説明

ニトリル基を含むノルボルナン系脂環式化合物

本発明は新規ノルボルナンニトリル誘導体およびヒドロシアネーション反応を用いて該誘導体を製造するための対応する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ノルボルナン系ニトリル誘導体およびヒドロシアネーション反応を含む該誘導体を製造するための方法を開示している。
【背景技術】
【0002】
ニトリル基を含む脂環式化合物は、ポリマーの製造のための中間体として、香気中間体として、またはライフサイエンス用途のための中間体としての用途を有する様々な有用な分子への前駆体として大いに興味深い。これらのニトリル官能基は、新規アミン、カルボン酸またはアルコール基に転化することが可能である。ニトリル化合物から誘導されたメチレンアミン化合物は、例えば、原液の形態または付加体入り形態のいずれかでエポキシ硬化剤として用いることが可能である。エポキシ配合物の当業者は、得られた塗料、接着剤、キャスティングまたは複合材の硬化時間、ポットライフおよび物理的特性を制御するために硬化剤の構造に基づいて異なる硬化剤を選択する。エポキシ硬化用途のために異なる官能基を保持するニトリル化合物からの脂環式アミン化合物の経済的な調製に大いに関心がある。
【0003】
米国特許第2,956,987号明細書には、ノルボルナン誘導ニトリロ−ノルカンファンカルボン酸の調製が記載されている。特開平06−184082号公報には、ノルカンファン−ジカルボニトリルの調製が記載されている。ノルカンファン−ジカルボニトリルへのパラジウム触媒経路は、American Chemical Society,Division of Petroleum Chemistry(1969)、14(2)、B29〜B34の予稿集に記載されている。ノルボルナン誘導ジシアノトリシクロデカンの調製は米国特許第4,151,194号明細書に記載されている。GB第1480999号明細書には、ポリウレタンラッカーの形成のためのイソシアネート前駆体としてノルボルナン骨格に基づくニトリル誘導トリアミンの調製および使用が記載されているが、本明細書で提案された新規構造を示唆していない。
【0004】
本発明の前に、ノルボルナンジカルボニトリルは有用なモノマーへの前駆体として知られていたが、本明細書に記載された種類の置換誘導体に基本ノルボルナン骨格を拡張して、こうした誘導体の特性および反応性を制御することに関して殆ど研究されてこなかった。本発明者らは、これらのノルボルナン誘導体をノルボルナンコアで追加の置換基と合わせて調製する場合、ノルボルナンニトリル誘導体の物理的特性および反応性に関して独特の利点を達成できることを発見した。
【0005】
本発明の前に、本発明のノルボルネン誘導体を、ニトリル基を有するノルボルナン誘導体にヒドロシアネーション法において選択的に転化できることは知られていなかった。ニトリル、アミン、アルコールまたはカルボン酸などの1個以上の官能基を有するとともに追加のアルキル置換基またはアリール置換基によって置換されているこれらの新規脂環式炭化水素を入手することが必要とされている。特に、2個および2個を上回る官能基を有する脂環式炭化水素は興味深い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ニトリル基を含むノルボルナン誘導体が必要とされている。ニトリル基を含むこうしたノルボルナン誘導体を製造する方法も必要とされ続けている。これらの必要性は本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の1つの目的はニトリル基を含む新規ノルボルナン誘導体を提供することである。本発明のもう1つの目的は、こうしたノルボルナン化合物を調製する方法を提供することである。これらの目的および他の目的は以下の詳細な説明の中で明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
従って、本発明は、式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、
kは0、1または2に等しく、橋架けCH2基は、第1の橋架けCH2基と同じ側にあっても、または第1の橋架けCH2基に対して反対側にあってもよく
式中、
20、R21、R22は同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ独立してH、C1〜C20アルキル基、ヒドロキシルで置換されたC1〜C20アルキル基、C1〜C18パーフルオロアルキル基、フェニル基、C1〜C12アルキル基で置換されたC6〜C20アリール基、ヒドロキシル基で置換されたC6〜C20アリール基、C(O)OR29基(R29はC1〜C20直鎖または分岐あるいは環式アルキルまたはC6〜C20アリール基であるように選択される)、あるいはアルキレン鎖(−(CH2q−;qは0〜16の整数に等しい)または無(この場合、AまたはBはノルボルナン骨格に戻って接続してもよい)であるが、但し、R20、R21およびR22がシアノ基もアミノ基も含まないことを条件とし、
式中、
Aは無または任意のアルキレン鎖(−(CH2p−;pは1〜16の整数に等しい)、任意の置換C1〜C20アルキレン基(置換基がシアノ基もアミノ基も含まず、本発明の方法を妨げないことを条件とする)、1個以上のアルケン基またはC1〜C18パーフルオロアルキレン基を含んでもよいC1〜C20ヒドロカルビルまたはシクロヒドロカルビル基に等しく、ここで、AはR20、R21またはR22を通してノルボルナン骨格に接続する5個を上回る炭素の環を形成してもよいが、但し、Aが無に等しい場合、R20、R21およびR22がすべてHであることが可能でないことを条件とし、
式中、
Bは−CN、−(CH2sOHまたは−C(O)OR24(sは0〜12の整数に等しく、R24はH、C1〜C20直鎖または分岐あるいは環式アルキルまたはアルキレン基、C6〜C20アリール基またはC1〜C18過フッ素化アルキル基であるように選択され、ここで、R24はR20、R21またはR22を通してノルボルナン骨格に接続してもよいか、またはR24はR20、R21またはR22を通してノルボルナン骨格に接続して環式無水物を形成する−C(O)−基に等しくてもよい)に等しく、
そして、式中、R25、R26、R27、R28は同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ独立してHまたは−CNであるが、但し、R25、R26、R27、R28のうちのひとつだけが−CNであることを条件とする)
のニトリル基を含む新規ノルボルナン誘導体を単独で、これらの組み合わせとして、および/またはこれらの異性体の混合物として提供する。
【0011】
ノルボルナン骨格上の置換基の相対的な空間的向きは、可能なあらゆる組み合わせであることが可能である。立体異性体は本発明の普通の実施形態である。
【0012】
これらの化合物は、エポキシ硬化用途のための中間体として、ポリマーの製造のための中間体として、香気中間体として、またはライフサイエンス用途のための中間体としての用途を有する様々な有用な分子への前駆体として興味深い。
【0013】
本発明者らは、遷移金属、好ましくはパラジウムまたはニッケルおよび有機燐配位子を含む触媒および任意に促進剤の存在下で約−25℃〜約200℃の温度で特定のノルボルネン誘導体をシアン化水素と接触させると、式(I)のノルボルナンニトリル誘導体をもたらすことが可能であることを発見した。
【0014】
従って、本発明はニトリル基を含むノルボルナン誘導体を調製するためのヒドロシアネーション法も提供する。一般に、本方法は、異性体混合物として本ノルボルナンニトリル誘導体をもたらす。この異性体混合物は、ほぼ等しい量では本発明の異性体を一般に含まない。そうでなく、本方法は主生成物として幾つかの異性体化合物をもたらす。本方法において好まれる異性体は、プロセス条件および/または用いられる触媒または複数の触媒のタイプおよび/または用いられる配位子のタイプおよび/または任意の促進剤の使用の関数である。しかし、個々の化合物および異性体の混合物の両方が本発明の範囲内であることは理解されるべきである。
【0015】
本発明の化合物を製造する方法は、配位子および第VIII族金属または化合物の使用によるヒドロシアネーション法を含む。任意に、促進剤としてヒドロシアネーション法においてルイス酸を用いてもよく、溶媒を任意に用いてもよい。
【0016】
一般に、第VIII族金属または金属の化合物は少なくとも1種の配位子と組み合わせて触媒を提供する。第VIII族金属または化合物の中で、ニッケル、コバルトおよびパラジウム化合物はヒドロシアネーション触媒を製造するために好ましい。ニッケル化合物またはパラジウム化合物は、より好ましい。例えば、もう一つの配位子であって、先行技術において記載されたより望ましい配位子によって容易に置き換えられうる配位子を含む0価ニッケル化合物は、最も好ましい第VIII族金属源または第VIII族金属化合物源である。
【0017】
0価ニッケル化合物は技術上知られている方法により調製または作成することが可能である。3種の好ましい0価ニッケル化合物はNi(COD)2(CODは1,5−シクロオクジエンである)、Ni(P(O−o−C64CH333およびNi{P(O−o−C64CH332(C24)である。これらは技術上知られている。
【0018】
あるいは、二価ニッケル化合物は還元剤と組み合わせて、反応において0価ニッケル源として作用することが可能である。適する二価ニッケル化合物には、式NiX22(式中、X2は、ハロゲン化物、カルボキシレートまたはアセチルアセテートである)の化合物が挙げられる。適する還元剤には、金属硼水素化物、金属アルミニウム水素化物、金属アルキル、Li、Na、K、Zn、AlまたはH2が挙げられる。元素ニッケル、好ましくは、ニッケル粉末も適する0価ニッケル源である。
【0019】
本発明のために適する配位子は、ホスフィットまたはホシナイトあるいはホスフィンからなる群から選択されたモノデンテートおよび/またはバイデンテート燐含有配位子である。好ましい配位子はモノデンテートおよび/またはバイデンテートホスフィット配位子である。
【0020】
好ましいモノデンテートおよび/またはバイデンテートホスフィット配位子は構造式
【0021】
【化2】

