最も好適である。
【0049】
(原料化合物の製造方法)
本発明において、前記原料化合物は、特に制限されるものではないが、以下の方法で製造することが好ましい。
【0050】
下記一般式(5)
【0051】
【化10】

【0052】
(式中、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義である。)
で示されるフラン誘導体と、下記一般式(6)
【0053】
【化11】

【0054】
(式中、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義である。)
で示されるベンザイン誘導体とを反応させた後、反応系を酸性条件下にしないように処理することにより、原料化合物を製造することができる。なお、下記に詳述するが、反応系を酸性条件下にならないように処理するとは、反応後、酸を添加せず、さらに、得られた反応溶液をpHが6以上の洗浄水で洗浄してやればよい。反応系が酸性条件下になっていないことの確認は、該洗浄水により反応溶液を洗浄して得られる水のpHを確認すればよい。該水のpHが6以上であれば、反応系が酸性条件下になっていないことが確認できる。
【0055】
前記フラン誘導体は、例えば、非特許文献1に記載されている通り、公知の化合物である。中でも、特に、好ましい誘導体としては、好ましい前記原料化合物を形成できるものであればよく、具体的には、2,3−ジメチルフラン、3−メチルフラン、3−イソプロピルフラン、2−フェノキシフラン、2−ベンジルフランが挙げられる。中でも、2,3−ジメチルフランが原料入手の面から最も好適である。
【0056】
また、前記ベンザイン誘導体も、例えば、非特許文献1に記載されている通り、公知の化合物である。このベンザイン誘導体は、不安定な化合物であるため、前記フラン誘導体と反応させる反応系内で合成し、生成後、直ぐに前記フラン誘導体と反応させるようにすることが好ましい。ベンザイン誘導体の合成の方法は、マグネシウムにハロゲン原子を置換基として有するベンゼン誘導体、例えば、2−ブロモフルオロベンゼンを滴下する方法、または、ナトリウムアミドと該ベンゼン誘導体、例えば、クロロベンゼンを反応させる方法等、公知の方法が特に制限なく使用できる。
【0057】
中でも、好ましいベンザイン誘導体としては、好ましい前記原料化合物を形成できるものであればよいが、具体的には、特に、マグネシウムと2−ブロモフルオロベンゼンより得られるベンザインであることが原料入手の面から最も好適である。
【0058】
前記ベンザイン誘導体の使用量は、理論的には、フラン誘導体1モルに対して当量モルであればよいが、収率、反応効率等を考慮すると、フラン誘導体1モルに対して、0.5〜10モル程度使用することが好ましい。
【0059】
前記フラン誘導体と前記ベンザイン誘導体とは、両者を混合することにより反応させることができる。これらフラン誘導体、及びベンザイン誘導体を混合する順序は、特に制限されるものではなく、これら成分を同時に混合容器内に添加し、混合することもできるし、一方の成分を先に混合容器内に入れておき、他方の成分を後から混合容器内に添加し、混合することもできる。中でも、効率的に反応を促進させるためには、マグネシウム存在下、フラン誘導体中に、ハロゲン原子を置換基として有するベンゼン誘導体、例えば、2−ブロモフルオロベンゼンを滴下することによりベンザイン誘導体を反応系中で合成し、直ちにフラン誘導体と反応させることが好ましい。
【0060】
また、フラン誘導体とベンザイン誘導体の反応は、両者を直接反応させることもできるが、操作性を考慮すると、有機溶媒で希釈して反応させることが好ましい。有機溶媒を使用する場合、使用する有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば、特に制限なく使用できる。具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、へキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類が使用される。上記反応は、有機溶媒中で行う場合、溶媒の使用量が多すぎると反応の後処理が煩雑になるため、溶媒除去に過度の負担がかからない程度の量で使用すればよい。具体的には、使用するフラン誘導体1質量部に対して、1〜100質量部、特に、10〜20質量部であるのが望ましい。
【0061】
また、前記フラン誘導体、およびベンザイン誘導体とを混合する際の反応温度は、20℃〜120℃が好ましい。また、反応時間は、その他の反応条件に応じて、反応進行度を確認しながら適宜決定すればよいが、通常、10分〜5時間程度の反応で十分な収量の原料化合物を得ることができる。
【0062】
(洗浄条件)
従来の方法においては、フラン誘導体とベンザイン誘導体とを反応させた後、飽和塩化アンモニウム水溶液(pH5)で洗浄を行っていたため、エポキシド部分が開環し、ナフトール誘導体が生成するものと考えられる。一方、本発明の原料化合物を製造するためには、フラン誘導体とベンザイン誘導体とを反応させた後、pH6以上を保った状態で洗浄を行うことにより、エポキシド部分の開環を防ぐことができ、該原料化合物を製造することができる。具体的には、フラン誘導体とベンザイン誘導体とを反応させて得られた反応溶液に、酸を添加することなく、pHが6以上の洗浄水、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水等により洗浄することにより、本発明の原料化合物を製造できる。なお、フラン誘導体とベンザイン誘導体との反応に、水に溶解し易い有機溶媒を使用した場合には、必要に応じて該有機溶媒を留去した後、水に溶解し難い有機溶媒を加え、該洗浄水で洗浄してやればよい。
【0063】
(原料化合物の同定)
本発明においては、上記精製を行うことにより、原料化合物を得ることができる。得られた原料化合物については、H−NMRでナフトール誘導体に見られる5.0ppm付近のOH基由来のピークがないことを確認することができ、13C−NMRで80〜90ppm付近の4級炭素を確認することができ、IRにより3000〜3700cm−1にナフトール誘導体に見られるOH伸縮ピークがないことを確認することにより、同定することができる。
【0064】
(原料化合物の保存安定性、反応性)
上記方法により得られる原料化合物は、以下の実施例において説明するが、ナフトール誘導体と比較して、室温下に放置しても分解することがない。また、該原料化合物は、ナフトール誘導体と同じ条件において、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体と反応させることにより、ナフトピラン誘導体を製造することができる。
【0065】
該原料化合物は、酸の存在下、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体と反応させてナフトピラン誘導体を製造するに際し、酸が反応系内に存在するため、開環してナフトール誘導体となり、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体と反応するものと考えられる。ただし、この該原料化合物は、酸が存在しなければ、開環することもなく、保存安定性に優れた化合物である。そのため、ナフトピラン誘導体の生産性を改善できる。
【0066】
以下、ナフトピラン誘導体の製造方法について説明する。先ず、原料化合物とアルデヒド誘導体との反応について説明する。
【0067】
(原料化合物とアルデヒド誘導体との反応:ナフトピラン誘導体の製造方法)
本発明においては、前記原料化合物とアルデヒド誘導体とを反応させることにより、ナフトピラン誘導体を製造することができる。反応条件は、ナフトール誘導体とアルデヒド誘導体とを反応させる条件をそのまま使用することができる。また、反応に使用するアルデヒド誘導体は、所望とするナフトピラン誘導体の構造に併せて適宜決定してやればよい。中でも、優れたフォトクロミック特性を発揮するナフトピラン誘導体を製造するには、以下の反応条件で、以下のアルデヒド誘導体とを反応させることが好ましい。
【0068】
具体的には、アリールボロン酸誘導体の存在下、前記原料化合物と、下記一般式(2)
【0069】
【化12】

