説明

ヌクレオチドアナログ組成物および合成方法

【課題】抗ウイルス化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ビス(POC)PMPAおよびフマル酸(1:1)を含む組成物を提供する。この組成物は、抗ウイルス化合物の調製のための中間体として有用であるかあるいは、抗ウイルス治療または予防法のために患者に投与するために有用である。この組成物は特に、経口で投与する場合に有用である。本発明はまた、PMPAおよびPMPA合成における中間体を生成するための方法を提供する。実施態様は、DMFのような有機溶媒中の、リチウムt−ブトキシド、9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンおよびジエチルp−トルエンスルホニルメトキシ−ホスホネートを含む。反応により、先行の方法によって生成されたジエチルPMPAと比較して改良された副生成物特性を含む、ジエチルPMPA調製物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、9−[2−(R)−[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィノイル]メトキシ]プロピル]アデニン(「ビス(POC)PMPA」)、および抗ウイルス剤として使用するための、(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン(「PMPA」)のヒトまたは動物への経口送達のために適切な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホノメトキシヌクレオチドアナログは、公知であり、そして経口送達のための多様な技術が公知である。例えば、米国特許出願番号08/686,838、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21および特許文献22、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、および非特許文献6を参照のこと。ビス(POC)PMPAは、特許文献23中に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,208,221号明細書
【特許文献2】米国特許第5,124,051号明細書
【特許文献3】国際公開第91/19721号パンフレット
【特許文献4】国際公開第94/03467号パンフレット
【特許文献5】国際公開第94/03466号パンフレット
【特許文献6】国際公開第92/13869号パンフレット
【特許文献7】独国特許出願公開第41 38 584 A1号明細書
【特許文献8】国際公開第94/10539号パンフレット
【特許文献9】国際公開第94/10467号パンフレット
【特許文献10】国際公開第96/18605号パンフレット
【特許文献11】国際公開第95/07920号パンフレット
【特許文献12】国際公開第95/79/07919号パンフレット
【特許文献13】国際公開第92/09611号パンフレット
【特許文献14】国際公開第92/01698号パンフレット
【特許文献15】国際公開第91/19721号パンフレット
【特許文献16】国際公開第88/05438号パンフレット
【特許文献17】欧州特許第0 632 048号明細書
【特許文献18】欧州特許第0 481 214号明細書
【特許文献19】欧州特許第0 369 409号明細書
【特許文献20】欧州特許第0 269 947号明細書
【特許文献21】米国特許第3,524,846号明細書
【特許文献22】米国特許第5,386,030号明細書
【特許文献23】国際公開第98/04569号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Engel Chem.Rev.77:349−367 1977
【非特許文献2】Farquharら、J.Pharm.Sci.72:324−325 1983
【非特許文献3】Starrettら、Antiviral Res.19:267−273 1992
【非特許文献4】Safadiら、Pharmaceutical Research 10(9):1350−1355 1993
【非特許文献5】Sakamotoら、Chem.Pharm.Bull.32(6):2241−2248 1984
【非特許文献6】Davidsenら、J.Med.Chem.37(26):4423−4429 1994
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、9−[2−(R)−[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィ
ノイル]メトキシ]プロピル]−アデニン・フマル酸(1:1)(「ビス(POC)PMPAフマレート」または「BPPF」)を含む、式(1)の組成物を提供し、
【0006】
【化1】

ここで、Bは、アデニン−9−イルであり、Rは独立して−Hまたは−CH−O−C(O)−O−CH(CH
あるが、少なくとも1つのRは−CH−O−C(O)−O−CH(CHである。
【0007】
本発明の他の実施態様は、ウイルスに感染したかまたはウイルス感染の危険のある患者への、治療的に有効量の式(1)の組成物の経口投与を含む。
【0008】
別の実施態様においては、式(1)の化合物の調製方法は、フマル酸をビス(POC)PMPAと接触する工程を包含する。
【0009】
他の実施態様は、リチウムアルコキシドと9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン溶液とを接触させる工程を包含する。
【0010】
特定の実施態様は、約2.7〜3.5のpHで(R,S)−PMPA溶液を含む組成物を含有し、ここで、溶液は、約0.1 g/mL未満の(R,S)−PMPAを有し、そしてここで、約90〜94%のPMPAは(R)立体配置である。
【0011】
本願発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)以下の式(1)の組成物であって、
【0012】
【化2】

ここで、Bは、アデニン−9−イルであり、Rは独立して−Hまたは−CH−O−C(O)−O−CH(CHであるが、少なくとも1つのRは−CH−O−C(O)−O−CH(CHである、組成物。
(項目2)両方のRが−CH−O−C(O)−O−CH(CHである、項目1に記載の組成物。
(項目3)前記組成物が結晶性固体である、項目1に記載の組成物。
(項目4)前記化合物が、炭素原子キラル中心()で富化されるかまたは分割される、項目1に記載の組成物。
(項目5)約25.0の2θ(度)で表される、Cu−Kα照射を使用するX−線粉末回折スペクトルピークを有する、項目1に記載の組成物。
(項目6)項目1に記載の組成物および受容可能な賦形剤を含む、組成物。
(項目7)リチウムアルコキシドおよび9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン溶液を含む、組成物。
(項目8)約2.7〜3.5のpHで(R,S)−PMPA溶液を含む組成物であって、ここで、該溶液は、約0.1g/mL未満の(R,S)−PMPAを有し、そしてここで、約90〜94%のPMPAは(R)立体配置である、組成物。
(項目9)ウイルスに感染したかまたはウイルス感染の危険のある患者へ、治療的に有効量の項目1に記載の組成物を、経口投与する工程を含む方法。
(項目10)ビス(POC)PMPAをフマル酸と接触する工程を含む、項目1に記載の組成物を生成するための方法。
(項目11)フマル酸が2−プロパノール中に溶解される、項目10に記載の方法。
(項目12)項目7に記載の組成物を生成するための方法であって、リチウムアルコキシドを9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン溶液と混合する工程を含む、方法。
(項目13)前記リチウムアルコキシドが、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、i−プロポキシド、n−ブトキシド、i−ブトキシド、t−ブトキシド、ネオペントキシド、n−ペントキシド、i−ペントキシドまたはn−ヘキソキシド、n−ヘプトキシド、2−ヘプトキシド、n−オクトキシド、2−オクトキシド、典型的にはt−ブトキシドまたはi−プロポキシドからなる群より選択されるアルコキシドである、項目12に記載の方法。
(項目14)前記リチウムアルコキシドが、リチウムt−ブトキシドまたはリチウムi−プロポキシドである、項目13に記載の方法。
(項目15)約0.08g/mL未満の(R,S)−PMPAを含む溶液のpHを約2.7〜3.5に調節する工程を含む方法であって、ここで、約90〜94%のPMPAが(R)立体配置である、方法。
(項目16)9−[2−(R)−[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィノイル]メトキシ]プロピル]アデニン・フマル酸(1:1)、前ゼラチン化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、ラクトース一水和物およびステアリン酸マグネシウムを含む錠剤を含有する、組成物。