【0022】
の配位子である。
式II、III、IVおよびVにおいて、R1は、非置換フェニルまたは1個以上のC1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシ基で置換されたフェニル、あるいは非置換ナフチルまたは1個以上のC1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシ基で置換されたナフチルであり、ZおよびZ1は独立して構造式VI、VII
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は独立してH、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシであり、Xは、O、SまたはCH(R10)であり、R10はHまたはC1〜C12アルキルである)
VIII、IX





【0025】
【化4】

【0026】
(式中、R11およびR12は独立してH、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシならびにCO213から選択され、
13は、非置換のC1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールあるいはC1〜C4アルキルで置換されたC1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールであり、
Yは、O、S、CH(R14)であり、
14はHまたはC1〜C12アルキルである)
およびX
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、R15は、H、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシならびにCO216から選択され、
16は、非置換のC1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールあるいはC1〜C4アルキルで置換されたC1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールである)
からなる群から選択される。
【0029】
構造式II〜Xにおいて、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシ基は直鎖または分岐であってもよい。
【0030】
本プロセスにおいて有用であるバイデンテートホスフィット配位子の例には、以下で示した式XI〜XXXIV(式中、式ごとに、R17は、H、メチル、エチルまたはイソプロピルからなる群から選択され、R18およびR19は独立してHまたはメチルから選択される)を有する配位子が挙げられる。





