説明

ニトロ化合物の製造方法及びその製造装置

【課題】高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機ニトロ化合物を製造する方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】高温高圧水(温度300℃、圧力20MPa以上)を反応媒体とする反応系において、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することを特徴とする有機ニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置。
【効果】大量の硝酸等の無機酸を必要としない、操作上の危険性、耐酸設備、発熱反応の制御、廃酸、排水の浄化処理等の問題がない有機ニトロ化合物の新しい生産技術を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することを特徴とする有機ニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置に関するものであり、更に詳しくは、温度300℃以上、圧力20MPa以上の高温高圧水、例えば、亜臨界水ないし超臨界水を反応媒体とする反応系において、有機ニトロ化合物を、安全に、連続して、効率良く製造することを可能とするニトロ化合物の新しい生産技術に関するものである。
【0002】
有機ニトロ化合物は、その多岐にわたる反応性を利用して、広範囲の分野における有機工業製品の出発原料又は中間体として用いられている重要な化合物である。しかし、その工業的製造方法については、従来、操作上の危険性、発熱反応の制御、環境汚染等の問題を抱えていた。本発明は、これらの従来技術の有する諸問題を根本的に解決することを可能とするとともに、簡便な方法及び装置により、短時間で大量生産が可能な有機ニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置に関する新技術を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
ニトロ化合物は、その豊富な反応性等から工業製品の出発原料又は中間体としてきわめて重要な位置づけにある。特に、芳香族ニトロ化合物は、医薬、農薬、染料、繊維、プラスチックス等、広範囲にわたる有機工業製品の製造における出発原料又は中間体として重要であり、毎年、世界中で何100万トンものニトロ化合物が消費されている。例えば、最も簡単な化合物であるニトロベンゼンひとつを例にとっても、国連統計(1997年度)によると、1995年度におけるその消費量は、北米が561,240トン、日本が241,470トン、ECが172,280トンとなっており(非特許文献1)、統計的に公表されない戦略用爆薬としてのニトロ化合物の需要も考慮すると、世界的にみたニトロ化合物の消費量の莫大さは今後とも変わらないことが予想される。そして、これらのニトロ化合物群は、その製造プ口セスにおける反応の激しさと生成物の危険性等から、特徴のある商品形態群を形成してしいる。
【0004】
ニトロ化合物は、これほど需要の大きい基礎工業製品でありながら、その工業的な合成には、前世紀の前半に開発された技術である、硝酸を単独又は硫酸と併用してニトロ化する方法が現在でも実用的な方法として全世界において採用されている。この方法は、強酸を大量に使用するため、操作上の危険性、耐酸設備、発熱反応の制御等の、避けて通れない技術上の問題点を抱えている。ニトロ化反応の過程で生じる廃酸や排水の処理は、環境問題との絡みから必須であり、製造コストを圧迫する大きな要因となっている。また、硝酸によるニトロ化反応では、飽和炭化水素類から対応するニトロ化合物を収率良く製造することは困難である。
【0005】
そこで、硝酸、硫酸、リン酸等の取扱いの難しい無機酸を用いることなく、芳香族ニトロ化合物を製造することにより、公害の少ない、環境に優しい方法で芳香族ニトロ化合物を製造する方法として、芳香族化合物をハロゲン化有機溶媒に溶解又は懸濁せしめ、窒素酸化物とオゾンを含む酸素又は空気を作用せしめることにより、芳香族ニトロ化合物を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、反応速度を速めるためには触媒を必要とし、オゾンを発生させるためのオゾン発生装置等の付帯設備を設ける必要がある。
【0006】
また、その他の方法として、例えば、NO及びNOのうちのいずれか一方の窒素化合物と酸素の反応により生成するNを用いて、触媒の非存在下、比較的温和な条件で有機基質をニトロ化し、高い転化率、選択率でニトロ化合物を生成させる方法(特許文献2参照)や、更に、硝酸を使用しないニトロ化方法として、希土類元素とペルフルオロアルキル基を有する触媒、III族元素の硝酸塩、及びカルボン酸無水物の存在下に、芳香族化合物をニトロ化する反応方法(特許文献3参照)、等が提案されているが、この種の方法は、様々な問題点を有し、工業的生産に適しているとは言い難い。
【0007】
上記の方法等により製造されたニトロ化合物は、例えば、水素添加されて工業製品の中間原料である芳香族アミン等へと転換される。芳香族ニトロ化合物の水素添加反応としては、例えば、固定触媒上での気相中で、芳香族ニトロ化合物の水素化により芳香族アミンを製造する際に、特定の圧力下で断熱的に、入口温度、及び細孔触媒温度を特定して実施する方法(特許文献4参照)、また、多孔性無機物担体の細孔内に、ヘテロポリ酸化合物を担持して得られる粒状複合無機イオン交換体を触媒とする芳香族ニトロ化合物の水素添加反応(特許文献5参照)、等が提案されている。
【0008】
生成したアミン類、例えば、トリレンジアミンは、ポリウレタン樹脂の原料であるトリレンジイソシアナート(TDI)の中間体として大量に生産される。トルイジンイソシアナートの製造工程は、トルエンをニトロ化によりジニトロトルエンとし、それを接触的水素添加によりトリレンジアミンとなし、更に、ホスゲンによりジイソシアナートとするのが一般的であり、このニトロ化合物を経由したプロセスは、ジイソシアナートの大量生産を行う連続プロセスとして適している。
【0009】
【特許文献1】特開平4−217645号公報
【特許文献2】特開平10−236987号公報
【特許文献3】特開2003−81920号公報
【特許文献4】特開平8−59569号公報
【特許文献5】特開2001−269582号公報
【非特許文献1】化学経済、3月臨時増刊号、「ポリイソシアナート」の項(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、多量の硝酸、硫酸等の無機酸、重金属触媒等の環境処理上の困難な有害物を使用することなく、操作上の危険性、耐酸設備、発熱反応の制御等の問題を生じない新しいニトロ化合物の合成技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することにより、有機ニトロ化合物を安全に、簡便に、効率良く製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、高温高圧の条件下の高温高圧水を反応媒体として使用することにより有機ニトロ化合物を、簡便な装置で、効率良く製造することができるニトロ化合物の製造方法及びその製造装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、操作上の危険性、耐酸設備、発熱反応の制御等に問題を生じない有機ニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、一段階で、きわめて短い反応時間内で、連続して、高度の選択性を保持して有機ニトロ化合物を製造する反応プロセスを提供することを目的とするものである。更に、本発明は、多量の廃酸、排水の処理を必要としない、環境に優しい有機ニトロ化合物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することを特徴とする有機ニトロ化合物の製造方法。
