説明

ナルメフェン塩酸塩二水和物

本発明は、ナルメフェン塩酸塩二水和物、ナルメフェン塩酸塩二水和物を製造する方法、ナルメフェン塩酸塩二水和物を含む医薬組成物、およびナルメフェン塩酸塩脱水物を投与することを含む治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、経口剤形のための、ナルメフェン塩酸塩の新規な非吸湿性形態、すなわち、ナルメフェン塩酸塩二水和物、およびその生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナルメフェンは、投与されたオピオイドアゴニスト、およびオピオイド系からの内在的に生成されるアゴニストの両方の薬理作用を阻害することができる公知のオピオイド受容体アンタゴニストである。ナルメフェンのアンタゴニストとしての臨床有用性は、中枢神経系および呼吸器系において観察されることが多い、うつを含めた、これらのオピオイドアゴニストの作用を迅速(および選択的)に逆転させるその能力に由来する。
【0003】
ナルメフェンは、アルコール依存の管理における使用のために主に開発されてきたものであり、飲酒が差し迫っていると患者が思うときに(飲酒の約1〜2時間前)、摂取した10〜40mgの用量で良好な作用を示した(Karhuvaaraら、Alcohol. Clin. Exp. Res.、(2007)、第31巻、第7番、1179〜1187頁(非特許文献1))。さらに、ナルメフェンはまた、病的賭博および買い物中毒(addiction to shopping)などの他の嗜癖の治療のために研究されてきた。これらの開発プログラムおよび試験において、ナルメフェンは、例えば、非経口液(Revex(商標))として使用されてきた。
【0004】
ナルメフェンは、オピエートアンタゴニストであるナルトレキソンと構造が同様のオピエート誘導体である。ナルトレキソンと比べたナルメフェンの利点には、より長い半減期、より良好な経口バイオアベイラビリティー、および用量依存的な肝臓毒性が観察されないことが含まれる。
【0005】
ナルメフェンは、ナルトレキソンの6位におけるケトン基をメチレン(CH)基で置換することによってナルトレキソンと異なり、これによってμ−オピオイド受容体への結合親和性が相当に増加する。ナルメフェンはまた、他のオピオイド受容体(κおよびσ受容体)に対して高親和性を有し、3種の受容体全てを遮断するその能力のために、「ユニバーサルアンタゴニスト(universal antagonist)」として公知である。
【0006】
ナルメフェンは、Hanhら、(J. Med. Chem.、18、259〜262頁(1975)(非特許文献2)、Mallinckrodt(特許文献1)、およびMeltznerら(特許文献2)によって記載された方法によって製造することができる。
【0007】
上記の方法を使用することによって、ナルメフェンの遊離塩基が得られ、従来の方法を使用することによって、それを引き続いて塩酸塩に変換することができる。
【0008】
Brittain(Analytical Profiles of Drug Substances and Excipients(1996)、第24巻、351〜395頁)(非特許文献3)によれば、ナルメフェン塩酸塩は、水から再結晶することができ、必然的に一水和物の結晶相からなる純粋な原薬を生じさせる。同じ概説において、ナルメフェン塩酸塩の一水和物相は、外来性水分の1%までのみを吸収することができるため、本質的に非吸湿性として記載されている。
【0009】
本発明の本発明者らは、文献に反して、一水和物としてのナルメフェン塩酸塩が吸湿性であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,751,307号
【特許文献2】米国特許第4,535,157号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Karhuvaaraら、Alcohol. Clin. Exp. Res.、(2007)、第31巻、第7番、1179〜1187頁
【非特許文献2】Hanhら、(J. Med. Chem.、18、259〜262頁(1975)
【非特許文献3】Brittain(Analytical Profiles of Drug Substances and Excipients(1996)、第24巻、351〜395頁)
【非特許文献4】Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第4改訂版(DSM-IVTR)(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版編集、American Psychiatric Publishing、2000)
【非特許文献5】Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams & Wilkins(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、ナルメフェンの新規な安定的で非吸湿性の水和物形態およびその製造方法を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、好ましくは結晶形態の、式
【0014】
【化1】

によって表されるナルメフェン塩酸塩二水和物に関する。前記ナルメフェン塩酸塩二水和物は、非吸湿性である。
【0015】
本発明はさらに、ナルメフェン塩酸塩二水和物を製造する2種の方法に関する。
方法(I):純水などの水によって例示される水溶液中の再スラリー化による、ナルメフェン塩酸塩二水和物へのナルメフェン塩酸塩の変換、および
方法(II):純水などの水によって例示される水溶液中のナルメフェン塩酸塩の再結晶。
【0016】
再スラリー化方法(方法I)は、
(1)ナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)と、純水などの水によって例示される水溶液とを混合するステップ、
(2)場合により、混合物を加熱するステップ、
(3)場合により、混合物を蒸留するステップ、
(4)変換が完了するまで、例えば1時間未満、約1時間、少なくとも1時間、混合物を撹拌するステップ、および
(5)形成された固体を単離するステップ、
を含む。
【0017】
再結晶化方法(方法II)は、
(a)ナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)と、純水などの水によって例示される水溶液とを混合するステップ、
(b)混合物を加熱し、実質的に均一な溶液を得るステップ、
(c)場合により、(b)で得た混合物を蒸留するステップ、
(d)ステップ(b)または(c)で得た溶液を冷却し、引き続いてナルメフェン塩酸塩で種晶添加するステップ、および
(e)形成された固体を単離するステップ、
を含む。
【0018】
本発明のさらなる態様(方法III)は、
(i)場合により、方法(I)または(II)から得た母液を蒸留するステップ、
(ii)ステップ(i)において得た、または方法(I)もしくは(II)からの母液を塩基性化するステップ、