(項目17)前記9−[2−(R)−[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィノイル]メトキシ]プロピル]アデニン・フマル酸(1:1)が結晶性である、項目16に記載の組成物。
(項目18)前記錠剤が、75mgの9−[2−(R)−[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィノイル]メトキシ]プロピル]アデニン・フマル酸(1:1)、11mgの前ゼラチン化デンプン、8.8mgのクロスカルメロースナトリウム、123.6mgのラクトース一水和物および2.2mgのステアリン酸マグネシウムを含む、項目16に記載の組成物。
(項目19)液体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む混合物から、湿った顆粒を調製するプロセスによって生成される、9−[2−(R)−[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィノイル]メトキシ]プロピル]アデニン・フマル酸(1:1)を含む生成物。
(項目20)前記液体が水であり、そして前記プロセスが必要に応じてさらに湿った顆粒を乾燥させる工程を包含する、項目19に記載の生成物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、BPPF結晶X線粉末回折パターンである。
【図2】図2は、BPPF結晶の示差走査熱量測定によって得られたサーモグラムを示す。
【図3】図3は、BPPF結晶のフーリエ変換赤外線吸収スペクトルを示す。
【図4】図4は、光学顕微鏡による100倍の倍率でのBPPF結晶の実施態様を示す写真の絵である。
【図5】図5は、光学顕微鏡による100倍の倍率でのBPPF結晶の実施態様を示す写真の絵である。
【図6】図6は、光学顕微鏡による200倍の倍率でのBPPF結晶の実施態様を示す写真の絵である。
【図7】図7は、光学顕微鏡による40倍の倍率でのBPPF結晶の実施態様を示す写真の絵である。図4〜7は、132%に拡大して作製された、写真のコピーである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用される「アルキル」は、反対の記述が無ければ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の第一級、第二級、第三級または環状構造を含む炭化水素である。その例は、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−CHCHCHCHCH、−CH(CH)CHCHCH、−CH(CHCH、−C(CHCHCH、−CH(CH)CH(CH、−CHCHCH(CH、−CHCH(CH)CHCH、−CHCHCHCHCHCH、−CH(CH)CHCHCHCH、−CH(CHCH)(CHCHCH)、−C(CHCHCHCH、−CH(CH)CH(CH)CHCH、−CH(CH)CHCH(CH、−C(CH)(CHCH、−CH(CHCH)CH(CH、−C(CHCH(CH、−CH(CH)C(CH、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロブチルメチル、1−シクロプロピル−1−エチル、2−シクロプロピル−1−エチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、1−シクロブチル−1−エチル、2−シクロブチル−1−エチル、1−シクロプロピル−1−プロピル、2−シクロプロピル−1−プロピル、3−シクロプロピル−1−プロピル、2−シクロプロピル−2−プロピル、および1−シクロプロピル−2−プロピル、である。
【0015】
本明細書中で使用される「アルコキシド」は、反対の記述が無ければ、酸素原子に結合されるアルキルについて本明細書中で定義される、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含む炭化水素である。その例は、−OCH、−OCHCH、−OCHCHCH、−OCH(CH、−OCHCHCHCH、−OCHCH(CH、−OCH(CH)CHCH、−OC(CH、−OCHCHCHCHCH、−OCH(CH)CHCHCH、−OCH(CHCH、−OC(CHCHCH、−OCH(CH)CH(CH、−OCHCHCH(CH、−OCHCH(CH)CHCH、−OCHC(CH、−OCH(CH)(CHCH、−OC(CH(CHCH、−OCH(C)(CHCH、−O(CHCH(CH、−O(CHC(CH、−OCHCH(CH)(CHCH、および−OCHCHCHCHCHCH、である。
【0016】
他に明白にまたは文脈によって特定されなければ、量のパーセンテージを重量%(w/w)として表す。従って、1%未満の水を含むBPPF調製物は、1%w/w未満の水を含む調製物である。
【0017】
本明細書中で使用され、そして他に記述されなければ、変数または成分(例えばアルコキシド)を定義するための置換基(例えば、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、i−プロポキシドまたはt−ブトキシド)のリストを提供する場合にはいつでも、変数または成分は、列挙された置換基の任意のおよび全ての可能な組み合わせ含むことを明確に意味する(例えば、アルコキシドはメトキシド、エトキシドまたはn−プロポキシドを意味し、そしてアルコキシドはi−プロポキシドまたはt−ブトキシドを意味する)。同様に、1−メチル−2−ピロリジノン、トリアルキルアミン(C1−3アルキル)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、C1−6アルカノール、ピリジン、アセトン、トルエン、CHCl、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、またはキシレンを含むと定義された有機溶媒のリストは、アセトン、キシレンまたは両方をリストから除外し得る。従って、変数または成分を定義している置換基の与えられたリストは、リスト中の置換基の任意の組み合わせを含むかまたは排除することを明確に意図する。ただし、与えられた定義が、変数または成分が存在し得ないと記述しなければ、全ての可能な置換基が除外され、かつ定義された変数が排除されるのではない。
【0018】
本発明の化合物は、この部分での(R)立体配置を有する最適な抗ウイルス活性に関連して先に見出されているものに従って、必要に応じて炭素原子のキラル中心()で富化される(enriched)かまたは分割される。()によって示される、炭素原子のキラル中心は、必要に応じて(R)または(S)立体配置であり、そして富化され得るかまたは実質的に等しい割合で見出され得る。典型的には、PMPAおよびビス(POC)PMPA中でキラル中心()に結合されるメチル基は、(R)立体配置である。本発明の複合体は、示される様式に関わらず、構成成分の互変異性型を含む。
【0019】
式(1)の化合物は、少量の、典型的には3%未満の、通常1%未満のモノ(POM)PMPA(すなわち、式(1)の化合物であって、ここでRの1つは−Hであり、そして他のRは−CH−O−C(O)−O−CH(CHである)を有するBPPFを含み得る。
【0020】
ビス(POC)PMPAフマレートの物理的および化学的特性
結晶性BPPFは、遊離の塩基および他の塩と比較して、予想外に優れた物理−化学の特性の組み合わせを有する。結晶性BPPFは、高融点を有し、非吸湿性であり、優れた固体状態安定性を有し、そして良好な水溶性および安定性を有する。これらの特性は、製造あるいはヒトおよび動物における優れた経口バイオアベイラビリティー特性の寄与のために有用である。これらの特性は、生体流体(例えば、血漿または細胞原形質)へのBPPFまたはPMPAの効率的な送達を可能とする。例えば、ヒトにおいて一日一回投与される、75mgの結晶性BPPFの経口バイオアベイラビリティーは、約30〜40%である。
【0021】
BPPFは、結晶性形態であっても良いしそうでなくても良い。本発明者らは、X線粉末回折および融点を含むいくつかの方法によって特徴づけて、BPPF(「cBPPF」)の結晶性形
態を得た。研究者は通常、結晶性組成物の特徴づけまたは同定のために、X線粉末回折を使用する(例えば、U.S.Pharmacopoeia, 第23巻, 1995, 方法941, 1843−1845頁, U.S.P. Pharmacopeial Convention,Inc, Rockville, MD; Stoutら, X−Ray Structure Determination; A Practical Guide,MacMillan Co., New York, N.Y. 1968を参照のこと)。結晶性
化合物から得られる回折パターンは、しばしば、与えられた結晶形態の診断用であるが、結晶の連続的なバッチから得られる回折パターンの複製として、弱いまたは非常に弱い回折ピークが必ず表れ得るわけではない。これは、他の結晶性組成物が、感知可能な量のサンプル中に存在する場合に、特定のものである。バンドの相対的な強度、特に、低角のX線入射の値(低2θ)は、好ましい配向効果、結晶成長の方向、粒子サイズおよび測定の他の条件に従って変化し得る。従って、回折ピークの相対強度は、結論的に、問題の結晶形態の診断用とならない。代わりに、BPPF結晶の同一性を決定するために、正確な振幅よりもむしろ、相対的な間隔および一般的なパターンを必要に応じて含む、ピークの位置を見るべきである。さらに、高純度の参照サンプルで観察された全てのバンドを同定に使用する必要は無い;単一のバンドでさえ与えられた結晶形態を診断し得る(例えば、cBPPFについて25.0)。