【0070】
で示されるアルデヒド誘導体とを反応させて、ナフトピラン誘導体を製造することが好ましい。反応させるには、アリールボロン酸誘導体、前記原料化合物、及び前記アルデヒド誘導体とを混合してやればよい。
【0071】
(アルデヒド誘導体)
前記一般式(2)において、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
a及びbは、それぞれ、1〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。
【0072】
これら基については、原料化合物の基R〜Rにおいて説明した基と同様の基が例示できる。
【0073】
前記一般式(2)で示されるアルデヒド誘導体を具体的に例示すると、3,3−ジフェニルプロペナール、3−(4−メトキシフェニル)−3−フェニルプロペナール、3,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロペナール、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−フェニルプロペナール、3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニルプロペナール、3−(4−ピペリジノフェニル)−3−フェニルプロペナール、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロペナール、3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)プロペナール、3−(4−メチルフェニル)−3−フェニルプロペナール、3,3−ビス(4−メチルフェニル)プロペナール、3,3−ビス(4−イソプロピルオキシフェニル)プロペナール、3−(4−ジメチルアミノー3−メチルフェニル)−3−フェニルプロペナール等が挙げられる。なお、(E)及び(Z)異性体構造を取り得るものは、いずれか単独であっても、任意の比率の混合物であっても構わない。
【0074】
これらの中でも、得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性を考慮すると、3,3−ジフェニルプロペナール、3,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロペナール、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−フェニルプロペナール、3−(4−モルホリノフェニル)−3−フェニルプロペナール、3−(4−ピペリジノフェニル)−3−フェニルプロペナール、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロペナール、3−(4−ジメチルアミノー3−メチルフェニル)−3−フェニルプロペナールが最も好適である。
【0075】
ナフトピラン誘導体を製造するに際し、上記アルデヒド誘導体の使用量は、特に制限されるものではないが、原料化合物1モルに対して、0.01〜50モル、好ましくは、0.2〜10モル、特に好ましくは、0.3〜3モルである。
【0076】
(アリールボロン酸誘導体)
前記アルデヒド誘導体と原料化合物は、アリールボロン酸誘導体の存在下で反応させる。該アリールボロン酸誘導体としては、特に制限されることはなく、公知のアリールボロン酸誘導体が使用できる。アリールボロン酸誘導体として、酸無水物を使用しても良い。ここで、アリールボロン酸とは、水素原子の少なくとも1つがアリール基に置換したボロン酸であり、アリールボロン酸無水物とは、水素原子の少なくとも1つがアリール基に置換したボロン酸の無水物を意味する。アリール基としては前記前記一般式(1)のR1〜Rで説明したアリール基と同じものが好適に使用できる。
【0077】
本発明において、原料の入手が容易であること、及び高い反応収率が得られることから、下記一般式(7)で示されるアリールボロン酸無水物を使用することが特に好ましい。
【0078】
【化13】