(iii)適切な有機溶媒で混合物を抽出するステップ、
(iv)塩化水素を加えるステップ、および
(v)形成された固体を単離するステップ、
を含む、方法IおよびIIからの未使用のナルメフェンを回収する方法である。
【0019】
本発明はさらに、ナルメフェン塩酸塩二水和物を含む医薬組成物、医薬品におけるナルメフェン塩酸塩二水和物の使用、および特に、アルコール依存症の治療のためのナルメフェン塩酸塩二水和物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ナルメフェン塩酸塩二水和物のTGAサーモグラムを示す。y軸は、質量のパーセントを示し、X軸は温度(℃)を示す。
【図2】40℃で行ったナルメフェン塩酸塩二水和物のDVS実験を示す(乾燥プロット)。第1のy軸(左)は、無水物に対する質量の変化(%)を示し、他のy軸(右)は、目標相対湿度(RH)(%)を示し、一方、x軸は、時間(分)を示す。細線は、標的RHの変化を示し、太線は、質量に関する変化を示す。
【図3】ナルメフェン塩酸塩二水和物のX線粉末ディフラクトグラムを示す。y軸は、強度(カウント)を示し、x軸は、2θ角度(°)を示す。
【図4】ナルメフェン塩酸塩一水和物のTGAサーモグラムを示す。y軸は、質量のパーセントを示し、x軸は、温度(℃)を示す。
【図5】40℃で行ったナルメフェン塩酸塩一水和物のDVS実験を示す(乾燥プロット)。第1のy軸(左)は、無水物に対する質量の変化(%)を示し、他のy軸(右)は、目標相対湿度(RH)(%)を示し、一方、x軸は、時間(分)を示す。細線は、標的RHの変化を示し、太線は、質量に関する変化を示す。
【図6】ナルメフェン塩酸塩一水和物のX線粉末ディフラクトグラムを示す。y軸は、強度(カウント)を示し、x軸は、2θ角度(°)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、下記の式によって表されるナルメフェン塩酸塩二水和物に関する。
【0022】
【化2】

【0023】
ナルメフェン塩酸塩の二水和物形態は、非吸湿性であるという点で特に有利である。この非吸湿性の特徴の結果として、物理学的性質をより容易に制御することができる。固体単位剤形、例えば、錠剤またはチュアブル錠およびカプセル剤を含めた経口的に投与可能な形態などの固体剤形を調製するときに、これは非常に重要である。
【0024】
医薬品産業において周知であるように、吸湿性生成物の処理は、貯蔵および処理自体の両方のための湿度制御チャンバーの使用を必要とする。さらに、最終の吸湿性生成物は、湿度による安定性の問題を回避するために、密封したブリスター中にパックしなくてはならない。これらの不都合は、ナルメフェン塩酸塩を非吸湿性二水和物として使用することによって避けられる。
【0025】
ナルメフェン塩酸塩二水和物は、その含水率において非吸湿性および安定的であることによって特徴付けられる。化合物は、10%〜95%の相対湿度(RH)に曝露されたときに、水を吸収も失いもしない。
【0026】
本発明の例1に示されるように、DVS(動的水蒸気吸着)実験は、25℃および40℃で行った。結果は、95%RHでさえも、ナルメフェン塩酸塩二水和物は水を吸収しなかったことを示した。これと対照的に、例2に示されるように、一水和物としてのナルメフェン塩酸塩は、95%RHおよび40℃に曝露されたときに、約2.5%の水を吸収した。
【0027】
さらに、例2における結果によって、二水和物と対照的に、一水和物形態は、周囲の湿度によって含水率が変化し、一水和物形態は、50%超のRHでより高い含水率を伴う新しい構造に変化したことが示された。
【0028】
したがって、上記定義のように非吸湿性であることがナルメフェン塩酸塩二水和物の重要な特徴である。したがって、本発明は、非吸湿性であるナルメフェン塩酸塩二水和物に関し、25℃で95%RHに曝露されたときに、1%未満(0.5%未満など、0.3%未満など)の水分が吸収されることを意味する。
【0029】
ナルメフェン塩酸塩二水和物は、CuKα1線を使用して測定すると、角度8.99、10.63、15.24、16.55および17.20°2θ(±0.1°2θ)におけるX線反射、および約8〜約9%(約8.7%など)の含水率を有することによって特徴付けられる結晶性固体であり、一方、ナルメフェン塩酸塩の一水和物は、角度7.39、11.33、11.52、17.70および24.27°2θ(±0.1°2θ)におけるX線反射、および周囲の相対湿度に依存した4〜7%の含水率によって特徴付けられる結晶性固体である。
【0030】
本発明はまた、医薬の製造におけるナルメフェン塩酸塩二水和物の使用に関する。
【0031】
特に、本発明は、医薬の製造におけるナルメフェン塩酸塩二水和物の使用に関し、ナルメフェン塩酸塩二水和物は、医薬剤形、特に経口剤形、例えば、錠剤などの単一の単位固体剤形の少なくとも5%(w/w)(少なくとも10%(w/w)、少なくとも30%、少なくとも50%(w/w)など、少なくとも70%(w/w)、少なくとも90%(w/w)、少なくとも95%(w/w)、少なくとも99%(w/w)、または100%など)を構成する。ナルメフェン塩酸塩二水和物は特に、アルコール依存症の治療のための医薬の製造における使用に関する。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明は、例えば、医薬組成物(固体剤形、例えば、経口投与のための錠剤など)中の治療有効量のナルメフェン塩酸塩二水和物を、それを必要としている患者に投与することを含む、アルコール依存症を治療する方法に関する。
【0033】
「治療有効量」という用語は、患者に投与されると、有効な反応(すなわち、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって探究されている、組織、系、動物またはヒトの生物学的反応または医学的反応)を生じさせるのに十分な、化合物または医薬組成物の量/用量を意味する。「治療有効量」は、とりわけ、疾患およびその重症度、ならびに治療される患者の年齢、体重、健康状態および反応性によって変化する。さらに、「治療有効量」は、本発明の化合物を1種または複数の化合物と合わせる場合(所与の化合物の量がより低い(有効量以下など)の場合)には、変化し得る。
【0034】
「蒸留」という用語は、沸騰している液体混合物において混合物をそれらの揮発性の差異に基づいて分離する方法を意味する。部分真空などの真空をかけることは、このような分離方法の一例である。
【0035】
「化学的純度」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、したがって得られた化合物に不純物が混入している程度を意味する。したがって、少なくとも98%化学的に純粋な得られた化合物は、最大で2%の不純物を含む。化学的純度は、例えば、HPLCによって測定し得る。
【0036】
「アッセイ」という用語は、重量/重量パーセント(w/w%)として表す所望の物質の有効含量を意味する。
【0037】
「抽出」という用語は、遊離ナルメフェン塩基が水相から有機相に移される液−液抽出を意味する。