【0022】
結晶性BPPF同定のために必要に応じて使用し得るさらなる診断技術には、示差走査熱量測定(DSC)および赤外線吸収分光法(IR)が挙げられる。DSCは、結晶構造が変化した場合に結晶が熱を吸収する、熱量吸収転移温度を測定する。DSCは、異なった吸収温度に基づいて、異なった結晶組成物間で区別するための代替手段を提供する。IRは、分子中で光に応じて振動する基に関連した特定の化学結合の存在によって引き起こされる、赤外光の吸収を測定する。DSCおよび/またはIRは従って、BPPF結晶を説明するために使用し得る
、物理的情報を提供し得る。
【0023】
cBPPF X線粉末回折パターンは、通常約25.0に、典型的には約25.0および約20.0に、またはより典型的には約25.0、約20.0および約30.1に、および通常少なくとも約25.0、約20.0、約30.1および約21.9に、ピークを示す。cBPPFスペクトルは通常約4.9、約10.2、約10.5、約18.2、約20.0、約21.9、約24.0、約25.0、約25.5、約27.8、約30.1および約30.4にピークを有する。cBPPFX線粉末回折パターンは通常、約20.0および/または21.9および/または25.0および/または30.1の任意の1つ(または組み合わせ)にピークを示す。
【0024】
cBPPF結晶は、約116℃の開始点を有する、DSC吸収ピークを約118℃に示し、IRスペクトルは、約3224、3107−3052、2986−2939、1759、1678、1620、1269および1102に、センチメートルの逆数で表された特徴的なバンドを示す。異なったcBPPF結晶調製物は、約0.15−0.30g/mL、通常約0.2−0.25 g/mLのバルク密度を有する。これらは、典型的には本質的に溶媒が無く、結晶化槽から適切に回収された場合1%未満の溶媒を含み、そして一般に検出可能な格子が同調された溶媒分子を含まない。
【0025】
BPPF結晶は、典型的には、無水物および非吸湿性であり、検出可能な水をほとんどまたは全く含まない。一般に、BPPF結晶は通常約1%未満の、典型的には約0.5%未満の水を含む。さらに、BPPF結晶は通常、約10%未満の、典型的には約5%未満の、しばしば約1%未満の、および通常約0.5%未満のアモルファスBPPFを含む。
【0026】
BPPF結晶は、乾燥した場合、通常不透明な白色またはオフホワイトの結晶性粉末として現れる。与えられた調製物から得られる結晶は、通常サイズが多分散であり、そして針、プレート、不規則な錠剤および、針、プレートまたは錠剤の凝集体を含む形状の範囲を有する。BPPF結晶は典型的には、与えられた調製物において、ほとんどの個々の結晶の最も大きな寸法に沿って、約1μm〜約500μm、典型的には約5〜170μm、通常約10〜110μmの、最も長い寸法に沿ったサイズの範囲である。これらの結晶は破砕されたかまたは角のふちを有し得る。図4〜7の写真は、錠剤、ロッド、針、プレートおよび凝集体を含む、多様な形状を有するcBPPFを示す。
【0027】
有用性
PMPAおよびビス(POC)PMPAは、特にレトロウイルス、HIV、SIVおよびGALV、およびヘパドナウイルス(例えば、HBV)を含む、ヒトまたは動物における1つ以上のウイルス感染の、処置または予防法において有用であることが公知である。PMPAを用いて処理されるべき他の感染は、MSV、RSV、FIV、MuLV、および齧歯類および他の動物の他のレトロウイルス感染を含む。先行技術は、PMPAの抗ウイルス特異性を記述し、そして本発明の化合物はこの特異性を有する。
【0028】
感染部位を最良に攻撃するための投薬および適切な投与経路は、PMPAに関する当該技術分野において周知である。BPPFの適切な用量の決定は、臨床医にとって簡単な事項であり、本発明の複合体の分子量および、経口で投与する場合には、動物においてまたはヒトでの臨床的試行における推論としてのこれらのバイオアベイラビリティー、ならびに当業者に周知の他の因子を考慮する。
【0029】
BPPFを含む本発明の組成物は、処理されるべき状態に適切な任意の経路によって投与され、適切な経路には、経口、直腸、経鼻、肺、局所的(経皮、眼、頬側、および舌下を含む)、膣および非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)が挙げられる。一般に、本発明の組成物は経口で投与されるが、BPPFを含む組成物は、任意の他の上記の経路によって投与され得る。ヒトについての抗ウイルス治療のための、本発明の化合物の経口用量は、約0.01〜20mg/Kg/日、典型的には約0.3〜5mg/Kg/日の範囲である。75mgのcBPPFを含む錠剤の、ヒトへの1日1回の経口投与の結果、絶食したヒトで約17から38%の、および摂食したヒトで約27〜60%の1日目でのPMPAの経口バイオアベイラビリティーとなった。
【0030】
BPPFは、純粋な化合物として投与されることは可能であるが、薬学的処方物として存在することが好ましい。本発明の処方物は、1以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリア(「受容可能な賦形剤」)および必要に応じて他の治療成分と共に、BPPFを含む。このキャリアは、処方物の他の成分との適合および患者に有害でないという意味で「受容可能」でなければならない。
【0031】
処方物は、局所的または全身性の投与のために適切な処方物を含み、局所的または全身性の投与には、経口、直腸、経皮、肺、経鼻、頬側、舌下、膣または非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)の投与が挙げられる。処方物は、単位用量形態であり、そして薬学の分野で周知の任意の方法によって調製される。このような方法は、活性成分と、1以上の付属的な成分からなるキャリアまたは賦形剤とを組み合わせる工程を含む。一般に、処方物は、活性成分と、液体キャリアまたは最終的に分割される固体キャリアまたは両方とを均一にかつ親密に組み合わせるようにする。次いで、必要ならば、生成物を乾燥または成形する。
【0032】
経口投与のために適切な本発明の処方物は、個々の単位(例えば、袋、カプセル、または錠剤)として存在し得、それぞれは;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;または水中油乳濁液または油中水乳濁液として、所定の量の活性成分を含む。活性成分はまた、巨丸剤、舐剤またはペーストとしても存在し得る。
【0033】
錠剤は、圧縮または成形によって、典型的には1以上の付属的な成分または賦形剤を用いて作成され得る。錠剤は、典型的には錠剤1つあたり約10〜300mgの、通常約10〜100mg(例えば約75mg)のBPPFを含む。通常、BPPFは固体処方物中にcBPPFとして存在する。圧縮された錠剤は、フリー−フロー形態(例えば、粉末または顆粒)中で、必要に応じて結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性または分散剤と混合して、BPPFを適切な機械の中で圧縮することによって調製され得る。成型された錠剤は、液体希釈剤、典型的には不活性希釈剤で湿らせた粉末BPPFの混合物を、適切な機械の中で成型することによって調製される。錠剤は、必要に応じてコートされ、そしてペイントされ、エンボス加工されるかまたは印が付けられ得、そしてその中で活性成分の緩やかなまたは制御された放出を提供するように処方され得る。典型的な錠剤成分は、1以上の結合剤、希釈剤、崩壊剤または潤滑剤を含み、これは、錠剤の製造または摂取後の錠剤の崩壊を促進する。錠剤は、必要に応じて1以上の賦形剤のBPPFとの湿式顆粒化、乾燥およびミル(milling)によって作製される。アルファ化デンプンのような結合剤は、必要に応じて約1〜10%のレベルで存在する。架橋したセルロースのような崩壊剤は、必要に応じて約0.5〜5%のレベルで存在して、錠剤の溶解を促進する。単糖類または二糖類のような希釈剤は、必要に応じて約50〜60%のレベルで含まれて、BPPFの物理的特性をマスクするかまたは錠剤の溶解を促進する。潤滑剤は、必要に応じて約0.25〜5%のレベルで含まれて、製造の間の錠剤の駆出を促進する。実施態様には、BPPFおよび受容可能な賦形剤を含む混合物を圧縮するプロセスによって生成される生成物が挙げられる。
【0034】
眼または他の外部組織(例えば口および皮膚)の感染のために、処方物は好ましくは、例えば0.01〜10%w/w(0.1%と5%との間の範囲で0.1%w/w(例えば、0.6%w/w、0.7%w/wなど)の増加量で、活性成分を含む)、好ましくは0.2〜3%w/w、そして最も好ましくは0.5〜2%w/wの量で活性成分を含む、局所軟膏またはクリームとして適用される。軟膏中に処方した場合、活性成分は、パラフィン性のまたは水混和性の軟膏ベースのいずれかと共に使用され得る。あるいは、活性成分は、水中油クリームベースを用いたクリーム中で処方され得る。
【0035】