【0031】
【化6】



















【0032】
【化7】



【0033】
【化8】

【0034】
適するバイデンテートホスフィットは、米国特許第5,512,695号明細書、第5,512,696号明細書、第5,663,369号明細書、第5,688,986号明細書、第5,723,641号明細書、第5,959,135号明細書、第6,120,700号明細書、第6,171,996号明細書、第6,171,997号明細書、第6,399,534号明細書で開示されたタイプである。これらの特許の開示は本明細書に引用して援用する。適するバイデンテートホシナイトは、米国特許第5,523,453号明細書および第5,693,843号明細書で開示されたタイプである。これらの特許の開示は本明細書に引用して援用する。
【0035】
バイデンテート配位子対活性ニッケルの比は、0.5:1のバイデンテート配位子対ニッケル比から100:1のバイデンテート配位子対ニッケル比まで異なることが可能である。好ましくは、バイデンテート配位子対活性ニッケルの比は1:1〜4:1の範囲である。
【0036】
本発明における配位子は、2を上回る多くの燐原子を有するマルチデンテートであることも可能であるか、または配位子/触媒組成物がプロセス混合物に均質に溶解されない高分子的性質の配位子であることも可能である。
【0037】
任意に、本発明のプロセスは触媒系の活性と選択性の両方に影響を及ぼす1種以上のルイス酸促進剤の存在下で行われる。促進剤は無機化合物または有機金属化合物であってもよく、その中で、カチオンは、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、硼素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、カドミウム、レニウムおよび錫から選択される。例には、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2、ZnSO4、CuCl2、CuCl、Cu(O3SCF32、CoCl2、CoI2、FeI2、FeCl3、FeCl2、FeCl2(THF)2、TiCl4(THF)2、Cl2Ti(OiPr)2、MnCl2、ScCl3、AlCl3、(C817)AlCl2、(C817)AlCl、(イソ−C492AlCl、Ph2AlCl、PhAlCl2、ReCl5、ZrCl4、NbCl5、VCl3、CrCl2、MoCl5、YCl3、CdCl2、LaCl3、Er(O3SCF33、Yb(O2CCF33、SmCl3、B(C653、R40Sn(O3SCF3)(ここでR40はアルキル基またはアリール基である)が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい促進剤には、FeCl2、ZnCl2、CoCl2、CoI2、AlCl3、B(C653および(C653Sn(O3SCF3)が挙げられる。反応において存在する促進剤対第VIII族遷移金属のモル比は約1:16〜約50:1であり、0.5:1〜約2:1が好ましい。
【0038】
本発明の配位子組成物は、ルイス酸促進剤ありまたはルイス酸促進剤なしで本発明のノルボルネン誘導体のヒドロシアネーションのために用いてもよい触媒を形成するために用いてもよい。
【0039】
本プロセスは、ニトリルを製造するのに十分な条件下でノルボルネン誘導体を触媒の存在下でシアン化水素含有流体に接触させることを含む。約1〜100%のHCNを含むあらゆる流体を用いることが可能である。純シアン化水素を用いてもよい。
【0040】
ヒドロシアネーション法は、例えば、反応器などの適する容器にノルボルネン誘導体、触媒組成物および任意に溶媒を投入して反応混合物を形成することにより行うことが可能である。シアン化水素は初期に他の成分と組み合わせて混合物を形成することが可能である。しかし、他の成分を組み合わせた後にHCNをゆっくり混合物に添加することが好ましい。シアン化水素は、液体としてまたは蒸気として反応に送出することが可能である。代案として、シアノヒドリンを技術上知られているようにHCN源として用いることが可能である。
【0041】
適するもう一つの技術は、用いるべき触媒および溶媒(あれば)を容器に投入し、ノルボルネン誘導体とHCNの両方を反応混合物にゆっくりフィードすることである。
【0042】
ノルボルネン誘導体対触媒のモル比は約10:1から約100,000:1まで異なることが可能である。HCN:触媒のモル比は5:1〜10,000:1であることが可能である。プロセスを連続方式またはバッチ方式で行うことが可能である。
【0043】
好ましくは、反応混合物は、例えば攪拌または振とうによって掻き混ぜられる。本ノルボルナンニトリル誘導体は、クロマトグラフィーまたは分留あるいは結晶化などの従来の既知法を用いて反応混合物から個々に単離することが可能である。
【0044】
ヒドロシアネーションは溶媒ありまたは溶媒なしで行うことが可能である。溶媒を用いるならば、溶媒は反応温度および圧力で液体であることが可能であり、ノルボルネン誘導体および触媒に対して不活性である。適する溶媒の例には、ベンゼン、キシレンまたはそれらの組み合わせなどの炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル、アセトニトリル、アジポニトリルなどのニトリルまたはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。ノルボルネン誘導体はそれ自体溶媒として作用することが可能である。
【0045】
厳密な温度は、用いられる特定の触媒および所望の反応速度に関する特定の限度に応じて異なる。通常、−25℃〜200℃の温度を用いることが可能であり、約0℃〜約120℃の範囲は好ましい。
【0046】
本プロセスは大気圧で運転することが可能である。約50.6〜1013kPaの圧力は好ましい。必要ならば、10,000kPa以上に至るより高い圧力を用いることが可能である。
【0047】
必要な時間は、運転の特定の条件および方法に応じて数秒から長時間(2秒から72時間など)の範囲内であることが可能である。
【0048】
本発明における出発材料として用いられるノルボルネン誘導体は、本発明の製品であるノルボルナンニトリル誘導体に、本発明のヒドロシアネーション法を用いてシアン化水素化される置換ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)断片を含む。これらの置換ノルボルネン出発材料は、参考文献で知られている手順を用いて調製することが可能である。典型的な例は、Organic Chemistry,3rd Edition,Peter Vollhardt and Neil Shore,New York,Freeman and Company,1988,pg600、あるいは米国特許第5,861,528号明細書、米国特許第6,100,323号明細書または米国特許第5,284,929号明細書に記載されている。
【0049】
第1の好ましい実施形態において、本発明は式(XXXVI)の一般構造を有する化合物に関する。
【0050】
【化9】