【0079】
(式中、
、R10及びR11は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
c、d及びeは、それぞれ、1〜3の整数であり、c、d及びeが2〜3の整数であるとき、各R、R10及びR11は、それぞれ、同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。)
前記一般式(7)において、R、R10及びR11であるアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基は、前記一般式(1)のR〜Rで具体的に説明した基と同様の基を例示することができる。
【0080】
前記一般式(7)で表されるアリールボロン酸誘導体の中でも、フェニルボロン酸無水物、4−メチルフェニルボロン酸無水物、4−メトキシフェニルボロン酸無水物、4−フルオロフェニルボロン酸無水物、4−tert−ブチルフェニルボロン酸無水物、3−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸無水物、フェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、4−メトキシフェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−tert−ブチルフェニルボロン酸、3−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸などを使用することが好ましい。これらの中でも、経済性の観点から、フェニルボロン酸無水物を使用することが最も好ましい。
【0081】
ナフトピラン誘導体を製造するに際し、アリールボロン酸誘導体の使用量は、特に制限されるものではないが、原料化合物1モルに対して、0.01〜50モル、好ましくは、0.2〜10モル、特に好ましくは、0.3〜3モルの割合で混合することが望ましい。
【0082】
なお、原料化合物、アルデヒド誘導体、アリールボロン酸誘導体の他に、その他添加剤として、酢酸、プロピオン酸など酸成分を反応系中に加えても良い。該成分は、反応速度を向上させる働きを有する。該酸成分の使用量は、使用するアリールボロン酸誘導体の量、種類に応じて適宜決定すればよいが、原料化合物1モルに対して、0.1〜10モルであることが好ましい。
【0083】
(原料化合物とアルデヒド誘導体の反応条件)
本発明において、原料化合物とアルデヒド誘導体とを反応させるには、アリールボロン酸誘導体の存在下に両原料化合物を混合すればよい。このとき、原料化合物を効果的に接触させるために、溶媒を使用することが好ましい。反応溶媒としては、反応に対して不活性で、原料を溶解するものであれば特に制限されず、シクロヘキサン、ヘプタン、i−オクタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類、メチルエチルケトン等のケトン類等を使用することができる。
【0084】
反応温度は、室温〜200℃、特に70℃〜150℃とするのが好適であり、反応時間は、0.01時間〜48時間、特に、0.1時間〜24時間とすることが好適である。
【0085】
また、混合方法としては、原料化合物、アルデヒド誘導体、アリールボロン酸誘導体、反応溶媒のすべてを反応容器に仕込んでから攪拌混合する方法、原料化合物、アルデヒド誘導体、反応溶媒の混合液にアリールボロン酸誘導体を加えて攪拌混合する方法、アリールボロン酸誘導体、反応溶媒の混合溶液に、原料化合物とアルデヒド誘導体(反応溶媒に溶解したものでも良い)を加えて攪拌混合する方法等、公知の方法が特に制限なく採用できる。
【0086】
反応終了後は、先ず、炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を加えて分液することにより、アリールボロン酸誘導体をボロン酸塩として分離除去する。次いで、有機層を回収し、溶媒を除去することにより目的物を単離する事ができる。また、有機層に原料のいずれかが残存する場合には、例えば、カラムクロマトグラフ法や再結晶等の方法により精製することで、目的物であるナフトピラン誘導体を純度99%以上で得ることができる
(ナフトピラン誘導体)
以上のような方法で反応させ、精製することにより、ナフトピラン誘導体を製造することができる。中でも、アルデヒド誘導体として、前記一般式(2)で示される化合物を使用した場合には、
下記一般式(3)
【0087】
【化14】