【0038】
「再スラリー化」という用語は、結晶性材料を溶媒または溶媒混合物に適当な温度で懸濁し、それによって結晶性材料を再び部分的に溶解、および部分的に結晶化し、このようにして所望の形態へのその変換、および/またはその精製が可能となる方法を意味する。
【0039】
KFとは、「カールフィッシャー滴定」を意味する。
【0040】
TGAとは、「熱重量分析」を意味する。
【0041】
DVSとは、「動的水蒸気吸着」を意味する。
【0042】
本発明において、「実質的に均一な溶液」という用語は、目に見える溶解していない材料を含有しない液体混合物を意味することを意図する。
【0043】
本発明において、「種晶添加(seeding)」という用語は、少量の結晶を加え、生成物の沈殿を開始させることを意味することを意図する。
【0044】
本発明の状況において、「非吸湿性」という用語は、25℃で95%RHに曝露されたときに、1%未満(0.5%未満など、0.3%w/w未満など)の水分が吸収されることを意味することを意図する。
【0045】
本発明の状況において、粒径は、実験の項の導入部において詳細が開示されているように、Malvern Mastersizer S機器を使用してレーザー回折によって決定する。
【0046】
好ましくは、医薬組成物中のナルメフェン塩酸塩二水和物の量は、約10mg〜約100mg(約10mg〜約60mg、約10mg〜約40mg、または約20mgなど)の量である。
【0047】
「アルコール依存症」という用語は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第4改訂版(DSM-IVTR)(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版編集、American Psychiatric Publishing、2000)(非特許文献4)において、同じ12月の期間におけるアルコールに関連する生活障害の7つの領域の3つ以上が存在することと定義される、当業者にとって一般に公知の用語である。これらの障害には、耐性、アルコールを中断したときまたは摂取を減らしたときの離脱症候群のエビデンス、肉体的または心理的問題のエビデンスにも関わらずアルコールの使用および再使用に非常に多くの時間を費やすことに関連する生活機能の潜在的な支障が含まれる。
【0048】
ナルメフェン塩酸塩二水和物を含む医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。
【0049】
固体医薬調製物の調製方法は、当技術分野で周知である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams & Wilkins(2005)(非特許文献5)を参照されたい。錠剤などの固体調製品は、活性成分を通常の担体(佐剤および/または希釈剤など)と混合し、引き続いて混合物を打錠機で圧縮することによって調製し得る。佐剤および/または希釈剤の非限定的例には、トウモロコシデンプン、ラクトース、滑石粉、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどが含まれる。任意の他の佐剤または添加物(着色剤、着香剤、および保存剤など)をまた使用し得るが、ただし、任意の他の佐剤または添加物は、活性成分と適合性である。したがって、本発明の医薬組成物は典型的には、有効量のナルメフェン塩酸塩二水和物および1種または複数の薬学的に許容可能な担体を含む。
【0050】
本発明によれば、ナルメフェン塩酸塩二水和物は、任意の適切な方法、例えば、経口または非経口で投与してもよく、このような投与のための任意の適切な形態、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤または溶液剤または分散剤(注射用)の形態で示し得ることが想定される。一実施形態において、ナルメフェン塩酸塩二水和物は好ましくは、錠剤またはカプセル剤として適切に固体医薬体の形態で投与される。
【0051】
本発明のさらなる態様は、ナルメフェン塩酸塩二水和物を得るための方法に関する。ナルメフェン塩酸塩二水和物は、下記で概説するように、方法(I)および(II)のいずれかによって得てもよい。
方法(I) 水溶液(純水などの水など)中の再スラリー化による、ナルメフェン塩酸塩二水和物へのナルメフェン塩酸塩の変換、および
方法(II) 水溶液(純水などの水など)中のナルメフェン塩酸塩の再結晶化
【0052】
本発明の一態様による、再スラリー化方法(方法(I))は、
(1)ナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)と、水溶液(純水などの水など)とを混合するステップ、
(2)場合により、混合物を加熱するステップ、
(3)場合により、混合物を蒸留するステップ、
(4)混合物を撹拌するステップ、および
(5)形成された固体を単離するステップ、
を含む。
【0053】
方法(I)の一実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水溶液中の再スラリー化によって、ナルメフェン塩酸塩二水和物に変換する。別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水中の再スラリー化によって、ナルメフェン塩酸塩二水和物に変換する。また別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、純水中の再スラリー化によって、ナルメフェン塩酸塩二水和物に変換する。
【0054】
ステップ(1)において使用する水溶液(純水などの水など)の比は、約0.5ml〜約4mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)(約1ml〜約2mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)など)、さらに好ましくは、約1.5mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)の範囲でよい。使用するナルメフェン塩酸塩は、ナルメフェンの任意の水和形態または溶媒和形態、あるいは水和形態および/または溶媒和形態の混合物(溶媒を伴うまたは伴わない)から選択することができる。一実施形態において、一水和物としてのナルメフェン塩酸塩を使用する。方法(I)の別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水和形態で使用する。別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、溶媒和形態で使用する。さらに別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水和溶媒和形態の混合物で使用する。
【0055】