【0051】
式中、kならびにR20、R21およびR22は上で定義された通りである。
【0052】
CNとR20〜R22の厳密な結合点および向きは異なっていてもよく、化合物と異性体の混合物が本発明によって一般に製造される。構造(XXXVI)は、Aが無に等しく、BがCNに等しく、R20〜R22の少なくとも1個がHでない時の構造(I)によって定義される。
【0053】
この実施形態の好ましいノルボルナンニトリル誘導体は、単一異性体として、または異性体の混合物として、あるいは構造(XXXVI)の異なる化合物の混合物として、例えば、構造(XXXVII〜XLIV)である。
【0054】
【化10】

【0055】
式(XXXVI〜XLIV)の化合物の製造のために、ノルボルネン誘導体は、第VIII族触媒、好ましくはニッケル、配位子および任意に促進剤の存在下でシアン化水素と反応する。この実施形態において、2個のニトリル基を有するノルボルナン誘導体を一般に含む製品混合物が得られる。
【0056】
もう一つの好ましい実施形態において、本発明は式(XLV)の一般構造を有する化合物に関する。
【0057】
【化11】

【0058】
式中、kならびにR20、R21、R22およびR29は上で定義された通りである。
【0059】
−C(O)OR29基と置換基R20〜R22の厳密な結合点および向きは異なっていてもよく、化合物と異性体の混合物が本発明によって一般に製造される。構造(XLV)は、A=無およびB=−C(O)OR29である時の構造(I)によって定義される。この実施形態における好ましいノルボルナン系ニトリル誘導体は、単一異性体として、または異性体の混合物として、あるいは構造(XLV)の異なる化合物の混合物として、例えば、構造(XLVI〜XLIX)である。
【0060】
【化12】

【0061】
式(XLVI〜XLIX)の化合物の製造のために、ノルボルネン誘導体は、第VIII族触媒、好ましくはニッケル、配位子および任意に促進剤の存在下でシアン化水素と反応する。この実施形態において、1個のニトリル基および1個以上のエステル基を有するノルボルナン誘導体を一般に含む製品混合物が得られる。
【0062】
もう一つの好ましい実施形態において、本発明は式(L〜LIV)の一般構造を有する化合物に関する。
【0063】
【化13】

【0064】
−CN基の厳密な結合点および向きは異なっていてもよく、化合物の混合物が本発明によって一般に製造される。構造(L)は、ノルボルナン骨格に戻って接続する環をAが導入し、Bが−CNに等しい構造(I)によって定義される。構造(LI)および(LII)は、Aが無に等しく、BがC(O)OR24に等しく、R24がノルボルナン骨格に戻って接続する構造(I)によって定義される。構造(LIII)は、Aが無に等しく、BがCH2OHに等しく、R20がCH2OHに等しい時の構造(I)によって定義される。構造(LIV)は、Aが無に等しく、BがCH2OHに等しく、R20がCH2CH2OHに等しい構造(I)によって定義される。
【0065】
式(L−LIV)の化合物の製造のために、ノルボルネン誘導体は、第VIII族触媒、好ましくはニッケル、配位子および任意に促進剤の存在下でシアン化水素と反応する。この実施形態において、1個または2個のニトリル基および(LI)の場合、無水物基、(LII)の場合、ラクトン基、(LIII)および(LIV)の場合、ジオール基を有するノルボルナン誘導体を一般に含む製品混合物が得られる。
【0066】
(XLV)〜(XLIX)および(LII)のエステル基および(LI)の無水物基は、技術上知られている方法、例えば、水素化物試薬(LiAlH4)または触媒エステル水素添加による還元によってアルコール基に転化されていてもよい。
【0067】
もう一つの好ましい実施形態において、本発明は式(LV)の一般構造を有する化合物に関する。
【0068】
【化14】

【0069】
置換基R20〜R22の1個は独立して水素、メチルまたは他の分岐または直鎖アルキル基から選択され、pは1〜12の整数に等しい。
【0070】
−(CH2p−CN基および置換基R20〜R22の厳密な結合点および向きは異なっていてもよく、化合物と異性体の混合物が本発明により一般に製造される。構造(LV)は、Aが(CH2pに等しく、BがCNに等しい時の構造(I)によって定義される。
【0071】
この実施形態の好ましいノルボルナンニトリル誘導体は、例えば構造(LVI〜LVII)である。
【0072】
【化15】