(2)反応媒体が、300℃以上、20MPa以上の高温高圧水である前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(3)反応媒体が、亜臨界水ないし超臨界水である前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(4)有機基質から、1段の反応プロセスで有機ニトロ化合物を合成する前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(5)有機基質から、連続プロセスで有機ニトロ化合物を合成する前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(6)有機基質が、脂肪族化合物、芳香族化合物、又は複素環式化合物である前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(7)有機基質が、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、芳香族炭化水素、多環式芳香族化合物、又は含窒素芳香族である前記(6)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(8)ニトロ化剤が、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、又は硝酸カルシウムである前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(9)反応系の組成、温度、圧力、及び/又は時間を調整して、目的化合物の選択率、転換率、及び/又は収率を制御する前記(1)に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
(10)高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて有機ニトロ化合物を合成するための装置であって、反応器と、高温高圧水供給手段、有機基質供給手段、ニトロ化剤供給手段と、これらの各手段から、高温高圧水、有機基質、及びニトロ化剤を上記反応器に供給するための高温高圧流路とを具備し、上記反応器内において、有機基質とニトロ化剤から高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて有機ニトロ化合物を合成するようにしたことを特徴とする有機ニトロ化合物の製造装置。
(11)反応媒体が、温度300℃以上、圧力20MPa以上の高温高圧水である前記(10)に記載の有機ニトロ化合物の製造装置。
(12)反応媒体が、亜臨界水ないし超臨界水である前記(10)に記載の有機ニトロ化合物の製造装置。
(13)連続操作手段を具備した連続製造装置である前記(10)に記載の有機ニトロ化合物の製造装置。
【0013】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成する有機ニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置の点に特徴を有するものである。本発明は、有機ニトロ化合物を、一段の反応により、連続して、操作上の危険性がなく合成すること、医薬、農薬、染料、繊維、プラスチック等の有機工業製品の製造における原料又は中間体として有用な有機ニトロ化合物を安全に製造すること、が可能な新規な反応プロセスを提供するものである。
【0014】
本発明においては、反応媒体として、高温高圧条件の水が用いられるが、具体的には、温度300℃以上、圧力20MPa以上の高温高圧水が用いられ、好適には、亜臨界水ないし超臨界水が反応媒体として用いられる。ここで、超臨界水とは、375℃以上の温度で、かつ22.1MPa以上の圧力にある水の状態をいう。亜臨界水とは、超臨界水に近い高温高圧状態の水であり、通常、温度が水の臨界温度近傍及び/又は圧力が水の臨界圧力近傍の状態にある水を意味し、例えば、温度300〜370℃、圧力20〜22MPa領域付近の水が包含される。
【0015】
水には、気体(水蒸気)、液体(水)、固体(氷)の三態があり、更に、臨界温度を超え、かつ、臨界圧力を超えると、圧力をかけても凝縮せず、気体と液体の境界がなくなり、単一の流体相が出現する。この状態が、超臨界状態と定義され、このような超臨界状態にある水ないし超臨界状態に近い亜臨界状態等の高温高圧水は、液体や気体の通常の性質と異なる性質を示す。すなわち、超臨界状態ないし亜臨界状態の水の密度は液体に近く、粘度は気体に近く、熱伝導率と拡散係数は、気体と液体の中間的性質を示し、化学反応の進行に特異な影響を与える。
【0016】
本発明で用いる超臨界水等の高温高圧水は、それ自体公知の方法によって製造され、その温度、圧力条件等は、例えば、その生成装置の外からヒーターや溶融塩等の加熱により、あるいは反応器内での内熱方式によって制御される。また、予め高温高圧水を製造しておき、外部から送水ポンプ等を用いて反応器内に注入して反応器内で、その温度、圧力となるように調整しても良いし、温度圧力条件の異なる2種類以上の高温高圧水を反応系に供給して反応条件を制御することも可能である。また、反応容器内での圧力は、連続式であれば圧力調整弁で制御することができる。更に、窒素ガス等、他の気体を注入することによって、圧力をコントロールすることもできる。
【0017】
上記反応媒体の高温高圧水を製造するために用いる水は、特に制限はなく、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水等を用いれば良いが、溶存酸素が反応に悪影響を与える場合があるので、予め窒素ガス、ヘリウム等でバブリングし、除去しておくことが望ましい。本発明の方法は、従来の合成法とは異なり、金属触媒や有機溶媒を使用することなく、有機ニトロ化合物を合成することができるので、触媒や有機溶媒は必要としないが、それらの使用を必ずしも妨げるものではない。本発明では、例えば、触媒を用いる場合には、触媒の添加やその除去工程を適宜付加することができる。触媒としては、一般に、この種の反応に使用される触媒であれば何れのものも使用でき、例えば、上記ニトロ化反応を促進するものであれば、適宜のものを使用することができる。
【0018】
本発明では、有機基質、ニトロ化剤、及び反応媒体を反応器に導入し、所定の時間保持することにより、有機基質がニトロ化合物に変換される。有機基質としては、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環式化合物等が挙げられるが、好適には、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、芳香族炭化水素、多環式芳香族化合物、含窒素芳香族化合物等が用いられる。具体的には、脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンが挙げられる。脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、セルロース、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0019】
芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、フェノール、アニソール、クロロベンゼンが挙げられる。また、多環式芳香族化合物としては、ナフタレン、アントラセンが挙げられる。また、含窒素芳香族化合物としては、ピリジンが挙げられる。これらの有機基質は、本発明のニトロ化反応を阻害しない範囲で置換基を有することができる。このような置換基としては、例えば、芳香族アルキル基、芳香族アルキレン基、フェノール性水酸基、ハロゲン基、カルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0020】
