説明

ニッケル含有硫化物の処理

本発明は、タルク粒子を含有する採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離する方法を提供し、開示する。この方法は、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱のスラリーのEhを調節してニッケル含有硫化物の粒子の疎水性をタルク粒子よりも低下させること、およびスラリーからニッケル含有硫化物粒子を浮選すること、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離する方法に関する。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離するための湿式精錬法に関する。
【0003】
さらに詳細には、本発明は、タルクを含有する採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱のスラリーからのニッケル含有硫化鉱物の泡沫浮選(froth flotation)を含む、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離するための湿式精錬法に関する。
【0004】
「ニッケル含有硫化物」という用語は、本明細書において、硫化ニッケルおよび硫化鉄ニッケルを含むと理解される。ニッケル含有硫化物の例としては、ペントランド鉱、針ニッケル鉱、およびビオラル鉱(violarite)の鉱物が挙げられる。
【0005】
本発明は、出願人のマウントキースニッケル鉱床に関連する研究開発活動の過程で作製されたものである。
【背景技術】
【0006】
マウントキース鉱床は、1990年代初期に開発された。この鉱床には、ニッケル含有硫化物が含まれている。当時、そのような低品質のニッケル鉱石を処理し、オーストラリアおよびフィンランドの既存の2ヶ所の精錬所で処理するための高品質の精鉱を生産することが可能である処理経路を見出すことは大きな課題であった。当時に開発され、この鉱山で操業されているプロセスで処理されているのは、採掘された鉱石の90%までである。高レベルのタルク鉱石を含む残りのおよそ10%の鉱石は、タルクが存在するために許容される精鉱へ処理することができなかった。タルク鉱石は、鉱体内に個別の鉱脈として存在する。今までに採掘されたタルク鉱石は、鉱山に貯蔵されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マウントキース鉱山にてタルク鉱石を処理し、ニッケル含有硫化物を鉱石から分離することは、重要な課題である。
【0008】
さらに、タルク鉱石の処理の問題はマウントキース鉱山に限定されるものではなく、オーストラリアおよびそれ以外の地域のその他の数多くの鉱床の問題でもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人によって実施された研究開発活動により、以下の大きな発見がなされた。
【0010】
1. 例えばナトリウムジチオナイトの添加によってEhを低下させることにより、タルク粒子と比較して硫化ニッケル鉱石の疎水性を下げ、その結果、グアル(guar)が硫化ニッケル上ではなくタルク上に選択的に皮膜形成し、そしてその後、例えば空気の添加によってEhを上昇させることにより、およびそれによって硫化ニッケル鉱物の浮遊度を高めることにより、タルク粒子をパルプ中に残留させた状態で硫化ニッケル鉱石を選択的に浮遊させる。グアルの効果は(その他のこのような表面改質剤のように)、グアル被覆タルク粒子を互いに凝集させ、それによってタルク粒子の浮遊度を抑制することである。グアルによってタルク粒子の表面特性を変化させることが可能であることは周知である。しかし、出願人は、マウントキースの鉱石タイプにはグアルの効果が非常に低いことを見出した。出願人は、通常の浮選条件下では、グアルはタルクおよび硫化ニッケルと疎水的に相互作用を起こすことを見出した。従って、通常の浮選条件下では、グアルは、タルクおよび硫化ニッケルの両方に皮膜形成し、その結果、グアルはタルクおよび硫化ニッケルに同じ効果をもたらし、通常の浮選条件下では、タルクと硫化ニッケルの分離が促進されない。上述のEhの調節により、グアルを用いてタルクの浮遊を抑制し、選択的に硫化ニッケル鉱石を浮遊させることが可能となる。
【0011】
2. 出願人は、本明細書で述べるように、選択された泡沫浮選生成物を順に再粉砕することによって、浮選精鉱からのタルクの除外に予想外の大きな改善がもたらされ、従ってタルクと硫化ニッケルの分離が著しく向上することを見出した。出願人は、タルク粒子の表面のうち、粒子が空気の泡と接着する(すなわち、疎水的に作用する)ことを引き起こすのはその一部分のみであり、最初の粉砕工程(例えば、浮選用に粒子を調製する際に実施される)の後にタルク粒子を再粉砕することによって、そのような接着の傾向を示さないタルク表面の割合が増加することを見出した。従って、タルク粒子の再粉砕は、タルクの親水性を増加させ、従って、例えば通常の浮選条件下にて、硫化ニッケル鉱物と比較したタルク粒子の浮遊度を低下させる。「順に再粉砕する」という用語の本明細書における意味は、この方法が、最初の粉砕工程の後、この方法の異なるステージで実施されるプロセス流中の粒子に対する一連の再粉砕工程を含み、従って、粒子が2回以上の粉砕操作を受けることであると理解される。