【0073】
−CN基の密な結合点および向きは異なっていてもよく、化合物の混合物が本発明によって一般に製造される。
【0074】
式(LVI〜LVII)の化合物の製造のために、ノルボルネン誘導体は、第VIII族触媒、好ましくはニッケル、配位子および任意に促進剤の存在下でシアン化水素と反応する。この実施形態において、2個のニトリル基を有するノルボルナン誘導体を一般に含む製品混合物が得られる。
【0075】
もう一つの好ましい実施形態において、本発明は式(LVIII〜LX)の構造を有する化合物に関する。
【0076】
【化16】

【0077】
−CN基の密な結合点および向きならびに2個の脂環式環の向きは異なっていてもよく、化合物の混合物が本発明によって一般に製造される。構造(LVIII)、(LIX)および(LX)は、Aがノルボルナン骨格に縮合されていない脂環式基または置換脂環式基に等しく、BがCNに等しい時の構造(I)によって定義される。
【0078】
式(LVIII〜LX)の化合物の製造のために、ノルボルネン誘導体は、第VIII族触媒、好ましくはニッケル、配位子および任意に促進剤の存在下でシアン化水素と反応する。この実施形態において、1個または2個のニトリル基を有するノルボルナン誘導体を一般に含む製品混合物が得られる。
【0079】
本発明を一般的に説明してきたが、幾つかの特定の実施例を参照することにより更なる理解を得ることが可能である。実施例は例示のみの目的で本明細書に示しており、限定であることを意図していない。
【実施例】
【0080】
配位子LXI、LXII、LXIII、LXIVをこれらの実施例に記載されたヒドロシアネーション反応のために用いた。
【0081】
【化17】

【0082】
実施例1
500mlのフラスコ内で、3−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボニトリル(114g、0.78モル)をNi(COD)2(0.7g、2.6ミリモル)および配位子(LXI)(2.9g、3.1ミリモル)のトルエン(5g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.35g、2.6ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(38g)中のシアン化水素(25g、0.9モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で21時間の反応時間後に、製品化合物(XXXVII)を収率98.7%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0083】
実施例2
1000mlのフラスコ内で、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボニトリル(542g、4.1モル)をNi(COD)2(2.24g、8.1ミリモル)および配位子(LXI)(9.2g、9.8ミリモル)のトルエン(45g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(11g)中のZnCl2(1.1g、8.1ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(164g)中のシアン化水素(110g、4.1モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。70℃で15時間の反応時間後に、製品化合物(XXXVIII)を本質的に定量的に形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0084】
実施例3
500mlのフラスコ内で、3−(トリフルオロメチル)−5−ノルボルネン−2−カルボニトリル(14.5g、0.1モル)をNi(COD)2(0.26g、0.95ミリモル)および配位子(LXIII)(0.98g、1.3ミリモル)のトルエン(5g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.14g、1.05ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(3.7g)中のシアン化水素(2.6g、0.1モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で9.5時間の反応時間後に、製品化合物(XLIII)を本質的に定量的に形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0085】
実施例4
1000mlのフラスコ内で、2−メチル−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2−カルボニトリル(552g、2.6モル、過剰のジシクロペンタジエンおよびメタクリロニトリルのディールス・アルダー反応において主成分として調製されたもの)をNi(COD)2(2.16g、7.8ミリモル)および配位子(LXII)(9.24g、11ミリモル)のトルエン(45g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(20g)中のZnCl2(1.1g、7.8ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(104g)中のシアン化水素(69g、2.6モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて経時的に上の混合物に添加した。85℃で8時間の添加時間後に、製品化合物(XLIV)を収率70%で2種の副生物の次に形成した。2種の副生物は化合物(XXXVIII)およびディールス・アルダー反応において生成したシクロペンタジエンオリゴマーから誘導された製品である。標準GC法を用いて製品組成を分析した。所望の化合物を97%の純度で分留において単離した。
【0086】
実施例5
1000mlのフラスコ内で、5−メチル−5−(メトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(214g、1.3モル)をNi(COD)2(0.71g、2.6ミリモル)および配位子(LXI)(2.91g、3ミリモル)と混合した。これにZnCl2(0.35g、2.6ミリモル)を添加した。アセトニトリル(49.6g)中のシアン化水素(33g、1.2モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で290分の添加時間後に、製品化合物(XLVII)を収率96.7%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0087】
実施例6
500mlのフラスコ内で、3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸−メチルエステル(125g、0.75モル)をNi(COD)2(0.7g、2.5ミリモル)および配位子(LXI)(2.95g、3.5ミリモル)のトルエン(30g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(10g)中のZnCl2(0.34g、2.5ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(30g)中のシアン化水素(20g、0.73モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で3時間の反応時間後に、製品化合物(XLVI)を収率94%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0088】
実施例7
500mlのフラスコ内で、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−カルボン酸のジメチルエステル(564g、0.75モル)をNi(COD)2(1.5g、5.4ミリモル)および配位子(LXI)(5.56g、5.4ミリモル)のトルエン(30g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(20g)中のZnCl2(0.73g、5.4ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(105g)中のシアン化水素(70g、2.6モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で5時間の反応時間後に、製品化合物(XLVIII)を収率97.4%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0089】
実施例8
100mlのフラスコ内で、2−(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−エタノール(38.4g、0.23モル)をNi(COD)2(0.16g、0.57ミリモル)および配位子(LXII)(0.67g、0.8ミリモル)のトルエン(20g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(10g)中のZnCl2(0.08g、0.57ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(9g)中のシアン化水素(6g、0.22モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で7時間の反応時間後に、製品化合物(LIV)を収率99.7%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0090】
実施例9
100mlのフラスコ内で、1,4,4a,5,6,9,10,10a−オクタヒドロ−1,4−メタノベンゾシクロオクテン(72g、0.41モル)をNi(COD)2(0.57g、2.1ミリモル)および配位子(LXI)(2.34g、2.5ミリモル)のトルエン(5g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(10g)中のZnCl2(0.28g、2.1ミリモル)の溶液を添加した。トルエン(53.7g)中のシアン化水素(13.4g、0.5モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。50℃で21時間の反応時間後に、出発材料は96.4%で転化された。ジニトリル製品(L)を収率53.4%で形成した。残りはモノニトリル付加製品である。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0091】
実施例10
1000mlのフラスコ内で、カルブ酸無水物(50g、0.30モル)をテトラヒドロフラン(100g)に溶解させた。これにNi(COD)2(0.17g、0.61ミリモル)および配位子(LXII)(0.7g、0.82ミリモル)の溶液を添加した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.09g、0.67ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(11.1g)中のシアン化水素(7.4g、0.27モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。その間、内部温度は50℃を越えなかった。3時間の反応時間後に、製品(LI)を収率48.5%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0092】
実施例11
500mlのフラスコ内で、5−(3,4−ジエテニルシクロヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(50g、0.22モル)をNi(COD)2(0.30g、1.1ミリモル)および配位子(LXI)(1.4g、1.48ミリモル)のトルエン(10g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.16g、1.20ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(8g)中のシアン化水素(5.33g、0.22モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。その間、内部温度は50℃を越えなかった。12時間の反応時間後に、製品(LIX)を収率8%で形成した一方で、製品
【0093】
【化18】