しかし、これらの化合物に制限されるものではなく、本発明では、上述の化合物と同等ないし類似の化合物であって、ニトロ化剤を用いてニトロ化反応が生起する化合物であれば同様に使用することができる。ニトロ化剤としては、通常のニトロ化反応において用いられているニトロ化剤を使用することが可能であり、例えば、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等も用いることができる。好適には硝酸が用いられる。
【0021】
本発明において、ニトロ化合物を合成するには、目的とする化合物に応じて、反応器中での有機基質の濃度、ニトロ化剤の濃度を任意に調整することができる。反応器中でのニトロ化剤は、多量の媒体により希釈されて低濃度となっているため、反応温度を制御することは容易である。また、低濃度でニトロ化反応が効率良く進行するため、過剰量のニトロ化剤の使用を避けることができ、反応混合物から目的とする化合物を分離することが容易であり、多量の高濃度廃酸の生成、廃液の処理を避けることができる。
【0022】
本発明では、好適には、例えば、350〜700℃、20〜50MPaの高温高圧水を供給できる高温高圧水供給装置を利用した、所定の設定温度に少なくとも1秒以下の時間内で到達することが可能な機構を有する連続式高温高圧反応装置が用いられるが、バッチ式反応装置も用いることができる。本発明では、これらを含む適宜の反応装置を用いて、本発明の有機ニトロ化合物の製造方法及びその製造装置を任意に設計することができる。
【0023】
本発明において、好適な反応条件は、反応温度350〜400℃、反応圧力20〜50MPa、反応時間1秒以下の短時間(瞬時)であり、反応器内に、有機基質、ニトロ化剤、及び反応媒体を導入し、これらを所定の設定反応温度に少なくとも0.02〜0.05秒で到達させることが好ましい。これにより、例えば、バッチ式反応装置(1〜5時間)、従来の連続式反応装置(10〜120秒)と比べて、設定反応温度に至る経過時間が極端に短縮される。こうすることによって、反応収率、及び生成物の選択性を高めることができる。
【0024】
本発明では、上記した反応の態様を採用することにより、例えば、反応時間0.001秒から60秒の短時間で芳香族化合物から芳香族ニトロ化合物が合成される。連続式反応装置を用いる場合、反応時間は、反応温度、反応圧力、高温高圧水の流速、反応基質の導入流速、反応器の形状、反応器内径、反応器の流通経路の長さ等を制御することによって反応時間をコントロールできる。より好適には、反応時間として、0.001秒から30秒の範囲の値を選択でき、最も好適には0.05秒から10秒の範囲の値を選択できる。
【0025】
しかし、本発明は、これらの値に限定されるものではない。これによって、その設定反応温度に至る経過時間内での複雑な反応が生じにくく、シャープな反応が可能となる。すなわち、設定温度に至る経過時間が長くなると、複雑な反応が生じて、目的とする化合物を高選択率で合成することが困難となる。本発明では、反応時間が短いため、小型の装置で、短時間のうちに大量の生成物を得ることが可能であり、生産効率の高い有機ニトロ化合物の製造方法及びその装置を構築することができる。
【0026】
連続方式による場合には、例えば、連続的に供給される超臨界水に対し、芳香族化合物と硝酸を個別に、あるいは混合した後、これらを連続的に加える方法、また、所定量の硝酸を溶解した水を、送液ポンプにより送液し、予備加熱器を通過させて反応温度まで昇温するとともに、送液ポンプにより原料である芳香族化合物を送液し、予備加熱器を通過した水溶液と合流させる方法等が採用できる。それにより、本発明では、芳香族化合物及び硝酸を、所定温度の超臨界水が流通する反応器に高速で通過させ、所定時間、設定温度、圧力下で反応させて、目的生成物を得ることができる。
【0027】
連続方式及びバッチ式の何れの反応方式であっても、反応終了後の反応混合物には、目的物とする有機ニトロ化合物の他に、未反応の原料又は副生物等の不純物が含まれるので、これらを分離精製することにより、所望の化合物を得ることができる。分離・精製の方法は、特に限定されず、工業的に通常用いられる蒸留、抽出、シリカゲルやイオン交換樹脂カラム等による分離方法が適用できる。バッチ方式による場合には、例えば、耐圧容器(オートクレーブ)中に、原料である有機基質とニトロ化剤を入れ、水が超臨界状態ないし亜臨界状態となるように、温度、圧力を制御し、所定時間、所定の設定温度、圧力下で反応させる方法が例示される。
【0028】
本発明の有機ニトロ化合物の製造装置は、例えば、反応器を所定の温度に保持するための恒温装置、ニトロ化反応器、高温高圧水供給装置、有機基質供給装置、ニトロ化剤供給装置、及び反応生成物の取出し装置を有し、反応器及び各供給装置類は高温高圧流路により接続されている。その一例を、図1に示す。反応器の一端の上流側には、高温高圧水供給装置、有機基質供給装置、ニトロ化剤供給装置に通じる高温高圧流路が接続され、他端の下流側には、反応生成物の取出し装置に通じる高温高圧流路が接続されている。
【0029】
この流路に接続して設けられた各供給装置から、高温高圧水、有機基質、ニトロ化剤が反応器に供給される。それらの温度、圧力、流量、流速等を制御することにより、反応器内が所定の反応条件に調整され、有機基質及びニトロ化剤は、反応器内で所定の温度、圧力の下に反応して有機ニトロ化合物に変換される。反応混合液は、反応生成物の取出し装置により、減圧、冷却されて回収される。また、本発明のニトロ化合物の製造装置には、緊急時に装置を冷却することができる緊急冷却用ポンプ、装置内を洗浄するための洗浄用のポンプ等の付帯設備を適宜設けることができる。
【0030】
本発明により合成される有機ニトロ化合物は、広範囲にわたる有機工業製品の製造原料又は中間体として重要な化合物であり、例えば、一例として、ポリウレタンの製造に用いられる、ジイソシアナート類の合成原料の製造に有用である。従来、高温高圧水を反応媒体とする合成方法については、アクリル酸、アミン類、芳香族カルボン酸等の有機合成法が知られているが、本発明は、反応が激しく、その制御が困難であり、生成物の爆発の危険性等を伴う恐れのある、従来の有機ニトロ化合物の合成プロセスが有する問題点を克服した新しい反応方式を提供することを実現するものである。また、本発明は、高温高圧水(350℃、20MPa以上)、例えば、亜臨界水ないし超臨界の水を反応媒体とした反応方式により、有機ニトロ化合物を、簡単な製造装置により連続して効率良く、安全に合成すること、有機ニトロ化合物を短時間で大量に合成すること、及び高い選択率で合成すること、を可能とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)高温高圧水の反応場に、有機基質とニトロ化剤を高速で圧入することによって、短時間で、しかも一段階で有機ニトロ化合物を製造することができる。
(2)製造工程での操作上の危険性、耐酸設備、発熱反応の制御等に問題を生じないニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置を提供することができる。
(3)有機溶媒、反応触媒等の反応介在物が必要でないため、生成物に不純物が混入する恐れが少ない。
(4)反応時間が短いため、短時間で大量の有機ニトロ化合物を合成するのに適している。
(5)反応に選択性があり、目的とする化合物が純度良く得られる。
(6)反応媒体が水であるため、反応生成物の取り扱いが容易であり、また、反応媒体から生成物を容易に分離できる。
(7)反応媒体として水を使用し、有機溶媒、触媒等を使用しなくても良いため、製造工程から廃酸等の廃物、廃液の排出が少なく、それらの処理が不要となり、環境問題との調和が良好で、生産コストを軽減化することが可能性な有機ニトロ化合物の製造方法及びその製造装置を提供することができる。
(8)本発明の有機ニトロ化合物の合成法により、従来法に代替し得るニトロ化合物の新しい生産技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
(1)連続方式によるピクリン酸の製造
本実施例では、有機基質としてトルエンを、また、ニトロ化剤として硝酸を用いて、これらの反応によりピクリン酸を製造した。反応式を化1に示す。
【0034】
【化1】