所望の場合、クリームベースの水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール、すなわち、2以上の水酸基を有するアルコール(例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含む)およびそれらの混合物)を含み得る。局所的な処方物は望ましくは、皮膚または他の病気に冒された領域を通る活性成分の吸収または透過を増強する化合物を含み得る。このような皮膚透過エンハンサーには、ジメチルスルホキシドおよび関連のアナログが挙げられる。
【0036】
本発明の乳濁物の油性の相は、公知の様式で、公知の成分から構成され得る。相は単に乳化剤(そうでなければ排出促進剤として公知である)を含み得るが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪またはオイルとの、あるいは脂肪およびオイルの両方との混合物を含む。好ましくは、親水性の乳化剤が、安定剤として作用する親油性の乳化剤と共に含まれる。安定剤を用いてまたは安定剤なしで、乳化剤は乳化ワックスを作成し、そしてワックスは、オイルまたは脂肪と共に、乳化軟膏ベースを作成し、これは、クリーム処方物の油性の分散した相を形成する。
【0037】
本発明の処方物中で使用するために適切な、排出促進剤および乳化安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリル(cetostearyl)アルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0038】
処方物のための適切なオイルまたは脂肪の選択は、所望の美容(cosmetic)特性の達成に基づく。従って、クリームは好ましくは、管または他の容器からの漏出を回避するために適切なコンシステンシーを有する、グリースなし、染色なしおよび洗浄可能な生成物であるべきである。直鎖または分枝鎖の一塩基性または二塩基性のアルキルエステル(例えば、ジイソアジペート、イソセチルステアレート、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2−エチルヘキシルパルミテートまたはCrodamolCAPとして公知の分枝鎖エステルのブレンド)が、使用され得、最後の3つが好ましいエステルである。これらは必要とされる特性に従って単独でまたは組み合わせて使用され得る。あるいは、白色ソフトパラフィンおよび/または液体パラフィンのような高融点脂質または他の鉱油が使用され得る。
【0039】
眼への局所的投与に適切な処方物はまた、点眼を含み、ここで、活性成分は適切なキャリア、特に活性成分のための水性溶媒中に溶解されるかまたは懸濁される。活性成分はこのような処方物中に、0.01〜20%の濃度で、いくつかの実施態様では0.1〜10%の濃度で、そしてその他では約1.0%w/wの濃度で適切に存在する。
【0040】
口中での局所的な投与のために適切な処方物には、味をつけた基剤(通常ショ糖およびアカシアまたはトラガント)中に活性成分を含むトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアのような不活性基剤中に、活性成分を含む香剤;および適切な液体キャリア中に活性成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0041】
直腸投与のための処方物は、例えばカカオバターまたはサリチラートを含む適切なベースを有する坐薬として存在され得る。
【0042】
キャリアが固体である、経鼻または吸入性の投与のために適切な処方物には、例えば1〜500ミクロン(20ミクロンと500ミクロンとの間の範囲で5ミクロンの増分(例えば30ミクロン、35ミクロンなど)の粒子サイズを含む)の範囲の粒子サイズを有する粉末が挙げられる。キャリアが液体である、例えば経鼻スプレーまたは点鼻の投与のために適切な処方物には、活性成分の水性または油性の溶液が挙げられる。エアロゾル投与のために適切な処方物は、従来の方法に従って調製され得、他の治療薬を用いて送達され得る。吸引性の治療法は、計量された用量吸入器によって容易に投与され得る。
【0043】
膣投与のために適切な処方物は、活性成分に加えて、適切な、当該技術分野で公知のようなキャリアを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレー処方物として存在され得る。
【0044】
非経口投与のために適切な処方物は滅菌され、そして、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および意図されたレシピエントの血液と等張性の処方物を与える溶質を含み得る、水性および非水性の注射溶液;ならびに、懸濁剤および濃厚剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。処方物は、単位用量または多用量容器(例えば、密封されたアンプルおよびエラストマーストッパーを有するバイアル)中に入れられ得、使用の直前に滅菌液体キャリア(例えば注射のための水)の添加のみを必要とする、凍結乾燥条件下で貯蔵され得る。即席の注射溶液および懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。好ましい、単位用量処方物は、上述のように1日量または単位日副用量を含む処方物であるかまたは、BPPFの処方物の適切な画分である。
【0045】
特に上述の成分に加えて、本発明の処方物は、当該技術分野において、目的の処方物のタイプであるとみなされている慣習的な他の薬剤(例えば、香味料を含み得る、経口投与のために適切な薬剤)を含み得る。
【0046】
本発明はさらに、上記で定義した少なくとも1つの活性成分を、そのための獣医学キャリアとともに含む、獣医学組成物を提供する。
【0047】
獣医学キャリアは、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギおよび他の動物へ組成物を投与する目的のために有用な物質であって、固体、液体またはガス状の物質であり得、そうでなければ、獣医学技術において不活性であるかまたは受容可能であり、そして活性成分と適合可能である。これらの獣医学組成物は、経口、非経口または任意の他の所望される経路によって投与され得る。
【0048】
本発明の組成物は、マトリックスまたは吸収物質、および活性成分として1以上の本発明の化合物を含む、放出を制御された薬学的処方物を提供するために使用され得る。ここで、活性成分の放出は制御されかつ調整され得て、投薬の頻度をより少なくさせるかまたは化合物の薬物動態学的もしくは毒性の性質を改良する。個々の単位がBPPFを含む、経口投与のために適応される放出を制御された処方物は、従来の方法に従って調製され得る。
【0049】
合成方法
BPPFは、フマル酸とPMPAとの間に複合体または塩を形成することによって調製される。PMPAは、公知の方法によるかまたは以下の手順によって調製される、公知の化合物である。
【0050】
【化3】

BPPF合成
PMPAを、(CHCHOC(O)CHClを用いてエステル化し、以下の方法を使用してフマル酸と複合体化する。
【0051】
【化4】

プロセスの要旨
PMPA調製方法について:(S)−グリシドール(Glycidol)を、接触水素化によって(R)−1,2−プロパンジオールに還元し、次いでこれをジエチルカーボネートと反応させて(R)−1,2−プロピレンカーボネートとする。このカーボネートを、アデニンおよび触媒量の塩基(例えば、水酸化ナトリウム)と反応させて、(R)−9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)プロピル]アデニンを得、これを、単離することなく、リチウムアルコキシドおよびジエチルp−トルエンスルホニル−オキシメチルホスホネート(ジエチルホスファイトとパラホルムアルデヒドとを反応させ、生成物をインサイチュでトシル化させることによって調製する)と反応させる。得られる(R)−9−[2−ジエチルホスホノメトキシプロピル]アデニンを、ブロモトリメチルシランで脱エステル化して、粗PMPAを得、次いでこれを、pHを調節した水からの沈殿によって精製する。生成物をさらに水からの再結晶によって精製してPMPA一水和物とする。
【0052】
このプロセスは、工程1において少量のNaOHのような塩基を使用し、これは、塩基を使用しない同様の反応と比較して、反応速度を約10倍増加させる。工程1はまた、インサイチュで水素を発生させるHCONHのような試薬を使用する代わりに、水素ガスを使用する。このプロセスは、工程4bにおいてリチウムアルコキシドを使用し、これは、反応混合物への添加の際に穏やかな発熱性である。NaHのような高反応性の塩基を使用することによって、発熱反応となり、反応系中に制御が困難な水素ガスを発生する。従って、NaHの使用は、リチウムアルコキシドよりもより労力および注意を要する。リチウムアルコキシド塩基はまた、NaHを使用して得られる生成物と比較して、副生成物特性が改善された生成物を生じる。例えば、少量の出発物質または過剰アルキル化(overalkylated)生成物は通常リチウムアルコキシドの使用から得られる。
【0053】
スキームおよびプロセス工程は(R)−PMPAおよび(R)−ビス(POC)PMPAの合成を示す。(R,S)−グリシドールのようなキラル的に不純な出発物質を使用してこの方法を実施して、中間体のキラル混合物(例えば、1,2−プロピレンカーボネートのキラル混合物、PMPAまたはビス(POC)PMPA)を得ることができる。
【0054】
