説明

ネイルマニキュア液組成物

【課題】 短時間で乾燥硬化して指先を使うことができると共に、除光液によって除去しやすいネイルマニキュア皮膜を形成することのできるネイルマニキュア液を提供する。
【解決手段】 有機溶剤とポリ乳酸系樹脂とを含有することを特徴とするマニキュア液組成物。前記ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度が20℃以上80℃以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手や足の爪に塗布するネイルマニキュア液組成物に関し、特に塗布時の速乾性に優れ、なおかつ形成されたネイルマニキュア皮膜が除光液によって除去し易いものであるネイルマニキュア液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪に塗布するネイルマニキュア液は、溶剤系あるいは水溶性のものが主流になっている。
【0003】
従来のネイルマニキュア液は、溶剤系あるいは水溶性のいずれにおいても、ネイルマニキュア液を爪に塗布すると、揮発性成分が蒸発し除去されることにより、ネイルマニキュア液中に含まれる色素を含んだ樹脂皮膜成分が爪の表面に残ってネイルマニキュア皮膜が形成される。
【0004】
しかし、従来のネイルマニキュア液は、ネイルマニキュア液の塗布後、乾燥硬化するまでに数分ほどの時間を要し、その間指先を自由に使うことができないという問題がある。
【0005】
また、一般にネイルマニキュア皮膜は、有機溶剤を含む除光液によって取り除かれるが、ネイルマニキュア皮膜の除光液に対する溶解性が低いために作業時間が長くなり、爪が傷んで黄ばむ等、爪を傷める傾向にあるという問題がある。さらに室内等の換気の十分でない空間で除光液を使用すると、除光液に含まれる有機溶剤の匂いが充満し、不快に感じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−107913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的は、1分程度の短時間で乾燥硬化して指先を使うことができると共に、除光液によって除去しやすいネイルマニキュア皮膜を形成することのできるネイルマニキュア液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、有機溶剤溶液中にポリ乳酸系樹脂を含有するネイルマニキュア液組成物を塗布した場合、乾燥が速く、さらに得られた皮膜が有機溶剤で容易に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
(1) 有機溶剤とポリ乳酸系樹脂とを含有することを特徴とするネイルマニキュア液組成物。
(2) 前記ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度が20℃以上80℃以下である(1)記載のネイルマニキュア液組成物。
(3) 前記ポリ乳酸系樹脂全体を100%としたとき、前記ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基の重量分率がポリ乳酸系樹脂全体に対して60%以上であり、且つL−乳酸とD−乳酸のモル比L/Dが1/10〜10の範囲内であることを特徴とする(1)または(2)に記載のネイルマニキュア液組成物。
(4) 前記ポリ乳酸系樹脂全体を100%としたとき、前記ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基の重量分率がポリ乳酸系樹脂全体に対して20%以上80%以下であり、且つL−乳酸とD−乳酸のモル比L/Dが1/10未満または10以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のネイルマニキュア液組成物。
(5) 前記有機溶剤を除いた成分の30%以上の重量が前記ポリ乳酸系樹脂である(1)〜(4)いずれかに記載のネイルマニキュア液組成物。
(6) 前記有機溶剤が、脂肪酸のアルキルエステルおよび脂肪族アルコールのいずれか1種以上を含有する、(1)〜(5)いずれかに記載のネイルマニキュア液組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のネイルマニキュア液組成物は、1分程度の短時間で乾燥硬化するので短時間でネイルマニキュア皮膜を形成することができ、また形成されたネイルマニキュア皮膜は除光液によって除去しやすいので自爪の表面を傷めにくい傾向にある、との効果を発揮する。また、本発明のネイルマニキュア液組成物から形成されたマニキュア皮膜は一般的な除光液に対する溶解性が優れており、このため、除光液を使用する時間および量を低く抑えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のネイルマニキュア液組成物は、脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸系樹脂を含有する。芳香族ポリエステルは芳香族成分の作用から樹脂のパッキングが強く、溶剤乾燥時において粘度が高くなるために溶剤が揮発しにくい傾向にある。脂肪族ポリエステルではこのようなパッキング作用が少ないため、ポリエステルを溶解した有機溶剤溶液を乾燥した場合、溶剤の揮散する速度が速くなる。しかし公知の方法でジカルボン酸成分とグリコール成分から脂肪族ポリエステルを重合した場合、ガラス転移温度の高い樹脂が得られず、ガラス転移温度が低いポリエステル樹脂となるためマニキュア液組成物として使用に耐えうる塗膜が得られない。ポリ乳酸系樹脂は脂肪族ポリエステルでありながら高いガラス転移温度のポリエステル樹脂であるため、ネイルマニキュア液組成物に含有させる樹脂成分として最適なものとなる。