【0035】
(2)製造装置
製造装置として、図1に示される連続式の有機ニトロ化合物の製造装置を使用した。高温高圧水による反応条件は、反応温度375℃、反応圧力40MPaの超臨界状態とした。反応管は、総体積0.105cm、内径0.5mm、長さ50cmの管により構成した。原料のトルエン及び硝酸は、市販の特級試薬を使用し、高温高圧水には、脱イオン、脱酸素処理した純水を使用した。
【0036】
反応器と高温高圧水等の各供給装置等を接続する高温高圧流路には、ハステロイC−276から作製された管を使用した。反応器は、該流路を通して、高温高圧水供給装置、トルエン供給装置、硝酸供給装置、及び生成物の取出し装置と接続した。トルエン及び硝酸は、反応器に流入する前に、流路中において高温高圧水と混合した後、反応器へと供給されるように各装置を配置した。反応器は、インコネル625からなる、内径0.5mm、長さ50cm、総体積0.105cmの管から構成した。また、必要箇所には、熱電対、圧力計を設けて、温度、圧力を監視し、反応器内が所定の反応条件となるように装置を制御した。
【0037】
(3)実験操作
高圧ポンプAで超臨界水を5ml/minで供給しつつ、目的条件である375℃/40MPaになるように、圧力は排圧弁で、温度は超臨界水供給装置と恒温装置でコントロールした。高圧ポンプBは、基質のトルエンを1ml/minで供給し、高圧ポンプCより希硝酸(3N)を2ml/minで導入した。高圧ポンプDとEを設け、それぞれを洗浄用と緊急冷却用の冷水供給ポンプとした。
【0038】
この条件で、超臨界水を反応媒体として、トルエン、及び硝酸を、上記反応器に供給してニトロ化反応を遂行した。この反応条件下での反応時間は0.482秒であった。この場合、反応終了液にはトルエンの芳香族環にニトロ基が導入されたピクリン酸が3〜6%生成していた。更に、反応条件を、370℃/40MPa、373℃/40MPa、及び376℃/40MPaに変更して実験を行った。回収された反応液は、何れも黄色の溶液となり、ピクリン酸の生成を示していた。
【0039】
(4)反応生成物の確認
本実施例で得た反応溶出液の有機溶媒部をGC−MSにより分析して、反応生成物を確認した。分析装置としては、HP5973MS&6890GC Systemを使用した。分離カラムとして、HP19091B−112 Ultra25% Phenyl Methyl Siloxane 25m 320nm 0.52nmを使用し、流速0.8ml/min、温度100〜280℃(4℃/min)の条件で分析した。その分析結果のクロマトグラムを図2に示す。これより主成分としてピクリン酸が大量に生成し、僅かにジニトロフェノールが生成していることが分かった。
【0040】
更に、クロマトグラムのリテンションタイム14.2分の成分を、質量分析器により分析したマススペクトルを図3に示す。本実施例により合成された化合物を質量分析したマススペクトル(図3)が、図4に示す既知物質(標準物質)のピクリン酸のマススペクトルと一致していることから、本実施例では、ピクリン酸が主成分として合成されていることが確認された。更に、本実施例により合成された化合物の赤外線吸収スペクトルを図5に示し、既知物質(標準物質)のピクリン酸の赤外線吸収スペクトルを図6に示す。両赤外線吸収スペクトルを比較することにより、本実施例で合成された化合物がピクリン酸であることを確認した。
【実施例2】
【0041】
本実施例では、有機基質としてトルエンを、また、ニトロ化試薬として硝酸を用いて、該トルエンのニトロ化を試みた(化2)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0042】
【化2】