【0088】
(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義であり、
、R、a、及びbは、前記一般式(2)におけるものと同義である。)
で示されるナフトピラン誘導体を製造することができる。このようなナフトピラン誘導体は、優れたフォトクロミック特性を発揮する。
【0089】
前記一般式(3)で示されるナフトピラン誘導体の中でも、優れたフォトクロミック特性を発揮するという点から、2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピラン、6,8−ジメトキシ−10−メチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−2Hナフト[1,2−b]ピラン、10−イソプロピル−3,3−ジフェニル−2Hナフト[1,2−b]ピラン等が好ましく、その中でも、2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランが最も好ましい。
【0090】
以上、原料化合物とアルデヒド誘導体との反応によるナフトピラン誘導体の製造について説明したが、次に、原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体との反応によるナフトピラン誘導体の製造について説明する。
【0091】
(原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体との反応:ナフトピラン誘導体の製造)
本発明においては、前記原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体とを反応させることにより、ナフトピラン誘導体を製造することができる。反応条件は、ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体とを反応させる条件をそのまま使用することができる。また、反応に使用するプロパルギルアルコール誘導体は、所望とするナフトピラン誘導体の構造に併せて適宜決定してやればよい。中でも、優れたフォトクロミック特性を発揮するナフトピラン誘導体を製造するには、以下の反応条件で、以下のプロパルギルアルコール誘導体とを反応させることが好ましい。
【0092】
具体的には、酸触媒の存在下、前記原料化合物と、下記一般式(4)
【0093】
【化15】

【0094】
で示されるプロパルギルアルコール誘導体とを反応させて、ナフトピラン誘導体を製造することが好ましい。反応させるには、酸触媒、前記原料化合物、及び前記プロパルギルアルコール誘導体とを混合してやればよい。
【0095】
前記プロパルギルアルコール誘導体を使用することにより、原料化合物とアルデヒド誘導体との反応で説明した優れたフォトクロミック特性を有するナフトピラン誘導体を製造することができる。
【0096】
(プロパルギルアルコール誘導体)
前記一般式(4)において、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
a及びbは、それぞれ、1〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。
【0097】
これら基については、原料化合物の基R〜Rにおいて説明した基と同様の基が例示できる。
【0098】
前記一般式(4)で表されるプロパルギルアルコール誘導体を具体的に例示すると、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−モルホリノフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−ピペリジノフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−メチルフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1,1−ビス(4−メチルフェニル)−2−プロピン−1−オール、1,1−ビス(4−イソプロピルオキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−ジメチルアミノー3−メチルフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール等が挙げられる。特に、得られるナフトピラン誘導体のフォトクロミック特性の点から、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−モルホリノフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−ピペリジノフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オール、1−(4−ジメチルアミノー3−メチルフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールが好適である。
【0099】
ナフトピラン誘導体を製造するに際し、上記プロパルギルアルコール誘導体の使用量は、特に制限されるものではないが、原料化合物1モルに対して、0.01〜50モル、好ましくは、0.2〜10モル、特に好ましくは、0.3〜3モルである。
【0100】
(酸触媒)
原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体とを反応させる際に使用する酸触媒は、特に制限されることはなく、公知の酸が使用できる。具体的には、p−トルエンスルホン酸(水和物を含む)、メタンスルホン酸、シリカゲル、アルミナ、硫酸、無水ショウノウスルホン酸等である。中でも、得られるナフトピラン誘導体の収率を考慮すると、p−トルエンスルホン酸(水和物を含む)を使用することが好ましい。
【0101】
ナフトピラン誘導体を製造するに際し、酸触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、原料化合物1モルに対して、0.01〜20モル、好ましくは、0.02〜10モル、特に好ましくは、0.05〜2モルの割合で混合することが望ましい。
【0102】
(原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体の反応条件)
本発明において、原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体とを反応させるには、酸触媒の存在下に両原料化合物を混合すればよい。このとき、原料物質を効果的に接触させるために、溶媒を使用することが好ましい。反応溶媒としては、反応に対して不活性で、原料を溶解するものであれば特に制限されず、シクロヘキサン、ヘプタン、i−オクタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類、メチルエチルケトン等のケトン類等を使用することができる。
【0103】
反応温度は、室温〜200℃、特に70℃〜150℃とするのが好適であり、反応時間は、0.01時間〜48時間、特に、0.1時間〜24時間とすることが好適である。
【0104】
混合方法としては、原料化合物、プロパルギルアルコール誘導体、酸触媒、反応溶媒のすべてを反応容器に仕込んでから攪拌混合する方法、原料化合物、プロパルギルアルアルコール誘導体、反応溶媒の混合液に酸触媒を加えて攪拌混合する方法、酸触媒、反応溶媒の混合溶液に、原料化合物とプロパルギルアルコール誘導体(反応溶媒に溶解したものでも良い)を加えて攪拌混合する方法等、公知の方法が特に制限なく採用できる。
【0105】
反応終了後は、先ずは、炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を加えて分液することにより、酸触媒を分離除去する。次いで、有機層を回収し、溶媒を除去することにより目的物を単離する事ができる。また、有機層に原料のいずれかが残存する場合には、例えば、カラムクロマトグラフ法や再結晶等の方法により精製することで、目的物であるナフトピラン誘導体を純度99%以上で得ることができる
(ナフトピラン誘導体)
以上のような方法で反応させ、精製することにより、ナフトピラン誘導体を製造することができる。中でも、前記一般式(4)で示されるプロパルギルアルコール誘導体を使用した場合には、下記一般式(3)
【0106】
【化16】