【0013】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂とは、ポリマーの構成単位としてポリ乳酸構造を有するポリマーをいい、例えば、ポリL−乳酸やポリD−乳酸等の乳酸ホモポリマー、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも1種を共重合成分とする乳酸コポリマー、およびポリD,L−乳酸等を挙げることができる。
【0014】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂において、ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基以外の成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、あるいはポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル重合体等の側鎖あるいは末端に水酸基を有するポリマー、あるいはグリコリド、ε−カプロラクトン等のカルボン酸エステル基を有し開環重合が可能である環状化合物、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール化合物、あるいはラクトース、トレハロース等の糖類、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール等の多価アルコール類等を挙げることができる。公知の開環重合法を利用する場合、前記したヒドロキシル基を含有するポリエーテルポリオール、側鎖あるいは末端に水酸基を有するポリマー、ジオール化合物、糖類、多価アルコール類は開始剤として、前記した環状化合物はモノマー成分としてポリ乳酸系樹脂を重合することができる。
【0015】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂において、ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基におけるL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比L/Dが1/10〜10範囲内であり、なおかつポリ乳酸系樹脂全体に対する乳酸残基の重量分率が60%以上であるポリ乳酸系樹脂であることは好ましい実施態様である。この場合、前記L/Dはより好ましくは1/6〜6、更に好ましくは1/4〜4である。L−乳酸とD−乳酸のモル比L/Dが1/10〜10の範囲外である場合、溶剤への溶解性が悪くなり、ネイルマニキュア液組成物として使用することができなくなる場合がある。また、乳酸残基の重量分率は、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。乳酸単位の重量比率が上記範囲未満ではネイルマニキュア皮膜として使用に耐えうる強靭な塗膜が得られない場合がある。
【0016】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂において、ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基におけるL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比L/Dが1/10未満または10以上であり、なおかつ、ポリ乳酸系樹脂全体に対する乳酸残基の重量分率が20重量%以上80重量%以下であるポリ乳酸系樹脂であることもまた、好ましい実施態様である。この場合、ポリ乳酸系樹脂中の乳酸がL−乳酸のみまたはD−乳酸のみであっても差し支えない。乳酸残基の重量分率が高すぎると、溶剤への溶解性が悪くなり、ネイルマニキュア液組成物として使用することができなくなる、ネイルマニキュア皮膜を除光液で除去しにくくなる、等の悪影響が出る場合がある。また乳酸残基の重量分率が低すぎると、乾燥硬化に長い時間を要する、形成されたネイルマニキュア皮膜を除光液で除去しにくくなる、等の悪影響が出る場合がある。
【0017】
本発明のポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度は、20℃以上80℃以下の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは30℃以上70℃以下であり、最も好ましくは40℃以上60℃以下である。ガラス転移温度が20℃以下の場合は得られた皮膜は粘着性のある柔らかい皮膜となり、ネイルマニキュア皮膜として実用的とはいい難い。また、Tgが80℃以上の場合は、得られた塗膜の溶剤への溶解性が悪くなり、除光液によりネイルマニキュア皮膜を取り除くことが困難になる傾向にある。