【0012】
本明細書は、上記の発見のうちの第一番目に関する。
【0013】
広い意味で、本発明は、タルク粒子を含有する採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離する方法を提供し、この方法は、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱のスラリーのEhを調節して、鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を鉱石または精鉱中のタルク粒子よりも低下させること、およびニッケル含有硫化物粒子をスラリーから浮選すること、を含む少なくとも1つの浮選ステージを含む。
【0014】
本発明によると、タルク粒子を含有する採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離する方法が提供され、この方法は、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱のスラリーのEhを調節して、鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を鉱石または精鉱中のタルク粒子よりも低下させること、本明細書で述べる表面改質剤をスラリーに添加して、ニッケル含有硫化物粒子ではなくタルク粒子を表面改質剤で被覆すること、およびタルク粒子をスラリー中に保持した状態でニッケル含有硫化物粒子をスラリーから浮選すること、を含む少なくとも1つの浮選ステージを含む。
【0015】
鉱石または鉱石の精鉱は、タルク鉱石もしくは鉱石の精鉱のみを含んでいてよく、または非タルクおよびタルクの鉱石ならびに鉱石の精鉱の混合物を含んでいてもよい。
【0016】
「表面改質剤」という用語は、本明細書において、その試薬に被覆された粒子の浮遊を抑制する試薬を意味するものと理解される。そのような表面改質剤の例としては、グアル(化学修飾グアルを含む)、ポリサッカリド(デキストリンなど)、および必要とされる特性を有する合成によって製造されたポリマーが挙げられる。
【0017】
好ましい表面改質剤はグアルである。
【0018】
好ましくは、表面改質剤をスラリーへ添加する工程は、表面改質剤と共に酸を添加し、スラリーのpHを調節してこれに続く浮選工程における浮選率(flotation rate)を高めることを含む。
【0019】
好ましくは、この方法は、スラリーのEhを低下させることによって、鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の疎水性を低下させることを含む。
【0020】
好ましくは、この方法は、還元剤をスラリーへ添加することによって、スラリーのEhを低下させることを含む。
【0021】
好ましくは、還元剤は、スラリー中で解離して、一般式:
nyz-
を有するオキシ硫黄イオンを形成するオキシ硫黄化合物であり、ここで、nは1より大きく、yは2より大きく、およびzはイオンの価数である。
【0022】
この方法は、スラリーのEhを、好ましくは少なくとも100mV、より好ましくは少なくとも200mV低下させることを含む。
【0023】
好ましくは、この方法は、スラリーへ表面改質剤を添加した後にスラリーのEhを調節してニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を上昇させ、それによって粒子の浮遊度を向上させることを含む。
【0024】
好ましくは、この方法は、スラリーのEhを上昇させることによって鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を上昇させることを含む。
【0025】
好ましくは、この方法は、酸化剤をスラリーへ供給することによって、スラリーのEhを上昇させることを含む。
【0026】
好ましくは、酸化剤は酸含有気体、通常は空気である。
【0027】
この方法は、スラリーのEhを、好ましくは少なくとも100mV、より好ましくは少なくとも200mV上昇させることを含む。
【0028】
スラリーは、適切ないかなる固形分を有していてもよい。
【0029】
好ましくは、この方法は、粒子サイズに基づいてスラリーを粗大粒子流および微細粒子流に分離すること、および各プロセス流を上述の浮選ステージで処理することを含み、従って、この方法は、粗大粒子浮選ステージおよび微細粒子浮選ステージを含む。
【0030】
好ましくは、微細粒子流は、40μm未満の粒子を含む。
【0031】
