説明

ニコチアナミンから誘導されたメタロフォア及びそれを製造する方法

本発明はニコチアナミン誘導体、及びそれを化学合成又は酵素合成する方法に関する。該ニコチアナミン誘導体は以下の式(I)を有する。本発明は特に薬学の分野において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニコチアナミン誘導体、及びそれを化学合成又は酵素合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチアナミン(NA)は全ての高等植物に存在する、タンパク質を構成しない(non-proteinogenic)アミノ酸である。NAはin vitroで多くの金属イオン(Fe、Mn、Zn、Ni、Cu)をキレート化することができ、in vivoでは植物におけるこれらの金属の恒常性に重要な役割を果たしている。
【0003】
加えて、ニコチアナミンはアンジオテンシンI変換酵素(ACE)を阻害することにより抗高血圧性を有することが示されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【0004】
高等植物では、ニコチアナミン生合成はニコチアナミン合成酵素(NAS;EC 2.5.1.43)によって触媒され、3つのS−アデノシルメチオニン(SAM)分子の三量体形成によって起こる。配列データベース検索によって、高等植物以外の生物、特に真菌及び古細菌におけるNASの推定ホモログを発見することが可能となった(非特許文献4、非特許文献5)。糸状菌アカパンカビ(Neurospora crassa)においても機能的NASの存在が実証されている(非特許文献6)。近年、本発明者らのチーム(非特許文献7)は大腸菌において、真核生物のNASのホモログである古細菌メタノサーモバクター・サーモオートトロフィカス(Methanothermobacter thermoautotrophicus)の酵素(MTH675;GenBank NP_275817)を発現させた。この酵素を以下でMtNASと称する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kinoshita et al., Biosci Biotechnol Biochem, 57, 1107-10, 1993
【非特許文献2】Shimizu et al., J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo), 45, 375-83, 1999
【非特許文献3】Wada et al., Biosci Biotechnol Biochem, 70, 1408-15, 2006
【非特許文献4】Trampczynska et al., FEBS Lett, 580, 3173-8, 2006
【非特許文献5】Herbik et al., Eur J Biochem, 265, 231-9, 1999
【非特許文献6】Trampczynska et al., FEBS Lett, 580, 3173-8, 2006
【非特許文献7】Dreyfus et al., Acta Cryst., F64, 933-5, 2008
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、このメタノサーモバクター・サーモオートトロフィカスの酵素の特性化についての研究を続ける中で、この酵素によって合成される新規の分子を発見した。
【0007】
この分子(以下、サーモニコチアナミン(thNA)と称する)は、ニコチアナミンに比べ、さらなるカルボン酸基を含む。
【0008】
このニコチアナミン誘導体は以下の式を有する:
【0009】
【化1】

【0010】
この誘導体は、
a)L−アスパラギン酸のα−tert−ブチルエステルのアミン官能基を保護する工程、
b)工程a)で得られる化合物のカルボン酸官能基を還元する工程、
c)工程b)で得られる化合物のアルコール官能基を、好ましくはヨウ素でハロゲン化する工程、
d)L−グルタミン酸のジ−tert−ブチルエステルのアミン官能基を保護活性化する工程、
e)工程d)で得られる化合物を、工程c)で得られる化合物でアルキル化する工程、
f)工程e)で得られる化合物のアミン官能基を脱保護した後、保護活性化する工程、
g)工程f)で得られる化合物を、工程c)で得られる化合物でアルキル化する工程、及び
h)工程g)で得られる化合物を完全に脱保護する工程
を含む化学的方法によって有利に合成することも可能である。
【0011】
サーモニコチアナミンはまた、基質であるSAM及びグルタミン酸(GLU)を、非特許文献7に記載のように精製されるメタノサーモバクター属のMtNAS酵素、又は別の古細菌におけるそのオーソログの1つの存在下でインキュベートすることによって酵素的に合成することができる。
【0012】
サーモニコチアナミンを、メタノサーモバクター・サーモオートトロフィカス若しくはMtNASのオーソログを発現する別の古細菌の培養物を用いて、又はMtNAS若しくはそのオーソログの1つをコードするポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞(例えば大腸菌)を用いて、上記酵素を発現させることによって合成することも可能である。
【0013】
本発明によるニコチアナミン誘導体は、ニコチアナミン自体に代えて、又はニコチアナミン自体に加えて、ニコチアナミンの全ての用途に有利に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のニコチアナミン誘導体を合成する化学的方法は、以下の反応スキームに従って行われる:
【0015】
【化2】

