説明

ネイルエナメル用水性樹脂分散体とその製造方法、および水性ネイルエナメル組成物

【課題】有機溶剤系ネイルエナメルのような早い乾燥性であり、かつ良好な塗膜の密着性、耐剥がれ性、成膜性を付与しうるネイルエナメル用水分樹脂散体、および水性ネイルエナメル組成物を提供することにある。
【解決手段】架橋型高分子エマルジョンを含有するネイルエナメル用水性樹脂分散体であって、 前記架橋型高分子エマルジョンが、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)とを乳化重合してなる高分子エマルジョン(A)と、 1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)と、を含むことを特徴とするネイルエナメル用水性樹脂分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のネイルエナメル用水性樹脂分散体および該水性分散体を含有する水性ネイルエナメル組成物に関するものである。さらに詳しくは乾燥性が早く、艶、耐水性、造膜性に優れるネイルエナメル用水性樹脂分散体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネイルエナメルには、油溶性の成膜性ポリマー、またはポリマー粒子の水分散体(以下、高分子エマルジョンと表現する)が配合されている。しかしネイルエナメル中に高分子エマルジョンを配合した場合には、乾燥が遅く、また耐水性が劣ることから、該ネイルエナメルは水によりとれやすくなる。一方、油溶性ポリマーを配合した場合には、有機溶剤を使用することが必須となるため、該ネイルエナメルは、二枚爪、爪の白化の原因となりやすい。
【0003】
これらの欠点を解決するために、高分子エマルジョンを含有するネイルエナメルが提案されている。例えば、特許文献1〜6には、アクリル系水性高分子エマルジョンからなるネイルエナメルが開示されているが、乾燥性、艶、成膜性、耐水性、密着性において未だ満足のいくものではない。
【特許文献1】特願昭54−28836号公報
【特許文献2】特開昭54−52736号公報
【特許文献3】特開昭56−131513号公報
【特許文献4】特開昭57−56410号公報
【特許文献5】特開平6−80537号公報
【特許文献6】特開平11−209244公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有機溶剤系ネイルエナメルのような早い乾燥性であり、かつ良好な塗膜の密着性、耐剥がれ性、成膜性を付与しうるネイルエナメル用水分樹脂散体、および水性ネイルエナメル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の架橋型高分子エマルジョンを含有するアクリル共重合体の水分散体が上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、第1の発明は、架橋型高分子エマルジョンを含有するネイルエナメル用水性樹脂分散体であって、
前記架橋型高分子エマルジョンが、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)とを乳化重合してなる高分子エマルジョン(A)と、
1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)と、を含むことを特徴とするネイルエナメル用水性樹脂分散体に関する。
【0007】
第2の発明は、高分子エマルジョン(A)が、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)0.1〜20重量%と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)80〜99.9重量%と、を乳化重合してなるものである第1の発明に記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体に関する。
【0008】
第3の発明は、高分子エマルジョン(A)が、加水分解性シランの存在下において乳化重合してなるものである第1または2の発明に記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体に関する。
【0009】
第4の発明は、高分子エマルジョン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量が、5,000〜100,000であることを特徴とする第1〜3の発明いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体に関する。
【0010】
第5の発明は、高分子エマルジョン(A)のガラス転移温度が、0〜100℃であることを特徴とする第1〜4の発明いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体に関する。
【0011】
第6の発明は、高分子エマルジョン(A)の平均粒子径が、10nm〜500nmであることを特徴とする第1〜5の発明いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体に関する。
【0012】
第7の発明は、架橋型高分子エマルジョンを含有するネイルエナメル用水性樹脂分散体の製造方法であって、
前記架橋型高分子エマルジョンが、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)とを乳化重合して高分子エマルジョン(A)を得る工程と、
前記高分子エマルジョン(A)に、1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)を混合する工程と、を含むことを特徴とするネイルエナメル用水性樹脂分散体の製造方法に関する。
【0013】
第8の発明は、第1〜6の発明いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体を10〜60重量%含有することを特徴とする水性ネイルエナメル組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のネイルエナメル用水性樹脂分散体を水性ネイルエナメル組成物に使用することにより、有機溶剤系ネイルエナメルのような早い乾燥性であり、かつ良好な塗膜の密着性、耐剥がれ性、成膜性を有する水性ネイルエナメル組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0016】