好ましくは、この方法は、それぞれの浮選ステージからの粗大粒子プロセス流および微細粒子プロセス流を、少なくとも1つの精選回路で処理することを含む。
【0032】
好ましくは、この方法は、粗大粒子プロセス流および微細粒子プロセス流を別々の粗選ステージ(rougher stages)で、精鉱またはテーリングを粗選槽へ再循環することなく処理することを含む。
【0033】
好ましくは、この方法は、本明細書で述べるように、プロセス流のうちの少なくとも1つにおいて、粒子を順に再粉砕することを含む。
【0034】
好ましくは、この方法は、粗大粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱流を、前端(front end)精選回路で精選することを含む。
【0035】
好ましくは、この方法は、前端精選回路で精鉱流を精選する前に、粗大粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱流中の粒子を粉砕することを含む。
【0036】
好ましくは、粉砕工程は、粒子を40μmのP80まで粉砕することを含む。
【0037】
好ましくは、この方法は、微細粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱流の第一の部分を前端精選回路で精選することを含む。
【0038】
好ましくは、この方法は、微細粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱の第二の部分を後端(back-end)精選回路で精選することを含む。
【0039】
好ましくは、この方法は、粗大粒子浮選ステージの清掃選槽(scavenger cells)からのテーリング流(tailings stream)を、後端精選回路で精選することを含む。
【0040】
好ましくは、この方法は、後端精選回路で精鉱流を精選する前に、粗大粒子浮選ステージの清掃選槽からの精鉱流中の粒子を粉砕することを含む。
【0041】
好ましくは、粉砕工程は、粒子を60μmのP80まで粉砕することを含む。
【0042】
好ましくは、この方法は、前端精選回路からのテーリング流(tailings stream)を後端精選回路で精選することを含む。
【0043】
好ましくは、この方法は、(i)微細粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱の第二の部分、(ii)粗大粒子浮選ステージの清掃選槽からのテーリング流(tailings stream)、および(iii)前端精選回路からのテーリング流(tailings stream)、のうちのいずれか1つもしくは2つ以上から得られる精鉱を、後端精選回路で精鉱を精選する前に後端精選回路で粉砕することを含む。
【0044】
好ましくは、粉砕工程は、粒子を25μmのP80まで粉砕することを含む。
【0045】
本発明によると、上述の方法を実施するためのプラントも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に従って採掘された鉱石からニッケル含有硫化鉱物を分離する方法の1つの態様の流れ作業図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明に従って採掘された鉱石からニッケル含有硫化鉱物を分離する方法の1つの態様の流れ作業図である添付の図を参照し、例として本発明をさらに説明する。
図を参照すると、ニッケル含有硫化物を含む鉱石の固形分40%のスラリーを、ロッドミル3からサイクロン5へ供給し、このスラリーを粒子サイズに基づいて2つの流れに分離する。スラリー中の鉱石は、破砕および粉砕の操作によってサイズ低下をしておいた粗鉱である。
【0048】
粗大粒子を有するアンダーフロー流(underflow stream)は、後述する一連の浮選および精選ステージで処理される。
【0049】
オーバーフロー流(overflow stream)は、第二のサイクロン7へ供給され、粒子サイズに基づいて微細アンダーフロー流およびスライムオーバーフロー流に分離される。
【0050】
微細粒子アンダーフロー流は、後述する一連の浮選および精選ステージで処理される。
【0051】
これらの流れに対するカットオフ粒子サイズは以下の通りである:
(a)粗大粒子アンダーフロー流 − 40μm超;
(b)微細粒子アンダーフロー流 − 40μm未満;および、
(c)スライムオーバーフロー流 − 10〜15μm未満
スライムオーバーフロー流は、テーリング堆積場(tailings dam)へポンプ送液される。
【0052】
図に示す流れ作業図において、粗大粒子アンダーフロー流および微細粒子アンダーフロー流の処理には4つの重要なステージが存在する。
【0053】
概説すると:
(a)第一のステージは、粗大粒子浮選ステージ9であり、ここでは、サイクロン5からの粗大粒子アンダーフロー流に、ナトリウムジチオナイトの形での還元剤を添加することによってこの流れのEhを調節することによる前処理を施し、次に硫酸およびグアルの形での表面改質剤の存在下、高密度にて浮選槽で処理し;