工程1.(R)−1,2−プロパンジオール: (S)−グリシドール(1.0kg、13.5モル)を、(i)不活性な(例えば窒素)雰囲気および(ii)2モル%水酸化ナトリウムを含む変性エチルアルコール中(EtOH7.85kgおよび16.7% NaOH溶液 54g)の活性炭素(50%湿った)触媒(100g)上の5%パラジウムの攪拌懸濁物、を含む反応器に添加する。触媒およびエタノール溶液を含む不活性な反応器の含有物を、(S)−グリシドールを添加する前に、通常約0℃まで(通常約−5〜5℃)冷却する。次いで、20psiを超えない程度に、水素ガスを、25℃を超えない温度で反応物を含む不活性な反応容器に導入する。この混合物を、水素の消費が終わるまで約4〜5時間攪拌する。反応の完了をTLCによってモニターする((S)−グリシドールは微量に残留するかまたは残留しない)。次いで、混合物を濾過し(例えば、珪藻土(約150g))、固体を除去し、そして濾液を、揮発性の回収が停止するかまたは非常にゆっくりになるまで、50℃を超えないで減圧で濃縮し、粗生成物を含む油状物を得る。粗生成物を、次の工程に直接使用する。表題化合物の収率は約100%である。
【0055】
工程2.(R)−1,2−プロピレンカーボネート: ジエチルカーボネート(1.78kg、15.1モル)および、変性エチルアルコール中のナトリウムエトキシド(エタノール中210gの21%w/w ナトリウムエトキシド)を、(R)−1,2−プロパンジオール(上記工程1で使用した(S)−グリシドールの量に理論的に基づいて、1.0kg)に添加し、そして溶液を80〜150℃まで加熱してエタノールを蒸留除去する。必要ならば、反応を完了させるために、反応混合物にさらにジエチルカーボネート(0.16kg)を添加し、次いで蒸留してエタノールを除去する。反応の完了をTLCによってモニターし、検出可能な(R)−1,2−プロパンジオールは微量であるかまたは無いことを示す。残渣を、120℃および10〜17mmHgで分留し、表題化合物を無色の液体として得る。生成物の純度は、GC分析によって、典型的には96%以上の純度である。
【0056】
工程3.ジエチル p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート:
不活性雰囲気(例えば、窒素)を含む反応器中、トルエン(0.11kg)中のジエチルホスファイト(0.80kg)、パラホルムアルデヒド(0.22kg)、およびトリエチルアミン(0.06kg)の混合物を87℃で約2時間加熱し、次いで、TLCでモニターしたときに検出可能なジエチルホスファイトを微量に示すかまたは示さないように、反応が完了するまで、約1時間還流する。反応の間、不活性雰囲気を維持する。トルエンは、反応を緩和するために使用し、そうでなければ制御不能となり得る。反応の完了を、任意にHNMR(δ 8.4〜8.6ppmのジエチルホスファイトのピークはもはや検出されない)によって確認する。溶液を約1℃まで(典型的には約−2〜4℃)冷却し、p−トルエンスルホニルクロリド(1.0kg)を添加し、次いで約5℃でトリエチルアミン(0.82kg)をゆっくり添加し(発熱性の添加)、この間温度を約10℃を超えないように維持する(典型的には0〜10℃)。得られる混合物を22℃まで加温し、そして反応の完了がTLCによって示される(p−トルエンスルホニルクロリドが微量に検出されるかまたは検出されない)まで少なくとも約5時間攪拌し(典型的には約4.5〜6.0時間)、そして任意にHNMR(δ 7.9ppmのp−トルエンスルホニルクロリドの二重線のピークはもはや検出されない)によって確認する。固体を濾過によって除去し、トルエン(0.34kg)で洗浄する。合わせた洗浄液および濾液を、水で2回(洗浄1回あたり1.15kg)、または必要に応じて水(1.15kg)、5%炭酸ナトリウム水溶液(3.38kg)、次いで水で2回(洗浄1回あたり1.15kg)の順序のいずれかで洗浄する。各洗浄の後に、反応器の含有物を短時間攪拌し、固体を沈降させ、下方の水層を廃棄する。反応物が乳濁物になる場合、ブライン(0.08kgのNaClを含む0.23kgの水)を第1の有機/水混合物に添加し得、続いて、反応器含有物を攪拌し、固体を沈降させ、下方の水層を廃棄し、1.15kgの水を添加し、攪拌し、固体を沈降させ、再び下方の水層を廃棄する。50℃を超えない有機相を減圧で蒸留し(110℃で10%を超えないLOD、およびKF滴定により0.3%を超えない含水量まで)、収率約60〜70%の表題化合物を、純度約85〜95%のオイルとして、トルエンを含まずに、得る。
【0057】
工程4.(R)−9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)プロピル]アデニン: この化合物を、リチウムアルコキシドおよび9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンを含む組成物を使用して調製する。合成の間に、典型的には約0〜50℃の、通常約20〜45℃の温度で、9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンをリチウムアルコキシドと接触させる。これらの組成物および方法中の9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンは、典型的には有機溶液中に存在する。有機溶液は典型的には有機溶媒(例えば,ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、CHCl、またはC1−6アルカノール、通常ジメチルホルムアミドまたはトルエン)を含む。これらの組成物は必要に応じてさらにp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートまたはアデニンを含み、これは、もし存在するならば、低レベルであり、9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンと比較して、典型的には約15%未満、通常約10%未満である。これらの組成物および方法は、典型的にはリチウムt−ブトキシドまたはリチウムi−プロポキシドを使用する。これらはまた一般に、約0.9〜3.0モル等量の(工程4aで使用するアデニン塩基に対して)、典型的には約1.2〜1.8モル等量のp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートを、リチウムアルコキシドおよび9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンとの反応物として使用する。実施態様は、9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンとリチウムアルコキシドとを接触させるプロセスによって生成される生成物を含有する。これらの実施態様において、反応物は典型的には、p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートもまた含む有機溶液中に存在する。
【0058】
1実施態様においては、上記工程4に示される(R)−9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)プロピル]アデニンは以下のように記述される。不活性雰囲気(例えば、窒素)を含む反応器中で、アデニン(1.0kg)、水酸化ナトリウム(11.8g)、(R)−1,2−プロピレンカーボネート(0.83kg)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(6.5kg)の混合物を、必要に応じて面積標準化(areanormalized)HPLCによってモニターして残りのアデニンが約0.5%を超えないことを示すように反応が完了するまで、約18〜30時間、約130℃まで(典型的には約125から138℃)加熱する。得られる混合物を約25℃まで、典型的には約20〜30℃まで冷却し、そして段階Iの中間体、(R)−9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンを含み、これは、ここで沈殿し得る。冷却後、テトラヒドロフラン中2.0Mのリチウムt−ブトキシド(3.62kg)を、穏やかな発熱性の添加で段階Iの中間体に添加して、(R)−9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンのリチウム塩を生成する。このスラリーを、ジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(1.19kg)で処理し、混合物を約32℃、典型的には約30〜45℃の温度まで加熱し、少なくとも約2時間(典型的には約2〜3時間)攪拌してこの間に混合物は均一になる。さらにジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(1.43kg)を添加し、そして混合物を約32℃(典型的には約30〜45℃)の温度で、少なくとも約2時間(典型的には約2〜3時間)攪拌する。さらにテトラヒドロフラン中2.0Mのリチウムt−ブトキシド(0.66kg)およびジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(添加1回あたり0.48kg)をもう2回添加し、各回に続いて、混合物を約32℃の温度で、少なくとも約2時間攪拌する。