方法(I)の一実施形態において、前記水和形態および/または溶媒和形態に含まれる溶媒は、アセトン、n−プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタンおよび水からなる群から選択される。一実施形態において、前記溶媒は、アセトンである。別の実施形態において、前記溶媒は、n−プロパノールである。また別の実施形態において、前記溶媒は、イソプロパノールである。また別の実施形態において、前記溶媒は、ジクロロメタンである。また別の実施形態において、前記溶媒は、水である。
【0056】
ステップ(2)における加熱は、ステップ(b)において得た混合物の溶解速度を増加させるために、ある条件下で有益であり得る任意選択のステップである。加熱温度は、状況によって異なり得る。ある状況下にて、混合は、室温(20〜25℃)で効率的に行われる。一実施形態において、ステップ(2)における加熱は、約50℃までであることが想定される。別の実施形態において、ステップ(2)における加熱は、50℃以下までである。別の実施形態において、ステップ(2)における加熱は、約20℃〜約40℃までである。また別の実施形態において、ステップ(2)における加熱は、約30℃までである。
【0057】
ステップ(2)およびステップ(3)は、撹拌を伴い、または伴わずに行い得る。
【0058】
ステップ(3)において蒸留を行って、有機溶媒(混合物中に存在する場合)を除去し得る。蒸留は、真空をかけることによって行い得る。
【0059】
ステップ(4)における撹拌は、約0℃〜約50℃の温度(45℃など、20℃〜約40℃など)で行い得る。一実施形態において、混合物を1時間未満撹拌する。別の実施形態において、混合物を約1時間撹拌する。また別の実施形態において、混合物を少なくとも1時間撹拌する。
【0060】
固体は、水中などでの生成物の溶解性を減少させるため、および収率を増加させるために、約0〜25℃の範囲内の温度(0〜20℃など)、さらに好ましくは0〜5℃の範囲で単離することができる。固体を濾過によって単離し、適切な溶媒で洗浄し得る。洗浄のための溶媒には、水、および水/有機溶媒の混合物または純粋な有機溶媒が含まれる。好ましくは、水が使用され、さらなる実施形態においては、事前に冷却された水が好ましい。有機溶媒を使用するとき、クラス2または3の溶媒(ICH Q3C(R4)ガイドライン)が好ましい。一実施形態において、クラス3の溶媒(アセトンおよび酢酸エチルなど)を使用する。一実施形態において、アセトンを使用する。別の実施形態において、酢酸エチルを使用する。
【0061】
生成物は、40℃未満、さらに好ましくは、25〜35℃の範囲の温度で、真空下で乾燥することができる。
【0062】
得られた化合物は、少なくとも98%化学的に純粋(少なくとも99%化学的に純粋、または少なくとも99.5%化学的に純粋など)であることが想定される。
【0063】
本発明の一態様による、再結晶化方法(方法(II))は、
(a)ナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)と、水溶液(純水などの水など)とを混合するステップ、
(b)混合物を加熱して、実質的に均一な溶液を得るステップ、
(c)任意選択で、ステップ(b)で得た混合物を蒸留するステップ、
(d)ステップ(b)または(c)で得た溶液を冷却し、引き続いてナルメフェン塩酸塩で種晶添加するステップ、および
(e)形成された固体を単離するステップ、
を含む。
【0064】
方法(II)の一実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水溶液中の再結晶化によって、ナルメフェン塩酸塩二水和物に変換する。別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水中の再スラリー化によって、ナルメフェン塩酸塩二水和物に変換する。また別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、純水中の再スラリー化によって、ナルメフェン塩酸塩二水和物に変換する。
【0065】
ステップ(a)に使用する水溶液(純水などの水など)の量は、約0.9ml〜約4mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)(約1ml〜約2mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)など)、または約1.5mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)の範囲でよい。使用するナルメフェン塩酸塩は、ナルメフェンの任意の水和形態または溶媒和形態、あるいは水和形態および/または溶媒和形態の混合物(溶媒を伴う、または伴わない)から選択することができる。
【0066】
方法(II)の一実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水和形態で使用する。別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、溶媒和形態で使用する。さらに別の実施形態において、ナルメフェン塩酸塩を、水和溶媒和形態の混合物で使用する。
【0067】
方法(II)の一実施形態において、前記水和形態および/または溶媒和形態に含まれる溶媒は、アセトン、n−プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタンおよび水からなる群から選択される。一実施形態において、前記溶媒は、アセトンである。別の実施形態において、前記溶媒は、n−プロパノールである。また別の実施形態において、前記溶媒は、イソプロパノールである。また別の実施形態において、前記溶媒は、ジクロロメタンである。また別の実施形態において、前記溶媒は、水である。
【0068】
懸濁液は、実質的に均一な溶液が得られるまで加熱し得る(すなわち、溶液)。ステップ(b)において加熱を行って、約50℃〜約100℃の温度(約50℃〜約90℃、または約70℃〜約85℃など)に達し得る。
【0069】
次いで、ステップ(c)において、部分真空をかけて微量の有機揮発性物質(存在する場合)を除去し得る。
【0070】
ステップ(b)またはステップ(c)から得た溶液は、場合により、ステップ(d)に進む前に(例えば、0.65μmカートリッジによって)濾過して、異物を除去し得る。
【0071】
ステップ(d)において、溶液を40℃〜約50℃の温度に冷却し、種晶添加し得る。本発明の一実施形態において、種晶添加は、40℃〜50℃の温度で行われる。種晶添加は、ナルメフェン塩酸塩二水和物の結晶で行う。ナルメフェンの種晶添加材料は、本発明の一実施形態において、上記の再スラリー化方法(I)によって得てもよい。
【0072】
ステップ(d)において加える種結晶の量は、約1/2000(w/w)からのナルメフェン塩酸塩の種結晶/ステップ(a)において加えるナルメフェン塩酸塩(約1/1000(w/w)または1/200からのナルメフェン塩酸塩の種結晶/ステップ(a)において加えるナルメフェン塩酸塩など)でよい。
【0073】
