説明

ニッケル微粒子粉末及びその製造方法

【課題】 大量生産に適した液相法により、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の製造に用いる導電性ペースト用導電粉として好適な、即ち平均粒径が100nm以下で、粒径の均一性が極めて高く、分散性に優れたニッケル微粒子粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】 水酸化ニッケルをエチレングリコール溶液中で加熱還元してニッケル微粒子を得る方法において、核生成のためにパラジウムイオン又は銀イオン等の貴金属イオンを添加する。原料の水酸化ニッケルは、水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケルが好ましい。得られるニッケル微粒子粉末は、ニッケル微粒子が貴金属を含有し、平均粒径dが20〜100nmで且つ粒径の標準偏差σ/平均粒径dが30%以下であり、単分散性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル金属の微粒子粉末、特に積層セラミックコンデンサー(Multi−Layer
Ceramic Capacitor:MLCC)等の製造に用いる導電性ペースト用導電粉として好適なニッケル金属の微粒子粉末、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MLCCは、複数の誘電体層と複数の内部電極が積層された構造を有する。このような構造を有するMLCCは、小さな体積でも大きい容量を発揮することができるため、例えば、コンピュータ、移動通信機器などの電子機器に広く用いられている。
【0003】
従来から、MLCCの内部電極は、金属粉末を含む導電性ペーストを用いて形成されている。その内部電極用の金属材料としては、一般にAg−Pd合金が用いられていた。しかし、Ag−Pd合金は、空気中で焼結されるためMLCCの製造には容易に適用し得るが、高価であるという問題があった。そのため1990年代後半になり、MLCCの価格を下げるために、内部電極の材料として安価なニッケルが用いられるようになった。
【0004】
一般に、ニッケル等の金属粉末を製造する方法には気相法と液相法とがある。気相法は、金属粉末の形状及び不純物の制御が比較的容易であるため広く用いられているが、粒子の微細化と大量生産性の面では不利である。一方、液相法は、大量生産に有利であり、初期投資及び工程に要するコストが安いという長所を有している。この液相法による一般的な方法として、金属化合物を溶液中においてヒドラジン等の還元剤を用いて還元する方法がある。しかしながら、この方法では、生成した金属微粒子間に強い凝集力が働くため、100nm以下の粒径を有する金属微粒子を作製することは困難であった。
【0005】
また、生産性の高い濃厚系で金属微粒子を合成する方法として、ポリオール法がよく知られている(特開昭59−173206号公報)。この方法は、例えば酸化銅のような金属の酸化物又は塩をポリオール中で加熱還元する方法であり、ポリオールは溶媒、還元剤、保護剤の三つの役割を担っている。その結果、濃厚系であっても、サブミクロンないしミクロンオーダーの金属微粒子を得ることができる。
【0006】
上記ポリオール法においては、ポリオールの種類、反応温度、原料などを調製することによって、例えば銅等については微細な金属微粒子を得られることが知られている。しかしながら、通常のポリオール法では、特にニッケル微粒子の場合、平均粒径が100nm以下の分散性の優れたニッケル微粒子の合成は極めて困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−173206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したようにポリオール法は、大量生産に適した液相法であり、粒径100nm以下のニッケル微粒子の製造も可能であるが、製造時に得られる粒径のばらつきが激しいという欠点があった。そのため、孔径の小さなフィルターを通過させて分級を行なう方法も現実的に用いられているが、フィルター処理の付加による工程数の増加や、フィルター濾過による歩留まりの低下によるコストアップ等の問題が発生していた。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、大量生産に適した液相法であるポリオール法を応用して、平均粒径が100nm以下であり、しかも粒径の均一性が極めて高く、分散性に優れたニッケル微粒子粉末の製造方法を提供することを目的とする。特に、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の製造に用いる導電性ペースト用導電粉として好適なニッケルニッケル微粒子粉末、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明が提供するニッケル微粒子粉末の製造方法は、水酸化ニッケルをエチレングリコール溶液中で加熱還元してニッケル微粒子を得る方法において、核生成のために貴金属イオンを添加し、該貴金属を含有する平均粒径20〜100nmのニッケル微粒子を得ることを特徴とする。前記貴金属イオンとしては、パラジウムイオン又は銀イオンを用いることが好ましい。
【0011】
上記本発明のニッケル微粒子粉末の製造方法においては、前記水酸化ニッケルとして、水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケルを用いることが好ましい。また、前記水酸化ニッケルとして、固体状水酸化ニッケルを粉砕して得られた平均粒径1μm以下の水酸化ニッケル粉末を用いることもできる。更に、上記本発明のニッケル微粒子粉末の製造方法では、分散剤としてポリビニルピロリドンを添加することが好ましい。
【0012】