【0016】
より具体的には、本発明によるニコチアナミン誘導体は、一方では市販品であるL−アスパラギン酸のα−tert−ブチルエステル、他方では同じく市販品であるL−グルタミン酸のジ−tert−ブチルエステルから出発して生成される。
【0017】
出発化合物はしたがって、以下の式を有する化合物(1と称する)である、L−アスパラギン酸のα−tert−ブチルエステルである:
【0018】
【化3】

【0019】
次いで、この化合物のアミンの保護を以下のようにして行う:
重炭酸ナトリウム(13g、159mmol)及びジオキサン(70mL)中のクロロギ酸ベンジル(11.8mL、69mmol)の溶液を、水/ジオキサン混合物(2/1)(170mL)中のアスパラギン酸α−tert−ブチル(10g、53mmol)の溶液に2時間かけて添加する。周囲温度で一晩撹拌を行う。反応媒体を酢酸エチル(3×200mL)で洗浄した後、0℃でpH=2となるまで6N塩酸溶液で酸性にする。水相を酢酸エチル(3×200mL)で抽出する。合わせた有機相を塩水(200mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて、濃縮すると、化合物2が無色の油の形態で得られる(16.7g、97%)。
【0020】
以下の式を有する化合物2が得られる:
【0021】
【化4】

【0022】
Rf値:(CHCl/MeOH/AcOH 37%)=0.68
HPLC:1.56分
MS:[M+H]、324.1;[M+H−tBu]、268.1
H NMR(CDCl,300MHz):1.45(s,9H,1tBu);2.95(dd,2H,J=4.5及び14Hz,CH2b);4.55(q,1H,J=4.3Hz,CHa);5.10(s,2H,CHPh);5.8(d,1H,J=8Hz,NH);7.35(m,5H,arom);10.7(bs,1H,COOH)
13C NMR(CDCl,75MHz):27.79;36.73;50.75;67.12;82.83;128.11;128.20;128.53;136.12;156.06;169.46;176.25。
【0023】
次いで、化合物2のカルボン酸官能基の還元を以下のようにして行う:
ジイソプロピルエチルアミン(10.5mL、60.4mmol)を、無水THF中の化合物2(15g、46.4mmol)及びBOP(27g、60.4mmol)の懸濁液に添加する。反応媒体を色が黄色に変わるまで10分間激しく撹拌し続けた後、15分間かけて0℃まで冷却する。次に、反応媒体にNaBH(2.3g、60.4mmol)を少しずつ添加する。反応混合物を一晩激しく撹拌し続ける。溶媒を蒸発させて、残渣を酢酸エチル(250mL)中に取り込む。溶液を10%クエン酸溶液(3×100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(3×100mL)、次に蒸留水(2×100mL)で続けて洗浄する。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮すると、無色の油が得られる。この化合物3をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/エーテル:3/7)によって精製すると、無色の油が得られる(13.95g、96%)。
【0024】
以下の式を有する化合物3が得られる:
【0025】
【化5】

【0026】
Rf値:(石油エーテル/エーテル:3/7)=0.42
HPLC:1.45分
MS:[M+H]、310.2;[M+H−tBu]、254.1
H NMR(CDCl,300MHz):1.43(s,9H,1tBu);2.09(dd,2H,J=4.6及び15.2Hz,CH2b);3.48(s,1H,OH);3.8(m,2H,CH2g);4.45(m,1H,CHa);5.10(s,2H,CHPh);5.87(d,1H,J=8Hz,NH);7.35(m,5H,arom)
13C NMR(CDCl,75MHz):27.9;35.45;51.95;58.4;67.01;82.44;128.07;128.13;128.13;128.31;129.01;136.1;156.79;169.46;171.68。
【0027】
次いで、化合物3のアルコールのハロゲン化を以下のようにして行う:
ヨウ素(14.3g、56.4mmol)、トリフェニルホスフィン(14.8g、56.4mmol)、さらに10分後、イミダゾール(9.6g、141mmol)を、無水ジクロロメタン(260mL)中の化合物3(5.8g、18.8mmol)の溶液にアルゴン下で添加する。反応媒体を還流させ、3時間激しく撹拌し続ける。反応混合物が周囲温度に戻った時点で、硫酸水素カリウムのモル溶液(3×150mL)、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(3×150mL)、及びチオ硫酸ナトリウムの5%溶液(3×150mL)、及び塩水(150mL)で続けて洗浄する。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮すると、黄色のペーストが得られる。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル:10/0→8/2)の後、生成物4が黄色の油の形態で得られる(6.2g、78%)。
【0028】
以下の式を有する化合物4が得られる:
【0029】
【化6】