【0018】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂は、たとえば、公知の重合触媒を使用する従来公知の方法に基づいて製造することができる。たとえば、ヒドロキシ酸の二量体であるラクチドと、ヒドロキシ酸、ポリオール、ラクトン等を加熱下で溶融混合し、公知の開環重合触媒を使用して、窒素雰囲気下、加熱開環重合させる方法を採用することができる。このようなラクチドの開環重合反応によるポリ乳酸系樹脂の製造は、工程が簡単であり、高純度生成物が得られ易い点で好ましい。
【0019】
本発明のポリ乳酸系樹脂を製造するに際し、重合後に副生するラクチド量を低減させることを目的に、製造時に有機リン化合物を反応系に添加することができる。有機リン化合物を添加する時期は特に限定されないが、副生するラクチド量を効果的に低減するためには開環重合終了前に該有機リン化合物を添加することが好ましく、開環重合開始前に添加することがより好ましい。
【0020】
本発明のポリ乳酸系樹脂を製造する際に用いる重合触媒としては、特に限定されず、例えばオクチル酸スズ、ジブチル酸スズなどのスズ系化合物、アルミニウムアセチルアセトナート、酢酸アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタン系化合物、ジルコニウムイソプロオキシドなどのジルコニウム系化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物等の乳酸重合に好適な従来公知の触媒が挙げられる。
【0021】
本発明のポリ乳酸系樹脂を製造する際には、ラクチドの開環重合開始剤を用いても良い。開環重合開始剤としては、特に限定されず、例えば脂肪族アルコールのモノ、ジ、および3価以上の多価アルコールのいずれでもよく、また飽和アルコールであっても不飽和アルコールであっても構わない。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のモノアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール等のジアルコール、グリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール等の多価アルコールを用いることができる。また、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステルや乳酸カルシウム等の乳酸塩を用いることができる。これらのうちでは特にエチレングリコール、ラウリルアルコール、グリセロール、ポリグリセロールを用いることが好ましい。用いる開環重合開始剤の常圧における沸点が重合温度より低い場合には、加圧下で反応を行う必要がある。用いる開環重合開始剤の量は、目的により異なるが、多すぎると分子量が上がりにくくなる傾向にある。好ましくは全モノマー量100モル%に対して0.01〜1モル%の割合で用いられる。
【0022】
ラクチドの開環重合開始剤として、スルホン酸ナトリウム基などのイオン性基を含有する開始剤を使用することも好ましい実施態様である。イオン性基を含有する開始剤としては、特に限定はされないが、5−ソジウムスルホイソフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)エステル(別名:5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩)、ビス(2−ヒドロキシエチル)−5−スルホイソフタレート・テトラブチルホスホニウムを用いることが好ましい。本発明のポリ乳酸系樹脂としてイオン性基を含有した樹脂を使用すると、優れた顔料分散性を示す場合がある。この方法により得られたポリ乳酸系樹脂を使用したマニキュア液組成物は、増粘剤を使用しなくても顔料が沈降しにくく長期の安定性を示すので、マニキュア液組成物において、特に有用である。
【0023】
本発明に用いる有機溶剤は、特に限定はされないが、従来からマニキュア液に使用されている種々の有機溶剤を使用することができる。具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン等の脂肪酸のアルキルエステル、イソプロピルアルコール、エタノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、トルエン等の芳香族有機溶剤を用いることができ、酢酸エチルと酢酸ブチルの混合溶液が乾燥速度および人体に対する安全性の面から特に好ましい。
【0024】
本発明のマニキュア液組成物には、アルキド樹脂やアクリル樹脂などのポリ乳酸系樹脂以外の樹脂を配合することが可能である。また、ニトロセルロースなどの皮膜形成剤、皮膜光沢剤、可塑剤、顔料、着色剤、香料、粘度調整剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、などのマニキュア用として公知の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含むことができる。
【0025】
本発明に用いるマニキュア液組成物は、溶剤を除いた成分の30%以上の重量がポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。30%に満たない場合はマニキュア液用途として使用に耐えうる強靭な塗膜が得られない場合がある。また、30%に満たない場合は、マニキュア液の乾燥速度およびマニキュア皮膜の除光液による除去性が劣る場合がある。