また、本発明が提供するニッケル微粒子粉末は、上記した本発明によるニッケル微粒子粉末の製造方法のいずれかの方法により得られたニッケル微粒子粉末であって、ニッケル微粒子が貴金属を含有し、平均粒径dが20〜100nmで且つ粒径の標準偏差σ/平均粒径dが30%以下であり、単分散性を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大量生産に適した液相法により、平均粒径が100nm以下であって、しかも粒径の均一性が極めて高く、分散性に優れたニッケル微粒子粉末を提供することができる。とりわけ、高圧容器等の特別な装置を必要としないうえ、使用する原料及び有機溶媒などのいずれもが一般の工業材料を使用できるため、低コストを実現することが可能である。
【0014】
また、本発明のニッケル微粒子粉末は、単分散状態の極めて微細なニッケル微粒子からなるため、導電性ペーストの調製において分散性が優れている。更に、粒径の均一性が極めて高く、粒度の標準偏差σ/平均粒径dが30%以下というシャープな粒度分布を有している。従って、導電性ペーストとしたとき、得られる乾燥膜の密度が高く、薄くて且つ突起のない表面粗さの小さな導電膜を形成することができ、特に積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極の形成に好適な導電性ペーストを調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるニッケル微粒子粉末の製造方法は、公知のポリオール法を応用して、原料である水酸化ニッケルをポリオールの1種であるエチレングリコール溶液中で加熱還元することにより、液相中でニッケル微粒子を合成するものである。その際、本発明方法においては、微粒子形成の核を得るために、貴金属イオンを添加する。添加する貴金属イオンとしては、パラジウムイオン又は銀イオンが好ましい。
【0016】
エチレングリコール溶液に添加された貴金属イオンは、還元反応の初期の段階で還元され、極めて微細な粒子を生成する。この極めて微細な貴金属の粒子を核として水酸化ニッケルから還元されたニッケルが堆積することにより、平均粒径100nm以下の微細で均一なニッケル微粒子が形成される。核形成のための貴金属イオンは、イオンの状態で添加することが好ましく、例えば塩化パラジウムアンモニウム、塩化パラジウム等のパラジウム塩の水溶液、あるいは硝酸銀、塩化銀等の銀塩の水溶液として添加することが望ましい。
【0017】
貴金属イオンの添加量は、ニッケルに対する貴金属の重量比、即ち貴金属/Ni重量比で10ppm〜1%の範囲が好ましく、100〜5000ppmの範囲が更に好ましい。その理由は、貴金属/Ni重量比が10ppm未満では、核となる微細な貴金属粒子の量が不足するため、ニッケルの還元反応ないしニッケル微粒子の形成が十分に進まないからである。尚、ニッケル微粒子が形成された場合でも、核となる貴金属粒子数が不足しているため、平均粒径が100nmを越えてしまう。また、貴金属/Ni重量比が1%を超えると、還元反応は進行してニッケル微粒子が得られるが、高価な貴金属の投入量が増加して、原料コストを押し上げるため好ましくない。
【0018】
本発明方法において原料として用いる水酸化ニッケル(Ni(OH))は、水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケルが好ましい。通常の水酸化ニッケル粉末を用いることもできるが、その場合は固体状水酸化ニッケルを湿式解砕法又は乾式解砕法等により粉砕処理し、平均粒径1μm以下とした水酸化ニッケル粉末を使用することが望ましい。これらの水酸化ニッケルを用いることによって、原料の比表面積が増加して活性面を大きくすることができ、エチレングリコール溶液への溶解が促進されると共に、ニッケルへの還元が容易になる。
【0019】
好ましい原料であるゲル状水酸化ニッケル(Ni(OH))は、水酸化ナトリウム水溶液に塩化ニッケル(NiCl)水溶液を加えることにより、中和合成することができる。その後、吸引濾過等により脱水して、ケーキ状態のゲル状水酸化ニッケルを回収する。回収したゲル状水酸化ニッケルは、必要に応じて水洗と濾過を行い、原料としてエチレングリコール溶液中に投入する。
【0020】
本発明方法では、必要に応じて、更に分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を添加することができる。ポリビニルピロリドンは、還元析出したニッケル微粒子の表面を被覆し、立体障害によりニッケル微粒子同士の接触を防止して、凝集がほとんどない分散性に優れたニッケル微粒子の生成を促進する。用いるポリビニルピロリドンとしては、エチレングリコール溶液に溶解し、生成したニッケル微粒子に吸着して立体障害を形成し得るものであればよく、そのためには分子量が10,000〜30,000程度のものが好ましい。
【0021】
また、ポリビニルピロリドンの添加量としては、エチレングリコール溶液に対する重量比で30g/l以下が好ましい。ポリビニルピロリドンの添加量が30g/lを超えると、液の粘性が高くなるうえ、濃縮時にポリビニルピロリドンの残存量が多くなるため好ましくない。
【0022】
微細で均一なニッケル微粒子を合成するためには、エチレングリコール溶液の温度は、最高到達温度で150以上が好ましく、180〜195℃が更に好ましい。この最高到達温度が150℃未満では、ニッケルの還元反応が起らない。ただし、エチレングリコールの沸点(197.6℃)を超えると、溶媒が蒸発してしまい反応の制御が困難となるため好ましくない。
【0023】
このようにして得られる本発明のニッケル微粒子粉末は、ニッケル微粒子が貴金属を含有していて、微粒子粉末の平均粒径dが20〜100nmと極めて微細であり、単分散性に優れている。しかも、粒径の標準偏差σ/平均粒径dが30%以下であり、粒径の均一性が極めて高い(即ち、粒度分布がシャープである)。従って、このニッケル微粒子粉末を用いて、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極の形成に好適な導電性ペーストを作製することができる。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