本発明のメイルエナメル用水性樹脂分散体は、架橋型高分子エマルジョンを含有することを特徴とし、この架橋型高分子エマルジョンは、高分子エマルジョン(A)とヒドラジン誘導体(B)とを含むことを特徴とする。
【0017】
まず高分子エマルジョン(A)について説明する。高分子エマルジョン(A)は、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)と、を乳化重合して得られる、アクリル共重合体の水分散体である。
【0018】
本発明に使用する、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)としては、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシブチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレートなどの1種または2種以上から選択することができる。
【0019】
また、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボニルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボニルなどのメタクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系不飽和単量体;
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などの重合性不飽和カルボン酸およびそれらの無水物などのカルボキシル基含有不飽和単量体;
アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのヒドロキシ基含有不飽和単量体;
N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタアクリルアミドなどのN−置換アクリル、メタクリル系不飽和単量体;
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和単量体; 並びにアクリロニトリルなどの1種または2種以上から選択することができる。
【0020】
本発明においては、上記エチレン性不飽和単量体(a2)の中で、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有不飽和単量体を使用するのが好ましい。カルボキシル基含有不飽和単量体は、使用するラジカル重合可能な全エチレン性不飽和単量体中に0.1〜5重量%使用することが好ましい。カルボキシル基含有不飽和単量体が0.1%より少ないと、得られるネイルエナメル用水性樹脂分散体および水性ネイルエナメル組成物の経時安定性が低下する場合がある。一方、5%より多いと、中和時の粘度が高くなるとともに、塗膜の耐水性が悪くなる場合がある。
【0021】
高分子エマルジョン(A)の製造に使用するエチレン性不飽和単量体の中で、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)は、使用するラジカル重合可能な全エチレン性不飽和単量体中に0.1〜20重量%、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)は、80〜99.9重量%であることが好ましい。前記エチレン性不飽和単量体(a1)が0.1%より少ないと、得られるネイルエナメル用水性樹脂分散体および水性ネイルエナメル組成物の乾燥性の効果が低下する場合がある。一方、20%より多いと、重合安定性、保存安定性が悪くなる場合がある。
【0022】
さらに高分子エマルジョン(A)は、加水分解性シランの存在下において乳化重合せしめて得られることを特徴とする。本発明に使用することができる加水分解性シランとしては、炭素数1〜14のアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基含有化合物が挙げられる。本発明の水性ネイルエナメル組成物は、上記アルコキシシリル基含有化合物を含有しない場合においても優れた性質を有しているが、上記アルコキシシリル基含有化合物を含むと、得られる皮膜に優れた耐水性、光沢保持性、耐温度変化性などをさらに付与することができる。
【0023】
上記アルコキシシリル基含有化合物は、炭素数1〜14のアルコキシル基を有するアルコキシシリル基を含有する化合物であれば特に限定されず、上記炭素数1〜14のアルコキシル基は直鎖状又は分枝状であってもよい。また、上記アルコキシル基は上記アルコキシシリル基を構成する珪素原子に1〜4個結合していてもよい。
【0024】
上記アルコキシシリル基含有化合物としては特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。これらのうち、テトラメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0025】
上記アルコキシシリル基含有化合物は、本発明のネイルエナメル用水性樹脂分散体中に0.1〜10重量%含有することが好ましい。上記アルコキシシリル基含有化合物が0.1重量%未満であると、シロキサン結合に基づく架橋ないし高分子量化が不充分となって、添加効果に乏しく、10重量%を超えると重合時の安定生産が困難となる場合がある。より好ましくは、0.5〜8重量%であり、特に好ましくは1〜7重量%である。
【0026】
次に、本発明の高分子エマルジョン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量は、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜40,000がさらに好ましい。重量平均分子量が100,000を超えると皮膜の除光性が悪くなってしまう場合がある。一方、5,000未満だと皮膜の機械物性が低下する場合がある。
【0027】
また、本発明の高分子エマルジョン(A)を上記分子量の範囲にするために連鎖移動剤を使用することが出来る。ところで、連鎖移動剤のうちメルカプト基(チオール基)を有する連鎖移動剤は、一般に極めて不快な特有の臭気があり、化粧品のような用途には到底使い得ないものである。しかし、下記一般式(1)にて示されるメルカプトプロピオン酸誘導体は、無臭であり、ネイルエナメルのような化粧品にも使用することができる。
【0028】
一般式(1)
(HS−CH2―CH2―COO)n―R
n=1の場合、Rは炭素数4以上のアルキル基もしくは炭素数4以上のアルコキシアルキル基を表し、n=2〜4の場合、Rはn価の有機残基を表す。
【0029】