【0043】
(1)合成条件
基質:トルエン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:376℃
反応圧力(密度):40MPa(606.4kg/m
反応時間:0.446秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管の反応管、内径0.5mm、長さ500mm、容積は0.098cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、トルエン1ml/min。
【0044】
生成物の確認:GC−MS分析条件;HP5973MS & 6890GC System, Column: HP19091B−112 Ultra2 5% Phenyl Methyl Siloxane 25m*320nm*0.52nm Flow rate: 3.6 ml/min, Inj 250C, Temperature: 70(2min)−(25C/min)−130−(20C/min)−310C(5min)。
【0045】
(2)合成の結果
1:保持時間2.46分にニトロベンゼン(1)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図7に、標準物質データとライブラリー検索による一致率97%のデータを示す。
【0046】
2:保持時間7.27分に2,4,6−トリニトロフェノール(13)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図8に、標準物質データとライブラリー検索による一致率93%のデータを示す。なお、この(13)は、ピクリン酸と呼ばれる爆薬でもあることから、分離し赤外線吸収スペクトルとの比較を行い一致することを確認した(図9)。
【0047】
3:保持時間6.3分に2,4,6−トリニトロベンゼン(5)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図10に、標準物質データとライブラリー検索による一致率73%のデータを示す。なお、この一致率の低さはData Base Wiley275集積の#98403:1,3,5−trinitrobenzeneのマスフラグメントのm/z167以下のピークの取り込みのないことに起因する。従って、参考のために、図11に、有機化合物のスペクトルデータベースSDBSの1,3,5−トリニトロベンゼン(5)のマススペクトルを示す。この場合には一致率98%を示す。
【実施例3】
【0048】
本実施例では、合成条件を変えて、トルエンのニトロ化を試みた(化3)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0049】
【化3】