【実施例】
【0026】
次に本発明を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
<樹脂の組成および物性の評価方法>
1.ポリ乳酸系樹脂に対する乳酸残基の重量分率
ポリ乳酸系樹脂15mgを0.5mLの重クロロホルムに溶解し、400MHzの核磁気共鳴(NMR)スペクトル装置(Varian製)を用いて測定を行った。測定条件は、室温、d1=26sである。プロトンの積分値から、乳酸成分の重量割合を計算し、乳酸残基の重量分率として記載した。
【0028】
2.ポリ乳酸系樹脂のL/Dモル比
実施例のポリ乳酸系樹脂中のL/Dモル比は、仕込量から求めた。製造工程が不明である樹脂のL/Dモル比は、クロロホルム等の非旋光性の溶剤にポリ乳酸系樹脂を溶解し、旋光度計(例えば堀場製作所SEPA−200)を用いてその溶液の旋光度を求め、ポリL/D乳酸(1/1モル比)とポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸の旋光度から作成した検量線と対照することによって決定するものとする。なお、ポリ乳酸系樹脂A〜Cにおいて、仕込量から求めたL/Dモル比と旋光度から求めたL/Dモル比は一致した。
【0029】
3.数平均分子量
試料樹脂を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過し、GPC測定試料とした。テトラヒドロフランを移動相とし、島津製作所社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Prominenceを用い、示差屈折計(RI計)を検出器として、カラム温度30℃、流量1ml/分にて樹脂試料のGPC測定を行なった。数平均分子量既知の単分散ポリスチレンのGPC測定結果を用いて試料樹脂のポリスチレン換算数平均分子量を求め、それを本願における試料樹脂の数平均分子量とした。ただしカラムは昭和電工(株)製のshodex KF−802、804L、806Lを用いた。
【0030】
4.ガラス転移温度
樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、−50℃から150℃まで、昇温速度20℃/分にて測定した。ガラス転移温度は、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0031】
<マニキュア液組成物およびマニキュア皮膜の評価方法>
5.乾燥評価
マニキュア液組成物を爪に塗布し、マニキュア液組成物が固形化して塗膜を形成し、なおかつタックとベタツキの双方が無くなるまでの時間を測定した。30秒未満で塗膜のタック、ベタツキが完全に無くなったものを◎、30秒以上60秒未満で塗膜のタックとベタツキの双方が無くなったものを○、60秒経過しても塗膜のタックまたはベタツキがあるものを×とした。
【0032】
6.光沢評価
マニキュア液組成物を爪に塗布し、常温にて5分間乾燥後、爪の外観を確認した。マニキュアとして相応しい光沢の得られたものを○、光沢が得られなかったものを×とした。
【0033】
7.除光液溶解性評価
マニキュア液組成物を塗工液とし、二軸延伸ポリエステルシート(東洋紡績(株)製 東洋紡エステル、厚み50μm)のコロナ面に、ハンドコーターで塗布し、次いで120℃×10分乾燥することにより、乾燥膜厚約10μmの塗膜を得た。該塗膜をポリエステルシートから剥離することなく、25℃のアセトンに30秒浸漬し、1時間風乾し更に120℃で10分間乾燥した。アセトン浸漬・乾燥の前後の塗膜の重量変化を確認し、下記計算式に従って重量残率を算出した。
(重量残率[%])=(アセトン浸漬・乾燥後塗膜重量)/(アセトン浸漬前塗膜重量)×100
この重量残率が20%以下の場合を除光液への溶解性が特に優れているため◎、20%を超え30%以下の場合を除光液への溶解性が優れているため○、30%を超える場合を×とした。
【0034】
8.耐擦過性評価
除光液溶解性評価と同様の方法で塗膜を作成し、消しゴム(KOKUYO製プラスチック消しゴム ケシ−51)の平面部で擦り試験を行った。10回擦り、外観の変化を確認した。塗膜の外観が試験前と変化が無かったものを○、塗膜に傷がついたものを△、塗膜が剥離したものを×とした。
【0035】
<ポリ乳酸系樹脂の合成方法>
ポリ乳酸系樹脂Aの合成
L−ラクチド250部、DL−ラクチド250部、エチレングリコール0.7部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部、触媒失活剤としてジエチルホスホノ酢酸エチル0.6部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にエチレングリコール残基を有する乳酸系樹脂を得た。得られたポリ乳酸系樹脂の組成と物性を表1に示す。
【0036】
ポリ乳酸系樹脂Bの合成
L−ラクチド400部、D−ラクチド100部、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩3.56部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部、触媒失活剤としてジエチルホスホノ酢酸エチル0.7部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にスルホン酸金属塩を有する乳酸系樹脂を得た。得られたポリ乳酸系樹脂の組成と物性を表1に示す。