なお、臭気抑制の観点からメルカプトプロピオン酸誘導体以外の連鎖移動剤を極少量使用することも考えられる。しかし、実用上の臭気のレベルを考慮すると、他の連鎖移動剤では分子量調整に効果を発現することができない。他方、除光性と機械物性をバランス良く向上させ得る程度の分子量に調節しようとすると、他の連鎖移動剤の場合、不快と感じる程度を添加しなければならない。
【0030】
本発明においては、全エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、メルカプトプロピオン酸誘導体を0.1〜10.0重量部用いることが好ましく、0.5〜5.0重量部用いることがより好ましい。メルカプトプロピオン酸誘導体が、0.1重量部未満だと高分子エマルジョン(A)の重量平均分子量が100,000を超えてしまい、皮膜の除光性が著しく悪くなってしまう場合がある。一方、メルカプトプロピオン酸誘導体が10.0重量部よりも多いと、高分子エマルジョン(A)の重量平均分子量が5,000未満になり、皮膜の機械物性が低下する場合がある。
【0031】
本発明において用いられるメルカプトプロピオン酸誘導体のうち、n=1のものとしては、例えば、メルカプトプロピオン酸オクチル、n−ブチル−3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸トリデシル等のメルカプトプロピオン酸アルキルや、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが挙げられる。メルカプトプロピオン酸アルキルのアルキル基としては、直鎖型でも分岐型でもいずれでもよい。例えば、メルカプトプロピオン酸オクチルが好ましく、メルカプトプロピオン酸−n−オクチルでもメルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシルのいずれでも良く、両者を併用してもよい。n=2〜4のものとしては、例えば、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トチメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリス(β−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。本発明においては、これら公知のものを1種以上もしくは多種を混合して使用することができる。これら誘導体の中でも、特にメルカプトプロピオン酸オクチルの存在下に単量体を重合せしめた場合、ネイルエナメルとして使用する場合に問題となる臭気もなく、かつ分子量を好適に調整した高分子エマルジョン(A)を提供することが可能となる。
【0032】
また、高分子エマルジョン(A)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、0〜100℃が好ましく、30℃〜80℃がさらに好ましい。Tgが0℃より低い場合、室温における機械物性が低下する傾向にある。またTgが100℃を超える場合、除光性および被膜が脆弱となる傾向がある。Tgが0〜100℃の範囲にあると、ネイルエナメルとして使用した場合の除光性および室温下の機械物性および温水下の機械物性に起因する化粧持ちがさらに向上するのでより好ましい。 尚、本明細書中におけるTgは北岡協三著、「塗料用合成樹脂入門」(高分子刊行会)に記載されている下記式から求めることができる。
【0033】
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)・・・・+(Wn/Tgn)
ここで、Tgは得られるガラス転移温度(K)、Tg1、Tg2等はそれぞれの単量体単独重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2等はそれぞれの単量体の重量比率を表す。
【0034】
なお、乳化重合の際に乳化剤として、エチレン性不飽和基を有するものを使用する場合には、エチレン性不飽和基を有する乳化剤は、上記Tgの計算に用いる単量体として使用しないものとする。
【0035】
また、本発明においては高分子エマルジョン(A)の粒子構造を多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることも出来る。例えば粒子表層であるシェル部に単量体(a1)を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、乾燥性や成膜性を向上させることが出来る。
【0036】
ところで、水性に限らずネイルエナメルには、着色用の顔料等が含有され、皮膜としての発色状態が鮮明であることが要求される。しかも、爪に塗布する前の色味や質感と、乾燥後の皮膜の色味や質感とに差異のないことが外観再現性として要求される。
【0037】
ネイルエナメルとしての外観再現性は、水性樹脂分散体の透明性が大きく関与し、水性樹脂分散体の透明性は、樹脂の分散状態が大きく関与する。即ち、高分子エマルジョン(A)の平均粒子径は、10〜500nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。また、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると透明性が著しく損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5重量%以下であることが好ましい。平均粒子径が500nmより大きいと、ネイルエナメルとして高度の外観再現性を求められる際は、その再現性が若干低下する場合があるが、求められる外観再現性の程度によっては使用することも当然可能である。また、平均粒子径が10nmより小さいと、分散体自体の粘度が上昇して、ネイルエナメルとしての保存安定性や使用の際の塗布しやすさに影響を与える場合がある。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定出来る。
【0038】
本発明の高分子エマルジョン(A)は、従来既知の重合方法により合成され、特に乳化重合方法により合成した場合は、得られる高分子エマルジョン(A)の平均粒子径、分子量調整等が容易であるために特に好ましい。
【0039】
本発明において乳化重合の際に用いられる乳化剤としては、エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤、および/またはエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤など、従来公知のものを任意に使用することができる。
【0040】
エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤はさらに大別して、アニオン系、非イオン系のノニオン系のものが例示できる。特にエチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤を単独で用いると、共重合体の分散粒子径が微細となるとともに粒度分布が狭くなるため、ネイルエナメルとして使用した際に外観再現性をより飛躍的に向上するために好ましい。このエチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤は、1種を単独で使用しても、複数種を混合して用いても良い。
【0041】
エチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤の一例として、以下にその具体例を例示するが、本願発明において使用可能とする乳化剤は、以下に記載するもののみを限定するものではない。前記乳化剤としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104等);
スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等);
アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、SE−等);
(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等);
リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL,旭電化工業株式会社製アデカリアソープPP−70等)が挙げられる。
【0042】
本発明の高分子エマルジョン(A)を乳化重合により作成する場合においては、必要に応じて前記したアニオン系反応性乳化剤と共に、若しくは単独でノニオン型反応性乳化剤を使用することができる。本発明で用いることのできるノニオン系反応性乳化剤としては、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);
アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業株式会社製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);
(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
【0043】
本発明の高分子エマルジョン(A)を乳化重合により得るに際しては、得られる水性分散体の性能に悪影響を及ぼさない範囲において、前記したエチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤とともに、必要に応じエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤を併用することができる。非反応性乳化剤は、非反応性アニオン系乳化剤と非反応性ノニオン系乳化剤とに大別することができる。
【0044】
非反応性ノニオン系乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;
オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を例示することができる。
【0045】
また非反応性アニオン系乳化剤の例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;
ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;
ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;
モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類等を例示することができる。
【0046】
本発明において用いられる乳化剤の使用量は、必ずしも限定されるものではなく、高分子エマルジョン(A)が最終的に水性ネイルエナメル組成物として使用される際に求められる物性に従って適宜選択できる。例えば、全エチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して、乳化剤は通常0.1〜30重量部であることが好ましく、0.3〜20重量部であることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の高分子エマルジョン(A)の乳化重合に際しては、得られる水性樹脂分散体の性能に悪影響を及ぼさない範囲において、水溶性保護コロイドを併用することもできる。上記の水溶性保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;
グアガムなどの天然多糖類;などが挙げられ、これらは、単独でも複数種併用の態様でも利用できる。水溶性保護コロイドの使用量としては、全エチレン性不飽和単量体の合計100重量部当り0.1〜5重量部であり、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。
【0048】
本発明の高分子エマルジョン(A)の乳化重合に際して用いられる水性媒体としては、水が挙げられ、親水性の有機溶剤も本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0049】
本発明の高分子エマルジョン(A)を得るに際して用いられる重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1'−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル等のアゾビス化合物等を挙げることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、全エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の量を用いるのが好ましい。
【0050】
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドなど、従来既知のものを好適に使用することができる。また乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。これら還元剤は、全エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.05〜5.0重量部の量を用いるのが好ましい。なお前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