まず、濃度448.2g/lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液114mlに、濃度196.6g/lの塩化ニッケル(NiCl)水溶液281mlを投入して、ゲル状の水酸化ニッケル(Ni(OH))を中和合成した。その後、吸引濾過により脱水し、ケーキ状態のゲル状水酸化ニッケルを回収した。
【0025】
このゲル状水酸化ニッケル39.5g(Ni分量で25g)を水中に投入し、ポリビニルピロリドン(PVP:ISP製、商品名K−15)10gを添加した後、撹拌して均一に分散させ、吸引濾過して脱水した。このレパルプ洗浄工程を2回繰り返した後、得られたゲル状水酸化ニッケルをエチレングリコール(日本触媒(株)製)500g中に投入した。
【0026】
次に、このゲル状水酸化ニッケルを分散させたエチレングリコール溶液を撹拌しながら加熱し、更にパラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウム(住友金属鉱山(株)製)にアンモニア水を加えて溶解したパラジウム溶液を加え、185℃に4時間保持してニッケル微粒子を還元析出させた。
【0027】
得られたニッケル微粒子を濾過し、電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子粉末であった。即ち、このニッケル微粒子粉末は、粒径分布が24〜56nm、平均粒径dが39nm、粒径の標準偏差σが6.3であり、標準偏差σ/平均粒径dが16%であった。このニッケル微粒子粉末のSEM写真を図1に示す。
【0028】
[実施例2]
平均粒径が約15μmで凝集している水酸化ニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)39.5gを、エチレングリコール500gに投入して撹拌した後、ピコミル(浅田鉄工(株)製)により凝集体の平均粒径が0.5μmになるまで粉砕を行なった。なお、平均粒径の計測には、日機装(株)製のレーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分析計、型式9320−HRA)を用いた。
【0029】
次に、粉砕後のエチレングリコール中の水酸化ニッケル粉をビーズミルで撹拌しながら加熱し、更に実施例1と同じパラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウムの溶液を加えて、185℃に3時間保持してニッケル粒子を還元析出させた。
【0030】
得られたニッケル微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子粉末であった。即ち、このニッケル微粒子粉末は、粒径分布が35〜113nm、平均粒径dが62nm、粒径の標準偏差σが12.9であり、標準偏差σ/平均粒径dが21%であった。このニッケル微粒子粉末のSEM写真を図2に示す。
【0031】
[実施例3]
実施例1と同様に、ゲル状水酸化ニッケル39.5gをエチレングリコール500g中に分散させた。このエチレングリコール溶液を撹拌しながら加熱し、更に実施例1と同様に調整したパラジウム量で0.025g(Pd/Ni=0.1重量%)の塩化パラジウムアンモニウムの溶液を加えて、185℃に3時間保持してニッケル粒子を還元析出させた。
【0032】
得られたニッケル微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子粉末であった。即ち、このニッケル微粒子粉末は、粒径分布が31〜81nm、平均粒径dが51nm、粒径の標準偏差σが8.0であり、標準偏差σ/平均粒径dが16%であった。
【0033】
[実施例4]
実施例1と同様に、ゲル状水酸化ニッケル39.5gをエチレングリコール500g中に分散させた。このエチレングリコール溶液を撹拌しながら加熱し、更に銀量で0.15g(Ag/Ni=0.6重量%)の硝酸銀(和光純薬工業(株)製、試薬)を水に溶解した溶液を加えて、185℃に4時間保持してニッケル粒子を還元析出させた。
【0034】
得られたニッケル微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子粉末であった。即ち、このニッケル微粒子粉末は、粒径分布が42〜98nm、平均粒径dが69nm、粒径の標準偏差σが9.6であり、標準偏差σ/平均粒径dが14%であった。
【0035】
[実施例5]
平均粒径が約15μmで凝集している水酸化ニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)39.5gを、エチレングリコール500gに投入して撹拌した後、ピコミル(浅田鉄工(株)製)により凝集体の平均粒径が0.9μmになるまで粉砕を行なった。
【0036】
次に、粉砕後のエチレングリコール中の水酸化ニッケル粉をビーズミルで撹拌しながら加熱し、更に実施例1と同じパラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウムの溶液を加えて、190℃に3時間保持してニッケル粒子を還元析出させた。
【0037】
得られたニッケル微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子粉末であった。即ち、このニッケル微粒子粉末は、粒径分布が55〜145nm、平均粒径dが84nm、粒径の標準偏差σが14.9であり、標準偏差σ/平均粒径dが18%であった。
【0038】
[比較例1]