【0094】
を収率65%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0095】
実施例12
1000mlのフラスコ内で、5−(3−シクロヘキセン−1−イル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(140g、0.80モル)をNi(COD)2(1.1g、4.0ミリモル)および配位子(LXI)(4.55g、4.82ミリモル)のトルエン(10g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.55g、4.0ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(39.2g)中のシアン化水素(26.1g、0.97モル)の溶液を調製し、50℃でシリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。11時間の反応時間後に、出発材料は99.7%に転化し、収率75.4%でのモノニトリル付加体の形成および収率24.3%での製品(LVIII)の形成を伴った。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0096】
実施例13
1000mlのフラスコ内で、5−エチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(105g、0.87モル)をNi(COD)2(1.12g、4.38ミリモル)および配位子(LXI)(4.94g、5.24ミリモル)のトルエン(10g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.65g、4.8ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(40.7g)中のシアン化水素(27.15g、1.0モル)の溶液を調製し、50℃でシリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。19時間の反応時間後に、出発材料は98.6%に転化し、収率34.6%でのモノニトリル付加体の形成および収率64.0%での製品(LVI)の形成を伴った。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0097】
実施例14
500mlのフラスコ内で、2,3−ジメタノール−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン(42.8g、0.28モル)をNi(COD)2(0.38g、1.39ミリモル)および配位子(LXI)(1.77g、1.87ミリモル)のトルエン(10g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.21g、1.53ミリモル)の溶液を添加した。テトラヒドロフラン(11.3g)中のシアン化水素(7.5g、0.28モル)の溶液を調製し、50℃でシリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。15時間の反応時間後に、製品(LIII)の生成が本質的に定量的な収率で観察された。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0098】
実施例15
500mlのフラスコ内で、メチル4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデク−9−エン−4−カルボキシレート(50g、0.22モル)をNi(COD)2(0.12g、0.43ミリモル)および配位子(LXI)(0.55g、0.58ミリモル)のトルエン(5g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.065g、0.47ミリモル)の溶液を添加した。シアン化水素(5.2g、0.19モル)を50℃でシリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。反応を室温で開始したが、発熱を示し、反応温度は80℃に達した。2時間の反応時間後に、製品(XLIX)の生成が収率85%で観察された。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0099】
実施例16
500mlのフラスコ内で、5,5’ −ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(20g、0.17モル)をNi(COD)2(0.09g、0.33ミリモル)および配位子(LXI)(0.38g、0.4ミリモル)のトルエン(5g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.05g、0.33ミリモル)の溶液を添加した。ピペット添加を用いてシアン化水素(9.4g、0.35モル)を上の混合物に添加した。反応は発熱を示し、反応温度は80℃に達した。1時間の反応時間後に、製品(LX)の生成が60%モノニトリル製品の次に収率15%で観察された。製品混合物は、ニトリル製品にシアン化水素化できるビニルノルボルネンとジシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応で生成した副製品も含んでいる。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0100】
実施例17
500mlのフラスコ内で、4’,5’ −ジヒドロ−スピロ[ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3’(2’H)−フラン]−2’−オン(25g、0.152モル)をNi(COD)2(0.21g、0.76ミリモル)および配位子(LXIV)(0.81g、1.03ミリモル)のトルエン(20g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.11g、0.76ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(6.2g)中のシアン化水素(4.12g、0.152モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。内部温度は50℃を越えなかった。16時間の反応時間後に、製品(LII)を収率81%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0101】
実施例18
500mlのフラスコ内で、3−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボニトリル(15g、0.076モル)をNi(COD)2(0.14g、0.56ミリモル)および配位子(LXIII)(0.52g、0.68ミリモル)のトルエン(20g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.08g、0.56ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(3.11g)中のシアン化水素(2.08g、0.077モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。その間、内部温度は50℃を越えなかった。16時間の反応時間後に、製品(XXXIX)を収率70%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0102】
実施例19
20mlのガラス容器内で、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−(α−メチル)−アセトニトリル(1.4g、9.5ミルモル)をNi(COD)2(0.01g、0.05ミリモル)および配位子(LXI)(0.05g、0.068ミリモル)のトルエン(0.5g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.01g、0.05ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(0.39g)中のシアン化水素(0.26g、9.51ミリモル)の溶液を調製し、2分間に1滴の添加速度を用いて上の混合物に添加した。内部温度は、このプロセス中に33℃を越えなかった。16時間の反応時間後に、製品(XL)を収率70%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0103】
実施例20
500mlのフラスコ内で、3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボニトリル(33g、0.25モル)をNi(COD)2(0.14g、0.5ミリモル)および配位子(LXI)(0.51g、0.55ミリモル)のトルエン(10g)溶液と混合した。これにアセトニトリル(5g)中のZnCl2(0.07g、0.55ミリモル)の溶液を添加した。アセトニトリル(10g)中のシアン化水素(6.7g、0.25モル)の溶液を調製し、シリンジポンプを用いて上の混合物に添加した。45℃の自立内部温度で2.5時間の反応時間後に、製品化合物(XLI)を収率85%で形成した。標準GC法を用いて製品組成を分析した。
【0104】
実施例21〜25
本発明のノルボルナンニトリル誘導体のアミン誘導体を典型的なエポキシ樹脂と反応させてフィルムを調製した。本発明のノルボルナンニトリル誘導体の水素添加によって調製されたジアミン誘導体を用いて実施例21〜25を行った。
【0105】
ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン(Aldrich)を反応バイアルに入れた。これに室温で2:1のモル比で本発明のジニトリルから誘導されたジアミンを添加した。Voltexミキサーを用いてこの混合物を2分にわたり混合した。均質透明混合物をガラスプレート上に引き伸ばし、乾燥時間レコーダに入れた。乾燥時間レコーダを24時間サイクルに設定し、測定を室温で行った。
【0106】
表1