【0107】
(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義であり、
、R、a、及びbは、前記一般式(2)におけるものと同義である。)
で示されるナフトピラン誘導体を製造することができる。
【0108】
以上の通り、上記条件によれば、原料化合物とアルデヒド誘導体との反応により得られたナフトピラン誘導体と同じナフトピラン誘導体を合成することができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0110】
実施例1
(原料化合物の合成:1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレンの合成)
下記式(8)
【0111】
【化17】

で表される2,3−ジメチルフラン10g(0.104mol)、マグネシウム2.5g(0.104mol)をテトラヒドロフラン(THF)(100ml)に溶解し、55℃に加熱した。次いで、反応溶液に、2−ブロモフルオロベンゼン17.3g(0.099mol)/THF(100ml)を添加し、55℃で2時間反応を行った。反応終了後、トルエン(100ml)、pHが7の水(100ml)を加えて3回水洗を行った。水洗後の水のpHは1回目が9、2回目が8、3回目が7であり、反応系が酸性条件下になっていないことを確認した。その後、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行うことにより、
下記式(9)
【0112】
【化18】

で示される1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン13.8g(収率81%)を得た。
【0113】
(同定結果)
NMR:H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)1.78−1.80(s×2,6H、CH3),5.54(s,1H、Ar),6.48(s,1H、Ar),6.96−6.98(m,2H、Ar),7.16−7.17(m,2H、Ar)。
NMR:13H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)12.7,13.6,80.8,118.4,119.1,124.5,124.9,136.3,151.1,151.2,154.4。
IR:3000−3700cm−1未検出。
【0114】
実施例2
(ナフトピラン誘導体の合成:2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランの合成)
実施例1で得られた1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン188mg(1.09mmol)/トルエン(5.5ml)溶液に、
下記式(10)
【0115】
【化19】

で示される、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール380mg(1.42mmol)を加え、95℃〜100℃に加熱した。反応溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物10.6mg(0.056mmol)を加え、6時間還流した。反応終了後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液(5ml)で洗浄を行い、次いで、水(5ml)で3回洗浄を行った。溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行い、トルエン/イソプロピルアルコール(IPA)で再結晶することにより、
下記式(11)
【0116】
【化20】

で示される2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピラン160mg(収率:34.7%)を得た。
【0117】
実施例3
(ナフトピラン誘導体の合成:2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランの合成
実施例2において、酸触媒として使用したp−トルエンスルホン酸一水和物に代えて、同じモル数の無水ショウノウスルホン酸を使用した以外は、実施例2と同様の操作を行った。2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピラン86mg(収率:18.6%)を得た。
【0118】
実施例4
(ナフトピラン誘導体の合成:2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランの合成)
実施例1で得られた1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン188mg(1.09mmol)/トルエン(5.5ml)溶液に、
下記式(12)
【0119】
【化21】