【0051】
高分子エマルジョン(A)の重合にカルボキシル基含有不飽和単量体等の酸性官能基を有する単量体を使用した場合、重合前や重合後に塩基性化合物で中和することができる。中和する際、アンモニアもしくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類;
2−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類;
モルホリン等の塩基で中和することができる。ただ、乾燥性に効果が高いのは揮発性の高い塩基であり、好ましい塩基はアミノメチルプロパノール、アンモニアである。
【0052】
次にヒドラジン誘導体(B)について説明する。本発明のヒドラジン誘導体とは、1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有する化合物であり、高分子エマルジョン(A)中に存在するアルド基またはケト基と反応、硬化しうる化合物である。ヒドラジン誘導体(B)を、高分子エマルジョン(A)に配合することにより本発明のネイルエナメル用水性樹脂分散体となる。添加方法としては、水溶性のものはそのまま、あるいは水で希釈して添加する。油溶性のものは本発明の形態からするとあまり好ましくないが、使用する場合は必要に応じて界面活性剤で乳化して添加する方がよい。
【0053】
本発明の、1分子中に少なくとも2つのヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジヒドラジドの他、炭酸ポリヒドラジド、脂肪族、脂環族、芳香族ビスセミカルバジド、芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸のポリヒドラジド、芳香族炭化水素のジヒドラジド、ヒドラジン−ピリジン誘導体およびマレイン酸ジヒドラジドなどの不飽和ジカルボン酸のジヒドラジドなどが挙げられる。
【0054】
ヒドラジド誘導体(B)の配合量は、ヒドラジド誘導体(B)中のヒドラジド基が、高分子エマルジョン(A)中のアルド基またはケト基に対して0.1〜1.0当量になるような比率で配合するのが好ましい。ヒドラジド基が0.1当量未満では、水性ネイルエナメル組成物の乾燥性の効果に乏しい。一方、1.0当量より多いと、得られる塗膜の耐水性が劣る場合がある。
【0055】
本発明のネイルエナメル用水性樹脂分散体には、架橋剤として多価金属を配合することも可能である。添加方法としては、水に多価金属塩を溶解してから添加する。より好ましくは多価金属塩水溶液に塩基性物質を加えて金属錯体として添加した方がよい。また、多価金属添加前の水性樹脂分散体もあらかじめpHを高くしておいた方が好ましい。pHを調整する場合は、上述した塩基性化合物を使用することができる。
【0056】
多価金属としては、銅、銀、ベリリウム、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、鉛、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、スズ、ジルコニウム、モリブデン、マグネシウム等が使用できる。また、これらの金属は水もしくは塩基性水に溶解できる酸化物、水酸化物、炭酸化物、塩化物等の形で用いることができる。
【0057】
多価金属の添加量は、高分子エマルジョン(A)に含有されるアルド基またはケト基と、カルボキシル基との合計に対して0.05〜0.5モルの金属を添加する。0.05モル以下だと乾燥性の効果が顕著に現れない場合がある。また、0.5モル以上だと水性ネイルエナメル組成物の安定性が悪くなるとともに、塗膜の耐水性も悪くなる場合がある。
【0058】
次に本発明の水性ネイルエナメル組成物について説明する。本発明の水性ネイルエナメル組成物は、上記した水性樹脂分散体を10〜60重量%含有するものであり、20〜50重量%含有することが好ましい。即ち、水性樹脂分散体に種々の添加剤を配合して、水性樹脂分散体が固形分換算で10〜60重量%となるようにしたものである。本発明の水性ネイルエナメル組成物は、ネイルエナメルトップコート、ネイルエナメルベースコートなど、一連のネイルエナメル用途に好適に用いることが可能である。
【0059】
本発明の水性ネイルエナメル組成物には、架橋剤、成膜助剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料、色素)等、従来からネイルエナメルに使用されてきた各種配合剤を添加することができる。さらに本発明の水性ネイルエナメル組成物には必要に応じて、顔料分散用の乳化剤、前述した以外の成膜助剤、前記以外の樹脂分散体、樹脂、粘度調整剤(ゲル化剤)、水溶性高分子、防腐剤、消泡剤、酸化防止剤、香料、紫外線吸収剤、美容成分、増粘剤、水平化剤、湿潤剤、分散剤、保存料、UVスクリーン剤、活性物質、保湿剤、香料、中和剤、安定剤等を適宜配合することができる。
【0060】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中に配合される成膜助剤は、塗膜の形成を助け、塗膜が形成された後においては比較的速やかに蒸発揮散して塗膜の強度を向上させる一時的な可塑化機能を担うものであり、沸点が110〜200℃の溶媒が好適に用いられる。具体的には、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルは少量で高い成膜助剤効果を有するため、乾燥速度、耐水性といった製品機能への影響が少ないので特に好ましい。これら成膜助剤は、水性ネイルエナメル組成物中に0.5〜15重量%含まれることが好ましい。
【0061】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中には、成膜性、除光性、塗膜の機械物性を向上する目的で、従来既知の可塑剤を配合することができる。該可塑剤としてはアジピン酸ジイソブチル、tert−ブチル酸と2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールのエステル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチオル、フタル酸ブチル−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルおよびそれら混合物の中から選択することができる。また、これらの可塑剤は、好ましくは常圧で測定した沸点が285℃以下、好ましくは270℃以下、さらに好ましくは250℃である。なお、本発明においては、沸点の値は、測定誤差等も考慮すると±2℃の範囲を有する。