ステージ0:平滑化、ステージ1:基本トレース、ステージ2:フィルム形成、ステージ3:表面トレース、ステージ4:乾燥
【0107】
本発明のプロセスおよび組成物に対する種々の修正、変更、付加または置換は本発明の思想および範囲から逸脱せずに当業者に対して明らかであろう。本発明は、本明細書で記載した例示的な実施形態に限定されず、逆に以下の特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、
kは0、1または2に等しく、橋架けCH2基は、第1の橋架けCH2基と同じ側にあっても、または第1の橋架けCH2基に対して反対側にあってもよく、
式中、
20、R21、R22は同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ独立してH、C1〜C20アルキル基、ヒドロキシルで置換されたC1〜C20アルキル基、C1〜C18パーフルオロアルキル基、フェニル基、C1〜C12アルキル基で置換されたC6〜C20アリール基、ヒドロキシル基で置換されたC6〜C20アリール基、C(O)OR29基(R29はC1〜C20直鎖または分岐あるいは環式アルキルまたはC6〜C20アリール基であるように選択される)、あるいはアルキレン鎖(−(CH2q−;qは0〜16の整数に等しい)または無(この場合、AまたはBはノルボルナン骨格に戻って接続してもよい)であり、
式中、
Aは無または任意のアルキレン鎖(−(CH2p−;pは1〜16の整数に等しい)、任意の置換C1〜C20アルキレン基(置換基がシアノ基もアミノ基も含まず、本発明の方法を妨げないことを条件とする)、C1〜C20脂環式基またはC1〜C18パーフルオロアルキレン基に等しく、ここで、AはR20、R21またはR22を通してノルボルナン骨格に接続する5個を上回る炭素の環を形成してもよいが、但し、Aが無に等しい場合、R20、R21およびR22がすべてHであることが可能でないことを条件とし、
式中、
Bは−CN、−(CH2sOHまたは−C(O)OR24(sは0〜12の整数に等しく、R24はH、C1〜C20直鎖または分岐あるいは環式アルキルまたはアルキレン基、C6〜C20アリール基またはC1〜C18過フッ素化アルキル基であるように選択され、ここで、R24はR20、R21またはR22を通してノルボルナン骨格に接続してもよいか、または
24はR20、R21またはR22を通してノルボルナン骨格に接続して環式無水物を形成する−C(O)−基に等しくてもよい)に等しく、
および、式中、
25、R26、R27、R28は同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ独立してHまたは−CNであるが、但し、R25、R26、R27、R28のうちの1つだけが−CNであることを条件とする)
のニトリル組成物または該組成物の混合物あるいは異性体。
【請求項2】
構造(I)
【化2】