で示される、3,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロペナール380mg(1.42mmol)、フェニルボロン酸無水物138mg(0.45mmol)、プロピオン酸40mg(0.54mmol)を加え、6時間還流した。反応終了後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液(5ml)で洗浄を行い、ついで、水(5ml)で3回洗浄を行った。溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行い、トルエン/IPAで再結晶することにより、2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピラン460mg(収率:100%)を得た。
【0120】
実施例5
(ナフトピラン誘導体の合成:2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランの合成)
実施例1で得られた1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン188mg(1.09mmol)を室温(23℃)下、1週間放置した。この室温で1週間放置した1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレンを使用した以外は、実施例4と同様の操作を行った。得られた2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランは、収量435mg(収率95%)であった。
【0121】
実施例6
(原料化合物の合成:1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレンの合成)
下記式(13)
【0122】
【化22】

で示される3−イソプロピルフラン10g(0.091mol)、マグネシウム2.2g(0.091mol)をTHF(100ml)に溶解し、55℃に加熱した。反応溶液に、2−ブロモフルオロベンゼン15.1g(0.086mol)/THF(100ml)を添加し、55℃で2時間反応を行った。反応終了後、トルエン(100ml)、pHが7の水(100ml)を加えて3回水洗を行った。水洗後の水のpHを確認したところ、1回目が9、2回目が8、3回目が7であり、反応系が酸性条件下になっていないことを確認した。その後、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行うことにより、
下記式(14)
【0123】
【化23】

で示される1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン12.8g(収率80%)を得た。
【0124】
(同定結果)
NMR:H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)1.11(s×2,6H、CH),2.52(s,1H、CH(CH32),5.56(s,1H、Ar),5.64(s,1H、Ar),5.71(s,1H、Ar),6.96−6.98(m,2H、Ar),7.16−7.17(m,2H、Ar)。
NMR:13H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)20.4,27.0,84.3,85.0,117.4,118.1,125.5,125.9,135.3,150.1,150.2,155.4。
IR:3000−3700cm−1未検出。
【0125】
実施例7
(ナフトピラン誘導体の合成:10−イソプロピル−3,3−ジフェニル−2Hナフト[1,2−b]ピランの合成)
実施例6で得られた1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン6.4g(0.034mol)/トルエン(55ml)溶液に、
下記式(15)
【0126】
【化24】

で示される1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール7.2g(0.034mol)を加え、95℃〜100℃に加熱した。反応溶液にp−トルエンスルホン酸320mg(1.7mmol)を加え、6時間還流した。反応終了後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液(100m)で洗浄を行い、次いで水(100ml)で3回洗浄した。有機層を濃縮し、これをカラムクロマトグラフ法により精製し、トルエン/IPAで再結晶して、
下記式(16)
【0127】
【化25】

で示される10−イソプロピル−3,3−ジフェニル−2Hナフト[1,2−b]ピラン
を1.3g(収率:10%)で得た。
【0128】
実施例8
(ナフトピラン誘導体の合成:10−イソプロピル−3,3−ジフェニル−2Hナフト[1,2−b]ピランの合成)
実施例6で得られた1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン6.4g(0.034mol)/トルエン(55ml)溶液に、
下記式(17)
【0129】
【化26】

【0130】
で示される3,3−ジフェニルプロペナール7.2g(0.034mol)、フェニルボロン酸無水物4.3g(0.014mol)、プロピオン酸1.0g(0.013mol)を加え、6時間還流した。反応終了後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄を行い、次いで、水(100ml)で3回洗浄を行った。有機層を濃縮し、これをカラムクロマトグラフ法により精製し、トルエン/IPAで再結晶することにより、10−イソプロピル−3,3−ジフェニル−2Hナフト[1,2−b]ピランを5.5g(収率:43%)で得た。
【0131】
実施例9
(原料化合物の合成:1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレンの合成)
下記式(18)
【0132】
【化27】