反応の完了を、面積標準化(areanormalized)HPLCによって必要に応じてモニターし、段階Iの中間体が約10%を超えては残っていないことを示す。反応が完了していない場合、さらにテトラヒドロフラン中2.0Mのリチウムt−ブトキシド(0.33kg)およびジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(0.24kg)を添加し、反応混合物を約32℃の温度で、少なくとも約2時間維持して、反応を完了させる。次いでこの混合物を約25℃(典型的には約20〜40℃)まで冷却し、次いで氷酢酸(0.5kg)を添加する。得られる混合物を減圧で濃縮し、このときの最終的な最高の混合物温度は約80℃、約29Hg 減圧下(29 in Hg vacuum)である。残渣を約50℃(典型的には約40〜60℃)まで冷却し、水(1.8kg)を添加し、そして反応物をさらなる水(1.8kg)ですすぐ。この溶液を連続的にジクロロメタン(約35kg)で12〜48時間抽出し、この間約5時間後に水相に氷酢酸(0.2kg)を1回添加し、そして続く抽出時間の約10時間後にさらに1回添加する。抽出の完了を、面積標準化(areanormalized)HPLCによって、水相中に残留する(R)−9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)プロピル]アデニンが約7%を超えないと示されることを、必要に応じて確認する。合わせたジクロロメタン抽出液を、まず大気圧で、次いで減圧で、約80℃を超えない抽出温度で濃縮し、表題化合物を粘性のあるオレンジ色のオイルとして得る。表題化合物の収率は、重量標準化(weightnormalized)HPLCによって約40〜45%、かつ純度は面積標準化HPLCによって典型的には60〜65%である。濃縮した後の表題化合物の実際の重量は、理論的な重量の約1.6倍である。観測される重量増加分は、不純物および/または連続的な抽出および濃縮の後に残留する溶媒に起因する。
【0059】
工程5.粗(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン:
粗(R)−PMPAを、(R)−PMPAジエチルエステルを遊離酸に転換することによって調製する。(R)−PMPA約90〜94%および(S)−PMPA約6〜10%を含む混合物中の(R)−異性体の割合は、(R)−PMPA約97〜99%まで増
加し得る。(R)−異性体の濃縮は、約2.7〜3.5のpHで、(R,S)−PMPAを含む組成物からPMPAを沈殿させることによって達成され、ここで、溶液は約0.1g/mL未満の、一般的には約0.08g/mL未満の、典型的には約0.07g/mL未満の(R,S)−PMPAを有し、ここで、(R,S)−PMPA溶液は約10〜25℃、典型的には約15〜22℃の温度である。このような(R,S)−PMPA溶液中の約40〜55℃での(R)−PMPA異性体の濃縮は、pHを約2.4〜3.5に調節し、必要に応じて続いて溶液温度を約10〜25℃として、次いで必要に応じてpHを約2.7〜3.5に調節することによって達成し得る。
【0060】
1実施態様においては、上記工程5に示される粗(R)−PMPAの合成は以下のように記述される。ブロモトリメチルシラン(1.56kg)を、粗(R)−9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)プロピル]アデニン(上記工程4で記述したアデニンインプットに基づいて計算し、1.0kg)およびアセトニトリル(0.9kg)の混合物を含む反応器に、温度を約50℃を超えないで維持するように冷却しながら添加する。ライン(lines)をアセトニトリル(0.3kg)ですすぎ、そして混合物を、反応器の含有物が跳ねるのを回避するように中程度の攪拌をしながら約60〜75℃で約2〜4時間還流する。反応の完了を、面積標準化HPLCによってモニターしてモノエチルPMPAおよびジエチルPMPAの総残留量が約3%を超えないことを示す。反応が完了していない場合、さらにブロモトリメチルシラン(0.04kg)を反応器に充填し、反応物を、中程度の攪拌をしながら少なくとも約1時間還流する。含有物を70℃を越えないまでに加熱して、初めは大気圧で、次いで減圧(約24〜27Hg)で約70℃を越えない蒸留によって揮発物質を除去する。次いで、反応器含有物を約20℃まで(典型的には約15〜25℃まで)冷却し、そして含有物の温度を約50℃を越えないように維持しながらこの残渣に水(1.9kg)を添加する(発熱性添加)。この混合物を20℃まで冷却し、ジクロロメタン(1.7kg)を用いて約30分間攪拌することによって洗浄する。次いで、分離した水相を、1μmカートリッジフィルターを通して濾過し、水(3.2kg)で希釈し、約40℃(典型的には約35〜50℃)まで加熱し、水酸化ナトリウム水溶液(50%溶液として約0.15kgのNaOH)を用いてpHを約1.1(典型的には約0.9〜1.3)に調節し、この間温度を約45℃に維持する。PMPAの種結晶を、混合物に添加し、そして50%水酸化ナトリウム水溶液(約0.15kgのNaOH)を用いてpHを約2.8(典型的には約2.6〜3.0)に調節し、この間温度を約45℃(典型的には約35〜50℃)に維持する。溶液を、含有物が跳ねるのを回避するようにゆっくりから中程度の攪拌をしながら約3〜20時間にわたって約22℃(典型的には約15〜25℃)まで冷却し、この間、生成物は約35℃で沈殿を始めるであろう。必要ならば、通常50%水酸化ナトリウム水溶液または濃塩酸を使用して、スラリーのpHを約3.2(典型的には約3.1〜3.3)に調節する。このスラリーを約5℃まで、典型的には約0〜10℃まで冷却し、この温度範囲で少なくとも約3時間ゆっくりと攪拌する。固体を濾過によって回収して、冷水(0.35kg)およびアセトン(0.3kg)で連続的に洗浄して、粗PMPAを、典型的には純度約97%の湿った固体として得る。生成物を約50℃まで加熱し、そして水の含量が10%未満になるまで減圧で乾燥する。ジエチルPMPAの量を、先の合成工程中(収率100%と仮定して)で使用したアデニンの量から計算し、他の化合物を含み得る粗ジエチルPMPAの正味の重量からは計算しない。
【0061】
工程6.純(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン: 粗PMPA(水含量について訂正した1.00kg)(工程5の生成物)の水中懸濁液を、全ての固体が溶解するまで中程度から高速で攪拌しながら約100℃(典型的には約95〜110℃)まで加熱し、得られる溶液を、熱いうち濾過することによって浄化し、さらなる熱水(1kg、約95〜110℃)を使用してすすぐ。濾液を100℃まで加熱し、次いでまず約30℃(典型的には約20〜25℃)に約3〜5時間にわたってゆっくり攪拌しながら冷却し、次いで、約10℃(典型的には約5〜15℃)まで冷却を続ける。少なくとも約3時間、約10℃で保持した後に、固体を濾過によって回収し、冷水(1.5kg、約0〜10℃)次いでアセトン(1kg)を用いて連続的に洗浄する。湿った固まりを約50℃(典型的には約40〜60℃)で減圧で乾燥して、約5.9%(典型的には約3.9〜7.9%)の水含有量とし、純粋なPMPA一水和物となる。生成物の純度は、面積標準化および重量標準化HPLCの両方によって、典型的には98%以上である。化学純度に不満足な場合、生成物はこの工程の反復によって再度精製し得る。
【0062】
必要に応じた再結晶: PMPA(0.75g)を、HO(11.3mL、重量比15:1)から、懸濁物を95〜100℃まで加熱することによって再結晶する。室温まで冷却する際に、結晶化したPMPAを冷蔵庫で冷却する。3時間後、結晶を、TyvekTMを備えた粗フリット(coarsefrit)上で濾過し、濾過ケーキを氷冷HOおよびアセトンですすぎ、そして重量が一定になるまで風乾して、ふわふわした白色固体(調製物B)を得る。回収は約0.64g(85.3%)。HPLCは、典型的には98.5〜98.9%純粋なPMPAを示す。
【0063】
調製物BPMPAを、必要に応じて、95〜100℃まで加熱したHO(9.6mL、重量比15:1)から再結晶する。室温まで冷却する際に、結晶化したPMPAを冷蔵庫で一晩冷却する。PMPAを、TyvekTMを備えた粗フリット(coarsefrit)上で濾過し、濾過ケーキを氷冷HOおよびアセトンですすぎ、次いで重量が一定になるまで吸引乾燥してふわふわした白色固体(調製物C)を得る。PMPAの回収は典型的には約0.52g(81.3%)であり、純度は約99.3〜99.5%である。
【0064】
調製物CPMPA(0.50g)を、必要に応じて、沸騰HO(約7.5mL、重量比15:1)から再結晶する。室温まで冷却する際に、PMPAを、TyvekTMを備えた粗フリット(coarsefrit)上で濾過する。濾過ケーキを氷冷HOおよびアセトンですすぎ、次いで乾燥するまで吸引して、ふわふわした白色固体を得る。濾液を、必要に応じてまた濃縮して、白色固体を得る。1以上の再結晶から調製されたPMPAを、必要に応じてPMPA誘導体の生成に使用する。
【0065】