【0030】
Rf値:(石油エーテル/酢酸エチル:8/2)=0.65
HPLC:
MS:[M+Na]、442.0;[M+H]、420.1;[M+H−tBu]、364.2
H NMR(CDCl,300MHz):1.45(s,9H,1tBu);2.15〜2.45(2m,2H,CH2b);3.15(m,2H,CH2g);4.35(m,1H,CHa);5.10(s,2H,CHPh);5.87(d,1H,J=8Hz,NH);7.35(m,5H,arom)
13C NMR(CDCl,75MHz):16.1;28.42;38.45;54.24;56.15;67.89;83.59;128.95;129.03;129.22;129.34;129.38;136.93;156.69;171.03。
【0031】
これとは別に、L−グルタミン酸のジ−tert−ブチルエステル(化合物5)を得て、以下の式を有するこの化合物5のアミンの保護活性化を行う:
【0032】
【化7】

【0033】
トリエチルアミン(0.29mL、2.10mmol)を、無水ジクロロメタン(20mL)中のグルタミン酸tert−ブチル塩酸塩(0.62g、2.10mmol)の溶液に添加する。溶液を濾過した後、無水ジクロロメタン(4mL)中に溶解したトリエチルアミン(0.60mL、4.41mmol)及び2,2,5,6,7−ペンタメチルクロマンスルホニルクロリド(0.7g、3.30mmol)を、シリンジポンプを用いて2時間かけてそれに添加する。反応媒体を一晩激しく撹拌し続ける。反応媒体を真空下で濃縮した後、酢酸エチル(20mL)中に取り込む。有機相をクエン酸の10%溶液(3×20mL)、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(3×20mL)及び蒸留水(3×20mL)で続けて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/エーテル:8/2)の後、スルホンアミド6が無色の油の形態で得られる(1g、91%)。
【0034】
以下の化合物6が得られる:
【0035】
【化8】

【0036】
Rf値:(石油エーテル/エーテル:6/4)=0.3
HPLC:2.41分
MS:[M+H]、526.3;[M+H−tBu]、470.2;[M+H−2tBu]、414.2
H NMR(CDCl,300MHz):1.14〜1.24(s,9H,1tBu);1.22〜1.24(2s,6H,2CH);1.36(s,9H,1tBu);1.70〜1.99(m,4H,CHメタ位,CH2b);2.03(s,3H,CH);2.27〜2.33(m,2H,CH2g);2.47〜2.49(2s,6H,2CHオルト位);2.54〜2.59(t,2H,J=6.8及び6.8Hz,CH);3.66〜3.67(m,1H,CHa);5.20〜5.23(d,1H,J=9.4Hz,NH)
13C NMR(CDCl,75MHz):11.42;12.17;14.11;17.30;18.25;19.42;20.42;21.50;22.60;26.52;26.81;27.60;28.05;28.60;29.04;29.68;30.97;32.67;55.09;73.91;76.61;80.53;82.29;118.32;124.60;128.43;136.42;136.60;154.65;171.07;171.97。
【0037】
次いで、化合物4による化合物6のアルキル化を以下のようにして行う:
炭酸セシウム(0.75g、2.31mmol)を、無水アセトニトリル(20mL)中のスルホンアミド6(0.81g、1.54mmol)の溶液に添加する。反応媒体を30分間激しく撹拌した後、55℃に加熱する。次に、無水アセトニトリル(5mL)中のヨード化合物4(0.64g、1.54mmol)の溶液を、シリンジポンプを用いて極めてゆっくりと添加する。反応媒体を55℃で一晩激しく撹拌し続ける。反応媒体を真空蒸発させた後、酢酸エチル(20mL)中に取り込む。有機相を塩水(3×20mL)及び蒸留水(3×20mL)で続けて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて、真空下で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/エーテル:7/3、次にジクロロメタン/エーテル:99/1→98/2)の後、スルホンアミド7が無色の油の形態で得られる(1g、80%)。
【0038】
以下の式を有する化合物7が得られる:
【0039】
【化9】