急速冷却勾配(cooling ramp)などの適当な冷却勾配、および激しい撹拌などの適当な撹拌が、既に形成されている結晶がさらに成長することを妨げ、明確(well−defined)で細く、比較的小さな粒径を有する生成物が提供されることを助長する。種晶添加温度から単離温度への冷却は、数時間以内、さらに好ましくは、1時間以内で行い得る。ステップ(d)において得た種晶添加された混合物はしたがって、以下のステップ:
(d’)約45分以上の時間に亘るなどの約0〜5℃の温度に混合物をさらに冷却するステップ、および
(d’’)その後、ステップ(e)によって形成された固体を単離する前に、混合物を、約0〜5℃の温度に、例えば約45分以上維持してもよいステップ、
を含む、冷却(迅速な冷却など)にさらに供してもよい。
【0074】
ステップ(e)において形成される固体は、単離し得る。固体は、水中の生成物の溶解性を低下させ、それによって収率を増加させるために、約0〜20℃の範囲内の温度、さらに好ましくは0〜5℃の範囲内の温度で単離することができる。固体を濾過によって単離し、適切な溶媒で洗浄し得る。洗浄のための溶媒には、水、および水/有機溶媒の混合物または純粋な有機溶媒が含まれる。一実施形態において、洗浄のための溶媒は、アセトンおよび水からなる群から選択される。一実施形態において、アセトンを使用する。別の実施形態において、アセトンおよび水の混合物。また別の実施形態において、水を使用する。さらなる実施形態において、使用する水は、事前に冷却された水である。洗浄のために有機溶媒を使用するとき、クラス2または3の溶媒(ICH Q3C(R4)ガイドライン)が好ましく、クラス3の溶媒(アセトンおよび酢酸エチルなど)がさらに好ましい。一実施形態において、酢酸エチルを使用する。
【0075】
生成物は、40℃未満、さらに好ましくは25〜35℃の範囲の温度にて真空下で乾燥することができる。
【0076】
得られた化合物は、少なくとも98%化学的に純粋(少なくとも99%化学的に純粋、または少なくとも99.5%化学的に純粋など)であると想定される。
【0077】
上記の方法(II)によって得たナルメフェン塩酸塩二水和物は、下記の粒度分布を有することがさらに想定される。400μm以下のD90、および200μm以下のD50、および50μm以下のD10、および2.5以下のD90/D50比(式中、D「XX」(XXは、10、50または90として示す)は、粒子の「XXパーセント」(容量で示す)が表示値より下の直径を有する値と定義される)。したがってD10については、粒径の10パーセント(容量で)が、50μmと等しいまたはそれ未満の直径を有する。
【0078】
母液からのナルメフェン塩酸塩の回収(方法III):
ナルメフェン塩酸塩は、水溶液(純水などの水など)中で非常に可溶性であり、したがってこの材料の一部は、母液中で失われる。未使用のナルメフェン塩酸塩を、上記で概説した方法IまたはIIから回収するために、以下:
(i)場合により、方法(I)または(II)から得た母液を蒸留するステップ、
(ii)ステップ(i)で得た、または方法(I)もしくは(II)からの母液を塩基性化するステップ、
(iii)適切な有機溶媒で混合物を抽出するステップ、
(iv)塩化水素を加えるステップ、および
(v)形成された固体を単離するステップ、
を含む、回収のための方法が開発された。
【0079】
ステップ(ii)において塩基性化を行い、有機または無機塩基を使用して8〜10の範囲のpH(8〜9など)とする。方法(III)の一実施形態において、ステップ(ii)における塩基性化は、水酸化アンモニウムで行う。
【0080】
抽出ステップ(iii)において、有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、エステル類、ケトン類、および好ましくは、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、酢酸エチル、2−ブタノン、よりさらに好ましくは、ジクロロメタンを含む群から選択し得る。一実施形態において、有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素である。別の実施形態において、有機溶媒は、エーテルである。別の実施形態において、有機溶媒は、エステル類の群から選択される。別の実施形態において、有機溶媒は、ケトン類の群から選択される。別の実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタンである。別の実施形態において、有機溶媒は、2−メチル−テトラヒドロフランである。別の実施形態において、有機溶媒は、酢酸エチルである。別の実施形態において、有機溶媒は、2−ブタノンである。
【0081】
ステップ(iii)で得た有機溶媒中のナルメフェン塩基の溶液を塩化水素で処理し、ナルメフェン塩酸塩を沈殿させる。
【0082】
ステップ(iv)において加えられる塩化水素の量は、使用する母液中のナルメフェンの量などの種々の要因によって決まるが、当業者には明らかであろう。ステップ(iv)において塩酸を混合物に加えた後、生成物が沈殿する。
【0083】
沈殿した固体は、方法IおよびIIについて記載したように単離し得る。
【0084】
得られた化合物は、少なくとも98%化学的に純粋(少なくとも99%化学的に純粋、または少なくとも99.5%化学的に純粋など)であることが想定される。
【実施例】
【0085】
本発明の状況において、化学的純度を、下記の条件を使用してHPLCによって測定する。
【0086】
クロマトグラフィー条件:
カラム: YMC Basic B-03-5、5μm、250×4.6mmまたは同等物
移動相A: 緩衝液
移動相B: メタノール
緩衝液: 1.1gのオクタンスルホン酸ナトリウム(FW216.28)を1Lの水 に溶解する。希釈したH3PO4でpHを3.8に調節する。
カラム温度: 35℃
検出器: 230nmでのUV
流量: 1.5ml/分
注入量: 20μl
分析時間: 50分

【表1】

【0087】
本発明の状況において、粒径は、レーザー送信機(LASER HELIUM−NEON−波長632nm)、光学系(300Fレンズ、範囲0.5〜900μm)、懸濁液のための測定セル(ビーム長さ2.4mm)および光ダイオード検出器で構成されているMalvern Mastersizer S機器を使用してレーザー回折によって決定する。
【0088】
鉱油(CAS8042−47)を分散剤として使用して、試料を分析する。
【0089】
実施例1
1.1a 二水和物の調製
二水和物は、下記のように調製した。
20gの粗ナルメフェン塩酸塩(化学的純度99.26%、アッセイ92.9%)を、24mlの水に懸濁させた。混合物を加熱し、固体は60〜65℃で完全に溶解した。溶液を70℃まで加熱し、その温度に15分間維持した。直線勾配を使用して、溶液を3時間で70℃から20℃に冷却した。
【0090】
ナルメフェン塩酸塩を、50℃で種晶添加として加えた。種晶は溶解せず、ナルメフェンは結晶化し始めた。冷却勾配が終了したとき、懸濁液を撹拌しながら20℃で2.5日維持した。固体を濾過し、アセトン(50ml)で洗浄した。湿った生成物を40℃にて一晩真空下で乾燥させ、13.2gのナルメフェン塩酸塩二水和物を得た(化学的純度99.74%、カールフィッシャー滴定で測定すると含水率8.54%w/w)。