(b)第二のステージは、微細粒子浮選ステージ11であり、ここでは、サイクロン7からの微細粒子アンダーフロー流に、ナトリウムジチオナイトを添加することによってこの流れのEhを調節することによる前処理を施し、次に硫酸、クエン酸、およびグアルの存在下、低密度にて浮選を行い;
(c)第三のステージは、「前端」精選回路13であり、ここでは、粗大粒子浮選ステージ9からの粗選精鉱(rougher concentrate)を再粉砕し、次に硫酸およびグアルの存在下にて精選するために、微細粒子浮選ステージ11における槽の第一の群からの粗選精鉱と組み合わせ;ならびに
(d)第四のステージは、「後端」精選回路15であり、ここでは、(i)粗大粒子浮選ステージ9からの清掃選精鉱(scavenger concentrate)、(ii)微細粒子浮選ステージ11における槽の最後の群からの粗選精鉱、および(iii)前端精選機13からのテーリング、から得られた浮選精鉱を、硫酸およびグアルを含む試薬の組み合わせの存在下にて精選する前に、再粉砕する。
【0054】
上記の各ステージおよび関連する操作条件については、以下でより詳細に考察する。
【0055】
粗大粒子浮選ステージ9
サイクロン5からの粗大粒子アンダーフロー流に、ナトリウムジチオナイトを添加することによってこの流れのEhを調節することによる前処理をまず施し、次に硫酸およびグアルの存在下、高密度にて粗選浮選槽(rougher flotation cells)51での処理を行う。
【0056】
上述のように、ジチオナイト添加の目的は、所望される度合いで、通常は少なくとも100mV、Ehを低下させ、グアルをニッケル含有硫化物粒子上ではなくタルク粒子上に皮膜形成させるのに必要である度合いで、この流れの中のニッケル含有硫化物の疎水性を低下させ、それによってタルク粒子の浮遊特性を抑制することである。
【0057】
さらに、空気(酸化剤として作用する)の存在下、この流れを浮選槽にて続いて処理することにより、この流れのEhを上昇させる効果が得られ、それによってニッケル含有硫化物が浮選され、精鉱が形成される。
【0058】
粗選槽51からの精鉱は、前端精選回路13へポンプ送液される。
【0059】
粗選槽51からのテーリングは、ナトリウムジチオナイトを添加することによってこの流れのEhを調節することによる前処理をまず施し、次に、上述のように、硫酸およびグアルの存在下、高密度にて清掃選浮選槽(scavenger flotation cells)55での処理を行う。
【0060】
清掃選槽55からのテーリングは、テーリング濃縮機(tailings thickener)57へポンプ送液される。
【0061】
清掃選槽55からの精鉱は、タワーミル81へポンプ送液され、このミルで60μmのP80まで再粉砕される。
【0062】
再粉砕された精鉱は、次に後端精選回路15へ供給される。
【0063】
微細粒子浮選ステージ11
サイクロン7からの微細アンダーフロー流に、ナトリウムジチオナイトを添加することによってこの流れのEhを調節することによる前処理を施し、次に、上述のように、硫酸、クエン酸、およびグアルの存在下、低密度にて粗選槽61での浮選を行う。
【0064】
粗選槽61の第一の群からの精鉱は、前端精選回路13へポンプ送液される。
【0065】
粗選槽61の最後の群からの精鉱は、後端精選回路15へポンプ送液される。
【0066】
粗選槽61からのテーリングは、テーリング濃縮機79へポンプ送液される。
【0067】
前端精選回路13
粗大粒子浮選ステージ9の粗選槽51からの精鉱は、フラッシュ浮選槽(flash flotation cell)19の前のサイクロンクラスター(cyclone cluster)17へポンプ送液される。
【0068】
35μmのP80を有するサイクロンクラスター17からのオーバーフローは、精選槽21へポンプ送液され、硫酸およびグアルを含む試薬の組み合わせの存在下にて精選される。
【0069】
さらに、微細粒子浮選ステージ11における槽の第一の群からの上述した精鉱は、精選槽21へポンプ送液され、これも、硫酸およびグアルを含む試薬の組み合わせの存在下にて精選される。
【0070】
サイクロンクラスター17からのアンダーフローは、フラッシュ浮選槽19へ供給される。
【0071】
(i)フラッシュ槽19および(ii)精選槽21からの精鉱は、再精選槽(re-cleaner cell)23へ供給され、硫酸およびグアルを含む試薬の組み合わせの存在下にて精選される。
【0072】
硫化ニッケルの生成物流は、再精選槽23で生成され、濃縮機49へ供給される。
【0073】
フラッシュ浮選槽19からのテーリングは、タワーミル25へ沈降し、35ミクロンの公称P80へ再粉砕される。
【0074】
タワーミル25からの生成物は、サイクロンクラスター17へ供給され、上述のように処理される。
【0075】