工程7.ビス(POC)PMPAフマレート: NMPのような適切な溶媒中のPMPA、トリアルキルアミン(TEA、ジイソプロピルエチルアミン)のような塩基およびクロロメチル−2−プロピルカルボネートの反応は、ビス(POC)PMPAを生じる。約55〜80℃の反応温度での、約1〜6時間の、反応物の中程度の攪拌は、典型的には、ビス(POC)PMPAの良好な収量を生じる。このビス(POC)PMPA合成反応は、これらの時間および温度範囲での種々の条件下で良好な結果を与える。例えば、この反応は、短時間(約30〜120分)の初期高温(約70〜80℃であるが、80℃を超えない)反応に続く、より低い温度(約55〜65℃)反応の場合に、良好な結果を与える。例示的な反応は、(1)80℃で30分、続いて、60〜65℃で2時間の反応、(2)60℃で約4時間、そして(3)70〜72℃で2時間である。
【0066】
ビス(POC)PMPA合成反応が完了した後に、必要に応じて濾過を使用して、反応混合物から固体を除去し、続いて、アルキルアセテート、通常C1−4アルキル部分のアセテート(例えば、n−ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテートまたは酢酸エチル)を用いて洗浄する。次に、最初の反応体積の約30%まで、減圧で蒸留して、有機溶媒を除去する。フマル酸の添加は、固体BPPFを形成させ、これは、通常cBPPFとして沈殿する。BPPFまたはcBPPFは、少量の、通常1%未満(約0.2〜0.4%)の水または有機溶媒(例えば、1−メチル−2−ピロリジノン、トリアルキルアミン(例えば、C1−3アルキル(例えば、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、またはプロピルジエチルアミン))、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロピルアセテート、C1−6アルカノール、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、CHCl、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタンまたはCHCl)を含み得る。典型的には、フマル酸をC1−6アルカノール(例えば、n−ヘキサノール、n−ペンタノール、n−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノールまたはメタノール)に溶解する。
【0067】
BPPFまたはcBPPFを生成するために使用される方法および組成物は、反応剤として接触されるビス(POC)PMPAおよびフマル酸を使用する。一般に、約3〜430mg/mL、通常約4〜100mg/mLのビス(POC)PMPAを含む溶液を使用する。一般に、ビス(POC)PMPA:フマル酸のモル比が約0.6:1〜1.4:1、通常約0.9:1.1または約1:1のものを使用する。一般に、使用する溶液は有機溶媒(例えば、アルキルアセテート、1−メチル−2−ピロリジノン、トリアルキルアミン、C1−6アルカノール、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、CHCl、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタンまたはCHCl)を含む。
【0068】
1実施態様においては、フマル酸を用いたビス(POC)PMPAの合成および結晶化は、BPPFを形成し、上記の工程7に示され、以下に記述される。不活性雰囲気(例えば窒素)を有する反応器中で、1−メチル−2−ピロリジノン(4.12kg)、PMPA一水和物(1.00kg)、およびトリエチルアミン(0.996kg)の混合物を約15〜45分間、典型的には約30分間攪拌し、次いでクロロメチル−2−プロピルカーボネート(2.50kg)を添加し、混合物を約55〜65℃まで、典型的には約60℃まで加熱し、そして約3〜6時間、典型的には約4時間、反応が完了したと必要に応じてHPLCによって示される(モノ(POC)PMPAの存在が15%を越えない)まで、含有物を跳ねることなく攪拌する。混合物をイソプロピルアセテート(10.72kg)で希釈し、できるだけ素早く、約15〜30℃、典型的には約25℃まで冷却し、この間、反応器の含有物を約15〜30℃、典型的には約25℃に保持し、混合物を約20〜60分、典型的には約30分攪拌する。固体を濾過によって除去し、イソプロピルアセテート(4.44kg)で洗浄する。合わせた有機相を、約15〜30℃、典型的には約25℃で、約1〜10分の中程度の攪拌を使用して水(洗浄一回あたり3.28kg)で2回抽出して、乳濁物の形成を回避し、続いて、相を分離する。合わせた水相を、イソプロピルアセテート(洗浄1回あたり3.56kg)で2回逆抽出(back−extracted)(約15〜30℃、典型的には約25℃)する。全ての有機相を合わせ、約1〜10分の中程度の攪拌を使用して水(2.20kg)(約15〜30℃、典型的には約25℃)で洗浄して、乳濁物の形成を回避する。合わせた有機相を、約25〜43℃であるが45℃を越えないで最初の体積(約10〜12L/kgPMPA一水和物)の約30%まで、減圧(約26.5〜28” Hg)で濃縮する。インライン(in−line)1μmフィルターを使用する研磨濾過(polishingfiltration)の後、淡黄色のオイルが残留するまで、減圧(約28” Hg)で、約20〜38℃であるが40℃を越えないようにして、有機相を再び濃縮する。オイルを、固体が溶解するまで、約0.5〜2.0時間、激しく攪拌しながら、2−プロパノール(6.24kg)中のフマル酸(0.38kg)の温溶液(約45〜55℃、典型的には約50℃)中に溶解する。次いで、温溶液を、必要に応じて、インライン1μmフィルターを使用して濾過し、この間溶液を最小限に冷却する。約34〜50℃、典型的には約40℃の濾液を、必要とされる最小限の攪拌を使用して攪拌して、均一な溶液を得る。得られる溶液を約30〜33℃、典型的には約32℃まで、約30分にわたって、最小限に攪拌しながら冷却し、必要に応じて、少量のビス(POC)PMPAフマレート(約100mg)で種播し、約12〜18℃、典型的には約15℃まで、約1〜2時間、典型的には約1時間にわたって冷却する。種結晶を添加する前に結晶の形成が開始した場合は、種結晶は必要とされないかもしれない。溶液を冷却したときに、約12〜33℃の範囲にわたって結晶が形成する。結晶の形成が開始したときに、攪拌を停止する。混合物を約15℃で少なくとも約12時間、典型的には約12〜30時間静置する。得られるスラリーを濾過し(TyvekTM)、濾過ケーキを、予め混合しておいたブチルエーテル(2.44kg)中イソプロピルアセテート(0.70kg)(1:4v/v)溶液で洗浄する。濾過ケーキを、40℃を超えないで、約1〜10日間、減圧で乾燥し、そして乾燥した生成物は必要に応じて粉砕(mill)され(0.050インチスクリーンを備えたFitzmillN5A)、ビス(POC)PMPAフマレートを、純度約97.0〜99.5%の白色の、微粉末様結晶として得る。BPPFを、所望であれば、必要に応じて、基本的に本明細書で記載したように再結晶して、生成物の純度を向上させる。
【0069】
実施態様には、方法の工程または操作を行うときに一過性に起こる組成物を含む。例えば、リチウムアルコキシドを、9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン溶液と混合した場合、混合の開始時の組成物は極少量のリチウムアルコキシドを含む。この組成物は、溶液を混合するために十分に攪拌する前には一般に不均一混合物として存在する。このような組成物は通常極少量の反応生成物を含み、かつ主に反応物を含む。同様に、反応が進行するにつれて、反応物、生成物および副生成物の割合は互いに関連して変化する。これらの一過性の組成物は、プロセス工程を行う場合に発生する中間体であり、これらは本発明の実施態様として明確に含まれる。
【0070】
本明細書中に見出される全ての引用は、特異性を有する参照として援用される。
【0071】
以下の実施例はさらに本発明を例示するが限定しない。
【実施例】
【0072】
実施例
実施例1
ビス(POC)PMPAフマレートの物理特性。cBPPFのX−線粉末回折パターンを、General Electric model XRD−5 X−線回折計およびSiemens SoftwareSystemsインターフェースを使用して、公表された手順(U.S. Pharmacopoeia、第23巻、1995、方法941、U.S.P.Pharmacopeial Convention, Inc, Rockville, MD)に従って、1分あたり2度(degree)の2シータ(2θ)のスキャン速度で決定した。グラファイトモノクロメータ(ESIndustries)およびシンチレーション検出器を有する標準焦点銅X−線管(Varican CA−8)を使用して、40KVおよび−20mAで操作したX−線発生装置に曝することによって、BPPF結晶を、4と35度との間の2θで走査した。計算に使用したX−線波長の重み付き平均値は、CuKα1.541838Åであった。BPPFは、約4.9、10.2、10.5、18.2、20.0、21.9、24.0、25.0、25.5、27.8、30.1および30.4の2θ(度)で表される、特徴的なX−線粉末回折ピークを示す。例示的なX−線粉末回折パターンを以下に示す。
【0073】