【0091】
1.1b 二水和物の調製
20gの粗ナルメフェン塩酸塩(化学的純度97.2%、アッセイ82.6%)を、30mlの水に懸濁させた。混合物を加熱し、固体は80℃で完全に溶解した。有機揮発性物質を減圧蒸留によって除去した。溶液を50℃に冷却した。
【0092】
50℃で、ナルメフェン塩酸塩二水和物を、種晶添加として加えた。混合物を50℃で3時間維持し、次いで20℃に冷却した。懸濁液を撹拌しながら20℃で概ね2.5日維持した。固体を濾過し、アセトン(20ml)で洗浄した。湿った生成物を、30℃にて一晩真空下で乾燥させ、11.5gのナルメフェン塩酸塩二水和物を得た(化学的純度99.78%、カールフィッシャー滴定で測定すると含水率8.78%w/w)。
【0093】
1.2 二水和物の特性
TGA(図1)において、約10mgの試料を、オープンパン中で窒素流下にて10°/分で加熱した。サーモグラムは、室温で開始して、125〜150℃で終了して、約8.5%の重量減少を示す。
【0094】
DVS実験を、25℃および40℃で行った。曲線の形状は、2つの温度で同じであった。40℃での曲線を図2に示す。二水和物は、10〜95%の相対湿度に保つ。高い相対湿度での表面への吸着は、0.2%未満である。結晶水の脱離は、10%RH下でゆっくりと起こる。しかし、DVS曲線は、0%RHで乾燥させた後完全な再水和を示し、したがって結晶格子はこの処理によって保たれる。
【0095】
Cu Kα1線を使用して得た、ナルメフェン塩酸塩二水和物についてのX線粉末ディフラクトグラムを、図3に示す。ディフラクトグラムは、5〜40°2θの範囲にて反射モードで測定する。ディフラクトグラムは、8.99、10.63、15.24、16.55および17.20°2θ(±0.1°2θ)におけるXRPD反射によって特徴付けられる。
【0096】
実施例2
2.1a 一水和物の調製
25gのナルメフェン塩酸塩(化学的純度99.24、アッセイ84.1)を、32mlの水に懸濁させた。混合物を80℃に加熱した。真空をかけ、低沸点の有機溶媒を蒸留した。直線勾配を使用して、溶液を1時間で20℃に冷却した。懸濁液を撹拌しながら2時間維持し、次いで4℃に1時間でさらに冷却し、撹拌しながらこの温度にさらに1時間維持した。固体を濾過し、25mlのアセトンで洗浄した。湿った固体を、30℃にて一晩真空下で乾燥させ、13.5gのナルメフェン塩酸塩一水和物を得た(カールフィッシャー滴定で測定すると含水率4.74%w/w、収率61%)。
【0097】
2.1b 一水和物の調製
ジャケット付き反応器中に、ナルメフェン塩酸塩(72.3g)および水(100ml)を充填した。懸濁液を85℃に加熱し、溶液を得た。窒素流をかけた。溶液を60℃に概ね50分で冷却し、次いでこの温度に10分間保持した。生成物は、60℃で沈殿を始めた。懸濁液を55℃にさらに冷却し、55℃で10分間維持した。懸濁液を概ね1時間で8℃に冷却し、単離の前にその温度で30分間維持した。固体を濾過し、83mlのアセトンで洗浄した。固体を乾燥させ、48.6gのナルメフェン塩酸塩一水和物を得た。
【0098】
2.2 一水和物の特性
TGA(図4)において、約5mgの試料を、オープンパン中で窒素流下にて10°/分で加熱した。サーモグラムは、室温で開始して、100〜110℃で終了して、約4%の重量減少を示した。
【0099】
DVS実験を25℃および40℃で行った。曲線の形状は同じであった。40℃での曲線のみを示す(図5)。
【0100】
水和作用の水の大部分(4%)は、10%RHで吸収された。次いで、重量は、湿度と共に50%RHにて4.3%まで段階的に上昇し、しかし、60%RHで、重量は急に6.9%に上昇し、次いで95%RHで7.3%に再び段階的に上昇した。ここでの量は、乾燥状態に対する重量増加%として示し、したがって一水和物に相当する重量増加は4.8%であり、1.5水和物は、7.2%の増加に相当する。したがって、曲線によって、一水和物の含水率が一定ではなく、相対湿度と共に変化することが示された。
【0101】
Cu Kα1線を使用して得た、ナルメフェン塩酸塩一水和物についてのX線粉末ディフラクトグラム(図6)を、図6に示す。ディフラクトグラムは、5〜40°2θの範囲において反射モードで測定する。ディフラクトグラムは、7.39、11.33、11.52、17.70および24.27°2θ(±0.1°2θ)におけるXRPD反射によって特徴付けられる。
【0102】
実施例3
ナムレフェン塩酸塩二水和物の調製
粗ナルメフェン塩酸塩(7.67Kg、アッセイ93.9%)および水(8.6リットル)を、適切な反応器中に充填した。基質が完全に溶解するまで、懸濁液を80℃に加熱した。次いで、真空をかけ、有機溶媒を除去した。次いで、このように得られた溶液を0.65μmカートリッジで濾過し、次いで反応器およびパイプラインをすすぐために使用した水(2.1リットル)で希釈した。溶液を50℃に冷却し、7gのナルメフェン塩酸塩二水和物の種晶添加材料を加えた。混合物を効率的に撹拌しながら1時間で0〜5℃に冷却し、次いで撹拌しながらさらに1時間維持した。固体を濾過し、アセトンで洗浄した。湿った生成物を25℃にて真空下で乾燥させ、99.89%の化学的純度(HPLC)を有するナルメフェン塩酸塩二水和物(5.4Kg;収率73%)を得た。
【0103】
このように得られたナルメフェン塩酸塩二水和物の粒径を、Malvern Mastersizer S機器を使用してレーザー回折によって決定した。粒度分布を、下記の表において報告する。
【0104】
【表2】

【0105】
実施例4
ナルメフェン塩酸塩の回収
例3において得た母液を真空下で濃縮した。水酸化アンモニウムを、pH8〜9まで加えた。混合物を、30〜35℃の温度にてジクロロメタンで抽出した。有機相を分離し、25℃に冷却した。濃塩酸を加え、生成物を沈殿させた。固体を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、このようにして、98.9%の化学的純度を有する1.35KgのナルメフェンHClを得るが、ナルメフェンHClは実施例3において記載された手順を適用して二水和物に変換することができる。
【0106】
実施例5
再スラリー化によるナルメフェンHClからナルメフェンHCl二水和物への変換
50gのナルメフェンHCl(一水和物、アセトン溶媒和物および二水和物の混合物)を、50mlの水に室温で懸濁した。アセトンを除去するために、1時間真空をかけた。懸濁液を室温で2時間さらに撹拌した。固体を濾過し、真空下で30℃にて乾燥させ、39.9gの純粋なナルメフェンHCl二水和物を得た(カールフィッシャー滴定で測定すると含水率8.76%w/w)。
【0107】
実施例6
再スラリー化によるナルメフェンHCl二水和物へのナルメフェンHClの変換
3.6gのナルメフェンHCl一水和物を、室温で5mlの水に懸濁させた。懸濁液を室温で撹拌した。二水和物への変換は、1.5時間後に完了した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

によって表される化合物。