【0062】
本発明の水性ネイルエナメル組成物中には、その凍結、凝固を防止するために凍結防止剤を配合することができる。凍結防止剤としては、塗膜が形成された後比較的速やかに蒸発揮散して塗膜物性に影響を与えない物がよく、沸点が100℃未満の低級アルコールが好ましい。
【0063】
このような低級アルコールとしては、以下の例に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、人体や爪に対する影響を考慮するとエタノールが好ましい。これらの凍結防止剤は、水性ネイルエナメル組成物中に0.5〜15重量%含まれることが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本願発明の効果をさらに詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
【0065】
実施例1〜10、比較例1〜3では、まず高分子エマルジョンを製造し、次いで得られた各高分子エマルジョンを用い、ネイルエナメル用水性樹脂分散体および水性ネイルエナメル組成物を調整し、下記評価項目の試験を行った。その結果を表に示す。なお、表中の各エチレン性不飽和単量体量は、全エチレン性不飽和単量体100重量部に対する部数で示した。
【0066】
(実施例1)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水265.0部と反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部とを仕込み、別途ダイアセトンアクリルアミド11.7重量部、スチレン39.3重量部、メタクリル酸メチル264.3重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル69.5重量部、アクリル酸3.9重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.9重量部、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部、イオン交換水263.7部および反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの5%をさらに加えた。
【0067】
内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液6.0部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液14.7重量部を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、内温を70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液9.8部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液24.6重量部を3時間かけて滴下し、さらに3時間攪拌を継続した。なお乳化重合中重合反応液のpHは3.0に保った。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を3.9重量部添加して、pHを8.5とし、不揮発分濃度40.5%の高分子エマルジョンを得た。なお、不揮発分濃度は、150℃20分焼き付け残分により求めた。得られた高分子エマルジョンのゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。また、得られた高分子エマルジョンのガラス転移温度(計算値)は60℃であった。得られた高分子エマルジョンの平均粒子径は60nmであった。平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置により測定した。
【0068】
次に顔料分散ペーストを調整した。顔料分散ペースト、アクリル系高分子共重合体(高分子分散体、商品名「ジョンクリルJ−68」ジョンソンポリマー(株)社製、スチレン−アクリル酸系、重量平均分子量10,000、不揮発分100重量%)2.0重量部、イオン交換水77.5重量部、25%アンモニア水(中和剤)0.5重量部を混合撹拌し、得られた水溶液に、酸化チタン(顔料)20.0重量部を加え、粗分散を行った後、ガラスビーズ(直径0.5mm)を100重量部添加し、ビーズミル分散器を用いて1時間湿式粉砕処理及び分散処理を行った。この分散液を5μmのメンブレンフィルタで粗大粒子および塵を除去して顔料分散ペーストを得た。得られた顔料分散ペースト3重量部、上記高分子エマルジョン87.5部、アジピン酸ジヒドラジド(含有アルド基またはケト基に対し0.5当量)セバシン酸ジエチル3部、プロピレングリコールモノブチルエーテル6部を混合して、水性ネイルエナメル組成物を調整した。水性ネイルエナメル組成物中の水性樹脂分散体(高分子エマルジョンの固形分とヒドラジン誘導体との合計)は、36.5重量%であった。後述する方法および基準に従って基本物性と実用物性とを評価した。
【0069】
(実施例2〜4、6〜8、比較例1〜3)
表1に示した組成比で実施例1と同様にして高分子エマルジョンを得てから水性ネイルエナメル組成物を調整し、同様に評価試験を行った。
【0070】
(実施例5)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水265.0部と反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部とを仕込み、別途ダイアセトンアクリルアミド11.7重量部、スチレン39.3重量部、メタクリル酸メチル264.3重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル69.5重量部、アクリル酸3.9重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.9重量部、イオン交換水263.7部および反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの5%をさらに加えた。
【0071】