で示される3−メチルフラン10g(0.122mol)、マグネシウム3.0g(0.122mol)をTHF(100ml)に溶解し、55℃に加熱した。反応溶液に、2−ブロモ−3,5−ジメトキシフルオロベンゼン27.1g(0.116mol)/THF(100ml)を添加し、55℃で2時間反応を行った。反応終了後、トルエン(100ml)、pHが7の水(100ml)を加えて3回水洗を行った。水洗後の水のpHを確認したところ、1回目が9、2回目が8、3回目が7であり、反応系が酸性条件下になっていないことを確認した。その後、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行うことにより、
下記式(19)
【0133】
【化28】

で示される1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,2−ジヒドロナフタレン20.2g(収率80%)を得た。
【0134】
(同定結果)
NMR:H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)1.71(s,3H、CH),3.72(s,3H、OCH3),3.76(s,3H、OCH3),5.55(s,1H、Ar),5.63(s,1H、Ar),5.73(s,1H、Ar),6.13(s,1H、Ar),6。17(s,1H、Ar)。
NMR:13H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)16.0,56.0,56.3,79.5,85.0,107.4,108.1,116.2,123.4,135.5,135.9,155.3,156.1。
IR:3000−3700cm−1未検出。
【0135】
実施例10
(ナフトピラン誘導体の合成:6,8−ジメトキシ−10−メチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−2Hナフト[1,2−b]ピランの合成)
実施例6で得られた1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレン10.1g(0.046mol)/トルエン(55ml)溶液に、
下記式(20)
【0136】
【化29】

で示される1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール13.0g(0.046mol)を加え、95℃〜100℃に加熱した。反応溶液にp−トルエンスルホン酸0.43g(2.3mmol)を加え、6時間還流した。反応終了後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄を行い、次いで水(100ml)で3回洗浄した。有機層を濃縮し、これをカラムクロマトグラフ法により精製し、トルエン/IPAで再結晶して、
下記式(21)
【0137】
【化30】

で示される6,8−ジメトキシ−10−メチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−2Hナフト[1,2−b]ピラン
を2.22g(収率:10%)で得た。
【0138】
実施例11
(ナフトピラン誘導体の合成:6,8−ジメトキシ−10−メチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−2Hナフト[1,2−b]ピランの合成)
実施例6で得られた1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,2−ジヒドロナフタレン10.1g(0.046mol)/トルエン(55ml)溶液に、
下記式(22)
【0139】
【化31】

【0140】
で示される3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロペナール13.0g(0.046mol)、フェニルボロン酸無水物5.7g(0.018mol)、プロピオン酸1.7g(0.023mol)を加え、6時間還流した。反応終了後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄を行い、次いで、水(100ml)で3回洗浄を行った。有機層を濃縮し、これをカラムクロマトグラフ法により精製し、トルエン/IPAで再結晶することにより、6,8−ジメトキシ−10−メチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−2Hナフト[1,2−b]ピランを9.5g(収率:43%)で得た。
【0141】
参考例1
(ナフトール誘導体の合成:3,4−ジメチル−1−ナフトールの合成)
2,3−ジメチルフラン20g(0.208mol)、マグネシウム5.0g(0.208mol)をTHF(200ml)に溶解し、55℃に加熱した。反応溶液に、2−ブロモフルオロベンゼン34.6g(0.198mol)/THF(200ml)を添加し、55℃で2時間反応を行った。反応終了後、確実にナフトール誘導体を得るために、該反応溶液に18質量%塩酸を添加し、室温で1時間攪拌した。次いで、反応溶液をpH7の水(100ml)で3回洗浄を行った。1回目の洗浄により得られた水のpH1であり、反応系が酸性条件下になっていたことを確認した。さらに、pH7の水で行い、洗浄により得られる水のpHが6になるまで洗浄を繰り返した。その後、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行うことにより、
下記式(23)
【0142】
【化32】