【請求項2】
ナルメフェンHCl二水和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
結晶形態である、請求項1または2のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項4】
結晶形態の化合物が、8.99においてピークを有する、Cu Kα1線を使用した2θ値のX線粉末回折スペクトルによって特徴付けられる、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
結晶形態の化合物が、10.63、15.24、16.55および/または17.20の1つまたは複数においてピークを有する、Cu Kα1線を使用した2θ値のX線粉末回折スペクトルによってさらに特徴付けられる、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
非吸湿性であり、したがって25℃にて95%RHに曝露されたとき、水分の1%w/w未満、例えば0.5%w/w未満、例えば0.3%w/w未満が吸収される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項7】
約10%〜約95%の相対湿度中で含水率が約8%〜約9%である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項8】
以下:
(1)ナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)と、水などの水溶液とを混合するステップ、
(2)場合により、混合物を加熱するステップ、
(3)場合により、混合物を蒸留するステップ、
(4)変換が完了するまで混合物を撹拌するステップ、および
(5)形成された固体を単離するステップ、
を含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を得る方法。
【請求項9】
(4)における混合物が少なくとも1時間撹拌される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)において使用される水などの水溶液の比が、約0.9ml〜約4mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)、例えば約1ml〜約2mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)、さらに好ましくは、1.5mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)の範囲である、請求項8または9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(1)において使用するナルメフェン塩酸塩が水和形態、例えば一水和物形態である、請求項8〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(1)において使用するナルメフェン塩酸塩が、溶媒和形態であるか、または水和形態および溶媒和形態の混合物である、請求項8〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(2)および/または(3)において撹拌が行われる、請求項8〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
ステップ(4)における撹拌が、約0℃〜約45℃の温度、例えば20℃〜約40℃で行われる、請求項8〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
ステップ(5)において形成された固体が、約0℃〜約20℃の温度、例えば約0℃〜約5℃で単離される、請求項8〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
得られた化合物が少なくとも98%化学的に純粋であり、例えば少なくとも99%化学的に純粋、または少なくとも99.5%化学的に純粋である、請求項8〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
医薬組成物において使用するための請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を得るための、請求項8〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
以下:
(a)ナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)と、水などの水溶液とを混合するステップ、
(b)混合物を加熱し、実質的に均一な溶液を得るステップ、
(c)場合により、(b)で得た混合物を蒸留するステップ、
(d)ステップ(b)または(c)で得た溶液を冷却し、引き続いてナルメフェン塩酸塩で種晶添加するステップ、および
(e)形成された固体を単離するステップ、
を含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を得るための方法。
【請求項19】
ステップ(a)において使用する水などの水溶液の量が、約0.9ml〜約4mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)、例えば約1ml〜約2mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)、または約1.5mlの水溶液/ナルメフェン塩酸塩(g)の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)において加熱が行われ、約50℃〜約100℃の温度、例えば約50℃〜約90℃の温度、または約70℃〜約85℃の温度に達する、請求項18〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
ステップ(d)において溶液が40〜50℃の温度に冷却され、種晶添加がその温度で行われる、請求項18〜20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
ステップ(d)において加える種結晶の量が、約1/2000(w/w)からのナルメフェン塩酸塩の種結晶/ステップ(a)において加えるナルメフェン塩酸塩、例えば約1/1000(w/w)または1/200からのナルメフェン塩酸塩の種結晶/ステップ(a)において加えるナルメフェン塩酸塩である、請求項18〜21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
種晶添加のために使用されるナルメフェンが、ナルメフェン塩酸塩二水和物である、請求項18〜22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
ステップ(d)において加えられる種結晶が、請求項8〜16による方法によって得られる、請求項18〜23のいずれか一つに記載の方法。
【請求項25】