内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液6.0部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液14.7重量部を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、内温を70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液9.8部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液24.6重量部を3時間かけて滴下し、さらに3時間攪拌を継続した。なお乳化重合中重合反応液のpHは3.0に保った。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を3.9重量部添加して、pHを8.5とし、不揮発分濃度40.5%の高分子エマルジョンを得た。得られた高分子エマルジョンのゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は500,000であった。また、得られた高分子エマルジョンのガラス転移温度(計算値)は60℃であった。得られた高分子エマルジョンの平均粒子径は60nmであった。以下、実施例1と同様にして水性ネイルエナメル組成物を調整し、評価した。なお、水性ネイルエナメル組成物中の水性樹脂分散体(高分子エマルジョンの固形分とヒドラジン誘導体との合計)は、36.8重量%であった。
【0072】
(実施例9)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水265.0部を仕込み、別途ダイアセトンアクリルアミド11.7重量部、スチレン39.3重量部、メタクリル酸メチル264.3重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル69.5重量部、アクリル酸3.9重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.9重量部、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部、イオン交換水263.7部および反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)11.8重量部をあらかじめ混合しておいた。
【0073】
内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液6.0部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液14.7重量部を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、内温を70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液9.8部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液24.6重量部を3時間かけて滴下し、さらに3時間攪拌を継続した。なお乳化重合中重合反応液のpHは3.0に保った。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を3.9重量部添加して、pHを8.5とし、不揮発分濃度40.2%の高分子エマルジョンを得た。得られた高分子エマルジョンのゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。また、得られた高分子エマルジョンのガラス転移温度(計算値)は60℃であった。得られた高分子エマルジョンの平均粒子径は450nmであった。以下、実施例1と同様にして水性ネイルエナメル組成物を調整し、評価した。なお、水性ネイルエナメル組成物中の水性樹脂分散体(高分子エマルジョンの固形分とヒドラジン誘導体との合計)は、35.8重量%であった。
【0074】
(実施例10)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水265.0部と反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部とを仕込み、別途ダイアセトンアクリルアミド39.3重量部、スチレン39.3重量部、メタクリル酸メチル239.5重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル66.8重量部、アクリル酸3.9重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.9重量部、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート7.8重量部、イオン交換水263.7部および反応性乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)5.9重量部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの5%をさらに加えた。
【0075】
内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液6.0部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液14.7重量部を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、内温を70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液9.8部とメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液24.6重量部を3時間かけて滴下し、さらに3時間攪拌を継続した。なお乳化重合中重合反応液のpHは3.0に保った。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を3.9重量部添加して、pHを8.5とし、不揮発分濃度40.3%の高分子エマルジョンを得た。なお、不揮発分濃度は、150℃20分焼き付け残分により求めた。得られた高分子エマルジョンのゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。また、得られた高分子エマルジョンのガラス転移温度(計算値)は60℃であった。得られた高分子エマルジョンの平均粒子径は100nmであった。平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置により測定した。以下、実施例1と同様にして水性ネイルエナメル組成物を調整し、評価した。なお、水性ネイルエナメル組成物中の水性樹脂分散体(高分子エマルジョンの固形分とヒドラジン誘導体との合計)は、37.1重量%であった。