【0040】
Rf値:(石油エーテル/エーテル:6/4)=0.57
HPLC:2.72分
MS:[M+Na]、839.6;[M+H]、817.6;[M+H−tBu]、761.5;[M+H−2tBu]、705.5;[M+H−3tBu]、649.5
H NMR(CDCl,300MHz):1.17〜1.36(5s,33H,3tBu,2CH);1.70〜2.00(m,6H,CH,CH2b,CH2b’);2.03(s,3H,CHメタ位);2.17〜2.20(m,2H,CH2g);2.41〜2.42(2s,6H,2CHオルト位);2.52〜2.56(t,2H,J=6.8及び6.3Hz,CH);3.27〜3.52(m,2H,CH2g’);4.01〜4.06(m,1H,CHa);4.10〜4.13(t,1H,CHa’);5.02〜5.03(s,2H,CHPh);5.19〜5.25(1H,J=6Hz,NH);7.24〜7.29(m,5H,arom)
13C NMR(CDCl,75MHz):11.06;16.04;17.02;18.21;20.31;21.39;24.41;25.40;25.54;26.55;26.63;26.80;27.82;28.46;30.62;31.34;31.42;39.42;51.63;56.97;65.60;72.78;75.40;79.31;80.73;81.00;117.24;123.48;126.42;126.82;127.23;135.16;136.47;136.66;153.79;154.78;169.06;169.60;170.24。
【0041】
次いで、化合物7の脱保護、続くこの脱保護した化合物のアミン官能基の保護活性化を以下のようにして行う:
パラジウム炭素(150mg、30重量%)を、無水THF(7mL)中に溶解した化合物7(0.48g、0.59mmol)に添加する。装置内の空気を除去し、3回のアルゴン−真空サイクルによってアルゴンに置き換えた後、3回の水素−真空サイクルによって水素に置き換える。反応媒体を6時間激しく撹拌し続けた後、セライトを通して濾過し、濃縮する。反応混合物を無水ジクロロメタン(5mL)中に溶解した後、トリエチルアミン(0.20mL、1.18mmol)を添加し、続いて無水ジクロロメタン(4mL)中に溶解した2,2,5,6,7−ペンタメチルクロマンスルホニルクロリド(231mg、0.768mmol)を2時間かけて滴下する。反応媒体を一晩激しく撹拌し続ける。反応媒体を真空下で濃縮した後、エーテル(10mL)中に取り込む。有機相をクエン酸の10%溶液(3×10mL)、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(3×10mL)及び蒸留水(3×10mL)で続けて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて、真空下で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/エーテル:6/4)の後、ジスルホンアミド8が無色の油の形態で得られる(480mg、86%)。
【0042】
以下の化合物8が得られる:
【0043】
【化10】

【0044】
Rf値:(石油エーテル/エーテル:6/4)=0.27
MS:[M+Na]、971.6;[M+H]、946.6;[M+H−tBu]、893.5;[M+H−2tBu]、837.4;[M+H−3tBu]、781.3
H NMR(CDCl,300MHz):1.13〜1.33(5s,39H,3tBu,6CH);1.71〜1.82(m,4H,CH);1.94〜2.03(m,10H,2CHメタ位,CH2b,CH2b’);2.14〜2.17(t,2H,CH2g);2.41〜2.42(2s,6H,2CHオルト位);2.46〜2.48(2s,6H,2CHオルト位);2.55〜2.59(t,4H,J=8.6及び6.5Hz,CH);3.40〜3.46(t,2H,J=7.9及び8.7Hz,CH2g’);3.52〜3.61(m,1H,CHa’);3.99〜4.06(m,1H,CHa);5.19〜5.22(1H,J=8.3Hz,NH)
13C NMR(CDCl,75MHz):12.30;13.05;13.15;15.19;18.19;19.12;19.15;19.63;20.30;22.35;22.44;23.48;26.37;27.49;27.51;27.65;28.42;28.88;29.91;30.56;32.55;33.54;34.08;41.40;55.11;59.08;74.84;81.32;82.67;83.38;103.68;119.20;119.38;125.46;125.51;128.47;129.24;137.36;137.56;138.68;138.76;155.53;155.84;171.13;171.40;172.31。
【0045】
化合物4による化合物8の新たなアルキル化を以下のようにして行う:
炭酸セシウム(75mg、0.231mmol)を、無水アセトニトリル(600μl)中のスルホンアミド8(121mg、0.128mmol)の溶液に不活性雰囲気下で添加する。反応媒体を30分間激しく撹拌した後、55℃に加熱する。次に、無水アセトニトリル(600μl)中のヨード化合物4(107mg、0.256mmol)の溶液を、シリンジポンプを用いて極めてゆっくりと添加する。反応媒体を55℃で一晩激しく撹拌し続ける。反応媒体を真空下で濃縮した後、シクロヘキサン(5mL)中に取り込む。有機相を蒸留水(3×5mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて、真空下で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/エーテル:97/3)の後、ジスルホンアミド9が無色の油の形態で得られる(99mg、60%)。
【0046】
以下の化合物9が得られる:
【0047】
【化11】