平均粒径が約15μmで凝集している水酸化ニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)39.5gを、エチレングリコール500gに投入した後、撹拌しながら加熱し、更に実施例1と同じパラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウムの溶液を加えて、185℃に4時間保持した。
【0039】
その後、濾過した回収物をX線回折により分析した結果、未反応の水酸化ニッケルの残留が認められた。原料である水酸化ニッケル粉を粉砕していないため、比表面積が小さく、エチレングリコール中への溶解が困難となり、ニッケルの還元反応が十分進行しなかったものと考えられる。この回収物(未還元の水酸化ニッケル粉)のSEM写真を図3に示す。
【0040】
[比較例2]
平均粒径が約15μmで凝集している水酸化ニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)39.5gを、エチレングリコール500gに投入して撹拌した後、実施例2と同様に凝集体の平均粒径が0.5μmになるまで粉砕を行なった。この粉砕後のエチレングリコール中の水酸化ニッケル粉を、撹拌しながら185℃に4時間保持した。
【0041】
その後、濾過した回収物をX線回折により分析した結果、未反応の水酸化ニッケルの残留が認められた。核となる貴金属イオンが添加されなかったため、核が発生されず、ニッケルの還元反応が進行しなかったものと考えられる。
【0042】
[比較例3]
平均粒径が約15μmで凝集している水酸化ニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)39.5gを、エチレングリコール500gに投入して撹拌した後、実施例2と同様に凝集体の平均粒径が0.5μmになるまで粉砕を行なった。この粉砕後のエチレングリコール中の水酸化ニッケル粉を、撹拌しながら加熱し、更に実施例1と同じパラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウムの溶液を加えて、150℃に4時間保持した。
【0043】
その後、濾過した回収物をX線回折により分析した結果、未反応の水酸化ニッケルの残留が認められた。加熱温度が低いために、ニッケルへの還元反応が進行しなかったものと考えられる。
【0044】
[比較例4]
実施例1と同様に、ゲル状水酸化ニッケル39.5gをエチレングリコール500g中に分散させた。このエチレングリコール溶液を撹拌しながら加熱し、185℃に4時間保持した。
【0045】
その後、濾過した回収物をX線回折により分析した結果、未反応の水酸化ニッケルの残留が認められた。核となる貴金属イオンが添加されなかったため、核が発生されず、ニッケルの還元反応が進行しなかったものと考えられる。
【0046】
以上の実施例1〜5及び比較例1〜4について、反応条件を下記表1に、その結果を下記表2に示した。尚、ニッケル微粒子の粒径は、いずれの場合も、日立製作所(株)製の電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM、型式S−4700)を使用したSEM写真観察により、視野から200個の粒子を無作為に選択して測定した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1で得られたニッケル微粒子粉末のSEM写真である。
【図2】実施例2で得られたニッケル微粒子粉末のSEM写真である。
【図3】比較例1で得られた未還元の水酸化ニッケル粉のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケルをエチレングリコール溶液中で加熱還元してニッケル微粒子を得る方法において、核生成のために貴金属イオンを添加し、該貴金属を含有する平均粒径20〜100nmのニッケル微粒子を得ることを特徴とするニッケル微粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
前記貴金属イオンとして、パラジウムイオン又は銀イオンを用いることを特徴とする、請求項1に記載のニッケル微粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化ニッケルとして、水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケルを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載のニッケル微粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
前記水酸化ニッケルとして、固体状水酸化ニッケルを粉砕して得られた平均粒径1μm以下の水酸化ニッケル粉末を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載のニッケル微粒子粉末の製造方法。
【請求項5】
更にポリビニルピロリドンを添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル微粒子粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られたニッケル微粒子粉末であって、ニッケル微粒子が貴金属を含有し、平均粒径dが20〜100nmで且つ粒径の標準偏差σ/平均粒径dが30%以下であり、単分散性を有することを特徴とするニッケル微粒子粉末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−336060(P2006−336060A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160884(P2005−160884)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】