で示される3,4−ジメチル−1−ナフトール28.3g(収率:83%)で得た。
【0143】
(同定結果)
NMR:H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)2.42(s,1H、CH3),2.51(s,3H、CH3),5.02(s,1H、OH),6.67(s,1H、Ar),7.42(t,J =7.0,1H、Ar),7.51(t,J =8.0,1H、Ar),7.97(d,J =8.5,1H、Ar),8.14(d,J =8.0,1H、Ar)。
NMR:13H−NMR(500Hz,CDCl3,J in Hz)14.0,20.7,111.8,121.8,123.2,123.6,123.8,123.9,126.3,133.1,133.9,149.1。
IR:3000−3700cm−1にピーク有。
【0144】
参考例2
(ナフトピラン誘導体の合成:2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランの合成)
比較例1で得られた3,4−ジメチル−1−ナフトール25g(0.145mol)/トルエン(625ml)溶液に、3,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロペナール42.8g(0.160mol)、フェニルボロン酸無水物17.9g(0.058mol)、プロピオン酸5.4g(0.073mol)を加え、10時間還流した。反応終了後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄を行い、ついで、水(100ml)で3回洗浄を行った。溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行い、トルエン/IPAで再結晶することにより、2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピラン(57.7g、収率:94%)を得た。
【0145】
参考例3
(ナフトピラン誘導体の合成:2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランの合成)
参考例1で合成した3,4−ジメチル−1−ナフトール(1g、5.8mmol)を室温(23℃)下で1週間放置した。この室温で1週間放置した3,4−ジメチル−1−ナフトール(1g、5.8mmol)/トルエン(50ml)溶液に、3,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロペナール1.71g(6.4mmol)、フェニルボロン酸無水物720mg(2.3mmol)、プロピオン酸220mg(2,9mmol)を加え、10時間還流した。反応終了後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液(10ml)で洗浄を行い、ついで、水(10ml)で3回洗浄を行った。溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフ法で精製を行い、トルエン/IPAで再結晶することにより、2,2−ビス−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルナフト−[1,2−b]ピランを収量1.15g(収率47%)で得た。
【0146】
以下、実施例4、実施例5、および参考例2、参考例3の結果を表1にまとめた。これら例を比較することにより、室温で1週間放置した原料化合物、およびナフトール誘導体を使用することにより、得られるクロメン化合物の収率の変化を比較することができる。
表1に示す通り、本発明の原料化合物は、ナフトール誘導体と比較して、室温で1週間保存した後も、得られるナフトピラン誘導体の収率の低下が少ない。
【0147】
【表1】

【0148】
実施例12(原料化合物の保存安定性の評価)
実施例1、6、9で得られた原料化合物の保存安定性を評価した。工業的な生産においては、カラムクロマトグラフィーによる精製を行わないで、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体と反応させる場合もある。そのため、原料化合物の製造において、反応終了後、水洗した後、溶媒を濃縮した状態のものを室温(23℃)で放置した場合の原料化合物の残存率をHPLC(高速液クロマトグラフィー)により評価した。参考として、参考例1で得られた3,4−ジメチル−1−ナフトールも同様に評価した。結果を表2に示す。
【0149】
【表2】

【0150】
表2から明らかな通り、本発明の原料化合物は、ナフトール誘導体と比較して、室温で2週間放置しても、殆んど分解することがなく、安定な化合物であることが分かった。また、ナフトール誘導体である3,4−ジメチル−1−ナフトールは、1週間の放置で残存率が大きく減少すると共に着色が見られた。一方、本発明の原料化合物である1,4−エポキシ−1,2−ジメチル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−イソプロピル−1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−エポキシ−2−メチル−6,8−ジメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレンは、2週間放置しても着色が見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基である。)
で示される化合物と、アルデヒド誘導体、又はプロパルギルアルコール誘導体とを反応させることを特徴とするナフトピラン誘導体の製造方法。
【請求項2】
アリールボロン酸誘導体の存在下、前記一般式(1)で示される化合物と、前記アルデヒド誘導体として
下記一般式(2)
【化2】

(式中、
、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
a及びbは、それぞれ、1〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるアルデヒド誘導体とを反応させて、
下記一般式(3)
【化3】

(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義であり、
、R、a、及びbは、前記一般式(2)におけるものと同義である。)
で示されるナフトピラン誘導体を製造することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸触媒存在下、前記一般式(1)で示される化合物と、前記プロパルギルアルコール誘導体として
下記一般式(4)
【化4】

(式中、
、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基であり、
a及びbは、それぞれ、1〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるプロパルギルアルコール誘導体とを反応させて、
下記一般式(3)
【化5】

(式中、
1、R、R、R、R、及びRは、前記一般式(1)におけるものと同義であり、
、R、a、及びbは、前記一般式(4)におけるものと同義である。)
で示されるナフトピラン誘導体を製造することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(1A)
【化6】

(式中、
1A、及びR2Aは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アラルコキシ基、又はアラルキル基であり、
、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、アラルキル基、又はアリール基である。)
で示される化合物。

【公開番号】特開2010−248159(P2010−248159A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102164(P2009−102164)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】