再精選槽23からのテーリングは、精選槽21へ供給され、精選機で処理される。精選槽21からのテーリングは、後端精選回路15へポンプ送液される。
【0076】
後端精選回路15
後端精選回路15は、(i)粗大粒子浮選ステージ9の清掃選槽55からの精鉱、(ii)微細粒子浮選ステージ11の粗選槽の最後の群からの精鉱、および(iii)前端精選機13からのテーリング、から得られる浮選精鉱の処理を行う。
【0077】
これらの流れは、最初、後端精選回路15の上流にある清掃選ステージ29の槽へポンプ送液される。
【0078】
清掃選ステージ29からの精鉱は、サイクロンクラスター31へポンプ送液される。
【0079】
25μmのP80を有するサイクロンクラスター31からのオーバーフローは、精選槽35へポンプ送液され、硫酸およびグアルを含む試薬の組み合わせの存在下にて精選される。
【0080】
精選槽35からの精鉱は、精選槽37へポンプ送液され、酸およびグアルを含む試薬の組み合わせの存在下にて再度精選される。
【0081】
精選槽35からのテーリングは、テーリング濃縮機41へポンプ送液される。
【0082】
硫化ニッケルの生成物流は、精選槽37で生成され、濃縮機43へ供給される。
【0083】
精選槽37からのテーリングは、精選槽35へ再循環される。
【0084】
サイクロンクラスター31からのアンダーフローは、沈降してタワーミル33へ戻され、25μmのP80へさらに再粉砕される。ミルからの流出物は、ポンプ送液によってサイクロンクラスター31へ戻される。
【0085】
図に示す本発明の方法の流れ作業図の態様を設計する際の目的1つは、タルク粒子の自然の浮遊性のために、再循環を最小限に抑えることであった。前端精選機13と分離した後端精選機15を含めることで、前端精選機への再循環を必要とせずに精鉱品質の目標を達成することが可能となる。「後端」精選機15の前の再粉砕のさらなるステージも有益である。
【0086】
ジチオナイト
本発明の方法の重要な特徴はEhの調節であり、すなわち、プロセス流のEhを、その流れを浮選槽へ供給する前に低下させ、硫化ニッケル粒子ではなくタルク粒子を選択的に被覆した後にEhを上昇させることである。
【0087】
上述のように、このEhの調節により、タルク粒子と比較した硫化ニッケル鉱石の疎水性を低下させ、その結果、グアルが、硫化ニッケル粒子上ではなくタルク上に選択的に皮膜形成する。
【0088】
続いて、例えば浮選槽に空気を添加することによってEhを上昇させることでEhが上昇し、硫化ニッケル鉱物の浮遊度が向上し、タルク粒子をプロセス流内に残留させた状態で選択的に硫化ニッケル鉱石を浮遊させることが可能となる。
【0089】
順に行う再粉砕
実験室での研究において、前端精選機13からのテーリングおよび粗大粒子浮選ステージ9の清掃選槽55からの精鉱を再粉砕することは、後にニッケル含有硫化物と共に浮遊するタルクの量を低減することにより、続いて行われるこれらの流れの浮選に対する反応に有益なものであることが示された。
【0090】
硫酸
出願人は、実験室での研究において、グアルと組み合わせて硫酸を添加することにより、この方法の対象である粒子サイズ範囲全体にわたって、タルク粒子に対するニッケル含有硫化物の浮選率が向上することを見出した。
【0091】
実験室での研究により、最適pHは約4.5であり、これより低いpH値では必要とする酸の添加量が非常に多くなり、冶金学的なさらなる改善が得られないことが分かった。
【0092】
実験室での研究により、硫酸を添加して浮選pHを4.5とした場合に、性能の一段の変化が非常に明らかであることが分かった。例として、実験室での研究により、14%Ni(0.5%MgO回収)という精鉱品質の目標に対して、硫酸を添加することで回収率が約15%上昇することが分かった。
【0093】
さらに、実験室での研究により、従来の流れ作業図と比較して、本発明の方法が必要とする硫酸は20から25%少ないことが分かった。
【0094】
さらに、実験室での研究により、微細粗選ステージ11に対して、硫酸と組み合わせてジチオナイトおよびクエン酸を添加してpH7とすることが、硫酸を添加してpH4.5とすることと同等に効果的であることが分かった。ジチオナイトおよびクエン酸が、微細粗選‐清掃選浮選において部分的に硫酸の代わりとなり得るというこの発見は、重要な結果である。このような置換により、硫酸の消費量を40から50%低減することができる。
【0095】
グアル
何年にもわたるタルク鉱石の処理および試験の中で、多岐にわたるタルクの抑制剤(depressants)が評価されてきた。
【0096】
このような抑制剤としては、化学修飾グアルを含む種々の異なるグアル、デキストリンなどのポリサッカリド、および種々の異なる官能基を含む合成によって製造されたポリマーが挙げられる。
【0097】
多くの研究を行ったにも関わらず、本発明の方法に最適な抑制剤はやはりグアルであった。
【0098】
出願人が行った実験室での研究により、グアルの調製に関する2つの重要な発見が明らかとなった。
【0099】