(式中、
kは0または1に等しく、Aは無に等しく、Bは独立して基
−C(O)OR29または−CN
から選択される一方で、R20〜R22の少なくとも1個は独立してメチル、エチル、あるいはC1〜C20直鎖または分岐アルキル基あるいはC1〜C18パーフルオロアルキル基またはフェニル基あるいはC1〜C20直鎖または分岐アルキル基で置換されたC6〜C20アリール基、あるいはヒドロキシルで置換されたC6〜C20アリール基、または−C(O)OR29基(R29はC1〜C20直鎖または分岐あるいは環式アルキル基またはC6〜C20アリール基であるように選択される)から選択され、
置換基R25〜R28の一個は独立して−CNである一方で、基R25〜R28内の他の3個の置換基は水素である)
である請求項1に記載のニトリル組成物。
【請求項3】
構造(I)
【化3】

(式中、
kは0または1に等しく、Aは無に等しく、Bと置換基R20〜R22の1個は選択されて、分子内環式無水物またはラクトン:
−(CH2rC(O)OC(O)(CH2q−、
−(CH2r−C(O)O−(CH2q
を形成し(rおよびqは、0、1、2、3、4、5または6に等しい)、
置換基R25〜R28の一個は独立して−CNである一方で、基R25〜R28内の他の3個の置換基は水素である)
である請求項1に記載のニトリル組成物。
【請求項4】
構造(I)
【化4】

(式中、
kは0または1に等しく、Aは無に等しく、Bは−CH2OHに等しく、R20は−CH2OHまたは−CH2CH2OHに等しく、
置換基R25〜R28の一個は独立して−CNである一方で、基R25〜R28内の他の3個の置換基は水素である)
である請求項1に記載のニトリル組成物。
【請求項5】
構造(I)
【化5】

(式中、
kは0または1に等しく、Aと置換基R20〜R22の1個は選択されて、Bが結合された置換環式脂肪族基
−(CH2rCH(B)(CH2q
を形成し(rおよびqはそれぞれ0〜15の整数に等しく、2<(r+q)<15である)、
Bはシアノ基(−CN)に等しく、置換基R25〜R28の一個は独立して−CNである一方で、基R25〜R28内の他の3個の置換基は水素である)
である請求項1に記載のニトリル組成物。
【請求項6】
構造(I)
【化6】

(式中、
kは0または1に等しく、Aは−(CH2p−(pは1〜12の整数に等しい)に等しく、Bは−CNに等しい一方で、置換基R20〜R22は水素、メチルまたはC2〜C20分岐または直鎖アルキル基であり、
置換基R25〜R28の一個は独立して−CNである一方で、基R25〜R28内の他の3個の置換基は水素である)
である請求項1に記載のニトリル組成物。
【請求項7】
構造(I)
【化7】

(式中、
Aは置換シクロヘキシル基
【化8】

または置換ビニルシクロヘキシル基
【化9】

あるいは置換ノルボルニル基
【化10】

から選択され、
20〜R22は水素である一方で、Bは−CNであり、
置換基R25〜R28の一個は独立して−CNである一方で、基R25〜R28内の他の3個の置換基は水素である)
である請求項1に記載のニトリル組成物。
【請求項8】
請求項1の置換ノルボルナンニトリル化合物の調製のためのヒドロシアネーション法であって、触媒の存在下で対応する置換ノルボルネン化合物をシアン化水素含有流体と接触させて式(I)のニトリル組成物を生成せしめることを含む方法。
【請求項9】
前記触媒は有機燐配位子および第VIII族金属または化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第VIII族金属または化合物は、ニッケル、コバルトおよびパラジウムからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機燐配位子は独立して構造式II、III、IVおよびV
【化11】

(式中、
1は、非置換フェニルまたは1個以上のC1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシ基で置換されたフェニル、あるいは非置換ナフチルまたは1個以上のC1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシ基で置換されたナフチルであり、
ZおよびZ1は独立して構造式VI、VII、VIII、IXおよびX
【化12】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は独立してH、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシから選択され、
XはO、SまたはCH(R10)であり、R10はHまたはC1〜C12アルキルである)
【化13】

(式中、R11およびR12は独立してH、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシならびにCO213から選択され、
13は非置換C1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールあるいは、C1〜C4アルキルで置換されたC1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールであり、
YはO、S、CH(R14)であり、
14はHまたはC1〜C12アルキルである)
【化14】

(式中、R15はH、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシならびにCO216から選択され、
16は非置換C1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールあるいは、C1〜C4アルキルで置換されたC1〜C12アルキルまたはC6〜C10アリールである)
からなる群から選択される)
のモノデンテートおよびバイデンテートホスフィット配位子からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記配位子は、構造式XI〜XXXIV
【化15】

【化16】

【化17】

(式中、
各式について、R17は、H、メチル、エチルまたはイソプロピルからなる群から選択され、R18およびR19は独立してHまたはメチルから選択される)
からなる群から独立して選択されたバイデンテートホスフィット配位子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶媒の存在下で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
促進剤の存在下で行われる、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2007−520490(P2007−520490A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551248(P2006−551248)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/001749
【国際公開番号】WO2005/075412
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】