【0050】
(1)合成条件
基質:トルエン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:300℃
反応圧力(密度):40MPa(764.4kg/m
反応時間:1.12秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm 長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、トルエン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0051】
(2)合成の結果
ニトロベンゼン(1)、オルト(o)−ニトロトルエン(6)、メタ(m)−ニトロトルエン(7)、パラ(p)−ニトロトルエン(8)が生成された。オルト:メタ:パラの比率は約3:1:5であった。
【0052】
1:保持時間2.46分にニトロベンゼン(1)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2参照)。
【0053】
2:保持時間3.15分にオルト(o)−ニトロトルエン(6)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図12に、標準物質データとライブラリー検索による一致率95%を示す。
【0054】
3:保持時間3.45分にメタ(m)−ニトロトルエン(7)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図13に、標準物質データとライブラリー検索による一致率95%を示す。
【0055】
4:保持時間3.58分にパラ(p)−ニトロトルエン(8)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図14に、標準物質データとライブラリー検索による一致率95%を示す。
【実施例4】
【0056】
本実施例では、合成条件を変えて、トルエンのニトロ化を試みた(化4)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0057】
【化4】

【0058】
(1)合成条件
基質:トルエン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:350℃
反応圧力(密度):40MPa(671.9kg/m
反応時間:0.99秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、トルエン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0059】
(2)合成の結果
ニトロベンゼン(1)、オルト(o)−ニトロトルエン(6)、メタ(m)−ニトロトルエン(7)、パラ(p)−ニトロトルエン(8)が生成された。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2及び3を参照)。オルト:メタ:パラの比率は約2:1:6であった。
【実施例5】
【0060】
本実施例では、合成条件を変えて、トルエンのニトロ化を試みた(化5)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0061】
【化5】

【0062】
(1)合成条件
基質:トルエン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、トルエン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0063】
(2)合成の結果
ニトロベンゼン(1)、オルト(o)−ニトロトルエン(6)、メタ(m)−ニトロトルエン(7)、パラ(p)−ニトロトルエン(8)が生成された。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2及び3を参照)。オルト:メタ:パラの比率は350℃の場合とほぼ同じであった。
【実施例6】
【0064】
本実施例では、ベンゼンのニトロ化を試みた(化6)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0065】
【化6】

【0066】
(1)合成条件
基質:ベンゼン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:300℃
反応圧力(密度):40MPa(764.4kg/m
反応時間:1.12秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、ベンゼン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0067】
(2)合成の結果
1:保持時間2.46分にニトロベンゼン(1)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2を参照)。
【0068】
2:保持時間4.86分にp−ジニトロベンゼン(4)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図15に、データを示す。
【0069】
3:保持時間5.0分にm−ジニトロベンゼン(3)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図16に、データを示す。
【0070】
4:保持時間5.12分にo−ジニトロベンゼン(2)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図17に、データを示す。
【0071】
5:保持時間6.30分に1,3,5−トリニトロベンゼン(5)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2を参照)。
【0072】
6:保持時間7.27分に2,4,6−トリニトロフェノール(13)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2を参照)。検索による一致率は全て90以上であった。
7:生成されるニトロ化合物の約1/2はニトロベンゼンであった。
【実施例7】
【0073】
本実施例では、合成条件を変えて、ベンゼンのニトロ化を試みた(化7)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0074】
【化7】

【0075】
(1)合成条件
基質:ベンゼン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:350℃
反応圧力(密度):40MPa(671.9kg/m
反応時間:0.99秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1に使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、ベンゼン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0076】
(2)合成の結果
ニトロベンゼン(1)、オルト(o)−ジニトロベンゼン(2)、メタ(m)−ジニトロベンゼン(3)、パラ(p)−ジニトロベンゼン(4)が生成された。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2及び6を参照)。オルト:メタ:パラの比率は350℃の場合とほぼ同じであった。1,3,5−トリニトロベンゼン(5)、2,4,6−トリニトロフェノール(ピクリン酸)(13)も同様に生成されるが、実施例6より多く分析された。この条件におけるニトロ化合物の生成物に占める量は約83%であり、ニトロベンゼンは生成物中の約70%に達した。
【実施例8】
【0077】
本実施例では、合成条件を変えて、ベンゼンのニトロ化を試みた(化8)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0078】
【化8】

【0079】
(1)合成条件
基質:ベンゼン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、ベンゼン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0080】
(2)合成の結果
ニトロベンゼン(1)、オルト(o)−ジニトロベンゼン(2)、メタ(m)−ジニトロベンゼン(3)、パラ(p)−ジニトロベンゼン(4)が生成された。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。(スペクトルデータ実施例2及び6を参照)。オルト:メタ:パラの比率は350℃の場合とほぼ同じであった。1,3,5−トリニトロベンゼン(5)、2,4,6−トリニトロフェノール(ピクリン酸)(13)も同様に生成されるが、実施例7より多く分析された。この条件におけるニトロ化合物の生成物に占める量は約91.4%であり、ニトロベンゼンは約61%であるが、2,4,6−トリニトロフェノール(ピクリン酸)は約15.5%に増大した。
【実施例9】
【0081】
本実施例では、基質としてピリジン、また、ニトロ化試薬として硝酸を用いて、ピリジンのニトロ化を試みた(化9)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0082】
【化9】

【0083】
(1)合成条件
基質:ピリジン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:300℃
反応圧力(密度):40MPa(764.4kg/m
反応時間:1.12秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、ピリジン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0084】
(2)合成の結果
1:保持時間2.54分に3−ニトロピリジン(15)(CAS Registry No.:002530−26−9)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(図18)。
【0085】
2:保持時間3.44分に2−ニトロピリジン(14)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(図19)。
【0086】
3:この条件におけるニトロ化合物の生成物に占める割合は約48.5%であり、2−ニトロピリジン(14)は約22%であるが、3−ニトロピリジン(15)は約19%であった。
【実施例10】
【0087】
本実施例では、合成条件を変えて、ピリジンのニトロ化を試みた(化10)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0088】
【化10】