第一の発見は、0.5%の濃度で調製、添加されたグアルは、0.25%の濃度で調製、添加されたグアルと同一の反応を生ずることである。
【0100】
第二の発見は、高塩水(hypersaline water)で調製されたグアルは、半飲料水(sub-potable water)で調製されたグアルと同一の反応を示すことである。
【0101】
ザンセート
好ましい補収剤(collector)は、ナトリウムエチルザンセートである。
【0102】
粗選ステージ
本発明の方法を設計する際の目的1つは、タルク粒子の自然の浮遊性のため、再循環を最小限に抑えることであった。従って、流れ作業図は、粗大および微細粒子流に対する別々の粗選ステージ、ならびに開回路ステージ、すなわち精鉱もテーリングも粗選槽へ再循環されない、を含む。
【0103】
現在までに行われた実験室およびパイロットプラントでの研究により、本発明の方法は、タルク鉱石からニッケル含有硫化物を選択的に分離するのに非常に効果的であることが示されている。
【0104】
上述した本発明の方法の態様に対して、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて、多くの変更を行うことができる。
【0105】
例として、上記の説明で、再粉砕ステージにおける特定の粒子サイズについて言及したが、本発明はそれに限定されるものではなく、適切ないかなる粒子サイズにまでも拡大される。
【0106】
さらなる例として、上記の説明で、還元剤としてナトリウムジチオナイトについて言及したが、本発明はそれに限定されるものではなく、適切ないかなる還元剤にまでも拡大される。
【0107】
さらなる例として、上記の説明で、酸化剤として空気について言及したが、本発明はそれに限定されるものではなく、適切ないかなる酸化剤にまでも拡大される。
【0108】
さらなる例として、上記の説明で、表面改質剤としてグアルについて言及したが、本発明はそれに限定されるものではなく、適切ないかなる表面改質剤にまでも拡大される。
【0109】
さらなる例として、上記の説明で、タワーミルを用いたプロセス流中の粒子の再粉砕について言及したが、本発明はそれに限定されるものではなく、適切ないかなる粉砕装置の使用にまでも拡大される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タルク粒子を含有する採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱からニッケル含有硫化物を分離する方法であって、前記方法は、採掘された鉱石または採掘された鉱石の精鉱のスラリーのEhを調節して、前記鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を前記鉱石または精鉱中のタルク粒子よりも低下させること、本明細書で述べる表面改質剤を前記スラリーに添加して、ニッケル含有硫化物粒子を被覆せずにタルク粒子を前記表面改質剤で被覆すること、および前記タルク粒子を前記スラリー中に保持した状態で前記ニッケル含有硫化物粒子を前記スラリーから浮選することを含む少なくとも1つの浮選ステージ、を含む方法。
【請求項2】
前記スラリーに前記表面改質剤を添加する工程が、前記表面改質剤と共に酸を添加して前記スラリーのpHを調節し、これに続く浮選工程における浮選率を向上させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリーのEhを低下させることによって前記鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の疎水性を低下させることを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラリーに還元剤を添加することによって前記スラリーのEhを低下させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤が、前記スラリー中で解離して、一般式:
nyz-
を有するオキシ硫黄イオンを形成するオキシ硫黄化合物であり、ここで、nは1より大きく、yは2より大きく、およびzは前記イオンの価数である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリーのEhを、少なくとも100mV、より好ましくは少なくとも200mV低下させることを含む、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリーへ前記表面改質剤を添加した後に前記スラリーのEhを調節してニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を上昇させ、それによって前記粒子の浮遊度を向上させることを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーのEhを上昇させることによって前記鉱石または精鉱中のニッケル含有硫化物の粒子の疎水性を上昇させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリーに酸化剤を供給することによって前記スラリーのEhを上昇させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤が、酸素含有気体、通常は空気である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スラリーのEhを、少なくとも100mV、より好ましくは少なくとも200mV上昇させることを含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