BPPF結晶はまた、示差走査熱量測定によっても分析され、約118.3度(約116.1度で開始する)に特徴的なピークを有するサーモグラムを示した。サーモグラムを、窒素雰囲気下で1分あたり10℃の走査速度を使用して得た。熱量測定の走査を、示差走査熱量計(モデル2200コントローラを有する、モデルDSC2910、TA Instruments)を使用して得た。約5mgのBPPF結晶を使用してサーモグラムを得た。示差走査熱量測定については記述されている(例えば、U.S.Pharmacopoeia、第23巻、1995、方法891、U.S.P. Pharmacopeial Convention, Inc, Rockville,MDを参照のこと)。
【0074】
BPPFの融点(その温度で試験サンプルが全体的に液体になる)を、公表された手順(U.S.Pharmacopoeia、第22巻、1994、方法741、方法 Ia、U.S.P. Pharmacopeial Convention, Inc,Rockville, MD)に従って、FP90中央処理装置が備えられているMettler FP81測定セルを使用して決定した。毛細ガラス管の底部を、BPPF微粉末で充填した。硬い面上で毛細管をたたくことによって、BPPFを4〜6mmに詰めた。毛細管をサンプルスロット中に導入し、温度を、1分あたり1℃の速度で上昇させた。融点である114.2〜114.6℃は、サンプルの融解が完了した時点の温度に基づいた。
【0075】
BPPFを、公表された手順(U.S.Pharmacopoeia、第23巻、1995、方法921、U.S.P. Pharmacopeial Convention, Inc, Rockville,MD)および製造者のCoulometer取り扱い説明書に従って、Metrohm 684 KF Coulometerを使用するKarl Fischer滴定によって、水含有量について試験した。このアッセイに使用したBPPFの量、すなわち約50〜100mgを、5点(fiveplace)化学天秤(Sartorius, Model RC210D、または同等のもの)を使用して測定した。典型的なバッチは1.0%w/w未満の水を含んでいた。
【0076】
BPPF結晶を、製造者の取り扱い説明書に従って、Perkin−Elmermodel 1650 FT−IR 分光計を使用する赤外線分光光度法によって、分析した。KBr(Aldrich, IR 等級)を、使用前に減圧下60℃で1晩乾燥した。約10重量%(約5mg)のBPPF結晶および約90重量%(約50mg)の乾燥したKBrを含む半透明のペレットを、二つの粉末を共に粉砕して微粉末を得ることによって調製した。IR分光法については記述されている(例えば、U.S.Pharmacopoeia、第22巻、1994、方法197、U.S.P. Pharmacopeial Convention, Inc, Rockville,MD;Morrison, R.T.ら、Organic Chemistry、第3版、Allyn and Bacon, Inc., Boston, 405−412頁、1973)。分光光度計サンプルチャンバーを、サンプルを用いた走査の前に、バックグラウンド走査において、約6p.s.i.の高純度窒素ガスで少なくとも5分間パージして、二酸化炭素の吸収の影響を≦3%まで減少させた。BPPF結晶は、約3224(O−H)、3107−3052(N−H、C=C−H)、2986−2939(脂肪族C−H)、1759(アルキルエステルC=O)、1678(芳香族C=N)、1620(芳香族C=C)、1269(ホスホネートP=O)および1102(C−O−C)cm−1(reciprocalcentimeters)に現れた特徴的なバンドを有する、臭化カリウム中の赤外線吸
収スペクトルを示した。
【0077】
異なった溶媒中でのBPPFの溶解度を試験した。BPPFは、一般に、極性溶媒において最も溶解性であると見出し、これを、本発明の方法および実施態様で典型的に使用する。ジメチルホルムアミド中でのBPPFの溶解度は、428mg/mLであり、イソプロピルアセテート:水(1:1v/v)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、0.1N HClおよびアセトン中でのBPPFの溶解度は、約15〜100mg/mLであった。アセトニトリル、イソプロピルアセテートおよび脱イオン水(pH3.3)でのBPPFの溶解度は、約3〜15mg/mLであった。CHCl、ジエチルーテルおよびヘキサン中ではBPPFは低い溶解度を有した。
【0078】
BPPF結晶を、製造者の取り扱い説明書に従って、Hewlett−Packardmodel 8425Aダイオードアレイ分光光度計を使用する紫外線分光光度法によって、分析した。このアッセイに使用したBPPFの量、すなわち約25mgを、5点(fiveplace)化学天秤(Sartorius, Model RC210D、または同等のもの)およびHPLCまたは分光光度法等級の溶液を使用して測定した。0.01Mリン酸カリウム緩衝液中のpH6.0での10μg/mLのBPPFのモル吸光度は14930M−1cm−1であり、そして0.01NHCl中のpH2.0での15μg/mLのBPPFでは、15010M−1cm−1であった。メタノール中のBPPF(10μg/mL)は、約260nmにλmaxを有した。
【0079】
BPPF結晶は、92%の相対湿度および室温で保持した場合、37日間まで吸湿性ではなかった。BPPF結晶は、電位差滴定によって測定したように、pKa3.8を有した。
【0080】
実施例2
(R)−PMPAのキラル濃縮。(R,S)−PMPA・HO(2.5g、約93% R異性体)を、水(100mL)を含むフラスコ中で懸濁し、必要ならばHClまたはNaOHを使用して、pHを7.12に調節した。溶液を40℃まで加温し、pHを約5.0に調節した。次いで、pHを3.1に調節し、溶液に(R)−PMPAを種播した。溶液を室温にまで冷却し、約2時間置いた。固体を、粗ガラスフリット焼結ガラス漏斗上で収集し、氷冷水(10mL)で洗浄し、次いでアセトン(10mL)で洗浄した。得られるPMPAは、98.3%の(R)異性体からなった。2.5gの(R,S)−PMPA(約93%(R)異性体)および25mLの水を使用して同様の手順を行った場合、(R)異性体のキラル濃縮は観察されなかった。0.766gの(R,S)−PMPA(約93%(R)異性体)および10mLの水を使用して同様の手順を行った場合、99.6%(R)異性体までの(R)異性体のキラル濃縮が観察された。
【0081】
実施例
cBPPFおよびビス(POC)PMPA・クエン酸塩の、固体状態化学安定性を、各化合物を異なった条件下で貯蔵した後の分析によって比較した。その結果、BPPF粉末は予想外に、高温および相対湿度において貯蔵に対してより安定であることを示した。
【0082】
【化5】

日、 ** 相対湿度、 *** モノ(POC)PMPAシトレートに加えて他の生成物が生成した
実施例4
ビス(POC)PMPAフマレートの処方物。結晶性BPPFを、いくつかの以下の賦形剤を用いて
処方した。
【0083】
【化6】

処方物において、前ゼラチン化デンプンNFを、錠剤の圧縮のために適切な結合剤および崩壊剤として使用した。内部架橋したナトリウムカルボキシメチルセルロースである、クロスカルメロース(Croscarmellose)ナトリウムNFを、錠剤の分解および溶解を促進するために使用した。ラクトース一水和物NFを、製造を補助し、かつ錠剤の溶解を促進するための希釈剤として使用した。ステアリン酸マグネシウムNFを、錠剤圧縮プロセスからの錠剤の排出を促進するための潤滑剤として使用した。
【0084】
BPPFを含む錠剤を、ブレンダー内で、前ゼラチン化デンプン、クロスカルメロースナトリウムおよびラクトース一水和物をブレンドすることによって生成する。適切に湿った顆粒化物が形成されるまで水を添加する。湿った顆粒化物を粉砕し、流動床乾燥機中で乾燥して、乾燥の際の水分含量の損失が3%を超えないようにし、そして乾燥した顆粒をミルに通す。粉砕された顆粒を、顆粒外部賦形剤、クロスカルメロースナトリウムおよびラクトース一水和物と合わせ、そしてミキサー中でブレンドして粉末状のブレンドを得る。次いで、粉末状のブレンドをステアリン酸マグネシウムとブレンドし、次いで錠剤へと圧縮する。錠剤を、ポリエステル繊維充填材料と共に、そして必要に応じてシリカゲル乾燥剤と共に、高密度ポリエチレンまたはガラス瓶に充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2.7〜3.5のpHで(R,S)−PMPA溶液を含む組成物であって、ここで、該溶液は、約0.1 g/mL未満の(R,S)−PMPAを有し、そしてここで、約90〜94%のPMPAは(R)立体配置である、組成物。
【請求項2】
約0.08 g/mL未満の(R,S)−PMPAを含む溶液のpHを約2.7〜3.5に調節する工程を含む方法であって、ここで、約90〜94%のPMPAが(R)立体配置である、方法。
【請求項3】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−280694(P2010−280694A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175808(P2010−175808)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【分割の表示】特願2008−58798(P2008−58798)の分割
【原出願日】平成10年7月23日(1998.7.23)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】