【0089】
(1)合成条件
基質:ピリジン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:350℃
反応圧力(密度):40MPa(671.9kg/m
反応時間:0.99秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、ピリジン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0090】
(2)合成の結果
主なニトロ化合物は、同様に2−ニトロピリジン(14)、3−ニトロピリジン(15)が生成された。この条件におけるニトロ化合物の生成物に占める量は約33.1%であり、2−ニトロピリジン(14)は約18.7%であるが、3−ニトロピリジン(15)は約11%であった。
【実施例11】
【0091】
本実施例では、合成条件を変えて、ピリジンのニトロ化を試みた(化11)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0092】
【化11】

【0093】
(1)合成条件
基質:ピリジン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、ピリジン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0094】
(2)合成の結果
主なニトロ化合物は2−ニトロピリジン(14)、3−ニトロピリジン(15)が生成された。この条件におけるニトロ化合物の生成物に占める量は約73.9%であり、2−ニトロピリジン(14)は約45.7%であるが、3−ニトロピリジン(15)は約26.4%であった。
【実施例12】
【0095】
本実施例では、基質としてn−ヘキサン、また、ニトロ化試薬として硝酸を用いて、n−ヘキサンのニトロ化を試みた(化12)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0096】
【化12】

【0097】
(1)合成条件
基質:n−ヘキサン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:300℃
反応圧力(密度):40MPa(764.4kg/m
反応時間:1.12秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、n−ヘキサン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0098】
(2)合成の結果
1:保持時間2.11分に1−ニトロヘキサン(16)(CAS Registry No.:646−14−0)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(図20)。
【実施例13】
【0099】
本実施例では、合成条件を変えて、n−ヘキサンのニトロ化を試みた。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
(1)合成条件
基質:n−ヘキサン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:350℃
反応圧力(密度):40MPa(671.9kg/m
反応時間:0.99秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、n−ヘキサン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0100】
(2)合成の結果
1:同様に、保持時間2.11分に1−ニトロヘキサン(16)(CAS Registry No.:646−14−0)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例12を参照)。
【実施例14】
【0101】
本実施例では、合成条件を変えて、n−ヘキサンのニトロ化を試みた。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
(1)合成条件
基質:n−ヘキサン
ニトロ化試薬:硝酸
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸2ml/min(3N)、n−ヘキサン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0102】
(2)合成の結果
1:同様に、保持時間2.11分に1−ニトロヘキサン(16)(CAS Registry No.:646−14−0)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例12を参照)。
【実施例15】
【0103】
本実施例では、合成条件を変えて、ベンゼンのニトロ化を試みた(化13)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0104】
【化13】

【0105】
(1)合成条件
基質:ベンゼン
ニトロ化試薬:硝酸アンモニウム
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置に同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸アンモニウム2ml/min(20重量%水溶液)、ベンゼン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0106】
(2)合成の結果
1:同様に、保持時間2.46分にニトロベンゼン(1)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した(スペクトルデータ実施例2を参照)。
【0107】
2:同様に、保持時間2.89と5.76分にo−ニトロフェノール(9)とp−ニトロフェノール(11)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図21、図22に、そのデータを示す。一致率96%であった。
【0108】
3:同様に、保持時間5.41分に2,4−ジニトロフェノール(12)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索及び既知物質の分析結果より同定した。図23に、そのデータを示す。一致率97%であった。
【0109】
(スペクトルデータ実施例2を参照)。
3:この条件での全生成物中のニトロ化物は約4%で有るが、窒素源となり得ることを示している。
【実施例16】
【0110】
本実施例では、ニトロ化試薬として硝酸ナトリウムを用いて、ベンゼンのニトロ化を試みた(化14)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0111】
【化14】

【0112】
(1)合成条件
基質:ベンゼン
ニトロ化試薬:硝酸ナトリウム
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、硝酸ナトリウム2ml/min(20重量%水溶液)、ベンゼン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0113】
(2)合成の結果
1:保持時間6.59分に2−ニトロビフェニル(17)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索より同定した。図24に、一致率97%のデータを示す。
【0114】
2:同様に、保持時間7.33分に3−ニトロビフェニル(18)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索より同定した。図25に、一致率97%のデータを示す。
【0115】
3:同様に、保持時間7.45分に4−ニトロビフェニル(19)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索より同定した。図26に、一致率97%のデータを示す。
【0116】
4:この条件での全生成物中のニトロ化物は約2%で有るが、窒素源となり得ることを示している。
【実施例17】
【0117】
本実施例では、ニトロ化試薬として亜硝酸ナトリウムを用いて、ベンゼンのニトロ化を試みた(化15)。以下に、合成条件及び合成の結果を示す。
【0118】
【化15】