【0037】
ポリ乳酸系樹脂Cの合成
DL−ラクチド450部、ε−カプロラクトン50部、ポリグリセリン5部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部、触媒失活剤としてジエチルホスホノ酢酸エチル0.6部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にポリグリセリン構造を有する乳酸系樹脂を得た。得られたポリ乳酸系樹脂の組成と物性を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(比較例1)
市販のマニキュアAを分析したところ、ポリエステル系樹脂Aを含有することが判明した。ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度および数平均分子量を表2に示した。前記マニキュアAについて前記した<マニキュア液組成物およびマニキュア皮膜の評価方法>に従って評価を行った。結果を表3に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
(実施例1)
市販のマニキュアAに含有されているポリエステル系樹脂Aをポリ乳酸系樹脂Aに変更してマニキュア液組成物を調製した。次いで、前記した<マニキュア液組成物およびマニキュア皮膜の評価方法>に従って評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
(比較例2〜5)
市販のマニキュアB〜Eを分析したところ、ポリエステル系樹脂B〜Eを含有することが判明した。ポリエステル系樹脂B〜Eのガラス転移温度および数平均分子量を表2に示した。前記マニキュアB〜Eについて前記した<マニキュア液組成物およびマニキュア皮膜の評価方法>に従って評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
(実施例2〜5)
市販のマニキュアB〜Eに含有されているポリエステル系樹脂B〜Eをポリ乳酸系樹脂A〜Cのいずれかに変更してマニキュア液組成物を調製した。次いで、前記した<マニキュア液組成物およびマニキュア皮膜の評価方法>に従って評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0046】
表3、表4に示す結果の通り、本発明により得られる化粧品組成物は、1分以内で有機溶剤が除去され、除光液で容易に除去できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の化粧品組成物は、有機溶剤の乾燥速度が早いだけでなく、有機溶剤である除光液に対する溶解性も優れているため、従来のマニキュアよりも使用者にとって利便性の優れたものとなる。有機溶剤である除光液を使用する時間を短時間に抑えることが可能なため、環境負荷低減も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤とポリ乳酸系樹脂とを含有することを特徴とするネイルマニキュア液組成物。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度が20℃以上80℃以下である請求項1記載のネイルマニキュア液組成物。
【請求項3】
前記ポリ乳酸系樹脂全体を100%としたとき、前記ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基の重量分率がポリ乳酸系樹脂全体に対して60%以上であり、且つL−乳酸とD−乳酸のモル比L/Dが1/10〜10の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のネイルマニキュア液組成物。
【請求項4】
前記ポリ乳酸系樹脂全体を100%としたとき、前記ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸残基の重量分率がポリ乳酸系樹脂全体に対して20%以上80%以下であり、且つL−乳酸とD−乳酸のモル比L/Dが1/10未満または10以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のネイルマニキュア液組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤を除いた成分の30%以上の重量が前記ポリ乳酸系樹脂である請求項1〜4いずれかに記載のネイルマニキュア液組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤が、脂肪酸のアルキルエステルおよび脂肪族アルコールのいずれか1種以上を含有する、請求項1〜5いずれかに記載のネイルマニキュア液組成物。

【公開番号】特開2011−126798(P2011−126798A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284916(P2009−284916)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】