【0048】
Rf値:(ジクロロメタン/エーテル:96/4)=0.26
MS:[M+Na]、1262.5;[M+H]、1240.5;[M+H−tBu]、1184.4;[M+H−2tBu]、1128.4;[M+H−3tBu]、1072.4;[M+H−4tBu]、1016.3
H NMR(CDCl,300MHz):1.22〜1.37(5s,48H,3tBu,6CH);1.70〜1.75(t,4H,J=6.4及び6.7Hz,CH);1.78〜2.04(m,12H,2CHメタ位,CH2b,CH2b’,CH2b’’);2.17〜2.20(m,2H,CH2g);2.40〜2.44(2s,6H,2CHオルト位);2.46〜2.48(2s,6H,2CHオルト位);2.55〜2.58(t,4H,J=6.5及び6.6Hz,CH);3.33〜3.44(m,4H,J=CH2g’,CH2g’’);3.95〜4.03(2m,3H,CHa,CHa’,CHa’’;5.00〜5.02(d,2H,J=6.8Hz,CHPh);7.22〜7.26(m,5H,arom)
13C NMR(CDCl,75MHz):12.30;13.05;13.15;15.19;18.19;19.12;19.15;19.63;20.30;22.35;22.44;23.48;26.37;27.49;27.51;27.65;28.42;28.88;29.91;30.56;32.55;33.54;34.08;41.40;55.11;59.08;74.84;81.32;82.67;83.38;103.68;119.20;119.38;125.46;125.51;128.47;129.24;137.36;137.56;138.68;138.76;155.53;155.84;171.13;171.40;172.31。
【0049】
最後に、化合物9の脱保護を以下のようにして行う:
化合物9(79mg、0.064mmol)を含有するテフロン(登録商標)反応器に、アニソール(200μl、10%(v/v))、続いてフッ化水素(2mL、過剰量)をテフロン(登録商標)ベンチ(Teflon bench)を用いて添加する。反応媒体を0℃で9時間激しく撹拌し続ける。過剰のフッ化水素を水酸化カリウムで中和する。残渣をエーテル(3×3mL)から粉砕した後、0.1M塩酸溶液中に取り込む。水を凍結乾燥によって除去すると、純粋な化合物10が白色の固体の形態で得られる。
【0050】
以下の式を有する、本発明によるニコチアナミン誘導体である化合物10が得られる:
【0051】
【化12】

【0052】
MS:[M+H]、350.1;[M−H−18]、332.1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有することを特徴とするニコチアナミン誘導体:
【化1】

【請求項2】
請求項1に記載のニコチアナミン誘導体を化学合成する方法であって、
a)L−アスパラギン酸のα−tert−ブチルエステルのアミン官能基を保護する工程、
b)工程a)で得られる化合物のカルボン酸官能基を還元する工程、
c)工程b)で得られる化合物のアルコール官能基を、好ましくはヨウ素でハロゲン化する工程、
d)L−グルタミン酸のジ−tert−ブチルエステルのアミン官能基を保護活性化する工程、
e)工程d)で得られる化合物を、工程c)で得られる化合物でアルキル化する工程、
f)工程e)で得られる化合物のアミン官能基を脱保護した後、保護活性化する工程、
g)工程f)で得られる化合物を、工程c)で得られる化合物でアルキル化する工程、及び
h)工程g)で得られる化合物を完全に脱保護する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載のニコチアナミン誘導体を、基質であるS−アデノシルメチオニン及びグルタミン酸をメタノサーモバクター属のMtNAS酵素、又は別の古細菌におけるそのオーソログの1つの存在下でインキュベートすることにより酵素合成する方法。

【公表番号】特表2012−522034(P2012−522034A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502728(P2012−502728)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000261
【国際公開番号】WO2010/112697
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ (85)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】