【0119】
(1)合成条件
基質:ベンゼン
ニトロ化試薬:亜硝酸ナトリウム
反応温度:375℃
反応圧力(密度):40MPa(609.3kg/m
反応時間:0.90秒(計算より)
流通式高温高圧水ニトロ化反応装置:実施例1で使用した装置と同じ。
反応器:外径1/16インチのインコネル625管にチタン内張の反応管、内径0.5mm、長さ1000mm、容積は0.196cm
注入条件:水5ml/min、亜硝酸ナトリウム2ml/min(20重量%水溶液)、ベンゼン1ml/min。
生成物の確認:GC−MS分析条件は実施例2と同じ。
【0120】
(2)合成の結果
1:保持時間6.59、7.33、及び7.45分にそれぞれ2−ニトロビフェニル(17)、3−ニトロビフェニル(18)、及び4−ニトロビフェニル(19)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索より同定した(スペクトルデータ実施例16を参照)。
【0121】
2:保持時間8.22分にp−フェニルアゾフェノール(20)のピークを観測した。そのピークはData Base Wiley275のライブラリー検索より同定した。図27に、一致率94%のデータを示す。
【0122】
2:ニトロ化合物はビフェニル体のニトロ化合物(17)、(18)、(19)も分析されるが、この条件では4−フェニルアゾフェノール(20)が主要生成物として合成された。これは、アゾ化合物合成を可能とする窒素源である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上詳述したように、本発明は、高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することを特徴とする有機ニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置に係るものであり、本発明により、従来、ニトロ化合物の工業的製造において実施されている、大量の硝酸を使用して有機基質をニトロ化する方法における不可避的な問題点を確実に解消することを可能とする、新しいニトロ化合物の製造方法、及びその製造装置を提供することができる。
【0124】
例えば、芳香族ニトロ化合物は、医薬、農薬、染料、プラスチックス等の広範囲にわたる有機工業製品の出発原料又は中間体として重要な化合物であるが、従来、その製造には、大量の硝酸等の無機酸を必要とし、操作上の危険性、耐酸設備、発熱反応の制御、廃酸、排水の浄化処理等様々な技術上の問題を有し、これらの問題の解決が強く求められていた。本発明は、高温高圧水を反応媒体として、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することにより、高濃度のニトロ化剤を多量使用することなく、より安全に、効率的に有機ニトロ化合物を合成すること、簡単な装置により大量生産を可能とすること、及び、高選択的なニトロ化合物の合成を達成することを可能とするものである。また、本発明により、廃酸、廃液等の排出が殆どなく、環境に優しい有機ニトロ化合物の製造技術を提供することができる。更に、本発明により製造された有機ニトロ化合物は、例えば、一例として、ポリウレタンの主要原材料の一種であるポリイソシアナートの製造原料として重要であり、本発明は、これらの化学工業製品の新しい製造技術を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の有機ニトロ化合物の製造装置の一例を示す。
【図2】実施例1で得た反応生成物のGCによるクロマトグラムを示す。
【図3】実施例1で、GCにより分離して得た主反応生成物のマススペクトルを示す。
【図4】既知物質(標準物質)であるピクリン酸のマススペクトルを示す。
【図5】実施例1で得た主反応生成物の赤外線吸収スペクトルを示す。
【図6】既知物質(標準物質)であるピクリン酸の赤外線吸収スペクトルを示す。
【図7】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図8】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図9】合成ピクリン酸の赤外線吸収スペクトルの比較(KBr)を示す。
【図10】質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図11】標準物質データを示す。
【図12】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図13】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図14】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図15】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図16】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図17】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図18】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図19】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図20】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図21】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図22】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図23】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図24】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図25】標準物質データを示す。
【図26】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【図27】標準物質データ及び質量スペクトルライブラリー検索結果を示す。
【符号の説明】
【0126】
(図1の符号)
1:高圧ポンプ
2:背圧弁
3:天秤
4:超臨界水供給装置
5:恒温装置
6:熱電対
7:反応管
8:圧力計及び安全弁
9:接続ユニット
10:冷却装置
A:臨界水供給ポンプ
B:トルエン供給ポンプ
C:硝酸供給ポンプ
D:洗浄用水供給ポンプ
E:緊急冷却用冷水供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて、有機基質とニトロ化剤の反応により有機ニトロ化合物を合成することを特徴とする有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項2】
反応媒体が、300℃以上、20MPa以上の高温高圧水である請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項3】
反応媒体が、亜臨界水ないし超臨界水である請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項4】
有機基質から、1段の反応プロセスで有機ニトロ化合物を合成する請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項5】
有機基質から、連続プロセスで有機ニトロ化合物を合成する請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項6】
有機基質が、脂肪族化合物、芳香族化合物、又は複素環式化合物である請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項7】
有機基質が、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、芳香族炭化水素、多環式芳香族化合物、又は含窒素芳香族である請求項6に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項8】
ニトロ化剤が、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、又は硝酸カルシウムである請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項9】
反応系の組成、温度、圧力、及び/又は時間を調整して、目的化合物の選択率、転換率、及び/又は収率を制御する請求項1に記載の有機ニトロ化合物の製造方法。
【請求項10】
高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて有機ニトロ化合物を合成するための装置であって、反応器と、高温高圧水供給手段、有機基質供給手段、ニトロ化剤供給手段と、これらの各手段から、高温高圧水、有機基質、及びニトロ化剤を上記反応器に供給するための高温高圧流路とを具備し、上記反応器内において、有機基質とニトロ化剤から高温高圧水を反応媒体とする反応系を用いて有機ニトロ化合物を合成するようにしたことを特徴とする有機ニトロ化合物の製造装置。
【請求項11】
反応媒体が、温度300℃以上、圧力20MPa以上の高温高圧水である請求項10に記載の有機ニトロ化合物の製造装置。
【請求項12】
反応媒体が、亜臨界水ないし超臨界水である請求項10に記載の有機ニトロ化合物の製造装置。
【請求項13】
連続操作手段を具備した連続製造装置である請求項10に記載の有機ニトロ化合物の製造装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−145800(P2007−145800A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217242(P2006−217242)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】