ステップ(d)において得られる種結晶(複数可)を含む混合物が、請求項18のステップ(e)によって形成された固体を単離する前に、
(d’)混合物を約45分以上の期間に亘り約0〜5℃の温度にさらに冷却するステップ、および
(d’’)その後、混合物を約0〜5℃の温度に約45分以上維持するステップ、
にさらに供される、請求項18〜24のいずれか一つに記載の方法。
【請求項26】
形成された固体が、請求項16のステップ(e)において約0〜5℃の温度で単離される、請求項18〜25のいずれか一つに記載の方法。
【請求項27】
得られた化合物が少なくとも98%化学的に純粋であり、例えば少なくとも99%化学的に純粋、または少なくとも99.5%化学的に純粋である、請求項18〜26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項28】
得られた化合物が、本明細書において示す条件下で測定すると、以下の粒度分布:
400μm以下のD90、200μm以下のD50、50μm以下のD10、2.5以下のD90/D50比、
を有する、請求項18〜27のいずれか一つに記載の方法。
【請求項29】
医薬組成物において使用するための請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を得るための、請求項18〜28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
以下:
(i)場合により、ステップ(e)または(5)において得た混合物を蒸留するステップ、
(ii)ステップ(i)、(e)または(5)において得た混合物を塩基性化するステップ、
(iii)適切な有機溶媒で混合物を抽出するステップ、
(iv)塩化水素を加えるステップ、および
(v)形成された固体を単離するステップ
を含む、請求項8〜29のいずれか一つに記載の方法において使用されるナルメフェン塩酸塩(17−(シクロプロピルメチル)−4,5−α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール塩酸塩)を回収するための方法。
【請求項31】
ステップ(ii)における塩基性化が、pHが8〜10の範囲となるまで行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(ii)における塩基性化が、pHが8〜9の範囲となるまで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(ii)における塩基性化が水酸化アンモニウムによって行われる、請求項31〜32のいずれか一つに記載の方法。
【請求項34】
抽出ステップ(iii)において使用される溶媒が、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、エステル類、ケトン類、さらに好ましくは、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、酢酸エチル、2−ブタノン、さらに好ましくは、ジクロロメタンを含む群から選択される、請求項31〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項35】
得られた化合物が少なくとも98%化学的に純粋、例えば少なくとも99%化学的に純粋、または少なくとも99.5%化学的に純粋である、請求項31〜34のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項37】
ナルメフェン塩酸塩二水和物が、医薬剤形の少なくとも5%(w/w)、例えば少なくとも10%(w/w)、少なくとも30%、少なくとも50%(w/w)、少なくとも70%(w/w)、少なくとも90%(w/w)、少なくとも95%(w/w)、少なくとも99%(w/w)、または100%を構成する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
1種または複数の薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項36または37のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項39】
経口投与のための固体剤形、例えば錠剤である、請求項36〜38のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項40】
治療有効量の請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を含む、請求項36〜39のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項41】
約10mg〜約100mg、例えば約10mg〜約60mg、約10mg〜約40mg、または約20mgの量で請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物を含む、請求項36〜40のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項42】
請求項8〜17または18〜35のいずれか一つに記載の方法を含む、請求項36〜41のいずれか一つに記載の医薬組成物を製造する方法。
【請求項43】
医薬品において使用するための、請求項1〜7に記載の化合物。
【請求項44】
アルコール依存症の治療のための医薬の製造のための、請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物、または請求項36〜41のいずれか一つに記載の医薬組成物の使用。
【請求項45】
アルコール依存症の治療において使用するための、請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物、または請求項36〜41のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項46】
治療有効量の請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物、または請求項36〜41のいずれか一つに記載の医薬組成物を、それを必要としている患者に投与することを含む、アルコール依存症を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510954(P2012−510954A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538838(P2011−538838)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050320
【国際公開番号】WO2010/063292
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【出願人】(511135949)バイオティー・セラピース・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】