粒子サイズに基づいて前記スラリーを粗大粒子流および微細粒子流に分離すること、および各プロセス流を請求項1から11のいずれか1項に記載の浮選ステージで処理することを含み、従って、粗大粒子浮選ステージおよび微細粒子浮選ステージを含む、前記のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記それぞれの浮選ステージからの前記粗大粒子プロセス流および前記微細粒子プロセス流を、少なくとも1つの精選回路で処理することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粗大粒子プロセス流および前記微細粒子プロセス流を、別々の粗選ステージで、精鉱もテーリングも粗選槽へ再循環することなく処理することを含む、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
本明細書で述べるように、前記プロセス流のうちの少なくとも1つにおいて、粒子を順に粉砕することを含む、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記粗大粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱流を、前端精選回路で精選することを含む、請求項12から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記粗大粒子浮選ステージの粗選槽からの前記精鉱流中の粒子を、前記前端精選回路で前記精鉱流を精選する前に、再粉砕することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微細粒子浮選ステージの粗選槽からの精鉱流の第一の部分を、前記前端精選回路で精選することを含む、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記微細粒子浮選ステージの粗選槽からの前記精鉱の第二の部分を、後端精選回路で精選することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粗大粒子浮選ステージの清掃選槽からのテーリング流を、前記後端精選回路で精選することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記粗大粒子浮選ステージの清掃選槽からの精鉱流中の粒子を、前記後端精選回路で前記精鉱流を精選する前に、再粉砕することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記前端精選回路からのテーリング流を、前記後端精選回路で精選することを含む、請求項19から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
(i)前記微細粒子浮選ステージの粗選槽からの前記精鉱の前記第二の部分、(ii)前記粗大粒子浮選ステージの清掃選槽からの前記テーリング流、および(iii)前記前端精選回路からの前記テーリング流、のうちのいずれか1つもしくは2つ以上から得られる精鉱を、前記後端精選回路で精鉱を精選する前に、前記後端精選回路で再粉砕することを含む、請求項19から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプラント。

【図1】
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【公表番号】特表2011−511153(P2011−511153A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541660(P2010−541660)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000026
【国際公開番号】WO2009/086606
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510191090)ビーエイチピー ビリトン エスエスエム ディベロップメント プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】