【0076】
<基本物性評価>
成膜方法:各実施例および比較例で調整した水性ネイルエナメル組成物を乾燥膜厚で120μmになるように各基材に塗布し、25℃にて3日間乾燥して皮膜を形成した。評価は以下の方法によって行った。
【0077】
1.乾燥性:ガラス板上に各水性ネイルエナメル組成物を乾燥膜厚で120μmになるように基材に塗布し、25℃湿度50%雰囲気下で乾燥させた場合に、1分ごとに水を接触させネイルエナメルが流れ出さなくなった時間で評価した。本発明では5分以内であることを特徴とする。
【0078】
2.湯中鉛筆硬度:ガラス板上に各水性ネイルエナメル組成物を成膜し、40℃の湯中にパネルを15分間浸漬し、湯中での鉛筆硬度を測定した。皮塗膜に傷が付かない最高硬度を示す。評価結果でHB以上を実用域と判断した。
【0079】
<実用性評価>
各水性ネイルエナメル組成物について、専門パネラー20名による日常生活環境下での使用テストを行った。各パネラー各々通常使用する厚みにネイルエナメルを塗布し、3日間通常の日常生活を送った後、下記評価項目について5点満点で採点した。なお、結果はパネラー20名の採点値の平均値とした。
【0080】
1.入浴時の温水下における被膜耐久性:試験期間中1日1回(計3回)の入浴を行い、試験開始直後の皮膜状態と試験終了時の皮膜状態とを比較し、その劣化状態を以下の基準で採点した。すなわち、試験開始時の皮膜状態を100%とした場合、試験終了時の皮膜状態を%で表したものを保持率とした。本評価は温水、弱アルカリ性環境下での、皮膜の傷つき程度と剥離具合を総合的に評価するものである。
【0081】
5:皮膜の劣化殆ど無し(保持率:95%以上)
4:皮膜の劣化が僅かに見られる(実用上最低必要である基準、保持率:80%)
3:皮膜が劣化(保持率:60%)
2:皮膜が劣化(保持率:40%)
1:皮膜が劣化(保持率:20%以下)
【0082】
2.光沢保持性:試験開始直後の皮膜の光沢状態を100%とした場合、試験終了時の状態とを比較し、その低下度合を保持率にて評価した。
【0083】
5:光沢の低下殆ど無し(保持率:95%以上)
4:光沢が僅かに低下する(実用上最低必要となる基準、保持率:80%)
3:光沢が低下(保持率:60%)
2:光沢が低下(保持率:40%)
1:失沢(保持率:20%以下)
【0084】
【表1】

【0085】
実施例の評価結果より、架橋型高分子エマルジョンを含有するネイルエナメル用水性樹脂分散体であって、前記自己架橋型高分子エマルジョンが、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)とを乳化重合してなる高分子エマルジョン(A)と、1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)と、を含むことを特徴とする水性ネイルエナメル組成物は、乾燥性、除光性および機械物性に優れたものであった。一方、比較例の結果より、上記発明特定事項のいずれか1つでも欠くと、乾燥性を満足することはできず、水性ネイルエナメルとしては実用上満足できるものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋型高分子エマルジョンを含有するネイルエナメル用水性樹脂分散体であって、
前記架橋型高分子エマルジョンが、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)とを乳化重合してなる高分子エマルジョン(A)と、
1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)と、を含むことを特徴とするネイルエナメル用水性樹脂分散体。
【請求項2】
高分子エマルジョン(A)が、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)0.1〜20重量%と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)80〜99.9重量%と、を乳化重合してなるものである請求項1記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体。
【請求項3】
高分子エマルジョン(A)が、加水分解性シランの存在下において乳化重合してなるものである請求項1または2記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体。
【請求項4】
高分子エマルジョン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算での重量平均分子量が、5,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体。
【請求項5】
高分子エマルジョン(A)のガラス転移温度(Tg)が、0〜100℃であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体。
【請求項6】
高分子エマルジョン(A)の平均粒子径が、10nm〜500nmであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体。
【請求項7】
架橋型高分子エマルジョンを含有するネイルエナメル用水性樹脂分散体の製造方法であって、
前記架橋型高分子エマルジョンが、1分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体(a1)と、単量体(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)とを乳化重合して高分子エマルジョン(A)を得る工程と、
前記高分子エマルジョン(A)に、1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体(B)を混合する工程と、を含むことを特徴とするネイルエナメル用水性樹脂分散体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか記載のネイルエナメル用水性樹脂分散体を10〜60重量%含有することを特徴とする水性ネイルエナメル組成物。

【公開番号】特開2008−195627(P2008−195627A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30099(P2007−30099)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】